JP4329329B2 - 光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体の情報記録面に光束を集光させる光学素子、対物光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、短波長赤色レーザの実用化に伴い、CD(コンパクトディスク)と同程度の大きさで大容量化させた高密度の光情報記録媒体(光ディスクともいう)であるDVD(デジタルビデオディスク)が製品化されている。
DVD用記録再生装置では、650nmの半導体レーザを使用したときの対物レンズの光デイスク側の開口数NAを0.6〜0.65としている。DVDはトラックピッチ0.74μm、最短ピット長0.4μmであり、CDのトラックピッチ1.6μm、最短ピット長0.83μmに対して半分以下に高密度化されている。また、DVDにおいては、光ディスクが光軸に対して傾いたときに生じるコマ収差を小さく抑えるために、保護基板厚は0.6mmとCDの保護基板厚の半分になっている。
【0003】
また、上述したCD、DVDの他に、光源波長や透明基板厚さが異なる種々の規格の光ディスク、例えばCD−R,RW(追記型コンパクトディスク)、VD(ビデオディスク)、MD(ミニディスク)、MO(光磁気ディスク)なども商品化されて普及している。
さらに半導体レーザの短波長化が進み、波長400nm程度の青紫色半導体レーザ光源と、像側開口数(NA)を0.85程度まで高めた対物レンズを用いた保護基板厚0.1mm程度の高密度光ディスク(以下、「高密度DVD」という。)や、像側開口数(NA)を0.65程度とした対物レンズを用いた保護基板厚0.6mm程度の高密度DVDの研究・開発が進んでいる。
【0004】
そして、一つの対物レンズを介して二種類の光ディスクの情報記録面へ二種類の異なる波長の光束を集光させることができる、いわゆる互換性を有する光ピックアップ装置が各種提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
上記特許文献1及び特許文献2には、複数の鋸歯断面形状の回折輪帯が形成された回折光学素子を備える光ピックアップ装置が開示されている。
これら装置は、例えば、二種類の異なる波長の光束それぞれに対し、ブレーズの深さを所定の次数の回折光の回折効率がより高くなる深さにすることで高い回折効率を得、その回折光を所定の光ディスクに集光させ、一つの対物レンズで二種類の光ディスクに対して情報の記録/再生を行なうものである。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−93179号公報
【特許文献2】
特開2000−81566号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に開示された装置は、二種類の異なる波長の光束でそれぞれ異なる回折次数の回折光を対物レンズにより所定の光ディスクに集光するものであり、その回折次数は二種類の波長の差により決定されるため、回折次数の組み合わせが限られ、二種類の光ディスクそれぞれの軸上色収差や温度変化による球面収差等の補正にも制限がある。
また、特許文献2に開示された装置は、二種類の異なる波長の光束で同じ回折次数の回折光を対物レンズにより所定の光ディスクに集光するものである。
【0007】
図8は、特許文献1及び2に開示されたような周知の鋸歯状断面構造の回折光学素子を用いて、光源波長を350nmから800nmの範囲で変化させた場合の、−2次回折光から+2次回折光の回折効率を計算したものである。
この回折光学素子では、波長400nm付近における−1次回折光の回折効率がほぼ100%となるように設定している。従って、例えばDVD用として利用される波長650nm付近では、−1次回折光の回折効率が50%から60%程度に減少してしまい、波長差が大きい光ディスクの互換では光量不足を招くおそれがあった。
このような、特定波長以外の波長に関する回折効率の低下は、回折光学素子の一つのブレーズを特定波長の光束が通過する際に、この光束に対して特定波長の整数倍の光路差を与えるようにブレーズの寸法を設計しているため、特定波長以外の波長の光束がブレーズを通過する際には、この光束に対して波長の非整数倍の光路差が与えられることが一つの要因である。
【0008】
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、基板厚さの異なる二種類の光情報記録媒体に対する情報の再生及び/又は記録に用いられ、二種類の波長に関して十分な回折効率を得られる光学素子、対物光学素子及び光ピックアップ装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の光源(3)から出射される第1の波長λ1の光束を用いて保護基板厚t1の第1の光情報記録媒体(2)に対して情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源(5)から出射される第2の波長λ2(λ2>λ1)の光束を用いて保護基板厚t2(t2≧t1)の第2の光情報記録媒体(4)に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置(1)の光学素子(10)であって、少なくとも一つの光学面(10a)に光軸(L)を中心とした複数の回折輪帯(21)からなる回折構造(20)を備えると共に、前記回折輪帯の複数の光学面のそれぞれに、前記回折輪帯を通過する光束に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造(30)を備え、前記回折構造の光学面は、光路差付与構造が無いと仮定した場合、前記波長λ1の光束のL次(L≠0)回折光が最大の回折効率となる回折作用を有し、波長λ2の光束のM次(M≠0)回折光が最大の回折効率となる回折作用を有する構造(22)であり、前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光の少なくとも一方に対しては位相に変化を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくし、
