JP4339031B2 - デンプンの品質改良剤およびこれを用いた食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デンプンの品質改良剤に関する。詳細には、アミロースおよび長鎖アミロペクチンのゲル化に起因するデンプンの短期間老化を抑制及び/又は促進するデンプンの品質改良剤、又はそれに加えて、アミロースおよび短鎖アミロペクチンの結晶化に起因するデンプンの長期間老化を抑制及び/又は促進するデンプンの品質改良剤、及び、当該デンプンの品質改良剤を用いた食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
デンプン含有食品として、従来より、食パン・菓子パン等のパン類、うどん・そば・中華麺等の麺類、ホワイトソース・グラタン等の調理ソース類、スポンジケーキ・バターケーキ・フルーツケーキ等のケーキ類、ドーナツ類、餃子・焼売・春巻き・ワンタン等の皮類、蒸しパン・中華饅頭・蒸し饅頭等の饅頭類、コロッケ、お好み焼き、たこ焼き、鯛焼き、今川焼き、大福、団子、ういろう等の多種多様な食品が上市されている。
【0003】
この様なデンプン含有食品においては、その製造過程においてデンプンの弾性率が経時的に変化し、安定化するのに時間がかかるため、デンプン含有食品にバラツキが生じ品質が一定しにくいという問題があった。また、デンプンの老化による、食感の劣化(ソフト感、しっとり感の消失)が問題となっていた。よって、ホワイトソースなどのとろみがあるデンプン含有食品について、デンプンの含量が多くなると、とろみは付与されるものの老化が早く進む傾向がある。
【0004】
こういった問題を解決するために、デンプンあるいはデンプン含有食品に多糖類等のハイドロコロイドを添加する方法が従来より提案されている。例えば、キサンタンガム単独あるいは、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、カラヤガム及び寒天等の紅藻類抽出物から選ばれる少なくとも一種類以上の素材と併用により、餅生地の老化を抑制する方法(特許文献1)、デンプン類に共処理したガラクトマンナン−グルコマンナンを配合することにより、デンプン類組成物の老化を抑制する方法(特許文献2)、グルコース、マンノース、およびガラクトースのうちの少なくとも一つを構成糖とする天然多糖類またはその分解物を配合することにより、デンプンの膨潤を抑制し、糊化とそれに伴う食品の付着や食感の劣化を防ぐ方法(特許文献3)、もち米に小麦デンプン・白糠、ワキシースターチ等のデンプンを添加して、餅生地の老化を促進する方法(特許文献4)等が提案されている。また、デンプンのガラクトマンナン、グルコマンナン等の食品ハイドロコロイドを添加することにより、デンプン性食品の食感改良、保水性改良、老化抑制効果がみられることは、学問的にも公知である(非特許文献1)。
【0005】
天然多糖類のデンプンに対する機能は、その分子特性によって大きく異なることが予想される。つまり、同一の天然多糖類でも、例えば分子量等の物理化学的性質が異なれば、デンプンに及ぼす作用が異なる可能性がある。しかし、上記の発明においては、単に天然多糖類を単独あるいは併用して、デンプンおよびデンプン含有食品の品質を改良する方法のみが記載されており、使用する天然多糖類の分子特性、つまりどのような分子特性を有する多糖類が真に有効であるかについては全く言及されていない。
【0006】
更には天然多糖類でも、分子特性の異なる多数の製品が上市されており、客観的指標による効果の分類が急務とされていた。
【0007】
デンプンの老化にはデンプンに含まれる物質であるアミロースとアミロペクチンが寄与していると言われている。そのうち、炊飯米やうどん等のデンプン含有食品に見られるような12時間〜1日程度の比較的短期間で起こる老化は、アミロース及び長鎖アミロペクチンのゲル化に起因していると言われており(非特許文献2)、また、パウンドケーキ等の長期保存可能なデンプン含有食品に見られる1日以上1ヶ月くらいかけて起こる比較的長期間で起こる老化には、上述のアミロース及び長鎖アミロペクチンのゲル化に加え、アミロース及び短鎖アミロペクチンの結晶化に起因することが判っている(非特許文献2)。よって、デンプン含有食品の種類にあったデンプンの品質改良剤、即ち、炊飯米やうどん等の比較的短期間で老化が起こるデンプン含有食品や、パウンドケーキ等の比較的長期間保存可能なデンプン含有食品に適した品質改良剤が求められている。逆にはるさめなどのデンプン含有食品は、その製造中にデンプンの老化工程が含まれる(非特許文献3)。老化が早く進むと製造工程を短縮化できるため、老化促進を行うデンプンの品質改良剤が求められている。
