JP4337378B2 - 熱可塑性樹脂組成物、製造方法および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無色透明性、耐熱性、機械特性、流動性に極めて優れた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法、該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)やポリカーボネート(以下、PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
【0003】
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
【0004】
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されているが、近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性、耐油性も要求される。
【0005】
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、耐傷性、耐油性に著しく劣るといった問題があった。
【0006】
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド系単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド系単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
【0007】
これらの問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体を押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体が開示されている(例えば、特許文献1−2参照)。
【0008】
しかしながら、これら特許文献に開示された不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体は、溶融粘度が高くなるため、それに続く押出機内での環化反応の際、極度な剪断発熱を避けることができず、かくして得られるグルタル酸無水物単位を有する共重合体は著しく着色するという問題があった。
【0009】
また、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する重合体溶液を真空下で加熱することによりグルタル酸無水物単位を含有する共重合体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3−5参照)。
【0010】
しかし、これら特許文献に記載されている方法においても、得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体の着色抑制効果は十分ではなく、また、十分な環化反応を進行させること、および使用している溶媒を十分脱気するためには、長時間の加熱脱気工程を経る必要があり、生産性が低いといった問題点を有していた。
【0011】
また、これらに開示されているグルタル酸無水物単位を含有する共重合体は、流動性、機械特性(特に靭性)に劣り、近年の高度な要求特性を満たすものではなかった。
【0012】
【特許文献1】
特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例)
【0013】
【特許文献2】
特開平1−103612号公報(第1−2頁、実施例)
【0014】
【特許文献3】
特開昭58−217501号公報(第1−2頁、実施例)
【0015】
【特許文献4】
特開昭60−120707号公報(第1−2頁、実施例)
【0016】
【特許文献5】
特開平1−279911号公報(第1−2頁、実施例)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、高度な耐熱性を有すると同時に、加熱によって共重合体中にグルタル酸無水物単位を生成させる際の着色が抑制され、近年要求されている高度な無色透明性、成形性(流動性)、機械特性を有し、複屈折率が小さく、耐溶剤性をも有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法と該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成をとる。
【0019】
すなわち、本発明は、
〔1〕下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位(i)を含有する熱可塑性重合体(A)100重量部に対して、エチレンビスステアリン酸アミド、多官能エポキシ化合物、重量平均分子量700〜3000のポリマーまたはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の可塑剤(B)を0.1〜20重量部含有してなる樹脂組成物であって、かつ荷重たわみ温度(1.82MPa)が110℃以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、R1、R2は、それぞれ同一または相異なり、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
〔2〕前記可塑剤(B)がエチレンビスステアリン酸アミド、重量平均分子量700〜3000のアクリル酸エステル樹脂オリゴマー、および重量平均分子量700〜3000のポリカーボネート樹脂オリゴマーから選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕熱可塑性重合体(A)が、上記一般式(1)で表される(i)グルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%からなる共重合体である前記〔1〕または〔2〕のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕熱可塑性重合体(A)が、さらに、(iii)不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、(iv)その他のビニル系単量体単位を35重量%以下含有する共重合体である前記〔3〕記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕前記不飽和カルボン酸単位(iii)が、下記一般式(2)で表される構造を有する前記〔4〕記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
〔6〕前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)が、下記一般式(3)で表される構造を有する前記〔3〕〜〔5〕のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す。)
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を共重合して共重合体(C)を作製し、次いで該共重合体(C)および前記可塑剤(B)を含む混合物を加熱して(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
〔8〕前記共重合体(C)を90℃以下の重合温度で重合することを特徴とする前記〔7〕記載の製造方法。
〔9〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について具体的に説明する。
【0027】
本発明に使用する熱可塑性重合体(A)とは、上記のごとく、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体である。
【0028】
【化7】
【0029】
(式中、R1、R2は、それぞれ同一または相異なり、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す))。
【0030】
熱可塑性重合体(A)としては、(i)グルタル酸無水物単位のみからなるものであっても良いが、好ましくは共重合体である。共重合体とすることで、耐熱性や流動性の制御等が容易になるからである。中でも上記一般式(1)で表される(i)グルタル酸無水物単位、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する共重合体若しくは上記単位に(iii)不飽和カルボン酸単位を有する共重合体又は上記(i)(ii)若しくは上記(i)(ii)(iii)の単位にさらに(iv)その他のビニル系単量体単位を有する共重合体が好ましい。
【0031】
