JP4198276B2 - ポリプロピレン樹脂シートの製造方法およびポリプロピレン樹脂シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高透明、高光沢、傷がなく外観良好で、剛性にすぐれたポリプロピレン樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂シートの効率的な製造方法およびポリプロピレン樹脂シートに関し、クリアボックス、クリアファイルなどに利用できる。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン樹脂はその物理的強度、耐熱性、耐薬品性、ヒンジ特性などにすぐれているが、結晶性のために、通常の製造方法で得られたシートでは透明性に劣り、その応用分野が制限されている。特に、ヒンジ特性を用いてのクリヤボックス、クリヤーファイルなどは、透明性が高いのみでなく、わずかな表面の傷が商品価値を低下させ、実用化が困難である問題点を有している。
【0003】
透明性ポリプロピレン樹脂シートの製造方法としては、原料のポリプロピレン樹脂に結晶核剤、石油樹脂などの添加剤を添加する方法がある。また、成形方法としては、急冷法が知られている。この急冷方法としては、エアーナイフ法、ポリシングロール法、金属ベルト法、水冷法などがある。これらの急冷方法の中で、エアーナイフ法、ポリシングロール法は冷却効率が悪く、急冷するためには製膜速度を遅くする必要があり実用性が低い。したがって、金属ベルト法や水冷法が実用化されている。
【0004】
これらの急冷法で得られたポリプロピレン樹脂シートは、低結晶性のために透明性にはすぐれるものの剛性が低く、熱成形用としては用いられるものの、ポリプロピレン樹脂が本来的に有する高剛性、高耐熱性の特徴を生かすことができない。このため前記のクリアボックスやクリアファイルなどの用途のためには、このポリプロピレン樹脂シートを特定温度で加熱処理することにより、使用目的に適した剛性を付与することが行われている。従来、この加熱処理は、この低結晶化ポリプロピレン樹脂シートを複数の加熱ロールに当接させる直接加熱処理が一般的であった。
【0005】
この直接加熱方法は、シート走行時にシートが伸びる際に加熱ロールに擦られて傷が生じ易かった。この傷の発生は、ポリプロピレン樹脂シートが高透明、高光沢の場合に非常に目立ち、商品価値を高めるためにその傷の解消策が求められていた。本出願人は、この問題を解決するために、低結晶化ポリプロピレン樹脂シートの両端部を把持し、この樹脂シートの中央部が弛緩した状態で間接加熱してアニール処理を施すことを特徴とするポリプロピレンシートの製造方法を提案した(特開平10−217342号公報)。
【0006】
すなわち、この間接加熱方法は、ロールとの接触が無く、傷の発生が無くなるばかりか、透明性、光沢にもすぐれたポリプロピレン樹脂シートが得られるすぐれた製造方法である。しかしながら、熱処理工程において、加熱室内にシートを移動させるために、シートの両端部を把持するためのクリップなどの把持手段が必要であり、設備費、運転操作が複雑になるなどの問題点がある。また、シートが水平方向に移動するため、加熱により、シートが弛み易く、したがって熱処理温度を高くして、処理速度を早くすることに限界がある。さらに、シートの上下において、加熱温度むらが生じ易いなどよりすぐれた製造方法が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリプロピレン樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂からなる、高透明の急冷低結晶化熱可塑性樹脂シートを加熱処理して、透明性、光沢、剛性にすぐれた傷付きのない結晶性熱可塑性樹脂シートを簡便な設備で、高温、短時間に処理できる生産性にすぐれた製造方法の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決しようとする手段】
本発明は、このような状況下において、ポリプロピレン樹脂などの低結晶化熱可塑性樹脂シートの熱処理槽の形態と、得られたシートの特性との関係について、鋭意検討した結果、低結晶化熱可塑性樹脂シートを上下方向に走行させる場合に上記問題点が解消できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートを縦型加熱槽中を上下方向に走行させて間接加熱処理することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法。
(2)急冷が金属ベルト法または水冷法によりなされたものである上記(1)記載のポリプロピレン樹脂シートの製造方法。
(3)急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートの密度が0.890g/cm3 以下である上記(1)または(2)記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法。
