JP4306241B2 - すべり部材及び該すべり部材の製造方法並びに該すべり部材を使用したすべり免震装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、すべり部材及びすべり部材の製造方法並びに該すべり部材を使用したすべり免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特公昭39−14852号公報
【特許文献2】
特開平11−182095号公報
【0003】
従来、綿布基材入りフェノール樹脂すべり部材を得るにあたり、黒鉛や二硫化モリブデン又は四ふっ化エチレン樹脂の粉末などをフェノール樹脂ワニスに分散含有させたものに綿布基材を浸漬して引上げ、適宜加温して溶剤を逸散してこれら固体潤滑剤が基材に付着含浸せしめられたプレプレグを得、これを成形材料として積層すべり部材とするなどの方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、綿布基材の浸漬、引上げによりプレプレグを形成するに際しての作業性を保つべく、固体潤滑剤の混入割合を比較的低くおさえる必要があり、その結果前記公知の方法で得られた固体潤滑剤入りすべり部材では、あまり摩擦係数が低下され得ず、また必ずしも充分な耐摩耗性が得られない。
【0005】
加えて、仮に固体潤滑剤の混入割合を高め得たとしても、単なる浸漬によっては繊維基材の繊維組織間隙に樹脂と固体潤滑剤との混合物が充分には充填されず、また該混合物が基材に必ずしも充分には付着され得ず、このようなプレプレグを用いて積層成形すると、得られた成形物が層間剥離を起こす虞があり、その結果すべり部材の機械的強度が著しく低下する虞がある。
【0006】
このような問題を解決するべく、補強基材に予め合成樹脂ワニスを含浸せしめ、ついでこのワニス含浸基材に固体潤滑剤入りワニスを塗布するか、固体潤滑剤の水分散体を塗布するなどして該基材のほぼ表面にのみ固体潤滑剤を付着せしめるという方法がある(特許文献1所載)。しかしながら、ここに開示された方法においても、すべり部材の低摩擦性、耐摩耗性などが必ずしも充分ではない。
【0007】
とくに近年において、このようなすべり部材を建築、土木分野における建物や橋梁、高架道路を支持する弾性支承装置と併用して設置し、当該建物等に加わる地震力を減少させるべくすべり免震装置に適用した場合には、低摩擦性及び耐摩耗性の観点から到底使用に耐え難いという問題がある。
【0008】
このようなすべり部材をすべり免震装置に適用したものとして、不飽和ポリエステル樹脂に四ふっ化エチエン樹脂を添加した樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートの織布に含浸してなる免震装置が提案されている(特許文献2所載)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この免震装置は、前記したすべり部材ではなし得なかった免震装置への適用を可能とするものであるが、やはりすべり免震装置としては低摩擦性の点で必ずしも満足のいくものではない。すなわち、すべり免震装置にあっては、摩擦係数の大小によって地震力によるすべり出しに大きく影響し、例えば摩擦係数が0.1程度の場合、地震力が0.1G(ガル)以上にならないとすべり免震装置はすべり出さず、免震装置の機能を阻害することになる。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、とくに高負荷条件において低摩擦性を発揮し、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができるすべり免震装置への適用を可能とするすべり部材及びすべり部材の製造方法並びにすべり部材を使用したすべり免震装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様のすべり部材は、有機繊維又は無機繊維からなると共に繊維組織間隙に四ふっ化エチレン樹脂と熱硬化性合成樹脂とを混在させて充填してなる複数枚の織布を互いに重ね合わせて接合してなる表層材が繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体の表面に一体に接合されており、該表層材には少なくとも一つの凹部が形成されていると共に該表層材の表面には該織布の毛羽立ちが形成されており、該凹部には少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物が充填されていると共に、該表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
第一の態様のすべり部材によれば、四ふっ化エチレン樹脂と熱硬化性合成樹脂とが繊維組織間隙に混在された複数枚の織布が互いに接合されてなる表層材に形成された凹部には少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物が充填されていると共に、表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されているために、表層材の表面に形成された被覆層には織布の毛羽立ちが食い込んですべり方向に関して被覆層と表層材の表面との結合力が高められている結果、該被覆層に剥離等の不具合を生じることはない。万一、被覆層が摩耗しても、該表層材の凹部に充填された潤滑組成物が表層材の表面に繰り出される結果、長期にわたっての低摩擦性及び耐摩耗性が維持される。
【0013】
本発明の第二の態様のすべり部材では、第一の態様のすべり部材において、表層材は、有機繊維又は無機繊維からなる織布25〜35重量%と熱硬化性合成樹脂30〜45重量%と四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%とを含んでいる。
【0014】
