JP4254990B2 - プロトン伝導性膜の製造方法及びプロトン伝導性膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池、水電解、湿度センサ、ガスセンサ等に用いられるプロトン伝導性電解質膜等に好適な耐酸化性等に優れた低コスト高耐久性の無機物と有機高分子の複合電解質膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質は高分子鎖中にスルホン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合したり、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜、センサー用電解質膜など各種の用途に利用されているものである。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池はプロトン伝導性の固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を設け、メタン、メタノールなどの低分子の炭化水素を改質することにより得られる水素ガスを燃料ガスとして一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として他方の電極(空気極)へ供給し、電力を得るものである。また、水電解は、固体高分子電解質膜を用いて水を電気分解することにより水素と酸素を製造する方法である。
【0004】
燃料電池や水電解においては、プロトン伝導性の固体高分子膜としてDuPont社、Dow社、旭化成や旭硝子社から提案されているパーフルオロカーボンスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜が化学的安定性に優れていることから、過酷な条件下で使用される電解質膜として使用されている。
【0005】
また、食塩電解は固体高分子電解質膜を用いて塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより、水酸化ナトリウムと、塩素と水素を製造する方法である。この場合、固体高分子電解質膜は塩素と高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液にさらされるので、これらに対する耐性の乏しい炭化水素系電解質膜を使用することができない。そのため、食塩電解用の固体高分子電解質膜には、一般に、塩素及び高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液に対して耐久性があり、さらに、発生するイオンの逆拡散を防ぐために表面に部分的にカルボン酸基を導入したパーフルオロスルホン酸膜が用いられている。
【0006】
ところで、パーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質は、C−F結合を有しているために化学的安定性が非常に高く、上述した燃料電池用、水電解用、あるいは食塩電解用の固体高分子電解質膜の他、ハロゲン化水素酸電解用の固体高分子電解質膜としても用いられ、さらにはプロトン伝導性を利用して、湿度センサ、ガスセンサ、酸素濃縮器等にも広く応用されているものである。
【0007】
しかしながら、フッ素系電解質は製造工程が複雑で、非常に高価であるという欠点がある。又、高耐熱性といっても耐熱限界は100℃を超えない。そのため、フッ素系電解質膜は、宇宙用あるいは軍用の固体高分子型燃料電池等、特殊な用途に用いられ、自動車用の低公害動力源としての固体高分子型燃料電池、民生用小型分散電源、携帯用電源等への応用など低分子の炭化水素を原燃料として水素ガスに改質して用いる場合には、改質ガスを冷却したり改質ガス中の一酸化炭素を除去する必要があるなどシステムを複雑にする要因になっていた。又、電解質膜の使用温度限界が低いためプロトン伝導性が低い、電極反応速度に起因する分極が大きくなる、水の2相領域で運転するために水分管理が複雑になるなどの問題点を持ちこの燃料電池の実現性を阻んできた。
【0008】
そこで、フッ素系電解質膜と同等以上の耐酸化劣化特性を有し、しかも低コストで製造可能な固体高分子電解質膜を得るために、従来から種々の試みがなされている。例えば、特開平9−102322号公報には、フッ化炭素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成される、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜が提案されている。特開平9−102322号公報に開示されているスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−ETFE膜は安価であり、燃料電池用の固体高分子電解質膜として十分な強度を有し、しかもスルホン酸基導入量を増やすことによって伝導率を向上させることが可能とされている。しかしながら、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−ETFE膜は、フッ化炭素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖部分の耐酸化劣化特性は高いが、スルホン酸基を導入した側鎖部分は、酸化劣化を受けやすい炭化水素系高分子である。従って、これを燃料電池に用いた場合には、膜全体の耐酸化劣化特性が不十分であり、耐久性に乏しいという問題がある。