前記波長λ1が、370nm≦λ1≦430nmであることを特徴とする。
【0010】
ここで、本明細書中において光学素子とは、光ピックアップ装置の光学系を構成する、例えば、対物レンズ(対物光学素子)、カップリングレンズ(コリメータ)、ビームエキスパンダ、ビームシェイパ、補正板等の部材を指す。
また、光学素子としては、単一のレンズのみで構成されているものに限定されず、複数のレンズを光軸方向に組み合わせて構成されるレンズ群をまとめて光学素子としてもよい。
対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズとともに、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズを指すものとする。
【0011】
また、光情報記録媒体とはCD、DVD、CD−R、MD、MO、高密度DVD等の所定の波長の光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行なう一般的な光ディスクを指す。
【0012】
また、情報の再生とは光情報記録媒体の情報記録面上に記録された情報を再生することをいい、情報の記録とは光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録することをいう。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
また、本発明における光学素子及び光ピックアップ装置は、情報の記録だけあるいは再生だけを行うために用いるものであってもよいし、記録と再生の両方を行うために用いるものであってもよい。
【0013】
また、光学面上に形成される回折構造とは、光学素子の表面に光軸を中心としたほぼ同心円状の輪帯を設けて、入射光束を回折させる作用を有した周期構造のことをいう。
また、本発明における回折作用を有する構造とは、光軸を含む平面(子午断面)でその断面をみた場合に鋸歯状あるいは光軸方向に沿った階段状となったもの等の入射光束を回折させる作用を有する構造をいう。
また、回折構造は光学面上の全域に形成されている必要は無く、例えば、光軸を中心とした所定の領域のみに形成されていても良い。
また、回折構造は一つの光学素子が備える一つあるいは複数の光学面のうち少なくとも一つの光学面に形成されていればよい。
従って、例えば、光学素子としての対物レンズが備える、光源側の光学面又は光情報記録媒体側の光学面に回折構造を形成してもよく、さらには、それぞれの光学面に回折構造を形成する等、光ピックアップ装置を構成する光学素子の複数の光学面に回折構造を形成してもよい。
本発明における実質的に位相に変化を与えないとは、全く位相を変化させない場合に限らず、回折効率に大きな影響を与えない程度の位相変化の範囲(±0.2πラジアン程度の範囲)であれば良い。
【0014】
また、一般に回折構造を備えた光学面からは、0次回折光、±1次回折光、±2次回折光、・・・、と無数の次数の回折光が生じるが、回折輪帯の形状を変更することにより、特定の次数の回折効率を他の次数の回折効率よりも高くしたり、場合によっては、特定の1つの次数(例えば、+1次回折光)の回折効率をほぼ100%とすることができる。
なお、回折効率とは回折構造により生じる回折光の光量の比率を表すもので、全次数の回折光の回折効率の和は1となる。
また、最大の回折効率を有するL次(M次)回折光とは、波長λ1(λ2)の光が光学素子に入射したときに、回折光の回折効率が理論的に他の次数と比較して最大となる回折次数L(M)における回折光を指す。
【0015】
また、本明細書中において、保護基板とは光情報記録媒体の情報記録面を保護するために、情報記録面の光束入射面側に形成された光学的に透明な平行平板を指し、保護基板厚とは平行平板の厚さを指す。光源から出射された光束は、対物レンズによって保護基板を介して光情報記録媒体の情報記録面上に集光されることになる。
また、本明細書において、光学素子の像側の開口数とは、その光学素子のうち最も光情報記録媒体側に位置するレンズ面の開口数を指すものである。
また、開口数とは、光ピックアップ装置に設けられた絞りやフィルタ等の絞り機能を有する部品又は部材や、光学素子が備える回折構造などによって、最良像点におけるスポットの形成に寄与する光束が制限された結果として定義される開口数である。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも一つの光学面上に光軸を中心とした複数の回折輪帯からなる回折構造と、前記回折輪帯の複数の光学面のそれぞれに、前記回折輪帯を通過する光束に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を備える。
そして、光路差付与構造が、回折作用を有する構造によって回折された最大の回折効率を有する波長λ1の光束のL次回折光と波長λ2の光束のM次回折光のうち少なくとも一方に対して位相に変化を与えることにより、光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、波長λ1の光束のL次回折光と波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくし、前記波長λ1が、370nm≦λ1≦430nmである。
従って、波長λ1の光束のL次回折光と波長λ2の光束のM次回折光の双方を、回折効率が高い状態で出射することができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の光学素子であって、前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光のどちらか一方に対しては実質的に位相に変化を与えず、他方に対しては位相差を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られると共に、光路差付与構造により波長λ1の光束に対して実質的な位相の変化が与えられず、波長λ2の光束に対して位相の変化が与えられることで、波長λ1の光束のL次回折光を、最大の回折効率を維持した状態で第1の光情報記録媒体に出射でき、また、波長λ2の光束のM次回折光を、光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