(4)ポリプロピレン樹脂が核剤を含まないものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂シートの製造方法。
(5)急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートを縦型加熱槽中を上下方向に走行させて間接加熱処理して得られたポリプロピレン樹脂シートであって、
(1)MD、TD引張弾性率が共に、1500MPa以上、(2)全ヘーズが、〔330t2−150t+20(tはシート厚み:mm)〕以下であることを特徴とするポリプロピレン樹脂シート。
(6)(1)MD、TD張弾性率が2000MPa以上、(2)密度が0.905g/cm3以上である上記(5)記載のポリプロピレン樹脂シート。
(7)MD、TD方向の90℃における伸縮率が±1.0%以内である上記(5)または(6)記載のポリプロピレン樹脂シートに関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造に用いられる結晶性熱可塑性樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレンと少量のエチレン、ブテン−1などの他のオレフィン類との共重合体などのポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66などのポリアミド樹脂などを例示できる。中でもポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。ポリプロピレン樹脂としては、剛性、耐熱性などの点から単独重合体が好ましく用いられる。以下、結晶性熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂を基に説明する。
【0011】
ポリプロピレン樹脂のメルトインデックス(MI)としては、〔JIS K7210に準拠、230℃、2.16kg荷重〕0.2〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分である。
また、原料ポリプロピレン樹脂には、シリカ微粉末、タルク、安息香酸アルミニウム塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムなどの芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸の金属塩、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチロフエニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス−(4−t−ブチルフエニル)フォスフェートなどのフォスフェート類、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトールなどのソルビトール類などの核剤が含まれてもよい。
【0012】
また、石油樹脂などの透明性改良剤が含まれてもよい。しかしながら、核剤の添加は、熱処理後のシートの剛性向上効果があまり期待できないなどの問題があり、核剤を含まないポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。また、石油樹脂などの添加は耐熱性の低下、添加剤のブリードなどにより外観や表面特性が悪化する場合があり、本発明にあってはこれら添加剤を実質的に含まないポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。
【0013】
さらに、シートの用途などを考慮して、公知の添加剤を必要に応じて添加することができる。これら他の添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機過酸化物、顔料、染料などを例示できる。
まず、本発明の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法に用いられる、急冷製膜法で得られる低結晶化ポリプロピレン樹脂シートの製造方法の一例を、図面に基づいて説明する。図1は、低結晶化ポリプロピレン樹脂シートの製造方法に用いられる金属ベルト法の主要部の概略図である。図1において、1は溶融シート状ポリプロピレン樹脂、2はTダイ、3は第1冷却ロール、4は第2冷却ロール、5は金属製エンドレスベルト、6は第3冷却ロール、7は第4ロール、8は弾性被覆層、9は回転軸、10は第5ロール、11は低結晶化ポリプロピレン樹脂シートを示す。
【0014】
すなわち、低結晶化ポリプロピレン樹脂シート11の製造装置は、押出成形機(図示せず)のTダイ2と、第1冷却ロール3と第2冷却ロール4との間に巻装された金属製エンドレスベルト5と、低結晶化ポリプロピレン樹脂シート11と、金属製エンドレスベルト5を介して、第1の冷却ロール3と接触する第3の冷却ロール6、第2冷却ロール4の近傍に設けられた第4のロール7とにより構成されている。