このような上記一般式(1)で表される(i)グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を使用することができる。好ましくは、製造工程の簡便さ、また、後述する理由により、以下に示す方法により製造される。すなわち、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を共重合して共重合体(C)を作製し、次いで該共重合体(C)および可塑剤(B)を含む混合物を加熱して(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を行う方法が好ましく使用される。ここで、単量体成分として、その他のビニル系単量体単位(iv)を含む場合には、該単位を与えるビニル系単量体とを共重合させ、共重合体(C)とした後、かかる共重合体(C)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し(イ)脱アルコール及び/又は(ロ)脱水による分子内環化反応を行わせることにより熱可塑性重合体(A)を製造することができる。この場合、典型的には、共重合体(C)を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基が脱水されて、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位(i)が生成される。
【0032】
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(4)で表される化合物、
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、R3は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)。
マレイン酸、無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上を用いることができる。なお、上記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸単量体は、共重合すると上記一般式(2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位(iii)を与える。
【0035】
また、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
【0036】
【化9】
【0037】
(式中、R4は水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、を示す)。
【0038】
これらのうち、炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記一般式(3)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)を与える。
【0039】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、などが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
共重合体(C)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体を用いてもかまわない。その他のビニル系単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができるが、透明性、複屈折率、耐薬品性の点で、芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0041】
共重合体(C)の重合方法については、ラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で、溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
【0042】
共重合体(C)の重合温度については、特に制限はないが、色調の観点から、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を90℃以下の重合温度で重合することことが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
【0043】
共重合体(C)の製造時に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、全単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸系単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は好ましくは50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%、これらに共重合可能な他のビニル系単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜35重量%である。
【0044】
不飽和カルボン酸系単量体量が15重量%未満の場合には、共重合体(C)の加熱による上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の生成量が少なくなり、耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸系単量体量が50重量%を超える場合には、共重合体(C)の加熱による環化反応後に、不飽和カルボン酸単位が多量に残存する傾向があり、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
【0045】
共重合体(C)の分子量制御方法については、特に制限はなく、例えば、通常公知の技術を適用することができる。例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
【0046】
ここで、アルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0047】
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、本発明の特定の分子量に制御するものであれば、特に制限はないが、通常、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.2〜5.0重量部であり、好ましくは0.5〜4.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部である。
【0048】
本発明における共重合体(C)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はないが、例えば、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や不活性ガス雰囲気または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が好ましく使用される。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。また、これらに窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置であることが、より好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
【0049】
なお、加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に200〜280℃の範囲が好ましい。
【0050】
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さ/直径比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。
【0051】
さらに本発明では、共重合体(C)を上記方法等により加熱する際に、グルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(C)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
【0052】
また、本発明では、共重合体(C)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する際に、後述の(B)可塑剤を添加することを特徴とする。特に、上述の押出機またはニーダーを用いて、加熱による環化反応を行う場合、共重合体(C)に可塑剤(B)を添加することで、溶融粘度が低下し、剪断発熱による温度上昇の抑制、すなわち熱分解を抑制することが可能となり、色調、機械特性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出したことが、本発明に到ることができた大きな点であった。
【0053】
本発明に使用する熱可塑性重合体(A)中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位(i)の含有量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物として、本発明範囲内の荷重たわみ温度(1.82MPa)であれば、特に制限はないが、好ましくは熱可塑性重合体100重量%中に25〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。グルタル酸無水物単位が25重量%未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなるだけでなく、十分な複屈折特性(光学等方性)や耐薬品性が得られない傾向がある。
