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JP4291484B2 - スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法 - Google Patents

スパークプラグ及びスパークプラグの製造方法 Download PDF

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JP4291484B2
JP4291484B2 JP2000008262A JP2000008262A JP4291484B2 JP 4291484 B2 JP4291484 B2 JP 4291484B2 JP 2000008262 A JP2000008262 A JP 2000008262A JP 2000008262 A JP2000008262 A JP 2000008262A JP 4291484 B2 JP4291484 B2 JP 4291484B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパークプラグ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のようなスパークプラグにおいては、耐火花消耗性向上のために電極の先端にPtを主体とするチップを溶接して発火部を形成したタイプのものが使用されている。しかしながら、近年は、耐火花消耗性をさらに向上させるために、Ptに代えてIrを主成分とするチップにて発火部を構成したスパークプラグが、例えば特開昭63−257193号、特開平3−1475号、特開平5−54953号、特開平9−7733号、特開平10−32076号、特開平10−74575号、特開平10−22052号等に各種提案されている。
【0003】
しかしながら近年では、内燃機関の高性能化により燃焼室内の温度も高くなる傾向にあり、また着火性向上のために、スパークプラグの発火部を燃焼室内部に突き出させるタイプのエンジンも多く使用されるようになってきている。また、最近では、自動車エンジンのメンテナンスフリー化対策の一環として、スパークプラグ無交換による例えば16万km以上連続走行等、以前の状況からは想像もつかないような苛酷な要望も出されるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Ir系のチップを使用した場合、耐久性は大幅に改善されるが、Irは高温で酸化揮発しやすい性質を有していることから、長時間の高速走行を繰返してある温度以上に上昇すると、急激に発火部が消耗し、火花ギャップ間隔が拡大してしまう欠点がある。これを解決するために、特開平9−7733号、特開平10−32076号、特開平10−74575号及び特開平10−22052号の各公報には、IrにRhやPtを添加して発火部の耐酸化性を向上させる方法が提案されている。しかしながら、さらに高温で厳しい使用環境での耐久性や、あるいは着火性向上のため中心電極先端の発火部を厚くするなど、発火部温度がさらに高温化する設計が求められる状況下においては、必ずしも十分な効果が得られているとはいい難い。
【0005】
本発明の課題は、Ir系チップの接合により発火部を形成したスパークプラグにおいて、発火部の耐酸化消耗性に極めて優れたスパークプラグと、その製造方法とを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、その絶縁体の外側に設けられた主体金具と、中心電極と対向するように配置された接地電極と、それら中心電極と接地電極との少なくとも一方に固着されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、その発火部が、Irを主成分とし、かつ炭素含有量が40ppm以下であるIr系金属又は該Ir系金属を主成分とする複合材料により構成されることを特徴とする。
【0007】
また、上記スパークプラグを製造するための本発明の方法は、前記火花放電ギャップに対応する位置において前記中心電極と前記接地電極との少なくとも一方に、Irを主成分とし、かつ炭素含有量が40ppm以下のIr系金属又は該Ir系金属を主成分とする複合材料からなるチップを溶接することにより、該チップに基づく発火部を形成するとともに、
前記溶接に先立って、前記チップ又は該チップを製造するためのチップ素材を、前記Ir系金属中の炭素成分を除去するために、減圧雰囲気又は水素雰囲気にて脱炭素熱処理し、
前記脱炭素熱処理の雰囲気は、酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下であって水素分圧が5×10 Pa以上の水素雰囲気であり、
前記脱炭素熱処理の温度が1610℃以上2000℃以下の範囲にて調整されることを特徴とする。
【0008】
なお、本明細書でいう「発火部」とは、接合されたチップのうち、溶接による組成変動の影響を受けていない部分(例えば、溶接により接地電極ないし中心電極の材料と合金化した部分を除く残余の部分)を指すものとする。
【0009】
従来よりIr系金属にて発火部を構成したスパークプラグにおいては、その耐酸化性の改善は、Rh等の適当な合金元素の添加により行う試みが主になされてきた。それは確かに有効な手法ではあるが、本発明者らは、積極的に添加される合金元素成分の配合量以外に、原料等から混入する不純物元素の含有量について鋭意検討を行った結果、Ir系金属からなる発火部の高温での耐酸化性が、微量に含有される不純物炭素の影響を大きく受けるとともに、その含有量レベルを重量含有率にて40ppm以下に制御することで、発火部の耐酸化消耗性が顕著に改善されることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
発火部を構成するIr系金属中の炭素含有量が40ppmを超えると、炭素含有量低減に伴う発火部の耐酸化消耗性改善効果が顕著でなくなり、特に、合金成分添加等による酸化消耗抑制を考慮しない場合には、発火部の高温での酸化消耗が著しくなり、耐久性が低下することにつながる。Ir系金属中の炭素含有量は、望ましくは20ppm以下、より望ましくは10ppm以下、さらに望ましくは5ppm以下とするのがよい。
【0011】
発火部を形成するためのチップ又はこれを製造するためのチップ素材は、Ir系金属の原料を溶解・凝固することにより製造される溶解材としてもよいし、Ir系金属を主体とする原料粉末を所定の形状に成形後これを焼結して得られる焼結材としてもよい。チップ素材は、所定の加工を施すことにより、これをチップとなすことができる。ここでいう「加工」とは、圧延、鍛造、線引き(伸線)、切削、切断(放電加工を含む)及び打抜きの少なくともいずれかを単独で、又は複数を組み合わせてなされるものを意味するものとする。この場合、圧延、鍛造、あるいは打抜き等の加工は、合金を所定の温度に昇温して行ういわゆる熱間加工(あるいは温間加工)により行うことができる。その加工温度は合金組成にもよるが、例えば700℃以上とするのがよい。例えば溶解材を熱間圧延により板状に加工し、さらにその板材を熱間打抜き加工により所定の形状に打ち抜いてチップを形成するようにすれば、チップの製造効率が著しく改善され、チップの製造単価を大幅に低減することができる。なお、溶解合金を熱間圧延又は熱間鍛造により線状あるいはロッド状に加工した後、これを長さ方向に所定長に切断してチップを形成する方法も可能である。
【0012】
チップ又は該チップを製造するためのチップ素材は、その炭素含有量を小さくする方法として、不純物炭素含有量の極力小さいものを使用することが当然に考えられる。しかしながら、高純度の原料は高価であり、また、溶解時における坩堝等の炭素源などから不可避的に混入する炭素により、汚染される可能性がある場合には、たとえ高純度の原料を使用しても炭素含有量レベルを所期の値にまで低減できない可能性もある。
【0013】
そこで、チップ又は該チップを製造するためのチップ素材の炭素含有量が、意に反して40ppmを超える値にまで高くなってしまった場合は、溶接に先立って減圧雰囲気又は水素雰囲気にてこれを脱炭素熱処理することが、そのIr系金属中の炭素成分を除去ないし減少させる上で非常に有効である。また、溶解材の場合は、溶湯を水素(あるいは水素とアルゴン等の不活性ガスとからなる水素含有ガス)中にて保持したり、水素又は水素含有ガスを溶湯中に吹き込んだりする方法も有効である。