、高い回折効率の状態にして第2の光情報記録媒体に出射できる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の光学素子であって、前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光の両方に対して位相差を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られると共に、光路差付与構造により波長λ1の光束と波長λ2の光束の両方に対して位相差が与えられることで、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、波長λ1の光束のL次回折光及び波長λ2の光束のM次回折光の両方を高い回折効率の状態にして第1の光情報記録媒体及び第2の光情報記録媒体に出射できる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学素子であって、前記光路差付与構造が、前記波長λ1の光束のL次回折光に対して前記波長λ1のほぼ整数倍の光路差を付与することにより、前記回折構造により生じることになる位相差に実質的に変化を与えず、前記波長λ2の光束のM次回折光に対して、前記波長λ2の非整数倍の光路差を付与することにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は2と同様の効果を得られる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子であって、前記回折作用を有する構造が鋸歯状の不連続面を有し、前記光路差付与構造が光軸方向に沿った階段状の不連続面(31)からなることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の光学素子であって、前記光路差付与構造を構成する光軸方向に沿った階段状の不連続面の数が2又は3であることを特徴とする。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子であって、前記光学面が光軸を中心とする略円形の中央領域と、中央領域の周辺に位置する周辺領域の2つの領域を備え、中央領域に前記回折構造と前記光路差付与構造とを備えることを特徴とする。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項と同様の効果を得られると共に、入射光束を必要に応じて中央領域のみあるいは周辺領域のみを通過させたり、あるいは中央領域と周辺領域の両方を通過させることにより、回折効率や回折次数に対する設計の自由度をより増大させることができる。また、各種収差の補正も容易となる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子であって、L=Mであることを特徴とする。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学素子であって、前記波長λ2が、620nm≦λ2≦680nmであることを特徴とする。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学素子であって、前記光学素子は、対物光学素子であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜9のいずれか一項と同様の効果を得られると共に、対物光学素子に対して第1の波長λ1の光束と第2の波長λ2の光束が共に発散光として入射した場合に、球面収差及び/又は波面収差を補正した状態で所定の光情報記録媒体に集光させる。
従って、従来の無限系の光ピックアップ装置において用いられていた、光源からの出射光束を平行光化させて対物光学素子に入射させるためのコリメータレンズ等の光学素子が不要となり、装置の小型化や低コスト化を達成できる。
なお、対物光学素子が波面収差を0.05λrms以内に収められるよう補正した状態で集光させることが望ましい。
【0031】
請求項11記載の発明は、第1の光源から出射される第1の波長λ1の光束を用いて保護基板厚t1の第1の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源から出射される第2の波長λ2(λ2>λ1)の光束を用いて保護基板厚t2(t2≧t1)の第2の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学素子を有することを特徴とする。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、請求項1〜10のいずれか一項と同様の効果を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の光学素子、対物光学素子及び光ピックアップ装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0036】
図1に示すように、光ピックアップ装置1は、光情報記録媒体である第一の光情報記録媒体2(本実施の形態においては高密度DVD)に対して第一の半導体レーザ3(光源)から波長λ1(=405nm)の光束を出射し、第二の光情報記録媒体4(本実施の形態においてはDVD)に対して第二の半導体レーザ5(光源)から波長λ2(=655nm)の光束を出射することによって、第一の光情報記録媒体2又は第二の光情報記録媒体4の情報記録面6に情報を記録したり、記録した情報を読み取るものである。
【0037】
そして、高密度DVD2に情報を記録又は再生する場合は、第一の半導体レーザ3から出射された波長λ1の光束が、ビームスプリッタ7を経て、コリメータ8を透過し平行光束となる。さらにビームスプリッタ9を経て絞り11によって絞られ、対物レンズ10により高密度DVDの保護基板を介して情報記録面6に集光される。
この際の対物レンズ10による波長λ1の光束に対する作用については後述する。
