本発明は、マルチキャリア信号の送信機に係り、特に複数のキャリアに対して、各キャリアの入力レベルの変動に対応して増幅器へのマルチキャリア信号の入力レベルの変動を平均的に抑えることのできる送信機に関する。
一般的に、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access:広帯域符号分割多元接続)方式を移動通信方式として採用する移動通信システムに備えられた基地局装置(CDMA基地局装置)では、物理的に遠く離れた移動局装置(CDMA移動局装置)まで無線信号を到達させる必要があるため、送信対象となる信号を増幅器(アンプ)で大幅に増幅して送信出力することが必要である。
しかしながら、増幅器はアナログデバイスであるため、その入出力特性は非線形な関数となる。特に、飽和点と呼ばれる増幅限界以降では、増幅器に入力される電力が増大しても出力電力がほぼ一定となる飽和状態になってしまう。そして、この非線形な出力によって出力信号に非線形歪が発生する。
通常、増幅前の送信信号は、希望信号帯域外の信号成分が帯域制限フィルタによって低レベルに抑えられるが、増幅器通過後の信号では非線形歪が発生して希望信号帯域外(隣接チャネル)へ信号成分が漏洩する。
例えば基地局装置では上記したように送信電力が高いため、このような隣接チャネルへの漏洩電力の大きさは厳しく規定されており、隣接チャネル漏洩電力(ACP:Adjacent Channel leakage Power)を削減する技術が用いられる。
上記技術の一つとして、送信対象の信号の最大電力(ピーク)を制限して出力するピークリミッタを増幅器の前段に設け、ピークを制限した信号を増幅器の入力信号とする技術が知られている。
ピークリミッタを用いたCDMA基地局送信機として、平成14年2月8日公開の特開2002−44054号「リミッタ回路付きキャリア合成送信回路」(出願人:株式会社日立国際電気、発明者:佐々木宏平)が提案されている。
上記発明は、基地局からのマルチキャリア送信時に、リミッタ回路(ピークリミッタ)が全キャリアを多重した信号に基づいて、その瞬時電力と平均電力との比率を瞬時にピークファクタとして算出し、その瞬時ピークファクタを基準値であるピークファクタ閾値と比較し、その結果に基づいてクリッピングの必要程度に適合したリミット係数を出力し、キャリア毎に当該リミット係数との乗算を行ってピーク制限を行うことにより、マルチキャリアを増幅する増幅器のダイナミックレンジを有効に活用し、不要なピーク制限を行うことなく、移動局におけるビット誤り率を低下させることができるものである。
特開2002−44054号公報(第5〜7頁、第1図)
従来のピークリミッタは、増幅器に入力される信号の最大電力を抑えるため、入力信号に対し、入力信号の平均電力及び入力信号の瞬時電力を検出し、さらに平均電力の情報と瞬時電力の情報からリミットを施すべきピークの有無を検出してピーク検出情報を出力し、当該ピーク検出情報に従って、リミットを施すべきピークが検出された場合に、入力される入力信号の電力を予め定められているリミット電力に制限して出力信号を出力するものとし、その結果リミット電力に制限された信号が増幅器に入力されるようにすることが考えられる。
また、複数のキャリアを扱う送信機においては、複数キャリアが多重(合成)されたマルチキャリア信号が増幅器に入力されるため、ピークリミッタは、キャリア多重後の瞬時電力及び平均電力を算出し、これらの値に基づいて、ピークの有無の検出を行う。
ここで、ピークの有無の検出方法としては、入力信号の瞬時電力と平均電力の比を求め、予め設定されたピークファクタ閾値と比較して大であれば、リミットを施すべきピークであると判断する方法が考えられる。ここでピークファクタとは、図8に示すように増幅器入力信号における最大電力と平均電力の比であり、すなわち平均電力に対して最大電力の差が小さいほどピークファクタは小さいことになる。図8は、一般的な増幅器のピークファクタの説明図である。
通常、ピークリミッタに入力される入力信号は、帯域制限前のベースバンド信号であり、ピークリミッタによってリミッタ処理が施された後にフィルタによって帯域制限が行われるので、増幅器において歪は発生せず、また、ピークリミッタによって入力信号のピーク値が制限されているため、入力信号のピークファクタが小さくなっており、帯域制限後に増幅を行う増幅器の動作点を上げることができるので電力効率を向上できるものである。
ここで、ピークリミッタによるリミッタ後に帯域制限を行うため、帯域制限後のピークファクタは帯域制限前のピークファクタより通常は大きくなる。これは、帯域制限前の矩形波が、帯域制限後に鈍ることで、ピークが高くなるポイントが現れるためである。そこで、ピークリミッタに予め設定されるピークファクタ閾値は、帯域制限後のピークファクタが大きくなることを考慮して低めに設定する必要がある。
次に、ピークリミッタを用いた一般的なCDMA基地局送信機及び送信増幅器について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、一般的なCDMA基地局で用いる送信増幅器の構成ブロック図であり、また図7は、一般的なCDMA基地局送信機の構成ブロック図である。
図6のCDMA基地局送信増幅器は、n個(n>2)のキャリアを変調及び合成し、マルチキャリア信号として出力する送信機1と、デジタル・アナログ変換を行うD/Aコンバータ2と、無線周波数への変換処理を行う周波数変換部3と、無線周波数信号を増幅する電力増幅部4とから構成される。
また、図7の送信機は、図6の送信機1に相当するものであり、キャリア毎に送信データを拡散変調して合成するキャリア符号多重信号生成部50-1〜50-nと、キャリア毎に独立した系列として信号ピークの制限を行うピーク電力抑圧部(ピークリミッタ)51と、各キャリアの帯域制限を行う波形整形フィルタ52-1〜52-nと、各キャリアに対してデジタル直交変調を行うデジタル直交変調部53-1〜53-nと、デジタル直交変調されたキャリアを合成する加算器54とから構成される。
図7のCDMA基地局送信機の動作は、デジタルデータである各キャリアの送信データが対応するキャリア符号多重信号生成部50-1〜50-nに入力され、固有の拡散符号によって拡散変調されて合成され、各キャリアは同相成分(I成分)及び直交成分(Q成分)とが出力され、さらにピーク電力抑圧部51で各キャリアに対し、予め設定されたピークファクタ閾値に基づいてピーク値が制限される。ピーク値の制限された各キャリアは、対応する波形整形フィルタ52-1〜52-nにおいて帯域制限が行われ、さらに対応するデジタル直交変調部53-1〜53-nで直交変調が行われる。そして、加算器54で直交変調された各キャリアが合成され、マルチキャリア信号として出力される。
図7の送信機から出力されたマルチキャリア信号は、さらに図6において、D/Aコンバータ2でアナログ変換され、周波数変換部3で無線周波数への変換が行われた後、電力増幅部4で増幅される。増幅後のマルチキャリア信号は、アンテナ(図示せず)を介して無線送信される。
すなわち図6の送信増幅器は、送信機1のピーク電力抑圧部51によって各キャリアのピーク値が制限され、帯域制限、アップコンバートを行い、その後に結合し、結合後のマルチキャリア信号を電力増幅部4で増幅することになり、結合前のキャリアのピークファクタが小さくなることにより、結合後のマルチキャリア信号のピークファクタも小さくなるため、結果的に電力増幅器4への入力信号のピークファクタが抑圧されて、電力増幅器4における動作点を上げることができるものである。
しかしながら、上記のCDMA基地局送信機では、複数のキャリアに対してピーク制限(抑圧)を行う場合に、キャリアの入力レベルが変動すると、ピーク制限後のレベルが変動するという問題点があった。
上述したように、複数のキャリアのピーク制限を行う場合には、ピークリミッタは、キャリア多重後の入力レベル、すなわちキャリアの総和電力に基づいて瞬時電力及び平均電力を算出し、これらの比とピークファクタ閾値とを比較して、ピークの有無を検出し、各キャリアに対してピーク制御を行っている。
ピークリミッタにおいて、ピークファクタ閾値は、各キャリアが最大出力、同一レベルである場合に最適化されているが、全てのキャリアが最大出力、同一レベルでないときでもピーク抑圧は行われる。また、ピークファクタ閾値は、一般的に、キャリア数に依存して決められる。
すなわち、上記構成の送信機1のピーク電力抑圧部51(ピークリミッタ)におけるピーク制限は、装置構成上で入力される複数キャリア(図ではn個)全てにキャリア信号が存在し、且つ各キャリア信号が同程度のレベルであるという仮定の下で、キャリアの総和電力に基づいてピークを検出した時に、各キャリアに対して一律の抑圧率で均等にピーク電力抑圧を施し、それにより全キャリアのトータルで希望のピーク抑圧が達成されて、結果的にマルチキャリアのピークファクタを小さくするものである。
そのようなピーク電力抑圧部51を送信機に用いた場合、特定のキャリアの入力レベルが一時的に急激に変動すると、複数キャリア全てにピーク制限(抑圧)が施されてピーク制限後のレベルが変動し、その結果結合後のマルチキャリア信号のレベルが変動するという問題点があった。
ここで、ピークファクタ閾値が固定されたままで、あるキャリアの入力レベルが変動した場合、キャリアの総和電力が変動するため、ピークリミッタによるピーク制限は最適なものとならず、マルチキャリア信号のレベルが±0.3dBの範囲で変動するパワー偏差が発生する。
また、特定のキャリアの入力レベルが一定で、他の全てのキャリアの入力レベルが変動した場合にも、キャリアの総和電力が変動するため、ピークリミッタによるピーク制限は最適なものとならず、入力レベルが一定のキャリアの制限後のレベルが変動するパワー偏差が発生する。このパワー偏差はキャリア数に依存しており、総キャリア数が2キャリアの場合には±0.3dB、4キャリアの場合には±1.2dBの範囲で変動する。
すなわち、図7に示した従来の送信機の場合、特定キャリアの入力レベルが急激に変動した場合、キャリアの総和電力にも急激な変動が生じるため、平均電力はさほど変化しなくても瞬時電力が急激に大きくなり、ピークファクタが大きくなってピークが検出される。その結果、全てのキャリアに対して一律のピーク抑圧が働き、入力レベルが変動していないキャリアに対して大きな影響を及ぼし、全体的に電力が低下し、マルチキャリア信号のレベルが低下するという第1の問題点が発生する。
また、例えば、複数キャリアの内の幾つかのキャリアが停止している場合に、動作しているキャリア内の特定キャリアの入力レベルが急激に変動し、ピークリミッタにおいてピークファクタが大きくなってピークが検出された場合、停止しているキャリアを含めた全てのキャリアが同レベルであるという前提の抑圧率で一律にピーク抑圧されるため、幾つかのキャリアが停止している場合にはピークリミッタにおける抑圧率が十分でなく、マルチキャリア信号のレベルを十分低下しきれないことになるという第2の問題点が発生する。
また、前述したようにピーク電力抑圧部51では、後続の帯域制限(波形整形フィルタ52)で発生するピークも鑑みてピークファクタ閾値を低めに設定するため、現状の回路における必要性以上にピーク抑圧が動作する場合があるという第3の問題点がある。
一方、W−CDMA通信方式では、基地局の送信機における出力差が0.1dB或いは0.5dB相当のパワーコントロールが実現されようとしているが、上記送信機では、上記問題点により、送信キャリア数の増減及び各キャリアにおける入力レベルの増減により、ピーク制限が十分に行われない場合やピーク制限をかけすぎてレベルが過剰に抑圧されるなどの上述した問題が発生するため、規定内の出力差の達成が難しいという問題点があった。
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、送信キャリア数の増減や各キャリアの入力レベルの変動に対応して増幅器へのマルチキャリア信号の入力レベルの変動を平均的に抑えることのできる送信機を提供することを目的とする。
本発明は、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力するピーク抑圧部と、ピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する平均入力電力レベルを各々演算する入力電力演算部と、ピーク抑圧部から出力された後の各キャリアに対する平均出力電力レベルを各々演算する出力電力演算部と、入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力する監視部と、監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行うレベル調整部を備えたことを特徴とする。
また本発明は、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の信号レベルが調整されるようにマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力するピーク抑圧部と、ピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する平均入力電力レベルを各々演算する入力電力演算部と、ピーク抑圧部から出力された後の各キャリアに対する平均出力電力レベルを各々演算する出力電力演算部と、各キャリアに対し、入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、各キャリアの信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力する監視部と、各キャリアに対し、対応したレベル制御情報に基づいて各キャリアのレベル調整を行うレベル調整部を備えたことを特徴とする。
また本発明は、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力するピーク抑圧部と、ピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する総和の平均入力電力レベルを演算する入力電力演算部と、ピーク抑圧部から出力された各キャリアに対する総和の平均出力電力レベルを演算する出力電力演算部と、入力電力演算部で演算された総和の平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された総和の平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力する監視部と、監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行うレベル調整部を備えたことを特徴とする。
また本発明は、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、入力されたマルチキャリア信号の電力レベルの瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されるとマルチキャリアに対して電力レベルに対応した乗算係数を乗算することによってマルチキャリアの電力が規定の電力となるように電力レベルを抑圧したマルチキャリア信号を出力するピーク抑圧部と、ピーク抑圧部への入力前のマルチキャリア信号に対する平均入力電力レベルを演算する入力電力演算部と、ピーク抑圧部から出力されたマルチキャリア信号に対する平均出力電力レベルを演算する出力電力演算部と、入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報を出力する監視部と、監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行うレベル調整部を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、ピーク抑圧部が入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力し、入力電力演算部がピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する平均入力電力レベルを各々演算し、出力電力演算部がピーク抑圧部から出力された後の各キャリアに対する平均出力電力レベルを各々演算し、監視部が入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力し、レベル調整部が監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行う送信機としているので、キャリアの入力レベルの変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を抑えることができる効果がある。
本発明によれば、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の信号レベルが調整されるようにマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、ピーク抑圧部が入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力し、入力電力演算部がピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する平均入力電力レベルを各々演算し、出力電力演算部がピーク抑圧部から出力された後の各キャリアに対する平均出力電力レベルを各々演算し、監視部が各キャリアに対し、入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、各キャリアの信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力し、レベル調整部が各キャリアに対し、対応したレベル制御情報に基づいて各キャリアのレベル調整を行う送信機としているので、キャリアの入力レベルの変動に対応して、キャリアの電力レベル抑圧後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることができ、結果的にマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる効果がある。
本発明によれば、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、ピーク抑圧部が入力された各キャリアの電力レベルの総和の瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されると各キャリアに対して電力レベルの総和に対応した乗算係数を一律に乗算することによって各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるように各キャリアの電力レベルを抑圧したキャリアを出力し、入力電力演算部がピーク抑圧部への入力前の各キャリアに対する総和の平均入力電力レベルを演算し、出力電力演算部がピーク抑圧部から出力された各キャリアに対する総和の平均出力電力レベルを演算し、監視部が入力電力演算部で演算された総和の平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された総和の平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報としてゲイン値を出力し、レベル調整部が監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行う送信機としているので、複数のキャリアの総和の平均電力からマルチキャリア信号のレベル制御を行うことで、キャリアの入力レベルの変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を抑えることができる効果がある。
