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JP4433164B2 - 誘導加熱用金属とそのクラッド材および製造方法 - Google Patents

誘導加熱用金属とそのクラッド材および製造方法 Download PDF

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Description

本発明は誘導加熱による電磁加熱装置や電磁調理器などの発熱体として用いられるFe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金およびその強磁性合金を用いた金属クラッド材に関する。
電磁誘導加熱による加熱器または調理器は、被加熱物を入れた鍋や薬缶などの容器、あるいは被加熱物をおいたホットプレートのような板を、ガス、木炭、石炭、石油などの燃料、あるいは電熱などの発熱物で加熱するのではなく、容器底や容器壁、板、あるいは部材そのものを発熱させる。これは、電磁誘導加熱コイルを容器底や加熱壁あるいは発熱部材などの近くに置き、交番電流を通じることによりコイルに生じた磁力線で誘導電流を発生させ、誘導電流のジュール熱で発熱させるもので、容器、板あるいは部材そのものが発熱するため、燃焼に伴う排ガスや残滓は発生せず、しかも電気入力の調整により急速加熱や温度調節が容易という特徴から、近年広く利用されるようになってきている。
この電磁誘導加熱装置または調理器においては、通常、過熱防止や自動温度調節には、発熱するものの近くに配置したサーミスタやバイメタルなどのセンサーにて検知した温度による信号にて、誘導加熱電力を制御している。
しかしながら、容器底など発熱体にセンサーを近接させるだけでは、置き方により距離が不特定であったり、調理器の天板やホーローなど熱不良導体が介在したりして、その温度は十分に感知できず、温度の自動調節が必ずしも十分でなく、とくに急速加熱の場合、過熱を生じやすいなどの問題が生じる。これに対し、鍋自体あるいは誘導加熱の発熱体そのものに温度制御機能を持たせた誘導加熱装置が開発されている。
たとえば、特許文献1に開示された電磁調理器用鍋の発明は、非磁性の良熱伝導性金属で構成された容器の、加熱コイルに近接対向した底などの部分に、そのキュリ−温度が調理に使用される温度近傍にある強磁性合金を接合し、一体化したものである。
一般に、電磁誘導加熱コイルにより生じた金属導体中の誘導電流の分布は、表面が最大で内部にいくにしたがって減少する。これを表皮効果というが、交番磁場の周波数が高いほど、そしてさらに強磁性合金であればその透磁率が高いほど、誘導電流の表面近くの電流密度は高くなる。また、その際の導体中に吸収される電力すなわち発熱量は、コイルや容器形状等が同じであれば、透磁率、電気抵抗および周波数の積の平方根に比例して増加する。通常、調理などの加熱に用いられる温度範囲では、これらの金属材料の電磁気特性は大きくは変化しないので、加熱コイルに加える電力量を増減して温度が調節される。
強磁性合金は透磁率が高く金属導体としては電気抵抗も高いので、誘導加熱の発熱体に効果的に活用できるが、加熱していくと磁性を喪失し透磁率がほぼ1の非磁性金属と同じになってしまう温度がある。この温度をキュリー温度といい、鉄では770℃近辺と高いが、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−クロム合金などでは、組成を調整することにより100℃を下回る温度にまで低下させることができる。このように温度が高くなると磁性を失う性質をとくに利用する合金のこと整磁合金あるいは整磁材料と呼び、電気計器の磁気回路などに利用されてきた。
この整磁合金を、キュリー温度を含む温度範囲で誘導加熱する場合、同じ入力であっても、強磁性合金である間は誘導電流が表面に集中し、その部分の電流密度が高いので発熱は大きいが、常磁性金属に変化すると誘導電流が減少し、その上、電流密度の表面集中が大きく減退して発熱量は大幅に低下する。
特許文献1は、このような整磁合金を活用した発明で、その説明には次のような例が示されている。キュリー温度がたとえば180℃の強磁性合金を鍋底に一体化成形した鍋にて油を入れ、鍋底側に近接した加熱コイルを有する電磁調理器にて常温から1200Wの出力で加熱した場合、油の温度が180℃に達すると出力は急速に250wに低下し、それ以上の温度上昇は停止する。そして油の温度が徐々に低下し175℃になると出力は再び1200Wに自動的に上昇し油温は180℃に向けて急速に上昇する。このように、鍋自体が温度制御機能を有しているので、過熱を配慮することなく急速加熱が可能であり、目的とする調理温度と発熱体となる強磁性合金のキュリー温度とを一致させれば、調理温度を精確に制御でき、さらに意図しない過剰な温度上昇を防止できる効果があるとしている。