そして、情報記録面6で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ10、絞り11を介して、ビームスプリッタ9を経て、コリメータ8を通過し、収束光となる。さらに、ビームスプリッタ7で反射され、シリンドリカルレンズ12により非点収差が与えられ、凹レンズ13を経て、光検出器14上ヘ入射し、光検出器14から出カされる信号を用いて、高密度DVD2に記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0038】
DVD4に情報を記録又は再生する場合は、第二の半導体レーザ5から出射された波長λ2の光束が、ビームスプリッタ15を経て、コリメータ16を透過し平行光束となる。さらにビームスプリッタ9で反射され、絞り11によって絞られ、対物レンズ10によりDVD4の保護基板を介して情報記録面6に集光される。
この際の対物レンズ10による波長λ2の光束に対する作用については後述する。
そして、情報記録面6で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ10、絞り11を介して、ビームスプリッタ9で反射され、コリメータ16を透過し、収束光となる。さらに、ビームスプリッタ15で反射され、シリンドリカルレンズ17により非点収差が与えられ、凹レンズ18を経て、光検出器19上ヘ入射し、光検出器19から出力される信号を用いて、DVD4に記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0039】
また、光検出器14、19上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出結果に基づいて、2次元アクチュエータ60が第一の半導体レーザ3からの光束又は第2の半導体レーザ5からの光束を、高密度DVD2又はDVD4の情報記録面6上に結像するように対物レンズ10を移動させるとともに、所定のトラックに結像するように対物レンズ10を移動させるようになっている。
【0040】
図2に示すように、光学素子としての対物レンズ10は、光ピックアップ装置の光学系を構成する両面非球面の単レンズであり、その一方(光源側)の光学面10a上に光路差付与構造30を有する回折構造20が形成されている。
具体的には、対物レンズ10は光軸を中心とした複数の鋸刃状の回折輪帯21からなる回折構造20を備えており、各回折輪帯21の光学面は鋸歯状の回折作用を有する構造22を備え、さらに、回折作用を有する構造22を通過する光束に対して所定の光路差を付与する階段形状の不連続面31(分割面)からなる光路差付与構造30を備えている。
本実施の形態においては、分割面31は一つの回折輪帯21に対して2つ設けられている。
【0041】
図3(a)は、波長λ1(405nm)と波長λ2(655nm)の二種類の光束であって、図3(b)(c)に示す回折格子(n1=1.525、n2=1.507(n1、n2はそれぞれ波長λ1、λ2の光束に対する屈折率))に紙面左側から入射する平行光がその回折格子を通過する際のブレーズ深さに対する位相差の変化を示すものである。
図3(a)中に二点鎖線で示す線は図3(b)に示すような周知の鋸歯状回折構造での波長λ1の1次回折光の光束に対する位相差を、一点鎖線で示す線は波長λ2の1次回折光の光束に対する位相差を表すものである。
図3(a)中に実線で示す線は、図3(c)に示す本発明における光路差付与構造を有する回折構造での波長λ1の1次回折光の光束に対する位相差を、点線で示す線は波長λ2の1次回折光に対する位相差を表すものである。
各分割面31の深さd1は、波長λ1の2波長分の光路差が生じる深さとなっている。つまり、一つの分割面31を通過する波長λ1の光束と、その隣の分割面31を通過する波長λ1の光束との間に、波長λ1のほぼ2倍の光路差が生じ、かつ波面のずれが生じない長さに設定されている。
【0042】
このように、本発明の光学素子は、光学機能面に所定の深さの分割面31を設けてなる光路差付与構造30により、光学素子(対物レンズ10)を通過する波長λ1及びλ2の光束の少なくとも一方に対しては位相に変化を与える機能を有し、また、各分割面31の表面形状31aを回折作用を有する構造22を各分割面31に対応する区間で分割して光軸L方向に移動させてなる回折輪帯21により、波長λ1及び波長λ2の光束のうち最大の回折効率を有する回折光を高い回折効率を有する状態で出射する機能を有するものである。
例えば、図3に示すように、波長λ1(405nm)の光束が光学素子に入射した場合、上述のように、各分割面の表面31aの形状は、図3(b)に示した鋸歯状の回折輪帯21の表面の形状を、各分割面31に対応する区間で分割して、光軸L方向に、波長λ1の光束に対して2波長分の光路差が付与されるように移動させた形状に近似したものとなっている。
【0043】
また、波長λ1の光束には光路差付与構造30により2波長分の光路差が付与される。
従って、図3(a)に示すように、波長λ1の光束に対し、光路差付与構造30による2波長分の光路差を付与する前(二点鎖線)と後(実線)で、位相差の分布がほぼ一致する構造となっている。つまり、波長λ1の光束の1次回折光に対して位相の変化がほとんど生じない構造となっている。
一方、波長λ2の光束が光学素子に入射した場合、周知の回折構造では波長λ2の光束には回折構造により波長λ1の光束に対して最大で約0.6波長分の光路差が生じる。
また、波長λ2の光束には光路差付与構造30により0.6×2=1.2波長分の光路差が付与される。従って合計で1.8波長分の光路差が生じることになる。
【0044】
ここで、光学素子が光路差付与構造30を備えず、回折構造のみを備えている場合では、上述のように、波長λ1の光束と波長λ2の光束の位相差は最大で1.0−0.6=0.4波長分、つまり図3(a)中に矢印で示すように約0.8πラジアンとなる。
ところが、光学素子が光路差付与構造30を備えていることにより、波長λ1の光束と波長λ2の光束の位相差は最大で2.0−1.8=0.2波長分、つまり、つまり図3(a)中に矢印で示すように約0.4πラジアンとなり、回折構造のみを備えている場合と比較して小さくなることが分かる。
【0045】