本発明によれば、複数のキャリアを合成して得られたマルチキャリア信号の入力レベルの変動を抑える送信機であって、ピーク抑圧部が入力されたマルチキャリア信号の電力レベルの瞬時電力と平均電力との比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することによりピークの有無を検出し、ピークが検出されるとマルチキャリアに対して電力レベルに対応した乗算係数を乗算することによってマルチキャリアの電力が規定の電力となるように電力レベルを抑圧したマルチキャリア信号を出力し、入力電力演算部がピーク抑圧部への入力前のマルチキャリア信号に対する平均入力電力レベルを演算し、出力電力演算部がピーク抑圧部から出力されたマルチキャリア信号に対する平均出力電力レベルを演算し、監視部が入力電力演算部で演算された平均入力電力レベルと出力電力演算部で演算された平均出力電力レベルに基づいてゲイン値を決定し、マルチキャリア信号の信号レベルを制御するレベル制御情報を出力し、レベル調整部が監視部の出力するレベル制御情報に基づいてマルチキャリア信号のレベル調整を行う送信機としているので、マルチキャリアの入力レベルの変動に対応して、ピーク抑圧後のレベルの変動を抑えることができる効果がある。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、以下で説明する機能実現手段は、当該機能を実現できる手段であれば、どのような回路又は装置であっても構わず、また機能の一部又は全部をソフトウェアで実現することも可能である。更に、機能実現手段を複数の回路によって実現してもよく、複数の機能実現手段を単一の回路で実現してもよい。
本発明の実施の形態に係る送信機は、大きく4つの類型に分類することができる。
第1の類型は、複数のキャリアがピーク電力抑圧及び帯域制限及び直交変調(まとめて、デジタル信号処理と呼ぶ)されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、キャリア毎に、キャリアの平均入力電力(及び、場合によって当該キャリアのデジタル信号処理後の平均電力)に基づいて、当該キャリアのデジタル信号処理後の信号レベルを調整するキャリアレベル調整を行うか、又は特定のキャリアの平均入力電力(及び、場合によって当該キャリアのデジタル信号処理後の平均出力電力)に基づいて、マルチキャリア信号の信号レベルを調整するマルチキャリアレベル調整を行うか、またはキャリアレベル調整とマルチキャリアレベル調整の両方を行う送信機である。
第1の類型の送信機については、第1〜第4の実施例として詳細な説明を行う。
第2の類型は、複数のキャリアがピーク電力抑圧及び帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、全キャリアの総和の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリア信号の平均出力電力)に基づいて、マルチキャリア信号の信号レベルを調整する送信機である。
第2の類型の送信機については、第5、第6の実施例として詳細な説明を行う。
第3の類型は、複数のキャリアがピーク電力抑圧及び帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、キャリア毎に、キャリアのピーク電力抑圧前の平均入力電力、及び場合によって当該キャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力に基づいて、当該キャリアのピーク電力抑圧された信号の信号レベルを調整する送信機である。
第3の類型の送信機については、第7の実施例として詳細な説明を行う。
第4の類型は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号をピーク電力抑圧してから送信する送信機において、マルチキャリアのピーク電力抑圧前の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力)に基づいて、マルチキャリアのピーク電力抑圧された信号の信号レベルを調整する送信機である。
第4の類型の送信機については、第8の実施例として詳細な説明を行う。
なお、各類型の送信機において、キャリア又はマルチキャリア信号の信号レベルを調整するためのレベル制御量を決定する方法は、次の3つの方法がある。
第1の方法は、キャリア又はマルチキャリア信号の平均入力電力と平均出力電力と算出し、算出された平均入力電力と平均出力電力からレベル制御量を演算により求め決定する方法であり、この方法を「演算によるフィードフォワード制御」と呼ぶ。
第2の方法は、キャリア又はマルチキャリア信号の平均入力電力の推定値とレベル制御量とが対応付けられたテーブルを用いて、キャリア又はマルチキャリア信号の平均入力電力に対応するレベル制御量を決定する方法であり、この方法を「テーブルによるフィードフォワード制御」と呼ぶ。
第3の方法は、キャリア又はマルチキャリア信号の平均入力電力の推定値と平均出力電力の理想値とが対応付けられたテーブルを用いて、キャリア又はマルチキャリア信号の平均入力電力に対応する平均出力電力の理想値を特定し、現実の平均出力電力が当該理想値に等しくなるようにレベル制御量を調整しながら適切なレベル制御量に収束させる方法であり、この方法を「テーブルによるフィードバック制御」と呼ぶ。
なお、各方法の詳細は、各実施例内で説明する。
尚、本発明の実施例の説明において、各図における監視部18,32、41及び信号レベル調整部15及び乗算器31が請求項における調整手段に相当している。また、信号レベル調整部15又は乗算器31が請求項におけるレベル調整部に相当している。
本発明の実施の形態に係る送信機を説明する前に、本発明の送信機が用いられる送信増幅器について説明する。
本発明の送信機が用いられる送信増幅器(以下、本送信増幅器)は、図6に示す従来のCDMA基地局送信増幅器とほぼ同一の構成である。すなわち、本送信増幅器は、送信機1と、D/Aコンバータ2と、周波数変換部3と、電力増幅部4とから構成されている。
本送信増幅器は、CDMA通信方式の基地局において、n個(n>2)のキャリアに対して変調を行い、各キャリアを合成してマルチキャリア信号を生成して増幅し、無線送信を行う。
本送信増幅器は、送信機1におけるキャリアのレベル制御が、従来のCDMA基地局送信増幅器と相違する。
送信機1は、デジタル信号である複数のキャリアの送信データに対して拡散変調、帯域制限及び直交変調を行い、さらに各キャリア(I相成分のみ)を合成してマルチキャリア信号としてD/Aコンバータ2に出力する。
また、送信機1は、各キャリアの入力レベルに基づいて、マルチキャリア信号のレベルの調整制御を行う。上記調整制御の詳細については、送信機の説明において述べる。
D/Aコンバータ2は、送信機1からのマルチキャリア信号をアナログ変換し、周波数変換部3に出力する。
周波数変換部3は、マルチキャリア信号を無線送信で用いる無線周波数に変換して、電力増幅部4に出力する。
電力増幅部4は、無線周波数に変換されたマルチキャリア信号を増幅し、アンテナ(図示せず)を介して無線送信を行う。
また、本発明の送信機を用いる送信増幅器の別の構成としては、図18に示すように、送信機1′でデジタル信号である複数のキャリアの送信データに対して拡散変調、帯域制限及び直交変調を行い、さらに各キャリアを合成してマルチキャリア信号としてI相、Q相各成分を出力し、I相、Q相各成分に対して設けられたD/Aコンバータ2′-1、2′-2で各々アナログ変換し、アナログ変換されたマルチキャリア信号をアナログ直交変調部3′において無線送信で用いる無線周波数に変換し、電力増幅部4で増幅し、アンテナ(図示せず)を介して無線送信を行う構成に用いても良い。
図18は、一般的なCDMA基地局で用いる送信増幅器の別の構成ブロック図である。
次に、本送信増幅器の送信機1,1′に相当する、本発明の送信機の各形態について類型別に説明する。
まず、本発明の第1の類型に属する送信機について説明する。
本発明の第1の類型に属する送信機を手段構成で説明すると、各キャリアの平均入力電力を算出する入力電力演算部と、各キャリアの帯域制限後の平均電力である平均出力電力を算出する出力電力演算部と、各キャリアの平均入力電力が最大となるキャリアを特定し、その最大値を取得し、さらに特定されたキャリアの平均出力電力を取得して、取得した平均入力電力と平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比であるレベル制御情報を出力する監視部と、監視部から出力されたレベル制御情報を乗算して、マルチキャリア信号のレベルを調整する信号レベル調整部とを備えたものであり、これによりキャリアの入力レベルの変動に対応してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
また、帯域制御後のキャリアとゲイン値の乗算を行う乗算器をキャリア毎に設け、監視部は、キャリア毎に平均入力電力及び平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比に基づいて各キャリアのゲイン値を算出し、対応する乗算器に出力するものであり、これによりキャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることができ、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
また、監視部において上記マルチキャリアのレベル制御情報、又は各キャリアのゲイン値の別の決定方法として、キャリアの平均入力電力の推定値とレベル制御量又はゲイン値とが対応付けられたテーブルを用いて決定する方法、或いは、キャリアの平均入力電力の推定値とマルチキャリア信号又はキャリアの平均出力電力の理想値とが対応付けられたテーブルを用いて、平均出力電力が理想値に等しくなるようにレベル制御量又はゲイン値を調整して決定する方法を実現するので、簡単な制御によって、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることができ、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第1の類型に属する送信機の具体的構成例について、実施例1〜4で説明する。
本発明の第1の実施例に係る送信機は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号の送信信号レベルを調整する送信機であって、複数のキャリアのうち、特定の条件で選択されたキャリアの平均入力レベルと平均出力レベルの比である入出力レベル比と、予め設定された期待値との比であるレベル制御量を出力する監視部と、マルチキャリア信号にレベル制御量を乗算してレベル調整を行うレベル調整部とを備えた送信機としているので、キャリアの入力レベルの変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を抑えることができるものである。
また、本発明の第1の実施例に係る送信機は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号の送信信号レベルを調整する送信機であって、キャリアの平均入力レベルの想定値と、マルチキャリア信号のレベル制御量とが対応付けられて格納されたテーブルを有し、複数のキャリアのうち、特定の条件で選択されたキャリアの平均入力レベルに相当する想定値から対応するレベル制御量をテーブルから読み出し、出力する監視部と、マルチキャリア信号にレベル制御量を乗算してレベル調整を行うレベル調整部を備えた送信機としているので、キャリアの入力レベルの変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を抑えることができるものである。
まず、本発明の第1の実施例に係る送信機(以下、第1の送信機)の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、第1の送信機の構成ブロック図である。
第1の送信機は、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、ピーク電力抑圧部11と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14と、信号レベル調整部15と、入力電力演算部16-1〜16-nと、出力電力演算部17-1〜17-nと、監視部18とから構成される。
次に、第1の送信機の各部の構成について説明する。
キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nは、キャリア毎に設けられており、予めキャリアに対応する拡散符号を格納している。
キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nは、対応するキャリアの送信データがチャネル単位で入力されると、格納されている拡散符号を用いて拡散変調を行い、拡散変調後の送信データを合成し、同相成分(以下、I成分)及び直交成分(以下、Q成分)とに分けてピーク電力抑圧部11に出力する。
ピーク電力抑圧部11は、各キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nから出力された拡散変調後のキャリアのレベルに基づいて、キャリアの電力制限を行い、制限後の各キャリアを対応する波形整形フィルタ12-1〜12-nに出力する。
ピーク電力抑圧部11は、従来と同様のリミッタであり、ここで特に重要なことは、各キャリア合成後のマルチキャリアが送信増幅器における電力増幅部4に入力される際のピークファクタを抑えることができるように、入力された各キャリアを用いて仮に合成した電力に基づいてピーク検出を行い、ピークが検出された場合に、各キャリアに対して一律の抑圧率で電力制限を行うものである点である。
ピーク電力抑圧部11の動作の詳細については、後述する。
波形整形フィルタ12-1〜12-nは、キャリア毎に設けられており、ピーク電力抑圧部12から出力された制限後のキャリアに対して帯域制限を行い、対応するデジタル直交変調部13-1〜13-nに出力する。
波形整形フィルタ12-1〜12-nでは、帯域制限を行うことによって、対応するキャリアの占有帯域が予め設定された値に収まるようなスペクトル整形が施される。
デジタル直交変調部13-1〜13-nは、キャリア毎に設けられており、対応する波形整形フィルタ12-1〜12-nから出力された帯域制限後のキャリアを直交変調し、直交変調後のI成分を加算器14に出力する。また、直交変調後のI,Q両成分は、対応する出力電力演算部17-1〜17-nに出力される。
加算器14は、各デジタル直交変調部13-1〜13-nから出力される直交変調後のキャリアのI成分を合成し、マルチキャリア信号として信号レベル調整部15に出力する。
信号レベル調整部15は、後述する監視部18から出力されるレベル制御情報に基づいて、加算器14からのマルチキャリア信号に対しレベル調整制御を行う。
入力電力演算部16-1〜16-nは、キャリア毎に設けられており、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nから出力された拡散変調後のキャリアの電力値に基づいて、対応するキャリアの平均入力電力を算出して、監視部18に出力する。入力電力演算部16-1〜16-nにおける平均入力電力の算出方法については、後述する。
出力電力演算部17-1〜17-nは、キャリア毎に設けられており、デジタル直交変調部13-1〜13-nから出力された直交変調後のキャリア(I、Q両成分)の電力値に基づいて、対応するキャリアの平均出力電力を算出して、監視部18に出力する。出力電力演算部17-1〜17-nにおける平均出力電力の算出方法については、後述する。
入力電力演算部16-1〜16-nと出力電力演算部17-1〜17-nでは、監視部18への平均入力電力及び平均出力電力の入力の遅延時間や、平均化時間を考慮し、平均化操作のための構成及び平均化操作の方法は、同一とすることが好ましい。
監視部18は、入力電力演算部16-1〜16-nから出力される平均入力電力と、出力電力演算部17-1〜17-nから出力される平均出力電力とに基づいて、マルチキャリア信号のレベル調整に関するパラメータを算出し、レベル制御情報として信号レベル調整部15に出力する。
監視部18におけるレベル制御情報の算出方法の詳細については、後述する。
次に、第1の送信機の動作について説明する。
図1において、デジタル信号である各キャリアの送信データはチャネル単位で、送信機において対応したキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nに入力される。キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nでは、送信データは、予め格納されている拡散符号によって拡散変調が行われ、合成された後、IQ成分毎にピーク電力抑圧部11に出力される。
拡散変調後のキャリアが入力されると、ピーク電力抑圧部11は、キャリアの総和電力に対する瞬時電力及び平均電力を算出して、これらの比を求め、算出された比を予め設定されたピークファクタ閾値と比較することでピークの有無の検出を行い、比較結果に基づいてキャリアのレベル調整を行う。
ここで、キャリアの総和電力に対する瞬時電力及び平均電力の算出方法について、数式を用いて説明する。各キャリアの入力信号を、下式(1)のように示す。
ピーク電力抑圧部11は、まず、入力されたキャリアを合成して多重化する。キャリアの多重化処理は、下式(2)にように表せる。
(2)式において、Ai(t)、Aq(t)はそれぞれ、入力信号の同相成分の多重結果と直交成分の多重結果を表している。
(2)式の表現を用いると、各キャリアの総和電力に対する瞬時電力及び平均電力は、下式(3)(4)のように表せる。
(4)式において、Tは過去の瞬時電力値のうち、平均化の対象とするものの個数を示しており、予めピーク電力抑圧部11で設定されている値である。また、ピーク電力抑圧部11は、瞬時電力値を算出する毎に記憶手段(図示せず)に記憶して、平均電力の算出時に記憶手段から読み出している。
ピーク電力抑圧部11は、キャリアの総和電力の瞬時電力対平均電力比(以下、瞬時平均電力比)を求め、予め設定されたピークファクタ閾値と比較することで、ピークの有無の検出を行う。
ピーク電力抑圧部11で用いるピークファクタ閾値は、キャリア数に依存する固定値である。また、ピークファクタ閾値は、各キャリアが最大レベルである場合に最適化されているが、ピーク電力抑圧部11は、全てのキャリアが最大レベルでないときでもピーク抑圧は行われる。
比較の結果、ピークファクタ閾値と比較して、瞬時平均電力比が大であれば、ピーク電力抑圧部11は、キャリアにリミットを施すべきであると判断し、各キャリアの合成後の電力が規定の電力となるよう各キャリアの電力を制限し、対応する波形整形フィルタ12-1〜12-nに出力する。具体的には、各キャリアに対して総和電力に対応した乗算係数を一律に乗算することによって電力制限(ピーク制限)を行う。
ピークファクタ閾値と比較して、瞬時平均電力比が小であれば、電力の制限を行わずに各キャリアを波形整形フィルタ12-1〜12-nに出力する。
課題で説明したように、各キャリアはピーク制限後に帯域制限を行うため、帯域制限後のキャリアのピークファクタは、帯域制限前よりも大きくなり、このため電力増幅部4の出力特性は非線形となり非線形歪が発生する。
ピーク電力抑圧部11は、電力増幅部4に入力されるマルチキャリア信号の最大電力を抑えるため、キャリアの総和電力に対する瞬時電力及び平均電力に基づいてピークの検出を行い、ピークが検出された場合に、各キャリアの電力値を制限して出力しており、これによってマルチキャリア信号のピークファクタを低下させることができ、電力増幅部4における非線形歪の発生を防止している。
第1の送信機は、上述したようにピークファクタ閾値を基準として各キャリアのピーク制限を行うピーク電力抑圧部11を用いているが、マルチキャリア信号のピークを制限することを目的とするものであれば、他の方法でピーク制限を行うもの、例えば電力閾値を基準として各キャリアのピーク制限を行うものを用いてもよい。