しかしながら、キュリー温度は強磁性合金もしくは整磁合金の合金組成によって定まるので、一つの調理用鍋は一温度にしか適用できず、使用する温度が特定されている場合は有効であるが、同じ調理容器を種々の温度で使用しようとするとき、その効果は十分利用できない。
これに対し、特許文献2には、誘導加熱コイルに対向するように設けられた容器底部の発熱板に、比透磁率が温度に対して滑らかに変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金を用いた、電磁調理器用加熱調理容器の温度制御装置の発明が開示されている。この場合、加熱コイルの電流検出信号を用いて調理容器の温度相当信号を生成し、この信号と温度設定値との比較結果に応じて電磁調理器側の高周波電源装置のスイッチング素子のオン、オフをおこなわせることにより、前記加熱コイルに流す電流を制御して、温度を制御するとしている。
ここで、調理容器の温度相当信号とは、発熱体である整磁合金の温度変化に伴う比透磁率変化からもたらされるインダクタンス変化を検出するものであり、温度センサー使用のような不安定な温度計測ではなく、発熱する整磁合金の温度を検出するため、正確かつ容易に温度制御がおこなえる。しかしながら、滑らかに変化する温度依存性磁気変態特性を持つ整磁合金が発熱体として用いられていなければ、十分な任意温度制御ができない。したがって、この温度制御方法は、発熱体となる整磁合金、すなわちその組成およびその製造方法等が、明確にかつ具体的に提示されて始めて実現される技術である。
ところが、特許文献2の発明の詳細な説明には、「この加熱板は鉄(Fe)・ニッケル(Ni)・クロム(Cr)・コバルト(Co)等を混合した整磁合金であり、これらの純金属の種類や混合比率、製造方法(加熱温度や加圧しながら加熱するといった工程の内容も含む)等を変えることで、温度変化に対して比透磁率が滑らかにほぼ直線上に変化する特性を備えている」と記載されているのみで、整磁合金の化学組成やその製造方法は、具体的には明らかにされていない。
Fe−Ni−Cr−Co系の合金あるいはFe−Ni系、Fe−Ni−Co系などの合金は、組成を制御することによりキュリー温度を様々に変えることができることは知られている。通常、これら合金の比透磁率は、加熱によりキュリー温度に達するまではほぼ一定の比透磁率を維持しているが、キュリー温度に近づくと比透磁率は急激に減少し、キュリー温度に達するとその温度以上では比透磁率はほぼ1になる。しかしながら、この比透磁率の温度による変化を滑らかにする合金組成や製造方法は、必ずしも十分には知られていない。
特許第917526号明細書 特開2001−155846号公報
電磁誘導加熱装置や調理器に用いる加熱用発熱体において、加熱コイルに近接する部分に、必要とする温度に等しいキュリー温度を持つ強磁性合金もしくは整磁合金を配備すると、複雑な温度制御機構を設けることなく、加熱温度をキュリー温度にほぼ等しい温度に制御することができる。その場合、発熱体はそのキュリー温度以上に昇温することが困難になり、過熱が防止される。
しかし、上記の機構の温度調節による加熱容器は、過熱防止には極めて有効であるが、種々の温度に活用しようとしても、用いる強磁性合金のキュリー温度近傍のみでしか使用できない。このため、もし所要温度が種々異なる場合にも適用しようとすれば、その所要温度毎に一つづつの発熱体を用意しなければならない。
これに対し、比透磁率の温度による低下をなめらかに変化させることができれば、その変化特性を利用して温度を検出し、任意温度に制御することが容易にできる可能性が示されている。
本発明は、この強磁性合金の温度による比透磁率変化を、幅広くかつなめらかにさせる方法を見出し、その強磁性合金をとくにアルミニウムまたはその合金と一体化して、電磁加熱装置や調理器用に温度制御が容易でかつ過熱を防止できる発熱体あるいは発熱部材となるクラッド材と、発熱させる強磁性合金の製造方法とを提供するものである。
