〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本実施形態に係るレーザー走査装置の概略の構成を示す斜視図である。このレーザー走査装置は、レーザーダイオード1と、コリメータレンズ2と、シリンダレンズ3と、ポリゴンミラー4と、走査光学系第1レンズ5と、平面ミラー6と、走査光学系第2レンズ7と、ウインドウ8とを、レーザーダイオード1から感光体9に至る光路に沿って有している。
レーザーダイオード1は、ほぼ直線偏光のレーザー光を出射する光源である。このレーザーダイオード1は、複数(例えば2つ)の発光点を持つアレイ型半導体レーザーで構成されている。コリメータレンズ2は、入射光を平行光にして出射する。シリンダレンズ3は、主走査方向においては入射光をそのまま平行光で出射する一方、副走査方向においては入射光を収束させてポリゴンミラー4の光反射面に集光させる。なお、主走査方向とは、画像幅方向に対応する方向を指し、副走査方向とは、主走査方向に垂直な方向を指すものとする。
ポリゴンミラー4は、入射光すなわちレーザーダイオード1から出射されるレーザー光を偏向させるものであり、複数の光反射面を有する回転多面鏡(本実施形態では平面視で正方形状)で構成されている。つまり、レーザーダイオード1からのレーザー光は、ポリゴンミラー4の光反射面にて反射されるとともに、ポリゴンミラー4自体が回転することによって、反射光の反射方向が主走査方向に変化し、これによって、入射光が偏向される。
本実施形態では、ポリゴンミラー4における入射光と反射光とが、ポリゴンミラー4の回転軸に垂直な平面である偏向平面内にある。つまり、ポリゴンミラー4に対して入射光が副走査方向に角度がついて入射しない。これにより、ポリゴンミラー4の回転軸と光反射面との間の距離に、光反射面ごとにわずかに異なる誤差がある場合でも、画像にピッチむらが出るのを回避することができ、また、ポリゴンミラー4の光反射面の面倒れに起因して画像にジッタが出るのを回避することができる。
走査光学系第1レンズ5は、入射光すなわちポリゴンミラー4によって偏向されたレーザー光を屈折させて平面ミラー6に導く。平面ミラー6は、入射光を感光体9方向に反射させる折り返しミラーとして機能している。本実施形態では、平面ミラー6は、ポリゴンミラー4より後の光路中に1枚のみ設けられているが、上記光路中に複数枚設けられていても構わない。走査光学系第2レンズ7は、平面ミラー6を介して入射する光を屈折させ、ウインドウ8を介して感光体9に導く。
つまり、上記構成のレーザー走査装置では、レーザーダイオード1が発したレーザー光は、コリメータレンズ2によって平行光とされた後、シリンダレンズ3によってポリゴンミラー4の光反射面上に副走査方向にのみ集光する。そして、上記光反射面にて入射光が反射されるとともに、ポリゴンミラー4の回転により、その反射方向が主走査方向に変化する。このようにポリゴンミラー4にて偏向されたレーザー光は、走査光学系第1レンズ5によって屈折された後、平面ミラー6によって反射され、走査光学系第2レンズ7によって再び屈折された後、ウインドウ8を透過して感光体9上に集光する。
次に、本実施形態のレーザー走査装置における光学設計について、実施例1として以下に説明する。
表1は、本実施例の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものである。この座標データは、グローバルな直交座標系(X,Y,Z)におけるローカルな直交座標系(x,y,z)の原点およびベクトルで各光学面(面頂点基準)の配置を表しており、その評価面(面番号13)が感光体9の表面に相当している。なお、Z軸は、副走査方向の軸であり、Y軸は、主走査方向の軸であり、X軸は、YZ平面に垂直な軸である。
また、表1における面番号1ないし12は、それぞれ、コリメータレンズ2の光入射側の面および光射出側の面、シリンダレンズ3の光入射側の面および光射出側の面、ポリゴンミラー4の光反射面、走査光学系第1レンズ5の光入射側の面および光射出側の面、平面ミラー6の光反射面、走査光学系第2レンズ7の光入射側の面および光射出側の面、ウインドウ8の光入射側の面および光射出側の面をそれぞれ示している。
また、ポリゴンミラー4の座標は、画像中央を描画する時の光反射面の座標である。本実施例の各光学素子は、樹脂またはガラスで構成されている。より具体的には、コリメータレンズ2は、屈折率1.825のガラスである。シリンダレンズ3とウインドウ8は、屈折率1.511のガラスである。走査光学系第1レンズ5および走査光学系第2レンズ7は、いずれも屈折率1.537の樹脂である。屈折率はいずれも、波長780nmにおける数値である。
また、表2ないし表7は、光学面の面構成(面形状)を示している。ただし、E−n=×10-nとする。
なお、自由曲面の面形状は、次の数1式によって表現される。ただし、aijは、自由曲面係数とする。
また、軸対称非球面の面形状は、次の数2式によって表現される。ただし、aiは、非球面係数とする。
また、シリンダ面の面形状は、次の数3式によって表現される。
図2は、コリメータレンズ2側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。なお、同図中、z軸は、副走査方向を示す軸であり、グローバルな直交座標系におけるZ軸と同方向である。また、y軸は、レーザー光の進行方向ベクトルとz軸とに垂直な軸であり、グローバルな直交座標系におけるY軸とは異なっている。
本実施例では、レーザーダイオード1における2つの発光点の間隔は14μmであり、レーザー光の偏光方向は、2つの発光点が並ぶ方向と一致している。そして、レーザーダイオード1は、コリメータレンズ2の光軸回りに、水平(偏向平面)から31.3度傾いている。この構成により、レーザー光は、主走査にも副走査にもずれた2点から射出されるので、光学系を介して感光体9に入射したときの集光位置も2つのレーザー光で主走査にも副走査にもずれた位置になる。本実施例では、2つのレーザー光は、主走査方向に85μm、副走査方向に42μm離れた位置に集光する。
また、本実施例では、画像密度は600dpiであり、2つのレーザー光の集光位置の差は、ちょうど隣接ライン間隔と一致するように設計されている。このように設計することで、複数のレーザー光で1つの画像を描画することが可能になり、高速な描画を達成することができる。
図3は、本実施例での感光体9上での光量分布を示す説明図である。図3では、ポリゴンミラー4にて反射される光の偏向角の変化に伴って変化する感光体9への照射光量を、その最大値1で規格化して示している。
なお、偏向角とは、ポリゴンミラー4での反射光を主走査方向に振る角度を指すが、ここでは特に、ポリゴンミラー4の光反射面と走査光学系第1レンズ5または平面ミラー6とを結ぶ光軸を基準(0度)とし、その光軸と反射光とのなす角度のことを指すものとする。そして、ポリゴンミラー4での反射光が上記光軸に対してレーザーダイオード1側に反射する場合の偏向角を正、上記光軸に対してレーザーダイオード1とは反対側に反射する場合の偏向角を負とする。ちなみに、本実施例では、偏向角はプラス側とマイナス側とでそれぞれ最大55度となっており、画像幅方向に対応する偏向角の範囲としては、110度となっている。
