JP4350968B2 - 減圧浸炭用鋼及び減圧浸炭部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間鍛造後に1000℃以上の高温であり、かつ減圧された雰囲気下で浸炭処理される場合において、浸炭処理後の結晶粒異常成長(混粒の発生)を抑制するための、減圧浸炭処理をする前の減圧浸炭用鋼、及び減圧浸炭部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、建設車両、建設機器等に使用される歯車やシャフト等の動力伝達に使用される鋼部品には、浸炭処理により表面に硬化層を形成する肌焼鋼が多用される。これは、前記部品には優れた耐摩耗性と高靭性を同時に要求されるため、表面は浸炭処理により硬い組織として耐摩耗性を確保し、内部は低Cのままとして高い靭性をもたせるためである。
【0003】
最近、これらの部品の高強度化と共に大幅な製造コスト低減が大きな課題になっている。部品の製造コストは、材料自体のコストと浸炭等の熱処理コストに大きく分けることができるが、前者については、特に高価な成分元素が多量に添加されていない肌焼鋼の場合、大きなコスト低減は困難であり、後者の熱処理コストの削減方法の研究が盛んに検討されている。
【0004】
その中でも、最近検討が進められている方法は高温浸炭処理である。現在肌焼鋼の浸炭処理は、その大部分がガス浸炭処理法により行われており、所定の硬化深さを得るために、4〜20時間程度もの長時間の処理が実施されている。その結果、生産性の面でも問題になるとともに、多大なエネルギーを消費するため、改善が強く要望されていた。高温浸炭処理は、浸炭温度を高く設定して反応を促進させることにより、短時間でより多くの炭素原子を侵入及び拡散させて処理時間の短縮を図る方法で、時間短縮に最も効果的な方法として古くから知られている。
【0005】
また、最近では減圧された炉内にエチレン等の炭化水素ガスを導入することによる真空(大気圧より低いという意味で使用)浸炭法(以下、減圧浸炭法と記載)が適用されることが多くなってきた。減圧浸炭法は、通常のガス浸炭とは異なりキャリアガスを必要としないので、キャリアガス製造に必要なエネルギーを節約できるとともに、ガス浸炭に比べ同一温度での処理でも時間を短縮化することができ、かつ浸炭異常層の原因となる粒界酸化を防止できるという優れた特徴を有している。そして、前記した処理温度の高温度化と組み合わせて実施することによって大幅な処理時間短縮が可能となるため、大きく期待されている技術である。
【0006】
しかしながら、高い浸炭温度での処理は、処理時間の短縮には効果的な方法であるが、一方で大きな問題が生じる。すなわち、浸炭処理後にオーステナイト粒が粗大化したり混粒が生じることである。浸炭処理後においてこのようなオーステナイト粒の粗大化や混粒が生じると、強度が低下したり、熱処理歪のバラツキが生じる。通常、浸炭処理後は研磨等の必要最小限の機械加工を施すだけであるのが普通であり、このような歪のバラツキは製品寸法不良の原因となり、問題となる。そのため、実際には浸炭温度を高めて処理時間の短縮を進めることが十分にできていないのが現状である。
【0007】
このような浸炭処理時におきる結晶粒粗大化と混粒化現象はかなり以前から知られており、様々な対策が検討され、新しい技術が提案されており、多数の特許出願がされている。
【0008】
その中でも最も良く知られている方法は、AlNを微細分散させてピン止め効果により粗大化を防止する方法であり、例えば、特許文献1、2に示される鋼が提案されている。
【0009】
また、AlNのピン止め効果よりもより高温での結晶粒の安定化を図るため、Nbを添加して粗大化防止を図るという提案もされている。例えば、特許文献3、4に示される鋼が提案されている。
【0010】
しかしながら、AlNやNb(C、N)を析出させることは、確かに結晶粒粗大化防止に効果を示すことが確認されているが、単純なAl、N、Nbの添加量の調整だけでは、十分な効果が得られないことが判明し、AlNやNb炭窒化物をよりピン止め効果の大きい状態に析出させた状態とするための熱処理を行って、粗大化防止を図るという提案もされている。例えば、特許文献5〜7に示される熱処理方法が提案されている。この3件の文献に記載された内容は、対象とする鋼成分に差異はあるが、全て浸炭処理前に600℃〜A1変態点の温度域に加熱してAlN、Nb(C、N)の析出状態を浸炭処理時に粗大化しにくい状態に変化させることを特徴とするものである。
【0011】
また、特許文献8、9には、圧延、熱間鍛造時の加熱及び仕上温度を適切に調整し、800〜500℃の間を1℃/秒以下の速度で冷却することによって、Nb(C、N)を多量に微細分散するとともに、AlNの析出量を抑制し、粗大化を抑制する技術について記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特開昭56−75551号公報
【特許文献2】
特開昭59−123714号公報
【特許文献3】
特開昭49−125220号公報
【特許文献4】
特開平6−299241号公報
【特許文献5】
特開昭58−16022号公報
【特許文献6】
特開昭62−205229号公報
【特許文献7】
特開平10−121128号公報