本発明者らは、電磁加熱装置または調理器の発熱用容器あるいは部材として、キュリー温度が所要温度近傍にある強磁性合金をその発熱体に用いれば、発熱体の電磁特性を利用した特定温度への制御、あるいは過熱防止ができることに着目し、さらにその特長を活用すべく種々検討をおこなった。ここで、強磁性合金のキュリー温度とは、その合金の温度を上げていったとき、比透磁率が低下してほぼ一定の値に到達し、それ以上はほとんど変化しなくなる温度とする。
それらの検討の中で、発熱体となる強磁性合金のキュリー温度近傍の温度による比透磁率変化を幅広くかつ滑らかにおこなわせることができれば、任意の温度への制御が容易になり、過熱の防止作用と相俟ってより安全な発熱用容器や部材になし得ることから、比透磁率の温度変化傾向におよぼす製造条件の影響を調査することにした。
一般に強磁性合金の磁気特性は、焼鈍して十分にひずみを取り去ってから測定されるのが普通である。ところが、上述の発熱体に適用しようとする強磁性合金を、冷間圧延のままで温度を変えて比透磁率を測定したところ、キュリー温度に対しかなり低い温度から比透磁率の低下が始まることが見出され、この現象を利用すれば、狭い温度幅で急激に低下する比透磁率の変化を、より広い温度範囲に拡大できると思われた。
強磁性合金の、温度変化に対するキュリー温度近傍の比透磁率変化は図1のように示される。低温から温度を上昇させつつ比透磁率を測定していくと、温度が低い間はほぼ一定の高い値を示すが、ある温度を超えると減少し始め、キュリー温度に達すると1に近い値となり、それ以上温度を高くしても変化しない。すなわち、比透磁率が低下し始める温度をTc1(℃)、それ以上低下しなくなる温度すなわちキュリー温度をTc2(℃)とすると、Tc1より低い温度でも、Tc2より高い温度でも、比透磁率は温度の変化に対ししてほぼ一定値であるが、Tc1とTc2との間の温度範囲では、温度により比透磁率が変化する。
したがって、キュリー温度Tc2が同じであってもTc1を低下させることができれば、下記(1)式で示される比透磁率が変化する温度域の幅ΔTc(℃)が拡大されることになる。 ΔTc = Tc2−Tc1 (1)
この二つの温度の差ΔTcを指標とし、圧延や熱処理の影響を調査することにした。それらの中で、とくに冷間圧延の影響を調べてみると、圧延率を高くしていけばΔTcは大きくなる傾向を示した。しかし、加工歪みを除去するために加熱した場合、圧延加工により大きくなったΔTcは、再結晶あるいは回復が進行する温度以上になると、小さくなってしまう。
電磁誘導加熱における任意温度への制御は、比透磁率が温度により変化する範囲において効果的におこなえるので、制御温度範囲を広くするにはΔTcは大きいほど好ましい。そこで、必要とする製造条件を明確にするため、ΔTcの最小限必要な好ましい大きさの目標を規定し、圧延加工や熱処理の条件範囲を選定した。このΔTcの大きさの目標値は、一つの加熱用容器や部材の汎用性から、50℃以上であることととした。
圧延などの冷間加工により、上述のTc1が変化する理由については必ずしも明らかではないが、Fe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金では、圧力を付与するとキュリー温度が低温側に移行することが知られている。十分軟化した状態の合金は、ランダムな方位の多結晶からなっているが、これに冷間圧延を施したとき、結晶粒毎に受ける歪みや応力が異なり、そのキュリー温度への影響にばらつきを生じるため、より低い温度から、比透磁率がなだらかに変化するようになったのではないかと思われる。
ΔTcが拡大され、温度変化により比透磁率がなだらかに変化し得るようになれば、その場合の強磁性合金の温度と比透磁率との関係から、加熱電流が変化するので、その電流変化に基づいてオン、オフ制御をおこなわせると、簡略な装置構成でTc1〜Tc2間の温度制御が可能になる。
このキュリー温度を低くし、さらにΔTcを拡大した強磁性合金は、誘導加熱の際、それ自身が過熱を抑止する作用を有するので、局部的に温度が上昇する加熱むらの抑制にも効果的である。しかしながら、強磁性合金は熱伝導率が悪く、それだけでは加熱むらの抑制に不十分なので、容器や部材としてとして発熱温度の均一なものとするには、熱伝導にすぐれた金属と複合一体化することが望ましい。
