(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の微粒化装置の構成を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態1の微粒化装置に用いられる噴射チャンバの断面図、図3は本発明の実施の形態1の微粒化装置に用いられるジェットノズル(ラバールノズル)の断面図、図4は本発明の実施の形態1の微粒化装置における配管系統図、図5、図6は本発明の実施の形態1の微粒化方法を示す動作説明図、図7は本発明の実施の形態1の微粒化方法における微小液滴の衝突による微粒化メカニズムの説明図、図8は本発明の実施の形態1の微粒化装置における配管系統図、図9は本発明の実施の形態1の微粒化装置に用いられる液滴衝突部の断面図、図10は本発明の実施の形態1の微粒化方法における微小液滴の衝突の説明図である。
実施の形態1は、特許請求の範囲における請求項1〜請求項7に対応するものである。まず図1を参照して、微粒化装置1の全体構成について説明する。微粒化装置1は、固体粒子を含む溶液を気体(エア)の噴流によって加速して高速の微小液滴とし、高速の微小液滴を衝突させることにより、固体粒子を微粒化して粒径が1μm以下の微細粒子を製造する機能を有するものである。本実施の形態1においては、固体粒子として、例えばセラミックコンデンサの誘電体として用いられるチタン酸バリウムの固体粒子を対象とし、この固体粒子を破砕して数10nmのオーダの粒径の微細粒子に微粒化する例を示している。なお固体粒子の種類や組成は特に限定されるものではない。
図1において、微粒化のための機構部を内蔵した筐体部2は、水平に配設されたベースプレート3によって上部2aおよび下部2bに分割されている。上部2aは前面に設けられた扉部材4によって開閉自在となっており、上部2a内には噴射チャンバ6を主体とする微粒化処理部5が配設されている。噴射チャンバ6の上部には、気体の噴流を加速する機能を有するラバールノズル形式のジェットノズル7が設けられている。ジェットノズル7によって加速された噴流中の微小液滴は、噴射チャンバ6の内部に設けられた衝突面(図3に示す回転衝突テーブル22参照)に衝突し、これにより微小液滴中の固体粒子は微細粒子に破砕される。噴射チャンバ6の下部には、衝突面を垂直軸廻りに回転駆動するための駆動モータ8が設けられている。
ジェットノズル7には、気体の噴流を発生させるための駆動用のエアを供給するエア供給配管10および固体粒子を含む溶液を供給する溶液供給配管11が導設されている。溶液に用いられる液体としては、固体粒子を包含する微小液滴が形成可能で、固体粒子を変性させない物性を有するものであればよい。例えば最も簡便な水や、有機溶媒と水との混合物など各種の液体を選択することができる。
エア供給配管10の端末には、外部のエア配管を接続するためのエア接続口10aが設けられており、エア接続口10aを介して導入された駆動用のエアは、エア供給配管10を介してジェットノズル7に供給される。さらに噴射チャンバ6には内部を排気するための排気ユニット13が排気ダクト12を介して接続されており、ジェットノズル7から噴射チャンバ6の内部に噴射されたエアは排気ダクト12を介して排気ユニット13によって吸引排気される。
下部2bには、固体粒子を含む溶液を回収して循環させるための溶液配管部15が配設されている。溶液配管部15は噴射チャンバ6から溶液を回収する溶液回収管16、回収された溶液を貯留するタンク17、タンク17に貯留された溶液を溶液供給配管11に圧送して戻すためのポンプ18を備えている。さらに、筐体部2の上部には制御ユニット9が設けられており、制御ユニット9によって微粒化処理部5,溶液配管部15,排気ユニット13などの各部の動作制御が行われる。
次に図2を参照して、微粒化処理部5の構成を説明する。図2において、ベースプレート3の上面には、微粒化処理部5を構成する噴射チャンバ6が固着されている。噴射チャンバ6は、内円筒に円錐状空間を付加した形状の噴射空間6bを有する中空部品であり、上部に設けられた円形開口は蓋部材6aによって閉塞されている。蓋部材6aにはジェットノズル7がノズル本体部7aを噴射空間6b内に挿入した姿勢で装着されている。ジェットノズル7の装着姿勢は、垂直下方もしくは垂直方向に対して所定の傾斜角だけ傾けた姿勢となっている。この傾斜角は、対象となる固体粒子の特性に応じて良好な微粒化結果を得るために最適角度が条件出しなどの手法によって設定される。ジェットノズル7には、噴流発生のための駆動エアがエア供給配管10を介して供給され、加速噴射対象の固体粒子を含んだスラリ状の溶液が溶液供給配管11を介して供給される。
噴射空間6bの中央部には、軸受け部21を主体とする衝突テーブル保持部20が設けられている。軸受け部21の中心には軸孔21aが垂直方向に貫通して設けられており、軸孔21aに装着されたベアリング24、25によって軸支された回転軸22cの上端部には、回転衝突テーブル22が装着されている。ベアリング24の上部にはシール部材23が装着されており、軸孔21aへの水分の進入をシールしている。回転衝突テーブル22は、回転軸22cに固着された回転板22bの上面に被覆部材22aを貼り付けた構成となっている。回転軸22cは下端部に結合された駆動モータ8によって回転駆動され、駆動モータ8を駆動することにより、回転衝突テーブル22は所定の回転数および回転パターンで垂直軸廻りに回転する。
被覆部材22aはSiCなどの硬質で耐摩耗性に富む材質で製作されており、ジェットノズル7によって高速に加速された微小液滴が被覆部材22aの上面に衝突することにより、微小液滴中の固体粒子がさらに粒径が小さい微細粒子に微粒化される。被覆部材22aの上面は、微小液滴が高速で衝突する衝突面となっている。ここでジェットノズル7の噴射中心は、回転衝突テーブル22の中心から所定の寸法dだけオフセットした配置となっており、回転衝突テーブル22を回転させながら、ジェットノズル7から溶液を回転衝突テーブル22の上面に対して噴射すると、溶液中の固体粒子や液体成分は、回転衝突テーブル22の回転による遠心力によって噴射空間6b内を外周方向へ振り飛ばされる。
噴射空間6bの下底部には噴射チャンバ6の下面側に接続された溶液回収管16と連通する排液孔6eが設けられており、噴射空間6b内において外周方向へ振り飛ばされた水滴状の溶液は、排液孔6e、溶液回収管16を経由してタンク17(図1参照)に回収される。排液孔6e、溶液回収管16およびタンク17は、衝突面22dに衝突することにより微粒化された微細粒子を含む溶液を回収して溶液供給手段に戻す溶液回収手段として機能する。
軸受け部21の上部は外周側に向かって下方に傾斜した円錐面となっており、円錐面の端部には円環部21bが下垂して設けられている。円環部21bは、噴射チャンバ6の下部に設けられた下部ブロック6cが上方に延出して設けられた環状突部6dとの間にクリアランスCを形成する形状で設けられている。噴射チャンバ6および軸受け部21をこのような形状とすることにより、軸受け部21と下部6cとの間には、クリアランスCを介して噴射空間6bと連通する排気用空間27が形成される。クリアランスCおよび排気用空間27の内部には、多孔質部材など通気性の材質よりなるフィルタ26が装着されている。
排気用空間27は、噴射チャンバ6の下面に装着された排気リング28と接続されており、さらに排気リング28は排気ダクト12を介して排気ユニット13に接続されている。排気ユニット13を駆動することにより、排気用空間27を介して噴射空間6bが吸引され、回転衝突テーブル22の周囲のエアが排気される。このとき、クリアランス部Cおよび排気用空間27の内部に装着されたフィルタ26によって、排気エアに含まれる水分や粒子成分が捕集濾過され、気体成分のみが排気される。そして余分な水分は排気リング28の底部からドレンとして排出される。上記構成において、排気用空間27,排気リング28、排気ダクト12および排気ユニット13は、回転衝突テーブル22の周囲を空間を排気する排気手段となっている。