このように、本発明の光学素子10は、回折構造20の光学面が有する回折作用により最大の回折効率を有することになる波長λ1の光束の所定次数の回折光と波長λ2の光束の所定次数の回折光のうち、波長λ1の光束の回折光に対しては光路差付与構造30が実質的に位相の変化を与えず、波長λ2の光束の回折光に対しては光路差付与構造30が位相に変化を与えることで、波長λ1の光束の回折光と波長λ2の光束の回折光との位相差の絶対値を小さくするものである。
なお、位相差の絶対値を0.6πラジアンより小さい範囲内に収めることが望ましい。
図4は、この際の、光源波長を350nm〜800nmの範囲で変化させた場合の、−2次回折光から+2次回折光の回折効率を計算したものである。
図4から分かるように、波長400nm付近における−1次回折光の回折効率がほぼ100%となるだけでなく、波長650nm付近でも回折効率を85%程度に維持することができ、十分な光量を確保できる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、上述のように、各分割面31の深さd1(光軸方向の長さ)を波長λ2のほぼ整数倍の光路差をもつ長さとし、各分割面31の表面31aの形状を、図3(b)に示した鋸歯状の回折輪帯の表面の形状を、各分割面31に対応する区間で分割して、光軸L方向に平行移動させた形状に近似したものとしたが、これら分割面31の深さd1及び表面31aの形状は、使用する光束の波長等に応じて適宜変更することが可能である。
【0047】
(実施例1)
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置1及び光学素子10の第1の実施例について説明する。
本実施例においては、図2に示すように、両面非球面の単レンズである光学素子としての対物レンズの一方(光源側)の光学面上であって、光軸から一定高さ以下(本実施例においては1.2mm以下)の範囲A1(以下、「中央領域A1」という。)に回折構造20と光路差付与構造30を備えるものである。
また、光源側の光学面上であって、中央領域A1以外の範囲A2(以下、「周辺領域A2」という。)には、通常の鋸歯状回折輪帯が形成されている。
一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31は、光軸Lから離れるに従ってレンズ内部に落ち込むように形成されている。
また、回折作用を有する構造22を波長λ1の1次回折光の回折効率が約100%となるよう設定し、光路差付与構造30において、波長λ1の整数倍の光路差が付与されるように設定している。
表1、表2に対物レンズのレンズデータを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、本実施例の対物レンズ4は、第1の光源から出射される第1の波長λ1=660nmのときの焦点距離f=2.33mm、像側開口数NA=0.65に設定されており、第2の光源から出射される第2の波長λ2=785nmのときの焦点距離f=2.35mm、像側開口数NA=0.51に設定されている。
表1中の面番号2、2´、3はそれぞれ、対物レンズ10の光源側の光学面10aのうち、光軸Lからの高さhが1.20mm以下の中央領域A1、光軸Lからの高さが1.20mm以上の周辺領域A2、対物レンズ10の光情報記録媒体側の光学面10bを示しており、面番号4、5はそれぞれ、光情報記録媒体の保護基板の表面、記録層を表している。また、Riは曲率半径、diは第i面から第i+1面までの光軸方向の変位量、niは各面の屈折率を表している。
【0050】
対物レンズの第2面、第2´面、第3面は、それぞれ次式(数1)に表2に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、A2iは非球面係数である。
【表2】
【0053】
また、回折輪帯のピッチは数2の光路差関数に、表2に示す係数を代入した数式で規定される。
【0054】
【数2】
ここで、B2iは光路差関数の係数である。
【0055】
また、数3は、光軸からの任意の高さにおける波長λ1あるいは波長λ2の光束の光路差を表す数式である。
【0056】
【数3】
また、λi、p、N、Mの値については、表3に示す。
【表3】
【0057】
本実施例では、各回折輪帯の回折効率は、波長λ1の1次回折光に対して約100%、波長λ2の1次回折光に対して約95%の回折効率を得られる。これは、周知の回折構造に比べ約5%高い回折効率となる。
【0058】
(実施例2)
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置1及び光学素子10の第2の実施例について説明する。
本実施例においても、上記実施例1と同様に、図2に示すような両面非球面の単レンズである光学素子としての対物レンズ10の一方(光源側)の光学面10a上であって、光軸から1.34mm以下の中央領域A1に回折構造20と光路差付与構造30を備えるものである。
また、周辺領域A2には通常の鋸歯状回折輪帯が形成されている。
一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31は、光軸Lから離れるに従ってレンズ内部に落ち込むように形成されている。
また、回折作用を有する構造22を波長λ1の1次回折光の回折効率が約100%となるよう設定し、光路差付与構造30において、波長λ1の整数倍の光路差が付与されるように設定している。
表4、表5に対物レンズのレンズデータを示す。
【0059】
【表4】
【表5】
【0060】
表4に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される第1の波長λ1=405nmのときの焦点距離f=2.00mm、像側開口数NA=0.85に設定されており、第2の光源から出射される第2の波長λ2=655nmのときの焦点距離f=2.06mm、像側開口数NA=0.65に設定されている。
【0061】
対物レンズの第2面、第2´面、第3面は、それぞれ上記数1に表4及び表5に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0062】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表5に示す係数を代入した数式で規定される。
【0063】
また、光軸からの任意の高さにおける波長λ1あるいは波長λ2の光束の光路差は上記数3に表3に示す係数を代入した数式で表される。