【特許文献8】
再公表特許99/05333号公報
【特許文献9】
特開2001−303174号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した今までに提案された方法には、次の問題がある。
即ち、特許文献1、2に記載されているAlNによるピン止め効果は、980℃未満の浸炭処理ではある程度の効果を得ることができるものの980℃以上の浸炭温度になると微細分散させたAlNのかなりの割合が固溶してしまいピン止め効果による結晶粒粗大化防止効果が十分に得られなくなる。従って、本発明で狙いとしている1000℃以上の高温での浸炭処理においては、その効果は非常に小さいものとなり、粗大化を完全に防止することができない。
【0014】
また、AlNに比べ高温での結晶粒安定化効果を期待してNbを添加したことを特徴とする特許文献3、4に記載の発明は、添加量についてしか検討されておらず、どのような状態に析出させた場合に大きな粗大化防止効果が得られるかについての検討がほとんどされていない。本発明者等が検討した結果によると、熱間鍛造材を浸炭処理する場合、析出状態を最適に調整しないと混粒の発生を防止することが難しいことが判明した。特にAlNの析出状態に注意する必要があるが、特許文献3、4には、その点について全く記載されていない。
【0015】
また、浸炭処理前の熱処理によって、混粒発生を防止することを特徴とする特許文献5〜7の発明についても以下の問題がある。すなわち、特許文献5は、Nbを含有しない鋼を対象とした発明であり、特許文献6もNbについて全く記載がなく、浸炭処理する前のAlN、Nb(C、N)の最適な析出状態について全く検討されていない。また、特許文献7は、Nb炭窒化物の析出状態については、かなり詳細に検討されているが、同時に存在しているAlNの影響について考慮されていない。また、熱間鍛造後にNb炭窒化物を析出させ、その後の熱処理により凝集させることが特徴となっているが、本発明者等が調査した結果、AlNが多く存在した状態で、前記熱処理を行うと、AlNの影響で炭窒化物が凝集しやすくなるとともに、AlNを多く含むNb炭窒化物が多く存在した状態となり、1000℃以下の温度での浸炭処理には効果があるが、高温で浸炭処理した場合には、十分に粗大化を防止できなくなることが判明した。
【0016】
さらに、特許文献8、9には、AlNの析出量を抑制して粗大化を防止する技術について記載されているが、特許文献8は、熱間圧延後又は熱間鍛造後における析出状態しか記載されておらず、特許文献9にも記載されているように、熱間鍛造後に焼準することが前提となっており、最も問題となる浸炭直前の析出状態を熱間鍛造品の場合にいかなる手段で達成すれば良いかについて、全く記載されていない。また、特許文献9は、本発明と同様に熱間鍛造後のAlN、Nb(C、N)の析出状態を鍛造条件、鍛造後の冷却条件の指定によって達成するものであるが、鍛造後の冷却条件が徐冷と記載されているものの、この文献で記載の徐冷という意味は単純な空冷に比べて遅く冷却するという意味であり、Nb(C、N)の析出に必要な時間と比較するとかなり早く(記載されている0.1〜1℃/秒の冷却速度では、本発明で指定の620〜700℃をわずか80〜800秒で通過することになる。)、温度も析出させるのに適した温度のみに限定されていないため、十分な微細析出がされない場合が多いことがわかった。
【0017】
また、前記した減圧浸炭処理は、浸炭ガスを炉内に導入して、所定の浸炭圧力まで高め、かつ維持する工程(浸炭期)と、炉内から浸炭ガスを排気して、処理品表面より内部に炭素を拡散させていく工程(拡散期)とを交互に繰返して処理するというパルス浸炭と呼ばれる方法が広く行われている。
【0018】
しかしながら、このパルス浸炭を行った場合の処理品を詳しく調査した結果、通常のガス浸炭を行った処理品と比較すると、炭素が侵入する浸炭層の部分(表面から0.5mm程度以内の部分)において、かなり高い確率で部分的な結晶粒異常成長が起きやすいことが判明した。さらに、前記した特許文献1〜9には、減圧浸炭の場合のこのような現象に対する対応策について全く検討がされていない。
【0019】
本発明は、以上記載した問題点を解決するために成されたものであり、1050℃程度の高温であって、かつ減圧下でパルス浸炭した場合でも異常な粒成長を防止することができ、浸炭処理の生産性を大幅に改善可能とすることを可能とする減圧浸炭処理をする前の減圧浸炭用鋼、及び減圧浸炭部品の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、パルス状に浸炭ガスが導入され、減圧浸炭される減圧浸炭用鋼であって、
該減圧浸炭用鋼は質量比でC:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.01〜0.10%、N:0.0080〜0.0250%、V:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、
また、該減圧浸炭用鋼は、熱間鍛造後においては室温まで冷却することなく冷却途中においてNb(C、N)を析出させる析出処理を行ない、析出処理後浸炭処理前において、AlN析出量が100ppm以下、Nb(C、N)の析出数が1〜10個/μm2であり、