電力閾値を基準としたピーク制限では、ピーク電力抑圧部11は、あらかじめ電力閾値を設定しておき、各キャリアの合成後のマルチキャリア信号の電力値が電力閾値を超える場合に、電力閾値を超えた分の電力を制限するよう各キャリアの電力制限を行う。
図1において、ピーク電力抑圧部11から出力された各キャリアは、対応して設けられた波形整形フィルタ12-1〜12-nで帯域制限され、デジタル直交変調部13-1〜13-nで直交変調された後、I成分が加算器14で合成されてマルチキャリア信号として信号レベル調整部15に出力される。
また、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nで拡散変調された各キャリアは、ピーク電力抑圧部11の他、対応する入力電力演算部16-1〜16-nに入力される。
入力電力演算部16-1〜16-nは、入力されたキャリアに基づいて各キャリアの平均電力である平均入力電力を算出し、監視部18に出力する。
ここで、入力電力演算部16-1〜16-nにおける平均入力電力の算出方法について、数式を用いて説明する。入力電力演算部16は、まず入力されたキャリアの電力値を算出する。キャリアの入力信号を(1)式で表すとすると、当該入力信号の電力Powは、下式(5)のように表せる。
次に、入力電力演算部16は、算出した電力値Powを用いて、平均電力を算出する。入力電力演算部16は、予め記憶されている重み係数λ(0≦λ≦1)を用いて、下式(6)に示す重み付け平均化の演算処理を行う。
(6)式において、AvgW(t−1)は、直前に算出された重み付け平均化の演算結果を示している。入力電力演算部16は、重み付け演算結果を算出する毎に内蔵する記憶手段(図示せず)に記憶して、新たな重み付け演算時に記憶手段から読み出している。
さらに、入力電力演算部16は、(6)式の演算結果を用いて、下式(7)に示す平均化処理を行う。
(7)式において、xは過去の重み付け平均演算結果のうち、平均化の対象とするものの個数を示しており、予め入力電力平均部16で設定されている値である。また、入力電力平均部16は、重み付け演算結果を算出する毎に記憶手段に記憶して、平均電力の算出時に記憶手段から読み出している。
そして入力電力平均部16は、(7)式で算出される平均電力Avg(t)を、平均入力電力として監視部18に出力する。以上が入力電力平均部16における平均入力電力の算出方法である。
また、デジタル直交変調部13-1〜13-nで直交変調された各キャリアのI,Q両成分は、加算器14の他(I成分のみ)、対応する出力電力算出部17-1〜17-nに入力される。出力電力演算部17-1〜17-nは、入力されたキャリアに基づいて各キャリアの帯域制限後の平均電力である平均出力電力を算出し、監視部18に出力する。
出力電力演算部17-1〜17-nにおける平均出力電力の算出方法は、直交変調後のキャリアの電力値を用いる以外は、既述した入力電力演算部16-1〜16-nにおける平均入力電力の算出方法と同一であるので、説明は省略する。
監視部18は、入力電力演算部16-1〜16-nから出力される平均入力電力と、出力電力演算部17-1〜17-nから出力される平均出力電力とに基づいて、マルチキャリア信号のレベル調整に関するパラメータを算出し、レベル制御情報として信号レベル調整部15に出力する。
ここで説明する監視部18は、マルチキャリア信号の信号レベルを調整するためのレベル制御量を決定する第1の方法である「演算によるフィードフォワード制御」を実現するものである。
以下、監視部18におけるレベル制御情報の算出方法について、図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10は、第1の送信機の監視部18におけるレベル制御情報の算出処理のフローチャートである。
尚、図9のフローチャートにおける(A)は、図10のフローチャートにおける(A)とつながっている。
監視部18は、平均入力電力及び平均出力電力の値及び出力状況を監視することによって、入力電力演算部16-1〜16-n及び出力電力演算部17-1〜17-nの動作状況を監視している。動作状況の監視によって、監視部18は、例えば、現在のキャリア数等を知ることができる。
図9において、監視部18は、動作状況の監視によって、入力電力演算部16-1〜16-nから同一のタイミングで出力される平均入力電力のうち、最大値A(t)を取得する(S11)。次に監視部18は、最大値A(t)の出力された入力電力演算部16を特定することで、平均入力電力が最大となるキャリアF(t)を特定し(S12)、更に処理S12で特定されたキャリアに対応する出力電力演算部17から出力される平均出力電力B(t)を取得する(S13)。
ここで第1の送信機が1つのキャリアを扱う場合には、監視部18は処理S11〜S13の代わりに、入力される平均入力電力と平均出力電力を取得するだけでよい。
そして監視部18は、平均入力電力の最大値A(t)が0、すなわちキャリアが存在しないか否かを確認し(S14)、もし0以外であれば(S14のNo)対応する平均出力電力B(t)が予め設定された閾値未満か否かを確認する(S15)。
ここで、S15の平均出力電力B(t)と閾値との比較判定は、装置構成上必要な処理であり、閾値については予め監視部18に設定されている値である。
装置構成上必要な理由としては、監視データ(ここでは平均入力電力が最大となるキャリア)の送信レベルが低くなると、レベル調整の精度が劣化するので、精度劣化を特定レベルでくい止めるためである。
特に、ゲイン計算を後述するS17,S18,S19のステップで行う場合、S18の除数に当たる平均出力電力B(t)が小さくて0に近づくと、計算結果が発散してしまうため、最大平均出力電力B(t)が閾値に満たない場合にS17,S18,S19の計算処理を回避するようにしている。
処理S15において、B(t)が閾値以上(B(t)≧閾値)であれば(S15のNo)、監視部18は、マルチキャリア信号のレベル制御が可能と判断し、レベル制御情報の算出を行う。
レベル制御情報の算出にあたり、監視部18はまず、A(t)に対し係数αを乗算し(S17)、さらに乗算結果であるC(t)をB(t)で割って(S18)、D(t)を求める。よって処理S17及びS18における演算処理は、D(t)=α・A(t)/B(t)と表すことができる。以下、A(t)/B(t)を入出力電力比と称する。
ここで係数α(α>0)は、キャリアの電力値によって決まる値であり、予め監視部18に設定されている。監視部18では、係数αを決定するにあたり、キャリアの電力値の基準データ(例えば、ピーク電力抑圧部11においてピーク制御の対象とならない電力値)の入出力電力比を求め、この逆数をαとしている。
したがってD(t)は、基準データの入出力電力比1/αに対する、実測データの入出力電力比(A(t)/B(t))の比を表しているといえる。以下、D(t)を基準実測比と称する。
そして監視部18は、処理S19で得られた基準実測比D(t)の平方根を取り、ゲイン値GAIN(t)とする(S19)。ゲイン値GAIN(t)は、マルチキャリア信号のレベル調整に関するパラメータである。
処理S14において、A(t)が0、すなわちキャリアが存在しない場合(S14のYes)か、あるいは処理S15において、B(t)が閾値未満(B(t)<閾値)であれば(S15のYes)、監視部18は、ゲイン値GAIN(t)として、直前に用いたゲイン値GAIN(t−1)に設定する(S16)。
図10において、監視部18は次にGAIN(t)が上限値より大か否かを確認する(S20)。処理S20において、GAIN(t)が上限値より大(GAIN(t)>上限値)であれば(S20のYes)、監視部18は、GAIN(t)の値を上限値に置き換え(S21)、GAIN(t)が上限値以下(GAIN(t)≦上限値)であれば(S20のNo)、次にGAIN(t)が下限値未満か否かを確認する(S22)。
処理S22において、GAIN(t)が下限値未満(GAIN(t)<下限値)であれば(S22のYes)、監視部18はGAIN(t)の値を下限値に置き換え(S23)、下限値以上(GAIN(t)≧下限値)であれば(S22のNo)、現在のGAIN(t)をそのまま用いることになり、GAIN(t)の値が確定する。
ここでGAIN(t)の上限値及び下限値は、キャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる値であり、予め監視部18に設定されている。
監視部18は、ゲイン値GAIN(t)の値が決まると、GAIN(t)をレベル制御情報として信号レベル調整部15に出力する(S24)。以上が監視部18におけるレベル制御情報の算出処理である。
監視部18は、規定のタイミングで上述したレベル制御情報の算出処理を定期的に行う。また、監視部18は、過去のタイミングで算出したゲイン値GAIN(t)を内蔵する記憶手段(図示せず)に記憶して、新たなゲイン値の算出時に記憶手段から読み出している。
図1において、信号レベル調整部15は、加算器14から出力されたマルチキャリア信号に対し、監視部18から出力されたゲイン値GAIN(t)を乗算することによって、マルチキャリア信号のレベル調整を行う。
上述したように、監視部18は、入出力電力比の平方根に基づいてGAIN(t)を算出する。キャリアの電力値は(5)式で示すように、同相成分と直交成分の二乗和で表されるため、GAIN(t)をマルチキャリア信号に乗算することによって、所望のレベル調整を行うことができる。
レベル調整の行われたマルチキャリア信号は、D/A変換器2におけるアナログ変換、周波数変換部3における無線周波数の変換が施された後、電力増幅部4で増幅されて無線送信される。以上が第1の送信機の動作である。
第1の送信機において、信号レベル調整部15においてマルチキャリア信号のレベルに応じたレベル調整を行うため、第1の送信機の本線系(ピーク電力抑圧部11〜加算器14)から出力されるマルチキャリア信号と、制御系(入力電力演算部16、出力電力演算部17及び監視部18)から出力される、上記マルチキャリア信号に対応したレベル制御情報は、同一のタイミングで信号レベル調整部15に入力されることが好ましい。
このため、本線系又は制御系に遅延器等を設けて、本線系及び制御系のデータ出力の同期を図るようにしてもよい。
第1の送信機によれば、各キャリアの送信機への平均入力電力と、帯域制限後の平均出力電力とに基づいて、各キャリアの合成後のマルチキャリア信号のレベル調整の制御量を算出し、当該制御量を用いてマルチキャリア信号のレベル調整を行うようにしているので、各キャリアの入力レベルの変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
通常のピーク電力抑圧部は、キャリアの総和電力に応じて各キャリアのピーク制御を行う。従って、送信機への入力レベルの変動の激しいキャリアがあったとしても、キャリア全体の電力レベルが規定値未満であれば、ピーク制御は行われずそのまま帯域制限が行われて合成される。そのため、マルチキャリア信号のレベルの変動も激しいものとなる場合がある。
また、入力レベルが固定されているキャリアと、入力レベルが変動しているキャリアが混在している場合、入力レベルの変動によってピーク電力抑圧部11のピーク制御の頻度が多くなり、入力レベルが固定されているキャリアにもピーク制限がかかることになり、入力レベルが固定されているキャリアのレベルが低下する。
上述したように、監視部18は、レベル制御情報の算出にあたり、平均入力電力の最大値を取るキャリアについて、その入出力電力比を求め、基準データにおける入出力電力比との比である基準実測比D(t)に基づいて、ゲイン値GAIN(t)を算出している。
すなわち第1の送信機は、キャリアの平均入出力電力に基づいてゲイン値を算出し、マルチキャリア信号に乗算しているため、ピーク電力抑圧部11においてキャリアへのピーク制限が充分に行われない場合やキャリアにピーク制限をかけすぎてレベルが過剰に抑圧された場合にも対応して、任意の区間(フレーム等)に対応するマルチキャリア信号のレベル総和を基準データを用いた際のレベル総和に近似させることができる。よって第1の送信機は、入力されたキャリアのレベルに変動が発生しても、安定してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
また、第1の送信機は、従来の送信機の構成に、キャリア数分の入力電力演算部16及び出力電力演算部17と、監視部18と、信号レベル調整部15とを加えることによって実現できる。したがって第1の送信機は、従来の送信機の設備をそのまま利用できるため、設置のためのコストを低減することができる。
第1の送信機において、監視部18は、レベル制御情報の算出に用いる平均入力電力の条件として、最大値である以外に、異なる条件(例えば2番目に大きい平均入力電力)を設定してもよい。ピーク電力抑圧部11において各キャリアは共通の乗算係数によってピーク制限されるため、どのキャリアについてもその入出力電力比は一定となる。
しかしながら、出力電力演算部における平均出力電力の値の精度が低く、実際の値よりも小さくなる場合には入出力電力比の誤差が増大する。特に平均出力電力の値がもともと小さい場合には、この傾向は顕著となる。したがって入出力電力比の演算で用いる平均出力電力はなるべく大きい方が好ましいことから、平均入力電力も最大値を採用することが望ましい。
次に、第1の送信機及び従来の送信機におけるキャリアの入出力特性について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、第1の送信機と従来技術の送信機における、32コード多重時信号1キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベル偏差に関する特性を示したグラフであり、図5は、第1の送信機と従来技術の送信機における、32コード多重時信号2キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベル偏差に関する特性を示したグラフである。
図4及び図5の説明として、出力レベル期待値とのレベル差とは、送信機の出力レベルの期待値とのレベル差を表す。すなわち、入力レベルを線形に増加させた場合、出力レベルも線形に増加させた値を期待値としている。また、レベル補正量とは、監視部18により設定されたレベル制御情報であり、従来技術の送信機の出力を、レベル制御情報を基に、後段の信号レベル調整部15によって振幅制御すると、理論的には、第1の送信機における出力レベルと等しくなる。
図4に示す特性の測定において、第1の送信機及び従来の送信機で用いるピーク電力抑圧部11は、キャリアのレベル制限を行っており、閾値は固定値としている。図4に示すように、従来の送信機の場合、入力の設定レベルを増加させると、その分ピーク電力抑制部の閾値を超え、振幅制限が実施されるので、±0.2dB程度の偏差が生じる。第1の送信機では、信号レベル調整部15においてレベル制御情報がキャリアに乗算されることによって、±0.1dB程度の偏差に抑える事ができる。また、この±0.1dBは各電力測定部の平均化時定数((7)式におけるx)を変更する(例えば、大きくする)ことにより更に偏差を小さくすることが可能である。
また、各電力測定部における平均電力計算時の(bit)精度を向上すれば、監視部18におけるゲイン値算出精度が向上し、レベル制御手段15で行われるレベル制御の精度が向上し、出力パワー誤差を小さくすることができる。
また、図5に示す特性の測定において、2つのキャリアのうち、キャリア1は入力レベルを固定とし、キャリア2の入力レベルを変動させている。また、ピーク電力抑圧部11はキャリアの総和電力に基づいて動作する仕様となっている。
図5に示すように、従来の送信機の場合、キャリア2の入力設定レベルを大きくすると、ピーク電力抑圧部11の動作頻度が多くなり、一定レベルで入力したキャリア1においても、出力レベルが一定とならずに低下する。そのため、キャリア1の出力レベルには±0.3dB程度の偏差が生じる。
一方、第1の送信機では、図4の1キャリア時の送信時と同様、監視部18により設定されるレベル制御情報を基に、信号レベル調整部15においてマルチキャリア信号のレベル制御がなされ、結果としてキャリア1の出力レベルを±0.05dB程度の偏差に抑えることが可能となる。
図5のグラフから、第1の送信機は、W−CDMA通信方式において、キャリアが複数ある場合でも、0.1dB或いは0.5dB相当のパワーコントロールを実現可能であることが分かる。
すなわち、第1の送信機では、特定のキャリアにおける平均入力電力と、ピーク抑圧、帯域制限、直交変調というキャリア毎の一連の信号処理後の平均出力電力に基づいて、実際のキャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整をマルチキャリア信号に施すので、特に課題で説明した第2,第3の問題点を解決できる。
次に、本発明の第2の実施例に係る送信機(以下、第2の送信機)について、第1の送信機との相違点を中心に説明する。図2は、第2の送信機の構成ブロック図である。尚、第1の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
第2の送信機は、デジタル直交変調部13-1〜13-nと加算器14との間に、第2のピーク電力抑圧部21を設けている。第2のピーク電力抑圧部21の構成は、ピーク電力抑圧部11と同一である。また、第2の送信機において、出力電力演算部17-1〜17-nは、第2のピーク電力抑圧部21でピーク制限された各キャリアについて、平均出力電力を算出する。
第2の送信機によれば、第2のピーク電力抑圧部21は、波形整形フィルタ12-1〜12-nにおける帯域制限後の各キャリアに対してピーク制限を行っており、これにより帯域制限によってピークファクタの増大した、すなわちレベルの突出したキャリアに対して突出部分のレベルを抑圧することができる。
よって監視部18は、既にピーク制御の行われたキャリアの平均出力電力に基づいてレベル制御情報の演算処理を行い、算出したレベル制御情報を信号レベル調整部15に出力するため、確実にマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第3の実施例に係る送信機は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号の送信信号レベルを調整する送信機であって、各キャリアに対し、平均入力レベルと、帯域制限及び直交変調後の平均出力レベルの比である入出力レベル比と、予め設定された期待値との比であるレベル制御量を出力する監視部と、帯域制限及び直交変調後の各キャリアに対し、対応するレベル制御量を乗算する乗算部とを備えた送信機としているので、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることができ、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができるものである。
本発明の第3の実施例に係る送信機は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号の送信信号レベルを調整する送信機であって、キャリアの平均入力レベルの想定値と、平均入力レベルの想定値に基づいて求められるキャリアのレベル調整に関する制御値とが対応付けられて格納されたテーブルを有し、各キャリアの平均入力レベルに相当する想定値から対応する制御値をテーブルから読み出し、制御値に基づいて各キャリアのレベル制御量を出力する監視部と、帯域制限及び直交変調後の各キャリアに対し、対応したレベル制御量を乗算する乗算部を備えた送信機としているので、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることができ、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができるものである。