【0054】
また、熱可塑性重合体(A)としては、上記グルタル酸無水物単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位からなる共重合体が好ましく使用することができる。(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体単位量は、熱可塑性重合体(A)100重量%中に好ましくは50〜75重量%、より好ましくは55〜70重量%である。
【0055】
熱可塑性重合体(A)における各成分単位の定量には、赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が使用できる。赤外分光法では、グルタル酸無水物単位は、1800cm-1及び1760cm-1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、1H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
【0056】
また、本発明に使用する熱可塑性重合体(A)は、熱可塑性重合体(A)100重量%中に不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、共重合可能な他のビニル系単量体単位を35重量%以下の範囲で含有することが好ましい。より好ましい不飽和カルボン酸単位量は0〜5重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位が10重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。また、より好ましい共重合可能な他のビニル系単量体単位量は好ましくは0〜10重量%である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が35重量%を超えると、無色透明性、耐溶剤性が低下する傾向がある。
【0057】
熱可塑性重合体(A)は、そのガラス転移温度(Tg)が130℃以上であるものが好ましく、より好ましい態様においては140℃以上、特に好ましい態様においては150℃以上である。また、上限としては通常、170℃程度である。かかる高いTgを得る手段としては、例えば前述したように、熱可塑性重合体(A)中のグルタル酸無水物単位(i)の含有量を制御する方法が好ましく用いられる。
【0058】
また本発明に使用する熱可塑性重合体(A)は、重量平均分子量が3万〜20万であることが好ましく、より好ましくは5万〜15万、さらに好ましくは7万〜13万である。尚、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
【0059】
本発明に使用される可塑剤(B)とは、前記の熱可塑性重合体(A)または共重合体(C)の180〜300℃での溶融粘度を低下させる化合物であり、エチレンビスステアリン酸アミド、多官能エポキシ化合物、重量平均分子量700〜3000のポリマーまたはオリゴマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0061】
可塑剤(B)として、低分子量のポリマーまたはオリゴマーを使用する場合、具体例としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの低分子量体が挙げられる。好ましい分子量としては、重量平均分子量で700〜3000のものが好ましく使用できる。尚、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
【0062】
可塑剤(B)としては、5%重量減量温度が300℃以上のものが好ましく、さらに350℃以上であるものが好ましい。この条件に該当する可塑剤の例としては、アクリル酸エステル樹脂オリゴマー、ポリカーボネート樹脂オリゴマー等を挙げることができる。尚、ここで言う5%重量減量温度とは、窒素中での示差熱重量同時測定装置(セイコー電子工業社製、TG/DTA−200)を用いて、30〜500℃の温度領域を20℃/分の昇温速度で行った加熱試験における5%重量減量を示す温度である。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に透明性を付与する場合は、可塑剤(B)の添加量の低減とともに、熱可塑性重合体(A)と可塑剤(B)の屈折率を近似させておくことが好ましい。ここで言う屈折率とは、アッベ屈折計により測定される20℃でのD線(589nm)屈折率(nD)であり、熱可塑性重合体(A)と可塑剤(B)の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.01以下である。
【0064】
可塑剤(B)の添加量は、(A)熱可塑性重合体100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲であることが必要であり、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。添加量が20重量部を越える場合は、透明性の低下、ブリードアウト量の増加などの傾向が見られるため好ましくない。
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料ならびに顔料を含む着色剤、結晶化剤および帯電防止剤などを添加することができる。
【0066】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの1種以上をさらに含有させることができる。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体(A)と可塑剤(B)および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
【0068】
かくして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、荷重たわみ温度(1.82MPa)が110℃以上であることが耐熱性の面で必要である。より好ましい態様においては120℃以上、特に好ましい態様においては130℃以上と極めて優れた耐熱性を有する。また、上限としては通常、150℃程度である。ここで、荷重たわみ温度の制御は、例えば、熱可塑性重合体(A)を構成する成分の比率を変えることで行うことができる。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性に優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形およびプレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
【0070】
そして、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、その優れた耐熱性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0071】
本発明の熱可塑性重合体からなる成形品の具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。
【0072】
また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等の撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバー等、自動車等の輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージング等、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セル等、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料等、これら各種の用途にとって極めて有用である。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
【0074】
(1)重量平均分子量(絶対分子量)
得られた熱可塑性重合体をジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
【0075】
(2)荷重たわみ温度
ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
【0076】
(3)引張伸度
ASTM D−638に従い、破断時の伸度(%)を測定した。
【0077】
(4)黄色度(Yellowness Index)
得られた熱可塑性重合体を、射出成形して得た70mm×70mm×3mm成形品のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0078】
(5)透明性
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、射出成形して得た70mm×70mm×3mmの成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
【0079】
(6)流動性