【0064】
本実施例では、各回折輪帯の回折効率は、波長λ1の1次回折光に対し約100%、波長λ2の1次回折光に対し約85%の回折効率を得られる。これは、周知の回折構造に比べ約30%高い回折効率となる。
【0065】
(実施例3)
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置1及び光学素子10の第3の実施例について説明する。
本実施例においては、図5に示すように、両面非球面の単レンズである光学素子としての対物レンズ10の一方(光源側)の光学面10aのほぼ全面に回折構造20と光路差付与構造30を備えるものである。
一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31は、光軸Lから離れるに従ってレンズ内部に落ち込むように形成されている。
また、回折作用を有する構造22を波長λ1の1次回折光の回折効率が約100%となるよう設定し、光路差付与構造30において、波長λ1の整数倍の光路差が付与されるように設定している。
表6、表7に対物レンズのレンズデータを示す。
【0066】
【表6】
【表7】
【0067】
表6に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される第1の波長λ1=405nmのときの焦点距離f=2.38mm、像側開口数NA=0.65に設定されており、第2の光源から出射される第2の波長λ2=655nmのときの焦点距離f=2.40mm、像側開口数NA=0.65に設定されている。
【0068】
対物レンズの第2面、第3面は、それぞれ上記数1に表6及び表7に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0069】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表7に示す係数を代入した数式で規定される。
【0070】
また、光軸からの任意の高さにおける波長λ1あるいは波長λ2の光束の光路差は上記数3に表3に示す係数を代入した数式で表される。
本実施例では、各回折輪帯の回折効率は、波長λ1の1次回折光に対し約100%、波長λ2の1次回折光に対し約85%の回折効率を得られる。これは、周知の回折構造に比べ約30%高い回折効率となる。
【0071】
(実施例4)
次に、上記実施の形態で示した光ピックアップ装置1及び光学素子10の第4の実施例について説明する。
本実施例においては、上記実施例3と同様に、図5に示す両面非球面の単レンズである光学素子としての対物レンズ10の一方(光源側)の光学面10aのほぼ全面に回折構造20と光路差付与構造30を備えるものである。
一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31は、光軸Lから離れるに従ってレンズ内部に落ち込むように形成されている。
また、回折作用を有する構造22を波長λ1、λ2の光束双方の1次回折光が約80%となるよう設定し、光路差付与構造30において、波長λ1、λ2の光束双方に対して、それぞれの波長の整数倍ではない光路差が付与されるように設定している。
表8、表9に対物レンズのレンズデータを示す。
【0072】
【表8】
【表9】
【0073】
表8に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される第1の波長λ1=405nmのときの焦点距離f=2.38mm、像側開口数NA=0.65に設定されており、第2の光源から出射される第2の波長λ2=655nmのときの焦点距離f=2.40mm、像側開口数NA=0.65に設定されている。
【0074】
対物レンズの第2面、第3面は、それぞれ上記数1に表8及び表9に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0075】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表9に示す係数を代入した数式で規定される。
【0076】
また、光軸からの任意の高さにおける波長λ1あるいは波長λ2の光束の光路差は上記数3に表3に示す係数を代入した数式で表される。
【0077】
本実施例では、各回折輪帯の回折効率は、波長λ1、λ2双方の1次回折光に対し約95%と高い回折効率を得られる。
【0078】
(実施例5)
次に、本発明の光学素子及び光ピックアップ装置の第5の実施例について、図9を用いて説明する。
光ピックアップ装置70は、第一の光情報記録媒体80(本実施例においてはDVD)に対して第一の半導体レーザ71(光源)から波長λ1(=655nm)の光束を出射し、第二の光情報記録媒体81(本実施例においてはCD)に対して第二の半導体レーザ72(光源)から波長λ2(=785nm)の光束を出射する。そして、これら光束を対物レンズ10(対物光学素子)に発散光として入射させ、所定の光情報記録媒体の情報記録面80a、81aに集光させることによって、各種情報の記録や記録した情報の読み取りを行なうものである。
なお、第一の半導体レーザ71と第二の半導体レーザ72は光源としてユニット化されているため、図9には、各半導体レーザから出射される波長λ1の光束と波長λ2の光束をまとめて実線で表すものとする。
【0079】
DVD80に情報を記録又は再生する場合は、第一の半導体レーザ71から出射された波長λ1の光束は回折格子73を通過し、ハーフミラー74で反射する。さらに絞り75によって絞られ、対物レンズ10によりDVDの保護基板80bを介して情報記録面80aに集光される。
そして、情報記録面80aで情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ10、絞り75、ハーフミラー74を通過し、回折格子(図示せず)を通過して光検出器76上ヘ入射し、光検出器76から出カされる信号を用いて、DVD80に記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0080】
