JP4224906B2 - シリコン単結晶の引上げ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、単に「CZ法」という)によってシリコン単結晶を引上げる方法に関し、さらに詳しくは、シリコン単結晶を引上げる際に、種結晶を無転位化するネッキング部を太く、かつ効率的に形成し、大重量の単結晶であっても引上げが可能なシリコン単結晶の引上げ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単結晶の製造方法は種々あるが、なかでも、シリコン単結晶の引上げに関し、工業的に量産が可能な方式で広く応用されているものとしてCZ法がある。
【0003】
図1は、このCZ法によるシリコン単結晶の引上げ装置の構成を説明する縦断面図である。シリコン単結晶の育成はチャンバー9の容器内で行われ、その中心位置に坩堝1が配される。この坩堝1は、石英製の内層保持容器1aとこの外側に嵌合された黒鉛製の外層保持容器1bとから構成されている。坩堝1の外層保持容器1bの底部には、坩堝1を回転、並びに昇降させる軸8が設けられている。そして、坩堝1の外周には、ヒーター2が同心円筒状に配設され、坩堝1内にはこの加熱ヒーターにより溶融された結晶原料、つまり多結晶シリコンの融液3が収容されている。さらに、ヒーター2の外側には保温筒7が周設されている。
【0004】
坩堝1の上方には、チャンバー9の上部に連設形成された小型の円筒形状のプルチャンバー10を通して、引上げ軸4が回転、並びに昇降可能に垂設されており、引上げ軸4の下端には種結晶6がシードチャック5に着脱可能に装着されている。そして、この種結晶6の下端を融液3の表面に接触させた後、種結晶6を坩堝1の回転と反対方向に回転させつつ上昇させることにより、種結晶6の下端から単結晶を成長させていく。
【0005】
図1に示すように、シリコン融液3の表面に種結晶6を接触させると、その熱的衝撃に起因して、種結晶に高密度の転位が発生する。そこで、シリコン単結晶を無転位の状態で引き上げるために、種結晶6の下方にネッキング部を設けて、いわゆるダッシュ法によって、発生した転位を結晶表面から排除し、ネッキング部の下端に無転位の結晶を凝固させつつ引き上げていくようにする。
【0006】
図2は、CZ法による引上げの際に種結晶の下方に設けられるネッキング部の形状を示す図である。通常、シリコン単結晶の引上げの際に形成されるネッキング部6nは、図2に示すように、シリコン融液3の表面に種結晶6を接触させたのちに種結晶6を引き上げて、その下端部を徐徐に細く絞り込んで減径部(テーパー部)を形成し、次いで所定直径の定径部を成長させる。そのため、ネッキング部6nは、減径部と定径部とから構成される。一般的に、シリコン単結晶を無転位化させるためには、ネッキング部6nの定径部は直径が約3mmφ以下で、長さ30mm以上が必要とされている。
【0007】
ところが、近年の半導体用ウェーハの効率生産にともなう要請から、引上げられるシリコン単結晶の大口径化および長尺化の必要性が増加している。そのため、今日におけるシリコン単結晶サイズの主流は8インチ結晶となっており、これを所定の引上げ長さで製造しようとすると、単結晶の総重量は100kgを超えるようになる。さらに、効率生産を目指すために開発が進められている12インチ結晶では、引上げられる単結晶の重量が300kgを超えることが想定される。
【0008】
シリコン単結晶の引上げの際には、単結晶の重量はネッキング部で支持され、単結晶の総重量はネッキング部の定径部に加わることになる。シリコン単結晶の機械的性質から算定すると、上述のように、300kgを超える大重量の結晶を保持する場合には、ネッキング部の定径部では、直径で4.5mmφ以上確保する必要があり、さらに、引上げ過程での振動、衝撃を考慮すると、安全性を加味して直径6.0mmφが必要になる。ネッキング部がこれらの強度を具備できない場合には、単結晶の引上げ段階において、ネッキング部が切断する可能性が高く、そのためにシリコン単結晶が落下するという重大事故に結び付くことが想定される。
【0009】
このような問題を解決するために、特開平7−300388号公報では、種結晶と定径部の直径比、種結晶の直径とテーパ部の長さの比および定径部の長さ等の種結晶部分から絞り部下端までの形状を特定することによって、絞り部分の強度を向上させ、大口径で大重量となるシリコン単結晶を引上げることができる方法が提案されている。しかし、提案の方法では、単に絞り部分の形状を特定するだけで、絞り部分を形成する際の引上げ速度やシリコン融液の温度については規定されておらず、実際の引上げに適用できるか否かは不明確である。