また、上記送信機において、監視部が、各キャリアに対応するレベル制御量の中で特定のレベル制御量をマルチキャリアのレベル制御量として出力する監視部であり、マルチキャリアのレベル制御量をマルチキャリア信号に乗算してレベル調整を行うレベル調整部を備えた送信機としているので、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑え、更にマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができるものである。
次に、本発明の第3の実施例に係る送信機(以下、第3の送信機)について、第1の送信機との相違点を中心に説明する。図3は、第3の送信機の構成ブロック図である。尚、第1の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
第3の送信機は、デジタル直交変調部13-1〜13-nと加算器14との間に、各キャリアに対応した乗算器31-1〜31-nを設けている。また、監視部32は、レベル制御情報を算出して信号レベル調整部15に出力する他に、デジタル直交変調された各キャリアに対するゲイン値を算出し、乗算器31-1〜31-nに出力する。
尚、ここで説明する監視部32は、各キャリアの信号レベルを調整するためゲイン値及びマルチキャリアの信号レベルを調整するレベル制御量を決定する第1の方法である「演算によるフィードフォワード制御」を実現するものである。
ここで第3の送信機の監視部32における、レベル制御情報及び各キャリアに対するゲイン値の算出方法について、図12〜14を用いて説明する。図12は、第3の送信機の監視部32におけるレベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートであり、図13及び図14は、監視部32におけるキャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。尚、図13のフローチャートにおける(A)は、図14のフローチャートにおける(A)とつながっている。
レベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の算出にあたり、監視部32は、1)レベル制御情報のみを算出する、2)各キャリアのゲイン値のみを算出する、3)レベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の両方を算出する、のうちどの処理を行うかを予め設定(以下、算出対象の設定)しておく。
1)〜3)の処理では、レベル調整後のマルチキャリア信号又はキャリアのレベルの精度に違いがあり、3)、2)、1)の順で精度がよくなることが知られている。このため監視部32において1)〜3)のどの処理を行うかは、各キャリアで要求される送信電力レベルの精度に応じて決めることが望ましい。
また、処理の設定方法としては、監視部32に予め特定の処理のみを行わせるよう設定したり、管理者が手動によって処理を選択して監視部32に設定するようにしてもよい。
図12において、監視部32はまず、算出対象の設定内容を確認することで、各キャリアのゲイン値を算出するよう設定されているか否かを確認する(S41)。処理S41において、1)のレベル制御情報のみを算出するよう設定されていることを確認すると(S41のNo)、監視部32は、図9及び図10に示すフローチャートの手順で、レベル制御情報の算出処理を行い、レベル信号調整部15に出力し(S42)、レベル制御情報の算出処理を終了する。
処理S41において、2)の各キャリアのゲイン値のみを算出するか、3)のレベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の両方を算出するよう設定されていることを確認すると、監視部32は、各キャリアのゲイン値を算出する(S43)。
処理S43において、監視部32は、入力電力演算部16-1〜16-nから出力される各キャリアの平均入力電力と、入力電力演算部17-1〜17-nから出力される各キャリアの平均出力電力に基づいて、キャリア毎にゲイン値を算出する。各キャリアのゲイン値の詳細な算出方法については、後述する。
監視部32で算出された各キャリアのゲイン値は、対応する乗算器31-1〜31-nに出力され(S44)、帯域制限及びデジタル直交変調後のキャリアとの乗算が行われる。乗算器31-1〜31-nの乗算結果は、加算器14で合成され、マルチキャリア信号として信号レベル調整部15に出力される。
次に、監視部32は、算出対象の設定内容を確認することで、レベル制御情報を算出するよう設定されているか否かを確認する(S45)。処理S45において、2)の各キャリアのゲイン値のみを算出するよう設定されていることを確認すると(S45のNo)、監視部32は、各キャリアのゲイン値の算出処理を終了する。
処理S45において、3)のレベル制御情報及び各キャリアのゲイン値を算出するよう設定されていることを確認すると(S45のYes)、監視部32は、処理S43で算出したゲイン値のうち、最大となるゲイン値をレベル制御情報に決定し、レベル信号調整部15に出力して(S46)、算出処理を終了する。
処理S46において、監視部32は、レベル制御情報とするゲイン値の条件として、異なる条件(例えば2番目に大きいゲイン値)を設定してもよいが、第1の送信機で説明したように、入出力電力比に用いる平均入力電力は、最大値を採用することが望ましい。
次に、各キャリアのゲイン値の算出処理について、図13及び図14を用いて説明する。尚、図13及び図14は、キャリアnについてのゲイン値を算出する場合の処理について示したものであるが、監視部32は、他のキャリアについても同様の処理を行い、ゲイン値を算出する。
監視部32は、平均入力電力及び平均出力電力の値及び出力状況を監視することによって、入力電力演算部16-1〜16-n及び出力電力演算部17-1〜17-nの動作状況を監視している。
図13において、監視部32は、動作状況の監視によって、入力電力演算部16-1〜16-nのうち、入力電力演算部16-nから出力される平均入力電力A(t)を取得する(S51)。次に監視部32は、出力電力演算部17-nから出力される平均出力電力B(t)を取得する(S52)。
そして監視部32は、平均入力電力の最大値A(t)が0、すなわちキャリアnが存在しないか否かを確認し(S53)、もし0以外であれば(S53のNo)対応する平均出力電力B(t)が予め設定された閾値未満か否かを確認する(S54)。
ここで、S54の平均出力電力B(t)と閾値との比較判定は、図9の場合と同様に、装置構成上必要な処理であり、閾値については予め監視部18に設定されている値である。
処理S54において、B(t)が閾値以上(B(t)≧閾値)であれば(S54のNo)、監視部32は、キャリアnのレベル制御が可能と判断し、キャリアnに対するゲイン値の算出を行う。
ゲイン値の算出は、レベル制御情報の場合と同様、監視部32はA(t)に対し係数αを乗算し(S56)、さらに乗算結果であるC(t)をB(t)で割って(S57)、基準実測比D(t)を求める。
ここで係数α(α>0)は、レベル制御情報の場合と同様、キャリアnの電力値によって決まる値であり、予め監視部32に設定されている。監視部32では、係数αを決定するにあたり、キャリアnの電力値の基準データの入出力電力比を求め、この逆数をαとしている。
そして監視部32は、処理S58で得られた基準実測比D(t)の平方根を取り、さらに補正係数βを乗算して、ゲイン値GAINn(t)を算出する(S58)。
ここで補正係数β(β>0)は、各キャリアの周波数差を考慮した補正係数であり、予め監視部32に設定されている。また、ゲイン値GAINn(t)は、キャリアnのレベル調整に関するパラメータである。
処理S53において、A(t)が0、すなわちキャリアnが存在しない場合(S53のYes)か、あるいは処理S54において、B(t)が閾値未満(B(t)<閾値)であれば(S54のYes)、監視部32は、ゲイン値GAINn(t)として、直前に用いたゲイン値GAINn(t−1)に設定する(S55)。
図14において、監視部32は次にGAINn(t)が上限値より大か否かを確認する(S59)。処理S59において、GAINn(t)が上限値より大(GAINn(t)>上限値)であれば(S59のYes)、監視部32は、GAINn(t)の値を上限値に置き換え(S60)、GAINn(t)が上限値以下(GAINn(t)≦上限値)であれば(S59のNo)、次にGAINn(t)が下限値未満か否かを確認する(S61)。
処理S61において、GAINn(t)が下限値未満(GAINn(t)<下限値)であれば(S61のYes)、監視部32はGAINn(t)の値を下限値に置き換え(S62)、下限値以上(GAINn(t)≧下限値)であれば(S61のNo)、現在のGAINn(t)をそのまま用いることになり、GAINn(t)の値が確定する。
ここでGAINn(t)の上限値及び下限値は、レベル制御情報の場合と同様、キャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる値であり、予め監視部32に設定されている。
監視部32は、ゲイン値GAINn(t)の値が決まると、GAINn(t)を内蔵する記憶手段に記憶する(S63)。以上が監視部32におけるキャリアに対するゲイン値の算出処理である。
監視部32は、規定のタイミングでレベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の算出処理を定期的に行う。また、監視部32は、過去のタイミングで算出したマルチキャリア信号に対するゲイン値GAIN(t)及び各キャリアに対するゲイン値GAINn(t)を内蔵する記憶手段(図示せず)に記憶して、新たなゲイン値の算出時に記憶手段から読み出している。
第3の送信機によれば、監視部32は、マルチキャリア信号に対するレベル制御情報を算出すると共に、各キャリアの平均入力電力及び平均出力電力に基づいて、キャリア毎にゲイン値を算出して対応する乗算器31-1〜31-nに出力し、乗算器31-1〜31-nは、帯域制限後の対応するキャリアとの乗算を行う。
これにより、各キャリアのレベルに応じたレベル調整が行われ、例えば入力レベルが一時的に急激に変動したキャリアに対しては、変動に応じてピーク電力抑圧部11で一律に為されたレベル抑圧だけでなく更にレベルを抑圧することになり、逆に入力レベルが変動していないキャリアに対しては、ピーク電力抑圧部11で一律に為されたレベル抑圧を回復して、出力信号の変動を抑えることができる。
第3の送信機では、キャリアの合成前に帯域制限後の各キャリアのレベル調整を行ってキャリアのレベル変動を平均的に抑え、さらにマルチキャリア信号に対するレベル調整を行うため、一層確実にマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
上記説明では、第1〜第3の送信機の監視部におけるレベル制御情報又はゲイン値の決定方法として、第1の方法(「演算によるフィードフォワード制御」)で説明してきたが、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)について説明する。
第1〜第3の送信機の監視部におけるレベル制御情報又はゲイン値の第2の決定方法として、予め平均入力電力の想定値と、レベル制御情報とが組となって構成されたテーブルを用いてレベル制御情報を出力するようにしてもよい。
第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)の動作について、第1、2の送信機の監視部18の例で図11を用いて説明する。図11は、第1、第2の送信機の監視部における、テーブルを用いたレベル制御情報の出力処理のフローチャートである。
上記決定方法を行うにあたって、監視部には、キャリアの平均入力電力の想定値と、ゲイン値GAIN(t)とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。ゲイン値GAIN(t)は、平均入力電力が想定値の場合の測定によって得られたゲイン値の最適値が格納されている。
監視部は、入力電力演算部16-1〜16-nの動作状況を監視し、入力電力演算部16-1〜16-nから同一のタイミングで出力される平均入力電力のうち、最大値A(t)を取得する(S31)。次に監視部は、テーブルに格納されている平均入力電力の想定値のうち、最大値A(t)に相当する想定値を特定する(S32)。処理S32において、監視部は具体的に、テーブルに格納されている想定値のうち、最大値A(t)に最も近似する想定値を選び出すことで、想定値を特定する。
そして監視部は、特定された想定値に対応するゲイン値GAIN(t)を読み出し(S33)、レベル制御情報として信号レベル調整部15に出力する(S34)。以上がテーブルを用いたレベル制御情報の出力処理である。
第3の送信機の監視部32において、キャリアの平均入力電力の想定値と、ゲイン値とが対応付けられて格納されたテーブルをキャリア毎に設け、上記処理をキャリア毎に行うことによって、当該テーブルを用いて各キャリアのゲイン値を出力できる。
第1〜第3の送信機によれば、監視部におけるレベル制御情報又はゲイン値の決定方法として、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を実現すれば、テーブルを用いてレベル制御情報又はゲイン値を出力することによって、レベル制御情報又はゲイン値の算出のための構成が不要となるため監視部の構成を簡易にでき、またレベル制御情報又はゲイン値の出力に要する時間を低減できるため、マルチキャリア信号又は各キャリアと、対応するレベル制御情報又はゲイン値の出力タイミングのずれを軽減できる。
次に、第1〜第3の送信機の監視部におけるレベル制御情報又はゲイン値の決定方法として、第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現する場合の構成について、第4の実施例として説明する。
本発明の第4の実施例に係る送信機は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号の送信信号レベルを調整する送信機であって、帯域制限及び直交変調後の各キャリアに対し、入力されるレベル制御量を乗算してレベル調整されたキャリアを出力する乗算部と、キャリアの平均入力レベルの想定値と、平均入力レベルの想定値に基づいて求められるキャリアの平均出力レベルの理想値とが対応付けられて格納されたテーブルを有し、各キャリアの平均入力レベルに相当する想定値から対応する平均出力レベルの理想値をテーブルから読み出し、乗算部から出力される対応するキャリアの平均出力レベルが平均出力レベルの理想値に等しくなるように各キャリアのレベル制御量を調整して乗算部に出力する監視部とを備えた送信機としているので、キャリア毎に、平均入力レベルに対応する平均出力レベルの理想値になるようにレベル制御を行うことで、帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑えることにより、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができるものである。
また、上記送信機において、監視部が、各キャリアに対応するレベル制御量の中で特定のレベル制御量をマルチキャリアのレベル制御量として出力する監視部であり、マルチキャリアのレベル制御量をマルチキャリア信号に乗算してレベル調整を行うレベル調整部を備えた送信機としているので、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に平均的に抑え、更にマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができるものである。
本発明の第4の実施例の送信機(以下、第4の送信機)について、第1〜第3の送信機との相違点を中心に説明する。図15は、第4の送信機の構成ブロック図であり、図16は第4の送信機の監視部41における各キャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。尚、第1〜第3の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
第4の送信機において、出力電力演算部17-1〜17-nは、乗算器31-1〜31-nにおけるゲイン値との乗算後のキャリアの平均出力電力を算出し、監視部41に出力する。また、監視部41は、各キャリアに対するゲイン値を算出して、乗算器31-1〜31-nに出力する。また、第4の送信機には、信号レベル調整部は設けられておらず、加算器14で生成されたマルチキャリア信号は、そのままD/Aコンバータ2に出力される。
次に監視部41における各キャリアに対するゲイン値の決定方法について、図16を用いて説明する。尚、図16は、キャリアnについてのゲイン値を決定する場合の処理について示したものであるが、監視部41は、他のキャリアについても同様の処理を行い、ゲイン値を算出する。
上記決定方法を行うにあたって、監視部41には、平均入力電力の想定値と、平均出力電力の理想値とが対応付けられて格納されているテーブルがキャリア毎に予め設定されている。平均出力電力の理想値は、平均入力電力が想定値である場合の測定によって得られた平均出力電力の最適値が格納されている。
まず前提条件として、監視部41は、予め設定されている各キャリアのゲイン値の初期値(例えば、1)を、対応する乗算器31-1〜31-nに出力する。
ゲイン値の算出処理として、監視部41はまず、動作状況の監視によって、入力電力演算部16-1〜16-nのうち、入力電力演算部16-nから出力される平均入力電力A(t)を取得する(S71)。次に監視部41は、テーブルに格納されている平均入力電力の想定値のうち、平均入力電力A(t)に相当する想定値を特定する(S72)。処理S72において、監視部41は具体的に、テーブルに格納されている想定値のうち、平均入力電力A(t)に最も近似する想定値を選び出すことで、想定値を特定する。
そして監視部41は、特定された想定値に対応する平均出力電力の理想値である理想出力電力B´(t)をテーブルから読み出す(S73)。
さらに監視部41は、出力電力演算部17-nから出力されるキャリアnの平均出力電力B(t)を取得し(S74)、処理S73で読み出された理想出力電力B´(t)と比較して、一致するか否かを確認する(S75)。
処理S75において、平均出力電力B(t)が理想出力電力B´(t)と一致しなければ(S75のNo)、監視部41は、直前のゲイン値GAINn(t−1)に対し、補正係数γを加算又は減算して、新たなゲイン値GAINn(t)を算出して、対応する乗算器31-nに出力する(S76)。処理S76によって、新たなゲイン値GAINn(t)が乗算器31-nに出力され、キャリアnとの乗算が行われる。
処理S76において、補正係数γ(γ>0)は、予め監視部41に設定されているパラメータであり、キャリアの平均入力電力又は平均出力電力の値等によって値を変える。また、処理S76において、補正係数γの加算又は減算を行うかは、平均出力電力B(t)と、理想出力電力B´(t)の大小によって決定する。例えば平均出力電力B(t)が理想出力電力B´(t)より小であれば加算を、大であれば減算を行う。
監視部41は、理想出力電力B´(t)、平均出力電力B(t)及び補正係数γとが互いに対応付けられたテーブルが設定されており、理想出力電力B´(t)と平均出力電力B(t)の関係から、用いる補正係数γを決定して、新たなゲイン値GAINn(t)を算出する。
さらに監視部41は、処理S76の実行後、処理S74に戻り、再びキャリアnの平均出力電力を取得して、処理S75の理想出力電力B´(t)との比較を行う。監視部41は、処理S75において、この一連の操作を平均出力電力B(t)が理想出力電力B´(t)と一致するまで(S75のYes)行う。以上が監視部41におけるゲイン値の決定処理である。