【0014】
一方、焼結材においては、例えば成形体を製造するための、Ir系金属の原料粉末中の炭素含有量レベルが高い場合、その成型前に上記の原料粉末を、炭素成分除去のために、減圧雰囲気又は水素雰囲気にて粉末脱炭素熱処理することができる。また、焼結材を使用する場合は、その焼結を、減圧雰囲気又は水素雰囲気にてIr系金属の脱炭素処理を兼ねた焼結処理(以下、脱炭素焼結処理という)とすることもできる。なお、粉末脱炭素熱処理あるいは脱炭素焼結処理終了時に、原料粉末中の炭素含有量レベルが40ppm以下となっていてもよいし、仮にこの段階で40ppmを超えている場合でも、その後、前述の脱炭素熱処理を施して、最終的に得られるチップあるいはチップ素材の炭素含有量レベルを40ppm以下とすればよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1及び図2に示す本発明の一例たるスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された貴金属発火部(以下、単に発火部ともいう)31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0016】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための孔部6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。
【0017】
中心電極3及び接地電極4のチップ被固着面形成部位、この実施例では少なくともその表層部がNi又はFeを主成分とする耐熱合金にて構成されている(なお、本明細書において「主成分」とは、最も重量含有率の高い成分を意味し、必ずしも「50重量%以上を占める成分」を意味するものではない)。Ni又はFeを主成分とする耐熱合金としては、次のようものが使用可能である。
▲1▼Ni基耐熱合金:本明細書では、Niを40〜85重量%含有し、残部の主体が、Cr、Co、Mo、W、Nb、Al、Ti及びFeの1種又は2種以上からなる耐熱合金を総称する。具体的には、次のようなものが使用できる(いずれも商品名;なお、合金組成については、文献(改訂3版金属データブック(丸善);p138)に記載されているので、詳細な説明は行わない):
ASTROLOY、CABOT 214、D-979、HASTELLOY C22、HASTELLOY C276、HASTELLOY G30、HASTELLOY S、HASTELLOY X、HAYNES 230、INCONEL 587、INCONEL 597、INCONEL 600、INCONEL 601、INCONEL 617、INCONEL 625、INCONEL 706、INCONEL 718、INCONEL X750、KSN、M-252、NIMONIC 75、NIMONIC 80A、NIMONIC 90、NIMONIC 105、NIMONIC 115、NIMONIC 263、NIMONIC 942、NIMONIC PE11、NIMONIC PE16、NIMONIC PK33、PYROMET 860、RENE 41、RENE 95、SSS 113MA、UDIMET 400、UDIMET 500、UDIMET 520、UDIMET 630、UDIMET 700、UDIMET 710、UDIMET 720、UNITEP AF2-1 DA6、WASPALOY。
【0018】
▲2▼Fe基耐熱合金:本明細書では、Feを20〜60重量%含有し、残部の主体が、Cr、Co、Mo、W、Nb、Al、Ti及びNiの1種又は2種以上からなる耐熱合金を総称する。具体的には、次のようなものが使用できる(いずれも商品名;なお、合金組成については、文献(改訂3版金属データブック(丸善)、p138)に記載されているので、詳細な説明は行わない);
A-286、ALLOY 901、DISCALOY、HAYNES 556、INCOLOY 800、INCOLOY 801、INCOLOY 802、INCOLOY 807、INCOLOY 825、INCOLOY 903、INCOLOY 907、INCOLOY 909、N-155、PYROMET CTX-1、PYROMET CTX-3、S-590、V-57、PYROMET CTX-1、16-25-6、17-14CuMo、19-9DL、20-Cb3。
【0019】
一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Irを主成分とする金属(Ir系金属)を主体に構成されている。該Ir系金属からなる発火部31,32は、いずれもその炭素含有量が、重量含有率にて40ppm以下、望ましくは20ppm以下、より望ましくは10ppm以下、さらに望ましくは5ppm以下とされている。これにより、中心電極3の温度が上昇しやすい環境下においても、発火部31,32の耐消耗性を良好なものとすることができ、かつIr成分の酸化・揮発により減耗が極めて効果的に抑制される。また、上記のような耐熱合金に対する溶接性も良好である。なお、発火部31及び対向する発火部32のいずれか一方を省略する構成としてもよい。この場合には、発火部31と、発火部を有さない接地電極4の側面との間、又は対向する発火部32と、発火部を有さない中心電極3の先端面との間で火花放電ギャップgが形成されることとなる。また、接地電極4側の、対向する発火部32は、例えばPtを主体とする貴金属など、Ir系金属以外の貴金属にて構成してもよい。
【0020】
発火部31,32を構成するIr系金属には、添加金属元素成分としてPt、Rh、Ru、Re、Nb及びHfの少なくとも1種を含有させることができる。これにより、発火部31,32の高温での耐酸化消耗性がさらに改善される。ただし、本発明においては、発火部31,32を構成するIr系金属中の炭素含有量を前述のレベルにまで低減することによる酸化消耗抑制の効果が大きいため、添加金属元素成分の含有量をそれほど増加させなくとも、発火部の酸化・揮発抑制は相当顕著となる。このことは、添加金属元素成分が、例えば、Pt、Rh、Ru、Re等、高価な貴金属である場合に、その添加量を削減できる点において有利である。この観点においては、Ir系金属は、Irの含有量を85重量%以上とし、残部を実質的に上記の添加金属元素成分とすることが望ましい。
【0021】
発火部31,32を構成するIr系金属としては、例えば次のようなものを使用できる。
(1)Irを主体としてRhを1〜50重量%(ただし50重量%は含まない)の範囲で含有する合金を使用する。該合金の使用により、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗がさらに効果的に抑制され、ひいては、より耐久性に優れたスパークプラグが実現される。
【0022】
上記合金中のRhの含有量が1重量%未満になると、Rh添加によるIrの酸化・揮発の抑制効果が顕著でなくなる。一方、Rhの含有量が50重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下する。
【0023】
ここで、合金中のRhの含有量は上記範囲内において多くなるほど、発火部31,32の酸化・揮発抑制効果は高められる。この観点において、酸化・揮発抑制効果が最も顕著となるのは、Rh含有量が7〜30重量%、より望ましくは15〜25重量%、最も望ましくは18〜22重量%においてである。しかしながら、本発明においては、発火部31,32を構成するIr系金属中の炭素含有量を前述のレベルにまで低減することによる酸化消耗抑制効果が大きいため、Rhの含有量が比較的小さくとも、Ir系金属により発火部を構成した従来のスパークプラグと比較して遜色ない、あるいはそれ以上の酸化・揮発効果が達成される。その結果、高価なRhの含有量を削減しつつも、発火部31あるいは32の耐酸化消耗性をに優れたスパークプラグが実現可能となる。例えば、前述のようにIr系金属中のIrの含有量を85重量%以上となす場合、Rhの含有量は、望ましくは1〜15重量%、さらに望ましくは3〜10重量%の範囲にて調整することが望ましい。
【0024】