次に図3を参照して、ジェットノズル7の構造を説明する。図3に示すように、ジェットノズル7は円筒形状のノズル本体部7aを主体としており、ノズル本体部7aには長手方向に貫通して内部流路孔31が形成されている。内部流路孔31の上流側は、エア供給配管10が接続されて圧縮気体である圧縮空気(矢印a)が導入される導入部31aとなっている。
導入部31aの下流側には、内部流路孔31の流路径が流れ方向に沿って絞られたコンバージェント部31b、流路径が最も小さく絞られたスロート部31c、流路径が拡大するダイバージェント部31dおよび流路径が漸増する加速冷却部31eが圧縮空気の流れ方向に順次設けられている。加速冷却部31eがノズル本体部7aの端部に到達した開口は、微小液滴を含む噴流を噴射する噴射口7bとなっている。
上述構成のジェットノズル7は、コンバージェント部31b、スロート部31cおよびダイバージェント部31dを有するラバールノズルを形成している。ノズル本体部7aはPTFE樹脂などの樹脂や金属で形成されており、一体成形あるいは適宜分割して成形されたものを一体化して製作される。スロート部31cの直径は例えば3〜10mmの範囲から適宜設定され、スロート部31cから噴射口7bまでの距離は、例えば100〜300mmの範囲で圧縮空気を加速するのに十分な距離に設定される。
すなわち圧縮空気は、スロート部31cで音速程度の高速となるように圧力が調整された後、亜音速(例えば50m/sec程度)でコンバージェント部31bに供給され、コンバージェント部31bで加速されてスロート部31cで音速(330m/sec程度)となり、ダイバージェント部31dでさらに加速されて、例えば400〜500m/sec程度の超音速まで加速される。スロート部31cの上流側には、固体粒子を含む溶液33(図4参照)を圧縮空気の流れと同方向に吐出する溶液供給管32が設けられている。ここで溶液33は予め設定された規定量で溶液供給配管11を介して供給される。供給された溶液33は、溶液供給管32の先端部の吐出口から吐出されて微小な微小液滴33aとなり、圧縮空気とともに下流側へ高速で流動する。
溶液供給管32の吐出口は、スロート部31cの近傍且つ内部流路孔31の内側壁面から離れた位置、例えばスロート部31cの中心から上流方向および下流方向にそれぞれスロート部31cの内径の5倍の長さの範囲以内である吐出口配置範囲内に配置される。このように、溶液供給管32の吐出口をノズル本体部7aの内側壁面から離れたスロート部31cの近傍に配置することにより、吐出された溶液が微粒化した微小液滴33aがノズル本体部7aの内側壁面に形成される境界層領域の影響を受けにくくなり、これにより微小液滴33aの速度低下を抑えて十分に加速することができる。
ジェットノズル7内における噴流の加速過程について説明する。導入部31aに駆動エアとして設定圧(例えば0.5Mp)で供給された圧縮空気の流れは、まずコンバージェント部31bによって加速され(矢印b)、音速程度の流速でスロート部31cを通過する。そしてスロート部31cからダイバージェント部31d内に移動することにより圧力が低下してさらに加速され(矢印c)る。そして溶液供給管32の吐出口から吐出され圧縮空気の流れによって微粒化した微小液滴33aは、徐々に拡径する加速冷却部31e内で加速されながら下流側へ高速で流動し(矢印d)、ジェットノズル7の噴射口7bから噴射される。加速冷却部31eにおける拡径度合いは、内部流路孔31の内側壁面付近に形成される境界層領域の厚みを考慮して決定される。
一般に流体の円管内流れにおいては、管内壁面付近で流れの状態が変化する境界層が形成され、この境界層領域では流速が低下する。そして管内径が一定の円管内流れの場合には、管出口付近で境界層領域が拡がり、この結果流れの中心付近での流速の低下が生じる。これに対し、この境界層領域を考慮して流れ方向に徐々に拡径した加速冷却部31eを設けることにより、境界層領域における流速低下の影響を抑えることができ、噴射口7b付近でも高速の流れを広い範囲で確保できるようになっている。上記構成のジェットノズル7および以下に説明する気体供給手段は、微小液滴33aを少なくとも音速の1倍以上に加速して噴射する液滴加速手段を構成する。
次に図4を参照して、配管系について説明する。噴射チャンバ6の排液孔6eに連通した溶液回収管16はタンク17に接続されており、タンク17にはバルブ36を介して溶液供給部38が接続されている。タンク17に接続されたポンプ18の吐出管18aはバルブ35を介して加工済溶液回収部37に接続されており、さらに吐出管18aはバルブ34を介して溶液供給配管11と連通している。バルブ36を開にした状態で溶液供給部38から溶液33、すなわち微粒化対象の固体粒子を含有した溶液を送給することにより、タンク17には溶液33が貯留される。
バルブ35を閉にし、バルブ34を開にした状態でポンプ18を駆動することにより、タンク17に貯留された溶液33はポンプ18によって吐出管18aに吐出され、さらに溶液供給配管11を介してジェットノズル7に供給される。このとき、溶液供給配管11に設けられた圧力センサ(PS)39によって圧力を検出し、この圧力検出結果に基づいてポンプ18を制御部(図示省略)によって制御することにより、ジェットノズル7に供給される溶液33の圧力を規定圧力に調整することができる。溶液供給部38、タンク17、ポンプ18および溶液供給配管11は、固体粒子を含む溶液をジェットノズル7内部の噴流中に供給する溶液供給手段となっている。
ジェットノズル7の導入部31aには、エア供給配管10を介してエア供給源41から駆動エアが、内部流路孔31の流れ方向に供給される。エア供給配管10に設けられた圧力センサ(PS)40によって圧力を検出し、この圧力検出結果に基づいてエア供給源41を制御部(図示省略)によって制御することにより、ジェットノズル7に供給されるエア圧力は規定圧力に保たれる。エア供給源41およびエア供給配管10は、内部流路孔31の流れ方向に圧縮気体を供給する気体供給手段となっている。ジェットノズル7から噴射され、回転衝突テーブル22に衝突した後の溶液33の微小液滴33aは、排液孔6eおよび溶液回収管16を介してタンク17内に回収される。バルブ34を閉にし、バルブ35を開にした状態でポンプ18を駆動することにより、タンク17に貯留された加工済みの溶液33は、加工済溶液回収部37に回収される。
次に図5,図6を参照して、微粒化装置1によって固体粒子を含む溶液を気体の噴流によって加速して高速の微小液滴33aとし、この微小液滴33aを高速で衝突させることにより、固体粒子を微粒化して粒径が1μm以下の微細粒子を製造する微粒化方法について説明する。
図5(a)においてまず内部流路孔31には駆動用のエアが設定圧(例えば0.5Mp)で送給される(矢印a)。これにより、内部流路孔31から下流側にはまずコンバージェント部31bによって加速され(矢印b)、音速程度の流速の噴流となってスロート部31cを通過する。この状態で、タンク17からポンプ18によって圧送され溶液供給配管11を介してジェットノズル7に送給された固体粒子を含む溶液33を溶液供給管32からスロート部31cに吐出させ、噴流中に微小液滴33aとして供給する(溶液供給工程)。
