JP4286060B2 - 絶縁層付き銅箔の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁層付銅箔及びその製造方法並びにその絶縁層付銅箔を用いた多層プリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
多層プリント配線の製造に用いられる樹脂付き銅箔は、その優れたレーザー加工性や絶縁信頼性から、レーザー加工によるバイアホールを形成することを前提としたビルドアップ多層プリント配線板の材料として広く使用されている。しかし、樹脂付き銅箔は従来のガラス繊維にエポキシ樹脂等を含浸することにより製造されるブリプレグと比較すると、軽量であることや.レーザー加工性に優れるといった優位性はあるものの、曲げ、引張り、衝撃等の機械強度が低いため、過酷な環境下では、従来のプリプレグよりも信頼性の点で満足できない傾向にあった。
【0003】
これとは別に、ガラス繊維を用いたプリプレグのレーザー加工性を改善するために、織布を用いないでガラス紙やアラミド紙の不織布に樹脂含浸を行い製造されるプリプレグの使用も提案されている。これらの不織布を用いることにより、一般的な織布に見られるような繊維の量の不均一性が改善されるので、レーザー加工性は大幅に改善される。しかし、不織布は、それ自体の強度が低いことにより樹脂含浸の際に、切れやすく、近年の高密度多層プリント配線板に適する薄さのものを製造することは困難であった。しかし、この問題に対して本発明者らはすでに新たな絶縁層付き銅箔を提案している(例えば、先行技術文献1参照)。
【0004】
【先行技術文献1】
特願2002−326268
【0005】
これにより、従来は困難であった非常に薄い不織布や織布を骨格材として用いた半硬化状態の絶縁層を有する絶縁層付き銅箔が得られる。そして、この先行技術に係る半硬化状態の絶縁層付き銅箔を用いることで、従来のガラスエポキシ基材のような、いわゆるプリプレグを使用せずに、ビルドアップ工法におけるレーザー穴明け加工性に優れる銅張積層板を提供できることになり、高品質の多層プリント配線板を製造できるようになった。
【0006】
ところで、多層プリント配線板を製造する場合、予め回路形成を行ったコア材に対して、ブリプレグと銅箔または樹脂付き銅箔、或いは上記絶縁層付き銅箔をプレスにより加温、加熱して積層することにより、銅張積層板を形成し、さらに回路形成を行う工程を行い、このような積層、回路形成工程を繰り返すことにより製造する方法が採られる。或いは、予め回路形成を行ったコア材を所定の枚数用意して、これらにプリプレグを介して一度に積層する方法が一般的に知られている。
【0007】
しかしながら、前者の方法では、逐次、積層と回路形成を繰り返すのでプレスに手間がかかり生産性を向上させることが難しいものである。また、後者の方法では、積層は1度でよいものの、薄厚の多層プリント配線板を製造する場合には、極薄のプリプレグを複数枚使用しなければならないため、積層時のプリプレグの取り扱いが難しく、効率的な製造を困難とする要因を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような事情を鑑み、多層プリント配線板を製造する際のプレス回数を大幅に低減し、かつその取り扱いも容易で、高い生産効率で多層プリント配線板を製造することができる、プリント配線板の構成材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本願出願人が既に提案した、骨格材を有する半硬化の絶縁層付き銅箔について種々の検討を行ったところ、本発明に係る絶縁層付き銅箔を想到するに至った。
【0010】
本発明は、銅箔の片面に、不織布または織布の骨格材を有する半硬化絶縁層を備える絶縁層付き銅箔において、銅箔と半硬化絶縁層との間に硬化済み樹脂層を有するとともに、露出した半硬化絶縁層の片面に引き剥がし可能な保護フィルムを備えるものとした。
【0011】
本発明に係る絶縁層付き銅箔は、硬化済み樹脂層を有しているので、そのまま銅箔をエッチングにすることより回路形成が可能であり、回路形成を行った絶縁層付き銅箔を複数準備し、それらを積層してプレス加工をすることで多層プリント配線板を製造することができるのである。また、半硬化絶縁層の露出する片面には、引き剥がし可能な保護フィルムを備えているので、銅箔のエッチングの際に半硬化絶縁層がエッチングにより侵されることがない。
【0012】
この本発明に係る絶縁層付き銅箔では、骨格材を有する半硬化絶縁層の厚み制御ができるため、製造される多層プリント配線板の厚みも薄くすることが容易に可能となる。つまり、従来のように、取り扱いの難しい極薄のプリプレグを使用しなくても、薄厚の多層プリント配線板を容易に製造でき、しかも、本発明に係る絶縁層付き銅箔に回路形成を行ったものを複数準備することで、一度のプレス加工により多層プリント配線板を形成でき、生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0013】
そして、本発明に係る絶縁層付き銅箔は、露出した半硬化絶縁層の片面に引き剥がし可能な保護フィルムを備えるが、この保護フィルのため、取り扱い性が良好となり、銅箔の回路形成時におけるエッチング液などから半硬化絶縁層を保護することができる。この場合の保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を用いることができる。これらの材質のフィルムは、銅箔のエッチング液に耐食性を有し、半硬化絶縁層からの引き剥がしも容易に行える特性を備えているからである。
