JP4418077B2 - 成形性に優れた鋼管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のパネル類、足廻り、メンバーなどに用いられる冷延鋼板と鋼管およびその製造方法に関するものである。鋼管の場合には、特にハイドロフォーム成形(特開平10-175027 号公報参照)の用途に好適である。本発明の冷延鋼板と鋼管は、表面処理をしないものと、防錆のために溶融亜鉛めっき、電気めっきなどの表面処理を施したものの両方を含む。亜鉛めっきとは、純亜鉛のほか、主成分が亜鉛である合金のめっきも含む。本発明による冷延鋼板および鋼管は、強度と加工性を兼ね備えており、使用に当たっては今までの鋼板より板厚を減少できること、すなわち車体の軽量化が可能となる。したがって、地球環境保全に寄与できるものと考えられる。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化ニーズに伴い、鋼板の高強度化が望まれている。高強度化することで板厚減少による軽量化や衝突時の安全性向上が可能となる。また、最近では、複雑な形状の部位について、高強度鋼の素鋼板または鋼管からハイドロフォーム法を用いて成形加工する試みが行われている。これは、自動車の軽量化や低コスト化のニーズに伴い、部品数の減少や溶接フランジ箇所の削減などを狙ったものである。このように、ハイドロフォームなどの新しい成形加工方法が実際に採用されれば、コストの削減や設計の自由度が拡大されるなどの大きなメリットが期待される。このようなハイドロフォーム成形のメリットを充分に生かすためには、これらの新しい成形法に適した材料が必要となる。例えば、第50回塑性加工連合講演大会(1999 、447 頁) にあるようにハイドロフォーム成形に及ぼすr 値の影響が示されている。これによれば、ハイドロフォーム成形時に軸力が働く場合には、rL(圧延方向のr値,以下rLとも言う)が高いことが重要であることが示されている。r値のL方向は、深絞り用の軟質冷延鋼板ではrLとrC(圧延方向RDに対して平面内90°方向のr値)に比較してrD(圧延方向RDに対して平面内45°方向のr値)の方が低い、いわゆるV型のr値の異方性を示すのに対して、MnおよびPで強化された高強度冷延鋼板では、rLがrCやrDよりも低い特殊な異方性を示すことが指摘されている(The fourth International Conference on Recrystallization and Related Phenomena, Tsukuba, JIM, (1999), p. 393. 参照)。同文献によれば、高強度冷延鋼板においても熱延条件などを厳密に制限すれば、rLをrDよりも若干高めることが可能であることが述べられているがその効果は小さく、また、製造条件も特殊であり現実的とは言えないものである。また、本発明者らは、特願平12-52574号において、rLが高い鋼管を提供する技術について出願している。しかしながら、これは温間での縮径加工によって製造されるので、製造コストが高いという問題点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、既存の高強度冷延鋼板は、rLが低いため、これを向上させることが急務である。さらに高強度冷延鋼板を電縫溶接して鋼管とし、ハイドロフォーム成形用として供する場合にも、rLを向上せしめることが必須である。本発明は、高強度鋼板が脚光を浴びる中で発生した、rLを向上させるという新しい課題を解決すべく、鋭意検討の結果、達成されたものである。
【0004】
本発明は、従来の高強度冷延鋼板では得られなかった優れたrLを有する高強度冷延鋼板及び鋼管並びにそれらを高いコストをかけることなく製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、rLの高い高強度冷延鋼板および鋼管ならびにその方法に関するものである。特に本発明による鋼管は、ハイドロフォーム成形性に優れている。本発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、C=0.010%以下、Si=0.2〜2.5%、Mn=0.4〜2.5%、Si/Mn=0.5 〜2.0 、P=0.02% 以下、S=0.015%以下、Al=0.005〜0.2%、N=0.0070% 以下、Ti=(3.4N+4C)〜0.20% を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、引張強度が320MPa以上600MPa以下、軸方向(φ方向)のr値(rφ)が1.3以上であることを特徴とする鋼管。
(2)質量%で、Nb=0.001〜0.019%を含有することを特徴とする上記(1)に記載の鋼管。