次いで、図5(b)に示すように、微小液滴33aを含む噴流は、スロート部31cからダイバージェント部31d内に移動することにより圧力が低下してさらに加速(矢印c)される。そして溶液供給管32の吐出口から吐出され圧縮空気の流れによって5〜15μm程度に微粒化した微小液滴33aは、徐々に拡径する加速冷却部31e内で音速を超える流速に加速されながら下流側へ流動する(矢印d)。次いでこのようにして加速された微小液滴33aを、図5(c)に示すように、ジェットノズル7の噴射口7bから回転衝突テーブル22に対して噴射する。
すなわち図5に示す各過程は、微小液滴33aを少なくとも音速の1倍以上に加速する液滴加速工程を構成する。そしてこの液滴加速工程は、円形の断面のスロート部31cの下流側に流れ方向に拡径するダイバージェント部31dを備えたノズル本体部7aに圧縮気体を供給して、スロート部31cにおいて圧縮気体の流速を音速とする第1工程と、ノズル本体部7aの内側側面から離れたスロート部31cの近傍に配置された溶液供給管32の吐出口からスロート部31cにおける圧縮気体の流れと同方向に溶液33を吐出する第2工程と、ダイバージェント部31dにおける圧縮気体の流れによって微小液滴33aをノズル本体部7aから噴射する第3工程とを含む形態となっている。
次に噴射口7bから噴射された微小液滴33aを、回転衝突テーブル22に設けられた被覆部材22aの上面の衝突面22dに高速で衝突させる(液滴衝突工程)。図6(a)に示すように、微小液滴33aは硬質材料であるSiCなどより成る被覆部材22aの衝突面22dに高速で衝突する。これにより、微小液滴33aに含まれる固体粒子42は衝撃により破砕され、1μm以下(〜10nm)の微細粒子42aとなる。この破砕は、微小液滴33aが音速を超える高速で衝突することによる物理的エネルギによって実現される。
なお衝突による衝撃効果を最大にするためには、ジェットノズル7を垂直姿勢として衝突面22dに噴流を垂直上方から入射させることが望ましいが、この場合には、衝突により微細霧状のミストとなって飛散する液量が多くなるという難点がある。このようなミストの発生を抑えるためには、ジェットノズル7を垂直方向から所定角度だけ傾けて噴流が衝突面22dに幾分斜め方向から入射するように、ジェットノズル7の装着姿勢を調整する。この所定角度も、実際の溶液を対象とした試行を反復実行する条件出しの手法によって求められる。
上述の破砕過程は微小液滴33aが回転衝突テーブル22に衝突するわずかな時間内に瞬間的に発生し、このとき回転衝突テーブル22は回転軸22cとともに回転していることから、回転中心から隔たった位置に衝突した微小液滴33aには、回転による遠心力が作用する。この遠心力により、図6(b)に示すように微小液滴33aは外周方向に振り飛ばされる。そして振り飛ばされた微小液滴33aは 図6(c)に示すように、噴射空間6b内で飛散し(矢印e)、噴射空間6bの下部に集積して排液孔6eより溶液回収管16を介して回収される。そして回収された微細粒子を含む溶液33は、一旦タンク17に貯留された後、ポンプ18によって圧送されて再びジェットノズル7に戻り、ジェットノズル7内部の噴流中に戻される(溶液回収工程)。そしてこの後、溶液33は再び微小液滴33aとなって再び噴射され、液滴衝突工程が予め定められた所定回数だけ反復して実行される。
ここで上述の液滴衝突工程における固体粒子の破砕による微粒化のメカニズムについて、図7を参照して説明する。図7(a)に示すように、ジェットノズル7から噴射されて衝突面22dに衝突する微小液滴33aには、固体粒子42やナノ粒子の凝集体が複数個含まれている。これらの固体粒子42は大きいものでは2μm程度、小さいものでは60nm程度であり、広い範囲でサイズがばらついた状態にある。このような微小液滴33aが衝突面22dに高速で衝突すると、微小液滴33aに含まれる固体粒子42のうちサイズが比較的大きいものは慣性力により衝突面22dに衝突し、衝突による衝撃エネルギによって破砕され微細粒子42aに分散する。
これに対し、サイズが小さい粒子は微小液滴33aの粘性によって慣性力が減殺されやすいことから、衝突面22dに粒子自体が衝突することによる衝撃エネルギが直接作用しにくい。このようなサイズが小さい粒子には、衝突面22dへの衝突によって微小液滴33aの内部に発生した衝撃波が振動として作用することにより、微粒化が行われる。すなわち図7(b)に示すように、微小液滴33aの内部には衝突面22dとの衝突により衝突界面から内部へ伝播される衝撃波43が瞬間的に生じ、この衝撃波43の作用によって比較的小さな粒径の固体粒子がさらに粒径が10nm〜30nm程度のナノサイズ粒子に微粒化される。
このような微小液滴33aの衝突による微粒化作用を安定して実現するためには、ジェットノズル7から高速で噴射された微小液滴33aの速度をできるだけ維持したまま、衝突面22dに入射させることが必要である。本発明においては、微粒化対象の固体粒子42をキャリアとしての微小液滴33aに含有させ、さらに微小液滴33aを気体の噴流を加速媒体として用いる構成を採用することにより、以下に説明するような優れた効果を得ている。
所定の噴射幅の噴流を固体壁(ここでは衝突面22d)に対して噴射する際の流体の挙動は、図7(c)に示すように、入射流44(矢印f)は衝突面22dに入射した後、入射位置を中心として衝突面22dに沿って放射状に分散する分散流44a(矢印g)となって周囲に拡散する。この流れモデルにおいて、流体が密度・粘度が高い液体である場合には、微粒化対象の固体粒子42は分散流44a中に包含されたまま周囲に拡散する度合いが強い。すなわち固体粒子42は大部分が衝突面22dに直接衝突せず、従って固体粒子42の微粒化の効率が低くなる。
これに対し、本発明のように微粒化対象の固体粒子42をキャリアとしての微小液滴33aに含有させ、さらに微小液滴33aを気体の噴流を加速媒体として用いる場合には、入射流44によって高速で運ばれた微小液滴33aは、加速媒体が気体であって粘度・密度ともに低いことから、大部分が分散流44aに巻き込まれることなく衝突面22dに高速を保ったまま衝突する。従って、微小液滴33aを加速した物理エネルギを有効に固体粒子42の微粒化に利用することが可能となっている。このとき、回転衝突テーブル22の周囲を排気して分散流44aを速やかに拡散させることにより、分散流44aが微小液滴33aの衝突面22dへの衝突を妨げる悪影響を極力排除することができる。本実施の形態においては、前述の排気手段を備えていることから、分散流44aを速やかに排気して微粒化の作業効率をさらに向上させることが可能となっている。
なお上述の微粒化方法においては、タンク17に貯留した溶液33を複数回循環させて、同一の固体粒子を対象として複数回の破砕を行う例を示したが、対象となる固体粒子が破砕しやすい特性のものである場合、または比較的大きなサイズの粒径まで破砕すればよい場合などには、図8に示すような構成としてもよい。すなわちこの場合には、溶液供給部38から溶液供給配管11を介して直接ジェットノズル7に供給し、回転衝突テーブル22に1回衝突させることのみで微粒化を行う。この後、微粒化加工済みの溶液33は、溶液回収管16を介して加工済溶液回収部37に回収される。
また微粒化によって得られるナノサイズ粒子の粒径を所望範囲に設定するためには、上述のように加工対象の固体粒子をジェットノズル7から噴射させて回転衝突テーブル22に衝突させる微粒化処理の回数を設定する方法の他に、ジェットノズル7から噴射される噴流の速度を調整する方法を用いることができる。すなわちジェットノズル7に供給される駆動エアの圧力を調整して、噴流中の微小液滴33aの速度を所望の微粒化の程度に応じて調整する。