【0015】
前記第1の冷却ロール3の表面にはNBRなどの弾性被覆層8が被覆されている。この弾性被覆層8は、通常その硬度が(JIS K6301 A型に準拠)が95以下、厚さは3mm以上のものである。前記金属製エンドレスベルト5は、ステンレス鋼、チタン合金などからなり、表面粗さが0.5S以下の鏡面を有している。また、第1と第2の冷却ロールの少なくとも一方は、その回転軸9が回転駆動手段(図示せず)と連結されている。
【0016】
前記第3冷却ロール6は、金属製であり、その表面粗さが0.5S以下の鏡面を有している。この冷却ロール6は、溶融シート状ポリプロピレン樹脂1と金属製エンドレスベルト5を介して、第1冷却ロール3と接触し、しかも金属製エンドレスベルト5で、冷却ロール6側に押圧された溶融シート状ポリプロピレン樹脂1を抱き込むように設けられている。すなわち、金属製エンドレスベルト5とこのベルトと接触している溶融シート状ポリプロピレン樹脂1は、第3冷却ロール6の外周面に巻きつくように移動している。
【0017】
前記第4のロール7は、溶融シート状ポリプロピレン樹脂1が金属製エンドレスベルト5を介して第2の冷却ロール4に圧接されるように、シートをガイドするものである。前記冷却ロール3、4、6には、表面温度の調整のための水冷式などの温度調整手段(図示せず)が設けられる。なお、金属製エンドレスベルト5の内の第1のロール3の前に、別の冷却ロール10を設け、エンドレスベルト5を予備冷却することもできる。また、この冷却ロール10は、エンドレスベルトの張力調整用ロールとしても機能することもできる。なお、ここで、溶融シート状ポリプロピレン樹脂は、冷却とともに順次硬化するものであるが、便宜上溶融シート状の語を用いる。
【0018】
低結晶化ポリプロピレン樹脂シート(以下、原反シートと呼ぶことがある。)の製造に当たり、金属製エンドレスベルト5および第3の冷却ロール6の表面温度は、50℃以下、露点以上になるように、各冷却ロール3、4、6の温度が制御される。ポリプロピレン樹脂ペレツトが押出成形機に供給され、溶融混練されてTダイ2より押し出される。押し出された溶融シート状のポリプロピレン樹脂1は、第1冷却ロール3と接触している金属製エンドレスベルト5と、第3冷却ロール6とに略同時に接触するように、第1と第3冷却ロール3、6の間に導入され、第1と第3の冷却ロール3、6で溶融シート状ポリプロピレン樹脂1を圧接して急冷される。
【0019】
この冷却の際、第1と第3冷却ロール3、6間の押圧力で弾性被覆層8が圧縮されるように弾性変形し、両ロール3、6の中心からの角度θ1部分において、溶融シート状ポリプロピレン樹脂は面状圧接となっている。この場合の面圧は、通常0.1〜20.0MPaである。引き続き、溶融シート状ポリプロピレン樹脂1は、前記鏡面の金属製のエンドレスベルト5で第3冷却ロール6に圧接され、冷却される。エンドレスベルト5で冷却ロール6側に押圧された溶融シート状ポリプロピレン樹脂は冷却ロール6の中心からの角度θ2で、冷却ロール6に抱き込まれ、シート状ポリプロピレン樹脂はこの部分において、金属製エンドレスベルト5と冷却ロール6により面状に圧接される。この際の面圧は、通常0.01〜0.5MPaである。
【0020】
つぎに、シート状ポリプロピレン樹脂は、エンドレスベルト5に重なるように沿わせた状態で、エンドレスベルトの移動とともに第2冷却ロール4に移動され冷却される。なお、場合によっては、第3冷却ロール6によって冷却されたシート状ポリプロピレン樹脂は、第2冷却ロール4に移動させることなく、そのまま引き取るようにすることもできる(図1の二点鎖線で図示)。
【0021】
このように、溶融押し出しされた溶融シート状ポリプロピレン樹脂は、急冷されることにより、本発明に用いる原反シートである、結晶化が抑制され低結晶化ポリプロピレン樹脂シート11が得られる。この原反シートは、通常密度が0.890g/cm3 以下、ヘイズが、〔330t2 −150t+20(tはシート厚み:mm)〕以下となるような条件により製膜されることが望ましい。また、得られる原反シートの厚みは、用途によっても異なるが、通常、100〜1,000μm、好ましくは200〜500μmである。
【0022】
このようにして得られた、低結晶化ポリプロピレン樹脂シートを原反シートとして、透明性、光沢を確保しながら、製品シートとしての剛性、耐熱性を高めるために、加熱処理を行う。本発明は、この加熱処理工程において、原反シートを加熱処理槽中を上下方向に走行させることを特徴とするものである。
図2は、本発明の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法に用いられる、加熱処理装置の一実施態様の概略図を示す。図2において、21は原反シートの製造装置、11は原反シート、22は予熱ロール、23は加熱処理槽、24は冷却ロール、25はガイドロール、26は巻き取りロール、27は加熱器、28は加熱空気循環路、29はブロアー、30は結晶性熱可塑性樹脂シート、31は冷却風槽をそれぞれ示す。