【0014】
また、本発明に係る絶縁層付き銅箔における硬化済みの樹脂層は、銅箔の回路形成時のエッチングに対して耐食性を有する樹脂硬化物であることが望ましい。使用される樹脂の種類は電気、電子材料用途に使用できるものであれば特に種類は限定されないが、一般的にはエポキシ樹脂を用いることが好ましい。そして、回路形成時のエッチングに対し、硬化済み樹脂層が耐食性を有しないと、形成した回路の剥がれや回路と硬化済み樹脂層との密着強度が確保できなくなるから、実質的に完全硬化させる必要がある。このような硬化済み樹脂層を構成する樹脂硬化物としては、エポキシ樹脂の他、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。さらに、この硬化済み樹脂層は、絶縁性等の電気的特性を考慮すると、半硬化樹脂層と同じ組成であることが望ましいものである。
【0015】
さらに、本発明に係る絶縁層付き銅箔における硬化済み樹脂層の厚さは、1〜50μmであることが好ましい。1μm未満である硬化済み樹脂層であると、回路形成の際に、エッチング液が浸透し易くなる傾向となり、形成した回路の剥離やマイグレーションの発生を生じるおそれがある。一方、50μmを超えると、半硬化絶縁層の曲げ強度が低いため、硬化済み樹脂層及び銅箔を備える面側にカール(反り)を生じる傾向となる。好ましくは5μm〜20μmであることが実用的である。本発明に用いる銅箔は、銅箔、電解銅箔等その種類に特に制限はないものの、いわゆるロープロファイル銅箔でない、一般的な銅箔を使用する場合、接着面となる銅箔粗化面の表面粗度が比較的高いため、その凹凸を完全に被覆する必要があるため、5μm以上の硬化済み樹脂層とするのである。
【0016】
そしてさらに、本発明に係る絶縁層付き銅箔では、銅箔の厚みを硬化済み樹脂層の厚みよりも薄くしておくことにより、硬化済み樹脂層表面と、形成した回路表面との面位置を同じにすることが可能となる。本発明者らの研究によると、ある程度の厚みを有する硬化済み樹脂層を、その厚みより薄い銅箔表面に形成した本発明の絶縁層付き銅箔に対し、回路形成を行い、その回路形成された表面に対してプレスにより押圧すると、当該回路が硬化済み樹脂層の中に埋没する現象を確認したのである。つまり、回路表面と硬化済み樹脂層表面との面位置が同じ、いわゆる平滑基板と呼ばれる状態になるのである。この現象は、硬化済み樹脂層がプレス圧により、半硬化絶縁層側に変形することによるものと考えられる。本発明の絶縁層付き銅箔は、このような平滑基板を形成できることから、低プレス圧により多層プリント配線板を製造することができ、製造される多層プリント配線板の絶縁層厚みを極めて均一にできることになり、絶縁層厚におけるインピーダンスのコントロールが正確に行える。
【0017】
本発明の絶縁層付き銅箔では、硬化済み樹脂層、半硬化絶縁層との総絶縁層厚みは120μm〜35μmのものが実用上好ましい。そして、その場合の各厚みは、硬化済み樹脂層は5〜20μmで、半硬化絶縁層は15〜115μmであることが望ましい。本発明に係る絶縁層付き銅箔では、総絶縁層厚みが120μmを超えると、薄厚の多層プリント配線板を製造することが難しくなり、35μm未満では薄厚の多層プリント配線板を形成し易くなるものの、内層の回路間における絶縁層が薄くなりすぎ、内層の回路間の絶縁性を不安定にする傾向が生じるためである。また、硬化済み樹脂層厚みが5μm未満であると、銅箔粗化面の表面粗度を考慮する必要が生じる。逆に硬化済み樹脂層厚みが20μmを超えると硬化済み樹脂層による効果は特に向上することなく、総絶縁層厚を厚くすることになる。尚、銅箔厚みについては、特に制限はなく、極薄銅箔と呼ばれる9μm厚のものや、キャリア付き銅箔などで使用可能な3μm厚の超極薄銅箔を用いることも当然に可能である。
【0018】
上述した本発明に係る絶縁層付き銅箔を用いて、多層プリント配線板を製造する場合、具体的には、予め銅箔面をエッチングすることにより回路を形成し、保護フィルムを除去した回路形成複合基材を準備し、該回路形成複合基材を複数積み重ねて、加熱加圧すればよい。ここで、加温加圧とは、いわゆるプレス加工をいうものであり、本発明に係る絶縁層付き銅箔に回路形成をして回路付き複合基材を準備し、一方外層側には本発明の絶縁層付き銅箔、他方外層側には電解銅箔を配し、内層には1又は2以上の回路形成複合基材を積層して、一括プレスすることで多層プリント配線板を形成できる。
【0019】
この本発明に係る多層プリント配線板の製造方法では、上記回路形成複合基材に加え、予め回路形成を行ったFR−4等のコア基材を含めて積層することも当然に可能である。本発明に係る絶縁層付き銅箔は、半硬化絶縁層を備えるため、従来製法では必要とされるプリプレグを別途準備する必要もなく、多層プリント配線板の製造を容易にし、且つ生産効率を向上させることができる。さらに、回路を形成した複合基材に対し、その回路表面に導電性バンプを形成し、プリプレグを重ね合わせて加熱圧着すると、プリプレグを導電性バンプで貫通させることができ、いわゆるスルーホール加工を必要としないビルドアップ方式のプリント配線板の製造に適用することも可能である。この場合の導電性バンプは、適度なチクソトロピック性を有し、適正な粘度コントロールがされたAgペースト等で形成することができる。