第二の態様のすべり部材によれば、織布を形成する繊維組織間隙に熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との混合物が充分に含浸されているので、表層材に形成された潤滑組成物の被覆層と相俟って低摩擦性及び耐摩耗性を長期にわたって維持することができる。そして、織布に含浸される熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との配合割合は、表層材としての摩擦摩耗特性の観点から決定され、熱硬化性合成樹脂の配合割合が30重量%未満では表層材としての接合強度が充分でなく、また45重量%を超えて配合すると同時に配合される四ふっ化エチレン樹脂の低摩擦性を損う虞がある。また四ふっ化エチレン樹脂は表層材に低摩擦性を付与するものであるが、配合割合が25重量%未満では表層材に充分な低摩擦性を付与し難く、また35重量%を超えて配合すると、熱硬化性合成樹脂の具有する接合性を低下させ、結果として表層材の基体からの剥離又は表層材を構成する織布同士の分離を惹起させる虞がある。
【0015】
本発明の第三の態様のすべり部材では、第一又は第二の態様のすべり部材において、有機繊維は、綿繊維及びアラミド繊維のうちの少なくとも一方の繊維を含んでおり、また本発明の第四の態様のすべり部材では、第一又は第二の態様のすべり部材において、無機繊維は炭素繊維を含んでいる。
【0016】
これら有機繊維及び無機繊維は、表層材の骨格をなす織布を形成するものである。そして、織布の織物組織は特に限定されるものではなく、平織、斜文織、朱子織などいずれであってもよい。
【0017】
本発明の第五の態様のすべり部材では、第一から第四のいずれかの態様のすべり部材において、熱硬化性合成樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のうちの少なくとも一つの樹脂を含んでいる。
【0018】
これら熱硬化性合成樹脂は、表層材を形成するにあたり、骨格をなす織布に含浸されてプレプレグを形成するものであり、とくに接合強度の高いエポキシ樹脂が好ましく使用される。
【0019】
本発明の第六の態様のすべり部材では、第一から第五のいずれかの態様のすべり部材において、凹部は、円柱状の凹部及び互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部のうちの少なくとも一方の凹部を含んでいる。
【0020】
本発明の第七の態様のすべり部材では、第一から第六のいずれかの態様のすべり部材において、表層材には複数個の凹部が形成されている。
【0021】
表層材に形成される凹部は、主に潤滑組成物を保持するものであり、とくに形状は限定されないが、加工性等の観点から円柱状の凹部又は互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部であることが好ましく、また、潤滑組成物を表層材の表面に万遍なく繰り出せる形状であれば一個でもよいが、複数個の凹部であるとこれを効果的になし得るので好ましい。
【0022】
本発明の第八の態様のすべり部材では、第一から第七のいずれかの態様のすべり部材において、潤滑組成物は、鉛50〜65重量%と四ふっ化エチレン樹脂10〜20重量%とワックス15〜30重量%とを含んでいる。
【0023】
潤滑組成物中の鉛は、高負荷条件下において、摩擦係数が極めて低く、また被膜の形成能に優れ、さらに被膜の自己補修性にも優れているので、潤滑組成物中の四ふっ化エチレン樹脂成分及びワックス成分と相俟って広範囲の条件下において低摩擦性及び耐摩耗性を発揮する。そして、鉛の配合割合が50重量%未満では潤滑組成物中に占める割合が低くなりすぎて上記した低摩擦性などの鉛が具有する性質が充分発揮されず、また65重量%を超えて配合すると、後述する結合剤としての役割を果たすワックスの役割を減殺させる虞がある。潤滑組成物中の四ふっ化エチレン樹脂は、鉛と同様低摩擦性を付与する役割を果たすものであり、配合割合が10重量%未満では低摩擦性が充分発揮されず、また20重量%を超えて配合すると、上記鉛と同様、ワックスの結合剤としての役割を減殺させる虞がある。潤滑組成物中のワックスは、潤滑組成物中にあって、結合剤の役割を果たすと共に低摩擦性にも寄与する。配合割合が15重量%未満では結合剤としての役割を充分発揮し得ず、また30重量%を超えて配合すると摺動時における摩擦熱の影響を受けて流動しやすくなり、表層材の表面との接合力を弱める結果となる。
【0024】
本発明の第九の態様のすべり部材では、第一から第八のいずれかの態様のすべり部材において、ワックスは、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及び結晶質マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素系ワックスである。
【0025】
ワックスは潤滑組成物中にあって、結合剤の役割を果たすと共に低摩擦性にも寄与するものであって、斯かる観点において炭化水素系ワックスが好適である。
【0026】
本発明の第十の態様のすべり部材では、第八又は第九の態様のすべり部材において、潤滑組成物は、さらに高級脂肪酸塩を5〜15重量%含有している。
【0027】
潤滑組成物にさらに配合される高級脂肪酸塩は、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)などのアルカリ及びアルカリ土類金属のステアリン酸塩から選択されたものが好ましく使用される。この高級脂肪酸塩は潤滑組成物の成形性を向上させるものであり、ワックスの配合量の一部を置き換えることにより、ワックスの作用を充分発揮させつつ潤滑組成物の成形性を向上させることができる。
【0028】
