JP4182666B2 - 振動波モータの製造工程の変更方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の溝部を備えた弾性体を有する振動波モータの製造工程の変更方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の振動波モータは、特公平1−17354号等で公知のように、圧電体の伸縮を利用して、弾性体の駆動面に進行性振動波を発生させ、この進行波によって、駆動面には楕円運動が生じ、この楕円運動の波頭に加圧接触した移動子が駆動される。このような振動波モータは、低回転でも高トルクを有するという特徴があるので、駆動装置に搭載した場合に、その駆動装置のギアを省略することができるため、ギア騒音をなくしたり、位置決め精度が向上できるという利点がある。
【0003】
このような振行性進行波を用いた振動波モータの振動子は、圧電体と弾性体とから構成されており、圧電体と弾性体とは、接着剤等により強固に接着されている。また、弾性体は、圧電体接合面とは反対側の駆動面側に、ほぼ等間隔で、等幅の溝が設けられている。弾性体は、この溝により、内部に生じる曲げ振動の中立面が圧電体側にシフトし、それにより、駆動面側の進行性振動波の振幅が拡大する。
【0004】
この弾性体に発生する進行性振動波は、圧電体の励振により生じる2つの曲げ振動の定在波を合成することにより得られる。この曲げ振動の定在波の共振周波数の値は、振動の次数や外内径を固定した場合に、主に、弾性体の厚さ、特に、弾性体の溝底厚さの値に対応している。例えば、溝底厚さが厚くなると、曲げ振動の定在波の共振周波数は高くなり、それにともない、振動波モータの駆動周波数帯域が高い周波数の方へシフトする。また、溝底厚さが薄くなると、曲げ振動の定在波の共振周波数は低くなり、それにともない、振動波モータの駆動周波数帯域が低い周波数の方へシフトする。
【0005】
この振動波モータの速度制御は、周波数を変えて行う場合が大半である。速度制御を正確に行うためにも、速度ゼロの周波数、ある速度の周波数、最大速度の周波数等、速度と周波数の関係を個々のモータごとに検査して、調整する必要がある。従って、駆動周波数帯域のシフト量が振動波モータの個体差により大きい場合には、適正な駆動周波数帯域を探し出すこと自体に工数が発生する。
【0006】
また、駆動周波数帯域のシフト量が大きいと、駆動回路の発振部もシフト量に対応できない場合が生じる。そのため、周波数帯域が異なった幾つかの発振部を用意して、その帯域のシフト量に応じて選択する必要が生じて、工程が煩雑化するという問題があった。
従って、上述したような工数増、工程の煩雑化を防止して、コスト増をなくすめにも、溝底厚さのバラツキを抑え、駆動周波数帯域のシフト量を小さくする必要があった。
この溝の加工は、フライスや砥石によって行っている場合が通常であり、一溝一溝加工を行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
弾性体に発生する進行性振動波は、圧電体の励振により生じる2つの曲げ振動の定在波を合成することにより得られる。どこの位置でも振幅が均一な進行性振動波を得るためには、2つの定在波の振幅分布形状が均一で、ほぼ同じである必要がある。例えば、弾性体の厚さにバラツキがあった場合に、2つの定在波の振幅分布形状が歪んだりして異なってしまう。この場合に、合成された進行性振動波は、場所によっては振幅が異なってしまうということが生じる。
一方、進行性振動波は、曲げの波動であり、波の位相速度は、厚さに比例する。例えば、弾性体の厚さにバラツキがあった場合に、進行性振動波の位相速度は、場所により異なってしまうということが生じる。
弾性体は、上述したようなバラツキを全くなくせば、振動子としての特性が安定することは予想された。しかし、それには、超高精度加工が必要とされ、コストアップが必至であった。
【0008】
一方、この弾性体は、形状にバラツキがある場合、弾性体の特性が安定せず、具体的には、以下のような問題があった。例えば、弾性体の溝底から圧電体接合面の厚さ(以下、溝底厚さと呼ぶ)にバラツキがあった場合には、進行性振動波の振幅が周方向で一様でなくなったり、位相速度が周方向で一様でなくなったりしてしまい、駆動性能が低下する。これは、本件発明者の実験により明らかとなった。特に、本件発明者の実験によれば、周波数−回転特性が劣化し、低速度駆動がしにくくなる(周波数−回転数線図の傾きが変わってくる)ことがわかった。このように、個体内で弾性体の溝底厚さのバラツキが大きくなると、性能が劣化するという問題が生じる。
また、各個体で溝底厚さがバラツキ、各個体で周波数−回転数線図の傾きが変わってくると、速度制御を周波数で行うためには、各個体で制御パラメータを調整する必要が生じ、工数増となるという問題点も生じる。
【0009】