容器や伝熱体に用いる熱伝導にすぐれた金属としては、上述の発熱体として用いる強磁性合金の特徴を生かすため非磁性であることが好ましいが、熱伝導が良好であればとくに限定するものではない。しかし、十分な熱伝達を得るためには、強磁性合金と伝熱体になる金属とが金属的に接合されていることが望ましい。この目的には、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いるのが最適である。
冷間圧延によって拡大されたΔTcは、強磁性体金属のが加熱されて、ある温度を超えると縮小し始める。この縮小が始まる加熱温度は、調べてみると合金の加工組織の回復が始まる温度と一致しており、さらに温度が上がって再結晶まで進むと焼鈍ままの状態に戻ってしまう。これは圧延加工による歪みおよび応力の解放過程として理解される。
アルミニウムであれば、強磁性体金属の加工組織の回復が始まるよりも低い温度範囲で両者を加熱しておき、加圧圧着すると、両金属間の金属的接合を形成させることができる。たとえば圧延機を用い、強磁性合金板とアルミニウム板とを重ね、同時に圧延していわゆるクラッド板としてもよく、重ねた状態でプレスにより加圧してもよい。このような圧着後、さらに強磁性体金属の加工組織が回復しない範囲で、加熱処理すれば、より確実に金属的結合を発達させることができる。
以上のような知見および調査結果に基づき、目標をΔTcの大きさが50℃以上であることとし、それに対してさらに限界条件をあきらかにして本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
(1) キュリー温度Tc2が450℃以下のFe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金であって、温度上昇とともに比透磁率が低下し始める温度をTc1(℃)とするとき、下記(1)式で示されるΔTcが50℃以上であることを特徴とする強磁性合金。
ΔTc(℃) = Tc2−Tc1 (1)
(2) キュリー温度が450℃以下のFe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金に、50%以上の冷間加工を施すことを特徴とする上記(1)の強磁性合金の製造方法。
(3) 上記(1)の強磁性合金を第一層とし、熱伝導性にすぐれた金属を第二層としたことを特徴とする誘導加熱用二層クラッド材。
(4) 上記(1)の強磁性合金を第一層、熱伝導性にすぐれた金属を第二層、さらにその上に第三層の金属をそれぞれ用いたことを特徴とする誘導加熱用三層金属クラッド材。
(5) 第二層としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いたことを特徴とする上記(3)または(4)の誘導加熱用金属クラッド材。
本発明の強磁性合金を用い、そのクラッド材を電磁加熱装置や調理器など誘導加熱による加熱用容器あるいは部材の発熱部分に用いれば、比較的簡単な誘導加熱装置構成にて、加熱温度を広範囲な任意の目標温度に精度よく制御することができ、また、過熱を防止できるので、温度制御範囲が広くかつ安全な誘導加熱装置や調理器をより低コストにて得ることができる。
本発明の強磁性合金は、磁性のなくなるキュリー温度が450℃以下である合金に50%以上の冷間加工を施したものである。素材となる合金は、経済性からFe−Ni系合金またはFe−Ni−Cr合金とする。キュリー温度は、強磁性合金の組成により定まるので、対象とする被加熱物に要求される最高加熱温度からその組成を選定すればよい。

450℃以下とするのは、調理などをおこなう場合450℃まであれば十分と考えられるからであり、450℃を超えて温度が上がらないようにすることは、安全上必要であるからでもある。さらに、450℃を超える加熱を繰り返すと、ΔTcが次第に小さくなってしまうおそれもある。また、合金のキュリー温度の下限はとくには限定しないが、Fe−Ni系合金またはFe−Ni−Cr合金の場合、60℃程度キュリー温度にすることができる。
このような合金に50%以上の冷間加工を施したものが本発明の強磁性合金である。図2に、キュリー温度が230℃のFe−36%Niの合金(以下合金組成の%は、とくに断らない限り質量%を示すものとする)について、焼鈍後の冷間圧延率が図1に示したΔTcにおよぼす影響を調査した結果を示す。この図から、冷間圧延率が増すとともにΔTcは大きくなっており、ΔTcを目標とする50℃以上にしようとすれば、50%以上の冷間圧延が必要であることがわかる。この結果は、キュリー温度が450℃以下であれば、他の異なる組成を持つ合金においても同様であった。そこで、発熱体に用いる強磁性合金は、50%以上の冷間加工を施すものとする。
