JP4356120B2 - 高純度ジアリールカーボネート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度ジアリールカーボネート及びその製造方法に関する。詳しくは、蒸留により芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を特定値以下としたジアリールカーボネート及びその製造方法に関する。
本発明によるジアリールカーボネートは溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネート用原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐衝撃性、透明性等に優れたエンジニアリングプラスチックスとして、多くの分野に幅広く用いられている。この芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを反応させる界面重合法が一般的である。しかしながら、この方法では、塩化メチレン等のハロゲン系の溶媒を大量に使用するため、環境上の問題がある。
一方、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートを溶融状態で重合させる溶融エステル交換法によれば、前述の問題点は解決できるが、この方法に用いるジアリールカーボネートは、十分に精製されていなければ、重合活性が低下したり、生成した芳香族ポリカーボネートが着色するという問題がある。
【0003】
ジアリールカーボネートの製造方法としては、種々の製造法が知られている。例えば、第四級アンモニウム塩触媒の存在下で芳香族モノヒドロキシ化合物をホスゲン化する方法、芳香族モノヒドロキシ化合物のアルカリ金属水溶液とホスゲン又はアリールクロロフォーメートとを有機溶媒の存在下に反応させる方法、芳香族モノヒドロキシ化合物とホスゲンを塩基性触媒の存在下に反応させる方法、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物とのエステル交換反応による方法等である。
【0004】
一方、ジアリールカーボネート中の不純物及びその精製方法についても、多くの研究がなされている。例えば、特開昭61−172852号公報によれば、錫化合物を触媒としてジアルキルカーボネートとフェノールのエステル交換反応により得られたジフェニルカーボネート中には、ジフェニルカーボネートとほぼ同程度の沸点を持つ不純物が混入し、この不純物が最終目的物の着色を起こすことが記載されている。
また、特開平4−100824号公報には、着色のない芳香族ポリカーボネートを得ることを目的として、塩素含有量が0.05ppm以下、キサントンが10ppm以下のジアリールカーボネートを用いる方法が記載されている。
また、特開平8−59815号公報には、着色のない芳香族ポリカーボネートの製造に際して、ジアルキルカーボネートからエステル交換反応により得られたジフェニルカーボネートを使用するに当り、o−メトキシ安息香酸フェニル及びキサントンを実質上含有しないジフェニルカーボネートを用いる方法が記載されている。
【0005】
また、特開平8−325209号公報には、不純物としてサリチル酸フェニルを0.12重量%含んだジフェニルカーボネートは、通常の触媒濃度ではビスフェノールAとのエステル交換反応が起こらず、芳香族ポリカーボネートの製造には不適当であることが記載されている。
また、特開平8−198816号公報には、ジアルキルカーボネートとフェノールのエステル交換反応により得られたジフェニルカーボネートを、微量の塩基性物質の存在下で蒸留精製することにより酸性の重合阻害物質を除き、重合活性が高く、且つ重合した際に着色のない芳香族ポリカーボネートが得られるジフェニルカーボネートの精製方法が記載されている。
【0006】
また、特開平7−138208号公報には、溶融ジアリールカーボネートを水で洗浄し、次いで蒸留することによりジアリールカーボネートから無機及び有機塩化物、金属イオン、鉄成分及び着色体のような汚染物質を除去する精製法が記載されている。実施例としては、溶融ジフェニルカーボネートを水で三回洗浄し、溶融ジフェニルカーボネートのみを蒸留器に移送し、一定の真空条件下で分別蒸留を行い、塔頂蒸気の温度に応じて軽質溜分、中間溜分及び生成物ジフェニルカーボネート溜分を採取するものである。前記公報の方法によれば、軽質溜分及び中間溜分として、水、フェノール及び未確認物質が除去されているが、フェノール濃度に関する問題点については記載がなく、その結果生成物であるジフェニルカーボネート中のフェノール(同公報第2表においてOOHと表現されている)濃度は0.06±0.01重量%程度である。