上記のいずれかの態様のすべり部材を製造するための本発明の第一の態様の製造方法は、有機繊維又は無機繊維からなる織布に四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形によって塗工して得たプレプレグを複数枚重ね合わせて表層材を形成する工程と、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体を準備し、該表層材を基体の表面に載置すると共に、該表層材及び基体を加熱、加圧成形して該基体の表面に表層材を一体に接合する工程と、該表層材に複数個の凹部を形成すると共に該表層材の表面を研磨して該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成する工程と、基体及び表層材を所定の温度に加熱したのち、表層材の表面に少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物を一様に散布する工程と、基体と潤滑組成物とを圧縮成形して、該表層材の凹部に該潤滑組成物を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物を被覆する工程とを含んでいる。
【0029】
第一の態様の製造方法によれば、四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形にて織布に塗工するので、織布の繊維組織間隙に熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との混合物が充分に含浸されたプレプレグを得ることができる。また、表層材の表面に研磨加工を施して表層材の表面の樹脂層を取除くと共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成して、この毛羽立ちを介して表層材の表面に該潤滑組成物の被覆層を形成するので、該表層材の表面と潤滑組成物の被覆層との結合力を高めることができ、而して、表層材と潤滑組成物の被覆層との間に剥離等を生じることがないすべり部材を製造できる。さらに、表層材の表面に潤滑組成物を散布するにあたり、基体及び表層材を所定の温度、具体的には潤滑組成物中のワックスの融点近傍の温度(60℃程度)に加熱するので、表層材の凹部及び表面に潤滑組成物を別途充填被覆用の特別な装置等を必要としないで充填被覆することができる。
【0030】
熱硬化性合成樹脂は、例えばその初期縮合物をメタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの揮発性溶剤(使用する熱硬化性合成樹脂の種類によって種々の揮発性溶剤が用いられる)に溶かして得られるワニスの形態で適用される。ワニスは、固形分がおおむね30〜45重量%、ワニスの粘度はおおむね100〜700センチポアズ(cP)である。これに四ふっ化エチレン樹脂粉末を投入して撹拌混合すると、四ふっ化エチレン樹脂粉末の混入によって混合液の見掛けの粘度は上昇する。混合液の粘度は、該混合液中の四ふっ化エチレン樹脂粉末を均一な分散状態に保つ上では高いほうが好ましいが、あまり粘度が高すぎると織布の繊維組織間隙への加圧充填の段階で、混合液がロールに付着して作業性を悪くするばかりでなく、織布への塗着そのものが困難となる。また、混合液の粘度が低すぎると混入された四ふっ化エチレン樹脂粉末の均一な分散性を損うばかりでなく、混合液の加圧段階で該混合液は四ふっ化エチレン樹脂粉末を伴って織布の裏面に滲み出してしまう虞がある。したがって、混合液の粘度は留意しなければならないが、おおむね800〜5000cP、就中1000〜4000cPが好ましい。
【0031】
潤滑組成物は、基体及び表層材を所定の温度、具体的には潤滑組成物中のワックスの融点近傍の温度(60℃程度)に加熱し、圧縮成形することにより表層材の凹部に充填され、これにより潤滑組成物からなる被覆層が表層材の表面に形成される。表層材の表面には研磨加工による織布の毛羽立ちが形成されており、該潤滑組成物の被覆層にはこの毛羽立ちが食い込んでいるため、表層材の表面と被覆層との結合力は高められる。
【0032】
潤滑組成物中のワックスは、該潤滑組成物からなる被覆層を表層材の表面に形成するにあたり、潤滑組成物の結合剤の役割を果たすと共に圧縮成形時の該組成物に流動性を与えるものであり、このワックスの一部を高級脂肪酸塩に置き換えることにより、該潤滑組成物の流動性を助長して圧縮成形による表層材の表面の凹部及び表面への潤滑組成物の充填被覆を容易に行わせる。
【0033】
上部構造物と下部構造物との間に配設される本発明の第一の態様のすべり免震装置は、上部構造物と下部構造物とのうちのいずれか一方の構造物に固定されるすべり板と、上部構造物と下部構造物とのうちのいずれか他方の構造物に固定されると共に被覆層においてすべり板に摺動自在に接触する上記のいずれかの態様のすべり部材とを具備している。
【0034】
第一の態様の免震装置によれば、上部構造物又は下部構造物に固定されたすべり部材の表層材には四ふっ化エチレン樹脂が分散含有されており、かつ表層材に形成された複数個の凹部には、少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物が充填されていると共に表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されており、この表層材の凹部及び表層材の表面に充填被覆された被覆層が下部構造物又は上部構造物に固定されたすべり板と摺動することにより、低摩擦性を発揮し、地震力の大小に拘らずすべり出しが速やかに行われるので、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができる。
【0035】
本発明の第二の態様のすべり免震装置では、第一の態様のすべり免震装置において、すべり板は、その表面に四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を具備しており、すべり部材は、その被覆層においてポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり板に摺動自在に接触するようになっている。
【0036】