【0010】
さらに、特開平5−43379号公報では、大重量のシリコン単結晶を容易に引上げることが可能な製造方法として、シリコン単結晶の種絞りの定径部が直径4.5mm以上、10mm以下になるように、種絞り部を形成することが開示されている。そして、その種絞り部の成長手段の改善として、種絞りの定径部を一定の引上げ速度で行うことが示されている。しかし、前記図2に示すように、種絞り部は減径部と定径部とから構成されるが、ここで開示される種絞り部の成長手段では、減径部における引上げ条件、例えば、引上げ速度やシリコン融液の温度については何ら開示されていない。
【0011】
また、大重量のシリコン単結晶を安定して保持するため、例えば、特公平3−295893号公報で開示されるような、単結晶のネック部を係合する爪を具備した結晶保持装置を新たに設ける引上げ装置や、他に、特開平5−270968号公報で開示されるような、単結晶のダッシュネック部を材料力学的に強度向上を図った製造装置が提案されている。しかし、これらの装置では、シリコン単結晶を引上げる途中段階で、単結晶のネック部を保持するようにしているため、保持器が結晶を係合した際、またはダッシュネック部を材料力学的に強化した際に、機械的衝撃によって単結晶に転位が発生するおそれがある。しかも、製造装置に結晶保持装置や強化機構を導入、配備することによって、多額の設備コストを要することになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、近年の半導体用ウェーハの効率生産にともない、シリコン単結晶の大口径化、長尺化の要請に対応して、引上げられる単結晶が大重量化している。そのため、単結晶の引上げ段階において、直径が細くなるネッキング部で切断する可能性が高くなるという問題がある。
【0013】
これに対応するため、種結晶からネッキング部下端までの形状を特定したり、ネッキング部の成長手段の改善方法が提案されている。また、大重量のシリコン単結晶を安定して保持するため、結晶保持装置を新たに設ける引上げ装置や、ダッシュネック部の強度向上を図った製造装置が提案されている。しかし、これらの提案があった手段や装置は、実際の引上げに適用できるか否かが明らかでなく、また、設備コストを必要とすることから、有効な対策とはなっていない。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、シリコン単結晶の引上げにおいて、種結晶がシリコン融液に接触した際の熱衝撃によって導入される転位を除去する、減径部と定径部とから構成されるネッキング部を効率的に形成し、直径12インチ以上の大重量の単結晶であっても引上げが可能なシリコン単結晶の引上げ方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するため、シリコン単結晶のネッキング部の減径部から定径部に至る段階での転位の挙動を種々検討した結果、ネッキング部の定径部が太くなる場合、例えば、直径が4.5mmを超える場合を前提として、確実にネッキング部で無転位化するには、減径部で転位密度を充分に低減すること、比較的低温の融液条件で引上げること、およびネッキング部の減径部を所定の引上げ速度で形成することが必須であることを明らかにした。これにより、種結晶中の転位密度を効果的に低減することができる。
【0016】
前述の特開平5−43379号公報で提案された製造方法では、所定直径の定径部を形成するために、定径部を一定の引上げ速度、すなわち、4.0mm/min〜6.0mm/minで行うことが開示されている。しかし、本発明者らの検討結果によれば、この開示された条件を採用したとしても、必ずしもネッキング部の転位を除去できるとは限らないことが分かった。そして、種結晶の無転位化は、単に引上げ速度に依存するのではなく、減径部から定径部に至る時点での転位密度の状況や、ネッキング部の減径部を形成する際の融液温度に応じて、引上げ速度を採用する必要があることを知見した。
【0017】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)、(2)のシリコン単結晶の引上げ方法、および(3)、(4)の実施態様に係るシリコン単結晶の引上げ方法を要旨としている。