図4は、本実施例でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。また、図5は、本実施例での走査光学系第1レンズ5、走査光学系第2レンズ7およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。ポリゴンミラー4以降の各素子は、偏向角によって反射率や透過率が異なるが、特にポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化が大きいことがわかる。
本実施例では、図4に示すように、偏向角の変化に伴うポリゴンミラー4での反射率の変化を、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すように、光学系を設計している。このような光学系を実現するためには、後述する比較例やその他の実験例を参照することにより、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角(レーザー光の偏光方向と偏向平面とのなす角度γ)およびその回転方向、平面ミラー6の法線と偏向平面とのなす角度ηを適切な範囲に設定する必要がある。これらの設定の詳細については後述するが、このように光学系を設計することで、図3に示したように、偏向角の変化に伴う感光体9での光量分布を画像幅方向にほぼ均一化することができる。このように光学系を設計した点に本発明の最も大きな特徴がある。
図6は、レーザーダイオード1の傾きを実施例1と逆方向にした場合、つまり、レーザーダイオード1をコリメータレンズ2の光軸回りに水平(偏向平面)から実施例1とは逆向きに31.3度傾けた場合において、コリメータレンズ2側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。なお、レーザーダイオード1をこのように配置した光学系を比較例1とする。
図7は、比較例1での感光体9上での光量分布を示す説明図である。図7においても、ポリゴンミラー4にて反射される光の偏向角の変化に伴って変化する感光体9への照射光量を、その最大値1で規格化して示している。また、図8は、比較例1でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。また、図9は、比較例1での走査光学系第1レンズ5、走査光学系第2レンズ7およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。
比較例1でも、2つのレーザー光は、主走査方向に85μm、副走査方向に42μm離れた位置に集光するので、複数光での描画が可能である。しかし、図7に示すように、感光体9上の光量分布は、偏向角の両端(±55度)で実施例1と比べて大きな差が生じていることがわかる。これは、レーザーダイオード1の光軸回りの回転方向を図6のように逆転させると、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化の仕方が図4の場合とは逆になり(図8参照)、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すことができないからである。
以下、本実施例において、偏向角の変化に伴うポリゴンミラー4での反射率の変化を、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すようにする光学系の設計の詳細について説明する。
図10は、ポリゴンミラー4または平面ミラー6への入射角の変化に伴うS偏光およびP偏光の反射率の変化を示す説明図である。実施例1および比較例1では、ポリゴンミラー4および平面ミラー6は、いずれもアルミの上に単層の保護コートを施したものである。保護コートの屈折率は1.46であり、その膜厚は0.267μmである。この膜厚は、基準波長を780nmとしたときの光学膜厚で1/2波長に相当する。このとき、入射角が0度から70度の範囲では、入射角の増大に伴ってS偏光の反射率は増大し、P偏光の反射率は減少することがわかる。
ここで、ポリゴンミラー4への入射角は、入射開角と偏向角とから求まる。入射開角とは、走査光学系第1レンズ5の光軸、すなわち、偏向角が変化する範囲の中央に位置する光軸とポリゴンミラー4への入射光とのなす角度を示す。ポリゴンミラー4への入射角は、具体的には、入射開角と偏向角との差をとり、それを2で割り、絶対値をとれば良い。本実施例では、入射開角は85度、偏向角は±55度としているため、
(85−55)/2=15
(85+55)/2=70
となり、ポリゴンミラー4への入射角は、最小で15度、最大で70度となる。
一方、平面ミラー6への入射角は、偏向角0度付近では最小の45度となり、偏向角の絶対値が増大するに伴って増大する。
図11は、実施例1でのポリゴンミラー4および平面ミラー6における偏向角と入射角との関係を示す説明図である。ポリゴンミラー4への入射角の範囲(70−15=55度)は、偏向角の範囲(55−(−55)=110度)の半分となる。また、実施例1のように、ポリゴンミラー4への入射光の光路を偏向角が変化する範囲の外側に位置させた場合、入射角は0度を含まない範囲となるため、本実施例のように偏向角が100度を越える広角の走査光学系では、ポリゴンミラー4での反射率が偏向角のプラス側およびマイナス側の両端で大きな差を持つことになる。
また、レーザー光の偏光方向は、2つの発光点が並ぶ方向と一致しているので、入射光の光量を1としたとき、ポリゴンミラー4への入射時のP偏光成分の光量は、cos231.3°を計算して0.73であり、S偏光成分の光量は、sin231.3°を計算して0.27である。この光量と図10のデータとから、図4および図8に示したポリゴンミラー4での反射率を算出することができる。
一方、平面ミラー6では、S偏光成分とP偏光成分との比率が偏向角の変化に伴って変化する。ここでは、偏光の状態がポリゴンミラー4での反射によって変化せず、ほぼ直線偏光のままであり、単に鏡像の状態になるものと仮定する。なお、この仮定は入射角が大きくなると成立しなくなるが、その詳細については後述する。
この仮定のもとでは、光線が平面ミラー6に入射するとき、偏光の状態は直線偏光で、その偏光方向を示すベクトルと偏向平面であるXY平面(ポリゴンミラー4によって光線が走査される面)とのなす角度γは、上述の31.3度のままである。ただし、ポリゴンミラー4で反射されたときに鏡像の状態になっているために、符号は逆転している。
S偏光とP偏光との光量比は、偏光方向がわかれば、入射する面の法線ベクトルと光線の進行方向ベクトルとを使って計算することができる。具体的には、入射する面の法線ベクトルと光線の進行方向ベクトルとの外積をとった結果のベクトルを長さ1にしたものと、偏光方向を示すベクトルとの内積をとり、その二乗を計算すれば、光量を1としたときのS偏光成分の光量を求めることができる。また、P偏光成分の光量は、1からS偏光成分の光量を引けば良い。
ここで、図12は、走査光学系第1レンズ5および平面ミラー6について、XY平面内での光線の角度を示す説明図であり、図13は、走査光学系第1レンズ5および平面ミラー6について、XZ平面内での光線および面の角度を示す説明図である。なお、これらの図中、X軸、Y軸、Z軸は、表1で面の座標を示している座標系のX軸、Y軸、Z軸と同じ軸である。