上記の如く、ジアリールカーボネートの精製方法は数多く研究されており、キサントンやサリチル酸フェニル等の高沸点不純物(常圧での沸点300℃以上)を除く方法と、フェニルクロロフォーメート等の加水分解性塩素含有物質や無機塩化物及び金属成分を除く方法に大別することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一方、溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを重合する際の触媒については、生成する芳香族ポリカーボネート中への残存量を低減し、芳香族ポリカーボネートの品質を向上させる上から、極力、触媒添加量を少なくすることが要求されている。この点からは、従来のジアリールカーボネートの精製方法では未だ不十分と言わざるを得ず、更なる重合活性向上のために、高純度で重合阻害物質を含まないジアリールカーボネートが得られる製造方法が求められていた。
本発明は、溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネートの製造用原料として、高純度で、重合阻害物質を含まず、重合活性の高いジアリールカーボネート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる事情に鑑みジアリールカーボネート中の重合阻害物質について検討を行った。
芳香族ポリカーボネートを重合する際に、重合を阻害するジアリールカーボネート中の不純物としては、フェニルクロロフォーメート等の加水分解性塩素含有物質が知られており、塩素が重合触媒を被毒するものと考えられている。我々の研究では、塩酸等の水に容易に抽出される塩素が最も触媒被毒作用が大きく、ジアリールカーボネート中の許容量は30ppb以下である。更に検討を進めたところ、ジフェニルカーボネートの場合に、水に容易に抽出される塩素量が同じ10ppbであっても、重合活性に差のあるケースが生じた。
このため、前記の公知の不純物や塩素以外の別の重合阻害物質の存在について更に検討したところ、この重合阻害物質の沸点はジアリールカーボネートの原料として使用する芳香族モノヒドロキシ化合物の沸点と同程度であり、重合活性が蒸留によって変化する芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量と相関があること、また、一方で芳香族モノヒドロキシ化合物自体は重合活性に影響を及ぼさないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、
1.芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する粗ジアリールカーボネートを蒸留して塔底より精製ジアリールカーボネートを得るに当たり、精製ジアリールカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を100ppm以下とし、且つ下記測定法で測定される塩素含有量が、30ppb以下とすることを特徴とするジアリールカーボネートの製造方法
2.芳香族モノヒドロキシ化合物とカーボネート原料とを反応させて粗ジアリールカーボネートを得た後、これを蒸留して塔底より精製ジアリールカーボネートを得るに当たり、精製ジアリールカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を100ppm以下とし、且つ下記測定法で測定される塩素含有量が、30ppb以下とすることを特徴とするジアリールカーボネートの製造方法、
にある。
塩素測定法:ジアリールカーボネート5gをトルエン10mlに加え、60℃で溶解後、超純水10mlを加え、室温(20〜30℃)で10分間撹拌した後、水相中の塩素をイオンクロマトグラフで分析する。
【0010】
なお、重合活性に影響を及ぼさない物質を蒸留によって除去することによって重合活性が向上するというのは、驚くべき知見である。
なお、前記公報に記載の不純物は、いずれもジアリールカーボネートよりも高沸点であるので、蒸留によりこれらとジアリールカーボネートを分離しても、ジアリールカーボネートよりも低沸点のフェノール量に変化はない。また、これらの公報には、ジアリールカーボネートよりも低沸点の化合物の存在を示唆するものはなく、重合活性に影響がない芳香族モノヒドロキシ化合物の存在が推定されるだけである。
【0011】
【作用】
溶融エステル交換法による芳香族ポリカーボネートの製造において、蒸留により芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を100ppm以下、好ましくは50ppm以下としたジアリールカーボネートを使用することにより、従来法のジアリールカーボネートを使用する場合に比べて、重合触媒添加量を低減することができるので、生成した芳香族ポリカーボネート中に残存する重合触媒量が低減し、従来品より優れた色調及び物性の芳香族ポリカーボネートが得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の原料として使用するジアリールカーボネートの製造方法としては、特に制限はなく、ホスゲン法又はエステル交換法によるジアリールカーボネートを蒸留し、芳香族モノヒドロキシ化合物を重合阻害物質と共に留出させることにより重合活性の高いジアリールカーボネートを得ることができる。
【0013】
ホスゲン法:
ホスゲン法により、本発明の高純度ジアリールカーボネートを得る一例を、触媒として芳香族複素環式含窒素塩基性化合物を使用する場合を例にとり、図1を用いて説明する。
芳香族モノヒドロキシ化合物(1)と芳香族複素環式含窒素塩基性化合物又はその塩(2)の混合物を反応器(4)内に充填し、これを120〜190℃に昇温し、溶融させ、十分な撹拌を行いながら同温度でガス状のホスゲン(3)を混合物中に導入することにより反応を行う。
【0014】
ホスゲン導入量としては、芳香族モノヒドロキシ化合物1.0モルに対して1.0モル以下が好ましく、0.4〜0.5モルが更に好ましい。化学量論量は0.5モルであるが、ホスゲンの導入量を化学量論量以下に抑制することにより、未反応の芳香族モノヒドロキシ化合物が必然的に残存し、反応中間体であるアリールクロロフォーメートと芳香族モノヒドロキシ化合物のジアリールカーボネート生成反応が促進されて、工業用グレードの着色のないポリカーボネート製造時に悪影響を及ぼすアリールクロロフォーメートを殆んど含まない反応混合物を得ることができる。その際、必要により、ホスゲン導入後に窒素ガス(5)を反応混合物中に吹き込んで、反応によって生成した塩酸(6)を系外へ除去することにより、アリールクロロフォーメートと芳香族モノヒドロキシ化合物の反応速度を更に向上することができる。
【0015】
反応終了後の混合物中には、ジアリールカーボネート、未反応芳香族モノヒドロキシ化合物、微量不純物及び触媒である芳香族複素環式含窒素塩基性化合物の塩酸塩が含まれており、塩素の含有量は、触媒の使用量に応じて約300〜60,000ppmとなる。
塩素の除去は、反応器(4)より取り出した反応混合物(7)を、反応混合物の融点以上の温度でアルカリ水溶液(8)と接触させて中和し、この中和液を分離槽(9)で有機相と水相に分離し、有機相を抜き出して有機相の融点以上の温度で温水(10)と接触させた後、再び、これを分離槽(11)で有機相と水相に分離することにより行う。分離槽(11)で分離された水相は、アルカリ水溶液(8)の調製に再利用される。
塩基性触媒と未反応芳香族モノヒドロキシ化合物を容易に効率良く回収するため、水相と分離した有機相を蒸留塔(15)に導き、そこで蒸留によって、遊離型の塩基性触媒(12)及び未反応芳香族モノヒドロキシ化合物(13)とジアリールカーボネート(14)に分離する。分離されたジアリールカーボネートは、高沸点の不純物を分離するため、再度、蒸留塔(15)にて蒸留し留出液として回収する。
【0016】
蒸留条件について、連続真空蒸留装置を例として説明する。
充填物として金網又はシートによる市販規則充填物を使用し、上段が理論段数1〜20段、下段が理論段数1〜20段を有する蒸留塔の上下間に原料液を連続供給する。真空度は2〜40Torr、リボイラー温度は130〜230℃、還流比は0.01〜10で、連続運転を行う。
塩基性触媒と未反応芳香族モノヒドロキシ化合物を原料有機相である粗ジアリールカーボネートから分離するための蒸留では、好ましくは、真空度は10〜20Torr、リボイラー温度は160〜190℃、還流比は0.3〜2で連続運転を行う。
塩基性触媒と芳香族モノヒドロキシ化合物を除いたジアリールカーボネートを、高沸点の不純物と分離するための蒸留では、好ましくは、真空度は7〜15Torr、リボイラー温度は170〜190℃、還流比は0.1〜2で連続運転を行う。
本発明に用いる蒸留は、連続式でも、バッチ式(回分式)でも行うことができる。
なお、前記条件にて蒸留を行うことにより、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量が通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、且つ塩素含有量が通常30ppb以下のジアリールカーボネートを得ることができる。
【0017】
また、芳香族モノヒドロキシ化合物としては、芳香環に直接ヒドロキシ基が結合しているものであり、フェノール、クレゾールやブチルフェノール等のアルキルフェノール類、アリールフェノール類、ハロゲン化フェノール類及びヘテロ原子を介してアルキル又はアリール基の結合したフェノール類が使用できる。
ホスゲンとしては、塩化メチレンや四塩化炭素等の不純物を含有しない純粋のものが好ましい。芳香族モノヒドロキシ化合物1.0モルに対し、ホスゲンは、1.0モル以下、好ましくは0.4〜0.5モル使用される。
【0018】
触媒として芳香族複素環式含窒素塩基性化合物を使用する場合、芳香族複素環式含窒素塩基性化合物としては、窒素原子が芳香族の五員環又は六員環中に存在しており、且つ、反応条件下にホスゲン又は炭酸エステルと強固な結合を生じやすい官能基(例えば、アミノ基又はヒドロキシ基)を有していない塩基性窒素化合物であり、環には、窒素原子の他に酸素、硫黄等の他のヘテロ原子を有していても良い。
かかる触媒の具体例としては、ピリジン、キノリン、ピコリン、イミダゾール類、ベンズイミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類及びベンゾトリアゾール類である。
【0019】