【0018】
(1)坩堝内のシリコン融液に接触する種結晶を無転位化する、減径部と定径部とから構成されるネッキング部を形成したのちシリコン単結晶を引上げる方法において、シリコン融液に種結晶を接触させて上記ネッキング部の減径部を形成する際に、シリコン融液の液温を、シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度とし、種結晶を2.5mm/min以上の引き上げ速度で引き上げてネッキング部を形成し、そのネッキング部を構成する定径部の直径を4.5mm〜10mmにすることを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法である。
(2)坩堝内のシリコン融液に接触する種結晶を無転位化する、減径部と定径部とから構成されるネッキング部を形成したのちシリコン単結晶を引上げる方法において、シリコン融液に種結晶を接触させて上記ネッキング部の減径部を形成する際に、シリコン融液の液温を、シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度とし、種結晶の引上げ速度を0.0mm/min〜1.5mm/minの範囲で30秒間以上保持する操作を少なくとも1回行い、種結晶を2.5mm/min以上の引き上げ速度で引き上げてネッキング部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法である。
【0019】
(3)本発明では、種結晶をシリコン融液に接触させた際のシリコン融液の温度が適正か否かを判断するために使用される種結晶と、実際にネッキング部を形成する種結晶とは、別々の種結晶を使用しても良いが、種結晶の交換作業による生産効率の低下を考慮すると、同一の種結晶を使用するのが望ましい。
【0020】
(4)上記(2)のシリコン単結晶の引上げ方法では、ネッキング部の定径部は、300kgを超える大重量のシリコン単結晶であっても安定して保持するため、その直径を4.5mm〜10mmにするのが望ましい。
【0021】
また、後述するように、種結晶の引き上げにともなってネッキング部の転位を減少させるには、固液界面形状が下凸状態であることが必要とされる。このため、ネッキング部の形成の際に、固液界面形状を下凸状態で維持するため、種結晶の引上げ速度を0.0mm/min〜1.5mm/minの範囲で30秒間以上保持する操作を少なくとも1回行う。
【0022】
さらに、前記シリコン融液の温度変動を抑制するために、坩堝内のシリコン融液に磁場を印加することができる。このとき印加する磁場は横磁場でもカスプ磁場でも良く、液温を安定させる磁場強度としては、横磁場の場合には磁場中心位置で150ガウス以上、カスプ磁場の場合には固液界面近傍での縦磁場成分が150ガウス以上になるように設定するのが望ましい。
【0023】
上記(1)、(2)のシリコン単結晶の引上げ方法で採用される融液の条件を、「シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度」であると規定している。これは、シリコン融液に種結晶を接触させて引上げを開始したときに、その引上げ速度を1.5mm/minとすれば、種結晶下端部の直径が少なくとも減径しない、すなわち、そのままの直径で引上げられるか、または直径が漸増しつつ引上げられるようなシリコン融液の液温条件を意味している。
【0024】
シリコン融液が上記を超える高温状態になると、後述する実施例(実施例1、3)に示すように、ネッキング部の減径部形成での固液界面の形状を下凸状態に十分にすることができず、無転位化が図れなくなる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のシリコン単結晶の引上げ方法では、種結晶がシリコン融液に接触する際に導入される転位を除去するネッキング部を効率的に形成するため、減径部で転位密度を低減すること、比較的低温の融液条件で引上げること、および減径部の形成には所定の引上げ速度を採用することを特徴としている。以下、その内容を項目に分けて、説明する。
【0026】
1.減径部で転位密度を低減すること
種結晶の下端面を原料のシリコン融液に接触させると、ほとんど瞬間的に種結晶の下端部の温度は100℃以上に上昇する。そのため、種結晶の下端面の近傍には極めて大きな温度勾配を生じ、大きな熱応力が発生する。このときの熱衝撃に起因して、種結晶の下端部には転位が導入される。