第二の態様のすべり免震装置によれば、すべり板は、その表面に形成された四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり部材の表層材の凹部及び表面に充填被覆された潤滑組成物の被覆層と摺動することになるので、更に低摩擦性を発揮して地震力の大小に拘らずすべり出しがより迅速に行われることになるので、大きな地震力から小さな地震力においても更に充分な免震機能を発揮させることができる。
【0037】
特に表層材が有機繊維又は無機繊維からなる織布25〜35重量%と熱硬化性合成樹脂30〜45重量%と四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%とを含んでいると、0.05以下の低摩擦係数を得ることができるので、斯かる表層材を具備する免震装置では、より大きな地震力から小さな地震力においても十分な免震機能を発揮させることができ、免震周期を長周期化することができる。
【0038】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1から図3において、すべり部材1は、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる四角柱の基体2と、該基体2の一方の面3に一体に接合された表層材4と、該表層材4に形成された複数個の凹部5と、該表層材4の凹部5に充填され、かつ表層材4の表面6に形成された毛羽立ち7を介して該表層材4の表面6に被覆された潤滑組成物からなる被覆層8とからなる。なお、すべり部材1は、図4に示すように円柱をなすものであってもよく、更に、凹部5は、図4に示すように互いに直交する二つの矩形長溝からなる一個の凹部であってもよい。
【0040】
図5に示すすべり部材1の基体2の製造装置において、アンコイラ9に巻かれた繊維織布からなる補強基材10は、送りローラ11によって熱硬化性合成樹脂ワニス13を貯えた容器14に送られ、容器14内に設けられた案内ローラ15及び16によって容器14内に貯えられた熱硬化性合成樹脂ワニス13内を通過せしめられることにより、該補強基材10の表面に該熱硬化性合成樹脂ワニス13が塗工される。ついで、熱硬化性合成樹脂ワニス13が塗工された補強基材10は送りローラ17によって圧縮ロール18及び19に送られ、該圧縮ロール18及び19によって補強基材10の表面に塗工され熱硬化性合成樹脂ワニス13が繊維組織間隙にまで含浸せしめられる。そして、熱硬化性合成樹脂ワニス13が含浸塗布された補強基材10に対して乾燥炉20内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応が進められ、これにより成形可能なプレプレグ(樹脂加工基材)21が作製される。このようにして得られたプレプレグ21を図6に示すように所望の寸法に切断してこれを複数枚重ね合わせて積層にしたのち、積層方向に圧縮成形して繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体2が作製される。
【0041】
基体2に用いられる繊維織布としては、綿布、ガラス繊維布、炭素繊維布などが好適である。また、熱硬化性合成樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが好適であり、これら熱硬化性合成樹脂の揮発性溶剤としては、メタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど使用する熱硬化性合成樹脂によって適宜選択される。そして、熱硬化性合成樹脂を揮発性溶剤に溶かして形成される熱硬化性合成樹脂ワニスの固形分は、おおむね30〜65重量%であり、樹脂ワニスの粘度は、おおむね800〜5000cP、就中1000〜4000cPが好ましい。
【0042】
表層材4は、前記基体2の製造方法で使用した図5に示す製造装置と同様の製造装置によって同様の製造方法によって作製される。すなわち、アンコイラ9に巻かれた有機繊維又は無機繊維からなる織布22は、送りローラ11によって四ふっ化エチレン樹脂粉末と熱硬化性合成樹脂ワニスとの混合液23を貯えた容器14に送られ、容器14内に設けられた案内ローラ15及び16によって容器14内に貯えられた混合液23内を通過せしめられることにより、該織布22の表面に該混合液23が塗工される。ついで、混合液23が塗工された織布22は送りローラ17によって圧縮ロール18及び19に送られ、該圧縮ロール18及び19によって織布22の表面に塗工され混合液23が繊維組織間隙にまで含浸せしめられる。そして、混合液23が含浸塗布された織布22に対して乾燥炉20内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応が進められ、これにより成形可能なプレプレグ(樹脂加工基材)24が作製される。このようにして得られたプレプレグ24を図6に示すように所望の寸法に切断し、これを複数枚重ね合わせて積層にしたのち、積層方向に圧縮成形して表層材4が作製される。
【0043】
表層材4に用いられる織布としては、綿繊維、アラミド繊維などの有機繊維からなる織布又は炭素繊維などの無機繊維からなる織布が好適である。とくに、有機繊維としてアラミド繊維を使用する場合は、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維が好ましい。そして、これら繊維からなる織布の織物組織は、特に限定されるものではなく、平織、斜文織、朱子織などいずれであってもよい。
【0044】
熱硬化性合成樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが好適であり、これら熱硬化性合成樹脂の揮発性溶剤としては、メタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど使用する熱硬化性合成樹脂によって適宜選択される。
【0045】