さらに上記実施の形態においては、ジェットノズル7から噴射した微小液滴33aを硬質材料よりなる衝突面に高速で衝突させることにより固体粒子を破砕するようにしているが、図9に示すように、微小液滴33a相互を高速で衝突させることによって、固体粒子を破砕して微粒化するようにしてもよい。この場合には、液滴加速手段としてのジェットノズル7を複数備え、複数の液滴加速手段によって異なる方向から噴射された微小液滴33aを相互に高速で衝突させる構成を採用する。
図9において、内部に溶液噴射用の噴射空間50aが設けられた中空形状の噴射チャンバ50には、2つのジェットノズル7がノズル本体部7aを噴射空間50a内部に挿入した配置で装着されている。ノズル本体部7aからの噴射線Aは噴射空間50a内に設定された交差ポイントCPで交差するようにジェットノズル7の位置が調整されている。噴射線Aが水平面となす角度αは、ノズル角調整機構(図示省略)によって所定角度範囲(例えば30°〜45°)で任意に調整可能となっている。ジェットノズル7には、図4に示す例と同様に、駆動エアを供給するためのエア供給源41および固体粒子を含有した溶液を供給するための溶液供給部38が接続されている。
噴射チャンバ50の上部および下部には、排気孔50b、排液孔50cがそれぞれ設けられている。排気孔50bには排気ダクト51を介して排気ユニット13が接続されており、排液孔50cには溶液回収管52を介して加工済溶液回収部37が接続されている。ジェットノズル7から噴流として噴射空間50a内に噴射された駆動エアは、排気孔50b、排気ダクト51を介して排気ユニット13によって排出される。また噴流とともに噴射空間50a内に噴射された微小液滴は、排液孔50c、溶液回収管52を介して加工済溶液回収部37によって回収される。なお同一加工対象物に対して微粒化処理を複数回行う場合には、図4に示す例と同様に、溶液回収管52から回収された加工済溶液を再度ジェットノズル7に戻すようにする。
図10(a)は、噴射チャンバ50内にジェットノズル7から噴射される噴流の状態を示している。すなわち、ノズル本体部7aの噴射口7bからは、微小液滴33aを含むエアの噴流が交差ポイントCPに向けて噴射される。これらの2筋の噴流が交差することにより、図10(b)に示すように、微小液滴33a相互が高速で衝突し、この衝突により微小液滴33a内の固体粒子42は破砕されて微細粒子42aに微粒化される。このような構成によっても、固体粒子を効率よく微粒化することができる。この構成において、ノズル本体部7aからの噴射線Aが交差ポイントCPで交差するようにジェットノズル7の位置が調整された噴射チャンバ50は、複数の液滴加速手段であるジェットノズル7によって異なる方向から噴射された微小液滴33aを相互に高速で衝突させる液滴衝突部となっている。
(実施の形態2)
図11は本発明の実施の形態2の微粒化装置における微粒化処理部の斜視図、図12は本発明の実施の形態2の微粒化装置に用いられる噴射チャンバの断面図、図13、図14は本発明の実施の形態2の微粒化装置に用いられるジェットノズル(2流体ノズル)の断面図、図15は本発明の実施の形態2の微粒化装置における配管系統図、図16は本発明の実施の形態2の微粒化装置の動作説明図、図17は本発明の実施の形態2の微粒化装置に用いられる噴射チャンバの断面図である。
実施の形態2は、特許請求の範囲における請求項8〜請求項15に対応するものである。本発明の実施の形態2に示す微粒化装置は、固体粒子を含む溶液を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、加速された微小液滴を衝突させることにより、固体粒子を微粒化する機能を有するものである。本実施の形態2においては、実施の形態1において例示したチタン酸バリウム、セラミックなどある程度の硬度を有し固体状態で存在する物質のみならず、ゲル状態の物質などある大きさで凝集状態にあるものをも固体粒子の定義に含めて取り扱う。例えば、液中に存在する物質を分解・分散する乳化処理も本実施の形態2における微粒化処理に含まれる。
そしてこのように定義された固体粒子を破砕もしくは解砕して微細粒子に微粒化する処理を行う。ここでは、硬度を有する固体を微粒化する操作として「破砕」の語を用い、凝集状態にある物質を分解・分散して微粒化する操作として「解砕」の語を用いている。このように異なる特性を有する物質を含めて微粒化の対象とする場合には、所望の微粒化の態様、すなわち微粒化後の粒径や許容される粒径のばらつき程度などが対象によって異なることから、本実施の形態2においては、微粒化処理後の粒径を特に限定していない。また破砕または解砕において必要とされる衝撃力は、対象となる物質の特性および所望の微粒化の態様によって大きく異なることから、本実施の形態2においては、微粒化対象の固体粒子の種類によって定められる微粒化難度や所望の微粒化の態様に応じて設定される所定速度に微小液滴を加速して、衝突部に衝突させるようにしている。
まず図11、図12を参照して、本実施の形態2の微粒化装置に用いられる微粒化処理部5Aの構成について説明する。微粒化処理部5Aは実施の形態1における微粒化処理部5と同様に、微粒化のための機構部を内蔵した筐体部2内に配設されるものである(図1参照)。図11において、微粒化処理部5Aは噴射チャンバ60および排気ユニット66を備えている。噴射チャンバ60は上部61、中間部62および下部63に3分割された縦型の略円筒形状の処理容器であり、上部61と中間部62および中間部62と下部63とは、それぞれ円環継手69a、69bを介して結合されている。
上部61の頂部を絞って設けられたノズル取付部61aにはノズルホルダ68が円環継手69cを介して結合されており、ノズルホルダ68には実施の形態1と同様の液滴加速手段を構成するジェットノズル7が上方から装着されている。このような構成により、上部61、中間部62、下部63を、内部の部品交換などの必要に応じて容易に分解することができ、さらにジェットノズル7の着脱を容易に行うことが可能となっている、
ジェットノズル7には実施の形態1におけるエア供給配管10、溶液供給配管11と同様のエア供給配管70、溶液供給配管71が導設されており、エア供給配管70、溶液供給配管71によってジェットノズル7には気体流を発生させるための駆動用のエアおよび固体粒子を含む溶液が供給される。下部63の底部を絞って設けられた排液部63aの外面には、側方に延出するフランジ63bが設けられており、フランジ63bには溶液回収タンク64が円環継手69dを介して接続されている。図12に示すように、排液部63aの内部は排液孔63cとなっており、溶液回収タンク64には噴射チャンバ60によって破砕または解砕の加工処理が行われた加工済み溶液が、排液孔63cを介して流入して貯留される(図16参照)。溶液回収タンク64を取り外すことにより、内部に貯留された加工済み溶液が回収される。
中間部62の外側面には、排気吸引口62bを形成する分岐管62aが突設されており、分岐管62aには接続管65が円環継手69eを介して接続され、さらに接続管65には円環継手69eを介して排気ユニット66が接続されている。排気ユニット66を作動させることにより、噴射チャンバ60の内部が排気吸引口62bを介して吸引され、吸引されたミスト分などを含む排気は排気ダクト66aから排出される。排気ユニット66の下部にはドレンタンク67が円環継手69fを介して接続されており、ドレンタンク67は中間部62から吸引された排気中のドレン成分を貯留する。
図12に示すように、中間部62の内面側の上端部の近傍には内面フランジ62cが内側に突設されており、内面フランジ62cには流路規制筒72の上端に設けられた頂板72aが結合されている。流路規制筒72は、径違いの段付き部によって下方が窄められた筒形状の管状部材であり、流路規制筒72を中間部62の内部にセットすることにより、頂板72aによって仕切られた上部には閉囲された噴射空間61bが形成される。噴射空間61b内には、ノズルホルダ68に装着されたジェットノズル7のノズル本体部7aが上方から挿入されている。