(3)質量%で、V=0.002 〜0.04% 、W=0.002 〜0.05% 、Mo=0.003〜0.25% 、Sn:0.002〜0.5%、Cu:0.003〜0.5%未満、Cr:0.005〜2.0%、Ni:0.005〜0.3%、Ca:0.0002 〜0.02% 、Mg:0.0005 〜0.02% のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の鋼管。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼管に亜鉛めっきを施したことを特徴とする鋼管。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延し、次いで圧下率が80% 以下となるように冷間圧延を施し、650 ℃以上1100℃以下の温度で焼鈍する方法によって製造された冷延鋼板を素材として、冷延鋼板の圧延方向が鋼管の管軸方向と一致するように電縫溶接又は鍛接することを特徴とする鋼管の製造方法。
(6)上記(5)記載の方法によって製造された鋼管に電気亜鉛メッキまたは溶融亜鉛メッキすることを特徴とする鋼管の製造方法。
(7)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延し、次いで圧下率が75% 以下となるように冷間圧延を施し、650 ℃以上1100℃以下の温度で焼鈍後、さらに電気亜鉛メッキ又は溶融亜鉛メッキを施す方法によって製造された冷延鋼板を素材として、冷延鋼板の圧延方向が鋼管の管軸方向と一致するように電縫溶接又は鍛接することを特徴とする鋼管の製造方法。
にある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
Cはr値を劣化させるので少ない方が良い。Cが0.01% 超となるとこれを無害化するためのTiが多量に必要となりコストアップになるばかりか、伸びなども劣化する。したがって、より好ましくは、0.0040% が上限である。下限は特に限定するものではないが、製鋼技術の観点からは、0.0005% が実質的な下限である。
【0007】
Siは本願発明において重要である。通常の高強度冷延鋼板では劣悪となるrLがSiを活用することによって飛躍的に向上するという新事実を見いだした。Siのこのような効果を発揮させるためには最低でも0.2%添加せねばならない。さらにSi安価に強度を増加させる元素でもある。その添加量は狙いとする強度レベルによっても変化するが、本発明においては後述のように基本的にはPを使わないので、320MPa以上の引張強度を得るためには、0.2%以上の添加が必須である。0.5%がより好ましい下限である。添加量が2.5%超となると延性が低下するのでこれを上限とする。また、化成処理性の低下を招くこともある。したがって2.0%がより望ましい上限である。また、溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっき密着性の低下、合金化反応の遅延による生産性の低下などの問題が生ずるので1.0% 以下とすることが好ましい。
【0008】
Mnは強度を増加させるのに有効な固溶体強化元素である。また、Mnは本質的にはrLを劣化させない元素である。すなわち、詳細な検討を行った結果、Mnは多量のPと共存することによって初めてrLを劣化させることが明らかとなった。さらにMnはMnS を形成し熱延時のSによる耳割れを抑制する。したがって、0.4%以上添加する。一方、2.5%を超えると延性が劣化したり、rLも低下するのでこれを上限とする。0.7%以上2.0%以下がさらに好ましい範囲である。
【0009】
Pは0.02% を超えて添加するとrLを顕著に低下させることが明らかとなったので、0.02% を上限とする。この理由は必ずしも明らかではないが、固溶したPが偏析し再結晶時の方位選択に影響するものと考えられる。また、Pが0.02% を超えると、鋼管を製造する際の電縫溶接や自動車部材として使用される際のスポット溶接やアーク溶接などの溶接を行った際の溶接部の強度が十分でなくなったり、溶接部の疲労強度が顕著に低下する。さらにはハイドロフォーム成形時のバーストの原因ともなる。したがって、0.01% がより好ましい上限である。
【0010】