【0023】
図2において、原反シート製造装置で急冷製膜された、低結晶化ポリプロピレン樹脂シートである原反シートは、予熱ロール22a、22bにより予熱される。予熱された原反シートは、加熱処理槽23中を下から上方向に走行し、加熱処理を受け、冷却ロール24a、24bで冷却されガイドロール25を介して巻き取りロール26で巻き取られる。
【0024】
ここで、予熱ロール22は電熱、熱媒体油などを用いて通常、シートが延伸しない温度、例えば40〜70℃、好ましくは50〜60℃に予熱される。この予熱温度は、シートの厚み、シートの走行速度により適宜選択される。予熱された原反シート11は、加熱処理槽23に上向きに導入される。加熱処理槽23は、上下端にシート走行のための開口を有するとともに、加熱器27により加熱処理槽の内部温度、すなわち原反シート11を所定温度で加熱処理するように温度制御されている。
【0025】
ここで加熱器としては、電熱加熱、ハロゲンランプ加熱、赤外線加熱、高周波加熱、熱風などが採用できる。また、必要により、図2に示すように、加熱処理槽内の空気をブロアー29により、加熱空気循環路28により循環して、加熱処理槽中の温度分布の均一化を図ることもできる。この場合の温度制御は、本実施態様では、一般に循環路の加熱処理槽の出口の温度を制御する。なお、加熱処理槽は、図2では、一槽の場合を示したが、必要により、複数の槽を用いる二段、三段にすることもできる。このように多段にすれば、各段の熱処理温度を個々に制御することが可能となる。
【0026】
ここで、加熱処理温度としては、本明細書では加熱処理槽23の空気温度として示すことができ、以下本発明では、加熱処理槽温度として示す。加熱処理温度は、特に制限はないが、ポリプロピレン樹脂の場合には、通常70〜200℃、好ましくは80〜180℃である。この加熱処理温度は、原反シートの厚み、シートの走行速度、加熱処理後の結晶性熱可塑性樹脂シートに要求される物性、剛性、透明性などを考慮して適宜決定される。たとえば、剛性すなわち、弾性率を高くする必要がある場合には、加熱処理条件を高温側に設定し、弾性率よりも耐衝撃性を重視する場合には、加熱処理条件を低温側に設定して制御する。
【0027】
加熱処理を終えて、加熱処理槽23を出た、シートは、水冷などで温度制御された冷却ロール24a、24bにより冷却され、ガイドロール25を介して、製品としての結晶性熱可塑性樹脂シート30となり巻き取りロール26に巻き取られる。なお、必要により、冷却ロール24の下流側に冷却風槽31を設けることにより処理速度を高めることができる。
【0028】
ここで、原反シートの加熱処理槽23中の走行速度としては、前記低結晶化熱可塑性樹脂シートの製造速度、シートの厚み、加熱処理温度にもより異なるが、通常5〜100m/分であり、その走行速度を大幅に早くできる特徴を有する。また、シートの引き取り張力としては、特に制限はなく、延伸や変形が生じない条件が設定される。通常、張力は10kg/m幅以下の範囲である。
【0029】
なお、図2では、シートの加熱処理を原反シートの製造に引き続き行う態様であるが、原反シートを巻き取ったロール巻きシートから繰り出し供給する方法を採用することもできる。この、原反シートの製造と、加熱処理の工程を分離すると、それぞれの工程の能力を生かすことができる場合がある。また、原反シートの走行方向は、上向きの場合の他、下向きも可能である。
【0030】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法は、この加熱処理槽を従来の横型から縦型にして、原反シートを上下方向に走行することに特徴がある。すなわち、後記の実施例からも明らかなように、加熱処理条件の幅を大きく変更することが可能になった。特に、加熱処理温度を190℃と、ポリプロピレン樹脂の融点である160℃近辺より大幅に高い温度においても熱処理自体は可能となった。しかし、高温加熱処理により、シートの透明性が低下するため、走行速度などの他の熱処理条件などを考慮して適宜選定することができる。
【0031】
このことは、加熱処理時間の短縮、ひいてはシート走行速度の大幅な向上、生産性の向上をもたらす。これは、単に、原反シートの走行を上下方向にしただけでなく、従来の横方向加熱処理槽では、シートを挟持して、走行させる必要があったことも関係している。すなわち、このシートを挟持するためのクランプによる挟持を確保するためには、自ずとシート加熱温度に制限があった。さらに、温度の均一性、シートの自重による垂れ下がりの恐れがないことからも、本発明は、高い加熱処理温度での処理が可能になった。
【0032】
本発明の加熱処理工程で得られた、ポリプロピレン樹脂シートは、従来のポリプロピレン樹脂シートにないすぐれた特性を有する。すなわち、本発明のポリプロピレン樹脂シートは、ポリプロピレン樹脂からなり、▲1▼MD、TD引張弾性率が共に、1500MPa以上、▲2▼全ヘーズが、〔300t2 −150t+20(tはシート厚み:mm)〕以下である。すなわち、効率的な加熱処理がなされることによって、すぐれた透明性が得られる。また、熱処理条件にもよるが、▲1▼MD、TD引張弾性率やその密度は、2000MPa以上、密度は0.905g/cm3 以上と非常に高いレベルのシートとすることができる。