偏向角をθ、平面ミラー6に入射する光線がX軸となす角度をψとおくと、画像両端および画像中央に相当する偏向角においては、角度ψはそれぞれ図12に示す値となっている。また、平面ミラー6の法線がXY平面となす角度ηは45度である。
図14は、平面ミラー6に入射する光の偏光方向を示した図である。この図における座標系は光線を基準とした座標系であり、図の紙面垂直方向(yz平面に垂直な方向)が光線の進行方向ベクトルと一致する。ただし、図14におけるz軸は、副走査方向を示す軸であり、図12および図13で示したZ軸と同じ向きである。一方、図14におけるy軸は、主走査方向を示す軸であるが、図12および図13で示したY軸とは違い、光線の進行方向ベクトルとz軸とに垂直なベクトルとなっている。
既に述べたように、ポリゴンミラー4で反射されたときは鏡像の状態になっているため、ポリゴンミラー4での反射前は図2に示した2つの発光点を結ぶ方向と偏光の方向とが一致している状態であったものが、ポリゴンミラー4での反射後は、レーザー光の偏光方向と偏向平面(XY平面)とのなす角度γは、その符号が逆転してγ=−31.3°となっている。図12、図13および図14に示したψ、η、γを使って上述のS偏光成分の光量を計算すると、
(cosψtanη+sinψsinγ)2/(tan2η+sin2γ)
となる。一方、P偏光成分の光量は、
(sinψtanη−cosψsinγ)2/(tan2η+sin2γ)
となる。図15は、これらの式による、平面ミラー6への入射光のS偏光成分およびP偏光成分の光量計算結果を示したものである。また、図16は、図10、図11および図15に示したデータを使用して計算した平面ミラー6での反射率の概算結果を示したものである。
ところで、この結果は、上述のように、ポリゴンミラー4での反射後に偏光状態が変化しない(反射光がほぼ直線偏光である)と仮定して計算したものである。しかし、実際には、ポリゴンミラー4での反射時にS偏光とP偏光とで位相のずれが生じ、反射光は楕円偏光となる。位相のずれはポリゴンミラー4への入射角に応じて変化し、入射角が大きくなると位相のずれも大きくなる。
図17は、ポリゴンミラー4での反射後の楕円偏光について、短径と長径との比を計算した結果を示したものである。この比が0ならば直線偏光、1ならば円偏光である。図18は、この位相のずれを正しく計算したときの、平面ミラー6への入射光のS偏光成分およびP偏光成分の光量計算結果を示したものである。
偏向角がマイナス側の端の方、すなわち、ポリゴンミラー4での反射光が光軸に対してレーザーダイオード1から遠ざかる方では、ポリゴンミラー4への入射角が大きいために、S偏光成分とP偏光成分の光量計算結果は、位相ずれを無視して計算した図15の場合と差が大きくなっている。その結果として、図4に示した平面ミラー6の反射率および図16に示した結果の誤差が、偏向角がマイナス側の端の方で現れる。
ただし、偏向角マイナス側および偏向角プラス側での、S偏光成分の光量の差は依然として顕著であり、基本的な考え方には変わりはない。つまり、画像両端に対応する光のポリゴンミラー4での反射率の差を、同じく画像両端に対応する光の平面ミラー6での反射率の差で打ち消すためには、平面ミラー6への入射光について、S偏光成分とP偏光成分との比が偏向角のプラス側とマイナス側とで差が生じるようにすれば良く、また、そのためには、レーザーダイオード1を光軸回りに回転させればよい。このとき、回転方向を逆にしてしまうと、図8で示したように、画像両端に対応する光についての反射率で最も大きいほうが、ポリゴンミラー4と平面ミラー6とで偏向角の同じ側(例えばプラス側)となり、画像両端に対応する光の反射率の差がさらに拡大してしまう結果となるため、適切に回転方向を選ぶことが必要である。
ここで、図19は、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角、すなわち、レーザー光の偏光方向が偏向平面であるXY平面となす角度γであり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+55度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−55度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率で割った数値である。なお、レーザーダイオード1の角度以外の構成については、実施例1のままである。
本実施例では、横軸の値は31.3度であるが、その付近ではポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とが反射率比1を挟んで反対側にある状態であり、両者が互いに打ち消し合う状態であることがわかる。ただし、ちょうどその値でなくとも、光量の不均一性を緩和することは可能である。
したがって、図18に示したように、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも小さくなるようにレーザーダイオード1を光軸回りに回転させる場合、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、図19より、上記回転角(角度γ)の上限は、50度以下であることが望ましく、40度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角の下限は、15度以上であることが望ましく、20度以上であることがより望ましいと言える。
よって、上記回転角の適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができる。例えば、上記回転角の範囲は、15度以上50度以下の範囲であればある程度の効果を期待でき、さらには20度以上40度以下の範囲であればより望ましいと言える。また、上記回転角の範囲としては、15度以上40度以下の範囲を考えてもよく、また、20度以上50度以下の範囲を考えてもよいと言える。
一方、上記回転角が60度以上の範囲では、ポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とがいずれも1より小さい側にある。しかし、上述したようにレーザーダイオード1の回転方向を逆にすれば、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化を逆転させることができる(図8参照)。この場合、レーザーダイオード1の回転角の変化に伴う平面ミラー6についての反射率比の変化の仕方は、ちょうど図19で示した平面ミラー6についてのグラフを、反射率比1を境にして全体的に上へ折り返したようなグラフとなる。
したがって、レーザーダイオード1の回転方向を逆にした場合でも、ポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とが反射率比1を挟んでほぼ対称となる回転角の範囲を選択すれば、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ことができる。そのような回転角(絶対値)の上限としては、85度以下であることが望ましく、80度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の下限としては、60度以上であることが望ましく、70度以上であることがより望ましいと言える。