芳香族複素環式含窒素塩基性化合物触媒は、反応混合物中で直ちに相当する塩酸塩に変化する。この塩酸塩は遊離型の塩基性触媒と解離平衡の状態にあるため、遊離型の塩基性触媒の代わりに、塩基性触媒の塩、例えば、塩酸塩や硫酸塩等の無機酸塩、蟻酸塩や酢酸塩等の有機酸塩を使用することができる。
これらの触媒は、芳香族モノヒドロキシ化合物1.0モルに対して、0.001〜0.20モルの量で使用することが好ましく、0.01〜0.10モルの使用が更に好ましい。
アルカリとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びバリウムの水酸化物、炭酸及びリン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩が使用できる。
【0020】
エステル交換法:
エステル交換法の反応例としては、アルミニウム系触媒の存在下、ジメチルカーボネートとフェノールを90℃で8時間反応させる方法や、錫系や鉛系のエステル交換触媒の存在下、ジアルキルカーボネートと芳香族モノヒドロキシ化合物を50〜300℃の範囲で、反応蒸留塔内で連続して反応する方法等がある。
【0021】
カーボネート原料:
カーボネート原料としては、ホスゲン、アリールクロロフォーメート及びジアルキルカーボネートを使用することができる。アリールクロロフォーメートとしては、前記芳香族モノヒドロキシ化合物のクロロフォーメートが使用できる。ジアルキルカーボネートのアルキル基とは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示しており、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。以上の中で、特に好ましく用いられるのは、ホスゲン、フェニルクロロフォーメート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
オイル循環方式の外部加熱装置に接続されたジャケット付きガラス製反応容器(内容積が1リットル、実液700mlの位置にオーバーフロー管を設置)を三個連続で接続した。第2と3の反応容器には、生成した塩酸ガスを系外へ除くためのコンデンサー付き排気管を接続した。
予めピリジンを5モル%添加して撹拌しておいた溶融フェノールを、約700ml/hr(フェノール716g/hr、ピリジン30g/hrに相当)で第1反応容器へ連続供給しながら、150℃へ昇温した。十分に撹拌を行いながら、供給されるフェノールの0.48モル比のホスゲン(361g/hr)を第1反応容器へ連続供給した。
第1反応容器から流出した反応混合物は、オーバーフロー管を介して第2反応器へ供給し、第2反応器から流出した反応混合物は同様に第3反応器へ供給した。第3反応器から流出した反応混合物は、ポリプロピレン製の受器に抜き出した。第3反応器には、窒素ガスの吹き込み管を設置し、反応混合物中へ70Nリットル/hrの窒素ガスを連続供給した。
組成が十分に安定した後に抜き出した反応混合物(組成:ジフェニルカーボネート89重量%、フェノール6重量%、ピリジン塩酸塩5重量%、フェニルクロロフォーメート未検出)1kgを、オイル循環方式の外部加熱装置に接続されたジャケット付きガラス製反応容器に入れ、85℃へ昇温した。85℃に加温しておいて濃度が5重量%の水酸化ナトリウム水溶液372gを添加して5分間撹拌後、30分間静置してから水相と有機相を別々に抜き出した。水酸化ナトリウム水溶液添加後のpHは9であった。
抜き出した有機相を、再度、オイル循環方式の外部加熱装置に接続されたジャケット付きガラス製反応容器内に入れ、85℃へ昇温した。85℃に加温しておいた脱塩水300gを添加して5分間撹拌後、5分間静置してから水相と有機相を別々に抜き出した。
【0023】
住友/スルザーラボパッキング(住友重機工業製)15個を充填した真空蒸留塔にて、分離した有機相を蒸留精製した。詳細には、真空度10〜20Torr、リボイラー温度約180℃、還流比1の蒸留条件にて、遊離型のピリジンとフェノールを留去した後、真空度10Torr、リボイラー温度約180℃、還流比0.5の蒸留条件にて、遊離型のピリジンとフェニルクロロフォーメートを全く含まない(0ppm)精製ジフェニルカーボネート750gを得た。このジフェニルカーボネート中のフェノール含有量は38ppmであった。
このジフェニルカーボネート5gをトルエン10mlに加え、60℃で溶解後、超純水(Clを含有しないイオン交換水)10mlを加え、23℃の恒温室でマグネチックスターラを用い1000rpmで10分間撹拌した後、水相中の塩素をイオンクロマトグラフで分析したところ、10ppbであった。
【0024】
応用例1
ビスフェノールA(新日鉄化学製)182.6g(0.800モル)、実施例1で得たジフェニルカーボネート188.5g(0.880モル)、及びエステル交換触媒として0.18重量%炭酸セシウム水溶液50μl(0.35μモル/ビスフェノールAモル)を内容積500mlの撹拌機及び留出装置付きのガラスフラスコに入れ、反応容器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下210℃で内容物を溶解した。内容物が完全に溶解した後、210℃、常圧で、1時間この状態を保持した。