【0020】
さらに、本発明に係る絶縁層付き銅箔を用いた際のインピーダンスコントロールについて説明する。マイクロストリップ線路を形成した際の特性インピーダンスをコントロールする場合、所定厚みの電解銅箔においては回路間における絶縁層厚が厚いものほどその制御が比較的容易に行えることが知られている。そこで、一般的に知られているマイクロストリップ線路における特性インピーダンスについて、次式を用いてシュミレーションをしたところ、電解銅箔厚20μm(比誘電率εr=3.5)の場合では、インピーダンスZ0=50Ωとするには、回路幅wが20μmの際に絶縁層厚を25μm以上確保することがそのコントロールを容易に行えるものと想定している。つまり、25μm以上あることで、回路幅wに多少の変動が生じても、所望のインピーダンス値とすることができるのである。このことから、本発明に係る絶縁層付き銅箔において、硬化済み樹脂層と半硬化絶縁層との総絶縁層厚みが120μm〜35μmのもの実用的であることは、インピーダンスコントロールに関しても好適なものといえる。
【0021】
【数1】
【0022】
上述した本発明に係る絶縁層付き銅箔は、次のようにして製造することができる。その一つ目の方法としては、銅箔の片面に、硬化済み樹脂層と、不織布または織布の骨格材を有する半硬化絶縁層とを備える絶縁層付き銅箔の製造方法であって、銅箔の片面に、所定厚みの硬化済み樹脂層を形成し、該硬化済み樹脂層へ第一熱硬化性樹脂層を設け、当該第一熱硬化性樹脂層に、骨格材となる不織布または織布を圧着し、圧着した骨格材表面に第二熱硬化性樹脂層を形成し、第一及び第二熱硬化樹脂層を半硬化状態にして半硬化絶縁層を形成し、該半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着する
するものである。
【0023】
この第一の製法を解説すると、まず、銅箔の片面側、通常は銅箔の粗化面側に硬化済み樹脂層を形成する。用いる銅箔は、圧延銅箔、電解銅箔等、特に制限はなく、キャリア付き銅箔を使用することも可能である。キャリア付き銅箔を使用した場合には、本発明に係る絶縁層付き銅箔を運搬等の取り扱い時に生じ得る銅箔表面への異物付着や打傷、汚染等の防止ができ、回路形成のエッチング工程直前まで、銅箔表面への傷の発生を有効に防止することができる。上述したように形成する硬化済み樹脂層の厚みは、1〜50μmであることが好ましい。そして、上述したように、好ましくは5μm〜20μmの硬化済み樹脂層であることが実用的である。一般的な電解銅箔を使用する場合、接着面となる銅箔粗化面の表面粗度が比較的高いため、その凹凸を完全に被覆する必要があるためである。尚、この硬化済み樹脂層の厚さとは、その実質的厚みを平面換算した厚さを意味するものである。
【0024】
この硬化済み樹脂層は、上記したように、銅箔の回路形成時のエッチングに対して耐食性を有する樹脂硬化物であることが望ましく、用いる樹脂の種類は電気、電子材料用途に使用できるものであれば特に種類は限定されない。そして、回路形成時のエッチングに対し、硬化済み樹脂層が耐食性を有しないと、形成した回路の剥がれや回路と硬化済み樹脂層との密着強度が確保できなくなるから、実質的に完全硬化させる必要がある。このような硬化済み樹脂層を構成する樹脂硬化物としては、エポキシ樹脂の他、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。さらに、この硬化済み樹脂層は、絶縁性等の電気的特性を考慮すると、半硬化樹脂層と同じ組成であることが望ましい。そしてさらに、この硬化済み樹脂層を形成する際には、硬化促進剤の種類や量を調整することで、本発明に係る絶縁層付き銅箔を製造する際の生産性を向上できる。
【0025】
そして、硬化済み樹脂層の表面に、半硬化の第一熱硬化性樹脂層を設ける。この第一熱硬化性樹脂層を構成する樹脂としては、熱硬化性を備えた樹脂であり、且つ、電気、電子材料の分野でプリント配線板に使用可能なものであれば特に制限されないが、一般的にはエポキシ樹脂を用いることができる。この第一熱硬化性樹脂層は、溶剤を用いて液体状にしたものを銅箔表面に塗布する方法、又は、半硬化状態の樹脂フィルムをラミネートするように張り付ける方法等により硬化済み樹脂層表面に形成される。溶剤を用いて液体状にする場合は、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を配合し、メチルエチルケトン等の溶剤を用いて粘度調整を行い用いることになる。
【0026】
硬化済み樹脂層表面に形成した第一熱硬化性樹脂層は、半硬化の状態に維持されていなければならない。次に行われる骨格材の圧着を良好に行い、骨格材となる不織布若しくは織布中に一定量の樹脂含浸を促すためである。そのため、硬化済み樹脂層の表面に液体状の樹脂を塗布し、その後、半硬化の状態にする場合には、熱風乾燥器等を用いて乾燥レベル、硬化度を調整する必要がある。
【0027】
硬化済み樹脂層の表面に形成する第一熱硬化樹脂層の厚さは、骨格材である不織布若しくは織布の厚さを考慮して定められる。つまり、第一熱硬化樹脂層の厚さは、不織布若しくは織布の厚さ以下としなければならないのである。第一熱硬化樹脂層の厚さを、不織布若しくは織布の厚さ以上とすると、不織布若しくは織布の圧着の際に、第一熱硬化樹脂層を構成する樹脂が横流れを起こし、設備を汚染することとなり、圧着ロール等を汚染し、その結果として製造される絶縁層付き銅箔に不良を引き起こすためである。尚、この第一熱硬化性樹脂層の厚さとは、その実質的厚みを平面換算した厚さを意味するものである。