Si/Mnは本発明において重要である。すなわち良好なrLを実現するためには、SiとMnの両方が同時にかつ適切なバランスで添加されなくてはならず、この範囲は、Si/Mn=0.5 〜2.0 である。このようにSi/Mn に最適値が存在する理由は必ずしも明らかではないが、Si量とMn量のバランスが不適切であると熱延板の結晶粒径が過度に細かくなったり逆に粗大になったりすることに起因するものと推測される。さらにSi/Mnは鋼管を製造する際の電縫溶接や自動車部材として使用される際のスポット溶接やアーク溶接などの溶接を行った際の溶接部の機械的性質に対しても重要である。すなわち、Si/Mnが不適切であると、溶接部が硬くなり過ぎたり、逆に軟化しすぎたりして溶接部の強度や疲労強度が劣化したり、ハイドロフォーム成形時のバーストの原因ともなる。
【0011】
Sは0.015%超では、熱間割れの原因となったり、加工性を劣化させるので0.015%を上限とする。好ましくは0.01% 以下とする。
Alは脱酸調製に使用するが、0.005%未満ではその効果が不十分である。一方、0.2%超になるとコストアップを招いたり、表面性状の劣化を招くので上限を0.2%とする。
【0012】
Nは多すぎるとNを固定するためのに多量のTi,Al が必要になったり、加工性が劣化したりするので0.0070% を上限値とする。
Tiはr値を高めるのに極めて有効な元素であるので積極的に添加する。その添加量は最低でもCとNを固定するのに必要な量に相当する(3.4N+4C)%を添加する必要がある。一方、0.20%超添加しても特段の効果は望めないばかりか、コストアップとなり、また表面性状や溶融亜鉛メッキ後のパウダリング性が劣化したり、延性が劣化するのこれを上限とする。rLを高めるという課題に対しては、Tiを{(3.4N+4C)+0.01}%〜0.10%がより好適な範囲である。
【0013】
NbもTiと同様にr値を高める効果を有するが、本発明のようにMnとSiを活用して高強度化する場合にはNb量を添加しないか、もしくは微量の添加に止めることが必須であることを見いだした。すなわち、Nbを添加する際には、0.001〜0.019%の範囲内とする必要がある。Nbが0.001%未満では特段の効果を奏するものではなく、またNbが0.019%を超えて添加されるとr値の平均値(rL+rC+2rD)/4はほとんど変わらないが、rLは顕著に低下することが明らかとなった。したがって、これを上限とする。0.002〜0.009%がrLを維持または向上せしめるためのさらに適正な範囲である。また、Nbは溶接部の接合強度や疲労強度を向上させる効果もある。
【0014】
Bは鋼板や鋼管の2次加工脆性を抑制したり、溶接部の接合強度や疲労強度を向上させる効果を有するので添加しても良い。この様な効果を発現させるには最低でも0.0001%の添加が必要である。一方、B量が多すぎると鋼板や鋼管の延性が劣化するばかりか、本発明で特に重要なrLをも低下させてしまう。したがって上限を0.0009%とする。0.0002〜0.0006%がrLに対してより適切な範囲である。
【0015】
これらを主成分とする鋼にV,W,Mo,Sn,Cu,Cr,Ni,Ca,Zr,Mg をV=0.002 〜0.04% 、W=0.002 〜0.05% 、Mo=0.003〜0.25% 、Sn:0.002〜0.5%、Cu:0.003〜0.5%未満、Cr:0.005〜2.0%、Ni:0.005〜0.3%、Ca:0.0002 〜0.02% 、Zr:0.002〜0.04% 、Mg:0.0005 〜0.02% の範囲で含有しても構わない。V、W、Zr、Moにはr値を高める効果がある反面、添加しすぎると逆にr値、特にrLを損なうので上記のような範囲とする。Sn、Cu、Cr、Niは、高強度化に有効で、上記の範囲であればr値を格段に損なうことはないので、上記の範囲で添加しても良い。Caは、Ca硫化物を形成するため、MnSが減少し、延性を向上させたり、脱酸元素としても有効である反面、多すぎると表面性状を劣化させたり、コストアップとなるので0.0002〜0.02%の範囲とする。Mgは脱酸元素として有効で、かつ凝固組織を改善し加工性を向上せしめる反面、多すぎるとコストアップになるので0.0005〜0.02% の範囲とする。
【0016】
本発明によって得られる冷延鋼板または鋼管の引張強度は、320MPa以上、600MPa以下である。引張強度が320MPa未満の場合には、特段の方策を採らなくとも良好なrLを得られるため、本発明の対象外である。また、引張強度が600MPaを超えると、延性が極端に低下し、またrLも低下するのでこれを上限とする。特に引張強度が380〜550MPaの範囲ではrLを向上させることが非常に困難となってくるので本発明の有用性が極めて顕著となる。引張強度の評価は、冷延鋼板の場合にはJIS5号試験片を用いて評価すればよいし、鋼管の場合には、鋼管からJIS12号弧状試験片を切り出して評価しても良いし、管のままJIS11号試験片で評価しても良い。さらに、本発明によって得られる冷延鋼板のrLおよび鋼管のrφは1.3以上であり、1.5以上であればハイドロフォーム成形に対してより一層好適である。