【0009】
また、米国特許第4,012,303号及び米国特許第4,605,685号には、フッ化炭素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた膜に、α,β,β-トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜とした、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE膜が提案されている。これは、前記のスルホン酸基を導入したポリスチレン側鎖部の化学的安定性が十分ではないとの認識を前提に、スチレンの代わりに、部分的にフッ素化したα,β,β-トリフルオロスチレンを用いたものである。しかしながら、側鎖部分の原料となるα,β,β−トリフルオロスチレンは、合成が困難であるため、燃料電池用の固体高分子電解質膜として応用することを考えた場合には、前述のナフィオンの場合と同様に高いコストとなるという問題がある。また、α,β,β−トリフルオロスチレンは重合反応性が低いためグラフト側鎖として導入できる量が少なく、得られる膜の伝導率が低いという問題がある。また、上記した膜はガラス転移点が比較的低く、スルホン酸基がイオン伝導サイトであるために100℃を超えるような水蒸気圧の高い環境では相対湿度が低下すると膜のイオン伝導性が大幅に低下するために高温領域で作動するデバイスには本質的に使用できないという問題点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は従来のフッ素系電解質膜の耐熱限界である100℃以上の温度においても安定なプロトン伝導率と機械強度を維持し、かつ低コストであるプロトン伝導性膜を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、発明者等は無機プロトン伝導性材料に着目し、これと耐熱性有機高分子材料を複合した電解質膜の研究を鋭意行った。その結果、プロトンキャリアとして酸化タングステンや酸化スズの水和物に代表される金属酸化物水和物と、膜を形成するマトリックス材料として耐熱性、耐酸性の高い有機高分子とを複合して電解質膜を形成することによって本発明の目的とするフッ素系電解質と同等以上、もしくは実用上十分な耐劣化特性を有し、しかも低コストで製造可能な高耐久性プロトン伝導性電解質膜を提供できることを見出した。更に電解質膜を製造するにあたり、無機プロトン伝導体の前駆体となる単一又は複数の化合物の溶液、有機物モノマー又はポリマーを少なくとも含有する液状混合物を膜状に成し、これを硬化又は架橋させた後、無機プロトン伝導体の前駆体をプロトン伝導体に転換させるための薬剤を含む溶液ないしガスを含む気体で処理し、膜中に無機固体プロトン伝導体を形成させる方法を見出した。このような方法を採用することにより、非相溶性の膜を形成するマトリックス材と無機固体プロトン伝導体を微少にかつ均一に分散でき、分散濃度を高めることが可能となり、100℃程度の高温領域でも十分に高いイオン伝導性を有する無機プロトン伝導体と有機高分子の複合電解質膜が実現できる事を発明するに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様は、以下に詳しく説明する。
【0013】
本発明によるプロトン伝導性膜は、無機プロトン伝導体の前駆体となる単一又は複数の化合物の溶液、有機物モノマー又はポリマーを少なくとも含む液状混合物を膜状に成し、これを硬化又は架橋させた後、該無機プロトン伝導体の前駆体をプロトン伝導体に転換させるための薬剤を含む溶液ないしガスを含む気体で処理し、膜中に無機固体プロトン伝導体を形成させて実現される。本発明において100℃以上で機能する無機プロトン伝導体としては酸化タングステン水和物、スズ酸化物水和物あるいは酸化タングステン水和物にニオブをドープした酸化タングステン水和物などを用いることができ、これらのプロトン伝導体の単一成分あるいは複数の成分を混合して用いることができる。有機高分子膜を形成する材料としては耐熱性、耐酸性、可撓性を有する材料であれば特に限定はないが、ポリイミド系材料、エポキシ系材料、ポリエーテルアクリレイト系材料は好ましい材料である。プロトン伝導膜を作成するにあたり、プロトン伝導体の前駆体としては塩化物、硫酸塩、各種アルコキシド、及び有機酸、アミン系錯体などの形態のものから前記した有機高分子膜前駆体との相溶性を持つものが選ばれる。プロトン伝導性電解質膜は1)マトリックスとなる有機高分子材料の溶液もしくは前駆体の溶液と、その溶液に対して相溶性を持つプロトン伝導体前駆体、また必要に応じて適当な分散剤とを混合して均一系を作製するステップ、2)均一混合系に硬化剤或いは重合触媒を添加するステップ、3)均一混合系を膜状にキャステイングし、膜化するステップ、4)作製された膜のプロトン伝導体前駆体を酸化物水和物に変換するステップを経て作製される。膜化するステップでは有機高分子膜が十分な強度と可撓性が与えられる方法であれば特に限定はなく有機高分子膜前駆体の特性に依存する熱硬化、架橋重合、光重合などの反応が選択される。又プロトン伝導体前駆体への変換は酸化タングステン水和物、スズ酸化物水和物あるいは酸化タングステン水和物にニオブをドープした酸化タングステン水和物など酸化物水和物を得ることが目的であり特定の反応に限定されることはないが、用いられた前駆体が塩化物、硫酸塩、各アルコキシド類の場合には酸性水溶液或いはアルカリ性水溶液による加水分解など、前駆体が有機酸錯体や過酸化水素錯体である場合には40〜100℃の比較的低温域で熱分解した後水溶液や蒸気に接触させて賦活する方法などが有効である。