【0028】
以上のようにして、硬化済み樹脂層の表面に第一熱硬化性樹脂層が形成されると、続いて、圧着ロール等を用い、骨格材である不織布若しくは織布が第一熱硬化性樹脂層に張り付けられる。この不織布若しくは織布からなる骨格材は、半硬化状態の第一熱硬化樹脂層に、加熱手段を備えた圧着ロールを用い、ロール自体を加熱して、一定レベル以上の押圧を負荷して張り付けるのである。半硬化状態の第一熱硬化性樹脂層を構成している樹脂を、再流動化させ、その再流動化した樹脂の一定量を不織布若しくは織布に含浸させるためである。
【0029】
この骨格材となる不織布若しくは織布は、その材質を特に制限するものではなく、プリント配線板用途に用いることのできるもので、十分な機械的特性を備えていればよい。その中でも、ガラス繊維、アラミド繊維、融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維(以下、単に「全芳香族ポリエステル繊維」と称する。)のいずれかを用いた不織布若しくは織布を用いることが望ましい。ガラス繊維及びアラミド繊維は、いずれもプリント配線板用途においては、長年の使用実績があるものであり、信頼性の高い材料だからである。そして、融点が300℃以上の全芳香族ポリエステル繊維とは、所謂液晶ポリマーと称される樹脂を用いて製造される繊維であり、当該液晶ポリマーは2−ヒドロキシル−6−ナフトエ酸及びp−ヒドロキシ安息香酸の重合体を主成分とするものである。この全芳香族ポリエステル繊維は、低誘電率、低い誘電正接を持つため、電気的絶縁層の構成材として優れた性能を有し、ガラス繊維及びアラミド繊維と同様に使用することが可能なものである。
【0030】
また、この不織布若しくは織布の厚さにも特段の制限はないが、薄厚の多層プリント配線板を製造する場合であっては、厚さ50μm以下の薄い不織布若しくは織布を使用することが好ましい。本発明に係る絶縁層付銅箔の製造方法を採用すれば、厚さ50μm以下の薄い不織布若しくは厚さ20μm以下の織布を用いても破断、破損することが無く、このような非常に薄い骨格材を備えた絶縁層を備えた絶縁層付き銅箔を製造することが可能である。
【0031】
さらに、骨格材の張り合わせが終了した後に、その骨格材表面に第二熱硬化性樹脂層を構成する樹脂を塗布して第二熱硬化性樹脂層を形成する。第一熱硬化性樹脂層と同様に、一般的にはエポキシ樹脂を用いることになる。しかし、この第二熱硬化性樹脂層を構成する樹脂としても、熱硬化性を備えた樹脂で、且つ、電気、電子材料の分野でプリント配線板に使用されるものであれば、第一熱硬化樹脂層と同様に特に制限はない。この第二熱硬化性樹脂層を形成する方法は、上述した第一熱硬化樹脂層を形成する方法を同様に適用できる。
【0032】
そして、この第二熱硬化性樹脂層は、上記回路形成複合基材として積層し、プレス成形することにより多層プリント配線板の構成材料として使用するため、半硬化の状態に維持されていなければならない。また、第二熱硬化樹脂層の厚さは、骨格材である不織布若しくは織布の厚さを考慮して定めればよい。即ち、上述したように第一熱硬化樹脂層の厚さが、不織布若しくは織布の厚さ以下であるため、第一熱硬化樹脂層に骨格材を圧着して、第一熱硬化樹脂層を構成する樹脂が流動させても、第一熱硬化樹脂層を構成する樹脂だけでは骨格材を完全に被覆する状態にはなっていない可能性が高い。そのため、第二熱硬化樹脂層は、少なくとも骨格材の表面を完全に被覆することのできる厚さとして形成することを要する。しかも、第二熱硬化樹脂層に銅箔を直接プレス成形で張り合わせる場合を考慮すると、銅箔の持つ粗化面の凹凸と不織布若しくは織布との直接接触を防止するための、ある一定の厚さが必要である。従って、一般的な電解銅箔を、本発明に係る絶縁層付き銅箔の半硬化絶縁層に直接積層する場合を考慮すれば、第二熱硬化樹脂層の厚さを5.0μm以上とすることが望ましい。この第二熱硬化性樹脂層の厚さとは、その実質的な厚みを平面換算して5.0μm以上であることを意味するものである。
【0033】
このように第二熱硬化性樹脂層を形成した後は、第一及び第二熱硬化樹脂層を半硬化状態にして半硬化絶縁層を形成し、該半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着する。露出した半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着する場合は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を半硬化絶縁層に接触させて、熱ロールにより圧着することで対応できる。
【0034】
次に、二つ目の本発明に係る絶縁層付き銅箔の製造方法としては、銅箔の片面に、硬化済み樹脂層と、不織布または織布の骨格材を有する半硬化絶縁層とを備える絶縁層付き銅箔の製造方法であって、銅箔の片面に、所定厚みの硬化済み樹脂層を形成し、該硬化済み樹脂層へ液状の熱硬化性樹脂層を設け、該熱硬化性樹脂層に骨格材となる不織布または織布を載置して、当該熱硬化性樹脂層の構成樹脂を圧着した骨格材に含浸させて骨格材から滲み出させて、該熱硬化樹脂層を半硬化状態にして半硬化絶縁層を形成し、該半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着するものである。