本発明の課題は、駆動性能が向上し、組立調整の工数が低減された振動波モータの製造工程の変更方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本件発明者は、鋭意研究した結果、溝底厚さのバラツキ傾向と、弾性体の特性との関係を見い出し、溝底厚さのバラツキを全く無くす必要はなく、コストアップを防ぎつつ、安定した振動子を得ることができる振動波モータを発明するに至った。すなわち、請求項1の発明は、駆動信号による圧電体の励振により駆動面に進行性振動波を生じる環状の弾性体に、前記駆動面に溝部を一溝ずつ周方向に沿って形成する工程と、前記弾性体の前記駆動面とは反対の面に前記圧電体を接合して振動子とする工程と、前記弾性体の駆動面に、前記進行性振動波によって駆動される移動子を加圧接触する工程と;を含む振動波モータの製造工程の変更方法であって、少なくとも一つの加工物を作製し、前記加工物の圧電体接合面から前記溝部の溝底までの各溝の厚さtと前記厚さtのバラツキ幅△tとを検出し、検出した前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況と、前記溝底厚さtに比較的大なる段状部分が形成されているか否かの2点を調べ、前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況が、二つの山と谷で対称形を呈した場合には、前記溝部を形成する工程の前に、前記弾性体に両面ラップを施す処理を、前記製造工程に加え、前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況が、ある一部分に偏る分布形状を呈した場合には、前記溝部を形成する工程において前記弾性体の固定に用いられる加工治具を清掃する処理を、前記製造工程に加え、前記厚さtに比較的大なる段状部分が形成されている場合には、一つの前記弾性体に前記溝部を形成する工程に要する暖機運転の時間を調整する処理を、前記製造工程に加えること、を特徴とする振動波モータの製造工程の変更方法である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動波モータの製造工程の変更方法において、前記厚さtに比較的大なる段状部分が形成されている場合とは、ある溝部の厚さとそれに隣接する溝部の厚さとの差をtsとし、前記厚さtの平均をtmとし、ts/tmが0 . 005以上を呈するときであることを特徴とする振動波モータの製造工程の変更方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる振動波モータの実施形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の実施形態は、振動波モータとして、超音波の振動域を利用した超音波モータを例にとって説明する。
図1は、本発明の実施形態の超音波モータ10を説明する図である。図2は、本実施形態の超音波モータ10の振動子11及び移動子17を示す外観斜視図である。
【0016】
本実施形態の超音波モータ10は、振動子11と移動子17とを備え、振動子11側を固定とし、移動子(相対運動部材)17側を回転駆動する形態となっている。そして、振動子11の下側には、緩衝部材14、加圧板15、加圧部材16、支持部材19Aが配置され、移動子17の上側には、振動吸収部材18、回転部材19Bが配置されている。
【0017】
振動子11は、弾性体12と、弾性体12に接合され、後述する電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気機械変換素子(以下、圧電体と称する)13とから構成されている。この振動体11には、進行波が発生するが、本実施形態では、一例として、9波の進行波として説明する。
【0018】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料からなり、その形状は、円環形状となっている。この弾性体12は、圧電体13が接合される反対面には、溝12aが切ってあり、突起部(溝12aがない箇所)12bの先端面が、駆動面12cとなり、移動子17に加圧接触される。
溝12aを切る理由は、進行波の中立面をできる限り圧電体13側に近づけ、これにより、駆動面12cの進行波の振幅を増幅させるためである。
【0019】
圧電体13は、円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられていて、A相とB相との間には、1/4波長分間隔が空くようにしてある。
【0020】
圧電体13の下には、緩衝部材14、加圧板15、加圧部材16、支持部材19Aが配置されている。緩衝部材14は、圧電体13の下に配置されており、振動子11の振動を加圧板15や加圧部材16に伝えないようするための部材であり、例えば、不織布、フェルトなどが使用されている。加圧板15は、加圧部材16の加圧を受けるための板である。加圧部材16は、加圧板15の下に配置されていて、加圧力を発生させる部材である。本実施形態では、加圧部材16を皿バネとしたが、皿バネでなくとも、コイルバネやウェーブバネでもよい。支持部材19Aは、この超音波モータ10を、固定側に支持する部材である。
【0021】
移動子17は、アルミニウム等の軽金属からなり、摺動面17aの表面には、耐摩耗性向上のための表面処理がなされている。この移動子17の上には、移動子17の加圧方向の振動を吸収するために、ゴムなどの振動吸収部材18が配置され、その上には、ベアリングなどの回転部材19Bが配置されている。
【0022】
図3は、本実施形態による超音波モータの駆動制御装置20を説明するブロック図である。まず、超音波モータの駆動制御装置20の構成を説明する。この駆動制御装置20は、発振部21と、制御部22と、移相部23と、増幅部24,25と、検出部26等とを備えている。