よって、上記回転角(絶対値)の範囲としては、例えば、60度以上85度以下の範囲内に設定されれば、ある程度の効果を期待でき、さらには70度以上80度以下の範囲内に設定されることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の範囲としては、60度以上80度以下の範囲を考えてもよく、70度以上85度以下の範囲を考えてもよい。
ただし、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、偏向角の変化に伴うS偏光およびP偏光の光量の変化の仕方は、図18で示したものとは逆になる。すなわち、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも大きくなる。
また、図20は、平面ミラー6の角度の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は平面ミラー6の法線とXY平面とのなす角度ηであり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+55度)における平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−55度)における平面ミラー6での反射率で割った数値である。なお、平面ミラー6よりも前段の光学系の構成など、平面ミラー6の角度以外については実施例1のままである。
横軸が0度のときは、反射光がレンズに向かって射出されるので、別の部材で光路分離しない限り、平面ミラー6より後の光学系を配置できず、現実には不可能な角度設定である。また、光量差の問題に関しても、画像幅方向の左右で差が生じず、ポリゴンミラー4での光量差を打ち消すことができない。
一方、本実施例のように平面ミラー6をXY平面に対して傾けて配置する場合、同図に示すように、画像両端に対応する偏向角での反射率の比が、角度ηの変化に伴って変化する。ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、当然、平面ミラー6への入射光について、偏向角のプラス側とマイナス側とで反射率にある程度の差を持たせることが必要である。この点を考慮すると、図20より、平面ミラー6の角度ηの上限としては、70度以下が望ましく、65度以下がより望ましく、60度以下がより一層望ましいと言える。また、平面ミラー6の下限としては、20度以上が望ましく、30度以上がより望ましく、40度以上がより一層望ましいと言える。
したがって、平面ミラー6の角度ηの適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができる。例えば、平面ミラー6の角度ηの範囲は、例えば20度以上70度以下の範囲であることが望ましく、30度以上65度以下の範囲であることがより望ましく、40度以上60度以下の範囲であることがより一層望ましいと言える。また、その他にも、平面ミラー6の角度ηの範囲としては、20度以上65度以下の範囲、20度以上60度以下の範囲、30度以上70度以下の範囲、30度以上60度以下の範囲、40度以上70度以下の範囲または40度以上65度以下の範囲を考えることもできる。
なお、本実施例で説明したレーザー走査装置は、以下のように表現することもできる。すなわち、本実施例のレーザー走査装置は、レーザー光を出射するレーザーダイオード1と、レーザー光を偏向させるポリゴンミラー4と、ポリゴンミラー4によって偏向されたレーザー光を感光体9方向に反射させる平面ミラー6とを備え、ポリゴンミラー4における入射光と反射光とが、ポリゴンミラー4の回転軸に垂直な偏向平面内にあるレーザー走査装置であって、平面ミラー6での法線と上記偏向平面とのなす角度が、20度以上70度以下の範囲内であり、レーザー光の偏光方向と上記偏向平面とのなす角度が、15度以上50度以下の範囲内であり、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、上記ポリゴンミラーでの反射光がレーザーダイオード1に近い側の偏向角で、平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、ポリゴンミラー4での反射光がレーザーダイオード1から遠い側の偏向角で、平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも小さくなるように、レーザーダイオード1を光軸回りに回転させる構成である。
また、本実施例のレーザー走査装置は、レーザー光を出射するレーザーダイオード1と、レーザー光を偏向させるポリゴンミラー4と、ポリゴンミラー4によって偏向されたレーザー光を感光体9方向に反射させる平面ミラー6とを備え、ポリゴンミラー4における入射光と反射光とが、ポリゴンミラー4の回転軸に垂直な偏向平面内にあるレーザー走査装置であって、平面ミラー6での法線と上記偏向平面とのなす角度が、20度以上70度以下の範囲内であり、レーザー光の偏光方向と上記偏向平面とのなす角度が、60度以上85度以下の範囲内であり、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、上記ポリゴンミラーでの反射光がレーザーダイオード1に近い側の偏向角で、平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、ポリゴンミラー4での反射光がレーザーダイオード1から遠い側の偏向角で、平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも大きくなるように、レーザーダイオード1を光軸回りに回転させる構成である。
なお、本実施例では、ポリゴンミラー4での偏向角の範囲が110度となる広角走査光学系に本発明を適用した例について説明したが、偏向角の範囲が110度以下の走査光学系にも本発明を適用することは可能である。この点は、以下の実施例でも同様である。ただし、偏向角が100度以上の広角の走査光学系においては、画像両端に対応する光についてのポリゴンミラー4での反射角が大きく異なり、その結果、反射率の差が大きくなるので、画像幅方向の光量分布の不均一性がより目立ちやすくなる。したがって、広角走査光学系に本発明を適用すれば、画像幅方向の光量分布を均一にできるという本発明の効果が特に大きなものとなる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図21は、本実施形態に係るレーザー走査装置の概略の構成を示す斜視図である。このレーザー走査装置は、実施の形態1のコリメータレンズ2およびシリンダレンズ3を、光学素子10で置き換えた以外は、実施の形態1と同様の構成である。
光学素子10は、単一の樹脂製の素子であり、回折面と反射面とを有している。より詳しくは、光学素子10における光入射面および光射出面は軸対称非球面の回折面であり、その間の光路中に自由曲面からなる2つの反射面が配されている。反射面は全反射するように設計されている。