(2)Irを主体としてPtを1〜50重量%の範囲で含有する合金を使用する。該合金の使用により、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗がさらに効果的に抑制され、ひいてはより耐久性に優れたスパークプラグが実現される。なお、上記合金中のPtの含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるためプラグの耐久性が低下する。一方、Ptの含有量が50重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下する。例えば、前述のようにIr系金属中のIrの含有量を85重量%以上となす場合、Ptの含有量は、望ましくは1〜15重量%、さらに望ましくは3〜10重量%の範囲にて調整することが望ましい。
【0025】
(3)Irを主成分とし、Nbを0.5重量%以上含有する合金を使用する。該合金を使用することにより、高温でのIr成分の酸化・揮発による消耗がさらに効果的に抑制され、ひいては、より耐久性に優れたスパークプラグが実現される。合金中のNbの含有量が0.5重量%未満になると、Nb添加によるIrの酸化・揮発の抑制効果が顕著でなくなる。Nbの含有量は、望ましくは1重量%以上、さらに望ましくは5重量%以上とするのがよい。
【0026】
この場合、さらに望ましくは、NbをIrに対する固溶限以下の範囲で含有する合金を使用するのがよい。NbがIrに対する固溶限を超えて含有された場合、IrNb等の脆弱な金属間化合物が形成され、発火部の耐久性や耐衝撃性に問題を生ずる場合がある。例えば、室温におけるNbのIrに対する固溶限は約6重量%であることから、Nbを単独含有させる場合には、それぞれ上記値よりも小さい含有量に設定することが望ましいといえる。ただし、上記金属間化合物の形成量が一定以下で、発火部の耐久性等に及ぼす影響が小さい場合には、Nbの含有量が上記固溶限を多少超えた値となっていても差しつかえない。以上から、例えばNbを単独で含有させる場合、その含有量を7重量%以下、望ましくは6重量%以下とするのがよい。
【0027】
(4)Irを主体としてRhを0.1〜30重量%の範囲で含有し、さらにRu及びReの少なくともいずれかを合計で0.1〜17重量%の範囲で含有する合金を使用する。これにより、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗がさらに効果的に抑制され、ひいてはより耐久性に優れたスパークプラグが実現される。Rhの含有量が0.1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるためプラグの耐消耗性が確保できなくなる。一方、Rhの含有量が30重量%を超えると、ReないしRuを含有する合金の融点が低下して耐火花消耗性が損なわれ、プラグの耐久性が同様に確保できなくなる。それ故、Rhの含有量は上記範囲で調整される。
【0028】
一方、RuないしReの合計含有量が0.1重量%未満になると、これら元素の添加によるIrの酸化・揮発による消耗を抑制する効果が不十分となる。また、RuないしReの合計含有量が17重量%を超えると、発火部が却って火花消耗しやすくなり、プラグの十分な耐久性が確保できなくなる。それ故、Ru及びReの合計含有量は上記範囲で調整され、望ましくは0.1〜13重量%、さらに望ましくは0.5〜10重量%の範囲で調整するのがよい。なお、Ru及びReはいずれか一方のみを単独で添加しても、両者を複合して添加してもいずれでもよい。
【0029】
RuないしReが合金中に含有されることにより発火部の耐消耗性が改善される原因の一つとして、例えばこれら成分の添加により、合金表面に高温で安定かつ緻密な酸化物皮膜が形成され、単体の酸化物では揮発性が非常に高かったIrが、該酸化物皮膜中に固定されることが推測される。そして、この酸化物皮膜が一種の不動態皮膜として作用し、Ir成分の酸化進行を抑制するものと考えられる。また、Rhを添加しない状態では、RuないしReを添加しても合金の高温での耐酸化揮発性はそれほど改善されないことから、上記酸化物皮膜はIr−(Ru,Re)−Rh系等の複合酸化物であり、これが緻密性ないし合金表面に対する密着性においてIr−(Ru,Re)系の酸化物皮膜より優れたものとなっていることも考えられる。
【0030】
なお、RuないしReの合計含有量が増え過ぎると、Ir酸化物の揮発よりはむしろ下記のような機構により火花消耗が進行するようになるものと推測される。すなわち、形成される酸化物皮膜の緻密性あるいは合金表面に対する密着力が低下し、該合計含有量が17重量%を超えると特にその影響が顕著となる。そして、スパークプラグの火花放電の衝撃が繰り返し加わると、形成されている酸化物皮膜が剥がれ落ちやすくなり、それによって新たな金属面が露出して火花消耗が進行しやすくなるものと考えられる。
【0031】
また、Ru及び/又はReの添加により、さらに次のような重要な効果を達成することができる。すなわち、Ru及び/又はReを合金中に含有させることにより、Ir−Rh二元合金を使用する場合と比較して、Rh含有量を大幅に削減しても耐消耗性を十分に確保でき、ひいては高性能のスパークプラグをより安価に構成できるようになる。この場合、Rhの含有量は0.1〜3重量%、より望ましくは0.1〜1重量%となっているのがよい。
【0032】
(5)Irを主体としてPt、Re及びPdの少なくともいずれかを合計で1〜30重量%の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%の範囲で含有した合金を使用する。Irを主体として上記範囲のPt、ReないしPdを含有する合金により構成することで、高温でのIr成分の酸化・揮発による消耗が効果的に抑制さるとともに、合金がさらに上記範囲のRhを含有することにより、その加工性が劇的に改善される。チップとしては、原料を所定の組成となるように配合・溶解して得られる溶解合金に対し所定の加工を施して形成されたものが使用できる。なお、ここでいう「加工」とは、圧延、鍛造、切削、切断及び打抜きの少なくともいずれかを単独で、又は複数を組み合わせてなされるものを意味するものとする。
【0033】
Rhの含有量が1重量%未満になると、合金の加工性改善効果が十分に達成できなくなり、例えば加工中に割れやクラックなどが生じやすくなって、チップを製造する際の材料歩留まりの低下につながる。また、熱間打抜き加工等によりチップを製造する場合は、打抜き刃等の工具の消耗あるいは損傷が生じやすくなり、製造効率が低下する。一方、49重量%を越えると合金の融点が低下し、プラグの耐久性低下を招く。それ故、Rhの含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは2〜20重量%の範囲で調整するのがよい。特に、PdないしPtの合計含有量が5重量%以上である場合には合金がさらに脆くなり、所定量以上のRhを添加しないと、加工によるチップ製造が極めて困難となる。この場合、Rhは2重量%以上、望ましくは5重量%以上、さらに望ましくは10重量%以上添加するのがよい。なお、Rhの含有量が3重量%以上である場合には、Rhは加工性の改善だけでなく、高温でのIr成分の酸化・揮発の抑制に対しても効果を生ずる場合がある。
【0034】
PtないしPdの合計含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、チップが消耗しやすくなるためプラグの耐久性が低下する。一方、含有量が30重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下したり(例えばPd単独添加の場合)、あるいは高価なPtないしPdの含有量が増大してチップの材料コストが増大する割には、チップの消耗抑制効果がそれほど期待できなくなる問題が生ずる。以上のことから、PtないしPdの合計含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは3〜20重量%の範囲で調整するのがよい。
【0035】
以下、本発明のスパークプラグの製造方法の実施例について説明する。