【0017】
rL及びrφの上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、これらが高すぎると他の方向のr値が極端に低くなるので、rLは5.0以下、rφも5.0以下とすることが好ましい。
次に、製造条件の限定理由について述べる。
熱間圧延に供するスラブは特に限定するものではない。すなわち、連続鋳造スラブや薄スラブキャスターなどで製造したものであればよい。また、鋳造後に直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。熱間圧延における粗圧延後は、シートバーを接合して連続的に熱間仕上げ圧延を行っても良い。
【0018】
熱延の加熱温度は特に限定するものではないが、熱延時の変形抵抗を小さくするために900 ℃以上とし、一方、表面スケールの過度の生成を抑制するために1350℃以下とすることが好ましい。
熱延の仕上げ温度は特に限定するものではない。すなわち、通常のAr3 変態温度以上のγ相単相域で行ってもよいし、Ar3 点未満のα+γ2相域またはα単相域で行っても良い。いずれの場合にも潤滑を施しても構わない。特にα+γ2相域やα単相域で熱間圧延する場合には、潤滑を行うと製品のrLが高くなる。
【0019】
熱延後の冷却は、限定するものではないが、熱延の仕上げをAr3 点以上で行った場合には、熱延仕上温度から550℃までの平均冷却速度を50℃/s未満とすることが製品のrLを高めるのに望ましい。巻取り温度は特に限定しないが、650 〜800 ℃とすることが望ましい。これによってTiC の形成、成長が促され良好なrLが確保される。
【0020】
冷間圧延は、本発明において重要である。冷間圧延率が80%超となるとrLが顕著に低下するのでこれを上限とする。下限は特に限定しないが、rLを1.3以上とするには圧下率30%程度の冷間圧延を行うことが好ましい。40〜75%がより望ましい範囲である。
連続焼鈍あるいはライン内焼鈍方式の連続溶融亜鉛めっき設備の焼鈍温度は、650〜1100℃の範囲で再結晶分率が90%以上となる温度を選択する。焼鈍温度が650℃未満では再結晶が十分に進行しないため、延性が劣悪となるばかりではなく、rLも1.3には到底及ばない。焼鈍温度が1100℃を超えると生産性を損ないコストアップとなるのでこれを上限とする。また、焼鈍温度は通常のα単相域のほかα+γ2相域でも構わない。さらにMnが1%以上添加されている場合にはγ単相域で焼鈍しても良好なr値が確保されるのでγ単相域の焼鈍でも構わない。焼鈍は上述の連続焼鈍の他、箱焼鈍でも構わない。
【0021】
焼鈍後の冷却条件は特に限定するものではない。ただし焼鈍温度がα+γ2相域またはγ単相域の場合には、冷却速度を50℃/s未満とした方が延性を確保しやすい。
冷却後の過時効処理は集合組織の形成には影響しないので、必要に応じて行えば良い。
【0022】
電気亜鉛めっきを施す場合は電気メッキセル内でZn,Zn−Ni,Zn−Fe層などを電析させる。
連続溶融亜鉛めっきを施す場合には、冷却後めっき浴に浸漬し、更に亜鉛めっきをFeと合金化する必要があれば、460 〜600 ℃の温度で1秒以上熱処理を行う。460 ℃未満では、合金化が十分に進行せず、600 ℃超では、合金化が進行し過ぎてプレス加工により自動車用部材とする際にパウダダリングなどの問題が発生するので合金化温度を前記の範囲とする。合金化時間は特に限定しないが、生産効率の観点から60秒以内とすることが好ましい。
【0023】
焼鈍後は形状矯正や耐時効性の確保のためにスキンパス圧延を施してもよい。このように製造された冷延鋼板に溶接を施して鋼管としても良い。鋼管製造にあたっては、電縫溶接、ないし鍛接溶接が適しているが、その他にTIG、MIG、レーザー溶接、UOや鍛接等の溶接・造管手法等を用いることが出来る。これらの溶接鋼管製造に於いて溶接熱影響部は必要とする特性に応じて局部的な固溶化熱処理を単独あるいは複合して、場合によっては複数回繰り返し行っても良く、本発明の効果をさらに高める。この熱処理は溶接部と溶接熱影響部のみに付加することが目的であって、製造時にオンラインであるいはオフラインで施行できる。また、縮径におけるAc3 点以下の加熱は電気炉、誘導加熱を用いることが出来、ストレッチリデューサー等を用いて縮径できる。また、縮径時に潤滑を施すことは成形性向上の点で望ましい。また、造管や縮径による加工硬化で伸びやn値が鋼板製造前の冷延鋼板に比較して劣化した場合には、α域での歪み取り焼鈍やAc1 点以上での熱処理を適宜行っても良い。
【0024】
鋼管には必要に応じて電気亜鉛メッキや溶融亜鉛メッキを施しても良い。