【0033】
さらに、加熱処理時のドローダウンによる延伸が生じ難いことなどから、通常、縦、横方向の90℃における伸縮率が±1.0以内、特に±0.5以内とすることが可能となる。すなわち、耐熱寸法精度が著しく向上し、耐熱用途への展開が可能となる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明をポリプロピレン樹脂の実施例を基に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
実施例1〜5、比較例1〜5
それぞれ公知の製膜方法である、明細書記載の金属ベルト法、エアナイフ法により、急冷低結晶化ポリプロピレン樹脂原反シート(幅:1,000mm)を製造した。製膜条件、得られた原反シートの特性を第1表に示す。引き続き、第1表に示す加熱処理条件により、加熱処理を行い、ポリプロピレン樹脂シートを製造した。原反シート製造に用いたポリプロピレン樹脂は、メルトインデックス(MI:230℃、2.16kg荷重)が、2.3g/10分のプロピレン単独重合体を用いた。なお、加熱処理温度は、加熱処理槽(加熱器:赤外線ヒータ)の空気循環流路の出口で測定した。また、加熱処理槽高さは、5m、走行速度は10m/分であった。
【0035】
得られたシートの評価結果を第2表に示す。なお、各評価は、下記試験法に準じて測定した。
▲1▼密度:JIS K7112(密度勾配管法)に準拠
▲2▼引張弾性率:JIS K7113に準拠
▲3▼ヘイズ:JIS K7105に準拠
▲4▼光沢度:JIS K7105に準拠
▲5▼衝撃強度:JIS K7124に準拠
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、横型加熱処理槽の場合に比較して、加熱処理温度を高く、しかも温度を均一化し易い。このため、透明性、剛性、耐熱寸法安定性がより高いレベルのポリプロピレン樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂シートが得られる。また、間接加熱であり、シート表面の傷の発生、光沢などの表面特性もよい。さらに、高温、短時間処理が可能となり、生産性が向上するとともに、設備も簡略であり経済性にすぐれる。したがって、得られたポリプロピレン樹脂などのシートは、クリアボックス、クリアファイル、文具ケース、額縁カバーなどに好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリプロピレン樹脂シートの製造方法に用いられる金属ベルトプロセスの主要部の概略図を示す。
【図2】 本発明のポリプロピレンシートの製造方法に用いられる加熱処理装置の一実施態様の概略図を示す。
【符号の説明】
1:溶融シート状樹脂
2:Tダイ
3:第1冷却ロール
4:第2冷却ロール
5:金属製エンドレスベルト
6:第3冷却ロール
7:第4ロール
8:弾性被覆層
9:回転軸
10:第5ロール
11:原反シート
21:原反シートの製造装置
22:予熱ロール
23:加熱処理槽
24:冷却ロール
25:ガイドロール
26:巻き取りロール
27:加熱器
28:加熱空気循環路
29:ブロアー
30:樹脂シート
31:冷却風槽
Claims (7)
- 急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートを縦型加熱槽中を上下方向に走行させて間接加熱処理することを特徴とするポリプロピレン樹脂シートの製造方法。
- 急冷が金属ベルト法または水冷法によりなされたものである請求項1記載のポリプロピレン樹脂シートの製造方法。
- 急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートの密度が0.890g/cm3以下である請求項1または2記載の結晶性熱可塑性樹脂シートの製造方法。
- ポリプロピレン樹脂が核剤を含まないものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂シートの製造方法。
- 急冷により低結晶化したポリプロピレン樹脂シートを縦型加熱槽中を上下方向に走行させて間接加熱処理して得られたポリプロピレン樹脂シートであって、
(1)MD、TD引張弾性率が共に、1500MPa以上、(2)全ヘーズが、〔330t2−150t+20(tはシート厚み:mm)〕以下であることを特徴とするポリプロピレン樹脂シート。 - MD、TD引張弾性率が2000MPa以上、密度が0.905g/cm3以上である請求項5記載のポリプロピレン樹脂シート。
- MD、TD方向の90℃における伸縮率が±1.0%以内である請求項5または6記載のポリプロピレン樹脂シート。
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