すなわち、図9に示すように、中心電極3の先端面3sに上記発火部31(図1)を構成する合金組成からなる円板状のチップ31’を重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接により全周レーザー溶接部(以下、単に溶接部ともいう)10を形成してこれを固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32(図1)は、発火部31に対応する位置において接地電極4にチップ32’(図12)を位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部20を形成してこれを固着することにより形成される。
【0036】
これらチップ31’,32’(以下、チップ31,32を総称する場合は、符号「150」を用いる場合がある)は、所定の組成となるように各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解材を、例えば熱間圧延により板材に加工し、その板材を熱間打抜き加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成したものや、合金を熱間圧延、熱間鍛造あるいは熱間伸線により線状あるいはロッド状の素材に加工した後、これを長さ方向に所定長に切断して形成したものを使用できる。また、アトマイズ法等により球状に成形したものも使用できる。上記チップ150は、例えば直径dcが0.4〜1.2mm、厚さtcが0.5〜1.5mmのものを使用する。結果として、例えば図7(a)に示すように、発火部31の外径Dも同様の寸法を有するものとなる。
【0037】
図3に示すように、チップ150あるいはチップ150を製造するためのチップ素材300あるいは210等は、溶接に先立って減圧雰囲気又は水素雰囲気にて脱炭素熱処理することが、これを構成するIr系金属中の炭素成分を除去する上で有効である。図3(a)は、板材300を、同(b)はロッド状素材210、さらに同(c)は、チップ150に加工した状態にて、熱処理炉FK内にて脱炭素熱処理する例を示している。
【0038】
この脱炭素熱処理の望ましい条件は、以下の通りである。まず、脱炭素熱処理の雰囲気は、酸素分圧が2.7×10−2Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が2.7×10−2Pa以下であって水素分圧が5×10Pa以上の水素雰囲気とすることが望ましい。減圧雰囲気中にて行う場合、酸素分圧が27×10Paを超えると、Ir系金属中のIr成分が酸化・揮発等により目減りしてしまう恐れがある。該酸素分圧は、より望ましくは1.4×10−2Pa以下とするのがよい。
【0039】
また、脱炭素効果は、水素雰囲気中での脱炭素熱処理においてより顕著である。雰囲気ガスとしては、水素ガス、あるいは水素とアルゴン等の不活性ガスとからなる水素含有ガスを使用できる。ただし、雰囲気ガス中の水素分圧が5×10Pa未満では、十分な脱炭素効果が期待できない。また、水素分圧が1.2×10Paを超えると設備を含めて処理コストの高騰を招くことがある。なお、水素分圧はより望ましくは大気圧よりも高く設定するのがよい。このようにすると、炉内の水素は必ず炉外へ漏れ出す方向に流れることから、処理進行に伴う炉内雰囲気の変動を抑制することができる。
【0040】
次に、脱炭素熱処理の温度は、1200〜2000℃の範囲にて調整するのがよい。温度が1200℃未満では、十分な脱炭素効果が達成できなくなる。他方、温度が2000℃を超えると、Ir系金属の軟化あるいは溶融が避けがたくなり、処理中のチップあるいはチップ素材の溶着や変形を招く。脱炭素熱処理の温度は、より望ましくは、1400〜1950℃の範囲にて調整するのがよい。
【0041】
また、チップ又はチップ素材中のIr系金属からの脱炭素は、脱炭素熱処理の保持時間とともに進行する。従って、最終的に40ppm以下の炭素含有量となるように、その保持時間は十分に長く設定する必要がある。しかしながら、その必要十分な熱処理保持時間は、脱炭素熱処理温度及びその雰囲気によって相違するほか、脱炭素熱処理前の炭素含有量レベルによっても異なってくる。当然に、熱処理前にて炭素含有量レベルの高いものは熱処理保持時間も長く設定する必要が生ずる。しかしながら、1つの目安として、上記のレベルまで炭素含有量を減少させるには、最低でも1時間程度は脱炭素熱処理の温度の保持することが望ましいといえる。また、熱処理温度が低い場合は、脱炭素速度は小さくなり、逆に高い場合は脱炭素速度が大きくなる。従って、同じ量の脱炭素を行う場合は、熱処理温度が高いほど、脱炭素処理の時間も短くすることができる。この場合、脱炭素熱処理の温度をTC(℃)、熱処理保持時間をth(時間)とすれば、TC≧1200であって、TC×thが1950以上確保されていることが、上記のレベルまで炭素含有量を減少させる上で望ましいといえる。
【0042】
また、チップ又はチップ素材の炭素含有量は、脱炭素熱処理前にて120ppm以下であることが望ましい。脱炭素熱処理前にて、チップ又はチップ素材の炭素含有量が120ppmを超えていると、脱炭素熱処理の保持時間を相当長時間に設定しても、最終的に40ppm以下の炭素含有量を確保することが困難な場合がある。
【0043】
チップ又はチップ素材を上記のように脱炭素熱処理する方法は、溶解材及び後述する焼結材のいずれにおいても有効である。焼結材の場合、成形助剤(例えば、結合剤あるいは潤滑剤)として各種有機添加剤を添加することがあるが、その有機添加剤が炭素源となって、得られるチップ又はチップ素材中の炭素含有量が増大する場合がある。しかしながら、これを上記のように脱炭素熱処理することにより、その炭素含有量を減少させ、ひいては耐酸化消耗性に優れた発火部を得ることがでる。
【0044】
次に、図4に示すように、チップ150(あるいはチップ素材135)は、Ir系金属を主体とする原料粉末を所定の形状に成形後これを焼結して得られる焼結材としてもよい。図4(a)では、まず、Ir系金属粉末を主体とする原料粉末Pをプレス等により成型して成形体140となし、(b)に示すようにこれを焼結炉FS内にて焼結して、チップ150とする例を示している。また、図4(c)に示すように、ロッド状の粉末成形体130を作り、これを焼結してロッド状の焼結素材135を作り、さらに(d)に示すようにこれを所定長さに切断してチップ150とすることもできる。いずれの場合も、成型前の段階で原料粉末Pに対し、減圧雰囲気又は水素雰囲気にて粉末脱炭素熱処理を施すことができるほか、焼結を減圧雰囲気又は水素雰囲気にて行うことにより、脱炭素を図ることも可能である(脱炭素焼結処理)。
【0045】
粉末脱炭素熱処理は、酸素分圧が2.7×10−2Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が27×10Pa以下であって水素分圧が5×10Pa以上の水素雰囲気にて、温度1200〜2000℃の範囲にて行うことが望ましい。減圧雰囲気中にて行う場合、酸素分圧が2.7×10−2Paを超えると、原料粉末中のIr成分が酸化・揮発等により目減りしてしまう恐れがある。該酸素分圧は、より望ましくは1.4×10−2Pa以下とするのがよい。また、水素雰囲気中にて行う場合は、その水素分圧が5×10Pa未満では、十分な脱炭素効果が期待できない。また、水素分圧が1.2×10Paを超えると設備を含めて処理コストの高騰を招くことがある。なお、水素分圧はより望ましくは大気圧よりも高く設定するのがよい。このようにすると、炉内の水素は必ず炉外へ漏れ出す方向に流れることから、処理進行に伴う炉内雰囲気の変動を抑制することができる。また、粉末脱炭素熱処理の温度が1200℃未満では、十分な脱炭素効果が達成できなくなる。他方、温度が2000℃を超えると、Ir系金属の軟化あるいは溶融が避けがたくなり、粉末粒子が溶着・凝集して成型に使用できなくなる。粉末脱炭素熱処理の温度は、より望ましくは、1400〜1900℃の範囲にて調整するのがよい。
【0046】