頂板72aの上面には、衝突部73が設けられている。衝突部73は上部に円錐部73bを有する衝突部材73aを備えており、円錐部73bは円錐面状の衝突面73cを有している。衝突部材73aを頂板72aの上面に装着した状態では、円錐部73bはノズル本体部7aの噴射口7bの直下に位置する。この状態で、ジェットノズル7を作動させることにより、噴射口7bから下方に噴射された微小液滴33aは衝突面73cに対して円錐部73bの軸方向(図16に示す円錐部73bの軸線t参照)から衝突する。これにより微小液滴33a中の固体粒子が衝突による衝撃力の物理エネルギによって微粒化される。
ここで衝突部材73aは頂板72aに対して着脱自在となっており、微粒化の対象となる固体粒子の種類や所望の微粒化の度合いに応じて、円錐部73bにおける頂角2θ(図16参照)の大きさが異なる複数の衝突部材73aから選択されたものが頂板72aに装着される。また衝突面73cは,SiCなど耐摩耗性にとむ硬質材料によって被覆されており、微小液滴33aの衝突によって容易に浸食されにくいようになっている。
流路規制筒72の内部は気液流動空間72cとなっており、ノズル取付部61aと気液流動空間72cとは、頂板72aに設けられた吸引開口72bを介して連通している。衝突部材73aに衝突することによりさらに微細になったミスト状の液粒子を含む微小液滴33aは、図11に示す排気ユニット66を駆動することによる吸引力によって、吸引開口72bを介して気液流動空間72c内へ吸引され、下方に流動する。
噴射チャンバ60には、実施の形態1において示すラバールノズル形式のジェットノズル7のみならず、図13,図14にそれぞれ示す2流体ノズル形式のジェットノズル7A、7Bが液滴加速手段として用いられる。これらのジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bは、微粒化処理の対象となる物質の微粒化難度や所望の微粒化の態様に応じて選択的に装着される。ここで微粒化難度とは厳密に定義された概念ではないが、対象とする物質の結合力の大小、すなわち物理的な手段によって同程度の粒径まで破砕または解砕するのに必要な物理力の大きさを意味するものであると考えればよい。この微粒化難度は、物質の硬度などの特性値とは必ずしも対応関係にないため、現状においては個別に微粒化処理を実際に試行した結果から判断する。
ジェットノズル7は図3に示すものと同様であり、実施の形態1において説明したように、内部流路孔31の流れ方向に駆動エアを供給する気体供給手段とともに液滴加速手段を構成する。すなわちジェットノズル7は、内部流路孔31を絞って設けられた円形の断面のスロート部31cの下流側に、流れ方向に拡径するダイバージェント部31bが形成されたノズル本体部7aと、ノズル本体部7aに設けられ流れ方向と同方向に供給された溶液を吐出する溶液供給管32とを有し、溶液供給管32の吐出口がノズル本体部の内壁側面から離れたスロート部31cの近傍に配置された構成となっている。
そしてこのような構成により、前述のように、溶液供給管32から吐出された溶液が微細化した微小液滴33aを音速の1倍以上の高速に加速して噴射口7bから噴射する機能を有している。このため、ジェットノズル7は、微粒化対象の固体粒子の種類によって定められる微粒化難度および所望の微粒化の態様に応じて規定される所定速度が音速以上である場合に用いられる。すなわち微粒化処理の対象となる固体粒子が結合力が強い固体種であって微粒化難度そのものが高い場合や、求められる微粒化の度合いが高く、例えば数十nm程度のナノ粒子のレベルにまで微粒化加工することが求められるような場合には、ジェットノズル7が選択的に用いられる。
これに対し、ジェットノズル7A、7Bは上述の所定速度が音速未満の速度域である場合に選択されるものである。まずジェットノズル7Aの構造を説明する。図13において、ジェットノズル7Aは、実施の形態1に示すジェットノズル7において、スロート部31cから下流側の流路断面形状を変更したものとなっている。すなわち、スロート部31cから上流側の構成はジェットノズル7と同様であり、エア供給配管70が接続された導入部31aには圧縮気体である駆動エア(矢印a)が導入され、溶液供給配管71から溶液供給管32を介して供給された溶液33は、スロート部31cの上流側に配置された溶液供給管32の吐出口から吐出される。
導入部31aに導入された駆動エアは、流路径が流れ方向に沿って絞られたコンバージェント部31bによって加速され(矢印b)、流路径が最も小さく絞られたスロート部31cにて最も流速が大きくなって加速部31f内に噴出する(矢印c)。ここでは、スロート部31cにおける流速が音速未満となるように、導入部31aに供給される駆動エアの圧力が設定される。このとき、溶液供給管32から駆動エアの気体流の中に吐出された溶液33は微細化して微小液滴33aとなり、駆動エアとともに加速されて加速部31f内に流動する(矢印d)。加速部31fはスロート部31cの直後から噴射口7bまで同一の流路径で設けられていることから、ジェットノズル7におけるダイバージェント部31dや加速冷却部31eのように流路形状によって流れを加速する機能を有しておらず、流れの周囲をガイドして整流する機能に止まる。したがって、ジェットノズル7Aにおいては微小液滴33aは、音速未満の速度で噴射口7bから噴射される。
次にジェットノズル7Bの構造を説明する。図14において、ジェットノズル7Bは円筒形状のノズル本体部7aを主体としており、ノズル本体部7aには長手方向に貫通して内部流路孔74が形成されている。内部流路孔74の上流側は、エア供給配管70が接続されて駆動エア(矢印f)が導入される導入部74aとなっている。導入部74aの下流側には、内部流路孔74の流路径が流れ方向に沿って絞られたコンバージェント部74bが設けられており、流路径が最も小さく絞られたスロート部74cの下流には、スロート部74cの直後から噴射口7bまで同一の流路径で加速部74dが設けられている。内部流路孔74内には上流側から溶液供給配管71と同様に溶液(矢印e)を供給する溶液供給管75が挿通しており、溶液供給管75の先端部75aはスロート部74cまで到達している。先端部75aに設けられた吐出口はスロート部74cに配置されている。
導入部74aに導入された駆動エアは、コンバージェント部74bによって加速され(矢印g)、スロート部74cにて最も流速が大きくなって加速部74d内に噴出する(矢印h)。ここでもジェットノズル7Aと同様に、スロート部74cにおける流速が音速未満となるように、導入部74aに供給される駆動エアの圧力が設定される。このとき、先端部75aの吐出口から駆動エアの気体流の中に吐出された溶液33は微細化して微小液滴33aとなり、駆動エアとともに加速されて加速部74d内に噴射され(矢印i)、次いで加速部74d内を下流側に流動する(矢印j)。加速部74dはスロート部74cの直後から噴射口7bまで同一の流路径で設けられていることから、ジェットノズル7におけるダイバージェント部31dや加速冷却部31eのように流路形状によって流れを加速する機能を有しておらず、流れの周囲をガイドして整流する機能に止まる。したがって、ジェットノズル7Bにおいてもジェットノズル7Aと同様に、微小液滴33aは音速未満の速度で噴射口7bから噴射される。