四ふっ化エチレン樹脂は、成形用又は固体潤滑用の粉末が使用されるが、上記熱硬化性合成樹脂との混合により、該熱硬化性合成樹脂への均一分散性の観点からは固体潤滑用の粉末が好ましく、その平均粒径はおおよそ1〜50μm、好ましくは1〜30μmである。このような四ふっ化エチレン樹脂の具体例としては、三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J、TLP−10(商品名)」、旭硝子社製の「フルオンG163(商品名)」、ダイキン工業社製の「ポリフロンM15、ルブロンL5(いずれも商品名)」、喜多村社製の「KTL610、KTL350、KTL8N(いずれも商品名)」などが挙げられる。
【0046】
そして、表層材4を形成する織布と熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との割合は、織布25〜35重量%、熱硬化性合成樹脂30〜45重量%、四ふっ化エチレン樹脂30〜45重量%が好ましい範囲である。この割合において、織布に含浸塗着される熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との配合割合は、表層材4としての摩擦摩耗特性の観点から決定される。熱硬化性合成樹脂の配合割合が30重量%未満では表層材4としての接合強度が充分でなく、また45重量%を超えて配合すると同時に配合される四ふっ化エチレン樹脂の低摩擦性を損う虞がある。また、四ふっ化エチレン樹脂は表層材に低摩擦性を付与するものであるが、配合割合が25重量%未満では表層材に充分な低摩擦性を付与し難く、また35重量%を超えて配合すると、熱硬化性合成樹脂の具有する接合性を低下させ、結果として表層材の剥離を惹起させる虞がある。
【0047】
表層材4は、前記基体2の一方の面3に接着剤により一体に接合してもよいが、前記基体2を形成するプレプレグ21を所望の寸法に切断し、これを複数枚重ね合わせた積層体の一方の面に、表層材4を形成するプレプレグ24の複数枚を重ね合わせ、積層方向に加熱、加圧成形してプレプレグ21及び24の両熱硬化性合成樹脂の硬化と共に一体に接合させることが好ましい。
【0048】
このように基体2の一方の面3上に一体に接合された表層材4には、その積層方向(厚さ方向)に凹んだ複数個の凹部5が形成されると共に、該表層材4の表面を該表面に付着した熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂とを含む樹脂層を取除くべく、研磨加工すると共にこの研磨加工でもって該表層材4の表面に織布の毛羽立ち7を形成する。
【0049】
表層材4に形成される複数個の凹部5は、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が20〜30%の割合となるように形成される。この凹部5は、後述する潤滑組成物を充填保持するものであり、潤滑組成物の低摩擦性等の摩擦特性を良好に発揮させるためには、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が少なくとも20%必要とされる。しかしながら、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が30%を超えると表層材4の強度低下を来すことになる。
【0050】
凹部5は、ドリル等を用いた穴あけ加工でもって形成してもよいが、プレプレグ21及び24の両熱硬化性合成樹脂の硬化と共にプレス加工でもって形成してもよい。
【0051】
表層材4の表面の研磨加工による毛羽立ち7は、後述する潤滑組成物を表層材4の表面に被覆するさいに被覆層8に食い込み、これにより表層材4の表面と潤滑組成物の被覆層8との結合力が高められる。
【0052】
表層材4に形成された複数個の凹部5及び表層材4の表面に充填被覆される潤滑組成物は、鉛50〜65重量%と四ふっ化エチレン樹脂10〜20重量%とワックス15〜30重量%とを含んでいる。
【0053】
鉛は、アトマイズ鉛粉末が好ましく、その粒子形状がほぼ粒状を呈しており、日本工業規格標準篩で200メッシュ、好ましくは250メッシュを通過する粉末であることが好ましい。このアトマイズ鉛粉末は、粒子形状が不定形のスタンプ(搗砕)鉛粉末と異なり、同一の粒度分布において、見掛密度が大きく粉末の凝集性も極めて小さい。例えば、250メッシュを90%以上通過するスタンプ鉛粉において、見掛密度が1.9〜2.4g/cm3であるのに対し、アトマイズ鉛粉末は同一粒度分布において5.2〜5.8g/cm3である。このアトマイズ鉛粉末は、他の成分との混合性にすぐれ、均質な分散体が得られること、混合物としたのちの粉体流動性にすぐれること、加温された状態での酸化の傾向が著しく小さいこと、などの特性を有するものである。
【0054】
鉛は、高負荷条件下において摩擦係数が極めて低く、また被膜の形成能に優れ、さらに被膜の自己補修性にも優れているので、潤滑組成物中の四ふっ化エチレン樹脂及びワックスと相俟って広範囲の条件下において低摩擦性及び耐摩耗性を発揮する。そして、鉛の配合割合が50重量%未満では潤滑組成物中に占める割合が低くなりすぎて上記した低摩擦性などの鉛が具有する性質が充分発揮されず、また65重量%を超えて配合すると、後述する結合剤としての役割を果たすワックスの役割を減殺させる虞がある。したがって、鉛の配合割合は45〜65重量%が適当である。
【0055】
四ふっ化エチレン樹脂は、前述した四ふっ化エチレン樹脂と同様、成形用又は固体潤滑用の粉末が使用されるが、とくに成形用の四ふっ化エチレン樹脂粉末、具体的には三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J(商品名)」が挙げられる。四ふっ化エチレン樹脂は、潤滑組成物中にあって、上記鉛と同様、低摩擦性に寄与するものであり、配合割合が10重量%未満では低摩擦性が充分発揮されず、また20重量%を超えて配合すると、上記鉛と同様、ワックスの結合剤としての役割を減殺させる虞がある。したがって、四ふっ化エチレン樹脂の配合割合は10〜20重量%が適当である。
【0056】