【0035】
この第二の製造方法を解説すると、まず、銅箔の片面に、硬化済み樹脂層を形成する。そして、その硬化済み樹脂層表面に液体状の熱硬化性樹脂層を設け、その熱硬化性樹脂層の表面に骨格材となる不織布若しくは織布を載置する。続いて、その熱硬化性樹脂層の構成樹脂成分を、当該不織布若しくは織布を構成するガラス繊維、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維のいずれかの繊維の毛細管現象を利用して含浸させ、更に当該不織布若しくは織布の熱硬化性樹脂層との接触面の反対側に滲み出させ、不織布若しくは織布の表面を完全に被覆することで、本発明に係る絶縁層付き銅箔を得るのである。
【0036】
この製造方法の場合、次のような点に考慮して、不織布若しくは織布に樹脂含浸をさせ、そして樹脂による被覆を行うことが好ましい。液体状態の熱硬化性樹脂層は、溶剤を多量に含んでいることが一般的である。そのため、その溶剤を全く除去することなく、液体状態の熱硬化性樹脂層の表面に不織布若しくは織布を載置して、最終的に半硬化状態とすると、硬化済み樹脂層と不織布若しくは織布との間の熱硬化性樹脂層内にバブルが発生する傾向がある。そこで、不織布若しくは織布を熱硬化性樹脂層の表面に載置する前に、バブル発生を防止できるよう一定量の溶剤除去を行うことが好ましい。溶剤の除去は、単に風乾させても、硬化温度以下の温度領域に加熱して行うものであっても構わない。
【0037】
不織布若しくは織布を載置する前に、熱硬化性樹脂層の樹脂成分から溶剤除去を行うことは、いわゆる半硬化状態にすることに他ならない。そのため、半硬化した熱硬化性樹脂層の樹脂を、骨格材を構成する不織布若しくは織布を構成する繊維に、毛細管現象を利用して含浸させ、更に当該骨格材と熱硬化性樹脂層との接触面の反対側に滲み出させるには、硬化温度以下の加熱をして熱硬化性樹脂層の再流動化を行わせることになる。
【0038】
その他、銅箔、硬化済み樹脂層、不織布若しくは織布、熱硬化性樹脂、及び保護フィルム等に関しては、先に説明した第一の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る絶縁層付き銅箔について以下の実施形態に基づいて説明する。
【0040】
第1実施形態:この第一実施形態においては、図1に示す本発明に係る絶縁層付き銅箔を製造する方法について説明する。図1は、本発明に係る絶縁層付き銅箔の概略断面図を示すものであるが、電解銅箔1と半硬化絶縁層3との間に、硬化済み樹脂層2が形成されている。また、この半硬化絶縁層3は、その内部に骨格材4が含まれており、硬化済み樹脂層2と接触する面の反対面側には保護フィルム5が被覆されている。
【0041】
図2には、図1で示した絶縁層付き銅箔の製造フロー概略図を示す。この図2で示す製造方法では、公称厚さ18μmで、硬化済み樹脂層と接合する粗化面4の表面粗さ(Rz)が3.5μmである電解銅箔を用いた場合を例とする。
【0042】
まず最初に、硬化済み樹脂層2の形成に用いたエポキシ樹脂組成物について説明する。この硬化済み樹脂層2を構成する樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、東都化成社製)30重量部、o−クレゾール型エポキシ樹脂(商品名:ESCN−195XL80、住友化学社製)50重量部、エポキシ樹脂硬化剤として固形分25%のジメチルホルムアルデヒド溶液の形でジシアンジアミド(ジシアンジアミドとして4重量部)を16重量部、硬化促進剤として2−エチル4−メチルイミダゾール(商品名:キャゾール2E4MZ、四国化成社製)を0.5重量部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアルデヒドとの混合溶剤(混合比:メチルエチルケトン/ジメチルホルムアルデヒド=4/6)に溶解して固形分60%のものを用いた。
【0043】
そして、図2(A)に示すように、上述のエポキシ樹脂組成物を、前記公称厚さ18μmの電解銅箔1の粗化面に均一に塗布して190℃、30分間、熱処理することで、完全な硬化状態にした。このときのエポキシ樹脂組成物の塗布量は、硬化済み樹脂層2厚さとして5μmとなるようにした。
【0044】
次に、硬化済み樹脂層2の上に形成する第一熱硬化樹脂層6及び第二熱硬化樹脂層7の形成に用いたエポキシ樹脂組成物について説明する。ここでの樹脂は、上記した硬化済みこの硬化済み樹脂層を構成するものと同じものを使用した。但し、半硬化状態に仕上げるため、硬化済み樹脂層2と異なり、硬化促進剤は、2−エチル4−メチルイミダゾール(商品名:キャゾール2E4MZ、四国化成社製)を0.1重量部とした。
【0045】
図2(B)に示すように、この第一熱硬化樹脂層6を形成するエポキシ樹脂組成物を、前記硬化済み樹脂層2の表面に均一に塗布して、室温で30分間放置して、熱風乾燥機を用いて150℃の温風を2分間衝風することで、一定量の溶剤を除去し、第一熱硬化樹脂層6を半硬化状態に乾燥させた。このときのエポキシ樹脂組成物の塗布量は、乾燥後の樹脂厚として40μmとなるようにした。
【0046】