また該減圧浸炭用鋼は、その表面から0.5mm以内のNb(C、N)析出物のうち、10〜50nmの大きさの析出粒子が1個/μm2以上であり、50nm超の析出粒子が1個/μm2以下であることを特徴とする減圧浸炭用鋼である。
【0021】
本発明において注目すべきことは、上記特定組成の肌焼鋼を用いて熱間加工後において浸炭処理する際に、従来の結晶粒粗大化防止鋼のように、AlNやNbの炭窒化物を単純に微細析出させるのではなく、減圧浸炭処理を施す前において上記熱間鍛造後の冷却途中に上記Nb(C、N)の析出処理を行ない、浸炭処理前における減圧浸炭用鋼が、「AlN析出量を100ppm以下に抑制し、特にNb(C、N)等と複合していない単独のAlNの析出数を抑制するとともに、鋼全体でのNb(C、N)の析出個数を一定以上確保し、表面の実際に浸炭される領域(表面から0.5mm以内)において、特定サイズ内(10〜50nm)のNb(C、N)の析出物を所定の個数以上確保して、確実にピンニング効果を確保」するとともに、大きなNb(C、N)(50nm超)は逆に数を抑制することによって、高温かつ減圧下でのパルス浸炭を行った場合でも、混粒発生の抑制を可能にした点にある。
【0022】
従来は、AlN、Nb(C、N)が共に結晶粒微細化に効果が大きいと考えられており、両者共に微細分散させることが結晶粒の粗大化防止に効果が大きいと考えられてきた。しかしながら、AlNがNb(C、N)に比較して固溶しやすく高温での結晶粒粗大化への効果が大きく期待できないことが判明するにつれて、Nb(C、N)を中心とした微細化対策が中心に考えられるようになった。しかしながら、その場合でもAlNの存在が異常粒成長防止にとって弊害となるという考え方は、前記した特許文献8、9等ごく一部を除いて皆無であった。
【0023】
それに対し、本発明者等が詳細に調査した結果、単独のAlNが多量に析出した状態からなる鋼は、下記の点で問題があることが判明した。
(1)単独のAlNが多量に析出した鋼を浸炭処理すると、結晶粒はAlNのピンニング効果によって微細となるが、微細であるため、逆に粒成長の駆動力が大きくなる。
【0024】
(2)比較的低い温度で浸炭処理する場合には、浸炭時もAlNの析出物が残留してピンニング効果を得ることができるため、粒成長の駆動力は大きいものの、粗大化防止に大きな効果を得ることができる。
【0025】
(3)しかしながら、浸炭処理温度が高くなると、析出していたAlNの固溶が進み、AlN析出量の少ない領域が生じはじめる。その結果、部分的にピンニング効果が十分に得られない領域が生じ、粒成長の駆動力を抑制することができなくなり、部分的な異常粒成長(混粒)が発生する。
【0026】
本発明は、上記のAlNを積極的に利用した結晶粒粗大化防止技術の問題点を解決するために成されたもので、以下の知見を得ることにより成されたものである。
(1)単独のAlNの析出を抑制し、主なピンニング粒子としてNb(C、N)を析出させた鋼を加熱して達成される浸炭初期粒度は、単独のAlNの析出を抑制していないNb添加鋼に比べかなり粗粒になり、粒成長の駆動力を小さく抑えることができる。1000℃を超える温度での浸炭処理中において、Nb炭窒化物は従来のNb添加鋼でも固溶せずに存在するが、本発明鋼は、比較的粗粒となった状態を得ることができるので、従来のNb添加鋼では十分に抑制できなかった部分的な異常粒成長を確実に防止することができる。
【0027】
(2)単独のAlN析出の抑制を図った本発明鋼でも、1050℃の高温浸炭処理の加熱途中には、AlNが析出するが、この析出は加熱前に既に析出しているNb(C、N)の周囲に優先的に析出する。従って、浸炭処理前だけでなく、浸炭昇温中においても単独のAlN析出物の生成を抑制することができるため、前記した通り比較的粗粒の結晶粒からなる組織となる。そして、温度が1000℃を超えるとAlNの固溶が進んでいくが、このような高温状態でもNb(C、N)は残存するため、十分なピンニング効果が確保できる。また、粗粒であるため粒成長の駆動力が小さいことから、混粒の発生を防止することが可能になる。
【0028】
また、パルス浸炭時に表面を中心に起きる混粒発生のメカニズム及びそれを防止する技術に対しては、以下の知見を得ることにより解決し、本発明を完成したものである。
【0029】
(1)パルス状に浸炭ガスを導入して浸炭処理する場合、ガス圧の高い浸炭期においては、表面に炭素の侵入が進むため、既に存在しているNb(C、N)を核として、析出物が成長する。また、ガス圧の低い拡散期においては、高温に加熱された状態で炭素濃度が低下するため、Nb(C、N)が逆に固溶し、比較的大きなNb(C、N)はサイズが小さくなるものの残存し、微細なNb(C、N)は完全に固溶して消失してしまうという現象が起きる。実際のパルス浸炭では、この繰返しが非常に多数回継続して行われるため、その結果浸炭処理前に存在していたNb(C、N)のうち、サイズの大きいものはさらに成長して大きくなるとともに、微細なものは消失するため、析出粒子の個数が浸炭処理前に比べ大幅に減少し、ピンニング効果が低下する。
【0030】
(2)この結果残存するNb(C、N)は、成長して大きくなっており、粗大化防止効果が低下していること、この現象が表面に集中して起きることが、表面に集中して混粒状態が発生する原因と考えられる。