【0014】
本発明によるプロトン伝導性電解質を燃料電池用として使用する際には、一般的には、膜の状態で使用されるが、これに限定されるものではなく筒状で用いることも可能である。すなわち、上記したプロトンキャリアとなる無機酸化物水和物と高分子マトリックス材の分散混合物を直接膜状にキャステイングする方法、あるいは該分散混合物を多孔質芯材、織布あるいは不織布などに含浸キャステイングするなどの方法を採る事ができる。特に芯材を用いる方法は、芯材に高強度のものを用いる事で得られる膜を薄くできることから電解質膜の実行抵抗を小さくする上で有利である。又、本発明により作製されたプロトン伝導性電解質膜を使用するにあたって、有機溶媒で表面の有機マトリックス材のみを溶解によって一部除去したり膜の表面を一部研磨するなどの表面処理を施すことは電極との接触抵抗を低減する上で有効な方法である。
【0015】
本発明によるプロトン伝導性電解質膜の厚みは、特に制限はないが実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減のためには200μmより薄い方が好ましく、特に燃料電池電池の内部抵抗を小さくしたりセンサーとしての感度を高めるためには10〜30μmがより好ましい。膜厚は、均一混合系の粘度あるいは基板上へのキャスト厚みにより制御できる。又、本発明によるプロトン伝導性電解質を製造する際に、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、等の添加剤を本発明の目的に損なわない範囲内で使用することもできる。
【0016】
燃料電池用として用いる膜/電極接合体に使用されるガス拡散電極は、触媒金属の微粒子を担持した伝導材を電解質膜上に塗布又は予め膜状に成形した電極層を貼り合わせるなどにより構成されるものであり、必要に応じて撥水剤や結着剤が含まれていてもよい。また、触媒を担持していない伝導材と撥水剤や結着剤とからなる層が、触媒層の外側に形成してあるものでもよい。このガス拡散電極に使用される触媒金属としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。このような触媒の中で、特にカソードでは白金が、アノードでは白金とルテニウムの二元系が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は10〜300オングストロームである。触媒の担持量は、電極が成形された状態で例えば0.01〜10mg/cm2 が望ましい。
【0017】
伝導材としては、電子伝導性物質であればいずれのものでも良く、例えば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛などが挙げられ、これらが単独あるいは混合して使用される。撥水剤としては、例えばフッ素化カーボンやポリテトラフルオロエチレン分散剤などが使用される。触媒層を形成するバインダーとしては本発明のプロトン伝導性電解質マトリックス高分子をそのまま用いることが好ましいが、他の各種樹脂を用いても差し支えない。その場合は撥水性を有する含フッ素樹脂が好ましく、特に耐熱性、耐酸化性の優れたものがより好ましく、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。
【0018】
燃料電池用として用いる電解質膜と電極接合法についても特に制限はなく、公知の方法を適用することが可能である。膜/電極接合体の製作方法として、例えば、白金触媒紛をポリテトラフルオロエチレン懸濁液と混ぜ、カーボンペーパーに塗布、熱処理して触媒層を形成する。次いで、電解質膜と同一の電解質溶液又は前駆体溶液を触媒層に塗布、含浸し、電解質膜とホットプレスで一体化する方法がある。この他、 本発明になる電解質膜又は電解質膜前駆体の溶液を予め白金触媒紛にコーテイングしたものを電解質膜に塗布する方法、本発明になる電解質膜又は電解質膜前駆体の溶液と触媒とでペースト化して電解質膜に塗布する方法、電解質膜に電極を無電解鍍金する方法、電解質膜に白金族の金属錯イオンを吸着させた後、還元する方法等を選択することができる。
【0019】
燃料電池は、上記のように形成された電解質膜とガス拡散電極との接合体の外側に燃料流路と酸化剤流路を形成する溝付きの集電体としての燃料配流板と酸化剤配流板を配したものを単セルとし、構成の概略を図1に示す。単セルの電圧は外部負荷を与えた状態で作動温度によって異なるが概ね0.5〜0.8Vであり、単セルを必要とする電圧に対応して複数個、冷却板等を介して積層することによりスタックが構成される。燃料電池は、高い温度で作動させる方が電極触媒が高活性となって電極過電圧が減少し、電極の一酸化炭素による被毒も少ないため好ましい条件であるが、プロトン伝導性電解質膜は水和状態にないと十分に機能しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。本発明によるプロトン伝導性電解質は従来の電解質膜に比較して高温での特性に優れており、燃料電池の作動温度が100℃以上であっても十分に機能するのが特徴である。