上記説明した第4の送信機において、監視部41はテーブルを用いて各キャリアの平均出力電力の理想値を求め、実際の平均出力電力が当該理想値になるようにゲイン値を制御して出力しているが、第3の送信機の監視部32の場合と同様、各キャリアの平均入力電力から予想されるレベル制御量を計算、或いはレベル制御量をテーブルから読み出して乗算器31に出力し、乗算器31でレベル制御量乗算後の平均出力電力と平均入力電力とを比較して同一となるようにゲイン値を補正して出力する構成としてもよい。
第1〜第3の送信機は、キャリア又はマルチキャリア信号の信号レベルを調整するためのレベル制御量を決定する第1の方法で実現する場合、ピーク制限前の各キャリアの平均入力電力と、ピーク制限及び帯域制限後のキャリアの平均出力電力に基づいて、マルチキャリア信号又は各キャリアに対するゲイン値を算出、出力し、ピーク制限が充分でない又はピーク制限をかけ過ぎたマルチキャリア信号又はキャリアに対してゲイン値を乗算して基準のレベルに戻すフィードフォワード制御でマルチキャリア又は各キャリアのレベル調整を行っている。
それに対して、第4の送信機では、監視部41は最初に、予め各キャリアに対するゲイン値の初期値を対応する乗算器31-1〜31-nに出力し、次にピーク制限前の各キャリアの平均入力電力に基づいて対応する理想の平均出力電力を読み出し、ピーク制限、帯域制限及びゲイン値乗算後のキャリアの平均出力電力と比較し、相違すれば補正値を加減して新たなゲイン値を算出し、乗算器31-1〜31-nに出力する操作を繰り返している。
つまり第4の送信機は、レベル調整後のキャリアの平均出力電力と理想値とを比較し、当該平均出力電力が理想値と等しくなるまでゲイン値を補正して乗算器31-1〜31-nに出力するフィードバック制御によって、各キャリアのレベル調整を行っている。
このような構成とすることで、マルチキャリア信号又は各キャリアのゲイン値を算出する処理を行うフィードフォワード制御(第1の方法)よりも、監視部41は複雑な演算回路を用いることなく迅速に最適なゲイン値を特定することができる。
第4の送信機において、第1〜第3の送信機と同様、加算器14の後段にマルチキャリア信号のレベル調整を行うためのレベル信号調整部を設けてもよい。図17は、第4の送信機の変形例の構成ブロック図であり、加算器14の後段にマルチキャリア信号のレベル調整を行うためのレベル信号調整部15を設けたものである。この場合、監視部41は、例えば第3の送信機の監視部32と同様に、各キャリアのゲイン値決定後、最大となるゲイン値をレベル制御情報に決定し、レベル信号調整部15に出力する。この処理において、監視部41は、レベル制御情報とするゲイン値の条件として、異なる条件(例えば、2番目に大きいゲイン値)を設定してもよいが、最大となるゲイン値を使用することが望ましい。
また、第4の送信機は、フィードバック制御によるレベル調整を行っているため、各キャリアの平均出力電力が理想値となるまで時間がかかる。そこで、レベル信号調整部15におけるレベル制御情報の別の決定方法として、各キャリアの平均出力電力が理想値に達するまでの間に、監視部41で第1の送信機の監視部18と同様に、平均入力電力の最大値を取るキャリアについて、その平均入力電力と平均出力電力からレベル制御情報を算出し、レベル信号調整部に出力してマルチキャリア信号と乗算させることにより、フィードバック制御では対応しきれない各キャリアの平均出力電力の理想値とのずれを解消することができる。
上記説明した第3、第4の送信機では、各キャリアにおける平均入力電力と、ピーク抑圧、帯域制限、直交変調というキャリア毎の一連の信号処理後の平均出力電力に基づいて、実際のキャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整を各キャリアに施すので、特に課題で説明した第1の問題点を解決できる。
また、更にマルチキャリ信号に対してもレベル調整を行えば、装置の現動作状況に即したレベル調整をマルチキャリア信号にも施すことになり、全ての問題点を解決できる。
上述したように、本発明の第1の類型に属する実施例の送信機によれば、監視部において各キャリアの平均入力電力が最大となるキャリアを特定し、その最大値を取得し、さらに特定されたキャリアの平均出力電力を取得して、取得した平均入力電力と平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比であるレベル制御情報を算出し、信号レベル調整部においてマルチキャリア信号とレベル制御情報の乗算を行ってマルチキャリア信号のレベルを調整することにより、キャリアの入力レベルの変動に対応してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる効果がある。
また、帯域制御後のキャリアとゲイン値の乗算を行う乗算器をキャリア毎に設け、監視部は、キャリア毎に平均入力電力及び平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比に基づいて各キャリアのゲイン値を算出し、対応する乗算器に出力することにより、キャリアの帯域制限後のレベルの変動をキャリア毎に抑えることができ、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる効果がある。
また、本発明の第1の類型に属する送信機では、特定キャリア又はキャリア毎の平均入力電力及び帯域制限後の平均出力電力に基づいて算出したゲイン値を用いて各キャリア又はマルチキャリアのレベル調整を行うので、各キャリアの帯域制限によって発生するピークも含めて調整することができ、ピーク電力抑圧部11におけるピークファクタ閾値を設定する際に、帯域制限によって発生するピークを考慮した低めの閾値を設定する必要が無くなり、実際に発生するピークに応じたレベル調整が可能となる。
尚、これまで説明してきた送信機の構成(図1、図2、図3、図15、図17)は、いずれも図6に示す送信増幅器に用いる送信機1の構成であり、デジタル直交変調部13-1〜13-nから出力される各キャリアの直交変調後のI,Q両成分のうち、I成分について加算器14で合成してマルチキャリア信号を出力し、信号レベル調整部15では、I成分を合成したマルチキャリア信号に対するレベル調整を行うものであった。以降、この形式の送信機1をデジタル直交変調版の送信機と呼ぶ。
それに対して、図18に示す送信増幅器に用いる送信機1′の構成とするためには、各送信機において、デジタル直交変調部13の後段に位置するピーク電圧抑圧部21(図2)や乗算器31がデジタル直交変調部13-1〜13-nから出力される各キャリアの直交変調後のI,Q両成分を入力して、ピーク電圧抑圧或いはゲインの乗算を行う。
そして、デジタル直交変調部13又はピーク電圧抑圧部21又は乗算器31の後段に2つの加算器14-1、14-2を設けて、各キャリアのI、Q成分を各々加算して、合成後のマルチキャリア信号をI、Q各々の成分として出力する。
そして、信号レベル調整部15を有する構成においては、マルチキャリア信号のI、Q各成分に対するレベル調整を行うものとする。以降、この形式の送信機1′をアナログ直交変調版の送信機と呼ぶ。
これにより、図18に示す送信増幅器に用いるアナログ直交変調版の送信機1′においても、デジタル直交変調版の送信機1と同様の動作を行い、同様の効果が得られるものである。
次に、本発明の第2の類型に属する送信機について説明する。
本発明の第2の類型に属する送信機は、複数のキャリアがピーク電力抑圧及び帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、全キャリアの総和の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリア信号の平均出力電力)に基づいて、マルチキャリア信号の信号レベルを調整する送信機である。
そして、本発明の第2の類型に属する送信機を機能実現手段で説明すると、全キャリアの総和の平均入力電力を算出する入力電力演算部と、各キャリアを帯域制限し合成したマルチキャリア信号の平均電力である平均出力電力を算出する出力電力演算部と、取得した平均入力電力と平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比であるレベル制御情報を出力する監視部と、監視部から出力されたレベル制御情報を乗算して、マルチキャリア信号のレベルを調整する信号レベル調整手段とを備えたものであり、これによりキャリアの入力レベルの変動に対応してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
また、監視部において上記マルチキャリアのレベル制御情報の決定方法として、キャリアの総和の平均入力電力の推定値とレベル制御量とが対応付けられたテーブルを用いて決定する方法、或いは、キャリアの総和の平均入力電力の推定値とマルチキャリア信号の平均出力電力の理想値とが対応付けられたテーブルを用いて、平均出力電力が理想値に等しくなるようにレベル制御量を調整して決定する方法を実現するので、簡単な制御によって、キャリアの入力レベルの変動に対応してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第2の類型に属する送信機の具体的構成例について、実施例5、実施例6で説明する。
次に、本発明の第5の実施例に係る送信機(以下、第5の送信機)について、第1の送信機との相違点を中心に説明する。
まず、第5の送信機の構成について図19を用いて説明する。図19は、第5の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。尚、第1の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
第5の送信機は、第1の送信機と同様の構成部分として、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、ピーク電力抑圧部11と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14-1,14-2と、信号レベル調整部15と、入力電力演算部16′と、出力電力演算部17と、監視部18とから構成されている。
尚、第5の送信機において、入力電力演算部16′における入力電力演算対象、及び出力電力演算部17における出力電力演算対象、及び監視部18におけるレベル制御情報算出方法が、第1の送信機とは若干異なっている。
また、第5の送信機では、ピーク電力抑圧部11と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14-1,14-2とから成る部分をデジタル信号処理部70と呼ぶことにする。
次に、第5の送信機の各部の構成について説明するが、キャリア符号多重信号生成部10〜信号レベル調整部15については、第1の送信機と同様であるので、ここでは説明を省略する。尚、加算器14-1,14-2は、I成分用、Q成分用それぞれに設けられている。
第5の送信機における入力電力演算部16′は、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nから出力された拡散変調後の全てのキャリアを入力し、各キャリアの電力値に基づいて、全てのキャリアの総和の平均入力電力を算出して、監視部18に出力する。
ここで、入力電力演算部16′における平均入力電力の算出方法について、第1の送信機の入力電力演算部16との違いを中心に説明する。
第1の送信機では、入力電力演算部16がキャリア毎に設けられ、1つのキャリアの入力信号に対する電力値を算出していたのに対して、第5の送信機の入力電力演算部16′では、全てのキャリアの入力信号の総和を取って電力値を算出することになる。
よって、各キャリアの入力信号を(1)式で表すとすると、全キャリアの入力信号の総和電力Powは、下式(8)のように表すことができる。
次に、入力電力演算部16′は、上記算出した総和電力値Powを用いて、第1の送信機での説明と同様に、式(6)に示した重み付け演算処理、及び(7)に示した平均化処理を行う。
出力電力演算部17は、I、Q各成分それぞれに加算されたマルチキャリア信号を入力してマルチキャリア信号の平均出力電力を算出し、監視部18に出力する。出力電力演算部17における平均出力電力の算出方法は、入力される信号がマルチキャリア信号である点を除いて、第1の送信機と同様である。
監視部18は、入力電力演算部16′から出力される平均入力電力と、出力電力演算部17から出力される平均出力電力とに基づいて、マルチキャリア信号のレベル調整に関するパラメータを算出し、レベル制御情報として信号レベル調整部15に出力するものである。
ここで説明する監視部18は、マルチキャリア信号の信号レベルを調整するためのレベル制御量を決定する第1の方法である「演算によるフィードフォワード制御」を実現するものである。
ここで、第5の送信機における監視部18のレベル制御情報の算出方法について、図22を用いて説明する。図22は、本発明の第5の送信機の監視部18におけるレベル制御情報の設定処理のフローチャートである。
図22において、監視部18はまず、入力電力演算部16′から出力されるキャリアの総和平均入力電力と、出力電力演算部17から出力されるマルチキャリア信号の平均出力電力に基づいて、マルチキャリア信号のレベル制御情報(ゲイン値)を算出し(S110)、算出したレベル制御情報を、信号レベル調整部15に出力する(S111)。
第5の送信機の監視部18におけるレベル制御情報算出処理(S110)の詳細な処理フローは、図9、図10を用いて第1の送信機の監視部18におけるマルチキャリアのレベル制御情報(ゲイン値)算出処理フローとして説明したものとほぼ同様であるので詳しい説明は省略する。
図9,図10では、複数キャリアの平均入力電力の中から最大となるキャリアを選択する処理(S12)が有り、当該選択されたキャリアの平均入力電力と平均出力電力から演算を行っていた。
それに対して、第5の送信機の監視部18では、平均入力電力としてキャリアの総和平均入力電力が入力され、平均出力電力としてマルチキャリア信号の平均出力電力が入力され、平均入力電力と平均出力電力からマルチキャリア信号のレベル制御情報を算出するので、(S12)が不要となる点が異なるだけである。
そして、処理の中で平均出力電力B(t)に対して比較を行う閾値及びGAIN(t)の上限値及び下限値は、キャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる、マルチキャリアに対する値である。
また、ここで演算処理に用いる係数α(α>0)については、複数のキャリア信号の総和電力値によって決まる値であり、予め監視部18に設定されている。監視部18では、係数αを決定するにあたり、複数のキャリア信号の総和電力とマルチキャリア信号の電力値の基準データの入出力電力比を求め、この逆数をαとしている。
次に、第5の送信機の動作について、第1の送信機との違いを中心に説明する。
第5の送信機の本線系の動作は、第1の送信機と同様で、デジタルデータである各キャリアの送信データが対応するキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nに入力され、固有の拡散符号によって拡散変調されて合成され、各キャリアは同相成分(I成分)及び直交成分(Q成分)とが出力され、さらにピーク電力抑圧部11で各キャリアに対し、キャリアの総和電力に基づいて均一のピーク値制限が為され、波形整形フィルタ12-1〜12-nで帯域制限され、デジタル直交変調部13-1〜13-nで直交変調が行われ、加算器14-1,14-2で、I,Q各成分が各々合成されて、マルチキャリア信号として出力される。
そして、第5の送信機の特徴動作として、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nから出力される各キャリアのI、Q成分が入力電力演算部16′に入力され、入力電力演算部16′で各キャリアの電力値に基づいて、全てのキャリアの総和の平均入力電力が算出されて監視部18に出力される。
また、上記加算器14-1,14-2で合成されたマルチキャリア信号のI、Q成分が、出力電力演算部17に入力され、出力電力演算部17でマルチキャリア信号の平均出力電力が算出されて、監視部18に出力される。
監視部18では、入力電力演算部16′からの平均入力電力と、出力電力演算部17から出力される平均出力電力とに基づいてマルチキャリア信号のレベル制御情報が算出されて出力され、信号レベル調整部15でマルチキャリア信号に対してレベル調整が為される。
第5の送信機において、信号レベル調整部15においてマルチキャリア信号のレベルに応じたレベル調整を行うため、第5の送信機の本線系(ピーク電力抑圧部11〜加算器14)から出力されるマルチキャリア信号と、制御系(入力電力演算部16′、出力電力演算部17及び監視部18)から出力される、上記マルチキャリア信号に対応したレベル制御情報は、同一のタイミングで信号レベル調整部15に入力されることが好ましい。
このため、本線系又は制御系に遅延器等を設けて、本線系及び制御系のデータ出力の同期を図るようにしてもよい。
第5の送信機によれば、監視部18で、各キャリアの総和平均入力電力とマルチキャリア信号の平均出力電力とに基づいて、各キャリアの合成後のマルチキャリア信号のレベル調整の制御量を算出し、信号レベル調整部15で当該制御量を用いてマルチキャリア信号のレベル調整を行うようにしているので、各キャリアの入力レベルの変動により発生する総和電力の変動に対応して、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
通常のピーク電力抑圧部11は、キャリアの総和電力に応じて各キャリアのピーク制御を行うが、その後の帯域制限等でピークなどが発生する場合が多く、第5の送信機では、キャリアの総和平均入力電力と、各キャリアが実際に帯域制限され合成されたマルチキャリア信号の平均出力電力とに基づいて、マルチキャリア信号のレベル調整の制御量を算出してレベル調整しているので、帯域制限等で発生したピークなども含めて、最終的に増幅器に入力される信号のピークを抑えながら、且つ安定してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
上記説明では、第5の送信機の監視部18におけるレベル制御情報の決定方法として、第1の方法(「演算によるフィードフォワード制御」)で説明してきたが、第1の送信機と同様に、予め平均入力電力の想定値と、レベル制御情報とが組となって構成されたテーブルを用いてレベル制御情報を出力する第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)で実現するようにしても良い。
この場合、監視部18には、平均入力電力(第5の送信機においては、各キャリアの総和平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第5の送信機においては、マルチキャリア信号)のレベル制御情報GAIN(t)とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、レベル制御情報GAIN(t)は、各キャリアの総和平均入力電力が想定値の場合の測定によって得られたレベル制御情報の最適値が格納されている。
そして、監視部18において、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を実現する場合の処理動作については、図11を用いて説明した第1の送信機の監視部18の処理動作とほぼ同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
第1の送信機の監視部18の処理動作と異なる点は、図11ではS31において、複数の入力電力演算部16-1〜16-nから入力される各キャリアの平均入力電力の中から最大値を取得していたが、第5の送信機の監視部18では、入力電力演算部16′から入力されるキャリアの総和平均入力電力をそのまま取得すればいい点が異なるだけである。