【0027】
上記で導入された転位はネッキング部で除去しなければならないが、定径部の直径が小さい場合、例えば、3mm以下場合には、結晶の固液界面直上に発生する熱応力が小さく、定径部が小径になるほど、固液界面の形状を下凸状態にできるため、定径部での転位除去能力が高く、確実に無転位化が実現できる。これに対し、定径部の直径が3mmを超えて太くなると、定径部での転位除去能力が低くなるため、減径部から定径部に至る段階において、種結晶中に導入された転位の量を十分に減じる必要がある。したがって、本発明の引上げ方法では、ネッキング部の減径部において、転位密度を低減しておく必要がある。
【0028】
2.ネッキング部を比較的低温の融液条件で形成すること
図3は、転位を発生した種結晶の固液界面の形状を模式的に示す図である。通常、結晶に導入された転位dは固液界面sに対して垂直方向に成長するため、種結晶6の引上げにともなって転位dを除去するには、固液界面sの形状が下凸状態であることが必要である。
【0029】
具体的には、種結晶6の下端をシリコン融液3に接触させ、ネッキング部の形成工程に移れるように液温調整していくうちに、図3(a)に示すように、種結晶6と融液3の固液界面sの形状は下凸状態になる。この状態で種結晶6を引上げると、図3(b)、(c)に示すように、ネッキング部の直径が小さくなり、減径部が形成されるとともに、しばらくの間、固液界面sは下凸状態となる。そのため、固液界面の形状が下凸状態であることと、直径が減少することとが相まって、ネッキング部の減径部において転位除去が促進される。
【0030】
したがって、本発明の引上げ方法では、種結晶の引上げ初期に当たる、ネッキング部の減径部の形成時において、固液界面の下凸状態や種結晶の減径作用を利用して、積極的に転位を除去し、転位密度を低減している。これらを可能にする前提として、比較的低温のシリコン融液条件で引上げることが挙げられる。この融液条件を明確にするため、種々の実験結果に基づいて、前述の「シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度」であることと規定している。
【0031】
3.所定の引上げ速度を採用すること、および実施の態様について
さらに、ネッキング部で転位を効率よく除去するには、減径部の形成時において、固液界面を大きく、かつ確実に下凸状態にするとともに、減径部での引上げ速度を所定以上に確保する必要がある。ここで、引上げ速度をある程度以上に確保するのは、次の2つの理由に基づくものである。
【0032】
第1の理由は、結晶に導入された転位は引上げにともなって移動する固液界面に向かって成長するため、その成長速度を上回る速度で結晶を引上げなければ、転位密度を減少することができないことである。
【0033】
第2の理由は、ネッキング部を形成する工程で固液界面が下凸状態であることを利用して転位を除去するには、下凸状態を保持する引上げ長さをある程度長くする必要があるからである。例えば、中心近傍にある転位を除去するには、半径方向に結晶半径の長さだけ移動させることが必要になるが、引上げ方向の移動距離が大きいほど、半径方向の移動距離が稼げることになる。したがって、引上げ方向の移動距離を確保することによって、転位密度を確実に低減することができる。
【0034】
そして、固液界面が下凸状態である引上げ方向の移動距離を長く確保するには、引上げ速度を速くことが有効である。言い換えれば、引上げ速度を速くすることによって、固液界面が下凸状態にある時間が短くなるが、この時間短縮による下凸状態での引上げ長さの減少作用より、引上げ速度を速くすることによる固液界面の下凸状態での引上げ方向の移動距離の延長作用の方が大きくなる。
【0035】
本発明者らの実験結果によれば、ネッキング部の定径部を4.5mm以上の大径にする場合であっても、前述の通り、シリコン融液の液温を比較的低温に設定して、ネッキング部の減径部における引上げ速度を2.5mm/min以上にすることにより、導入された転位は確実に除去される。すなわち、引上げ速度を2.5mm/min以上にすれば、種結晶の中心近傍に存在する転位であっても、下凸状態の固液界面を通して、結晶外に排除することが可能になる。
【0036】