(実施例)
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
(実施例1)
本発明の実施例として酸化タングステン水和物/エポキシ樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。金属タングステン粉末10gを30%過酸化水素水に反応させながら溶解して前駆体となる過酸化ポリタングステン酸を作製する。得られた水溶液に5Nの苛性ソーダ(NaOH)水溶液を加えてポリ酸を完全に分解した後、6N塩酸を加えて黄色不透明沈殿物を得る。この沈殿物をろ過し、デシケ−タ中で乾燥させた。上記の方法で得られた乾燥粉末10gに400mlの純水を添加し30分間攪拌し24時間放置した。粉末が沈降し完全に分離状態となった溶液の上澄み液を捨て、新たに同量の純水を添加した。同様の洗浄操作を6回繰り返し、未反応原料に由来する不純物イオンを取り除いた。洗浄後の酸化タングステン水和物5gに新たに純水500mlを加えて溶液Aとし、溶液Aを攪拌した。攪拌を停止した5分後に溶液Aの液表面から溶液50mlをスポイトにて採取した。採取した溶液Aを500℃の噴霧式高温乾燥炉にて急速乾燥させた。噴霧式高温乾燥炉は上方から溶液を霧状に噴霧し、溶液粒子が下降する間に周囲に設置されたヒーターで溶媒を蒸発させる炉である。ここで得られた酸化タングステン水和物を電子顕微鏡で観察したところ、最大粒子直径が76nmの微細粒子であった。膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイト(昭和高分子製)を選択し、主剤1g、硬化剤1gに酸化タングステン水和物を2g加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。室温で24時間硬化させた後研磨テープ(LT−C2000;富士写真フィルム製)で両面を均一に約20μm程度研磨して約30μm厚みに仕上げて酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜とした。
【0020】
次に、白金・ルテニウム担持炭素触媒に乾燥重量で電解質量が触媒量の60wt%に相当する5重量%のナフィオン117アルコール水溶液(水、イソプロパノール、ノルマルプロパノールが重量比で20:40:40の混合溶媒:Fluka Chemika社製)を添加してペースト状に混練したものを上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズで塗布し60℃で3時間乾燥してアノードを形成した。得られたアノードの白金担持量は約0.5mg/cm2であり、ルテニウム担持量は約0.5mg/cm2であった。形成された電解質膜の反対側の面に、白金担持炭素粉末触媒に乾燥重量でナフィオン117が触媒量の60wt%相当の5重量%のナフィオン117アルコール水溶液を添加しペースト状に混練したものを乾燥時の厚さが15μmとなるようにアノードと重なるように塗布して60℃で3時間乾燥しカソードを形成し電解質膜/電極接合体を作製した。得られたカソードの白金担持量は約0.3mg/cm2であった。
(実施例2)
本発明のもう1つの実施例によるニオブをドープした酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。
金属タングステン粉末10gと金属ニオブ粉末500mgを30%過酸化水素水に反応させながら溶解して前駆体となる過酸化ポリタングステン酸と過酸化ポリニオブ酸水溶液をそれぞれに作製する。得られた水溶液を金属比が(Nb/(W+Nb))=0.005となるように混合し、これに5Nの苛性ソーダ(NaOH)水溶液を加えてポリ酸を完全に分解した後、6N塩酸を加えて黄色不透明沈殿物を得る。この沈殿物をろ過し、デシケ−タ中で乾燥させた。上記の方法で得られた乾燥粉末10gに400mlの純水を添加し30分間攪拌し24時間放置した。粉末が沈降し完全に分離状態となった溶液の上澄み液を捨て、新たに同量の純水を添加した。同様の洗浄操作を6回繰り返し、未反応原料に由来する不純物イオンを取り除いた。洗浄後のニオブをドープした酸化タングステン水和物5gに新たに純水500mlを加えて溶液Bとし、溶液Bを攪拌した。攪拌を停止した5分後に溶液Bの液表面から溶液50mlをスポイトにて採取した。採取した溶液Bを500℃の噴霧式高温乾燥炉にて急速乾燥させた。ここで得られたニオブをドープした酸化タングステン水和物を電子顕微鏡で観察したところ、最大粒子直径が73nmの微細粒子であった。膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイトを選択し、主剤1g、硬化剤1gにニオブをドープした酸化タングステン水和物を2g加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。室温で24時間硬化させた後研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μm厚みに仕上げてニオブドープ酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜とした。
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズのニオブドープ酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例3)
本発明のもう1つの実施例による酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)17.5gを50mlの水に溶解して60℃に加熱して加水分解した。これにアンモニア水を加えて100℃で1時間加熱、熟成し、得られた沈殿物をろ過し、乾燥させてプロトン伝導性のスズ酸化物水和物(SnO2・nH2O)を得た。熱重量変化測定からnは約1.7であった。
【0021】
作製した酸化スズ水和物10gに400mlの純水を添加し30分間攪拌し24時間放置した。沈降、分離した酸化スズ水和物の上澄み液を採取して捨て、新たに同量の純水を添加した。同様の洗浄操作を6回繰り返し、未反応原料に由来する不純物イオンを取り除いた。洗浄後の酸化スズ水和物5gに新たに純水500mlを加えて溶液Cとし、溶液Cを攪拌した。攪拌を停止した5分後に溶液Cの液表面近傍から溶液50mlをスポイトにて採取した。採取した溶液Cを500℃の噴霧式高温乾燥炉にて急速乾燥させた。ここで得られた酸化スズ水和物を電子顕微鏡で観察したところ、最大粒子直径が75nmの微細粒子であることが分かった。膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイトを選択し、主剤1g、硬化剤1gに酸化スズ水和物を2g加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。室温で24時間硬化させた後研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μm厚みに仕上げて酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜とした。
【0022】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例4)
本発明のもう1つの実施例による酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。金属タングステン粉末1gを30%過酸化水素水に反応させながら溶解して前駆体となる過酸化ポリタングステン酸を作製する。得られた水溶液に5Nの苛性ソーダ(NaOH)水溶液を加えてポリ酸を完全に分解した後、6N塩酸を加えて黄色不透明沈殿物を得る。この沈殿物をろ過し、デシケ−タ中で乾燥させた。上記の方法で得られた乾燥粉末1.2gを5Nの苛性ソーダ水溶液1.2mlに加えて前駆体溶液とした。次に、膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイトを選択し、主剤2g、硬化剤2gに上記した前駆体溶液0.6mlとアセトン0.3mlを加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。キャステイング後室温で24時間静置しスライドガラスから剥離させて前駆体膜とした。この膜を3N塩酸水溶液中に約24時間浸漬した後蒸留水で洗浄を繰り返して黄色不透明の酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜を得た。得られた厚さ約70μmのプロトン伝導性電解質膜を研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μmの厚みとした。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は71nmであった。
【0023】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例5)
本発明のもう1つの実施例によるニオブをドープした酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。金属タングステン粉末1gと金属ニオブ粉末50mgを30%過酸化水素水に反応させながら溶解して前駆体となる過酸化ポリタングステン酸と過酸化ポリニオブ酸水溶液をそれぞれに作製する。得られた水溶液を金属比が(Nb/(W+Nb))=0.005となるように混合し、これに5Nの苛性ソーダ(NaOH)水溶液を加えてポリ酸を完全に分解した後、6N塩酸を加えて黄色不透明沈殿物を得る。この沈殿物をろ過し、デシケ−タ中で乾燥させた。上記の方法で得られた乾燥粉末1.2gを5Nの苛性ソーダ水溶液1.2mlに加えて前駆体溶液とした。次に、膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイトを選択し、主剤2g、硬化剤2gに上記した前駆体溶液0.6mlとアセトン0.3mlを加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。キャステイング後室温で24時間静置しスライドガラスから剥離させて前駆体膜とした。この膜を3N塩酸水溶液中に約24時間浸漬した後蒸留水で洗浄を繰り返して黄色不透明のニオブをドープした酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜を得た。得られた厚さ約70μmのプロトン伝導性電解質膜を研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μmの厚みとした。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は70nmであった。