本発明によって得られる冷延鋼板は高強度でありながら、rLが1.3以上と高くプレス成形性に優れる。また、鋼管もrφが高いので例えばハイドロフォーム成形には好適である。
次に本発明を実施例にて説明する。
【0025】
【実施例】
<実施例1>
表1に示す組成を有する鋼を溶製し、スラブ加熱温度1250℃、仕上げ温度Ar3 点以上、巻取り温度700 ℃で熱間圧延し、6.9mm 厚の鋼帯とした。酸洗後、約68% の圧下率の冷間圧延を施し2.2mm 厚の冷延板とし、ついで連続焼鈍設備にて10℃/sで加熱し、種々の温度で60秒の焼鈍後、焼鈍温度から550℃までの平均冷却速度を15℃/sで冷却した。得られた冷延鋼板からJIS5号引張試験片を採取しr値(10%または15% 引張) を測定した。また引張強度、降伏強度、全伸びもJIS5号引張試験片を用いて評価した。
【0026】
結果を表2に示す。表2より明らかなとおり、本発明鋼は良好なrLを示すが、本発明の範囲外の比較鋼はrLが1.3未満となった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
<実施例2>
表1の鋼A,I,Kを用い、表3のように冷間圧延率を種々変化させた。焼鈍条件は全て830℃で50秒保持することによって行い、その際の加熱冷却速度は実施例1に従った。なお、Aには溶融亜鉛メッキを,Iには電気Zn−Niメッキを,Kには電気Zn−Fe系メッキを施した。これらの亜鉛メッキ冷延鋼板よりJIS5号引張試験片を採取し、r値を測定した。表3より明らかなように、本発明の範囲内の冷間圧延率の場合、高いrLが得られるのに対して、本発明の範囲外の条件で冷延を行うと、rLが劣化することが分かる。
【0030】
【表3】
【0031】
<実施例3>
実施例1で作製した2.2mm厚の冷延鋼板を外径が50〜100mmとなるように電縫溶接を用いて造管した。その後800℃にて歪みを除去するための焼鈍を行った。ハイドロフォーム成形は、軸押し量1mm、100bar/mmの条件で行い、バーストに至るまで行った。表4に各鋼の電縫溶接鋼管の機械的性質およびハイドロフォーム成形におけるバーストまでの拡管率(= バースト時点の最大径/元管の径)を示す。
【0032】
【表4】
【0033】
【発明の効果】
本発明は、高強度冷延鋼板の問題点であったL方向のr値を向上せしめる技術を提供するものである。本発明は高強度冷延鋼板のみならず鋼管にも適用でき、ハイドロフォーム用の鋼管としても適している。
Claims (7)
- 質量%で、C=0.010%以下、Si=0.2〜2.5%、Mn=0.4〜2.5%、Si/Mn=0.5 〜2.0 、P=0.02% 以下、 S=0.015% 以下、Al=0.005〜0.2%、N=0.0070%以下、Ti=(3.4N+4C)〜0.20% を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、引張強度が320MPa以上600MPa以下、軸方向(φ方向)のr値(rφ)が1.3以上であることを特徴とする鋼管。
- 質量%で、Nb=0.001〜0.019%を含有することを特徴とする請求項1記載の鋼管。
- 質量%で、V=0.002 〜0.04% 、W=0.002 〜0.05% 、Mo=0.003〜0.25% 、Sn:0.002〜0.5%、Cu:0.003〜0.5%未満、Cr:0.005〜2.0%、Ni:0.005〜0.3%、Ca:0.0002 〜0.02% 、Mg:0.0005 〜0.02% のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管に亜鉛めっきを施したことを特徴とする鋼管。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延し、次いで圧下率が80% 以下となるように冷間圧延を施し、650℃以上1100℃以下の温度で焼鈍する方法によって製造された冷延鋼板を素材として、冷延鋼板の圧延方向が鋼管の管軸方向と一致するように電縫溶接又は鍛接することを特徴とする鋼管の製造方法。
- 請求項5記載の方法によって製造された鋼管に電気亜鉛メッキまたは溶融亜鉛メッキすることを特徴とする鋼管の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを熱間圧延し、次いで圧下率が75% 以下となるように冷間圧延を施し、650 ℃以上1100℃以下の温度で焼鈍後、さらに電気亜鉛メッキ又は溶融亜鉛メッキを施す方法によって製造された冷延鋼板を素材として、冷延鋼板の圧延方向が鋼管の管軸方向と一致するように電縫溶接又は鍛接することを特徴とする鋼管の製造方法。
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