本実施形態のように光源側の光学系を樹脂で構成する場合、透過面に屈折力を持たせると、温度変化が起きたとき、樹脂では屈折率変化がガラスに比べて大きいという影響を受けて、大きなデフォーカスを生じてしまう。そこで、光学素子10では、反射面に集光作用を持たせることと、回折面の波長依存性とを利用することによって、温度変化時のデフォーカスが小さくなるようにしている。
本実施形態のレーザー走査装置では、レーザーダイオード1が発したレーザー光は、光学素子10に入射し、光学素子10にて主走査方向は平行光、副走査方向は収束光となり、ポリゴンミラー4の光反射面上に副走査方向にのみ集光する。そして、上記光反射面にて入射光が反射されるとともに、ポリゴンミラー4の回転により、その反射方向が主走査方向に変化する。このようにポリゴンミラー4によって偏向されたレーザー光は、走査光学系第1レンズ5によって屈折された後、平面ミラー6によって反射され、走査光学系第2レンズ7によって再び屈折された後、ウインドウ8を透過して感光体9上に集光する。
次に、本実施形態のレーザー走査装置における光学設計について、実施例2として以下に説明する。
表8は、本実施例の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものである。この座標データの表し方は、実施例1と同様である。なお、表8における面番号1および4は、光学素子10における光入射側の回折面および光射出側の回折面を示し、面番号2および3は、光入射側の回折面と光射出側の回折面との間の光路中に配される2つの反射面をそれぞれ示している。
また、ポリゴンミラー4の座標は、画像中央を描画する時の光反射面の座標である。本実施例の各光学素子は、樹脂またはガラスで構成されている。より具体的には、光学素子10は、屈折率1.524の樹脂である。走査光学系第1レンズ5および走査光学系第2レンズ7は、いずれも屈折率1.537の樹脂である。ウインドウ8は屈折率1.511のガラスである。屈折率はいずれも、波長780nmにおける数値である。
また、表9ないし表16は、光学面の面構成(面形状)を示している。ただし、E−n=×10-nとする。
なお、軸対称回折面の面形状は、次の数4式によって表現される。ただし、aiは、非球面係数とする。
また、軸対称回折面の位相関数は、次の数5式によって表現される。ただし、biは、位相係数とする。
図22は、光学素子10側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。本実施例においても、レーザーダイオード1は発光点を2つ持っており、その間隔は14μmである。レーザー光の偏光方向は、2つの発光点が並ぶ方向と一致している。そして、このレーザーダイオード1は、光学素子10の光軸回りに水平(偏向平面)から−29.8度傾いている。つまり、本実施例では、レーザー光の偏光方向の偏向平面からの傾き方向が実施例1とは逆である。
この構成であっても、レーザー光は、主走査にも副走査にもずれた2点から射出されるので、光学系を介して感光体9に入射した時の集光位置も2つのレーザー光で主走査にも副走査にもずれた位置になる。本実施例では、2つのレーザー光は、主走査方向に85μm、副走査方向に42μm離れた位置に集光する。
図23は、本実施例での感光体9上での光量分布を示す説明図である。図23では、ポリゴンミラー4にて反射される光の偏向角の変化に伴って変化する感光体9への照射光量を、その最大値1で規格化して示している。
図24は、本実施例でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。また、図25は、本実施例での走査光学系第1レンズ5、走査光学系第2レンズ7およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。
本実施例の光学素子10が持つ自由曲面の反射面では、レーザー光は全反射する。このとき、入射側でレーザー光の偏光方向が垂直であれば、反射面ではほぼすべてP偏光となり、入射側でレーザー光の偏光方向が水平であれば、反射面ではほぼすべてS偏光となる。これらの場合、光学素子10から射出される光の偏光の状態は、入射前と同じ方向の直線偏光である。
しかし、入射側でレーザー光の偏光方向が垂直でも水平でもなく角度を持っている場合、反射面でS偏光とP偏光とが混在することになる。この場合、反射後の位相についてS偏光とP偏光とで差が生じ、射出されるレーザー光は楕円偏光となる。本実施例では、ポリゴンミラー4に入射するレーザー光の偏光の状態は楕円偏光となっていて、この点で実施例1とは異なっている。
ただし、ポリゴンミラー4への入射時にS偏光となる成分は、光学素子10の光反射面に入射するときは2面ともP偏光の成分である。一方、ポリゴンミラー4への入射時にP偏光となる成分は、光学素子10の光反射面に入射するときは2面ともS偏光の成分である。したがって、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角が同じなら、S偏光およびP偏光のそれぞれの強度は、実施例1の場合と変わらない。
実施例1と実施例2とでは、偏向角も、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角の絶対値も、同じではないが似通っているため、図4のポリゴンミラー4の反射率と図24のポリゴンミラー4の反射率とは、その変化の仕方が似通っている。しかし、平面ミラー6の反射率は、光学素子10による楕円偏光化の影響が出て、その挙動が異なっている。
ここで、図26は、レーザーダイオード1の傾きを実施例2と逆方向にした場合、つまり、レーザーダイオード1を光学素子10の光軸回りに水平(偏向平面)から実施例2とは逆向きに29.8度傾けた場合における、光学素子10側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。なお、レーザーダイオード1をこのように配置した光学系を比較例2とする。
図27は、比較例2での感光体9上での光量分布を示す説明図である。図27においても、ポリゴンミラー4にて反射される光の偏向角の変化に伴って変化する感光体9への照射光量を、その最大値1で規格化して示している。また、図28は、比較例2でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。また、図29は、比較例2での走査光学系第1レンズ5、走査光学系第2レンズ7およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。
比較例2でも、2つのレーザー光は、主走査方向に85μm、副走査方向に42μm離れた位置に集光するので、複数光での描画が可能である。しかし、図27で示したように、感光体9上の光量分布は、偏向角の両端(±58度)で実施例2と比べて大きな差が生じていることがわかる。これは、レーザーダイオード1の光軸回りの回転方向を図26のように逆転させると、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化の仕方が図24の場合とは逆になり(図28参照)、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すことができないからである。