次に、第5の送信機の監視部におけるレベル制御情報の決定方法として、第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現する場合の構成について、第6の実施例として説明する。
本発明の第6の実施例に係る送信機(以下、第6の送信機)について、第5の送信機との相違点を中心に説明する。図20は、本発明の第6の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。尚、第5の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
本発明の第6の送信機の構成は、図19に示した第5の送信機とほぼ同様に、各キャリアの本線系(キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、ピーク電力抑圧部11と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14-1,14-2)と、信号レベル調整部15と、入力電力演算部16′と、出力電力演算部17と、監視部41とから構成されている。
尚、第6の送信機において、出力電力演算部17における出力電力演算対象が第5の送信機とは異なり、また監視部41におけるレベル制御情報の制御方法が、第5の送信機の監視部18とは異なっている。
第6の送信機の出力電力演算部17は、入力される信号の平均出力電力を算出するものであるが、信号レベル調整部15におけるレベル制御情報との乗算後のマルチキャリア信号(I,Q両成分)が入力され、当該レベル制御情報乗算後のマルチキャリア信号の平均出力電力を算出して出力するものである。
第6の送信機の監視部41は、マルチキャリアに対するレベル制御情報の決定方法として第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現するに当たり、平均入力電力(第6の送信機においては、各キャリアの総和平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第6の送信機においては、マルチキャリア信号)の平均出力電力の理想値とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、平均出力電力の理想値は、平均入力電力が想定値である場合の測定によって得られた平均出力電力の最適値が格納されている。
次に、第6の送信機の監視部41におけるマルチキャリアに対するレベル制御情報の決定処理の概要は、入力電力演算部16′から出力されるキャリアの総和平均入力電力に対応する平均出力電力の理想値(理想出力電力)をテーブルから読み出し、出力電力演算部17からのレベル制御情報乗算後のマルチキャリアの平均出力電力が理想出力電力に等しくなるようレベル制御情報を再度調整して信号レベル調整部15に出力する処理である。
尚、第6の送信機の監視部41レベル制御情報の決定処理の具体的な処理フローは、図16を用いて説明した第1の類型に属する第4の送信機における監視部41の制御フローと同様であるのでここでは説明を省略する。図16では、特定のキャリアの平均入力電力を取得して当該キャリアに対するゲイン値を制御する処理を示しているが、第6の送信機では、総和平均入力電力を取得してマルチキャリアに対するレベル制御情報を制御する点が異なっている。
尚、これまで説明してきた第5,第6の送信機の構成(図19、図20)は、いずれも図6に示す送信増幅器に用いるデジタル直交変調版の送信機1の構成であり、デジタル信号処理部70からの出力の内I成分のみを信号レベル調整部15に入力するか(図19)、又は信号レベル調整部15からの出力の内I成分のみを送信機出力とする(図20)ものであった。
それに対して、図18に示す送信増幅器に用いるアナログ直交変調版の送信機1′の構成とするためには、各送信機において、デジタル信号処理部70からの出力のI,Q両成分を信号レベル調整部15に入力してレベル調整を行うか(図19)、又は信号レベル調整部15からの出力のI,Q両成分を送信機出力とすればよい。
これにより、図18に示す送信増幅器に用いる送信機1′においても、送信機1と同様の動作を行い、同様の効果が得られるものである。
図19,図20に示した第5,第6の送信機では、デジタル信号処理部70の内部が、図7に示した従来及び第1の類型に属する送信機(第1〜第4の送信機)と同様に、ピーク電力抑圧部11と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14-1,14-2とから構成される場合を示したが、デジタル信号処理部70の内部は、別の構成であっても構わない。
第5,第6の送信機におけるデジタル信号処理部70の内部の別の構成例としては、図21に示すように、第1〜第4のピーク電力抑圧部11-1〜11-4と、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14-1,14-2とから構成されている。図21は、本発明の第6の送信機におけるデジタル信号処理部70の別の内部構成例を示すブロック図である。
第1〜第3のピーク電力抑圧部11-1〜11-3は、各々の構成が、入力されるキャリアのレベルに基づいて、又は各キャリアを合成した場合のレベルに基づいて、各キャリアに一律の電力制限を行い、制限後の各キャリア信号を出力するものである。
また、第4のピーク電力抑圧部11-4は、入力されるマルチキャリアのレベルに基づいて、当該マルチキャリア信号の電力制限を行い、制限後のマルチキャリア信号を出力するものである。
各ピーク電力抑圧部11の動作の詳細については、第1の送信機で説明した通りなので、ここでは説明を省略する。
尚、第1〜第4のピーク電力抑圧部は、機能内部でピーク低減操作を複数回施行することにより、ピーク電力の低減をより理想的に実現する事を可能としている。
また、図21の構成では、第1〜第4ピーク電力抑圧部を設けているが、全て設置する必要はなく、目標効率、回路規模等考慮し、少なくとも1箇所に配置する事が条件となる。
上述したように、本発明の第2の類型に属する送信機によれば、監視部において、取得した全キャリアの総和の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリア信号の平均出力電力)に基づいて、実際のキャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整をマルチキャリア信号に施すので、特に課題で説明した第2,第3の問題点を解決し、帯域制限等で発生したピークなども含めて、最終的に増幅器に入力される信号のピークを抑えながら、且つ安定してマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
次に、本発明の第3の類型に属する送信機について説明する。
本発明の第3の類型に属する送信機は、複数のキャリアがピーク電力抑圧及び帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、キャリア毎に、キャリアのピーク電力抑圧前の平均入力電力、及び場合によって当該キャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力に基づいて、当該キャリアのピーク電力抑圧された信号の信号レベルを調整する送信機である。
そして、本発明の第3の類型に属する送信機を機能実現手段で説明すると、各キャリアに対してキャリアの総和に基づく一律なピーク電力抑圧を行うピーク電力抑圧部と、各キャリアに対応付けた構成として、ピーク電力抑圧前の平均電力である平均入力電力を算出する入力電力演算部と、ピーク電力抑圧後の平均電力である平均出力電力を算出する出力電力演算部と、算出された平均入力電力と平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比であるレベル制御情報を出力する監視部と、監視部から出力されたレベル制御情報をピーク電力抑圧後の信号に乗算して、キャリア信号のレベルを調整する信号レベル調整部とを有するピーク電力抑圧・調整部を備えたものであり、これによりキャリアの総和に基づく一律なピーク電力抑圧の後でキャリア毎のレベル調整を行うことにより、キャリアの入力レベルの変動に対応してキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第3の類型に属する送信機では、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号を送信する送信機において、上記ピーク電力抑圧・調整部を、帯域制限前、又は帯域制限と直交変調の間、直交変調と合成の間に配置したものであり、これにより配置した各所でキャリアの入力レベルの変動に対応してキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
また、監視部において上記キャリアのレベル制御情報を決定する方法として、キャリアの平均入力電力の推定値とレベル制御量とが対応付けられたテーブルを用いて決定する方法、或いは、キャリアの平均入力電力の推定値とキャリアの平均出力電力の理想値とが対応付けられたテーブルを用いて、平均出力電力が理想値に等しくなるようにレベル制御量を調整して決定する方法を実現するので、簡単な制御によって、キャリアの入力レベルの変動に対応してキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第3の類型に属する送信機の具体的構成例について、実施例7で説明する。
次に、本発明の第7の実施例に係る送信機の第1の構成例(以下、第7−1の送信機)の構成について、図23を用いて第1の送信機との違いを中心に説明する。図23は、本発明の第7の実施例に係る第1の送信機(第7−1の送信機)の構成ブロック図である。尚、従来の送信機又は第1の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
尚、図23では、デジタル直交変調版の送信機1における構成を示しているが、デジタル直交変調部13-1〜13-n以降をI,Q両成分出力とすれば、アナログ直交変調版の送信機1′となる。
本発明の第7−1の送信機は、図7に示した従来又は本発明の第1〜4の送信機とほぼ同様の構成として、キャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14とから構成され、従来のピーク電圧抑圧部51の代わりに、ピーク電力抑圧・調整部60を設けている。
次に、第7−1の送信機の各部の構成について説明するが、従来又は本発明の第1〜4の送信機と同様の構成であるキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14については、説明を省略する。
尚、加算器14は、デジタル直交変調部13-1〜13-nから出力される直交変調信号のI成分のみを加算するものである。
第7−1の送信機の特徴部分であるピーク電力抑圧・調整部60は、入力される各キャリアの総和に基づいて各キャリアに対して一律にピーク電力抑圧を行い、更に各キャリアの平均入力電力に基づくレベル調整、或いは各キャリアの平均入力電力とピーク電力制限後の平均電力とに基づくレベル調整を行い、レベル調整後の各キャリアを出力するものである。
第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60の具体的構成例(第1の構成例)について図24を用いて説明する。図24は、本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部の第1の構成例を示す構成ブロック図である。
本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部の第1の構成例としては、図24に示すように、複数(図では、n個)のピーク電力抑圧部を有するピーク電力抑圧部11と、各キャリアに対応付けて設けられる信号レベル調整部15-1〜15-n及び入力電力演算部16-1〜16-n及び出力電力演算部17-1〜17-nと、監視部18とから構成される。
次にピーク電力抑圧・調整部60内部の各部について説明する。
ピーク電力抑圧部11は、送信増幅器における電力増幅部に入力されるマルチキャリア信号の最大電力を抑えるため、キャリアの総和電力に対する瞬時電力及び平均電力に基づいてピークの検出を行い、ピークが検出された場合に、キャリアの電力値を一律に抑圧して出力する従来からのピーク電力抑圧部である。
尚、図24では第1〜第nのピーク電力抑圧部を多段に設け、ピーク低減操作を複数回施行することにより、ピーク電力の低減をより理想的に実現するものであるが、目標効率、回路規模等考慮し、少なくとも1つ配置する事が条件となる。
ピーク電力抑圧部11の動作の詳細については、第1の送信機と同様であるので、ここでは説明を省略する。
信号レベル調整部15-1〜15-nは、後述する監視部18から出力されるレベル制御情報に基づいて、ピーク電力抑圧部11からの各キャリア信号に対しレベル調整制御を行い出力するものである。
入力電力演算部16-1〜16-nは、キャリア毎に設けられており、ピーク電力抑圧部11に入力される前、すなわちピーク電力抑圧前のキャリアを入力とし、当該入力信号の電力値に基づいて平均入力電力を算出して、監視部18に出力するものである。尚、入力電力演算部16-1〜16-nにおける平均入力電力の算出方法については、第1の送信機と同様であるので、ここでは説明を省略する。
出力電力演算部17-1〜17-nは、キャリア毎に設けられており、ピーク電力抑圧部11から出力されたピーク電力抑圧後のキャリアを入力とし、当該入力信号の電力値に基づいて平均出力電力を算出して、監視部18に出力するものである。尚、出力電力演算部17-1〜17-nにおける平均出力電力の算出方法についても、入力される演算対象の信号が異なるだけで、演算対象信号に対する平均出力電力の算出方法は第1の送信機と同様であるので、ここでは説明を省略する。
監視部18は、入力電力演算部16-1〜16-nから出力される平均入力電力と、出力電力演算部17-1〜17-nから出力される平均出力電力とを入力し、各キャリアに対応付けられている両演算部から出力される2種類の平均電力に基づいて、各キャリア信号のレベル調整に関するパラメータを算出し、レベル制御情報として演算対象のキャリアに対応する信号レベル調整部15-1〜15-nに出力するものである。
監視部18における各キャリアのレベル制御情報の算出方法について、図25を使って説明する。図25は、本発明の第7の送信機の監視部18における各キャリアのレベル制御情報の設定処理のフローチャートである。
図25において、監視部18は、キャリア毎にゲイン値を算出し(S143-1〜S143-n)、対応する信号レベル調整部15-1〜15-nに出力する(S144)。
処理S143-1〜S143-nにおける処理の概要としては、算出対象のキャリアに対応する入力電力演算部16-1〜16-nから出力される平均入力電力と、出力電力演算部17-1〜17-nから出力される平均出力電力に基づいて、当該キャリアのゲイン値を算出するものである。尚、ゲイン値算出の具体的な処理方法については、図13,図14を用いて第3の送信機で説明した処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
監視部18は、規定のタイミングで各キャリアのレベル制御情報(ゲイン値)の算出処理を定期的に行う。また、監視部18は、過去のタイミングで算出した各キャリアに対するゲイン値GAINn(t)を内蔵する記憶手段(図示せず)に記憶して、新たなゲイン値の算出時に記憶手段から読み出している。
第7-1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60の動作を図24を参照しながら説明すると、入力される各キャリアの信号が、ピーク電力抑圧部11で各キャリアの総和に基づいて一律にピーク電力制限が施されて出力される。
そしてそれと平行して、ピーク電力抑圧部11への入力前の各キャリアが入力電力演算部16-1〜16-nに入力されて平均入力電力が求められ、ピーク電力抑圧部11からの各キャリアが出力電力演算部17-1〜17-nに入力されて平均出力電力が求められ、監視部18でキャリア毎に平均入力電力と平均出力電力からレベル制御情報(ゲイン値)が算出され、算出対象のキャリアに対応する信号レベル調整部15-1〜15-nに出力される。
そして、信号レベル調整部15-1〜15-nにおいて、ピーク電力抑圧部11から出力される一律にピーク電力抑圧された各キャリアに、監視部18から出力される各ゲイン値が乗算され、キャリア毎にレベル調整された信号が出力される。
本発明の第7の送信機の動作を図23を参照しながら説明すると、デジタルデータである各キャリアの送信データが対応するキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nに入力され、固有の拡散符号によって拡散変調されて合成されてI,Q各成分が出力され、ピーク電力抑圧・調整部60において、各キャリアの総和に基づいて各キャリアに対して一律にピーク電力抑圧が行われ、更に各キャリアの平均入力電力に基づくレベル調整、或いは各キャリアの平均入力電力とピーク電力制限後の平均電力とに基づくレベル調整が行われて、レベル調整後の各キャリアが出力される。
そして、ピーク抑圧・レベル調整後の各キャリア信号が、対応する波形整形フィルタ12-1〜12-nで帯域制限され、さらにデジタル直交変調部13-1〜13-nで直交変調されて、加算器14で直交変調された各キャリアのI成分が合成され、マルチキャリア信号として出力されるようになっている。
第7の送信機によれば、ピーク電力抑圧部11でピーク抑圧が動作した区間においては、入力電力演算部16からの平均入力電力に対して出力電力演算部17からの平均出力電力はレベルが抑えられていることが予想されるが、平均入力電力とピーク抑圧後の平均出力電力に基づいて、実際のキャリアの電力値及び動作しているキャリア数によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整を各キャリアに施すので、任意の区間(フレーム等)に対応する各キャリア信号を基準データを用いた際のレベルに近似させることができ、特に課題で説明した第1の問題点を解決し、入力されたキャリアのレベルに変動が発生しても、安定して各キャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができ、最終的にマルチキャリア信号におけるレベルの変動を抑えることができる。
上記説明では、第7の送信機の監視部18におけるレベル制御情報の決定方法として、第1の方法(「演算によるフィードフォワード制御」)で説明してきたが、第1〜第6の送信機と同様に、予め平均入力電力の想定値と、レベル制御情報とが組となって構成されたテーブルを用いてレベル制御情報を出力する第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)で実現するようにしても良い。
この場合、監視部18には、平均入力電力(第7の送信機においては、各キャリアの平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第7の送信機においては、ピーク抑圧後のキャリア信号)のレベル制御情報GAIN(t)とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、レベル制御情報GAIN(t)は、各キャリアの平均入力電力が想定値の場合の測定によって得られたレベル制御情報の最適値が格納されている。
そして、監視部18において、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を実現する場合の処理動作については、図26を用いて説明する。図26は、第7の送信機の監視部18における、テーブルを用いたレベル制御情報の出力処理のフローチャートである。尚、図26は、キャリアnについてのレベル制御情報を決定する場合の処理について示したものであるが、監視部18は、他のキャリアについても同様の処理を行い、レベル制御情報を決定する。