すなわち内部流路孔31,74の流れ方向に駆動エアを供給する気体供給手段とともに液滴加速手段を構成するジェットノズル7A、7Bは、内部流路孔31,74を絞って設けられた円形の断面のスロート部31c、74cの下流側に直管形状の加速部31f、74dが接続されたノズル本体部7aと、ノズル本体部7aに設けられ流れ方向と同方向に供給された溶液を吐出する溶液供給管32,75とを有し、溶液供給管32,75の吐出口が内部流路孔31,74においてスロート部31cの上流側もしくはスロート部74cに配置された構成となっている。
このような構成により、前述のように、溶液供給管32から吐出された溶液33が微細化した微小液滴33aを、音速未満の速度に加速して噴射口7bから噴射する機能を有している。このため、ジェットノズル7A、7Bは、前述の所定速度が音速未満である場合に用いられる。すなわち微粒化処理の対象となる固体粒子の微粒化難度そのものが低い場合や、所望の微粒化の度合いが低く、比較的大きな粒径までの微粒化で許容される場合には、ジェットノズル7Aもしくはジェットノズル7Bが選択的に用いられる。
このような構成のジェットノズル7A,7Bを採用することにより、微粒化装置に用いられる液滴加速手段のコストを低減することができる。すなわち既に述べたように、微粒化対象としてゲル状物質などを含めた多様な物質種を考えた場合には、微粒化処理に際して必要とされる衝撃力も広い範囲でばらつく。したがって、液滴加速手段としては必ずしも超音速域まで加速が可能なラバールノズル形式のジェットノズルに限定する必要はなく、製作コストが安価な一般的な2流体ノズルを用いることができる。ラバールノズルにおいては、流路断面形状を数式によって表される理論形状通りに精密に加工する必要があるため、製作コストが高くなることが避けがたい。
これに対し、一般的な2流体のズルの場合には、駆動エアの流路を絞ることによって発生した気体流中に固体粒子を含む溶液を供給することにより生じた微小液滴を噴射することが可能な構成であって、微粒化対象となる物質の微粒化難度や所望の微粒化程度に応じた所定速度まで液滴を加速することが可能であれば、どのような形式の2流体ノズルであってもよい。例えば、ジェットノズル7Aにおいては、ラバールノズルであるジェットノズル7におけるコンバージェント部31b、スロート部31cと同様の流路断面形状とした例を示しているが、必要とされる所定速度によっては、ジェットノズル7Bにおけるコンバージェント部74b、スロート部74cのように簡略化した流路断面形状を採用してもよい。
上述のような構成のジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bを微粒化処理に応用することにより、これらの構成が有する特性に基づき、以下のような特記すべき効果を得ることができる。すなわち、ジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bにおいては、内部流路孔31、内部流路孔74を下流側へ流れる駆動エアは、スロート部31c、スロート部74cから下流側へ流動する際において断熱膨張により温度が低下するという特性を有している。これにより、微小液滴33aは冷却された状態で噴射口7bから噴射される。特にジェットノズル7においては、下流側にさらにダイバージェント部31d、加速冷却部31eが設けられていることから、この冷却効果が著しい。
このような冷却効果は、本発明において目的とする微粒化を効率よく且つ高品質で行うに際して、極めて重要な役割を有する。すなわち従来技術において同様の目的で使用される微粒化方法、例えばボールミルやビーズミルによる微粒化など、ボールやビーズなどの媒体との物理接触によって微粒化を行う方法においては、摩擦による発熱が避けられない。そして発熱によって微粒化対象の物質の温度が上昇したまま微粒化処理を継続すると、一旦微粒化された粒子が再び凝集するメカニカルアロイングの現象が生じて、適正な微粒化目的が達成できない。このため従来の微粒化処理方法においては、発熱による過度の温度上昇を生じない範囲で微粒化を行うことを余儀なくされるため、処理効率が極めて限定されるという問題点があった。この発熱による温度上昇に起因する処理効率の限界は、高圧に加圧されたジェット噴流中の固体粒子相互を衝突させる構成の微粒化方法においても共通するものであった。
これに対し、本発明に示すように、ジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bを用いる微粒化処理においては、上述のように微粒化対象を含む微小液滴33aは常に冷却された状態で衝突部に衝突する。したがって、衝突によって微粒化された固体粒子が衝突によるエネルギー変換で発熱しても、この発熱によって正常な微粒化過程が阻害されるような温度、すなわち微細粒子が再凝集を生じるような温度まで微細粒子の温度が上昇することがない。しかもこのような冷却効果は、外部の冷却装置など何ら別途構成要件を追加することなく、ジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bが本来有する特性によって実現されることから、微粒化装置の構成の簡略化、設備費用の削減を実現しながら、微粒化処理を高効率で行うことが可能となっている。上述の効果については、実施の形態1に示すジェットノズル7の応用例においても同様である。
次に図15を参照して、配管系の構成を説明する。図15において、ジェットノズル7(ジェットノズル7A,7B)は、エア供給配管70によってオンオフ弁81を介してエア供給源80に接続されている。エア供給配管70にはオンオフ弁81とエア供給源80の間において圧力スイッチ82がつなぎ込まれている。エア供給源80はオイルミストや水分を含まないクリーンエアを供給する機能を有しており、オンオフ弁81を制御部(図示省略)によって制御することにより、エア供給源80からジェットノズル7への駆動エアの供給がオンオフされる。圧力スイッチ82は、エア供給源80から供給される駆動エアの圧力を検出する。エア供給源80およびエア供給配管70は、ジェットノズル7、ジェットノズル7A、7Bの内部流路孔の流れ方向に、圧縮気体である駆動エアを供給する気体供給手段を構成する。
さらにエア供給源80は加圧配管83を介して1次溶液タンク90と接続されている。加圧配管83にはエア供給源80側からレギュレータ85、マスフローコントローラ86、オンオフ弁87、チェック弁88が介設されており、加圧配管83にはレギュレータ85とエア供給源80の間において圧力スイッチ84がつなぎ込まれている。オンオフ弁87を制御部(図示省略)によって制御することにより、エア供給源80から1次溶液タンク90への加圧用のエアの供給がオンオフされる。レギュレータ85は1次溶液タンク90へ供給されるエアの圧力を設定された規定圧に調整する。マスフローコントローラ86は、エア供給源80から1次溶液タンク90に供給されるエアの流量を一定値に制御する。チェック弁88は加圧配管83においてエアが1次溶液タンク90側からエア供給源80側へ逆流するのを防止する。圧力スイッチ84は、エア供給源80から1次溶液タンク90へ供給される駆動エアの圧力を検出する。
1次溶液タンク90は、内部に微粒化対象の固体粒子を含有した未加工の1次溶液である溶液33を貯留可能な密閉容器である。加圧配管83は、1次溶液タンク90内において溶液33の液面より上部に形成される加圧空間90aに連通している。1次溶液タンク90は、内部に貯留された溶液33の液面よりも低い位置に開口する押し込み管92を備えており、押し込み管92はジェットノズル7に導設された溶液供給配管71とオンオフ弁89を介して接続されている。オンオフ弁87を開にしてエア供給源80から加圧空間90a内に加圧用のエアを供給することにより、1次溶液タンク90内の溶液33は圧力により下端部の開口部から押し込み管92内へ押し込まれさらに押し込み管92内を圧送される。そしてオンオフ弁89を開にすることにより、溶液33はジェットノズル7に供給される。このとき、レギュレータ85、マスフローコントローラ86の設定により、溶液33を規定の圧力・流量でジェットノズル7の内部流路孔31、内部流路孔74内の気体流中に供給することができる。したがって、エア供給源80、加圧配管83、1次溶液タンク90は、固体粒子を含む溶液を気体流中に供給する溶液供給手段を構成する。