また、脱炭素焼結処理は、酸素分圧が2.7×10−2Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が27×10Pa以下であって水素分圧が5×10Pa以上の水素雰囲気にて、温度1400〜2000℃の範囲にて行うことが望ましい。減圧雰囲気中にて焼結を行う場合、酸素分圧が2.7×10−2Paを超えると、原料粉末中のIr成分が酸化・揮発等により目減りしてしまう恐れがある。該酸素分圧は、より望ましくは1.4×10−2Pa以下とするのがよい。また、水素雰囲気中にて行う場合は、その水素分圧が5×10Pa未満では、十分な脱炭素効果が期待できず、水素分圧が1.2×10Paを超えると設備を含めて処理コストの高騰を招くことがある。なお、水素分圧はより望ましくは大気圧よりも高く設定するのがよい。このようにすると、炉内の水素は必ず炉外へ漏れ出す方向に流れることから、処理進行に伴う炉内雰囲気の変動を抑制することができる。次に、脱炭素焼結処理の温度が1400℃未満では、焼結が不能であり、また、十分な脱炭素効果が必ずしも達成できなくなる場合がある。他方、温度が2000℃を超えると、Ir系金属の軟化あるいは溶融が避けがたくなり、得られるチップあるいはチップ素材の溶着や変形を招く。脱炭素焼結処理の温度は、より望ましくは、1400〜1950℃の範囲にて調整するのがよい。また、脱炭素熱処理温度での保持時間は0.5〜5時間の範囲とするのがよい。保持時間が0.5時間未満では十分な脱炭素効果が期待できず、5時間を超えると焼結時間の長大化による製造効率の低下を招く。また、粉末に有機結合剤が添加されている場合に、その炭素成分の粉末を構成するIr金属中への拡散が進行して、金属中の炭素含有量の増大を招く場合がある。さらに、焼結体の結晶粒子が過度にオストワルト成長して強度不足につながることもある。
【0047】
次に、溶接方法の一例について説明する。なお、上記の発火部31,32を形成するための溶接方法は概ね同じであるので、中心電極3側の発火部31を中心に、以下に詳しく説明する。図9(a)に示すように、中心電極3の先端面3sをチップ被固着面として、ここにチップ31’を重ね合わせて重ね合せ組立体70を作り、その重ね合せ組立体70に対し、チップ31’とチップ被固着面とにまたがる全周レーザー溶接部10をチップ外周面に沿って形成する。このとき、レーザー溶接の光源として、1パルス当りのエネルギーが1.5〜6J、パルス長が1〜10ミリ秒、パルス発生周波数が2〜20パルス/秒のパルス状レーザー光源(例えばYAGレーザー光源)50を使用する。前述の大きさのチップ31’を使用して上記の条件にて形成される全周レーザー溶接部10は、図6に示すように、チップ31’とチップ被固着面との重ね合わせ方向において平面視したときの外周最大寸法dmaxが2.0mm未満であり、かつチップ31’の厚さ方向において放電面31aに到達しないものとされる。なお、外周最大寸法dmaxは0.4mm以上であることが望ましい。dmaxが0.4mm未満になると、レーザー光を相当に絞っても均一な溶接部を形成することが困難になり、正常な発火部形成に支障を来たす場合がある。
【0048】
電極素材として使用される前述の各種耐熱合金は、800℃における熱伝導率が概ね30W/m・K以下と小さく、レーザー溶接時に畜熱しやすい性質がある。しかしながら、1パルス当りのエネルギーが1.5〜6J、パルス長が1〜10ミリ秒のレーザー光を使用することにより、従来の方法と比較してはるかに大きいパルス発生周波数である2〜20パルス/秒を採用しても、均一性の高い全周溶接部10を形成できる。具体的には、チップのチップ被固着面への重ね合せ方向、この場合、チップ31’あるいは中心電極3の中心軸線Oの方向における、全周レーザー溶接部10の最小幅lminと最大幅lmaxとの比lmin/lmaxが0.7以上(望ましくは0.9以上)とすることができる。
【0049】
なお、図8(a)には、中心軸線Oと同軸の円筒面(放電面31aの外径に等しい直径を有する)にレーザー溶接部10を投影したときの、その投影像の展開図を示しており、上記のlmin及びlmaxを示している。また、中心軸線Oの方向において、放電面31aの外縁TLからレーザー溶接部10の放電面31aに対して近い側の縁までの最小距離hminは、TLからレーザー溶接部10の放電面31aに対して近い側の各縁の積分中心線UCmまでの距離を平均発火部厚さhavとして、hmin/havが同様に0.7以上となっていることが望ましい。これにより、例えばhminとなる位置(多くの場合、溶接部10が最も広幅(lmax)となる位置)において、貴金属発火部が少し消耗しただけで溶接部の放電面への露出が発生し、着火ミス等を生ずる不具合が効果的に防止される。
【0050】
また、中心電極3の先端面に固着されている発火部31は、前述の通りIr系金属中の炭素含有量レベルを低くすることにより、耐酸化消耗性が格段に向上している。そこで、より温度上昇しやすい態様として、中心電極3の軸線方向における厚さを0.4〜1.0mm程度まで大きくしても、酸化消耗が効果的に抑制され、ひいては発火部31の寿命を伸ばすことができる。この場合、発火部31の厚さは、図8のhminにより表す。
【0051】
次に、溶接部10は、図7(a)に示すように、溶接部10の中心軸線Oを挟んだ両側部分が半径方向においてつながらない場合(この場合、溶接部10はドーナツ状の形態を呈する)は、溶接後においてチップ厚さtcを、その軸断面から実測することが可能である。しかし、同図(b)に示すように、半径方向に両側の溶接部がつながってしまう場合(溶接部10は円板状の形態を呈する)は、図8(a)に示すように、溶接部10の幅方向両側縁の積分中心線UCm,LCmの中間位置に基準線CMを設定し、その基準線CMと放電面31aの外縁TLとの距離Hをチップ厚さtcとして推定する。
【0052】
ここで、チップ径dcは、スパークプラグに要求される耐久性や着火性能等に応じて、0.4〜1.2mmの範囲にて適宜設定されるが、チップは一般に高価なのでなるべくその使用量を削減するために、その厚さtcは前述の通り0.5〜1.5mmと比較的小さく設定されるのがよい。また、平均発火部厚さhavについては、0.2〜1.0mmとするのがよい。この理由としては、havが0.2mm未満になると貴金属発火部が少し消耗しただけで溶接部の放電面への露出が発生し、スパークプラグの耐久性を低下させる場合があるからである。一方、havが1.0mmを超えると、ギャップ拡大によりスパークプラグの寿命が到来したときに、チップが相当量残留した状態にてスパークプラグが交換されることとなるので、無駄が多くなるからである。これを前提とすれば、例えば、溶接後においてもチップ厚さtcが確認可能な場合、平均発火部厚さhavとチップ厚さtcに対する比hav/tcは、概ね0.13〜2.0となっていることが望ましいといえる。ただし、図8(b)に示すように、チップ31’の放電面と反対側の縁が、溶接部10よりも基端側に突出して位置するような場合にあっては、hav/tcが0.2〜1.0となっていても、寿命到来とは無関係に、その突出部分が全て無駄になってしまう問題を生ずることとなる。
【0053】
一方、チップの中心電極からの耐剥離性を向上させるために、UCmとLCmとの距離を平均溶接部幅lavとして、該lavを0.4mm以上とすることが望ましい。また、同様の観点において、図8(c)に示すように溶接部の中心軸線を挟んだ両側部分が半径方向においてつながらない場合は、tc−havが0.2mm以上となっていることが望ましい。他方、図8(d)に示すように、半径方向の両側部分がつながってしまう場合には、中心電極3の軸線方向において、放電面31aから、溶接部10と発火部31との接合面上において溶接部10が最も薄肉となる位置までの寸法をtc2、同じく溶接部10と中心電極3との接合面上において溶接部10が最も薄肉となる位置までの寸法をtc3として、tc3−tc2が0.2mm以上となっていることが望ましい。
【0054】
夲実施例のように、チップ31’が円板状に形成されている場合、図9(b)に示すように、該チップ31と中心電極3との重ね合せ組立体70を、レーザー光源50に対しチップ中心軸線Oの周りにおいて相対的に回転させながら、チップ外周面に向けてパルス状レーザー光LBを照射する方法が、上記のような全周レーザー溶接部を均一に形成する方法として合理的である。この場合、組立体70又はレーザー光源50の一方のみを回転させるようにしてもよいし、双方ともに(例えば互いに逆方向に)回転させることも可能である。
【0055】
この場合、その回転速度は以下のように調整することが望ましい。まず、重ね合せ組立体70とレーザー光源50との相対回転速度は、レーザー光源50を1つのみ使用する場合は、10rpm以上(望ましくは12rpm以上)とするのがよい。全周溶接を行うためには、組立体70とレーザー光源50とを最低1周分は相対回転させなければならないが、その相対回転速度が10rpm未満になると、1周分の溶接時間ひいては1個のスパークプラグを製造するためのピースタイムが長くなり、従来方法に対して必ずしも優位性を生ずるものとはならなくなる場合がある。