【0031】
(3)浸炭期と拡散期が繰返し行われる浸炭処理が実施されても、浸炭処理終了時まで必要なピンニング効果を維持するための浸炭処理前の析出粒子の粒度分布について詳細に調査した結果、10〜50nmの大きさの析出物がピンニング効果の維持のために適当であり、50nm超の析出物は逆に数を抑制する必要がある。
【0032】
次に、請求項1の発明における減圧浸炭用鋼の化学成分の限定理由について説明する。
C:0.10〜0.30%
浸炭処理を行った部品に要求される強度、内部硬さを確保するためには、0.10%以上のCを含有する必要がある。しかし、0.30%を超えて含有させると内部の靱性が劣化し、さらには被削性を低下させるため、上限を0.30%とした。
【0033】
Si:0.05〜0.50%
Siは鋼の製造時において脱酸のために必要な元素であり、最低でも0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、Siは浸炭処理時、浸炭雰囲気中の酸素と反応して酸化物を形成する。このため被処理品の表層付近は焼入性が低下し、いわゆる浸炭異常層を形成する。従って、多量に含有させると浸炭異常層の生成による悪影響が大きくなって強度が低下するとともに、被削性が低下するので、上限を0.50%とした。
【0034】
Mn:0.30〜1.50%
Mnは、必要な焼入性を確保して内部まで強度を確保するのに必要な硬さを保証するためには、0.30%以上のMnを含有する必要がある。しかしながら、多量に含有させると、残留オーステナイトが増加して、硬さ低下、内部の靭性が劣化するとともに、被削性が低下するので、上限を1.50%とした。
【0035】
P:0.035%以下
Pは製造時に混入が避けられない不純物である。本発明では特に必須の条件としては限定していないが、粒界の強度を低下させ、疲労特性を悪化させる原因となる元素であるので、その上限を0.035%以下とすることが好ましい。
【0036】
S:0.030%以下
SはPと同様に製造時に少量の混入が避けられない不純物であり、例えばMnS等のような硫化物系介在物となって存在している。しかし、この介在物は、疲労破壊の起点となったり、耐ピッチング性を低下させたり、鋼材の異方性が大きくなる原因となる元素である。従って、本発明では、必須では限定していないが、理想的には極力低減することが好ましく、上限を0.030%とした方がより好ましい。
【0037】
Cr:0.30〜2.00%
Crは、焼入性を向上させ、必要な強度を確保し、本発明により製造した鋼の性能を向上させるために必要な元素であり、0.30%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に含有させると靭性が劣化するとともに被削性が低下するため、上限を2.00%とした。
【0038】
Al:0.005〜0.050%、
Alは、Siと同様に脱酸に必要な元素であるとともに、AlNとして存在し、ピン止め効果により浸炭処理後の異常粒成長防止に効果のある元素である。従って、最低でも脱酸に必要な量を添加する必要があり、下限を0.005%とした。しかしながら、本発明では従来の結晶粒粗大化防止鋼とは異なり、AlNの析出を抑制しており、全くピンニング効果を期待していないわけではないが、主となるピンニング効果は、Nb(C、N)により得ている。また、Alを多量に含有していると、浸炭処理前の単独のAlN析出数が増加し、AlN析出数を抑制することが難しくなるので、上限を0.050%とした。
【0039】
N:0.0080〜0.0250%
Nは上述の通り、AlやNbと結合し、AlNやNb(C、N)となって鋼中に存在し、浸炭処理後の異常粒成長を防止するために効果のある元素である。この効果を十分に得るためには、0.0080%以上のNを含有させる必要がある。しかしながら、AlNやNb(C、N)の析出量には適量があり、多すぎると浸炭初期粒径が細かくなって却って異常粒成長が起きやすくなってしまうため、上限を0.0250%とした。
【0040】
Nb:0.01〜0.10%
Nbは本発明において最も重要な元素であり、炭窒化物となって鋼中に存在し、特にAlに比べ高温度での浸炭処理における結晶粒異常成長を防止する効果の大きい元素である。Nb添加量が少ない場合、特に1050℃以上の浸炭では浸炭処理前に析出していた炭窒化物の一部が固溶し、ピン止め効果に寄与するNb炭窒化物の量が不足して粗粒化抑制作用が十分に得られなくなるので、下限を0.01%とした。一方、多量に含有させると、熱間鍛造時の加熱によってNb(C、N)が十分に固溶した状態とならず、粗大なNb(C、N)の析出物が残存した状態となって、ピンニング効果が低下するので、上限を0.10%に規定した。
【0041】
V:0.01%以下
VはNbと同様に炭窒化物を形成し、ピン止め効果により結晶粒成長の防止に寄与する元素であるが、Vの炭窒化物はNbの炭窒化物に比べ高温で固溶しやすく、1000℃以上の高温浸炭の場合、浸炭加熱によって固溶して浸炭中にピン止め効果が消失し、結晶粒成長抑制効果が得られなくなるので、高温浸炭される場合には、Vよりも高温浸炭処理温度において固溶しにくい炭窒化物を形成する元素に、鋼中のC、Nを優先的に結合させておく必要がある。Vが含有していると、鋼中のC、Nの一部がVと結合し、浸炭初期粒径を微細化する作用が生じ、かつ1000℃以上の浸炭中にそれらが固溶して、ピン止め効果を消失させるので、異常粒成長を助長する。従って、高温浸炭時にはVが存在すると逆に異常粒成長が起きやすくなる。Vは積極添加しなくても鋼の製造時に使用するスクラップ等から少量混入する可能性のある元素であるため、不純物として含有するV量を少なく抑える必要があり、上限を0.01%に規制した。