次に図16を参照して、微粒化装置で行われる微粒化処理、すなわち固体粒子を含む溶液を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突させることにより、固体粒子を微粒化する微粒化方法について説明する。ジェットノズル7(もしくはジェットノズル7A、7B)にそれぞれエア供給配管70、溶液供給配管71を介して駆動エア、固体粒子を含む溶液が供給される。まず駆動エアが供給されることにより、内部流路孔31、内部流路孔74内において駆動エアが加速されて下流側へ流れる気体流が発生する。
次いでこの気体流中に固体粒子を含む溶液33を溶液供給管32、溶液供給管75から吐出させて供給することにより、溶液33が気体流によって液滴化した流動状態の微小液滴33aを、固体粒子の種類に応じて設定される所定速度に加速して噴射口7bから下方に噴射する。噴射された微小液滴33aは衝突部73の衝突部材73aに衝突し、これにより微小液滴33a内の固体粒子42は微細粒子42aに微粒化される。
すなわち、上述の微粒化方法は、固体粒子を含む溶液33を駆動エアが加速された気体流中に供給する溶液供給工程と、気体流によって加速された流動状態の微小液滴33aを、固体粒子の種類に応じて設定される所定速度に加速して噴射する液滴加速工程と、微小液滴33aを衝突部73に衝突させる液滴衝突工程とを含む形態となっている。
ラバールノズル形式のジェットノズル7を用いる場合には、上記液滴加速工程は、内部流路孔31を絞って設けられた円形の断面のスロート部31cの下流側に流れ方向に拡径するダイバージェント部31dが形成された構成のノズル本体部7aにおいて内部流路孔31の流れ方向に圧縮空気を供給し、スロート部31cにおいて圧縮気体の流速を音速とする第1工程と、ノズル本体部7aに設けられ吐出口が内部流路孔31においてノズル本体部7aの内側側面から離れたスロート部31cの近傍に配置された溶液供給管32の吐出口からスロート部31cにおける圧縮気体の流れと同方向に溶液33を吐出する第2工程と、ダイバージェント部31dにおける圧縮気体の流れによって音速以上の所定速度に加速された微小液滴33aをノズル本体部7aから噴射する第3工程とを含む形態となっている。
また、2流体ノズル形式のジェットノズル7A、7Bを用いる場合には、上記液滴加速工程は、内部流路孔31.74を絞って設けられた円形の断面のスロート部31c、74cの下流側に直管形状の加速部31f、74dが接続された構成のノズル本体部7aにおいて、内部流路孔31,74の流れ方向に圧縮気体を供給して気体流を発生させる第1工程と、ノズル本体部7aに設けられ内部流路孔31,74においてスロート部31cの上流側もしくはスロート部74cに吐出口が配置された溶液供給管32,75から溶液を吐出する第2工程と、内部流路孔31,74に発生した気体流によって音速未満の所定速度に加速された流動状態の微小液滴33aをノズル本体部7aから噴射する第3工程とを含む形態となっている。
ここで図16を参照して、上記微粒化処理における微粒化装置の噴射チャンバ60内での微小液滴33aの衝突部73への衝突時の挙動や、加工済み溶液の回収、排気ミストの流動について説明する。図16に示すように、噴射口7bから噴射された微小液滴33aは、直下に位置する衝突部材73aの円錐部73bに対して軸線tの方向から衝突する(矢印n)。そしてこの衝突による衝撃力により、微小液滴33aに含まれる固体粒子42は微細粒子42aに破砕もしくは解砕される。衝突による微粒化のメカニズムについては、実施の形態1において図7にて示す過程と同様である。
このとき、微小液滴33aは衝突面73cに対して円錐部73bの頂角2θの半分の角度θと等しい入射角で入射するため、微小液滴33aが衝突面73cの法線方向に対して及ぼす衝撃力Fは、頂角2θの大きさによって異なる。すなわち、頂角2θが180度で衝突面73cが完全な平面形状の場合、すなわち微小液滴33aが衝突面73cに対して法線方向から入射する場合に衝撃力Fが最大となる。そして頂角2θが180度から減少して衝突面73cの傾斜度合いが大きくなるのに伴って、微小液滴33aはより小さな入射角で衝突面73cに入射することになり、衝撃力Fは減少する。
また固体面に微小液滴33aを衝突させて微粒化を行う場合の微粒化効率は、一般に固体面に微小液滴33aが瞬間的に付着して形成される液膜の厚みによって大きく影響されることが発明者の実験による知見として得られている。すなわちある粒径の固体粒子を微粒化するに際しては、適正な液膜の厚みが存在し、液膜の厚みが対象とする固体粒子の粒径に対して過大である場合には、微粒化の効率が低下する。
本実施の形態2に示すような円錐部73bを有する衝突部材73aを用いる場合には、頂角2θを小さくすればするほど衝突面73cに入射する微小液滴33aは衝突面73cに沿って速やかに流下し、したがってジェットノズル7から同一流量で微小液滴33aを噴射した場合に衝突面73cに形成される液膜の厚みは小さくなる。これに対し頂角2θを180度に近づけて衝突面73cをより平面に近い形状にすると、衝突面73cに入射する微小液滴33aが衝突面73cに滞留する割合が多くなり、衝突面73cに形成される液膜の厚みは増大する。
衝突部材73aの頂角2θに関する上述の2つの定性事項により、衝突部材73aの選定に際しては、微粒化対象の物質の微粒化難度および所望の微粒化の度合いに応じた衝撃力Fを与え、且つこの衝撃力Fを微粒化に有効に利用するための適正な液膜厚を確保することができるような頂角2θのものが望ましい。このような微粒化対象に応じた適正な頂角2θは、実際に微粒化を試行する条件出し作業の結果として決定される。頂角2θを異ならせた複数の衝突部材73aは、衝突面73cにおいて微小液滴33aが付着することにより形成される液膜の厚みを調整する液膜厚調整手段に相当する。
このようにして衝突面73cへの衝突による微粒化が行われた後の微小液滴33aは、一部が衝突によってよりさらに微細化された液粒子や水蒸気となったミスト成分に変化し、このような微細な液粒子とミスト成分を含むミスト混合液滴33bとなる。そしてミスト混合液滴33bは、噴射された気体流の面方向の速度成分により衝突面73cに沿って流下し、噴射空間61b内を下方に流動する。このとき、排気ユニット66が作動状態にあって排気吸引口62bを介して吸引力が噴射チャンバ60の内部に作用しており、気液流動空間72c内は下方に吸引されている。このため、ノズル取付部61a内のミスト混合液滴33bは、吸引開口72bを介して気液流動空間72c内に吸引される(矢印o)。
そして気液流動空間72c内に吸引されたミスト混合液滴33bは、気液流動空間72c内を下方に流下し(矢印p)、流路規制筒72の下端部に到達する。このような噴射チャンバ60内におけるミスト混合液滴33bの流動の過程において、ミスト混合液滴33bに含まれる液粒子やミスト成分が相互に衝突して凝集してより大きな処理済液滴33cが形成される。これらの処理済液滴33cは重力によって落下して(矢印r)、排気孔63cを介して溶液回収タンク64内に貯留され、処理済溶液33dとして回収される。回収された処理済溶液33dは、必要に応じて1次溶液タンク90に戻され、再度の微粒化処理の対象となる。