【0008】
また、ホワイトソースなどの液状食品では、デンプンの増粘作用を補強することでデンプンの添加量を抑え、デンプンの老化による物性の経時変化を抑制するような品質改良剤も求められている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭52-128249号公報
【特許文献2】
特開平11-290001号公報
【特許文献3】
特開平5-276882号公報
【特許文献4】
特開昭52-102465号公報
【0010】
【非特許文献1】
吉村美紀、食品混合ゲル、日本調理科学会誌、34, 424-431 (2001)
【非特許文献2】
吉村美紀、高谷友久、西成勝好、でん粉・ハイドロコロイド混合系の特性について、食品加工技術、18, 139-148 (1998)
【非特許文献3】
高橋禮治著、でん粉製品の知識 (1996)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、デンプン含有食品の種類にあったデンプンの品質改良剤、即ち、ホワイトソース等のデンプンによるとろみ付与を補強する品質改良剤、炊飯米やうどん等の比較的短期間での老化が起こるデンプン含有食品や、パウンドケーキ等の比較的長期間保存可能なデンプン含有食品に適した品質改良剤を提供すること、また、はるさめなどのデンプン含有食品用の、老化促進を行うデンプンの品質改良剤を提供することを的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、従来からデンプンの膨潤促進・老化抑制に効果があるとされているグァーガムの、分子量による効果の相違に注目して鋭意研究を重ねていたところ、分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムが、アミロースおよび長鎖アミロペクチンとの相互作用により、相乗的に増粘すること、分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムが、アミロースおよび長鎖アミロペクチンのゲル化を阻害してデンプンの短期間老化を抑制すること、分子量が30.0×105g/mol以上のグァーガムが、短鎖アミロペクチンの結晶化を阻害してデンプンの長期間老化を抑制すること、更に分子量が2.0×103〜5.0×105g/molのグァーガムがアミロースの結晶化を促進してデンプンの長期間老化を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、下記項1乃至5に掲げるデンプンの品質改良剤である:
項1. 分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムを含有することを特徴とするデンプンの品質改良剤。
項2.分子量が30.0×105g/molのグァーガムを含有することを特徴とするデンプンの品質改良剤。
項3. 分子量が2.0×103〜5.0×105g/molのグァーガムを含有することを特徴とするデンプンの品質改良剤。
【0014】
項4.項1乃至3に記載のデンプンの品質改良剤及びデンプンを含有することを特徴とするデンプン含有食品。
項5.デンプンに対するグァーガムの添加量が0.2〜20重量%である、項4に記載のデンプン含有食品。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のデンプンの品質改良剤は、分子量の異なるグァーガムを含有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明のデンプンの品質改良剤の対象となるデンプン類としては、トウモロコシ、モチトウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、餅米、タピオカ、サゴヤシ等由来のデンプン、ならびに、これらに物理的又は、化学的処理を施した加工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル基、ヒドロキシアルキル基等を導入したエーテル化デンプン、2カ所以上のデンプンの水酸基間に多官機能基を結合させた架橋澱粉、湿熱処理澱粉等)を挙げることができる。
【0017】