次に、図2(C)に示すように、第一熱硬化樹脂層6の上に、骨格材4となる公称厚さ50μm厚のアラミド繊維の不織布7を張り合わせた。この張り合わせは、形成した第一熱硬化樹脂層6の表面に当該不織布7を重ね合わせて、150℃に加熱し、9kg/cm2のラミネート圧力を掛けることの出来るようにし加熱ロール8の間を、20cm/分の速度で通過させることにより行った。その結果、張り合わせた状態での第1熱硬化樹脂層6と不織布7との合計厚さが平均90μmであった。
【0047】
以上のようにして不織布7の張り合わせの終了に続いて第二熱硬化樹脂層9の形成を行った(図2(D))。ここで、第二熱硬化樹脂層9を構成するために用いたエポキシ樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂層の形成に用いたと同様のものを用いた。
【0048】
図2(D)に示すように、第一熱硬化性樹脂層6に張り合わせた不織布7の上に、上述エポキシ樹脂組成物を均一に塗布して、室温で30分間放置して、熱風乾燥機を用いて150℃の温風を3分間衝風することで、一定量の溶剤を除去し、第二熱硬化樹脂層9を半硬化状態に乾燥させた。このときのエポキシ樹脂組成物の塗布量は、第一熱硬化樹脂層6と不織布7と乾燥後の第二熱硬化樹脂層9の合計厚さが110μmとなるようにした。この第一熱硬化樹脂層6と不織布7と第二熱硬化樹脂層9とが半硬化絶縁層3を構成することになる。そして、総絶縁層厚みは、硬化済み樹脂層と半硬化絶縁層との合計厚である115μmであった。
【0049】
そして最後に、この半硬化絶縁層3の露出した表面に、厚さ50μmの
ポリエチレンテレフタレート製フィルムを重ね、熱ロール(図示せず)により圧着することにより保護フィルム5を被覆し、本発明に係る絶縁層付銅箔を製造した。
【0050】
続いて、上記製造方法とは別の製造法方法について、図3に示す製造フローに基づいて説明する。この図3に基づく製造方法は、半硬化絶縁層を形成する際に、骨格材である不繊布に熱硬化樹脂層の樹脂成分を含浸、浸透させる方法である。そのため、上記図2で示した製造方法と相違する部分について説明を行うものとする。
【0051】
図3の製造フローでは、電解銅箔1の粗化面に硬化済み樹脂層2を形成する工程(図2(A))、及び半硬化絶縁層に保護フィルムを形成する工程(図2(E))とは、図2の場合と同様であるため、省略している。
【0052】
図3(B’)に示すように、電解銅箔1の粗化面に形成された硬化済み樹脂層2の表面に、上記第一熱硬化性樹脂層と同じ組成のエポキシ樹脂組成物を、液体状態で均一に塗布して、室温で30分間放置して、熱風乾燥機を用いて150℃の温風を2分間衝風乾燥することで、一定量の溶剤を除去し、半硬化状態の熱硬化樹脂層60を30μm厚さで形成した。
【0053】
次に、この半硬化の熱硬化樹脂層60の上に、骨格材4となる、公称厚さ30μm厚のアラミド繊維の不織布7を張り合わせた。この張り合わせは、形成した熱硬化樹脂層60の表面に当該不織布7を重ね合わせて、100℃に加熱し、5kg/cm2のラミネート圧力を加えることができるようにした加熱ロール8の間を、50cm/分の速度で通過させることにより緩やかな接着を行わせた(図3(C’))。このとき、不織布7と熱硬化樹脂層60を合わせた合計厚さは60μmであり、不織布7の表面から樹脂の滲み出しはなく、加熱ロール8に樹脂の転写はなかった。
【0054】
このようにして不織布7の張り合わせが終了した後、熱風乾燥機を用いて150℃の雰囲気中に1分間維持することで、熱硬化性樹脂層60を再流動化させ、その熱硬化性樹脂層60の構成樹脂成分を当該不織布7のアラミド繊維の毛細管現象を利用して含浸させ、更に不織布7の熱硬化性樹脂層60との接触面の反対側に滲み出させ、不織布7の表面を完全に被覆するようにした(図3(D’))。この乾燥処理により、熱硬化性樹脂層60と不繊布7とが半硬化絶縁層3を構成することになり、このときの熱硬化樹脂層60と不織布7との乾燥後の合計厚さは45μmであった。この熱硬化樹脂層60と不織布7とが半硬化絶縁層3を構成することになる。そして、総絶縁層厚みは、5μmの硬化済み樹脂層2と半硬化絶縁層3との合計厚である50μmとなった。尚、保護フィルム5の被覆については、図2(E)の説明と同様なため省略する。
【0055】
第2実施形態:この第2実施形態では、上記第1実施形態の図3に基づいて説明した製造方法により得られた絶縁層付き銅箔(銅箔厚18μm、硬化済み樹脂層厚5μm、半硬化絶縁層45μm)を用いて、三層プリント配線板を形成した場合について説明する。
【0056】
図4には、上記した本実施形態の絶縁層付き銅箔を用いて三層プリント配線板を製造する際の製造フロー概略断面を示している。図4(a)に示しているのは、上記図3で説明した製造法により得られた絶縁層付き銅箔100である。まず初めに、保護フィルム5を備えた状態の絶縁層付き銅箔100について、その電解銅箔1に対して一般的なドライフィルムラミネート法を用いて所定回路101の形成を行った(図4(b))。この回路形成には塩化第二銅エッチング液を用い、エッチング後、洗浄、乾燥処理を行った。この回路を形成した回路形成複合基材200を準備した。
【0057】
この回路形成複合基材200の回路形成をした表面について、EPMA分析装置(日本電子株式会社製JXA−8100)により分析を行った。その結果、銅箔をエッチングすることにより露出した硬化済み樹脂層2の表面には、銅成分は全く検出されなかった。また、形成した回路101と硬化済み樹脂層2との密着状態は、回路の剥離等の現象が全く確認されず、その密着強度も実用上問題ないレベルであることが確認された。このようなことから、この回路形成複合基材を用いて多層プリント配線板を形成しても、マイグレーション等の現象は生じないことが予想された。