ワックスは、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及び結晶質マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素系ワックスが使用される。とくに、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、具体的には日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」は好ましいものとして挙げることができる。ワックスは潤滑組成物中にあって、結合剤の役割を果たすと共に低摩擦性にも寄与するものであり、配合割合が15重量%未満では結合剤としての役割を充分発揮し得ず、また30重量%を超えて配合すると摺動時における摩擦熱の影響を受けて流動しやすくなり、表層材の表面との接合力を弱める結果となる。したがって、ワックスの配合割合は15〜30重量%が適当である。
【0057】
上記鉛粉末と四ふっ化エチレン樹脂粉末とワックスとからなる潤滑組成物において、ワックスの一部を高級脂肪酸塩に置き換えることができる。この高級脂肪酸塩は、潤滑組成物の成形性を向上させる効果を発揮するものである。この高級脂肪酸塩としては、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)などのアルカリ及びアルカリ土類金属のステアリン酸塩から選択されて使用される。そして、高級脂肪酸塩の配合割合は5〜15重量%が適当である。
【0058】
上述した成分組成からなる潤滑組成物は、次のようにして表層材4の表面に充填被覆される。基体2と、該基体2の一方の表面に一体に接合されかつ複数個の凹部5及び織布の毛羽立ち7が形成された表層材4とを予め潤滑組成物中のワックスの融点近傍の温度に加温したのち、該表層材4の表面上に潤滑組成物を一様に散布する。ついで、基体2と表層材4と潤滑組成物とを厚さ方向に圧縮成形することにより、該表層材4の表面上に一様に散布された潤滑組成物は流動して該凹部5を充填すると共に、表層材4の表面に形成された織布の毛羽立ち7を介して被覆層8を形成する。この被覆層8には織布の毛羽立ち7が食い込むことによって、該被覆層8と表層材4の表面との接合力が高められる。
【0059】
このようにして、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体2と、該基体2の一方の面3に一体に接合された表層材4と、該表層材4に形成された複数個の凹部5と、該表層材4の凹部5に充填され、かつ表層材4の表面6に形成された毛羽立ち7を介して該表層材4の表面6に被覆された潤滑組成物からなる被覆層8とからなるすべり部材1が作製される。
【0060】
このすべり部材1を使用したすべり免震装置を図7に示す。図7において、建物、橋梁、高架道路等の上部構造物Gには、前記すべり部材1が固定されており、基礎等の下部構造物Bにはすべり板25が固定されており、該すべり板25の表面とすべり部材1の表層材4の表面の複数個の凹部5及び該表層材4の表面に織布の毛羽立ち7を介して充填被覆された潤滑組成物の被覆層8とが摺動面となっている。
【0061】
すべり板25としては、ステンレス鋼板(SUS403)又はステンレス鋼板とその一方の表面に被覆層26とを有するすべり板が使用される。
【0062】
ステンレス鋼板の一方の表面への被覆層の形成方法について述べる。ポリアミドイミド樹脂粉末に対し25〜75重量%の四ふっ化エチレン樹脂粉末を配合して混合物を形成したのち、混合物を有機溶剤に溶かして固形分が30〜40重量%の溶液を作製する。ショットブラスト、脱脂など通常一般に行われている処理を施したステンレス鋼板に刷毛塗り、吹き付けなどの手段により塗膜を形成し、硬化処理を行って硬化塗膜を得る。塗膜形成後の硬化は、塗膜形成後、自然乾燥によるか、熱風乾燥炉で30分間程度予備乾燥を行って溶剤を逸散させた後、230℃で30分間程度加熱焼付して行う。このようにして得られる被覆層26はおおよそ20〜25μmの厚さである。
【0063】
被覆層26を有するすべり板25は、すべり部材1の表層材4の凹部5及び表層材4の表面に充填被覆された被覆層8と被覆層26において摺動することになり、低摩擦性を発揮し、地震力の大小に拘らずすべり出しが速やかに行われるので、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができる。
【0064】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
【0065】
〔すべり板の作製〕
幅62mm、長さ178mmのステンレス鋼板(SUS304)を準備し、この鋼板の一方の表面をショットブラストにより粗面化すると共に脱脂処理を施した。四ふっ化エチレン樹脂粉末として、ダイキン工業社製の「ルブロンL5」を35重量%含有するポリアミドイミド樹脂粉末を有機溶剤に溶かして得た固形分が30重量%の溶液を、上記鋼板の粗面化した面に吹き付け手段により塗膜を形成し、熱風乾燥炉で30分間予備乾燥を行って溶剤を逸散させた後、230℃で30分間加熱焼付を行い、厚さ23μmの被覆層を形成し、これをすべり板とした。
【0066】
〔基体の作製〕
強化繊維布として平織綿布を準備し、該綿布を送りロールにて、樹脂固形分64.5重量%のフェノール樹脂ワニスを貯えた容器内を通過させて、該綿布の表面に樹脂ワニスを塗工し、圧縮ロールによって綿布の表面に塗工され樹脂ワニスを繊維組織間隙にまで含浸せしめたのち、乾燥炉内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応を進めプレプレグ(樹脂加工綿布)を得た。このプレプレグを直径30mmの円形状に切断し、これを5枚重ね合わせた。
【0067】
〔表層材の作製〕