【0024】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズのニオブをドープした酸化タングステン水和物/エポキシ系樹脂プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例6)
本発明のもう1つの実施例による酸化スズ水和物/ポリアミド複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。ジメチルアセトアミド0.3mlに酸化物水和物の前駆体として塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)1.0gを添加、攪拌して透明な粘性液体を作製する。この液体と、ポリアミド酸ワニス(ポリアミド酸の20wt%N−メチルピロリドン溶液;宇部興産製)4.0gを混合、攪拌して薄い褐色透明の粘性溶液を作製する。この溶液をガラス基板上にキャステイングし、空気雰囲気、80℃で1時間熱処理をした。その空気雰囲気下、130℃、160℃、200℃で各1時間ずつキャステイング膜の熱処理を行い、さらに完全な溶媒除去、脱水イミド化を進めるため、200℃のまま真空状態として10時間ほど保持し、半透明黄色のプロトン伝導性電解質前駆体膜を作製した。得られた前駆体膜を研磨テープで両面を均一に約10μm程度研磨した後、25wt%アンモニア水溶液に20分浸漬した。前駆体膜が白濁したところで取り出し、蒸留水で4〜5回洗浄して厚さ約30μmの酸化スズ水和物/ポリアミド複合プロトン伝導性電解質膜を得た。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は74nmであった。
【0025】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/ポリアミド複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例7)
本発明のもう1つの実施例による酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイト(昭和高分子製)を選択し、この硬化剤である変性ポリチオール370mgに酸化スズ水和物の前駆体となるトリ-N-ブチルスズトリメトキサイド370mgを添加し攪拌すると粘性のある透明液体が生成する。これをアラルダイトの主材である変性エポキシ樹脂に添加、混合して粘性のある均一液体し、平滑なポリテトラフルオロエチレン板上に硬化時の厚さが約70μmとなるようにアプリケーターでキャステイングする。このキャステイング膜を空気中60℃で3時間硬化反応を進める。得られた前駆体膜を25wt%アンモニア水溶液に1時間浸漬し、その後取り出して蒸留水で4〜5回洗浄して厚さ約70μmの酸化スズ水和物/エポキシ系マトリックス複合プロトン伝導性電解質膜を得た。このプロトン伝導性電解質膜を研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μm厚みに仕上げた。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は72nmであった。
【0026】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(実施例8)
本発明のもう1つの実施例による酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。ポリエーテルアクリレートはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをモル比で4:1の比率でランダムに共重合させたオリゴマーの末端をアクリル酸で変成したものである。このポリエーテルアクリレート1gに酸化スズ水和物の前駆体となるトリ−N−ブチルスズトリメトキサイド1gを添加し攪拌すると粘性のある液体が調製する。この液体にベンゾイルパーオキサイドを重合開始剤として添加、混合して平滑なポリテトラフルオロエチレン基板上にアプリケーターでキャステイングし、加熱処理して厚さ50μmの前駆体膜を得た。この前駆体膜を25wt%アンモニア水溶液に20分浸漬し、白濁していた前駆体膜が黄色に変化したところで取り出して蒸留水で4〜5回洗浄して厚さ約50μmの酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜を得た。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は75nmであった。
【0027】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は実施例1と同様である。
(比較例1)