【0056】
一方、相対回転速度の上限値であるが、重ね合せ組立体70を回転させる場合は、溶接時に生ずる溶融金属の遠心力による変形や飛散を防止するために、最大でも240rpm(秒速4回転)程度に留めるのがよい。他方、溶接部10に付加される遠心力は、外周最大寸法dmaxに略比例して大きくなり、回転角速度に対してはその2乗に略比例して大きくなると考えられるので、これを考慮した場合、重ね合せ組立体70の回転速度は、
Vmax=5π(2/dmax)1/2(単位:ラジアン/秒)‥‥▲1▼
で定まる値Vmax未満に設定することが望ましい(ただし、dmaxの単位はmm)。
【0057】
上記▲1▼式によれば、dmaxが小さくなるほどVmaxは大きく取れることになる。例えば、dmax=2.0mmとすればVmaxはおよそ150rpmとなるが、dmax=1.5mmではVmax=173rpmであり、dmax=0.7mmではVmax=253rpmである。また、組立体70とレーザー光源50との双方を回転させて、所期の相対回転数を形成する場合、中心電極側の回転速度を増やすことができれば、その分、若干複雑にならざるを得ないレーザー光源50側の機構の回転速度を減ずる(あるいは非回転とする)ことができ、ひいてはレーザー光源50側の機構単純化あるいは回転負担軽減を行うことが可能となる。
【0058】
なお、▲1▼式によれば、概ねdmax <0.78mmでは、Vmaxは前記した望ましい上限値である240rpmよりも大きくなる。ただし、本発明者の検討によれば、上記のような小径のチップの場合でも、1パルス当り1.5〜6Jのエネルギーのレーザー光を用いて周方向に完全に連なる溶接部10を形成するには、1周に対して最低でも5つ分のパルス溶接ビードを形成しなければならない。240rpmは秒速4回転であり、前記したパルス発生周波数の上限値である20パルス/秒を用いても、1秒当りに5パルスがやっと打てる程度である。従って、これよりも回転速度が大きくなると、溶接ビード10dが周方向に間欠形成される形となり、1回転の間に周方向に連なるパルス溶接ビードを形成完了できなくなる場合がある。従って、式▲1▼の観点からは240rpmを超える回転速度が可能であっても、やはり240rpm程度に回転速度を留めておいたほうが有利であるともいえる。ただし、2回転目以降の溶接を行うことが許される場合は、溶接ビード10dの形成角度位相をずらせることにより、周方向に連なる溶接部10を形成することができる。
【0059】
他方、レーザー光源50の側を回転させる場合には、レーザー光線の照射位置ブレ等の発生を抑制するために、その回転速度を90rpm以下に設定するのがよい。
【0060】
なお、チップ31’の厚さtcが上記のように小さい場合、放電面31aにかからないように溶接部10を形成するために、パルス状レーザー光LBを斜め上方から照射することが有効である。具体的には、図9(b)及び(c)に示すように、レーザー光LBのスポット内にチップ被固着面(この場合、中心電極3の先端面)とチップ外周面との交差縁Qが入り、かつチップ被固着面に対する照射角度θが0゜〜60゜の範囲(例えば45゜)となるように重ね合せ組立体70にパルス状レーザー光LBを照射することが望ましい。
【0061】
チップ31’のチップ被固着面に対する位置決め固定を行いやすくするために、図9(d)に示すように、チップ外形形状に対応した位置決め用凹部3aをチップ被固着面に形成し、その位置決め用凹部3a内にチップ31’を嵌め込んで重ね合せ組立体70を作ることもできる。この場合、溶接接合を確実に行うには、その凹部3aの開口周縁とチップ外周面との交差縁Qに向けてパルス状レーザー光LBを照射するのがよい。
【0062】
次に、脱炭素熱処理のために、高温に長時間保持したIr系金属のチップあるいはチップ素材は、結晶成長が進行して結晶粒が粗大化していることが多い。この場合、結晶粒が粗大化し過ぎていると、急加熱・急冷却が繰り返されるレーザー溶接により、例えば図9に示すように、チップ31’を接合して発火部31を形成する際に、粒界割れ等によりチップ31’が破壊してしまう場合がある。従って、これを考慮して、発火部31(ひいてはチップ31’)を構成するIr系金属の平均粒径は100μm以下としておくことが望ましい。なお、5μm未満の平均粒径は、製造工程上の制約から実現困難か、あるいは実現できても極めて高コストとなるため現実的でないことが多い。なお、本明細書においては、材料の研磨表面上で観察される結晶粒の外形線に対し、その外形線と接しかつ結晶粒内を横切らないように2本の平行線を、その結晶粒との位置関係を変えながら各種引いたときの、上記平行線間の距離の最大値として定義し、平均粒径とは、そうして求めた多数の結晶粒の粒径の平均値を意味するものとする。
【0063】
なお、結晶粒微細化のための具体的な手法としては、脱炭素熱処理後のチップ又はチップ素材を、加工及び熱処理する方法がある。例えば、板材の場合は、最終的に所望する寸法(例えば板厚tF)よりも若干大きい寸法(板厚tP)まで圧延等により加工し、次いで脱炭素熱処理を行う。これにより、結晶粒は粗大化するが、これを再び熱間加工すること、例えば、図5に示すように熱間圧延することにより、いわゆる動的再結晶現象を利用して結晶粒の微細化を図ることができる。この加工により、最終的に所望する寸法(例えば板厚tF)が得られるようにしておけば、さらに能率的である。他方、冷間あるいは温間加工によりチップ又はチップ素材内に欠陥を導入し、これを焼鈍することにより回復・再結晶させて結晶粒の微細化を図るようにしてもよい。
【0064】
また、チップを構成する材料には、元素周期律表の3A族(いわゆる希土類元素)又は4A族(Ti、Zr、Hf)に属する金属元素の酸化物(複合酸化物を含む)のいずれかを0.1〜15重量%の範囲内で含有させることができる。これにより、酸化物粒子が結晶粒界をピンニングすることから、脱炭素熱処理時(あるいは脱炭素焼結処理時)の結晶粒成長が抑制され、上記したような結晶粒の粗大化を防止することができる。また、添加金属元素成分、特にIr、Ru、Reの酸化・揮発による消耗がさらに効果的に抑制される。上記酸化物の含有量が0.1重量%未満になると、当該酸化物添加による結晶粒粗大化抑制効果あるいは添加金属元素成分の酸化・揮発防止効果が十分に期待できなくなる場合がある。一方、酸化物の含有量が15重量%を超えると、チップの耐熱衝撃性が却って損なわれてしまうことがある。なお、上記酸化物としては、Yが好適に使用されるが、このほかにもLa、ThO、ZrO等を好ましく使用することができる。なお、酸化物以外にも炭化物、窒化物及びホウ化物等の無機物質粒子を含有させることもできるが、この場合、無機物質粒子のマトリックスをなすIr系金属相中の炭素含有量が40ppm以下になっている必要がある。
【0065】
次に、発火部31,32を構成するIr系金属において、その添加金属元素成分の濃度分布に縞状の濃淡を生じている場合、図2(b)に示すように、その濃淡縞Jの方向を、例えば発火部31,32における電圧印加方向(すなわち放電方向)とほぼ平行となるように、当該発火部31,32を形成することができる(以下、平行態様という)。これによれば、次のような効果が達成される。
▲1▼縞状の濃淡分布が生ずる場合、その濃淡縞Jの方向に合金結晶方位の指向性が生じやすくなる。例えば、添加金属元素成分の濃度差の大きい領域同士は、熱膨張率にも差があり、発火部31,32に冷熱サイクルが繰り返されると、濃淡縞Jに沿った剥離により発火部31,32の消耗が進むことがある。また、濃淡縞Jの境界付近での局部的な腐食により剥離が進行することも考えられる。しかしながら、いずれにしろ、図2(d)に示すように、この剥離は上記平行態様では濃淡縞Jの向きである電圧印加方向、すなわち火花放電ギャップgの間隔方向に生ずる形になるので、残っている発火部31,32の合金結晶はギャップ間隔方向の寸法を比較的維持しやすい。従って、多少の消耗が進行しても火花放電ギャップgの間隔が変化しにくい利点がある。なお、濃淡縞Jの方向に延びる合金結晶組織が、板状ではなく繊維状を呈していると、剥離の進行も鈍くなるので、一層有利であるといえる。
【0066】