【0058】
次に、図4(c)に示すよう、保護フィルム5を引き剥がした回路形成複合基材210と絶縁層付き銅箔110、及び公称厚さ18μm、粗化面の表面粗さ(Rz)3.5μmの電解銅箔1とを積層した。この場合、内層側になる回路形成複合基材210と外層側になる絶縁層付き銅箔110とは、内層側にある回路形成複合基材210の回路形成した面と絶縁層付き銅箔110の銅箔1面とが同一方向(図4では上方向)なるように、そして、電解銅箔10はその粗化面を内層側の回路形成複合基材210の半硬化絶縁層3側に対向するように積層した。そして、プレス加工することで三層プリント配線板を製造した(図4(d))。プレス加工は、プレス温度180℃、プレス圧力20kgf/cm2、2時間の熱間プレス条件で行った。
【0059】
その後、両外層に位置する電解銅箔について回路形成を行い、その回路形成部の一部に、炭酸ガスレーザー(照射条件:周波数2000Hz、マスク径5.0mm、パルス幅60μsec、パルスエネルギー16.0mJ、オフセット0.8、レーザー光径120μm)を用いてレーザー穴明け加工を行った(図4(e))。そして、図示は省略するが、周知のスルーホールめっき処理を行うことで、内層回路と外層回路とを相互接続した三層プリント配線板310を形成した。得られた配線板の厚みは、(外層銅箔厚18μm、内層絶縁層厚(50+50)μm、他方外層銅箔厚18μm)136μmとなった。尚、ここでは炭酸ガスレーザーによる穴明け加工を例として説明しているが、YAGレーザーを用いることやドリルによる穴明け加工を行うことも当然に可能である。
【0060】
以上にようにして製造した三層プリント配線板について、半田耐熱性評価
回路引き剥がし強さの評価、配線板曲げ強さ評価を行った。半田耐熱性評価は、JIS C 6481に準拠した方法で、260℃の半田バスに基板片を浸漬し、膨れの発生するまでの時間を測定することにより行った。回路引き剥がし強さの評価は、JIS C 6481に準拠し、0.2mm幅回路について測定した値である。また、配線板曲げ強さ評価は、JIS K 7171に準拠して、評価用絶縁樹脂板の曲げ強度を測定した。この結果、半田耐熱性評価は、600秒以上の耐熱時間が測定された。また、回路引き剥がし強さは、1.2kgf/cmであった。また、曲げ強さは、400MPaであった。この結果から、従来工法により得られる三層プリント配線板と比較しても、実用上何ら遜色のない三層プリント配線板を製造できた。そして、本実施形態の三層プリント配線板は、いわゆるコアレス(コア材を必要としない)であるため、安価で且つ生産性が高く、製造することができた。なお、以上説明したプリント配線板の製造方法は、四層以上の多層プリント配線板の製造に対しても適用可能である。
【0061】
第3実施形態:この第3実施形態では、上記第1実施形態の図3を用いて説明した製法により得られた絶縁層付き銅箔を用いて、平滑基板状とした回路形成複合基材を形成し、三層プリント配線板を形成した場合について、図5を参照しながら説明する。
【0062】
ここで用いた絶縁層付き銅箔100は、9μm厚の電解銅箔1(粗化面の表面粗さRz2.5μm)に15μm厚の硬化済み樹脂層2を形成したもので、その他半硬化絶縁層、保護フィルム等の厚み条件は第二実施形態と同じものとした。また、この絶縁層付き銅箔を用いて形成した回路形成複合基材は、上記第二実施形態で説明した方法と同じであり、この回路形成複合基材200を複数準備した(図5(a)(b))。
【0063】
そして、この回路形成複合銅箔200を、プレス加工の際に用いられるステンレス製の鏡板に挟み込み、半硬化絶縁層が硬化しない温度(約130℃)において熱間プレス(プレス圧力10kgf/cm2、30分間)を行った。このプレス加工により、図5(c)に示すような、回路101が硬化済み樹脂層2に埋め込まれた状態にした。これは、回路101表面と硬化済み樹脂層2表面との面位置が同じとなり、表面が平滑状態の回路形成複合基材220を得た。尚、この回路形成複合基材220の表面についてEPMA分析を行った結果、露出した硬化済み樹脂層2の表面には、銅成分は全く検出されなかった。
【0064】
次に、図4(C)に示すよう、平滑状態の回路形成複合基材220の保護フィルム5を引き剥がした、2つの回路形成複合基材230と、公称厚さ9μm、粗化面の表面粗さ(Rz)2.5μmの電解銅箔とを積層した。この場合、内層側になる回路形成複合基材230と、外層側になる回路形成複合基材230とは回路形成した面が同一方向なるように、電解銅箔1はその粗化面を内層側になる回路形成複合基材230の半硬化絶縁層3側に対向するように積層した。そして、プレス加工することで三層プリント配線板320を製造した。プレス加工は、プレス温度180℃、プレス圧力5kgf/cm2、2時間の熱間プレス条件で行った。
【0065】
このようにして製造した三層プリント配線板320について、その断面観察を行ったところ、図5(e)に示す回路間の絶縁層厚w1は55μmで、w2も55μmであることが判明した。また、多数箇所において回路間の絶縁層厚を調べたところ、どの位置に置いても55±2μmであり、極めて均一な絶縁層厚みが実現されていることが判明した。このことより、本実施形態の平滑基板状の回路形成複合基材を用いれば、回路間の絶縁層厚みを極めて均一な状態に、容易に形成することができ、絶縁層におけるインピーダンスのコントロールが正確に行えるものとなる。