本発明のグァーガムとは、β-1,4 D-マンナンの主鎖骨格に側鎖としてα-D-ガラクトースが1,6結合した、マメ科植物由来の中性多糖類である。グァーガム中のマンノースとガラクトースの比率は約2:1で、工業的に生産されている他のガラクトマンナン類(タラガム、ローカストビーンガム)に比べて側鎖基含量が高く、水への溶解性も高い。食品工業の分野では、グァーガム単独あるいはキサンタンガムやカラギナンとの併用系で、アイスクリーム類、麺類、ソース・ドレッシング類等に使用されている。グァーガムには精製タイプ、未精製タイプのいずれもが適応可能である。
【0018】
まず、本発明のデンプンの品質改良剤として、前記グァーガムのうち、分子量が10.0×105g/mol以上のものが含有されているものである。当該分子量を有するグァーガムをデンプンの品質改良剤として使用することにより、デンプン糊の増粘作用を補強することができる。よってより少ない添加量でデンプン含有食品を増粘させることが出来るため、食品に含まれるデンプンの含有量を減らすことが出来、結果として、デンプンに起因する老化を抑制することが出来る。また、デンプンのアミロースおよび長鎖アミロペクチンのゲル化に起因するデンプンの短期間、即ち、炊飯米やうどん等のデンプン含有食品に見られるような、12時間〜1日間程度の比較的短期間で起こるような老化を抑制することができる。
【0019】
更に、好ましくは、本発明のデンプンの品質改良剤として、前記グァーガムのうち、分子量が30.0×105g/mol以上のものが含有されているものである。当該分子量を有するグァーガムをデンプンの品質改良剤として使用することにより、前記作用に加えて、アミロースおよび短鎖アミロペクチンの結晶化に起因するデンプンの長期間、即ち、パウンドケーキ等のデンプン含有食品にみられるような1日間〜1ヶ月間程度の比較的長期間で起こる老化をも抑制することができる。
【0020】
反対に、本発明のデンプンの品質改良剤として、前記グァーガムのうち、分子量が2.0×103〜5.0×105g/molのものが含有されているものは、アミロースおよび短鎖アミロペクチンの結晶化に起因するデンプンの長期間老化を促進する。よって、はるさめなどの製造工程中デンプンの老化を起こす必要のあるデンプン含有食品には、製造時間の短縮化を行うことができ、有用性が高い。
【0021】
なお、これらグァーガムは、天然物から得られるものであり、分子量は一定ではないため、本発明で規定する分子量は、グァーガムの平均分子量を測定し表すこととする。平均分子量の測定方法としては、後述する実験例1の方法などを用いて測定する。また、分子量の大小は、主にグァーガムのβ-1,4 D-マンナンの主鎖の長短で決まる。分子量の調整方法として、得られた原料を酸分解や酵素分解してガムの調製を行う際に、その反応条件(酸の種類、酵素の種類、反応時間、反応温度、処理濃度等)を任意に調整して行うことができる。なお、その反応条件について、例えば、特許第2603470号、特開平2−229117号公報、特開平4−210639号公報などに記載がされており、それらから、目的とする分子量になるように適宜調整する。
【0022】
本発明のデンプンの品質改良剤には、グァーガムの効果を妨げない範囲において、L-アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸、5'−イノシン酸二ナトリウム等の核酸、クエン酸一カリウム等の有機酸、および塩化カリウム等の無機塩類に代表される調味料、カラシ抽出物、ワサビ抽出物、およびコウジ酸等の日持向上剤、シラコたん白抽出物、ポリリシン、およびソルビン酸等の保存料、α、βアミラーゼ、α、βグルコシダ−ゼ、パパイン等の酵素、クエン酸、フマル酸、コハク酸等のpH調整剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチン等の乳化剤、香料、色素、水溶性大豆多糖類、カラギナン、キサンタンガム、ジェランガム、ネイティブシェランガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、コンニャク、ペクチン、タラガム、カラヤガム、トラガントガム、ガッティガム、ラムザンガム、ウェランガム、カードラン、プルラン、サイリームシードガム等の増粘多糖類、膨張剤、乳清たん白質、大豆たん白質等のたん白質、ショ糖、果糖、還元デンプン糖化物、エリスリトール、キシリトール等の糖類、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等の甘味料、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン類、鉄、カルシウム等のミネラル類等を添加することができる。
【0023】
本発明に係るデンプンの品質改良剤は、従来公知の方法により調製されるが、例えば、グァーガムと他の食品ハイドロコロイドを併用する場合は、複数の原料を粉体混合して調製することができる。