この冷間加工率は、高くすればΔTcは大きくなるので上限はとくには限定しないが、冷間圧延にて加工する場合、実用上95%を超える冷間圧延をおこなってもそれ以上のΔTcの増大はわずかであり、また冷間圧延も困難になってくるので、95%以下に留めておくのが望ましい。
電磁誘導加熱の発熱体となる上記強磁性合金は、通常、熱伝導率が悪く、加熱コイルからの距離などにより加熱むらを生じやすいので、加熱用容器として加熱温度の均一なものとするには、熱伝導にすぐれた金属と複合一体化、すなわちクラッド材とするのがよい。その場合、被加熱物に直接接する容器あるいは伝熱体等には熱伝導性にすぐれた金属を用い、その底部や壁部などの加熱コイルに近い外側に上記の強磁性合金を配置し、これらを圧着して一体化させる。
ここで、発熱体となる強磁性合金を第一層、熱伝導性にすぐれた金属を第二層と呼ぶこととし、さらに被加熱物に対し強度や耐食性の向上、あるいは加熱時の変形防止のために別の金属層をその上に接合させる場合は、これを第三層ということにする。その場合、第二層は中間層となる。この第二層の熱伝導にすぐれた金属の種類はとくに限定するものではないが、上記の強磁性合金の場合、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いるのが望ましい。
図3に、キュリー温度230℃のFe−36%Ni合金を用い、焼鈍後圧延率88%の冷間圧延を施し板厚を0.5mmとした強磁性合金板にて、種々の温度で保持時間30分として熱処理をおこなったときの、ΔTcの大きさの変化を測定した結果を示す。冷間圧延ままの状態では90℃あるΔTcは、加熱温度が450℃を超えると減少し始め、700℃以上では40℃以下の小さな値になってしまう。
クラッド材を製造する場合、加熱した二種の金属の面同士を密着させ、面に垂直に加圧し圧着する手段が採用されることが多いが、この図からわかるように、ΔTcを十分大きくしておくには、冷間加工後に加熱温度を高くするのは好ましくなく、高くても450℃までとするのがよい。アルミニウムやアルミニウム合金の場合、Feを含む合金とは450℃以下の加熱で、加圧圧着により容易に金属接合を生じさせることができる。
この複合して一体化したクラッド材は、加熱した両材料をの表面同士を突き合わせ、その面に垂直に40MPa以上の圧力を加えることにより容易に接合でき製造できる。板状の場合は圧延機を用いて接合圧延する方法が効率がよく望ましい。その場合、接合複合する各構成素材をあらかじめ250℃から450℃までの温度に加熱しておき、面をつき合わせて加圧する。圧延にて接合をおこなう場合、合計した板厚に対し圧延率が10%以上の圧延をおこなうとよい。
なお、強磁性合金の冷間加工率は50%以上であることが好ましいが、接合またはクラッドをおこなう前の素材の状態で冷間加工率が50%を下回っていても、一体化してクラッド材を作成する段階での加工をも付加することにより、合計の加工率が50%を超えるのであれば、同様にΔTcを拡大した効果を得ることができる。Fe−Ni系合金またはFe−Ni−Cr系の強磁性合金において、加工温度が回復の開始される温度である450℃以下であれば、冷間での加工と同じとしてよい。
接合時の加熱温度を250℃から450℃までとするのは、250℃未満の加熱では接合が不十分になるおそれがあり、450℃を超える加熱は、上述のΔTcの大きさが減少するばかりでなく、接合しようとする金属の表面に形成される酸化皮膜が厚くなり過ぎたり、接合面に脆い金属化合物が増加したりして、接合が阻害されるおそれがでてくるからである。
また、接合時の加圧力を40MPa以上または圧延率を10%以上とするのは、加圧が不十分な場合、接合が不十分になることがあるからである。ただし、加圧力あるいは圧延率をさらに大きくすることは、接合のそれ以上の改善はなく、接合時に形状修正や成形おこなわせる場合以外は無駄なだけであるので、上限はとくには限定しない。
強磁性合金と、アルミニウムまたはアルミニウム合金との二層のクラッド板は、被加熱物の接するアルミニウム面の強度や耐食性が要求される場合や、誘導加熱したときに二つの材料の熱膨張係数の相違から生じる熱変形が問題となる場合には、アルミニウムの上にさらに別の金属、たとえば、軟鋼、ステンレス鋼、あるいは同じ組成の強磁性合金等を配置した、三層の金属クラッド板としてもよい。