監視部は、入力電力演算部16-nの動作状況を監視し、入力電力演算部16-nから平均入力電力An(t)を取得する(S171)。次に監視部は、テーブルに格納されている平均入力電力の想定値のうち、平均入力電力An(t)に相当する想定値を特定する(S172)。処理S172において、監視部は具体的に、テーブルに格納されている想定値のうち、平均入力電力An(t)に最も近似する想定値を選び出すことで、想定値を特定する。
そして監視部は、特定された想定値に対応するレベル制御情報(ゲイン)GAINn(t)を読み出し(S173)、レベル制御情報として信号レベル調整部15-nに出力する(S174)。以上がテーブルを用いたレベル制御情報の出力処理である。
第7の送信機によれば、ピーク電力抑圧・調整部60において、従来からあるピーク電力抑圧部11で入力される各キャリアの総和に基づいて各キャリアに対して一律にピーク電力抑圧を行う際に、監視部18が、キャリア毎に各キャリアの入力電力に基づくレベル調整、或いは各キャリアの入力電力とピーク電力抑圧後の電力とに基づくレベル調整に関するレベル制御情報を求め、ピーク電力抑圧後のレベル調整を行うので、キャリアの総和に基づく一律のピーク電力抑圧の弊害を各キャリア信号のレベルに合わせて調整し、各キャリアの出力レベルの変動を平均的に抑えることができる。
次に、第7の送信機及び従来の送信機における1キャリアの入出力特性について、図27及至図31を用いて説明する。図27は、第7の送信機と従来技術の送信機における、32コード多重時信号1キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベルに関するシミュレーション例を示したグラフであり、図28は、入力設定レベルとレベル偏差に関するシミュレーション例を示したグラフである。また、図29は、32コード多重時信号2キャリア送信時の、レベル変動キャリア(キャリア1)に対する入力設定レベルと出力レベルに関するシミュレーション例を示したグラフであり、図30は、キャリア1に対する入力設定レベルと入出力レベル差に関するシミュレーション例を示したグラフであり、図31はレベル固定キャリア(キャリア2)に対する、キャリア1の入力設定レベルとキャリア2の入出力レベル差に関するシミュレーション例を示したグラフである。
図27及び図28の説明として、入出力レベル差とは、送信機の入力設定レベルと出力レベルのレベル差を表す。すなわち、入力レベルを線形に増加させた場合、出力レベルも線形に増加させた値が期待値となる。
図27及び図28に示す特性の測定において、第7の送信機及び従来の送信機で用いるピーク電圧抑圧部11は、キャリアのレベル制限を行っており、閾値は固定値(0dBm送信時に平均電力+6dB)としている。図27に示すように、従来の送信機の場合、入力の設定レベルを増加させると、その分ピーク電圧抑圧部11の閾値を超え、振幅制限が実施されるので、入力の設定レベルの増加に伴い、レベル偏差が生じる。第7の送信機では、信号レベル調整部15においてレベル制御情報がキャリアに乗算されることによって入出力特性を線形に保つ事が可能となる。つまり、入出力レベル差を一定にする事ができる。
また、図29及至図31に示す特性の測定において、2つのキャリアのうち、キャリア2は入力レベルを固定とし、キャリア1の入力レベルを変動させている。また、ピーク電力抑圧部11はキャリアの総和電力に基づいて動作する仕様となっている。閾値は固定値で(2キャリアが共に0dBm送信時の平均電力+6dB)としている。
図29及び図30に示すように、キャリア1に関しては、1キャリア送信時と同様に、入力の設定レベルを増加させると、その分ピーク電力抑圧部の閾値を超え、振幅制限が実施されるので、入力の設定レベルの増加に伴い、レベル偏差が生じる。
また、図31に示すように、キャリア2に関しては、従来の送信機の場合、キャリア1の入力設定レベルを大きくすると、ピーク電力抑圧部11の動作頻度が多くなり、一定レベルで入力したキャリア2においても、出力レベルが一定とならずに低下する。そのため、キャリア2の出力レベルは、キャリア1の設定レベル増加に伴い、レベル偏差が生じる。
一方、第7の送信機では、図28の1キャリア時の送信時と同様、監視部18により設定されるレベル制御情報を基に、信号レベル調整部15-1〜15-nにキャリア信号のレベル制御がなされ、結果として、各キャリアの出力レベルの変動を抑えることが可能となる。
次に、第7の送信機の監視部におけるレベル制御情報の決定方法として、第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現する場合のピーク電力抑圧・調整部60の具体的構成例(第2の構成例)について、図32を用いて説明する。図32は、本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部の第2の構成例を示す構成ブロック図である。尚、図24の第1の構成例と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部の第2の構成例としては、図32に示すように、複数(図では、n個)のピーク電力抑圧部を有するピーク電力抑圧部11と、各キャリアに対応付けて設けられる信号レベル調整部15-1〜15-n及び入力電力演算部16-1〜16-n及び出力電力演算部17-1〜17-nと、監視部41とから構成されている。
尚、第2の構成例において、出力電力演算部17における出力電力演算対象が第1の構成例とは異なり、また監視部41におけるレベル制御情報の制御方法が、第1の構成の監視部18とは異なっている。
第2の構成例の出力電力演算部17-1〜17-nは、入力される信号の平均出力電力を算出するものであるが、信号レベル調整部15-1〜15-nにおけるレベル制御情報との乗算後の各キャリア信号が入力され、当該レベル制御情報乗算後のキャリア信号の平均出力電力を算出して出力するものである。
第2の構成例の監視部41は、各キャリアに対するレベル制御情報の決定方法として第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現するに当たり、平均入力電力(第7の送信機においては、各キャリアの平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第7の送信機においては、各キャリア信号)の平均出力電力の理想値とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、平均出力電力の理想値は、平均入力電力が想定値である場合の測定によって得られた平均出力電力の最適値が格納されている。
次に、第2の構成例の監視部41における各キャリアに対するレベル制御情報の決定処理の概要は、キャリア毎に入力電力演算部16-1〜16-nから出力されるキャリアの平均入力電力に対応する平均出力電力の理想値(理想出力電力)をテーブルから読み出し、対応する出力電力演算部17-1〜17-nからのレベル制御情報乗算後のマルチキャリアの平均出力電力が等しくなるようレベル制御情報を再度調整して対応する信号レベル調整部15-1〜15-nに出力する処理である。
尚、第2の構成例の監視部41レベル制御情報の決定処理の具体的な処理フローは、図16を用いて説明した第1の類型に属する第4の送信機における監視部41の制御フローと同様であるのでここでは説明を省略する。
上記図32を用いて説明した第7の送信機において、監視部41はテーブルを用いて各キャリアの平均出力電力の理想値を求め、実際の平均出力電力が当該理想値になるようにゲイン値を制御して出力しているが、第3の送信機の監視部32の場合と同様、各キャリアの平均入力電力から予想されるレベル制御量を計算、或いはレベル制御量をテーブルから読み出して信号レベル調整部15に出力し、信号レベル調整部15でレベル制御量乗算後の平均出力電力と平均入力電力とを比較して同一となるようにゲイン値を補正して出力する構成としてもよい。
第7の送信機において、ピーク電力抑圧・調整部60に第2の構成例を用いれば、レベル調整後の各キャリア信号の平均出力電力と理想値とを比較し、当該平均出力電力が理想値と等しくなるまでレベル制御情報を補正して信号レベル調整部15-1〜15-nに出力するフィードバック制御によって、各キャリアのレベル調整を行っているので、各キャリアのレベル制御情報を算出する処理を行うフィードフォワード制御(第1の方法)よりも、監視部41は複雑な演算回路を用いることなく迅速に最適なレベル制御情報を特定することができる。
これまで、本発明の第3の類型に属する送信機の具体的構成例として、図23に示すようにピーク電力抑圧・調整部60を波形整形フィルタ12-1〜12-nの前に配置する構成の送信機(第7−1の送信機)で説明してきたが、ピーク電力抑圧・調整部60を別の場所に配置する構成であってもかまわない。
具体例としては、図33に示すように、ピーク電力抑圧・調整部60を波形整形フィルタ12-1〜12-nとデジタル直交変調部13-1〜13-nとの間に設けた送信機(第7−2の送信機)とする例や、図34に示すように、ピーク電力抑圧・調整部60をデジタル直交変調部13-1〜13-nと加算器14との間に設けた送信機(第7−3の送信機)とする例が考えられる。
図33は、本発明の第7の実施例に係る第2の送信機(第7−2の送信機)の構成ブロック図であり、図34は、本発明の第7の実施例に係る第3の送信機(第7−3の送信機)の構成ブロック図である。
第7−2の送信機では、ピーク電力抑圧・調整部60を、波形整形フィルタ12-1〜12-nの後段に設け、波形整形フィルタ12-1〜12-nにおける帯域制限後の各キャリアに対して各キャリアの総和に基づく一律のピーク電力抑圧を行いながら、各キャリアの平均入力電力に応じたレベル調整を行っており、これにより帯域制限によってピークファクタの増大した、すなわちレベルの突出したキャリアに対して突出部分のレベルを抑圧しながら、且つ総和に基づく一律のピーク電力抑圧の弊害を各キャリア信号のレベルに合わせて調整することができる。
また、第7−3の送信機では、ピーク電力抑圧・調整部60を、デジタル直交変調部13-1〜13-nの後段に設け、デジタル直交変調部13-1〜13-nにおける変調後の各キャリアに対して各キャリアの総和に基づく一律のピーク電力抑圧を行いながら、各キャリアの平均入力電力に応じたレベル調整を行っており、これにより帯域制限およびデジタル直交変調などのキャリア毎に行われたトータルな信号処理によって発生したピークファクタの増大、すなわちレベルの突出等を踏まえて、キャリアの総和に基づく一律のピーク電力抑圧を施してキャリアに対して突出部分のレベルを抑圧しながら、且つ総和に基づく一律のピーク電力抑圧の弊害を各キャリア信号のレベルに合わせて調整することができる。
第3の類型に係る送信機では、信号レベル調整部15-1〜15-nにおいて各キャリア信号のレベルに応じたレベル調整を行うため、本線系(ピーク電力抑圧部11)から出力されるキャリア信号と、制御系(入力電力演算部16、出力電力演算部17及び監視部18,41)から出力される、上記各キャリア信号に対応したレベル制御情報は、同一のタイミングで信号レベル調整部15-1〜15-nに入力されることが好ましい。
このため、本線系又は制御系に遅延器等を設けて、本線系及び制御系のデータ出力の同期を図るようにしてもよい。
第3の類型に係る送信機によれば、各キャリアに対するピーク電力抑圧部11におけるピーク抑圧前の平均入力電力とピーク抑圧後の平均出力電力とに基づいて、各キャリアのレベル調整の制御量を算出し、当該制御量を用いてピーク抑圧後の各キャリア信号のレベル調整を行うようにしているので、ピーク電力抑圧部11におけるキャリアの総和に基づく一律のレベル抑圧の弊害を各キャリアの平均入力レベルに応じて調整することができ、各キャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
具体的な事象として、通常のピーク電力抑圧部11は、キャリアの総和電力に応じて各キャリアのピーク制御を行うので、入力レベルにおいて変動の激しいキャリアがあったとしても、全キャリアの総和電力レベルが規定値未満であれば、ピーク制御は行われないが、監視部18,41において変動の激しいキャリアに対して適切なゲイン値が算出されて、当該キャリアに対応する信号レベル調整部15でレベルの抑圧が行われて変動が抑えられ、最終的にマルチキャリア信号におけるレベルの変動は抑えられることになる。
また、別の事象として、入力レベルの変動の少ないキャリアAと、入力レベルが急激に変動するキャリアBが混在している場合、キャリアBの入力レベルの変動によってピーク電力抑圧部11ではピーク制御(抑圧)の頻度が多くなり、キャリアAに対しても一律のピーク制限がかかってキャリアのレベルが低下してしまう。
それに対して、監視部18,41では、キャリアAのピーク制御(抑圧)前後の平均電力比から、ピーク電力抑圧部11で行われた一律のピーク抑圧を戻すようなゲイン値が算出されて、キャリアAに対応する信号レベル調整部15でレベルの制御(実施には、上昇)が行われてレベルが回復し、最終的にマルチキャリア信号におけるレベルの変動は抑えられることになる。
第3の類型に係る送信機によれば、各キャリアにおける平均入力電力と、ピーク抑圧、帯域制限、直交変調というキャリア毎の一連の信号処理後の平均出力電力に基づいて、実際のキャリアの電力値及び動作中のキャリア数によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整を各キャリアに施すので、任意の区間(フレーム等)に対応する各キャリア信号を基準データを用いた際のレベルに近似させることができ、特に課題で説明した第1の問題点を解決し、入力されたキャリアのレベルに変動が発生しても、安定して各キャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができ、最終的にマルチキャリア信号におけるレベルの変動を抑えることができる。
次に、本発明の第4の類型に属する送信機について説明する。
第4の類型は、複数のキャリアが帯域制限及び直交変調されて合成されたマルチキャリア信号をピーク電力抑圧してから送信する送信機において、マルチキャリアのピーク電力抑圧前の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力)に基づいて、マルチキャリアのピーク電力抑圧された信号の信号レベルを調整する送信機である。
そして、本発明の第4の類型に属する送信機を機能実現手段で説明すると、マルチキャリアに対してピーク電力抑圧を行うピーク電力抑圧部と、ピーク電力抑圧前の平均電力である平均入力電力を算出する入力電力演算部と、ピーク電力抑圧後の平均電力である平均出力電力を算出する出力電力演算部と、算出された平均入力電力と平均出力電力の比を求め、当該比と予め設定された期待値との比であるレベル制御情報を出力する監視部と、監視部から出力されたレベル制御情報をピーク電力抑圧後の信号に乗算して、マルチキャリア信号のレベルを調整する信号レベル調整部とを有するピーク電力抑圧・調整部を備えたものであり、これによりマルチキャリアのピーク電力抑圧の後でレベル調整を行うことにより、マルチキャリア信号の入力レベルの変動に対応してピーク抑圧後のマルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
本発明の第4の類型に属する送信機の具体的構成例について、実施例8で説明する。
次に、本発明の第8の実施例に係る送信機の構成例の構成について、図35を用いて第7の送信機との違いを中心に説明する。図35は、本発明の第8の実施例に係る送信機(第8の送信機)の構成ブロック図である。尚、第7の送信機と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。
尚、図35では、アナログ直交変調版の送信機1′における構成を示しているが、デジタル直交変調部13-1〜13-n以降をI成分のみの出力とすれば、デジタル直交変調版の送信機1となる。
本発明の第8の送信機は、図23等に示した本発明の第7の送信機と同様の構成であるキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nと、波形整形フィルタ12-1〜12-nと、デジタル直交変調部13-1〜13-nと、加算器14とから構成され、第7の送信機においてキャリア毎の処理の過程に設けたピーク電力抑圧・調整部60の代わりに、加算機14の後段にマルチキャリア信号に対してピーク電力抑圧・調整部60′を設けている。
第8の送信機の特徴部分であるピーク電力抑圧・調整部60′は、入力されるマルチキャリアに基づいてピーク電力抑圧を行い、且つマルチキャリアの平均入力電力に基づくレベル調整、或いはマルチキャリアの平均入力電力とピーク電力制限後の平均電力とに基づくレベル調整を行い、レベル調整後の各キャリアを出力するものである。
第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部60′の具体的構成例(第1の構成例)について図36を用いて説明する。図36は、第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部60′内部の第1の構成例を示す構成ブロック図である。尚、図36では、アナログ直交変調版の送信機1′における構成を示しているが、入出力をI成分のみとすれば、デジタル直交変調版の送信機1における構成となる。
本発明の第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部60′内部の第1の構成例としては、図36に示すように、複数(図では、n個)のピーク電力抑圧部を有するピーク電力抑圧部11′と、信号レベル調整部15と、入力電力演算部16と、出力電力演算部17と、監視部18とから構成される。
次にピーク電力抑圧・調整部60′内部の各部について説明する。
ピーク電力抑圧部11′は、送信増幅器における電力増幅部に入力されるマルチキャリア信号の最大電力を抑えるため、マルチキャリア信号の瞬時電力及び平均電力に基づいてピークの検出を行い、ピークが検出された場合に、マルチキャリアの電力値を抑圧して出力するものである。
尚、図36では第1〜第nのピーク電力抑圧部を多段に設け、ピーク低減操作を複数回施行することにより、ピーク電力の低減をより理想的に実現するものであるが、目標効率、回路規模等考慮し、少なくとも1つ配置する事が条件となる。
ピーク電力抑圧部11′の動作の概要は、第1の送信機とほぼ同様であり、第1の送信機では、入力される複数のキャリアの総和電力からピークファクタを求め、各キャリアに対してるピーク抑圧を行うのに対し、第8の送信機では、既に複数のキャリアが合成されたマルチキャリア信号が入力されるので、入力されるマルチキャリア信号の電力からピークファクタを求め、マルチキャリアに対してピーク抑圧を行う点が異なる。
信号レベル調整部15と、入力電力演算部16と、出力電力演算部17と、監視部18に関しては、第7の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部のものと同様であり、第7の送信機では、各部に入力される信号が各キャリア信号であったのに対して、第8の送信機では各部に入力される信号がマルチキャリア信号であるが異なるだけで、具体的な演算方法や制御方法は同様であるので、ここでは説明を省略する。
上記説明では、第8の送信機の監視部18におけるレベル制御情報の決定方法として、第1の方法(「演算によるフィードフォワード制御」)で説明してきたが、第1〜第7の送信機と同様に、予め平均入力電力の想定値と、レベル制御情報とが組となって構成されたテーブルを用いてレベル制御情報を出力する第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)で実現するようにしても良い。