織布として、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(帝人社製の「テクノーラ(商品名)」)を平織したアラミド繊維織布を準備し、該アラミド繊維織布を送りロールにて、エポキシ樹脂と四ふっ化エチレン樹脂(ダイキン工業社製の「ルブロンL5(商品名)」)との混合樹脂ワニスを貯えた容器内を通過させて、該アラミド繊維織布の表面に混合樹脂ワニスを塗工し、圧縮ロールによってアラミド繊維織布の表面に塗工され混合樹脂ワニスを繊維組織間隙にまで含浸せしめたのち、乾燥炉内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応を進め、アラミド繊維織布30重量%とエポキシ樹脂39重量%と四ふっ化エチレン樹脂31重量%とからなるプレプレグ(樹脂加工アラミド繊維織布)を得た。このプレプレグを直径60mmの円形状に切断し、これを3枚重ね合わせた。
【0068】
前記5枚重ね合わせたプレプレグ(樹脂加工綿布)の上に、3枚重ね合わせたプレプレグ(樹脂加工アラミド繊維織布)を載せ、厚さ方向に成形圧力70kg/cm2、成形温度160℃、成形時間10分間の条件で圧縮成形し、基体と表層材とを一体に接合した積層体(基体の厚さ7.5mm、表層材の厚さ3mm)を得た。
【0069】
この積層体の表層材に直径8mm、深さ3mmの円形凹部を12個形成(表層材の表面の面積に占める凹部の開口部の面積の総和は21%)すると共に、表層材の表面に形成された樹脂層を研磨加工を施して取除き、該表層材の表面に研磨加工による毛羽立ちを形成した。
【0070】
〔潤滑組成物(1)の作製〕
250メッシュを通過するアトマイズ鉛粉末50〜65重量%と、四ふっ化エチレン樹脂粉末として三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J(商品名)」10〜20重量%と、ワックスとして日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」15〜30重量%とを撹拌混合して潤滑組成物(1)を作製した。
【0071】
〔潤滑組成物(2)の作製〕
250メッシュを通過するアトマイズ鉛粉末50〜65重量%と、四ふっ化エチレン樹脂粉末として三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J(商品名)」10〜20重量%と、ワックスとして日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」15〜25重量%と、高級脂肪酸塩としてステアリン酸リチウム5〜15重量%とを撹拌混合して潤滑組成物(2)を作製した。
【0072】
実施例1〜3
上記表層材の表面に毛羽立ちを形成した積層体を、予め潤滑組成物(1)中のワックスの融点である60℃の温度に加温したのち、表層材の表面上に潤滑組成物(1)を表1に示す成分組成で一様に散布し、ついで、厚さ方向に圧縮成形して円形の凹部に該潤滑組成物(1)を充填すると共に表面の毛羽立ちを介して表層材の表面に潤滑組成物(1)なる被覆層を形成した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例4〜6
上記表層材に円形の凹部を13個形成すると共に、表層材の表面に毛羽立ちを形成した積層体を、予め潤滑組成物(2)中のワックスの融点である60℃の温度に加温したのち、表層材の表面上に潤滑組成物(2)を表2に示す成分組成で一様に散布し、ついで、厚さ方向に圧縮成形して円形凹部に該潤滑組成物(2)を充填すると共に表面の毛羽立ちを介して表層材の表面に潤滑組成物(2)からなる被覆層を形成した。
【0075】
【表2】
【0076】
比較例
アラミド繊維織布30重量%とエポキシ樹脂39重量%と四ふっ化エチレン樹脂31重量%とからなるプレプレグ3枚を、平織綿布にフェノール樹脂ワニスを含浸塗工したプレプレグ5枚の上に載せ、これらを圧縮成形し、基体と表層材とを一体に接合した積層体をすべり部材とした。
【0077】
つぎに、上記実施例1〜6のすべり部材及び比較例からなるすべり部材について、下記に示す試験条件1及び試験条件2にて摩擦性能を試験した。
【0078】
<試験条件1>
面圧 14.7MPa
加振速度 1kine 20kine
相手材 上記すべり板を使用
試験方法 二軸試験機の台上に被覆層を上方にしてすべり板を固定し、該すべり板の被覆層にすべり部材の表層材を摺動自在に接触させると共に、該すべり部材に面圧が14.7MPaとなるように荷重を加え、すべり板側に図8に示す合成波を供給し、該合成波にて加振(振幅±65mm)を連続して5回行った。
【0079】
<試験条件2>
面圧 29.4MPa
加振速度 1kine 20kine
相手材 上記すべり板を使用
試験方法 二軸試験機の台上に被覆層を上方にしてすべり板を固定し、該すべり板の被覆層にすべり部材の表層材を摺動自在に接触させると共に、該すべり部材に面圧が29.4MPaとなるように荷重を加え、試験条件1と同様、すべり板側に図8に示す合成波を供給し、該合成波にて加振を連続して5回行った。
【0080】
上記試験条件1及び試験条件2で行った実施例1〜6及び比較例からなるすべり部材の加振速度1kine及び加振速度20kineでの摩擦係数を表3(試験条件1)及び表4(試験条件2)に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
以上の試験結果から、実施例1〜6のすべり部材とすべり板との組合わせにおいては、面圧14.7MPaで加振速度が1kine及び20kineの条件では、摩擦係数が0.05以下の低い値を示し、とくに面圧29.4MPaで加振速度1kine及び20kineの条件では、潤滑組成物中の鉛成分の作用が発揮され、摩擦係数が0.04以下という低い値を示した。
【0084】