以下、本実施例において、偏向角の変化に伴うポリゴンミラー4での反射率の変化を、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すようにする光学系の設計の詳細について説明する。
図30は、ポリゴンミラー4での反射後の楕円偏光について、短径と長径との比を計算したものである。この比が0ならば直線偏光、1ならば円偏光である。図31は、本実施例にて、偏向角変化に伴って変化する平面ミラー6への入射光のS偏光成分およびP偏光成分の光量をそれぞれ示す説明図である。ポリゴンミラー4への入射光は楕円偏光であるが、上述のように、ポリゴンミラー4への入射角が大きくなるとS偏光とP偏光との位相ずれが大きくなってくるために、ポリゴンミラー4での反射後の偏光の状態は偏向角によって異なっており、偏向角マイナス側では直線偏光に近い状態になっている。結果的に、偏向角プラス側と偏向角マイナス側とでは、平面ミラー6への入射光のS偏光成分とP偏光成分との比が変化しており、平面ミラー6での反射率に差が生じている。
図32は、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角、すなわち、光の偏光方向がXY平面となす角度γであり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+58度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−58度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率で割った数値である。なお、レーザーダイオード1の角度以外の構成については、実施例1のままである。
本実施例では、横軸が−29.8度の場所であり、図32での計算範囲も−90度から0度の範囲でとっているが、絶対値を考えれば(回転角だけを考えれば)、画像両端に対応する光のポリゴンミラー4での反射率の差を平面ミラー6での反射率の差で打ち消すための望ましい条件は、実施例1の場合と変わらない。無論、それぞれの条件で望ましい回転方向は異なり、逆に回転させると反射率の差を強め合ってしまうので、回転角の絶対値だけでなく回転方向も適切に選ぶことが重要である。
すなわち、図31に示したように、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも小さくなるようにレーザーダイオード1を光軸回りに回転させた場合、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、上記回転角(絶対値)の上限は、50度以下であることが望ましく、40度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の下限は、15度以上であることが望ましく、20度以上であることがより望ましい。
よって、上記回転角(絶対値)の適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができ、例えば、15度以上50度以下の範囲、20度以上40度以下の範囲、15度以上40度以下の範囲、20度以上50度以下の範囲などを考えることができる。
また、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化を逆転させることができる。この場合、レーザーダイオード1の回転角の変化に伴う平面ミラー6についての反射率比の変化の仕方は、ちょうど図32で示した平面ミラー6についてのグラフを、反射率比1を境にして全体的に上へ折り返したようなグラフとなる。
したがって、レーザーダイオード1の回転方向を逆にした場合でも、ポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とが反射率比1を挟んでほぼ対称となる回転角の範囲を選択すれば、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ことができる。そのような回転角(絶対値)の上限としては、85度以下であることが望ましく、80度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の下限としては、60度以上であることが望ましく、70度以上であることがより望ましいと言える。
よって、上記回転角(絶対値)の範囲としては、例えば、60度以上85度以下の範囲、70度以上80度以下の範囲、60度以上80度以下の範囲、70度以上85度以下の範囲を考えることができる。
ただし、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、偏向角の変化に伴うS偏光およびP偏光の光量の変化の仕方は、図31で示したものとは逆になる。すなわち、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも大きくなる。
また、図33は、平面ミラー6の角度の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は、平面ミラー6での法線がXY平面(偏向平面)となす角度ηであり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+58度)における平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−58度)における平面ミラー6での反射率で割った数値である。なお、平面ミラー6よりも前段の光学系の構成など、平面ミラー6の角度以外については実施例2のままである。
実施例1と同様に、平面ミラー6をXY平面に対して傾けて配置する本実施例の場合でも、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、当然、平面ミラー6への入射光について、偏向角のプラス側とマイナス側とで反射率にある程度の差を持たせることが必要である。この点を考慮すると、図33より、平面ミラー6の角度ηの上限としては、70度以下が望ましく、65度以下がより望ましく、60度以下がより一層望ましいと言える。また、平面ミラー6の下限としては、20度以上が望ましく、30度以上がより望ましく、40度以上がより一層望ましいと言える。
したがって、平面ミラー6の角度ηの適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができ、例えば、20度以上70度以下の範囲、30度以上65度以下の範囲、40度以上60度以下の範囲、20度以上65度以下の範囲、20度以上60度以下の範囲、30度以上70度以下の範囲、30度以上60度以下の範囲、40度以上70度以下の範囲、40度以上65度以下の範囲などを考えることができる。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1および2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図34は、本実施形態に係るレーザー走査装置の概略の構成を示す斜視図である。このレーザー走査装置は、レーザーダイオード1と、コリメータレンズ2と、シリンダレンズ3と、ポリゴンミラー4(本実施形態では平面視で正五角形状)と、平面ミラー6(第1平面ミラー)と、走査レンズ11と、平面ミラー12(第2平面ミラー)と、ウインドウ8とを、レーザーダイオード1から感光体9に至る光路に沿って有している。すなわち、本実施形態のレーザー走査装置は、走査光学系レンズとして1個の走査レンズ11を用い、平面ミラーとして2枚の平面ミラー6・12を用いた点以外は、実施の形態1と同様の構成である。