この場合、監視部18には、平均入力電力(第8の送信機においては、マルチキャリアの平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第8の送信機においては、ピーク抑圧後のマルチキャリア信号)のレベル制御情報GAIN(t)とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、レベル制御情報GAIN(t)は、マルチキャリアの平均入力電力が想定値の場合の測定によって得られたレベル制御情報の最適値が格納されている。
そして、監視部18において、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を実現する場合の処理動作については、図26を用いて第7の送信機の監視部18で説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。尚、図26は、キャリアnについてのレベル制御情報を決定する場合の処理について示したものであるが、第8の送信機の監視部18では、マルチキャリア信号についての制御となる。
第8の送信機の第1のピーク電力抑圧・調整部60′の動作は、第7-1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60の動作と同様であるので詳しい説明は省略するが、ピーク電力抑圧部11でマルチキャリアに基づいてピーク電力制限(抑圧)が施され、マルチキャリアのピーク電力抑圧前の平均入力電力が入力電力演算部16で求められ、場合によってピーク電力抑圧後の平均出力電力が出力電力演算部17で求められ、監視部18で平均入力電力と平均出力電力からレベル制御情報(ゲイン値)が算出されるか、又はテーブルを用いて平均入力電力に対応するレベル制御情報が所得され、信号レベル調整部15で、ピーク電力抑圧部11から出力されるマルチキャリアにゲイン値が乗算され、レベル調整されたマルチキャリア信号が出力される。
次に、第8の送信機の監視部におけるレベル制御情報の決定方法として、第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現する場合のピーク電力抑圧・調整部60′の具体的構成例(第2の構成例)について、図37を用いて説明する。図37は、第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部60′内部の第2の構成例を示す構成ブロック図である。尚、図36の第1の構成例と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明する。尚、図37では、アナログ直交変調版の送信機1′における構成を示しているが、送信機からの出力をI成分のみとすれば、デジタル直交変調版の送信機1における構成となる。
本発明の第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部60′内部の第2の構成例としては、図37に示すように、複数(図では、n個)のピーク電力抑圧部を有するピーク電力抑圧部11′と、信号レベル調整部15と、入力電力演算部16と、出力電力演算部17と、監視部41とから構成されている。
尚、第2の構成例において、出力電力演算部17における出力電力演算対象が第1の構成例とは異なり、また監視部41におけるレベル制御情報の制御方法が、第1の構成の監視部18とは異なっている。
第2の構成例の出力電力演算部17は、入力される信号の平均出力電力を算出するものであるが、信号レベル調整部15におけるレベル制御情報との乗算後のマルチキャリア信号が入力され、当該レベル制御情報乗算後の、マルチキャリア信号の平均出力電力を算出して出力するものである。
第2の構成例の監視部41は、マルチキャリアに対するレベル制御情報の決定方法として第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を実現するに当たり、平均入力電力(第8の送信機においては、マルチキャリアの平均入力電力)の想定値と、制御対象信号(第8の送信機においては、マルチキャリア信号)の平均出力電力の理想値とが対応付けられて格納されているテーブルが予め設定されている。
ここで、平均出力電力の理想値は、平均入力電力が想定値である場合の測定によって得られた平均出力電力の最適値が格納されている。
次に、第2の構成例の監視部41における各キャリアに対するレベル制御情報の決定処理の概要は、入力電力演算部16から出力されるマルチキャリアの平均入力電力に対応する平均出力電力の理想値(理想出力電力)をテーブルから読み出し、出力電力演算部17からのレベル制御情報乗算後のマルチキャリアの平均出力電力が等しくなるようレベル制御情報を再度調整して対応する信号レベル調整部15に出力する処理である。
尚、第2の構成例の監視部41レベル制御情報の決定処理の具体的な処理フローは、図16を用いて説明した第1の類型に属する第4の送信機における監視部41の制御フローと同様であるのでここでは説明を省略する。
上記図37を用いて説明した第8の送信機において、監視部41はテーブルを用いてマルチキャリア信号の平均出力電力の理想値を求め、実際の平均出力電力が当該理想値になるようにゲイン値を制御して出力しているが、第3の送信機の監視部32の場合と同様、マルチキャリア信号の平均入力電力から予想されるレベル制御量を計算、或いはレベル制御量をテーブルから読み出して信号レベル調整部15に出力し、信号レベル調整部15でレベル制御量乗算後の平均出力電力と平均入力電力とを比較して同一となるようにゲイン値を補正して出力する構成としてもよい。
第8の送信機において、ピーク電力抑圧・調整部60′に第2の構成例を用いれば、レベル調整後のマルチキャリア信号の平均出力電力と理想値とを比較し、当該平均出力電力が理想値と等しくなるまでレベル制御情報を補正して信号レベル調整部15に出力するフィードバック制御によって、マルチキャリアのレベル調整を行っているので、マルチキャリアのレベル制御情報を算出する処理を行うフィードフォワード制御(第1の方法)よりも、監視部41は複雑な演算回路を用いることなく迅速に最適なレベル制御情報を特定することができる。
本発明の第8の送信機の動作を図35を参照しながら説明すると、デジタルデータである各キャリアの送信データが対応するキャリア符号多重信号生成部10-1〜10-nに入力され、固有の拡散符号によって拡散変調されて合成されてI,Q各成分が出力され、各キャリアに対応する波形整形フィルタ12-1〜12-nで帯域制限され、さらにデジタル直交変調部13-1〜13-nで直交変調されて、加算器14-1、14-2で直交変調された各キャリアが合成され、マルチキャリア信号としてI,Q各成分が出力される。
そして、ピーク電力抑圧・調整部60′において、マルチキャリアの電力からピークファクタを求め、マルチキャリアに対してピーク電力抑圧が行われ、更にマルチキャリアの平均入力電力に基づくレベル調整、或いはマルチキャリアの平均入力電力とピーク電力制限後の平均電力とに基づくレベル調整が行われて、レベル調整後のマルチキャリアが出力されるようになっている。
第4の類型に係る送信機によれば、マルチキャリアに対するピーク電力抑圧部11におけるピーク抑圧前の平均入力電力とピーク抑圧後の平均出力電力とに基づいて、実際のマルチキャリアの電力値によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整をマルチキャリアに施すので、ピーク電力抑圧部11における平均電力を求める区間に対して施された一律のレベル抑圧の弊害をマルチキャリアの平均入力レベルに応じて調整することができ、特に課題で説明した第2,3の問題点を解決して、マルチキャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができる。
具体的な事象として、マルチキャリアにおいて入力レベルが急激に変動し、ピーク電力抑圧部11においてピーク制御(抑圧)の対象となった場合、ピーク電力抑圧部11におけるピークファクタ算出のための平均化区間(抑圧区間)において一律のピーク抑圧がかかってマルチキャリアのレベルが全体的に低下するが、監視部18,41では、マルチキャリアのピーク制御(抑圧)前後の平均電力比から、ピーク電力抑圧部11で行われた一律のピーク抑圧を戻すようなゲイン値が算出されて、マルチキャリアに対応する信号レベル調整部15でゲイン値が乗算されてレベルが回復し、マルチキャリア信号におけるレベルの変動は抑えられることになる。
上記説明してきた本発明において、第1〜第3の類型に係る送信機は、入力される複数キャリアが、本線系としてピーク電力抑圧部11において総和電力に基づく各キャリア一律のレベル抑圧が為され、帯域制限、直交変調されてから合成されてマルチキャリア信号となる過程で、制御系(入力電力演算部、出力電力演算部、監視部、信号レベル調整部、乗算部)において、キャリアの平均入力電力に基づいて、本線系の各所におけるキャリア又はマルチキャリアの平均電力がピーク電力抑圧部11におけるレベル抑圧の弊害を回復した理想値となるようにレベル調整することで、送信機に入力されるキャリアの入力レベルに変動は生じても、キャリア又はマルチキャリア信号のレベルの変動を抑え、最終的に送信機から出力されるマルチキャリア信号を安定させることができる効果がある。
また、本発明において、第4の類型に係る送信機は、合成後のマルチキャリア信号がピーク電力抑圧部11においてレベル抑圧が為される過程で、制御系において、マルチキャリア信号の平均入力電力に基づいて、マルチキャリアの平均出力電力がピーク電力抑圧部11におけるレベル抑圧の弊害を回復した理想値となるようにレベル調整することで、送信機に入力されるキャリアの入力レベルに変動が生じて合成直後のマルチキャリア信号に変動が生じても、マルチキャリア信号のレベルの変動を抑え、最終的に送信機から出力されるマルチキャリア信号を安定させることができる効果がある。
また、本発明の送信機において、ピーク電力抑圧部11でピーク抑圧が動作した区間では、一律のピーク抑圧がかかってマルチキャリアのレベルが全体的に低下するが、平均入力電力と平均出力電力に基づいて、実際のキャリア又はマルチキャリアの電力値及び動作中のキャリア数等によって決まる閾値や上限、下限値を用いて装置の現動作状況に即したレベル調整を各キャリア又はマルチキャリアに施すので、任意の区間(フレーム等)に対応する各キャリア信号を基準データを用いた際のレベルに近似させることができ、ピーク電力抑圧部11で行われた急激なレベル変動に伴う一律なピーク抑圧による弊害を回復して、入力されたキャリアのレベルに変動が発生しても、安定して各キャリア信号のレベルの変動を平均的に抑えることができ、最終的にマルチキャリア信号におけるレベルの変動を抑えることができる効果がある。
また、本発明の各類型に係る送信機において、監視部におけるレベル制御情報の決定方法として第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を用いると、テーブルを用いた対応付けでレベル制御情報を出力することによって、レベル制御情報の算出のための構成が不要となるため監視部の構成を簡易にでき、またレベル制御情報の出力に要する時間を低減できるため、制御対象の信号と、対応するレベル制御情報の出力タイミングのずれを軽減できる効果がある。
また、第2の方法(「テーブルによるフィードフォワード制御」)を用いた場合、各送信機の構成において、出力電力演算部17又は出力電力演算部17-1〜17-nが不要となり、第1の方法に比べて送信機の構成全体を軽減できる効果がある。
また、監視部におけるレベル制御情報の決定方法として第3の方法(「テーブルによるフィードバック制御」)を用いると、レベル調整後のキャリア又はマルチキャリア信号の平均出力電力と理想値とを比較し、当該平均出力電力が理想値となるようにレベル制御情報を調整して信号レベル調整部15に出力するフィードバック制御によって、キャリア又はマルチキャリア信号のレベル調整を行っているので、キャリア又はマルチキャリア信号のレベル制御情報を算出する処理を行うフィードフォワード制御(第1の方法)よりも、監視部41は複雑な演算回路を用いることなく迅速に最適なレベル制御情報を特定することができる効果がある。
また、本発明の送信機は、従来の送信機の構成に、入力電力演算部16及び場合によって出力電力演算部17と、監視部18と、信号レベル調整部15及び場合によって乗算器31とを加えることによって実現できる。従って、本発明の信機は、従来の送信機の設備をそのまま利用できるため、設置のためのコストを低減することができる効果がある。
尚、これまで第3,第4の類型に係る送信機では、各キャリア又はマルチキャリアに対して設けられたピーク電力抑圧部11(リミッタ)におけるピーク電力抑圧前の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力)に基づいて、ピーク電力抑圧された信号の信号レベルを調整する送信機として説明してきたが、リミッタに限定せず、非線形な動作をする機能、例えば、予め定めたレベルよりも低いレベルだけで動作する回路や、非線形フィルタなどの前後の信号の平均入力電力(及び、場合によってマルチキャリアのピーク電力抑圧後の平均出力電力)に基づいて、出力される信号の信号レベルを調整する装置に適応しても良い。
これまで説明してきた本発明の送信機は、電力レベルを制御対象としている、すなわち各キャリア又はマルチキャリア信号の電力レベルに基づいて、キャリア又はマルチキャリア信号の電力レベル調整を行うものであるが、電圧レベルを制御対象としてもよく、そうした場合であっても上述した効果と同様の効果を奏するものである。
また、上述した本発明の送信機を図6、図18の送信増幅器における送信機1、1′として用いることにより、送信機1、1′からは安定したレベルのマルチキャリア信号が供給されるため、電力増幅部4での増幅で非線形歪の発生を抑えることができ、高品質の無線送信を実現できる。
また、本発明の送信機は、キャリア符号多重信号生成部10の構成を変更することで、CDMA通信方式以外の無線通信方式(例えばTDMA(Time Division Multiple Access)やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing))においても、同様の効果を奏するものである。
また、本発明の送信機は、キャリア符号多重信号生成部10の構成を変更することで、基地局以外の装置(例えば中継局)にも用いることができる。
本発明は、複数のキャリアに対して、各キャリアの入力レベルの変動に対応して増幅器へのマルチキャリア信号の入力レベルの変動を平均的に抑えることのできる送信機に適している。
本発明の第1の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第2の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第3の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第1の実施例に係る送信機と従来技術のCDMA基地局送信機における、32コード多重時信号1キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベル偏差に関する特性を示したグラフである。
本発明の第1の実施例に係る送信機と従来技術のCDMA基地局送信機における、32コード多重時信号2キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベル偏差に関する特性を示したグラフである。
一般的なCDMA基地局で用いる送信増幅器の構成ブロック図である。
一般的なCDMA基地局送信機の構成ブロック図である。
一般的な増幅器のピークファクタの説明図である。
本発明の第1の実施例に係る送信機の監視部18におけるレベル制御情報の算出処理のフローチャートである。
本発明の第1の実施例に係る送信機の監視部18におけるレベル制御情報の算出処理のフローチャートである。
本発明の第1〜第3の実施例に係る送信機の監視部における、テーブルを用いたレベル制御情報の出力処理のフローチャートである。
本発明の第3の実施例に係る送信機の監視部32におけるレベル制御情報及び各キャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。
本発明の第3の実施例に係る送信機の監視部32におけるキャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。
本発明の第3の実施例に係る送信機の監視部32におけるキャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。
本発明の第4の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第4の実施例に係る送信機の監視部41におけるキャリアのゲイン値の算出処理のフローチャートである。
本発明の第4の実施例に係る送信機の変形例の構成ブロック図である。
一般的なCDMA基地局で用いる送信増幅器の別の構成ブロック図である。
本発明の第5の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第6の実施例に係る送信機の構成ブロック図である。
本発明の第6の送信機におけるデジタル信号処理部の別の内部構成例を示すブロック図である。
本発明の第5の送信機の監視部におけるレベル制御情報の設定処理のフローチャートである。
本発明の第7の実施例に係る第1の送信機(第7−1の送信機)の構成ブロック図である。
本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部内部の第1の構成例を示す構成ブロック図である。
本発明の第7の送信機の監視部における各キャリアのレベル制御情報の設定処理のフローチャートである。
第7の送信機の監視部における、テーブルを用いたレベル制御情報の出力処理のフローチャートである。
第7の送信機と従来技術の送信機における、32コード多重時信号1キャリア送信時の、入力設定レベルと出力レベルに関するシミュレーション例を示したグラフである。
入力設定レベルとレベル偏差に関するシミュレーション例を示したグラフである。
32コード多重時信号2キャリア送信時の、レベル変動キャリア(キャリア1)に対する入力設定レベルと出力レベルに関するシミュレーション例を示したグラフである。
キャリア1に対する入力設定レベルと入出力レベル差に関するシミュレーション例を示したグラフである。
レベル固定キャリア(キャリア2)に対する、キャリア1の入力設定レベルとキャリア2の入出力レベル差に関するシミュレーション例を示したグラフである。
本発明の第7−1の送信機のピーク電力抑圧・調整部60内部の第2の構成例を示す構成ブロック図である。
本発明の第7の実施例に係る第2の送信機(第7−2の送信機)の構成ブロック図である。
本発明の第7の実施例に係る第3の送信機(第7−3の送信機)の構成ブロック図である。
本発明の第8の実施例に係る送信機(第8の送信機)の構成ブロック図である。
本発明の第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部内部の第1の構成例を示す構成ブロック図である。
本発明の第8の送信機のピーク電力抑圧・調整部内部の第2の構成例を示す構成ブロック図である。
符号の説明
1、1′…送信機、 2…D/Aコンバータ、 3…周波数変換部、 3′…アナログ直交変調部、 4…電力増幅部、 10,50…キャリア符号多重信号生成部、 11,21,51…ピーク電力抑圧部、 12,52…波形整形フィルタ、 13,53…デジタル直交変調部、 14,54…加算器、 15…信号レベル調整部、 16、16′…入力電力演算部、 17…出力電力演算部、 18,32,41…監視部、 31…乗算器、 60,60′…ピーク電力抑圧調整部、 70…デジタル信号処理部