【0024】
本発明に係るデンプンの品質改良剤のデンプンへの添加方法としては、デンプンの品質改良剤を予め水和し溶液状にしてデンプンへ添加する方法や、デンプンの品質改良剤を粉末のままデンプンに含有する方法等を挙げることができるが、特に限定されない。なお、本発明のデンプンの品質改良剤をデンプンに含有させる場合の含有量として、デンプンに対するグァーガムの添加量が0.2-20重量%となるように調整することができる。
【0025】
更に、本発明は、前記のデンプンの品質改良剤及びデンプンを含有することを特徴とするデンプン含有食品に関する。
【0026】
本発明のデンプン含有食品としては、デンプンが含有される食品で有れば特に限定はされないが、例えば、食パン・菓子パン等のパン類、うどん・そば・中華麺等の麺類、ホワイトソース・グラタン等の調理ソース類、スポンジケーキ・バターケーキ・フルーツケーキ等のケーキ類、ドーナツ類、餃子・焼売・春巻き・ワンタン等の皮類、蒸しパン・中華饅頭・蒸し饅頭等の饅頭類、コロッケ、お好み焼き、たこ焼き、鯛焼き、今川焼き、大福、団子、ういろう、はるさめ、みたらし団子のたれ、カスタードクリーム、フラワーペースト等の多種多様な食品を挙げることができる。
【0027】
中でも、増粘させたり、とろみが付与されたデンプン含有食品として、ホワイトソース、グラタン、ソース、ドレッシング、みたらし団子のたれ、カスタードクリーム、フラワーペースト等を挙げることができる。これらに、本発明に係るデンプンの品質改良剤のうち、分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムを使用すると、デンプンが付与する、増粘やとろみ付与効果を補強することが出来、更には、老化を抑制することが出来る。
【0028】
更に、比較的短期間(12時間〜1日間程度)で老化が起こるデンプン含有食品には、分子量が10.0×105g/mol以上のものを使用すると、短期間で起こる老化を抑制できる。更には、比較的長期間(1日〜1ヶ月間程度)かけて老化が起こるデンプン含有食品には、30.0×105g/mol以上のグァーガムを使用すると、比較的長期間で起こる老化も制することが出来る。
【0029】
デンプン含有食品の製造方法としては、常法により行うことができる。本発明のデンプンの品質改良剤は、デンプンと予め混合してから添加しても、また、デンプンと別途添加しても良い。本発明に係るデンプンの品質改良剤の添加量として、デンプンの含有量により大きく左右されるが、デンプンに対するグァーガムの添加量が0.2〜20重量%となるように任意に調整して添加することが出来る。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特に記載のない限り、「部」は「重量部」、「%」は、「重量/容積%」とする。
【0031】
実験例1:グァーガムの平均分子量測定
グァーガムとして市販品・開発品を含め8種類(G1, G2・・・G7, G8)の試料を入手した。
【0032】
グァーガムの平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィーと連結した多角度光散乱法(SEC-MALLS)により決定した。サイズ排除クロマトグラフィー用カラムとして排除体積2,000万DaのOHpak SB-608M HQを、移動相として0.05M 硝酸ナトリウム/0.02% アジ化ナトリウムを使用し、流速0.8mL/minで分画を行った。次に、静的光散乱測定装置DAWN-DSPにより、分画した試料の散乱強度(散乱角26-132度)を、温度25℃、波長633nmで測定した。測定試料のグァーガム濃度は0.01%(w/v)とし、ポアサイズ0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後、測定に供した。
【0033】
Zimm-Plot法により求めたグァーガムの重量平均分子量は、G1: 34.6×105, G2: 34.5×105, G3: 20.1×105, G4: 16.5×105, G5: 12.2×105, G6: 10.1×105, G7: 4.7×105, G8: 0.02×105であった。なお、G8は分子サイズが小さく、散乱強度が不十分であったため、分子量(Mw)と固有粘度([h])との関係式([h]=0.58×Mw0.52)から、粘度平均分子量を算出した。
【0034】
実験例2:デンプン糊の増粘試験