またミスト混合液滴33bにおいて凝集せずに浮遊状態で残留するミスト成分は、排気ユニット66による吸引力により排気吸引口62bに向かって上方に吸引され(矢印q)、さらに排気吸引口62bから排気ユニット66へ吸引される(矢印s)。そして排気ユニット66に吸引されたミスト成分は、排気ダクト66a(図11参照)から排気される。
このようなミスト混合液滴33bの流動過程において、ミスト混合液滴33bは流路規制筒72の内部を流動して下部63内に流出し、さらにここで上方に吸引されるという複雑な流動を行う。これにより、ミスト混合液滴33bは下部63内部において乱流状態で流動しながら同一領域内にある時間滞留することとなり、液滴やミスト成分が相互に衝突してより大きな液滴に成長する確率が高くなる。したがって、衝突部73における衝突により分散してミスト化した微小液滴33aを、高い凝集効率で凝集させて液体として回収することができる。
すなわち上記構成の噴射チャンバ60において、流路規制筒72および下部63は、衝突によりさらに微細化して分散した微細化処理後のミスト混合液滴33bを凝集させて回収するための液滴凝集部として機能している。液滴凝集部としては、本実施の形態2に示す流路規制筒72および下部63の構成には限定されず、ミスト混合液滴33bの流れの状態を複雑にして、ミスト混合液滴33bを乱流状態で流動しながら同一領域内にある時間滞留する状態を生じさせるような流路構成であればよい。
なお噴射チャンバ60に替えて、図17に示すような噴射チャンバ100を用いてもよい。噴射チャンバ100は、実施の形態1における噴射チャンバ6と同様に、回転する円板形状の衝突部材を衝突部として用いた例を示している。ここでは、垂直姿勢で配置され水平な回転軸廻りに回転する円板形状の衝突部材に対して、微小液滴を水平方向から噴射するようにしている。
図17において、処理容器101は内部に噴射空間101aが設けられた密閉型の容器であり、上部および下部にはそれぞれ噴射空間101aと連通する排気口101b、排液口101cが設けられている。排気口101bは排気ユニット(図示省略)に接続された排気ダクト102と連通しており、排液口101cは排液ダクト103の排液孔103aと連通している。排液ダクト103から外方に延出して設けられたフランジ部103bには、図12におけるものと同様の溶液回収タンク64が円環継手69dを介して接続されている。
処理容器101の外側面101dには、ノズルホルダ104が結合されており、ノズルホルダ104にはジェットノズル7(ジェットノズル7A、7B)がノズル本体部7aを水平姿勢で挿入して装着されている。ジェットノズル7には、エア供給配管70、溶液供給配管71によって気体流を発生させるための駆動用のエアおよび固体粒子を含む溶液が供給される。外側面101dと対向する外側面101eには、軸受け部108が結合されており、軸受け部108には円板形状の回転衝突板105を回転させる回転軸106が、ベアリング107を介して軸止されている。回転軸106は、駆動モータを備えた回転駆動部109によって回転駆動される。
回転衝突板105の衝突面105aは、SiCなどの硬質で耐摩耗性に富む材質で被覆されている。ここに示す例においては、ジェットノズル7によって加速された微小液滴33aが衝突する衝突部は、平面状の衝突面105aを有し回転軸106の軸線廻りに回転する円板形状の衝突部材である回転衝突板105を備えた構成となっている。ジェットノズル7の噴射口7bから噴射された微小液滴33aが衝突面105aに衝突することにより(矢印u)、微小液滴33a中の固体粒子42がさらに粒径が小さい微細粒子42aに微粒化される(図7参照)。微粒化が行われた後の微小液滴33aは、衝突によってより微細化された液粒子や水蒸気となったミスト成分に変化し、このような微細な液粒子とミスト成分を含むミスト混合液滴33bとなる。
ここで噴射口7bの噴射中心は、回転衝突板105の中心から所定の寸法dだけオフセットした配置となっており、回転衝突板105を回転させながら、噴射口7bから微小液滴を回転衝突板105に対して噴射すると、ミスト混合液滴33bは回転衝突板105の回転による遠心力によって噴射空間101aを外周方向へ振り飛ばされる。この外周方向において、処理容器101には内周面が排液口101cに向かって傾斜した斜面部101fが設けられており、外周方向へ振り飛ばされたミスト混合液滴33bは、斜面部101fに上方から吹き付けられる。
このようなミスト混合液滴33bの流動の過程において、ミスト混合液滴33bに含まれる液粒子やミスト成分が相互に衝突して凝集してより大きな処理済液滴33cが形成される。これらの処理済液滴33cは斜面部101fに沿って重力によって落下して(矢印v)、排液孔103bを介して溶液回収タンク64内に貯留される。またミスト混合液滴33bにおいて凝集せずに浮遊状態で残留するミスト成分は、排気ダクト102に接続された排気ユニットによる吸引力により排気口101bに向かって上方に吸引され(矢印w)、さらに排気ダクト102から排気される。このように、垂直姿勢で配置された回転衝突板105に対して水平方向からジェットノズル7によって微小液滴33aを衝突させる構成とすることにより、実施の形態1に示す噴射チャンバ6と比較して、処理済液滴33cを効率よく回収することが可能となっている。
なお噴射チャンバ100においても、衝突面105aに微小液滴33aが付着することにより形成される液膜の厚みは、微粒化処理の効率に大きな影響を及ぼす。この場合には、ジェットノズル7から噴射されて衝突面105aに付着する微小液滴33aに作用する遠心力は、回転衝突板105の回転数に依存する。すなわち回転衝突板105の回転数によって遠心力を制御することにより、衝突面105aに付着する微小液滴33aの割合を増減して、衝突面105aに形成される液膜の厚みを調整することができる。したがってこの場合には、回転衝突板105を回転させる回転駆動部109および回転駆動部109を制御する制御手段が、衝突面105aにおいて微小液滴33aが付着することにより形成される液膜の厚みを調整する液膜厚調整手段に相当する。
上記説明したように、本実施の形態1および2に示す微粒化装置および微粒化方法は、固体粒子を含む溶液を気体流によって加速して所定速度の微小液滴とし、この微小液滴を衝突面に衝突させて微粒化する構成を採用している。これにより同様目的の微粒化処理に従来用いられていた先行技術が有していた以下のような課題を解消することができる。
すなわち、高圧噴射されたスラリを相互に衝突させる湿式粉砕法においては、高圧の噴射装置を必要とすることから、装置自体の高価な所期設備費用とともに、消耗部品として高価なダイヤモンドノズルを必要とすることからランニングコストが高く、コスト面での負荷が高いという課題が解決されないままであった。また乾式粉砕法においては、粉砕対象の固体粒子を直接気体流によって加速することに起因して、固体粒子が微粒化するほど安定して加速することが困難となり、到達可能な微粒化レベルには限界があった。
これに対し、本発明に示す微粒化装置および微粒化方法においては、圧縮気体をジェットのズルに供給することによって発生させた気体流によって固体粒子を含む溶液を気体流によって加速して所定速度の微小液滴とし、この微小液滴を衝突面に衝突させて微粒化するという極めて簡便な構成を採用していることから、設備費用を含めてコスト面の負荷は低い。さらに対象となる固体粒子を微小液滴を媒体として気体流によって加速する構成を用いていることから、気体流から微小液滴に伝達された運動エネルギを効率よく微粒化のための衝撃力として利用することができる。したがって、固体粒子に効率よく衝撃力を作用させて微粒化することができ、安価な設備費用で固体粒子を微粒化することが可能となっている。