CD81に情報を記録又は再生する場合も同様に、第二の半導体レーザ72から出射された波長λ2の光束が回折格子73を通過して、ハーフミラー74で反射する。さらに絞り75によって絞られ、対物レンズ10によりCDの保護基板81bを介して情報記録面81aに集光される。なお、図9には便宜上、CDの保護基板81bとDVDの保護基板80bを同じ図で表している。
そして、情報記録面81aで情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ10、絞り75、ハーフミラー74を通過し、回折格子(図示せず)を通過して光検出器76上ヘ入射し、光検出器76から出カされる信号を用いて、CD81に記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0081】
また、光検出器76上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出結果に基づいて、図示しない2次元アクチュエータは第一の半導体レーザ71からの光束又は第2の半導体レーザ72からの光束がDVD80又はCD81の情報記録面80a、81a上に結像するように対物レンズ10を移動させるとともに、所定のトラックに結像するように対物レンズ10を移動させるようになっている。
【0082】
本実施例においても、上記実施例1と同様に、図2に示すような両面非球面の単レンズである光学素子としての対物レンズ10の一方(光源側)の光学面10a上であって、光軸から1.53mm以下の中央領域A1に回折構造20と光路差付与構造30を備えるものである。
また、周辺領域A2には通常の鋸歯状回折輪帯が形成されており、この回折輪帯による、周辺領域A2を通過する波長λ1の光束の1次回折光の回折効率がほぼ100%となるように設定されている。
一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31は、光軸Lから離れるに従ってレンズ内部に落ち込むように形成されている。
各分割面31の深さd1は、波長λ2の1波長分の光路差が生じる深さとなっている。つまり、一つの分割面31を通過する波長λ2の光束と、その隣の分割面31を通過する波長λ2の光束との間に、波長λ2のほぼ倍の光路差が生じ、かつ波面のずれが生じない長さに設定されている。
また、回折作用を有する構造22を波長λ2の1次回折光の回折効率が約100%となるよう設定している。
表10、表11に対物レンズのレンズデータを示す。
【0083】
【表10】
【表11】
【0084】
表10に示すように、本実施例の対物レンズは、第1の光源から出射される第1の波長λ1=655nmのときの焦点距離f=2.85mm、像側開口数NA=0.60、結像倍率m=−1/8.0に設定されており、第2の光源から出射される第2の波長λ2=785nmのときの焦点距離f=2.87mm、像側開口数NA=0.47、結像倍率m=−1/8.1に設定されている。
【0085】
表10中の面番号1、2は回折格子73の光源側の表面、回折格子73の光情報記録媒体側の表面、面番号3、3´、4はそれぞれ、対物レンズ10の光源側の光学面のうち光軸Lからの高さhが1.53mm以下の中央領域A1、光軸Lからの高さが1.53mm以上の周辺領域A2、対物レンズ10の光情報記録媒体側の光学面を示しており、面番号5、6はそれぞれ、光情報記録媒体の保護基板80b、81bの表面、情報記録面80a、81aを表している。また、Riは曲率半径、diは第i面から第i+1面までの光軸L方向の変位量、niは各面の屈折率を表している。
【0086】
対物レンズ10の第3面、第3´面、第4面は、それぞれ数1に表10及び表11に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0087】
また、回折輪帯のピッチは上記数2の光路差関数に、表11に示す係数を代入した数式で規定される。
【0088】
また、光軸からの任意の高さにおける波長λ1あるいは波長λ2の光束の光路差は上記数3に表12に示す係数を代入した数式で表される。
【表12】
【0089】
本実施例に示した光学素子10及び光ピックアップ装置70では、回折効率が波長λ1の1次回折光に対し約96%、波長λ2の1次回折光に対し約100%となる。
ここで、周知の回折構造(鋸歯状の回折構造)を備える光学素子及び光ピックアップ装置では、回折効率は波長λ1の1次回折光に対し約90%、波長λ2の1次回折光に対し約100%となる。
従って、本実施例に示した光学素子10及び光ピックアップ装置70では、周知の回折構造に比べ波長λ1の光束に対して約6%の光量増加を達成できる。
【0090】
なお、本発明に係る光学素子は、上記実施例1〜5に示したものに限定されず、図6に示すような、平板状の光学素子の一方の面の全域に回折構造及び光路差付与構造を設けたものであってもよい。
また、一つの回折輪帯21に形成されている各分割面31が、光軸Lから離れるに従って光源側に突出する形状であっても良い。
【0091】
また、図2には、鋸歯状の回折輪帯21の表面の形状を各分割面31に対応する区間で分割して、所定の光路差をもつようにした形状を各分割面31の表面31aの形状としたが、これに限らず、図7に示すように、光路差付与機能を有した、光軸方向に沿った階段状の不連続面50からなる回折輪帯の表面形状を、各分割面31に対応する区間で分割して所定の光路差をもつようにした形状を各分割面の表面31aの形状としてもよい。
【0092】
このように、本発明に係る光学素子は、光学機能面の少なくとも一部に、光軸を中心とした複数の回折作用を有する構造からなる回折構造と、輪帯の光学面上に形成した、この輪帯を通過する光束に対して所定の光路差を付与する階段形状の不連続面からなる光路差付与構造とを備えるものであればよい。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、波長λ1(λ2)の光束のL次(M次)回折光を高い回折効率を維持した状態で第1の光情報記録媒体に出射でき、また、波長λ2(λ1)の光束のM次(L次)回折光についても高い回折効率を有した状態で第2の光情報記録媒体に出射でき、あるいは双方とも高い回折効率でそれぞれ第1、第2の光情報記録媒体に出射できるので、光情報記録媒体の種類に応じた十分な光量の回折光が得られる光学素子及び光ピックアップ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る光ピックアップ装置及び光学素子の一例を示す概略図である。