温度:荷重たわみ温度+150℃、荷重:37.3Nでのメルトインデックス(MI値)を測定した。
【0080】
(7)光学等方性(複屈折率)
射出成形して得た70mm×70mm×3mmの角板成形品を、ASTM D542に準じて、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて、23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。また、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて、上記成形品の23℃での精密な厚み(d)を測定し、これらを基に下記式により複屈折率(Δn)を算出した。なお、dは任意の5点の平均値とした。
Δn=Re(nm)/d(nm)
(8)耐溶剤性
上記の70mm×70mm×3mm成形品を、サラダ油(日清食品社製)に浸し、50℃の雰囲気中で、48時間放置後、クラックの発生のないものを○、クラックが発生しているものを×と判定した。○が合格である。
【0081】
参考例1:共重合体(C)の合成
(C−1)
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、メタクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(C−1)を得た。この共重合体(C−1)の重合率は98重量%であり、重量平均分子量は11万であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
【0082】
(C−2)
重合温度、時間を70℃で50分間保った後、90℃に昇温して、この温度で180分間重合に変更した以外は(C−1)と同様の製造方法で共重合体(C−2)を95重量%の重合率で得、重量平均分子量は11万であった。
【0083】
(C−3)
連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタンの添加量を0.8重量部に変更した以外は、(C−1)と同様の製造方法で共重合体(C−3)を、97重量%の重合率で得、重量平均分子量は15万であった。
【0084】
参考例2:グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体(A)の合成
(A−1)
参考例(1)で得られた共重合体(C−1)を2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5))に供して、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながらスクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度300℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−1)を得た。得られた熱可塑性重合体(A−1)の共重合組成を1H−NMRにより定量した結果、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位:31重量%、メタクリル酸メチル単位:65重量%、メタクリル酸単位:4重量%であった。また、重量平均分子量は11万、ガラス転移温度は150℃であった。
【0085】
(A−2)
参考例(1)で得られた共重合体(C−2)を用いて、(A−1)と同様の方法で、分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−2)を得た。得られた熱可塑性重合体(A−2)の共重合組成を1H−NMRにより定量した結果、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位:31重量%、メタクリル酸メチル単位:65重量%、メタクリル酸単位:4重量%であった。また、重量平均分子量は11万、ガラス転移温度は150℃であった。
【0086】
(A−3)
参考例(1)で得られた共重合体(C−3)を用いて、(A−1)と同様の方法で、分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−3)を得た。得られた熱可塑性重合体(A−3)の共重合組成を1H−NMRにより定量した結果、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位:31重量%、メタクリル酸メチル単位:65重量%、メタクリル酸単位:4重量%であった。また、重量平均分子量は22万、ガラス転移温度は150℃であった。
【0087】
参考例3:可塑剤(B)
(B−1):エチレンビスステアリン酸アミドである「アーモワックスEBS」(ライオン社製)を使用した。
(B−2):重量平均分子量1200のポリアクリル酸エチルである「UME1001」(綜研化学社製)を使用した。
【0088】
〔実施例1〜6、比較例1〜5〕
参考例(2)で得られた熱可塑性重合体重合体(A)と可塑剤(B)を表1に示した配合比でドライブレンドし、スクリュー回転数150rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度280℃に設定したベント付き2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)に供して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:ガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
各種特性評価結果を表1に示す。
尚、比較例1〜3には、参考例(2)で得られた熱可塑性重合体(A)を、比較例5、6には、それぞれPMMA(「デルペット80N」(旭化成社製))およびPC(「ユーピロンS3000」(三菱エンジニアプラスチックス社製)を上記と同様の成形条件で得た試験片について、評価した結果を示した。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1〜6および比較例1〜5の結果より、本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れた無色透明性、耐熱性、機械特性を有し、とりわけ流動性、光学等方性、耐溶剤性に優れていることがわかる。
【0091】
〔実施例7〜12〕
参考例(1)で得られた共重合体(C)および可塑剤(B)を表2に示した配合比でドライブレンドし、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度300℃に設定したベント付き2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)に供して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:ガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
各種特性評価結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例7〜12の結果より、共重合体(C)の加熱環化反応時に可塑剤(B)を添加した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐熱性、機械特性、流動性、光学等方性、耐溶剤性を有し、とりわけ無色透明性に優れた材料が得られることがわかる。
【0094】
【発明の効果】
本発明により、高度な無色透明性、成形性、機械特性を有し、複屈折率が小さく、耐溶剤性をも有する熱可塑性樹脂組成物が得られ、その実用性は多大である。
Claims (9)
- 前記可塑剤(B)がエチレンビスステアリン酸アミド、重量平均分子量700〜3000のアクリル酸エステル樹脂オリゴマー、および重量平均分子量700〜3000のポリカーボネート樹脂オリゴマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性重合体(A)が、上記一般式(1)で表される(i)グルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%からなる共重合体である請求項1または2のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性重合体(A)が、さらに、(iii)不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、(iv)その他のビニル系単量体単位を35重量%以下含有する共重合体である請求項3記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を共重合して共重合体(C)を作製し、次いで該共重合体(C)および前記可塑剤(B)を含む混合物を加熱して(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記共重合体(C)を90℃以下の重合温度で重合することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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