▲2▼接地電極側面が中心電極先端面と対向する、いわゆる平行型スパークプラグの場合においては、図2(c)に示すように、中心電極3の軸線方向に発火部31の濃淡縞Jの方向が一致する形となり、合金結晶の方位もこの向きに揃いやすくなる。その結果、発火部31は中心電極3の軸線方向の伝熱性が良好となり、発火部の熱引き特性改善に寄与する。また、発火部31は、長手方向に上記濃淡縞とともに繊維状の結晶粒が成長したロッド状の合金(回転鍛造加工あるいは伸線加工により容易に製造できる)を、放電加工等によりいわば輪切りにしてチップを製造でき、例えばチップ製造時に無駄が生じにくく、製造歩留まりを向上できる。
【0067】
他方、図2(c)に示すように、上記濃淡縞Jの方向を、例えば発火部31,32における電圧印加方向(すなわち放電方向)とほぼ直交するように当該発火部31,32を形成すすることもできる(以下、直交態様という)。この場合、上記平行態様に特有の効果は期待できないが、代わって発火部31,32の消耗自体が抑制され、火花放電ギャップ幅の増加抑制効果がさらに向上する。すなわち、濃淡縞Jの方向が放電電圧の印加方向とは交差する形になるので、濃淡縞Jの境界が発火面31aにほとんど露出しなくなる。その結果、濃淡縞境界付近の局部腐食による剥離が抑制され、発火部31,32の消耗が進行しにくくなるものと推測される。
【0068】
【実験例】
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
(実験例1)
Ir金属(炭素含有量120ppm)に対し、所定量のPt金属(炭素含有量90ppm)を配合・溶解することにより、Ir−5重量%Ptの組成を有する合金を作製した。この合金に対し、温度700℃で熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの板材に加工した。次いで、上記得られた板材を熱間打抜き加工(加工温度1700℃)することにより、直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状のチップを得た。この段階でのチップの炭素含有量は約100ppmであった。なお、Ir金属中の炭素含有量は、酸素気流中にて試料を燃焼させながら、その燃焼ガスを赤外線吸光法にて分析することにより測定した。分析装置は堀場製作所(株)製、EMIA−510・520を用い、検量線は日本鉄鋼協会のJSS1202−2の低炭素鋼標準サンプルを使用して作成した。また、測定は、チップ試料の加熱時の酸化を防止するために、Snカプセルに封入した状態で行った(チップ重量約0.4gに対し、カプセル重量約1g)。なお、Snカプセルは、炭素含有量が16ppm以下であることが予め判明しているものを使用した。
【0069】
続いて、上記のチップを各種条件にて脱炭素熱処理し、熱処理後のチップ中の炭素含有量を上記と同様の方法により分析した。図10は、熱処理温度を1040〜2100℃の範囲内で各種設定し、熱処理時間は1〜5時間の範囲内にて各種設定した。また、熱処理は、炉内を真空度7.0×10−3Paまで排気した後、水素ガス(純度99.99%)を導入し、その流量調整により水素ガス分圧を大気圧(1.06×10Pa)に調整して行った。結果を図10に示す。
【0070】
すなわち、熱処理温度TC(℃)が高温になるほど、また、熱処理時間th(時間)が長くなるほど炭素含有量が減少しており、特にTC×thが1950以上を満足する条件にて、炭素含有量が10ppm以下まで減少していることがわかる。なお、熱処理温度TCが2000℃を超える条件では、チップの変形が生じていた。
【0071】
上記の各種処理後のチップを、大気中にて1050℃で20時間保持した後、各試験片の重量減少を測定することにより、耐酸化性の評価を行った。その結果を図11に示す。すなわち、脱炭素熱処理の条件調整により炭素含有量を40ppm以下としたチップは、耐酸化性が格段に向上しており、特に炭素含有量が20ppm以下あるいは10ppm以下では極めて良好な結果が得られていることがわかる。
【0072】
次に、図12は、熱処理温度を1800℃に、熱処理時間を5時間に固定設定するとともに、炉内の真空度を調整することにより、マスフローメーターで測定した酸素分圧が0.7〜27×10−2Paに調整し、さらに水素ガスを導入して水素ガス分圧を大気圧とした場合と、同じく水素ガスを導入しなかった場合とで、それぞれ脱炭素熱処理した場合の結果を示す。図中のグラフは、上記と同様の方法により行った耐酸化性の評価結果であり、表は、熱処理後におけるチップ中の炭素含有量の分析値を示している。水素を導入した場合の方が酸素分圧を若干高くしても脱炭素がよく進行しており、最終的な到達炭素含有量レベルも低くなっている。また、これに対応して耐酸化性も、到達炭素含有量レベルが低いほど良好となっていることがわかる。
【0073】
(実験例2)
Ir金属(炭素含有量120ppm)に対し、所定量のPt金属(炭素含有量90ppm)又はRh金属(炭素含有量80ppm)を配合・溶解することにより、Ir−5重量%Pt、Ir−10重量%Rh及びIr−20重量%Rhの組成を有する合金を作製した。なお、得られるインゴット中の炭素含有量が各種値となるように、溶解時にグラファイト粉末を適量配合した。この合金を、実験例1と同様の条件によりチップに加工し(直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状)、チップの炭素含有量を測定したところ、90〜110ppmの各種値となっていた。
【0074】
続いて、上記のチップを、熱処理温度を1800℃に固定し、熱処理時間を5時間に固定設定して脱炭素熱処理した。なお、熱処理は、炉内を真空度1.4×10−2Paまで排気した後、水素ガス(純度99.99%)を導入し、その流量調整により水素ガス分圧を大気圧に調整して行った。熱処理後のチップ中の炭素含有量を上記と同様の方法により分析したところ、含有炭素量は0.5〜50ppmの各種値となっていた。
【0075】
上記のチップを用いて、図1に示すスパークプラグ100の発火部31及び対向する発火部32を、火花放電ギャップgの幅が1.1mmとなるように形成するとともに、実機による耐火花消耗性試験を行った。すなわち、プラグを6気筒ガソリンエンジン(DOHC、排気量2500cc)に取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数5500rpmにて200時間運転を行ない、火花放電ギャップgの拡大量を測定した。図13は、チップ中の炭素含有量に対し、耐久後のギャップ増加量をプロットしたグラフである。いずれの合金でチップを形成した場合でも、炭素含有量を40ppm以下としたものでは、ギャップ増加量が小さく耐酸化性が格段に向上しており、特に炭素含有量が20ppm以下あるいは10ppm以下では、極めて良好な結果が得られていることがわかる。
【0076】
(実験例3)
所定量のIr金属(炭素含有量120ppm)及びPt金属(炭素含有量90ppm)を配合・溶解することにより、Ir−5重量%Ptの組成を有する母材金属合金を作製し、メノウ製のボール及びポットを用いてボールミル粉砕(溶媒:エタノール)することにより、平均粒径3μmとなるように粉末化した。これに、平均粒径7μmのY粉末を1.7重量%配合し、さらに溶媒としての水と結合剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を加えて混合した後、乾燥して成型用素地粉末とし、これを所定の円板形状に成形して焼結することにより金属−酸化物複合材料のチップを作成した。なお、焼結は、大気圧水素雰囲気にて1950℃で1時間行った。また、得られた焼結材チップの形状は直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状である。
【0077】
このチップに対し、熱処理温度を1000〜2000℃の各種値とし(常温から各熱処理温度までの昇温は1時間にて行った)、熱処理時間を10時間に固定設定するとともに、炉内の真空度を1.4×10−2Paに調整し、さらに水素ガスを導入して水素ガス分圧を大気圧とした雰囲気中で脱炭素熱処理を施し、実施例1と同様の方法により耐酸化性の評価を行った。図14中のグラフは、その評価結果を示すものであり、表は、チップ中の熱処理後の炭素含有量の分析値を示している。すなわち、脱炭素熱処理の条件調整により炭素含有量を40ppm以下としたチップは、耐酸化性が格段に向上しており、特に炭素含有量が20ppm以下あるいは10ppm以下では極めて良好な結果が得られていることがわかる。