走査レンズ11は、平面ミラー6からの入射光を屈折させて平面ミラー12に導くものであり、平面ミラー6・12の間の光路中に設けられている。平面ミラー12は、平面ミラー6から走査レンズ11を介して入射する光を感光体9方向に反射させるための折り返しミラーである。
上記構成のレーザー走査装置では、レーザーダイオード1が発したレーザー光は、コリメータレンズ2によって平行光とされた後、シリンダレンズ3によってポリゴンミラー4の光反射面上に副走査方向にのみ集光する。そして、上記光反射面にて入射光が反射されるとともに、ポリゴンミラー4の回転により、その反射方向が主走査方向に変化する。このようにポリゴンミラー4によって偏向されたレーザー光は、平面ミラー6によって反射され、走査レンズ11によって屈折された後、平面ミラー12にて再度反射され、ウインドウ8を透過して感光体9上に集光する。
次に、本実施形態のレーザー走査装置における光学設計について、実施例3として以下に説明する。
表17は、本実施例の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものである。この座標データの表し方は、実施例1と同様である。なお、表17における面番号1ないし12は、それぞれ、コリメータレンズ2の光入射側の面および光射出側の面、シリンダレンズ3の光入射側の面および光射出側の面、ポリゴンミラー4の光反射面、平面ミラー6の光反射面、走査レンズ11の光入射側の面および光射出側の面、平面ミラー12の光反射面、ウインドウ8の光入射側の面および光射出側の面、感光体9の表面(評価面)をそれぞれ示している。
また、ポリゴンミラー4の座標は、画像中央を描画する時の光反射面の座標である。本実施例の各光学素子は、樹脂またはガラスで構成されている。より具体的には、コリメータレンズ2は、屈折率1.825のガラスである。シリンダレンズ3およびウインドウ8は、屈折率1.511のガラスである。走査レンズ11は、屈折率1.519の樹脂である。屈折率はいずれも、波長780nmにおける数値である。
また、表18ないし表21は、光学面の面構成(面形状)を示している。ただし、E−n=×10-nとする。
図35は、コリメータレンズ2側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。なお、同図中の矢印は、レーザー光の偏光方向を示している。本実施例では、発光点は1つしかなく、また、レーザー光の偏光方向は主走査平面(偏向平面)から−80度の傾きを持っている。
図36は、本実施例での感光体9上での光量分布を示す説明図である。図36では、ポリゴンミラー4にて反射される光の偏向角の変化に伴って変化する感光体9への照射光量を、その最大値1で規格化して示している。
図37は、本実施例でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。また、図38は、本実施例での走査レンズ11およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。ポリゴンミラー4以降の各素子は、偏向角によって反射率や透過率が異なるが、特にポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化が大きいことがわかる。
また、第1平面ミラーである平面ミラー6での反射率の変化は、第2平面ミラーである平面ミラー12での反射率の変化に比べて大きい。これは、走査レンズ11によって光線が屈折されることで、平面ミラー12に入射する光線の主走査面内での角度が小さくなるためである。
図39は、走査レンズ11および平面ミラー6・12について、XY平面内での光線の角度を示す説明図であり、図40は、走査レンズ11および平面ミラー6・12について、XZ平面内で光線や面の角度関係を示す説明図である。図39においては、平面ミラー6での反射を無視して、X軸の方向に走査レンズ11と平面ミラー12とがあるものとして描画している。図39では、平面ミラー6への入射光がX軸となす角度(ψ1とおく)は、偏向角と同じであり、平面ミラー12への入射光がX軸となす角度(ψ2とおく)は、偏向角よりも絶対値が小さくなっている。
本実施例のように平面ミラーが複数ある場合、各平面ミラーへの入射光がX軸となす角度の大小関係は、走査光学系の設計によって変わりうるが、偏向角の範囲が100度を超えるような広角の走査光学系の場合、その角度をより広げるようなレンズを上流側に配置すると設計が困難になる。したがって、より上流側に配置された平面ミラーほど、その平面ミラーへの入射光がX軸となす角度が大きくなると考えてほぼ差し支えない。つまり、平面ミラーが複数ある場合、画像両端に対応する光のポリゴンミラー4での反射率の差と、ポリゴンミラー4よりも後の光路中で最も上流側に位置する平面ミラーにおける画像両端に対応する光の反射率の差とが、互いに打ち消し合うようにしておかないと、トータルとしてバランスをとることは難しくなる。
ここで、図41は、比較例3ないし5において、コリメータレンズ2側からレーザーダイオード1の発光点を観察した状態を示す説明図である。比較例3では、レーザーダイオード1の傾きを実施例3と逆方向にしている。つまり、比較例3では、レーザーダイオード1をコリメータレンズ2の光軸回りに水平(偏向平面)から80度傾けている。一方、比較例4では、レーザーダイオード1の傾きを0度とし、比較例5では、レーザーダイオード1の傾きを90度としている。
また、図42は、比較例3での感光体9上での光量分布を示す図である。また、図43は、比較例3でのポリゴンミラー4および平面ミラー6において、偏向角変化に伴う反射率の変化をそれぞれ示す説明図である。図44は、比較例3での走査レンズ11およびウインドウ8において、偏向角変化に伴う透過率の変化をそれぞれ示す説明図である。図45は、比較例4および5での感光体9上での光量分布を示す図である。なお、図42および図45では、感光体9への照射光量をその最大値1で規格化している。
実施例3の場合、実施例1および実施例2のような2ビーム方式の場合と違って、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角は自由に選べるが、比較例3ないし5のいずれの場合でも、画像幅方向の光量の分布は実施例3よりも不均一になっている。したがって、1ビーム方式の本実施例においても、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すために、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角およびその回転方向を適切に設定することが必要である。
以下、本実施例において、偏向角の変化に伴うポリゴンミラー4での反射率の変化を、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化で打ち消すようにする光学系の設計の詳細について説明する。