次いで、反応器内の圧力を徐々に100Torrにまで下げてフェノールを留出させ、この状態で1時間保持した。この間に留出した留出物の量を初期重合速度の目安として、表1に初期留出量として示した。
その後、重合温度を240℃に昇温し、反応器内の圧力を徐々に15Torrに減圧し、1時間重合を進めた後、更に270℃に昇温し、反応器内の圧力を0.5Torrまで下げ1時間重合を継続した。この後、反応器内の圧力を窒素により復圧して生成ポリマー約200gを回収し、粘度平均分子量(Mv)を求めた。結果を表1に示す。
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、塩化メチレン中、20℃での極限粘度(η)を測定し、次式により求めた。
η=1.23×10-4×Mv0.83
実施例1で得たジフェニルカーボネートは重合活性が高く、十分な分子量の芳香族ポリカーボネートを合成することができた。
【0025】
比較例1
実施例1において、有機相中の遊離型のピリジンとフェノールを蒸留により除去する際の真空度を50Torrとする以外は同様に操作を行い、フェノール含有量が329ppm、実施例1に記載した塩素測定法による塩素含有量が10ppbであるジフェニルカーボネートを得た。
このジフェニルカーボネートを用いて、応用例1と同様にしてビスフェノールAと縮重合操作を行って、芳香族ポリカーボネートの合成を行った。結果を表1に示す。
比較例1で得たジフェニルカーボネートは、重合活性が低いために、十分な分子量の芳香族ポリカーボネートを得ることができなかった。
【0026】
実施例2
比較例1で得た、フェノール含有量が329ppmであるジフェニルカーボネート中のフェノールを、真空度10Torr、缶出液温度180℃条件下の減圧蒸留により留出除去し、缶出液としてフェノール含有量6ppmのジフェニルカーボネートを得た。
このジフェニルカーボネートを用いて、応用例1と同様にしてビスフェノールAと縮重合操作を行って、芳香族ポリカーボネートの合成を行った。結果を表1に示す。
実施例2で得たジフェニルカーボネートは重合活性が高く、十分な分子量の芳香族ポリカーボネートを合成することができた。
【0027】
【表1】
* ジフェニルカーボネート5gをトルエン10mlに加え、60℃で溶解後、超純水(塩素を含有しないイオン交換水)10mlを加え、23℃の恒温室でマグネチックスターラを用い1000rpmで10分間撹拌した後、水相中の塩素をイオンクロマトグラフで分析した。
** 液体クロマトで分析した。
【0028】
【発明の効果】
本発明の実施により得られる高純度のジアリールカーボネートは、これと芳香族ジヒドロキシ化合物とを溶融エステル交換法により反応させて、芳香族ポリカーボネートを製造する際の重合活性が極めて高く、重合触媒の添加量を低減することができるため、従来より優れた色調及び物性の芳香族ポリカーボネートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のジアリールカーボネートの製造方法の一態様を示すフローシート図。
【符号の説明】
1 芳香族モノヒドロキシ化合物
2 その塩
3 ホスゲン
4 反応器
5 窒素ガス
6 塩酸
7 反応混合物
8 アルカリ水溶液
9 分離槽
10 温水
11 分離槽
12 塩基性触媒
13 芳香族モノヒドロキシ化合物
14 ジアリールカーボネート
15 蒸留塔
Claims (2)
- 芳香族モノヒドロキシ化合物を含有する粗ジアリールカーボネートを蒸留して塔底より精製ジアリールカーボネートを得るに当たり、精製ジアリールカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を100ppm以下とし、且つ下記測定法で測定される塩素含有量が、30ppb以下とすることを特徴とするジアリールカーボネートの製造方法。
塩素測定法:ジアリールカーボネート5gをトルエン10mlに加え、60℃で溶解後、超純水10mlを加え、室温(20〜30℃)で10分間撹拌した後、水相中の塩素をイオンクロマトグラフで分析する。 - 芳香族モノヒドロキシ化合物とカーボネート原料とを反応させて粗ジアリールカーボネートを得た後、これを蒸留して塔底より精製ジアリールカーボネートを得るに当たり、精製ジアリールカーボネート中の芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量を100ppm以下とし、且つ下記測定法で測定される塩素含有量が、30ppb以下とすることを特徴とするジアリールカーボネートの製造方法。
塩素測定法:ジアリールカーボネート5gをトルエン10mlに加え、60℃で溶解後、超純水10mlを加え、室温(20〜30℃)で10分間撹拌した後、水相中の塩素をイオンクロマトグラフで分析する。
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