【0042】
次に、請求項1の発明におけるAlN、Nb(C、N)の析出状態の限定理由について、以下に説明する。
減圧浸炭処理をする前の減圧浸炭用鋼において、AlN析出量の上限を100ppmとしたのは、前記した通り単独のAlNが多数析出してしまうと、浸炭処理時に得られる初期結晶粒度が微細になり、粒成長の駆動力が増加し、Nb(C、N)を適量析出させても混粒発生の防止が難しくなるためである。但し、100ppmという数字は、単独で存在しているAlNの析出量のみではない。しかし、後述の実施例に示すように、全AlNの析出量を抑制することによって、単独のAlNを優先的に低減することができるのである。すなわち、AlNの析出量を抑制すれば、自動的に単独のAlNを抑制することができるものである。
【0043】
また、本発明では、上記の析出処理後浸炭処理前におけるNb(C、N)の素地中の析出個数を1〜10個/μm2に限定している。ここに、下限を1個/μm2としたのは、必要とするピンニング効果を確保するために最低限必要な個数であるからであり、上限を10個/μm2としたのは、個数が多すぎると浸炭初期の結晶粒径は小さくなって、粒成長の駆動力が大きくなり、混粒が発生しやすくなるためである。
【0044】
なお、本発明で言うNb(C、N)とは、Nb(C、N)単独の析出物と、Nb(C、N)とAlNの複合析出物の両方のことであり、単独のAlNとは、Nb(C、N)等他の組成を含まないAlNのことを意味している。
【0045】
また、Nb炭窒化物の個数は、TEM、FESEMを用いることにより容易に測定することができる。なお、使用する測定機器の精度によって同じ試験片を測定した場合の測定結果の誤差を防止するため、ここで対象とする炭窒化物は、大きさ(最も長い部分の長さ)が10nm以上のものに限定する。存在する炭窒化物のうち10nm以上の大きさの個数が、1〜10個/μm2とする。
【0046】
なお、10nmの析出物を確認するには、少なくとも5万倍、好ましくは10万倍程度に拡大して観察する(10nmの析出物が10万倍で1mmとなる。)ことが必要である。低倍率で観察すると、小さい析出物を見落とす可能性があるので、個数測定時は注意が必要である。
【0047】
また、本発明では、パルス浸炭した場合の表面における混粒発生を防止するために、減圧浸炭処理前の減圧浸炭用鋼において表面から0.5mm以内の領域については、前記した個数の限定とは別の規定を設けている。なお、表面から0.5mmとは、浸炭処理による影響が直接及ぶ領域(浸炭硬化層)であり、実際に混粒発生が集中している領域である。以下、その限定理由について説明する。
【0048】
10〜50nmの大きさの析出個数を1個/μm2以上としたのは、前記した浸炭期、拡散期の繰返しが行われた時に最も効率的にピンニング効果の得られる析出粒子の大きさが10〜50nmであるため、混粒防止をするためにこの範囲の大きさの析出粒子をできるだけ多く析出させておく必要があるからである。もし、析出個数が1個/μm2未満となった場合は、パルス浸炭の途中にピンニング効果が十分に得られなくなって、表面における混粒発生を防止することが困難になるためである。
【0049】
また、50nm超の大きさの析出個数を10〜50nmの析出粒子とは逆に1個/μm2以下に個数を抑制したのは、このような大きな析出物が多量に存在すると、拡散期にこの大きな析出物が核となって、優先的に成長し、浸炭処理後半においては大きな析出粒子が非常に多く残存する状態となり、結果的にピンニング効果が低下して、混粒発生を防止できなくなるためである。
なお,析出物の大きさは,最も長い部分の長さで決定されるものとすることは前記したとおりである。
【0050】
次に以上説明した析出状態を達成するための製造方法について説明する。
本発明鋼は、熱間鍛造によって製造される。AlNの析出を抑制するには、熱間鍛造時にNb(C、N)を十分に固溶させた後、室温に冷却することなく冷却途中に後述の析出処理を行うことにより達成することができる。室温に冷却した後再加熱して析出処理した場合には、単独のAlN析出数が大幅に増加するので注意が必要である。
【0051】
いかなる理由で、前記方法で行うことによって単独のAlNの析出が抑制できるのかについては、明確ではない。しかし、熱間鍛造時の加熱で鋼中Nbを十分固溶させているため、後述する析出処理時においてはNbが極端な過飽和状態になっており、Nb(C、N)が析出しやすい状態となっていること、析出処理の温度領域がAlNに比べNb(C、N)の析出に有利な温度領域となっていること等がAlNの析出抑制に影響していると推察される。
【0052】
次に、熱間鍛造時の加熱温度は、Nb(C、N)を十分に固溶(具体的には析出個数で0.3個/μm2以下)させるために、1150〜1350℃と比較的高い温度とする必要がある。この高い温度はNb(C、N)が十分に固溶した状態を維持するために、鍛造の仕上時まで維持する必要がある。従って、熱間鍛造仕上温度を1100〜1300℃とする必要がある。