引上げ速度の上限は、ネッキング部の形成不良のうち結晶が融液から切り離される、いわゆる絞り切れの発生状況によって制限される。一般的に、シリコン融液に磁場が印加されていない場合には上限を6.0mm/minとし、磁場を印加した場合には上限を10mm/minとするのが望ましい。このように、シリコン融液に磁場を印加した場合に、引上げ速度の上限を大きく採れるのは、融液の温度変動が小さくなり、絞り切れが発生し難くなるためである。
【0037】
前述の通り、無転位化を図るには固液界面が下凸状態であることが重要であり、結晶引上げ速度を極端に低速にし、または引上げを停止し、例えば、0.0mm/min〜1.5mm/minの範囲で30秒間以上保持するようにして、固液界面を下凸状態に調整し直すことが有効である。これにより、転位の除去が一層効果的になる。
【0038】
原理的には、結晶引上げ速度を低速にして、固液界面を下凸状態に調整し直すことを数多く繰り返すことにより、ネッキング部の転位を除去する作用は大きくなる。この場合、定径部の直径を10mm以上にしても、確実性が若干低下するかも知れないが、無転位化を達成することが可能である。しかし、大重量の単結晶を保持するに際し、定径部の直径を10mmにすることによって、十分な耐荷重性が確保できることから、その上限を10mmにすることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の効果について実施例に基づいて説明する。実施例では、前記図1で示したシリコン単結晶の引上げ装置を用いた。引上げ装置の主仕様は、チャンバー寸法は有効内径1100mmφ×高さ1500mmで、チャンバー内はアルゴン雰囲気で20torrとして、配設されるヒーターは抵抗加熱式で、その寸法は内径660mmφ×高さ500mm×厚さ25mmとした。結晶原料として高純度多結晶シリコンを150kg仕込んで、寸法が内径597mmφ×高さ480mmの石英坩堝中で溶融して、下記の実施例1〜3を行った。
【0040】
(実施例1)
引上げ軸の先端部に、直径15mmφの<100>単結晶育成用種結晶を取り付けて、坩堝内のシリコン融液の表面に着液させ、ネッキング部を形成した。まず、減径部では所定の引上げ速度で目標径まで減径させ、定径部に至ってからは3.5mm/minの引上げ速度で100mm長さのネッキング部を形成した。その後、ネッキング部を融液から切り離し、炉外に取出して、定径部長さ100mmでの無転位化の判定を行った。これを、それぞれの条件で、2〜3回繰り返した。無転位化の判定は、取出した結晶を切り出し、X線トポグラフによって実施した。
【0041】
ネッキング部の形成条件およびそのときの判定結果を表1に示す。表中において、液温条件が「低温」とは、シリコン融液の液温を、シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない程度の比較的低温にした場合を言い、これに対し「高温」とは、引上げ速度を1.5mm/minとした場合に単結晶が減径するような比較的高温の場合を言う。
【0042】
【表1】
【0043】
表1の結果から、本発明で規定する条件、すなわち、減径部の引上げ速度、シリコン融液温度を管理しながらネッキング部を形成した本発明例(No.1〜No.9)では、定径部の直径が5.0〜8.0mmと比較的太い径のものであっても、無転位化を実現できることが分かる。しかし、No.8、No.9のように、定径部の直径が太くなると、無転位化が達成できない場合も見られた(1/3回)。さらに、No.4のように、減径部での引上げ速度が速くなることによって、絞り切れが発生する事態もあった(1/3回)。
【0044】
一方、比較例に見られるように、減径部の引上げ速度およびシリコン融液温度が本発明で規定する範囲から外れたり(No.10〜No.14)、定径部の直径が10mmを超えて太くなると(No.15)、いずれも無転位化を達成することができなかった。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で、ネッキング部の形成を実施したが、結晶の固液界面の下凸状態を調整し直すために、減径部の形成中に2回の引上げ停止(停止時間2分)を実施した。その結果を、表2に示す。
【0046】
表2から明らかなように、減径部の形成中に引上げを停止するか、引上げ速度を低くすることによって、固液界面の形状を維持できて、無転位化を促進することができる。例えば、No.17、No.18は、実施例1のNo.8、No.9と同じ条件であるが、いずれも無転位化を達成することができた。また、参考として示すNo.19、No.20では、定径部の直径が10mmを超えて太くなる場合であっても、容易に無転位化を達成することができる。ただし、実施例1のNo.15では無転位化に失敗している。