アミロース含量26%の(未化工)コーンデンプンを使用し、8種類のグァーガム併用によるコーンデンプンの膨潤挙動をRVA(Rapid Visco Analyzer)により評価した。デンプン濃度は5%、グァーガム濃度は0.5%とした。具体的には、予め調製したグァーガム水溶液あるいは脱イオン水をコーンデンプンに加え、1)50℃で1分間保持後、2)50℃〜95℃まで昇温速度12℃/分、3)95℃で2.5分保持、4)95℃〜50℃まで降温速度12℃/分、5)50℃で2分間保持してRVA曲線を得た。得られたRVA曲線から膨潤開始温度および膨潤ピーク粘度を求めた。結果を図1および2に示す。
【0035】
G5(12.2×105)以上の分子量を有するグァーガムは、膨潤開始温度を低温側へ移行させた。また、G6(10.1×105)以上の分子量を有するグァーガムはデンプン糊の粘度を有意に上昇させた。G8の添加では、デンプン糊の粘度は逆に低下した。グァーガムによる膨潤開始温度の低下およびデンプン糊の粘度上昇は、デンプン粒から流出したアミロースおよび/または長鎖アミロペクチンとグァーガムの相互作用あるいはグァーガムの水和によるデンプン成分の実効濃度上昇が原因と考えられた。
以上の結果より、分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムが、デンプン膨潤時の増粘に効果があることが分かった。
【0036】
実験例3:デンプンの短期間老化試験
実験例2で調製したデンプン糊(コーン)の動的粘弾性の時間依存性を、温度4℃で24時間測定した。デンプン濃度は5%、グァーガム濃度は0.5%とした。測定は動的粘弾性測定装置ARES(レオメトリックサイエンティフィック社)により、冶具としてCone-plate型プランジャー(直径50mm、ギャップ0.05mm)を用い、周波数6.28rad/s、歪0.5%で測定を行った。24時間測定後、検体間の損失正接(tan δ)を比較した。損失正接は、その値が小さいほど試料が弾性的(ゲル的)であることを表し、デンプンの老化が進行していることを示す。結果を図3(横軸は添加したグァーガムの分子量)を示す。
【0037】
いずれのグァーガム添加でも損失正接は上昇したが、特に分子量がG4(16.5×105g/mol)以上の場合、損失正接の増加が著しかった。
以上の結果より、分子量15.0×105g/mol以上のグァーガムの添加により、デンプン粒から溶出したアミロースあるいは長鎖アミロペクチンのゲル化が阻害され、デンプンの短期間老化が抑制されることが分かった。
【0038】
実験例4:デンプンの長期間老化試験
デンプン(コーン)濃度15%、グァーガム0.5%でデンプン糊を調製した。これを直径20mm、高さ20mmの円柱鋳型に充填、20℃で1時間保持してデンプンゲルを調製した。得られたゲルは4℃で最大14日間保存し、20℃に戻してクリープ試験に供した。クリープ試験はレオメーターTA-XT2i(Stable Micro Systems社)により、直径75mmの円板型プランジャーを用いて、歪15%、歪付加時間1分で行った。得られたクリープ曲線から歪付加1分後のコンプライアンスを求めた。コンプライアンスは弾性率の逆数であり、値が小さいほど試料が弾性的(ゲル的)であることを表し、デンプンの老化が進行していることを示す。
【0039】
各検体でコンプライアンスの対数を時間に対してプロットし、次式に示す回帰式で一次回帰して、速度定数を求めた。速度定数が小さいほど、時間的な物性変化が小さいことを表す。
【0040】
LogJ=-kt+LogJ0 (J:コンプライアンス、k: 速度定数、t:時間、J0:初期コンプライアンス)
結果を図4に示す(横軸は添加したグァーガムの分子量)。
【0041】
G5(12.2×105g/mol)以上のグァーガム添加により速度定数は低下したが、特にG2(34.5×105g/mol)以上のグァーガムにより著しく低下した。
以上の結果により、分子量30.0×105g/mol以上のグァーガムの添加により、短鎖アミロペクチンの結晶化が阻害され、デンプンの長期間老化が抑制されることが分かった。
【0042】
実験例5:デンプンの老化促進試験
実験例2で調製したデンプン糊(コーン)を4℃で最大2週間保存し、保水性を測定した。具体的にはデンプン糊を50mL容の遠心管に計り取り、所定期間冷蔵保持後、5000gで10分間遠心処理した。遊離水を除去して、次式に従ってデンプン糊の離水を算出した。
【0043】
離水(%)=(遊離水の重量)/(デンプン糊の重量)
離水が多いほど、デンプンの老化が進行し、保水性が低下することを表す。
結果を図5に示す(横軸は添加したグァーガムの分子量)。
【0044】
分子量がG7(4.7×105)以下になると、デンプン糊の離水が増加し、特に保存7日後で顕著であった。