【0053】
そして、Nb(C、N)を必要な個数、微細に析出させた状態とするために、熱間鍛造が終了した後室温まで冷却する途中の620〜700℃の温度域において、一定時間保持すると良い(請求項2)。
前記した熱間鍛造時において、Nb(C、N)は十分に固溶した状態となっており、その後この温度域で保持するため、既に析出物が多数存在している場合のように、析出物が核となって成長するということが少なく、微細かつ多数のNb(C、N)が析出した状態とすることができる。
【0054】
なお、析出処理の温度範囲の下限を620℃としたのは、この温度より低い温度で保持してもNb(C、N)の析出が効率良く進まないためであり、上限を700℃としたのは、温度が変態温度を超えて2相域に入ってしまうと、変態が析出処理の後に起きることになり、その後の冷却によってベイナイトやマルテンサイトが部分的に生成し、その影響で粗大化を防止することが難しくなるためである。
【0055】
但し、保持時間を長くしすぎると析出物の成長が進んで50nm超の大きさの析出物が増加すること、あまりの長時間の保持は生産性の点からも適切でないことから、保持時間は15分〜2時間程度の範囲で実施するのが良い。
以上説明した方法で製造することにより、浸炭前において最適な状態でNb(C、N)が析出した状態を達成することができ、減圧浸炭時の表面における混粒発生を防止可能となる。
【0056】
析出処理が終了した後は、室温まで冷却する。なお、析出処理は変態点より低い温度での熱処理であるため、析出処理の終了時点で既に変態は終了している。従って、得られる組織が室温までの冷却条件に左右されることはなく、実施する場所の設備の都合に応じて適切に選択すれば良い。但し500℃までの冷却はAlNの析出する時間的余裕を与えないようにするために、25℃/分以上で冷却するのが望ましい。
以上説明した手順で熱間鍛造、析出処理を行うことにより、請求項1に記載した適切な析出状態を得て、混粒発生を確実に防止することが可能となる。
【0057】
次に、請求項3の発明のように、請求項1に記載の鋼に加え、Moを0.80%以下含有させた鋼を用いることもできる。以下、その限定理由を記載する。
Mo:0.80%以下
Moは、焼入性およひ靱性を向上させるとともに、浸炭異常層を抑制して強度を向上させる効果を有する元素であり、必要に応じ少量添加して使用することができる元素である。しかしながら、多量に添加すると、残留オーステナイトが増加し、浸炭硬さの低下の原因になるとともに、内部の靭性、被削性を低下させるため、0.80%を上限とした。
【0058】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の減圧浸炭用鋼を3kPa以下の雰囲気下において、パルス状に浸炭ガスを導入する方法で浸炭処理し、再加熱処理することなく室温まで冷却することにより、減圧浸炭された部品を得ることを特徴とする減圧浸炭部品の製造方法である。
減圧浸炭による減圧の効果は、雰囲気圧を低下すればするほど促進される。従って、本発明では、時間短縮による効果をより大きくするために、雰囲気圧を3kPa以下とした。
【0059】
再加熱処理とは、減圧浸炭では前記したような結晶粒異常成長の問題が確実に回避することが困難であったため、従来から減圧浸炭後の焼入時において、浸炭温度から一度A1変態点以下に冷却した後、再度加熱してから焼入れする方法によって対策がとられており、その方法のことを指す。本発明は、減圧浸炭時の混粒発生を確実に防止できるので、このような再加熱処理を省略することができる。従って、前記した時間短縮と合わせて、一層のエネルギーコスト削減の達成が可能となる。
【0060】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の効果を実施例を示すことにより明らかにする。表1は準備した供試鋼の化学成分を示すものである。表1に示す供試鋼のうち、1〜6鋼は本発明の条件を満足する鋼、7〜9鋼は一部の成分が本発明の条件を満足しない比較鋼、10鋼は従来鋼であるSCM420Hである。
【0061】
【表1】
【0062】
各供試鋼は、電気炉で溶解し、圧延してφ20の丸棒を製造した。そして、その丸棒から直径10mm、高さ15mmの試験片を作製した。この試験片を富士電波工機(株)製熱間加工再現試験装置(商品名サーメックマスター)にて1250℃で加熱後、仕上温度が1200℃となる条件で70%の据込み加工を行い、その後670℃となるまで空冷した。そして670℃で40分間保持するという析出処理を行った後、室温まで空冷した。この試験片を雰囲気圧2kPaの環境で浸炭ガスをパルス状に導入する浸炭処理(950℃、1000℃、1050℃、浸炭時間2時間)を行い、混粒状態となっている部分がないか調査した。なお、一部の試験片は、単独のAlN析出数の差の影響を調査するため、据込み加工後一度室温まで空冷してから再加熱して析出処理するという条件で試験を実施した。
【0063】