【図2】対物レンズの構造を示す要部側面図である。
【図3】波長λ1の光束と波長λ2の光束に生じる位相差を示すグラフ(a)、光路差付与構造を持たない対物レンズの要部拡大図(b)、光路差付与構造を持つ対物レンズの要部拡大図(c)である。
【図4】回折効率を示すグラフである。
【図5】対物レンズの構造を示す要部側面図である。
【図6】対物レンズの構造を示す要部側面図である。
【図7】対物レンズの構造を示す要部拡大側面図である。
【図8】回折効率を示すグラフである。
【図9】光ピックアップ装置及び光学素子の他の実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
A1 中央領域
A2 周辺領域
L 光軸
1 光ピックアップ装置
2 第1の光情報記録媒体
3 第1の光源
4 第2の光情報記録媒体
5 第2の光源
10 光学素子
10a 光学面
20 回折構造
21 回折輪帯
22 回折作用を有する構造
30 光路差付与構造
31 階段状の不連続面(分割面)
70 光ピックアップ装置
71 第1の光源
72 第2の光源
80 第1の光情報記録媒体
81 第2の光情報記録媒体
Claims (11)
- 第1の光源から出射される第1の波長λ1の光束を用いて保護基板厚t1の第1の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源から出射される第2の波長λ2(λ2>λ1)の光束を用いて保護基板厚t2(t2≧t1)の第2の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置の光学素子であって、
少なくとも一つの光学面に光軸を中心とした複数の回折輪帯からなる回折構造を備えると共に、前記回折輪帯の複数の光学面のそれぞれに、前記回折輪帯を通過する光束に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を備え、
前記回折構造の光学面は、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合、前記波長λ1の光束のL次(L≠0)回折光が最大の回折効率となる回折作用を有し、波長λ2の光束のM次(M≠0)回折光が最大の回折効率となる回折作用を有する構造であり、
前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光の少なくとも一方に対しては位相に変化を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくし、
前記波長λ1が、
370nm≦λ1≦430nm
であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1に記載の光学素子であって、
前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光のどちらか一方に対しては実質的に位相に変化を与えず、他方に対しては位相差を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする光学素子。 - 請求項1に記載の光学素子であって、
前記光路差付与構造は、前記回折作用を有する構造によって生じる前記波長λ1の光束のL次回折光又は前記波長λ2の光束のM次回折光の両方に対して位相差を与えることにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折光との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする光学素子。 - 請求項1又は2に記載の光学素子であって、
前記光路差付与構造が、前記波長λ1の光束のL次回折光に対して前記波長λ1のほぼ整数倍の光路差を付与することにより、前記回折構造により生じることになる位相差に実質的に変化を与えず、前記波長λ2の光束のM次回折光に対して、前記波長λ2の非整数倍の光路差を付与することにより、前記光路差付与構造が無いと仮定した場合よりも、前記波長λ1の光束のL次回折光と前記波長λ2の光束のM次回折との位相差の絶対値を小さくすることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記回折作用を有する構造が鋸歯状の不連続面を有し、
前記光路差付与構造が光軸方向に沿った階段状の不連続面からなることを特徴とする光学素子。 - 請求項5に記載の光学素子であって、
前記光路差付与構造を構成する光軸方向に沿った階段状の不連続面の数が2又は3であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学面が光軸を中心とする略円形の中央領域と、中央領域の周辺に位置する周辺領域の2つの領域を備え、
中央領域に前記回折構造と前記光路差付与構造とを備えることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子であって、
L=Mであることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記波長λ2が、
620nm≦λ2≦680nm
であることを特徴とする光学素子。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学素子は、対物光学素子であることを特徴とする光学素子。 - 第1の光源から出射される第1の波長λ1の光束を用いて保護基板厚t1の第1の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行い、第2の光源から出射される第2の波長λ2(λ2>λ1)の光束を用いて保護基板厚t2(t2≧t1)の第2の光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学素子を有することを特徴とする光ピックアップ装置。
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