【0066】
比較例:最後に、上記第二及び第三実施形態の比較として、従来法による三層プリント配線板を形成した場合について説明する。まず初めに、厚さ50μmのプリプレグに18μm厚の電解銅箔を積層した片面銅張積層板に形成し、一般的なドライフィルムラミネート法を用いて所定回路101の形成を行った内層コア材400(図6(a))を予め準備した。
【0067】
この内層コア材400を中心にして、厚さ50μmのプリプレグ500をその両面に配し、さらにその外側に18μmの電解銅箔10を重ねて積層した。この積層したものをプレス加工(プレス温度180℃、プレス圧力20kgf/cm2、2時間の熱間プレス条件)を行った(図6(b))。続いて、ドライフィルムラミネート法を用いて、外層側の回路形成を行うことで、三層プリント配線板330を製造した(図6(c))。
【0068】
図6(c)を見ると判るように、従来の製造方法により三層プリント配線板330を製造すると、回路間の絶縁層厚みw1とw2が異なるものとなる。そのため、製造した配線板に若干の反りが認められた。また、この従来の製造方法で、回路間の絶縁層厚みw1とw2を同じするためには、異なる厚みのプリプレグを積層しなければならなく、特に薄厚の三層プリント配線板を製造するためには、可能な限り薄いプリプレグを使用する必要がある。
【0069】
この比較例で示した従来の製造方法による三層プリント配線板の場合と、上記第二及び第三実施形態のものの場合とを比較すると、まず、本実施形態の場合、インピーダンスコントロールの容易な、回路間の絶縁層厚みが均一な多層プリント配線板を実現できることが判る。そして、本実施形態の場合では、コアレスで多層プリント配線板を形成できるため、安価且つ高い生産性を実現できる。さらに、本実施形態の場合では、予め回路形成を行った回路形成複合基材を準備するだけで、多層プリント配線板を一括プレス加工により製造できるので、プレス回数の大幅な低減を図ることが可能となり、取り扱いの容易という利点があるために作業効率の大幅な向上も同時に可能となる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る絶縁層付き銅箔によれば、多層プリント配線板を製造する際のプレス回数を大幅に低減し、かつその取り扱いも容易で、高い生産効率で多層プリント配線板を製造することができるものとなる。また、絶縁層厚みを簡単に調整できるので、薄厚の多層プリント配線板も容易に製造でき、得られた多層プリント配線板の回路間絶縁層厚みも極めて均一にすることが可能となり、インピーダンスのコントロールが正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る絶縁層付銅箔の断面概略図。
【図2】本発明に係る絶縁層付き銅箔の製造フローを表す概略図。
【図3】本発明に係る絶縁層付銅箔の製造フローの一部を表す概略図。
【図4】第2実施形態における三層プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図5】第3実施形態における三層プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【図6】従来の製造方法により三層プリント配線板の製造フローを表す概略図。
【符号の説明】
1 電解銅箔
2 硬化済み樹脂層
3 半硬化絶縁層
4 骨格材
5 保護フィルム
6 第一熱硬化性樹脂層
7 不織布(若しくは織布)
8 圧着ロール
9 第2熱硬化性樹脂層
100 絶縁層付き銅箔
101 回路
200 回路形成複合基材
300 三層プリント配線板
400 内層コア材
500 プリプレグ
Claims (4)
- 銅箔の片面に、硬化済み樹脂層と、不織布または織布の骨格材を有する半硬化絶縁層とを備える絶縁層付き銅箔の製造方法であって、
銅箔の片面に、所定厚みの硬化済み樹脂層を形成し、
該硬化済み樹脂層へ第一熱硬化性樹脂層を設け、当該第一熱硬化性樹脂層に、骨格材となる不織布または織布を圧着し、
圧着した骨格材表面に第二熱硬化性樹脂層を形成し、
第一及び第二熱硬化樹脂層を半硬化状態にして半硬化絶縁層を形成し、該半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着することを特徴とする絶縁層付き銅箔の製造方法。 - 銅箔の片面に、硬化済み樹脂層と、不織布または織布の骨格材を有する半硬化絶縁層とを備える絶縁層付き銅箔の製造方法であって、
銅箔の片面に、所定厚みの硬化済み樹脂層を形成し、
該硬化済み樹脂層へ液状の熱硬化性樹脂層を設け、該熱硬化性樹脂層に骨格材となる不織布または織布を載置して、当該熱硬化性樹脂層の構成樹脂を圧着した骨格材に含浸させて骨格材から滲み出させて、
該熱硬化樹脂層を半硬化状態にして半硬化絶縁層を形成し、該半硬化絶縁層に引き剥がし可能な保護フィルムを付着することを特徴とする絶縁層付き銅箔の製造方法。 - 硬化済みの樹脂層は銅箔の回路形成時のエッチングに対して耐食性を有する樹脂硬化物である請求項1または請求項2に記載の絶縁層付き銅箔の製造方法。
- 硬化済み樹脂層の厚さは、1〜50μmである請求項1〜請求項3いずれかに記載の絶縁層付き銅箔の製造法。
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