本発明の1つの比較例として酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。プロトン伝導体の原料として塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)17.5gを50mlの水に溶解して60℃に加熱して加水分解する。これにアンモニア水を加えて100℃で1時間加熱、熟成する。得られた沈殿物をろ過し、乾燥させてプロトン伝導性のスズ酸化物水和物(SnO2・nH2O)を得た。熱重量変化測定からnは約1.7であった。
【0028】
次に、エーテルアクリレートオリゴマー10gに上記で得られたスズ酸化物水和物(SnO2・nH2O)粉末を5g加えて高速回転混合機で約2分間混合した。これに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを加え更に高速回転混合機で混合し、その後に約0.1wt%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイドを界面活性剤として加えてスライドガラス上にキャステイングした。キャスティング膜を加熱処理し、酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜とした。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は1.1μmであった。
【0029】
次に、白金・ルテニウム担持炭素触媒に乾燥重量で電解質量が触媒量の60wt%に相当する5重量%のナフィオン117アルコール水溶液を添加してペースト状に混練したものを上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/ポリエーテルアクリレート系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズで塗布し60℃で3時間乾燥してアノードを形成した。得られたアノードの白金担持量は約0.5mg/cm2であり、ルテニウム担持量は約0.5mg/cm2であった。形成された電解質膜の反対側の面に、白金担持炭素粉末触媒に乾燥重量でナフィオン117が触媒量の60wt%相当の5重量%のナフィオン117アルコール水溶液を添加しペースト状に混練したものを乾燥時の厚さが15μmとなるようにアノードと重なるように塗布して60℃で3時間乾燥しカソードを形成し電解質膜/電極接合体を作製した。得られたカソードの白金担持量は約0.3mg/cm2であった。
(比較例2)
本発明のもう1つの比較例として酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜の作製方法を以下に説明する。膜マトリックス材となるエポキシ系樹脂としてアラルダイト(昭和高分子製)を選択し、主剤1g、硬化剤1gに比較例2の方法で合成したプロトン伝導性のスズ酸化物水和物(SnO2・nH2O;n〜1.7)を2g加えて均一になるように混合し、スライドガラス上に硬化時の厚さが約70μmになるようにアプリケータでキャステイングした。室温で24時間硬化させた後研磨テープで両面を均一に約20μm程度研磨して約30μm厚みに仕上げて酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜とした。膜断面を電子顕微鏡にて確認したところ、膜中に存在する粒子の最大直径は1.0μmであった。
【0030】
次に、上記で得られた60mm×60mmサイズの酸化スズ水和物/エポキシ系樹脂複合プロトン伝導性電解質膜上に30mm×30mmのサイズの電極を形成した。形成手法、電極組成は比較例1と同様である。
【0031】
上記の手法で作製した各実施例および比較例にPTFEで撥水処理したカーボンペーパをアノード、カソード電極面に配置し、ガス流路溝を加工した高密度カーボン製で挟み所定の締付け圧力を加えた状態でボルトを用いて全体を固定し、試験用セルを作製した。この試験セルを恒温槽にセットし、加熱のためのヒーター機能を有するガス供給ラインと、出口圧力調整弁と温度保温用ヒーターを有するガス出口ラインをそれぞれ接続し、液体用マスフローコントローラでセルに水を供給した。供給された水を加熱ヒーターにより昇温しさらに出口ラインのヒーターおよび恒温槽の温度と圧力調整弁を調整することにより、水蒸気圧・温度を試験設定値に保ち、その状態でセルの伝導率を交流測定法にて評価した。この場合の測定値にはカーボンセパレータ、カーボンペーパー、電極などの伝導率や各材料の接触抵抗が含まれているためブランクセルを別に作製し、同条件で評価しリファレンスとした。
【0032】
図2に実施例および比較例における飽和蒸気圧下での電解質膜伝導性の温度依存性を示した。さらに図3は150℃におけるイオン伝導率の水蒸気圧依存性を示した。
【0033】
50℃から150℃における測定温度領域では比較例1および2のイオン伝導率は150℃において最も高い値を示したが10-3S/cm程度にとどまった。さらにその水蒸気圧依存性は大きく、水蒸気分圧0.2の条件ではイオン伝導率が10-4S/cm以下へ大幅に低下した。これは、比較例1および2を高伝導率の状態に維持するためには水蒸気分圧を高く保たねばならず、その結果高圧力に耐えるシステムが必要になることを示している。
【0034】