【0047】
【表2】
【0048】
(実施例3)
実施例3では横磁場を印加しており、その強度は融液の自由表面上で坩堝中心軸における磁場強度が4000ガウスとした。その他の条件は、実施例1と同じ条件とし、その結果を表3に示す。
【0049】
表3に結果から、磁場を印加する場合には、液温変動が小さくなり安定することから、No.24に示すように、引上げ速度が7mm/min以上の高速引上げであっても、減径部の形成中での絞り切れが生じにくくなるが、No.25のように、11mm/minを超えるような高速引上げでは絞り切れを生じる可能性があることが分かる。また、No.22、No.23では、実施例1のNo.8、No.9と同様に、定径部の直径が太くなると、無転位化が達成できない場合も見られた(1/3回)。
【0050】
【表3】
【0051】
【発明の効果】
本発明のシリコン単結晶の引上げ方法によれば、結晶保持装置等の付加的な設備を配設することなく、シリコン単結晶を引上げる際に、種結晶を無転位化するネッキング部を太く、かつ効率的に形成して、12インチ結晶のような大重量の単結晶であっても引上げが可能になる。これにより、半導体用シリコン単結晶の効率生産の要請に有効に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】このCZ法によるシリコン単結晶の引上げ装置の構成を説明する縦断面図である。
【図2】CZ法による引上げの際に種結晶の下方に設けられるネッキング部の形状を示す図である。
【図3】転位を発生した種結晶の固液界面の形状を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1:坩堝、 1a:内層保持容器
1b:外層保持容器、 2:ヒーター
3:シリコン融液、 4:引上げ軸
5:シードチャック、 6:種結晶
6n:ネッキング部
d:転位、 s:固液界面
Claims (5)
- 坩堝内のシリコン融液に接触する種結晶を無転位化する、減径部と定径部とから構成されるネッキング部を形成したのちシリコン単結晶を引上げる方法において、
シリコン融液に種結晶を接触させて上記ネッキング部の減径部を形成する際に、シリコン融液の液温を、シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度とし、
種結晶を2.5mm/min以上の引き上げ速度で引き上げてネッキング部を形成し、そのネッキング部を構成する定径部の直径を4.5mm〜10mmにすることを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。 - 坩堝内のシリコン融液に接触する種結晶を無転位化する、減径部と定径部とから構成されるネッキング部を形成したのちシリコン単結晶を引上げる方法において、
シリコン融液に種結晶を接触させて上記ネッキング部の減径部を形成する際に、シリコン融液の液温を、シリコン融液に種結晶を接触させて種結晶を1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げた場合に、種結晶下端部の直径が減径しない温度とし、種結晶の引上げ速度を0.0mm/min〜1.5mm/minの範囲で30秒間以上保持する操作を少なくとも1回行い、
種結晶を2.5mm/min以上の引き上げ速度で引き上げてネッキング部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。 - 1.5mm/minの引き上げ速度で引き上げられる種結晶と、2.5mm/min以上の引き上げ速度で引き上げられる種結晶とが同一の種結晶であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン単結晶の引上げ方法。
- 前記ネッキング部を構成する定径部の直径が4.5mm〜10mmであることを特徴とする請求項2記載のシリコン単結晶の引上げ方法。
- 前記シリコン融液の温度変動を抑制するために、坩堝内のシリコン融液に磁場を印加することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のシリコン単結晶の引上げ方法。
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