加熱して加圧あるいは圧延などにより圧着したクラッド材は、さらに加熱して接合をより強固にすることができる。その場合、圧着後冷却したものを再加熱してもよいし、十分冷却する前に所定温度に加熱した炉にて保持してもよい。その際、温度が低すぎたり保持時間が短すぎたりすると効果がなく、温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると接合面に脆い金属間化合物ができて、かえって接合強度が低下し、さらにはΔTcが小さくなるおそれがあるので、250〜450℃の範囲にて、1分から24時間の保持とするのがよい。
第一層の発熱体として、キュリー温度の異なる三種の強磁性合金を用い、第二層はA1100のアルミニウム板、またはA6061、A3003のアルミニウム合金板とし、さらには、第三層としてSUS304、SUS430J1L、SPCD、または第一層と同じ強磁性合金を用いて、圧延により圧着しクラッド板を作成した。
圧着に用いた素材は、強磁性合金については軟化焼鈍後の最終の冷間圧延率を種々変えて、最終圧延ままにて板厚が0.5mmになるようにし、第二層のアルミニウムは厚さ1.0mmの焼鈍材とした。また、第三層の金属はいずれも0.5mmの焼鈍材を用いた。これらの素材は加熱中の接合進行防止のため、それぞれ別の炉で加熱しておき、圧延直前に重ね合わせ圧延圧着させた。圧着後、一部のものはさらに接合を十分にするために加熱処理を施した。表1に、これらのクラッド材の製造に用いた素材、加熱温度、圧着のための圧延率、加熱処理等を示す。
得られたクラッド板について、断面を研磨し、拡大目視観察にて接合が良好か否かを評価し、層の厚さを測定して強磁性合金の圧延率を調査した。また、比透磁率の温度による変化を求め、Tc2(キュリー温度)およびΔTcを求めた。これらの結果を合わせて表1に示す。
Figure 0004433164
表1の結果からあきらかなように、試験番号1から6までのクラッド材は、各層間の接合状態が良好であり、ΔTcは68〜117℃と大きな値を示している。また試験番号7はキュリー温度が60℃の強磁性合金を用いたものであり、ΔTcが60℃であるので0〜60℃間の温度制御が可能である。
これに対し、試験番号8または10のクラッド材は層間の接合が不十分であったが、これは接合前の加熱不十分または圧着時の加工度不十分のためと判断される。また試験番号9または11のクラッド材は、各層の間に酸化物の混入または金属間化合物層が発生していて、接合が十分おこなわれていない。これは、圧着時または圧着後の加熱温度が高過ぎ、酸化物が過剰に発生したり、脆い金属間化合物が発達したりしたためと推定される。さらに試験番号12のクラッド材は、クラッドの接合状態は良好であったが、ΔTcの大きさが小さい。これは強磁性合金の圧延加工度が不十分であったためである。
圧延加工を受けた強磁性合金の比透磁率の、キュリー温度近傍における温度による比透磁率変化を示し、さらにΔTcを説明した図である。 強磁性合金(Fe−36%Ni)のΔTcの大きさにおよぼす冷間圧延率の影響を測定した結果を示す図である。 冷間圧延した強磁性合金(Fe−36%Ni、冷間圧延率88%)のΔTcの大きさにおよぼす熱処理温度の影響を示す図である。

Claims (5)

  1. キュリー温度Tc2が450℃以下のFe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金であって、温度上昇とともに比透磁率が低下し始める温度をTc1(℃)とするとき、下記(1)式で示されるΔTcが50℃以上であることを特徴とする強磁性合金。
    ΔTc(℃) = Tc2−Tc1 (1)
  2. キュリー温度が450℃以下のFe−Ni系あるいはFe−Ni−Cr系強磁性合金に、50%以上の冷間加工を施すことを特徴とする、請求項1に記載の強磁性合金の製造方法。
  3. 請求項1に記載の強磁性合金を第一層とし、熱伝導性にすぐれた金属を第二層としたことを特徴とする誘導加熱用二層クラッド材。
  4. 請求項1に記載の強磁性合金を第一層、熱伝導性にすぐれた金属を第二層、さらにその上に第三層の金属をそれぞれ用いたことを特徴とする誘導加熱用三層金属クラッド材。
  5. 第二層としてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の誘導加熱用金属クラッド材。
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