図1に示される通り実施例1の150℃におけるイオン伝導率は10-2S/cmで比較例よりも一桁程度の向上が確認できた。これは膜中のイオン伝導体を小粒径化し高分散させた効果と考えられる。一方実施例2は150℃で2×10-2S/cmとなり実施例1を上回るイオン伝導率が確認された。実施例1と2はイオン伝導体のベース材料が同じ酸化タングステン酸化物であるが、実施例2ではニオブのドーピング処理を施している。ニオブを添加することで酸化タングステン水和物系のプロトン伝導膜特性に好ましい影響を与えることが示唆された。
【0035】
さらに実施例3の飽和水蒸気圧下150℃におけるイオン伝導率は2×10-2S/cm以上であった。また150℃未満の温度領域においても実施例3は実施例1および2よりも高い伝導率で推移している。一方図3より、実施例3はイオン伝導率の水蒸気圧依存性が小さく、水蒸気圧分圧が0.2の条件でも3×10-3S/cm以上の伝導率を維持している。これは実施例3に用いた酸化スズ水和物がプロトンを伝導させやすいという性質とともに、水和水が脱離しにくい特性を有するため水蒸気分圧が低い環境でも高伝導率を示すと考えられる。
【0036】
実施例4および5はそれぞれ実施例1および2と用いたプロトン伝導体が同一であり、膜中の分散粒子径も80nm以下でほぼ等しい。図2および図3よりそのイオン伝導率、伝導率の水蒸気圧依存性もほぼ同じ結果が得られている。しかし実施例4は、用いた出発物質に含まれるタングステンの92.3%が最終的に作製したプロトン伝導膜中に含まれるのに対し、実施例1の作製法では原料に用いたタングステンの2.04%しかプロトン伝導膜に使用できず、残りは作製途中で廃棄されている。さらに実施例1は実施例4に比較し、粒径80nm 以下の酸化タングステン水和物を作成する過程での酸化タングステン水和物溶液からの上澄み液分取や、噴霧式高温乾燥炉を用いる乾燥処理などの工程が加わっている。いいかえれば実施例4は実施例1と比較し、同様の特性を有するイオン伝導性膜をより効率的にかつ大幅に低コスト工程で作製した材料といえる。上記はイオン伝導体のタングステンにニオブをドープした実施例5についても該当する。
【0037】
実施例6,7,8は図2および3に示される通り、実施例3とほぼ同様の伝導率特性を示している。これらの実施例はイオン伝導体に酸化スズ水和物を用いており、膜中の粒径も80nm以下である。しかし実施例3は原料に用いたスズの3.45%しかプロトン伝導膜に使用できず、残りは作製途中で廃棄されている。ここで実施例6,7,8はそれぞれ出発物質に含有されるスズの92.3,91.5,93.2%が最終的に得られたプロトン伝導膜に含まれている。さらに実施例3はスズ水和酸化物を作成する過程で塩化スズ水溶液の作製、加熱、アンモニア水の添加、その後の濾過、洗浄および乾燥の工程が必要であるのに対し、実施例6,7,8では膜を形成してからの加水分解反応が必要となるものの原料となるスズ化合物を溶液状態で有機材料中に直接分散させることが可能で上記の複数の工程を省略できる。すなわち実施例6,7,8は実施例3に比較して同等の特性を有するプロトン伝導性膜でありながらその原料・作製コストを大幅に低減できる。
【0038】
以上より本実施例はプロトン伝導体である金属酸化物水和物と膜の有機高分子材料の耐熱性が良好であるため150℃で安定した伝導性が確保できることが分かった。さらに酸化物水和物前駆体の形で均一膜を作製しその後加水分解で金属酸化物水和物を生成させることにより、膜中のプロトン伝導体の分散が大幅に高まる。よってプロトン伝導性を従来よりも向上させることができる。さらにはスズ水和酸化物を用いることにより伝導性の水蒸気圧依存性を減少させることが可能となる。また、本製造方法と本材料を用いるプロトン伝導性膜は製造コストを従来よりも大幅に低減できる。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係るプロトン伝導性を有する金属酸化物水和物と有機高分子の複合電解質は従来のそれより高温でも十分高いイオン伝導性を有する。また本発明に係る方法によれば、従来のそれよりも低コストでかつ高温でも十分高いイオン伝導性を有するプロトン伝導体膜を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる固体高分子型積層燃料電池の単位構成を示す図である。
【図2】本発明に関わる電解質膜の飽和水蒸気圧でのイオン伝導率の温度依存性を示す実験結果である。
【図3】本発明に関わる電解質膜の150℃におけるイオン伝導率の水蒸気圧分圧依存性を示す実験結果である。
【符号の説明】
1,2…セパレータ、3…カソード側カーボンペーパー、4…アノード側カーボンペーパー、5…電解質膜、6…カソードガス流路、7…アノードガス流路。
Claims (1)
- プロトン伝導性膜の製造方法において、少なくとも、酸化タングステン水和物若しくは酸化スズ水和物又はニオブをドープした酸化タングステン水和物を含む無機プロトン伝導体の前駆体となる単一又は複数の化合物の溶液、有機物モノマー又はポリマーを含む液状混合物を膜状に成し、これを硬化又は架橋させた後、該無機プロトン伝導体の前駆体を酸性水溶液若しくはアルカリ性水溶液又は蒸気で処理し、膜中に無機固体プロトン伝導体を形成させることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法。
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