図46は、実施例3において、ポリゴンミラー4での反射後の楕円偏光について、短径と長径との比を計算したものである。この比が0ならば直線偏光であり、1ならば円偏光である。実施例3では、レーザー光の偏光方向が−80度と垂直に近く、ポリゴンミラー4への入射光のP偏光成分がS偏光成分に比べて少ないため、入射角が大きくなっても反射光は直線偏光に近い状態になっている。
図47は、実施例3において、平面ミラー6への入射光のS偏光成分およびP偏光成分の光量をそれぞれ示したものである。本実施例においても、偏向角マイナス側と偏向角プラス側とでS偏光成分の光量に差があるため、基本的な考え方は実施例1および2と同様である。つまり、画像両端に対応する光のポリゴンミラー4での反射率の差を、同じく画像両端に対応する光の平面ミラー6での反射率の差で打ち消すためには、平面ミラー6への入射光について、S偏光成分とP偏光成分との比が偏向角のプラス側とマイナス側とで差が生じるようにすれば良く、また、そのためには、レーザーダイオード1を光軸回りに回転させればよい。
図48は、レーザーダイオード1の光軸回りの回転角の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は、光の偏光方向がXY平面となす角度であり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+50.4度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−50.4度)におけるポリゴンミラー4および平面ミラー6での反射率で割った数値である。レーザーダイオード1の角度以外は実施例3のままである。
本実施例では、横軸が−80度の場所であり、図48での計算範囲も−90度から0度の範囲でとっているが、絶対値を考えれば(回転角だけを考えれば)、画像両端に対応する光のポリゴンミラー4での反射率の差を平面ミラー6での反射率の差で打ち消すための望ましい条件は、実施例1の場合と変わらない。無論、それぞれの条件で望ましい回転方向は異なり、逆に回転させると反射率の差を強め合ってしまうので、回転角の絶対値だけでなく回転方向も適切に選ぶことが重要である。
また、本実施例では、横軸の値は−80度であるが、その付近ではポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とが反射率比1を挟んで反対側にある状態であり、両者が互いに打ち消し合う状態であることがわかる。ただし、ちょうどその値でなくとも、光量の不均一性を緩和することは可能である。
したがって、図47に示したように、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも大きくなるようにレーザーダイオード1を光軸回りに回転させた場合、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、上記回転角(絶対値)の上限は、85度以下であることが望ましく、80度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の下限としては、60度以上であることが望ましく、70度以上であることがより望ましいと言える。
よって、上記回転角(絶対値)の範囲としては、例えば、60度以上85度以下の範囲、70度以上80度以下の範囲、60度以上80度以下の範囲、70度以上85度以下の範囲を考えることができる。
また、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、偏向角の変化に伴う平面ミラー6での反射率の変化を逆転させることができる。この場合、レーザーダイオード1の回転角の変化に伴う平面ミラー6についての反射率比の変化の仕方は、ちょうど図48で示した平面ミラー6についてのグラフを、反射率比1を境にして全体的に上へ折り返したようなグラフとなる。
したがって、レーザーダイオード1の回転方向を逆にした場合でも、ポリゴンミラー4についての反射率比と平面ミラー6についての反射率比とが反射率比1を挟んでほぼ対称となる回転角の範囲を選択すれば、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ことができる。そのような回転角(絶対値)の上限としては、50度以下であることが望ましく、40度以下であることがより望ましいと言える。また、上記回転角(絶対値)の下限は、15度以上であることが望ましく、20度以上であることがより望ましい。
よって、上記回転角(絶対値)の適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができ、例えば、15度以上50度以下の範囲、20度以上40度以下の範囲、15度以上40度以下の範囲、20度以上50度以下の範囲などを考えることができる。
ただし、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、偏向角の変化に伴うS偏光およびP偏光の光量の変化の仕方は、図47で示したものとは逆になる。すなわち、レーザーダイオード1の回転方向を逆にすると、画像両端に対応する2つの偏向角のうち、偏向角プラス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合が、偏向角マイナス側で平面ミラー6に入射する光に占めるS偏光の割合よりも小さくなる。
また、図49は、平面ミラー6の角度の変化に伴う反射率比の変化を示す説明図である。横軸は平面ミラー6の光反射面における法線がXY平面(偏向平面)となす角度γであり、縦軸は最も光源寄りの偏向角(+50.4度)における平面ミラー6での反射率を、逆側の端の偏向角(−50.4度)における平面ミラー6での反射率で割った数値である。平面ミラー6よりも以前の光学系については、平面ミラー6の角度以外は実施例3のままである。
実施例1と同様に、平面ミラー6をXY平面に対して傾けて配置する本実施例の場合でも、ポリゴンミラー4での反射率の変化を平面ミラー6での反射率の変化で打ち消す(緩和する)ためには、当然、平面ミラー6への入射光について、偏向角のプラス側とマイナス側とで反射率にある程度の差を持たせることが必要である。この点を考慮すると、図49より、平面ミラー6の角度ηの上限としては、70度以下が望ましく、65度以下がより望ましく、60度以下がより一層望ましく、50度以下がさらに望ましいと言える。また、平面ミラー6の下限としては、20度以上が望ましく、30度以上がより望ましく、40度以上がより一層望ましいと言える。
したがって、平面ミラー6の角度ηの適正な範囲としては、上述した上限および下限を組み合わせることにより種々設定することができ、例えば、20度以上70度以下の範囲、30度以上65度以下の範囲、40度以上60度以下の範囲の他、20度以上65度以下の範囲、20度以上60度以下の範囲、20度以上50度以下の範囲、30度以上70度以下の範囲、30度以上60度以下の範囲、30度以上50度以下の範囲、40度以上70度以下の範囲、40度以上65度以下の範囲、40度以上50度以下の範囲などを考えることができる。