各試験片の結晶粒異常成長の判定は、光学顕微鏡(倍率は100倍)でランダムに10視野観察することにより評価した。そして、通常異常粒成長が起きていない箇所の粒度番号は8〜10程度であるため、10視野観察した範囲内において、結晶粒度番号が4番以下となっている場合に異常粒成長が生じたとみなすこととした。なお、結晶粒度の測定は全てJISG0551の基準に準拠した方法で行った。そして、この基準で評価した結果、異常粒成長が認められた領域の面積率が20%以上の場合を×、0%超〜20%未満のものを△、0%のものを○で示した。
【0064】
また、異常粒成長の発生状況とAlN、Nb(C、N)の析出状態との関係を調査するために、異常粒成長発生状況を調査した試験片と同時に準備した浸炭処理前の試験片を用いて、Nb(C、N)の析出数(Nb(C、N)については、析出処理前と析出処理後の両方)を測定した。個数の測定はTEMを用いて行った。測定は、析出処理前のものは、前記した据込み加工終了後、直ちに窒素ガスで急冷することにより、析出する時間的余裕を与えずに冷却した試験片を用いて行った。析出処理後のNb(C、N)の個数の測定は、前記した析出処理後、室温まで冷却した試験片を用いて行った。測定は、表面と内部で分けて実施した。表面部の個数の測定は、据込み試験片の軸心を含む断面で切断した面で表面から0.5mm以内の部分を複数箇所観察することにより実施した。内部の析出数の測定は、軸心と表面の中間位置付近の複数箇所を測定することにより実施した。AlN析出量は、化学分析(よう素メタノール溶解−蒸留中和滴定法)により求めた。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2から明らかなように、成分とNb(C、N)の析出状態が共に本発明の範囲内である1〜6鋼は、1050℃という高い温度でも、異常粒成長をすることがなかった。それに対し、一部の成分が本発明の条件を満足しない比較鋼は従来鋼SCM420Hに比べれば優れた結果が得られたが、本発明鋼に比べ劣るものであった。このうち、7鋼は、ピン止め効果を得るために必要な元素であるNb含有率が低いためNb(C、N)の析出数が減少してピン止め効果が十分に得られず、1000℃以上の温度で異常粒成長が生じたものであり、8鋼はNb含有率が高いため、鍛造時の加熱によって十分に炭窒化物を固溶させることができず、その影響で1050℃での異常粒成長が防止できなかったものである。また、従来鋼SCM420Hである10鋼は、著しく劣り、950℃以上の温度で異常粒成長が発生した。
【0067】
なお、V含有率が高い9鋼は析出物数が本発明の範囲内であるにもかかわらず1050℃の加熱で異常粒が発生したが、これは組織内に析出していたV炭窒化物が1050℃の加熱により固溶してしまい、組織の一部において炭窒化物の少ない領域が生じ異常粒成長が起きたものと推定される。
【0068】
次に、前記実施例で行った条件を基本に前記供試鋼のうち、本発明の成分範囲の条件を満足する1、2鋼を使用して、熱間鍛造条件、析出処理条件を種々変化させた場合の別の実施例を示す。実験した条件(鍛造条件、析出処理条件)は表3に示す通りである。評価した項目及び評価方法は、鍛造条件、析出処理時の温度条件を変更した以外は、前記実施例と同様である。試験結果を表4に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
表3、4から明らかなように、本発明で規定した成分範囲内の鋼であっても、加熱温度、仕上温度、析出処理温度等の条件が適切でないことが原因で、本発明で規定した析出物の個数の範囲外となった試験No.2〜6、8〜12は、優れた結果が得られないことが分かった。このうち、試験No.2、8は仕上温度が低く、5、11は、加熱温度、仕上温度の両方が低いため、据込み加工直後のNb(C、N)の固溶が不十分となって、析出処理後のNb(C、N)のサイズが大きくなってピンニング効果が減少したものであり、No.3、9は析出処理時間が長いため、析出処理中に析出物の成長、粗大化が進み、表面部における混粒発生を防止できなかったものであり、No.4、10は、析出処理温度が高くニ相域での熱処理となったため、析出処理後の冷却時にベイナイトが生成し、その影響で混粒が生じたものであり、No.6、12は一度室温まで冷却し、再度加熱した影響からAlN析出量が大幅に増加し、AlNによるピン止め効果がほぼ完全に消失する1050℃加熱の場合において、混粒が発生したものである。
【0072】
これらの結果より、減圧された雰囲気下でパルス浸炭される場合には、表面部の析出物のうち、50nmを超える大きさの析出物を抑制することにより、1050℃という高温で浸炭処理する場合でも異常粒成長を生じないことが確認できた。
これら結果より、従来異常粒成長の完全防止が難しいために実施されてきた浸炭処理後の再加熱処理(浸炭処理後1度A1変態点以下の温度に冷却し、再加熱してから行う焼入焼もどし処理)を省略することができないかと考え、さらに実部品に対し繰り返し試作実験を実施した。その結果、再加熱処理しなくても、異常粒成長を防止した鍛造品の製造が可能であることが確認できた。
【0073】
次に、単独のAlNの析出状態を調査した別の実施例を示す。