以上の結果により、分子量5.0×105〜2.0×103g/molのグァーガムの添加により、アミロースの結晶化が促進され、デンプンの長期間老化が促進されることが分かった。
【0045】
実施例1:ホワイトソース(増粘)
下記表1の処方のうち、バターをゆっくり溶かして、強力粉を弱火でいためた。表面に細かい泡が立ってきた時点で牛乳300部を加え、泡立て器でよく混合した。ソースが透明になってきた時点で残りの牛乳300部を加え、均一になるまで混合した。最後に塩およびナツメグで加え、ホワイトソースを調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
試験区は小麦粉含量が対照区の60%であるにもかかわらず、食感はほぼ同等の粘性、ボディ感であった。また対照区に比べてデンプン含量が低いため、経時的な物性の変化が少なく、食感の変化も小さかった。
【0048】
実施例2:うどん(短期間老化の防止)
下記表2の処方のうち、食塩を水に溶解して食塩水を調製した。中力粉に食塩水を徐々に添加して生地を調製し、ポリ袋に密封して60分間、室温で放置した。60分間放置した生地を軽くこね直し、更に20分間、室温で放置した。生地を厚さ3mm程度に圧延し、幅3mm程度に裁断後、麺重量の10倍量の水(90℃)で茹で上げ、水洗い、水切りしてうどんを調製した。
【0049】
【表2】
【0050】
うどんをポリ袋に密封し、4℃で1日間保存した。試験区は対照区に比べて物性の経時変化が少なく、こしのある滑らかな食感であった。
【0051】
実施例3:パウンドケーキ(長期間の老化防止)
下記表3の処方のうち、全卵を卵黄と卵白にわけ、卵白は予め軽く泡立てた。これに上白糖を2〜3回に分けて加え、次に卵黄を加えて混合した。予め篩いにかけた薄力粉を徐々に添加し、最後に湯せんして溶かしたバターを混合し、ケーキ生地を調製した。生地を型枠に流し込み、170℃ 30分間焼成してスポンジケーキを調製した。
【表3】
スポンジケーキをポリ袋に密封し、4℃で14日間保存した。試験区は対照区に比べて物性の経時変化が少なく、しっとりとした柔らかい食感であった。
【0052】
実施例4:はるさめ(老化促進)
下記表4の処方のうち、甘藷デンプン50部のうち3部を水に分散し、キャリア糊液を調製した。これに、47部の甘藷デンプン、あるいは甘藷デンプン47部とグアーガム1部の混合粉末を添加し、スラリーを調製した。これを細孔から98℃の熱水中に押し出し、形成した麺線を流水中で冷却、硬化により組織を固定化した後、乾燥(最終水分含量15%)した。
【0053】
【表4】
【0054】
試験区はグアーガムの添加によりデンプンの老化が促進されるため、硬化に要する時間が約25%程度短縮でき、製造の効率化が図れた。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実験例2のグァーガムの分子量とデンプン糊の膨潤開始温度との関係を表すグラフである。
【図2】 実験例2のグァーガムの分子量とデンプン糊の膨潤ピーク粘度との関係を表すグラフである。
【図3】 実験例3のグァーガムの分子量とデンプン糊の損失正接(4℃、24時間保持後)との関係を表すグラフである。
【図4】 実験例4のグァーガムの分子量とデンプンゲルの老化速度との関係を表すグラフである。
【図5】 実験例5のグァーガムの分子量とデンプン糊の離水との関係を表すグラフである。
Claims (8)
- 分子量が10.0×105g/mol以上のグァーガムを含有することを特徴とするデンプンの品質改良剤。
- 分子量が30.0×105g/mol以上のグァーガムを含有することを特徴とするデンプンの品質改良剤。
- 請求項1又は2に記載の品質改良剤及びデンプンを含有することを特徴とするデンプン含有食品。
- デンプンに対するグァーガムの添加量が0.2〜20重量%である、請求項3に記載のデンプン含有食品。
- 請求項1記載の品質改良剤を添加することを特徴とする、デンプン糊の増粘作用の増強方法。
- 請求項1記載の品質改良剤を含有することを特徴とする、ホワイトソース、グラタン、ソース、ドレッシング、みたらし団子のたれ、カスタードクリーム又はフラワーペースト。
- 請求項1記載の品質改良剤を添加することを特徴とする、アミロースおよび長鎖アミロペクチンのゲル化に起因するデンプンの老化抑制方法。
- 請求項2記載の品質改良剤を添加することを特徴とする、短鎖アミロペクチンの結晶化に起因するデンプンの老化抑制方法。
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