これらの結果をすべり免震装置に適用した場合、すべり部材とすべり板との組合わせにおける摩擦係数が0.05以下を示すことにより、すべり出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化が可能となる。また、すべり免震装置の設計自由度を大幅に増大させることができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができるすべり部材及びすべり部材の製造方法並びにすべり部材を使用したすべり免震装置を提供することができる。本発明のすべり部材を使用したすべり免震装置においては、摩擦係数が0.05以下の低い値を示すことからすべり出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化が可能となるばかりでなく、すべり免震装置の設計自由度を大幅に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のすべり部材の平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】本発明のすべり部材の他の例の平面図である。
【図5】製造工程を示す説明図である。
【図6】プレプレグの積層状態を示す斜視図である。
【図7】すべり免震装置を示す説明図である。
【図8】試験に使用した合成波を示すグラフである。
【符号の説明】
1 すべり部材
2 基材
4 表層材
5 凹部
7 毛羽立ち
8 被覆層
25 すべり板
Claims (13)
- 有機繊維又は無機繊維からなると共に繊維組織間隙に四ふっ化エチレン樹脂と熱硬化性合成樹脂とを混在させて充填してなる複数枚の織布を互いに重ね合わせて接合してなる表層材が繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体の表面に一体に接合されており、該表層材には少なくとも一つの凹部が形成されていると共に該表層材の表面には該織布の毛羽立ちが形成されており、該凹部には少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物が充填されていると共に、該表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されていることを特徴とするすべり部材。
- 表層材は、有機繊維又は無機繊維からなる織布25〜35重量%と熱硬化性合成樹脂30〜45重量%と四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%とを含んでいる請求項1に記載のすべり部材。
- 有機繊維は綿繊維及びアラミド繊維のうちの少なくとも一方の繊維を含んでいる請求項1又は2に記載のすべり部材。
- 無機繊維は炭素繊維を含んでいる請求項1又は2に記載のすべり部材。
- 熱硬化性合成樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のうちの少なくとも一つの樹脂を含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 凹部は、円柱状の凹部及び互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部のうちの少なくとも一方の凹部を含んでいる請求項1から5のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 表層材には複数個の凹部が形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 潤滑組成物は、鉛50〜65重量%と四ふっ化エチレン樹脂10〜20重量%とワックス15〜30重量%とを含んでいる請求項1から7のいずれか一項に記載のすべり部材。
- ワックスは、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及び結晶質マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素系ワックスを含んでいる請求項1から8のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 潤滑組成物は、さらに高級脂肪酸塩を5〜15重量%含有している請求項8又は9に記載のすべり部材。
- 有機繊維又は無機繊維からなる織布に四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形によって塗工して得たプレプレグを複数枚重ね合わせて表層材を形成する工程と、
繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体を準備し、該表層材を基体の表面に載置すると共に、該表層材及び基体を加熱、加圧成形して該基体の表面に表層材を一体に接合する工程と、
該表層材に少なくとも一つの凹部を形成すると共に該表層材の表面を研磨して該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成する工程と、
基体及び表層材を所定の温度に加熱したのち、表層材の表面に少なくとも鉛と四ふっ化エチレン樹脂とワックスとからなる潤滑組成物を一様に散布する工程と、
基体と表層材と潤滑組成物とを圧縮成形して、該表層材の凹部に該潤滑組成物を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層を形成する工程と、
を含む請求項1から10のいずれか一項に記載のすべり部材の製造方法。 - 上部構造物と下部構造物との間に配設されるすべり免震装置であって、上部構造物と下部構造物とのうちのいずれか一方の構造物に固定されるすべり板と、上部構造物と下部構造物とのうちのいずれか他方の構造物に固定されると共に被覆層においてすべり板に摺動自在に接触する請求項1から10のいずれか一項に記載のすべり部材とを具備した免震装置。
- すべり板は、その表面に四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を具備しており、すべり部材は、その被覆層においてポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり板に摺動自在に接触するようになっている請求項12に記載の免震装置。
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