前記した実施例では、AlNの析出量のみ示したが、この数値は、AlNとNb(C、N)との複合析出物中のAlNも含まれているので、このデータのみでは、単独のAlN析出が抑制されていると判断することはできない。そこで、前記した表2のデータ測定で試験No.7、12に使用した加熱実験直前の供試材を用い、走査型電子顕微鏡を用いて、二次電子像と反射電子像を試験片の全く同じ位置で撮影した結果を図1(試験No.7)、図2(試験No.12)に示す。
【0074】
ここで、AlNは、反射電子像に撮影されるが、二次電子像には撮影されないことがわかっているため、この2枚の写真を比較することにより、単独のAlNの有無を正確に把握することができる。なお、倍率は4枚共に50000倍である。
【0075】
まず図2は、AlN析出量が非常に多い比較例No.12のSEM写真を示したもので、(a)が二次電子像、(b)が、反射電子像である。この図の(b)から明らかなように、AlNの析出物(丸で囲んだ部分の薄い灰色部分)を観察することができる。そして、試験片の同じ位置で撮影した反射電子像(a)には、(b)で析出物が観察された位置と同位置には何も観察されない。このことは、単独のAlNが多数析出していることを意味している。
なお、図2(a)、(b)ともに、斜方向に2つの黒色部分が見られるが、これは窪みであり、AlN析出物ではない。
【0076】
それに対し、本発明の範囲内である試験No.7のSEM写真(図1)をみると、(a)、(b)共に何も析出物が観察されないことがわかる。この傾向は、ここで示した視野以外の場所でも同様であった。この結果は前記したNo.12とは全く逆であり、単独のAlNがほとんど析出していないことを意味している。
以上説明した図は、単独のAlNの有無を明確にするため、あえてNb(C、N)が析出していない箇所を選択して撮影した。従って、Nb(C、N)が析出している箇所を選択して撮影すれば、(a)、(b)共にNb(C、N)の析出物が撮影されることは勿論である。
【0077】
また、明細書には示していないが、表3、4の評価に使用した他の本発明の供試材についても同様に調査したが、全く同様の結果であった。
従って、この観察結果より、本発明鋼では、単独のAlNの析出が抑制されており、その結果高温浸炭時の粒成長が抑制されていることがわかる。
【0078】
【発明の効果】
本発明による減圧浸炭用鋼では、Nbを少量添加した鋼を用い、高温で加熱及びで熱間鍛造した後、室温まで冷却することなく冷却途中においてNb(C、N)を析出させる析出処理を行なうことによって、Nb(C、N)と単独のAlNの析出数を適切な範囲に調整するとともに、特に表面部(表面から0.5mm以内)については、Nb(C、N)の析出物の大きさまで適切に調整している。この結果、パルス浸炭という減圧浸炭特有の方法で浸炭処理される場合でも、異常粒成長を防止することができるとともに、従来の減圧浸炭で省略が困難であった浸炭処理後の再加熱処理を省略することができる。
【0079】
減圧浸炭処理は、通常のガス浸炭に比べ処理時間を短縮することができるという特徴があり、本発明によってこの処理を高温かつ再加熱処理を省略するという条件での実施が可能になったため、従来に比べ大幅なエネルギーコストの削減と生産性の向上を達成でき、自動車等の部品のうち浸炭処理される部品の製造コストを大幅に低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における本発明鋼、試験No.7の炭窒化物析出状態を説明する、図面代用電子顕微鏡写真(倍率50000倍)であり、(a)が二次電子像、(b)が反射電子像である。
【図2】比較例試験No.12における、AlN析出量が増加した場合の炭窒化物析出状態を説明する、図面代用電子顕微鏡写真(倍率50000倍)であり、(a)が二次電子像、(b)が反射電子像である。
Claims (4)
- パルス状に浸炭ガスが導入され、減圧浸炭される減圧浸炭用鋼であって、
該減圧浸炭用鋼は質量比でC:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.01〜0.10%、N:0.0080〜0.0250%、V:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、
また、該減圧浸炭用鋼は、熱間鍛造後においては室温まで冷却することなく冷却途中においてNb(C、N)を析出させる析出処理を行ない、析出処理後浸炭処理前において、AlN析出量が100ppm以下、Nb(C、N)の析出数が1〜10個/μm2であり、
また該減圧浸炭用鋼は、その表面から0.5mm以内のNb(C、N)析出物のうち、10〜50nmの大きさの析出粒子が1個/μm2以上であり、50nm超の析出粒子が1個/μm2以下であることを特徴とする減圧浸炭用鋼。 - 請求項1において、上記析出処理は620〜700℃の温度域において行なうことを特徴とする減圧浸炭用鋼。
- 請求項1又は2において、さらにMo:0.80%以下を含有することを特徴とする減圧浸炭用鋼。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の減圧浸炭用鋼を3kPa以下の雰囲気中で、パルス状に浸炭ガスを導入する方法で浸炭処理し、再加熱処理することなく室温まで冷却することを特徴とする減圧浸炭部品の製造方法。
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