【0078】
(実施例4)
所定量のIr金属(炭素含有量120ppm)及びPt金属(炭素含有量90ppm)を配合・溶解することにより、Ir−5重量%Ptの組成を有する母材金属合金を作製し、メノウ製のボール及びポットを用いてボールミル粉砕(溶媒:エタノール)することにより、平均粒径3μmとなるように粉末化した。次いでこの粉末に対し、熱処理温度を400〜900℃の各種値とし、熱処理時間を10時間に固定設定するとともに、炉内の真空度を1.4×10−2Paに調整し、さらに水素ガスを導入して水素ガス分圧を大気圧とした雰囲気中にて粉末脱炭素熱処理した。そして、処理後の粉末に溶媒としての水と結合剤としてのポリビニルアルコール(PVA)を加えて混合した後、乾燥して成型用素地粉末とし、これを所定の円板形状に成形して焼結することによりIr−5重量%Ptの組成を有するチップを作成した。なお、焼結は、大気圧水素雰囲気にて1950℃で1時間行った。また、得られた焼結材チップの形状は直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状である。
【0079】
得られたチップに対し、実施例1と同様の方法により耐酸化性の評価を行った。図15中のグラフは、その評価結果を示すものであり、表は、チップ中の熱処理後の炭素含有量の分析値を示している。すなわち、脱炭素熱処理の条件調整により炭素含有量を40ppm以下としたチップは、耐酸化性が格段に向上しており、特に炭素含有量が20ppm以下あるいは10ppm以下では極めて良好な結果が得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一実施例を示す正面部分断面図。
【図2】その要部を示す拡大断面図。
【図3】発火部形成用のチップ又はチップ素材の脱炭素熱処理方法の例を示す模式図。
【図4】脱炭素焼結処理を行うチップ又はチップ素材の製造方法の例を示す模式図。
【図5】チップ素材の組織を加工熱処理により微細化する工程を示す模式図。
【図6】図1のスパークプラグの中心電極先端部の拡大斜視図及び先端面側平面図。
【図7】図2の縦断面図及びその変形例の縦断面図。
【図8】全周溶接部の展開説明図。
【図9】図1のスパークプラグの中心電極側発火部の製造工程説明図。
【図10】実験例1において、脱炭素熱処理条件と処理後のチップ中の炭素含有量との関係を示すグラフ。
【図11】脱炭素熱処理条件と処理後のチップ中の炭素含有量、及び対応する耐酸化試験の結果を示す図。
【図12】脱炭素熱処理の雰囲気と処理後のチップ中の炭素含有量、及び対応する耐酸化試験の結果を示す図。
【図13】実験例2の実機耐久試験の結果を示すグラフ。
【図14】実験例3において、脱炭素熱処理の雰囲気と処理後のチップ中の炭素含有量、及び対応する耐酸化試験の結果を示す図。
【図15】実験例3において、粉末脱炭素熱処理の雰囲気と処理後のチップ中の炭素含有量、及び対応する耐酸化試験の結果を示す図。
【符号の説明】
1 主体金具
2 絶縁体
3 中心電極
4 接地電極
31 発火部
31’ チップ
32 対向する発火部
g 火花放電ギャップ

Claims (17)

  1. 中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、その絶縁体の外側に設けられた主体金具と、前記中心電極と対向するように配置される接地電極と、それら中心電極と接地電極との少なくとも一方に固着されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、
    前記発火部が、Irを主成分とし、かつ炭素含有量が40ppm以下であるIr系金属又は該Ir系金属を主成分とする複合材料により構成されることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記Ir系金属中の炭素含有量が20ppm以下である請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記Ir系金属中の炭素含有量が10ppm以下である請求項1記載のスパークプラグ。
  4. 前記Ir系金属は、添加金属元素成分としてPt、Rh、Ru、Re、Nb及びHfの少なくとも1種を含有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載のスパークプラグ。
  5. 前記Ir系金属は、Ptを1〜50重量%の範囲で含有するものである請求項4記載のスパークプラグ。
  6. 前記Ir系金属は、Irの含有量が85重量%以上である請求項4又は5に記載のスパークプラグ。
  7. 前記Ir系金属は、Ptを1〜15重量%の範囲にて含有する請求項6記載のスパークプラグ。
  8. 前記発火部は、元素周期律表の3A族又は4A族に属する金属元素の酸化物(複合酸化物を含む)のいずれかを0.1〜15重量%の範囲内で含有するものである請求項1ないし7のいずれかに記載のスパークプラグ。
  9. 前記発火部を構成する材料の平均粒径が5〜100μmである請求項1ないし8のいずれかに記載のスパークプラグ。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のスパークプラグを製造するために、
    前記火花放電ギャップに対応する位置において前記中心電極と前記接地電極との少なくとも一方に、Irを主成分とし、かつ炭素含有量が40ppm以下のIr系金属又は該Ir系金属を主成分とする複合材料からなるチップを溶接することにより、該チップに基づく発火部を形成するとともに、
    前記溶接に先立って、前記チップ又は該チップを製造するためのチップ素材を、前記Ir系金属中の炭素成分を除去するために、減圧雰囲気又は水素雰囲気にて脱炭素熱処理し、
    前記脱炭素熱処理の雰囲気は、酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下であって水素分圧が5×10 Pa以上の水素雰囲気であり、
    前記脱炭素熱処理の温度が1610℃以上2000℃以下の範囲にて調整されることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
  11. 前記チップ又は前記チップ素材の炭素含有量は、前記脱炭素熱処理前にて120ppm以下である請求項10記載のスパークプラグの製造方法。
  12. 前記脱炭素熱処理後の前記チップ素材を、結晶粒微細化のために加工及び熱処理する請求項10又は請求項11に記載のスパークプラグの製造方法。
  13. 前記チップ素材は、前記Ir系金属の原料を溶解・凝固することにより製造される溶解材である請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載のスパークプラグの製造方法。
  14. 前記チップ又は前記チップ素材は、Ir系金属を主体とする原料粉末を所定の形状に成形後、これを焼結して得られるものである請求項10ないし12のいずれか1項に記載のスパークプラグの製造方法。
  15. 前記成型前に前記原料粉末を、炭素成分を除去するために、減圧雰囲気又は水素雰囲気にて粉末脱炭素熱処理する請求項14記載のスパークプラグの製造方法。
  16. 前記粉末脱炭素熱処理は、酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下であって水素分圧が5×10 Pa以上の水素雰囲気にて、温度1200〜2000℃の範囲にて行われる請求項15記載のスパークプラグの製造方法。
  17. 前記焼結を、酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下の減圧雰囲気、又は酸素分圧が2.7×10 −2 Pa以下であって水素分圧が5×10 Pa以上の水素雰囲気にて、温度1400〜2000℃の範囲にて0.5〜5時間行う請求項14ないし16のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法。
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