【0023】
発振部21は、制御部22の指令により、所望の周波数の駆動信号を発生する。移相部23は、発振器21で発生した駆動信号を90゜位相の異なる2つの駆動信号に分ける。増幅部24,25は、移相部23によって分けられた2つの駆動信号を、それぞれ所望の電圧に昇圧する。増幅部24,25からの駆動信号は、超音波モータ10に伝達され、この駆動信号の印加により、振動子11に進行波が発生し、移動子17が駆動される。
検出部26は、光学式リニアエンコーダ等により構成され、移動子17の駆動によって駆動される被駆動体(不図示)の位置や速度を検出する。
【0024】
制御部22は、CPUからの駆動指令に基づいて、超音波モータ10の駆動を制御する。そして、制御部22は、検出部26からの検出信号を受け、その値に基づいて、位置情報と速度情報を得て、目標位置に位置決めされるように、発振器21の周波数を制御する。
【0025】
次に、本実施形態の超音波モータの駆動制御装置20の動作を説明する。まず、制御部22に目標位置が伝達される。発振部21からは、駆動信号が発生し、その信号は、移相部23により90゜位相の異なる2つの駆動信号に分割され、増幅部24,25により、所望の電圧に増幅される。駆動信号は、超音波モータ10の圧電体13に印加され、圧電体13は、励振され、その励振によって、弾性体12には、9次の曲げ振動が発生する。
圧電体13は、A相とB相とに分けられており、駆動信号は、それぞれA相とB相に印加される。A相から発生する9次曲げ振動とB相から発生する9次曲げ振動とは、位置的な位相が1/4波長ずれるようになっており、また、A相駆動信号とB相駆動信号とは、90゜位相がずれているために、2つの曲げ振動が合成されて、9波の進行波となる。
【0026】
進行波は、その波頭には楕円運動が生じている。従って、移動子17は、駆動面12cに加圧接触されいるので、この楕円運動によって摩擦的に駆動される。検出部26は、移動子17の駆動により駆動される被駆動体に配置されており、検出部26から発生した電気パルスの信号が制御部22に伝達される。制御部22は、この信号に基づいて、現在の位置と現在の速度を得ることが可能となり、これらの位置情報、速度情報及び目標位置情報を基に、発振部21の駆動周波数を制御する。
【0027】
図4は、本実施形態による超音波モータの弾性体の溝部の形状を説明する図である。
弾性体12は、駆動面12c側には、周方向に沿って等間隔で、等幅の溝12aが54個設けられている。本実施形態では、bを弾性体12の全体の高さ、圧電体13の接合面12eから溝底12dまでの値tを溝底厚さと定義する。
本実施形態では、54個の溝12aの溝平均厚さをtm、その厚さのバラツキ幅の値を△tとした場合に、△t/tmが0.01以下のバラツキを有するようにした。
本件発明者は、溝底厚さtのバラツキ幅Δtを、わざと生じさせた試作品を作製して、各試作品の性能を調査し、その実験結果から、上記の条件が得られたものである。
【0028】
図5は、各試作品の内容と性能概要を示す図である。
試作品▲1▼は、「二つ山型」と呼び、溝底厚さtの周方向に沿った分布が二つの山と谷で対称形となったものである。
試作品▲2▼は、「偏芯型」と呼び、溝底厚さtの周方向に沿った分布がある一部分に偏ったものである。
試作品▲3▼は、「段付き型」と呼び、溝底厚さtがある部分で段状になったものである。本実施形態では、最大溝底厚さと最小溝底厚さの差の75%以上の段がある場合と定義している。例えば、最大−最小溝厚さが10μmの場合に、7. 5μmの段がある。
試作品▲4▼は、「ランダム型」と呼び、溝底厚さtのバラツキがランダムに分布しているものである。
なお、図5において、弾性体の平均溝底厚さtmは、1. 5mmである。
【0029】
超音波モータは、図6に示したように、駆動力と摩擦力が拮抗し、駆動が不安定になる周波数域を避けた最低駆動回転数NL(駆動周波数fL)と、共振点付近で駆動が不安定になる周波数域を避けた最大駆動回転数NH(駆動周波数fH)との間で駆動される。
また、超音波モータの性能は、最低駆動回転数NL(駆動周波数fL)から最大駆動回転数NH(駆動周波数fH)までの回転数帯域における消費電力や駆動特性(特性曲線のバラツキ)の安定性によって示すことができる。
さらに、強力な駆動力が得られる最大駆動回転数NH(駆動周波数fH)は、比較的安定しているが、駆動力が弱く摩擦力が拮抗し、駆動が不安定になる手前に設定される最低駆動回転数NL(駆動周波数fL)は、溝底厚さのバラツキ傾向によって変化しやすいことが判った。
図5には、最大駆動回転数NH時の消費電力と、最低駆動回転数NL(駆動周波数fL)から最大駆動回転数NHまでの駆動周波数差(fL−fH)について示した。
この駆動周波数差は、周波数一回転数線図の傾きを示すもので、図6の実線で示される基準特性では、駆動周波数差(fH−fL)が広く、コントロールが安定的に行われるが、fLが低周波数測にシフトしたときには、駆動周波数差がfH−fL’に示すように小さくなり、コントロールが不安定になってしまう。
また、超音波モータの速度制御を周波数で行う場合に、この値に個体差があると個々の個体で制御パラメータを調整する必要が生じ、工数増となる。つまり、駆動周波数差は、大きいほど超音波モータの性能はよいことになる。従って、駆動周波数差に個体差がない超音波モータが望まれる。
【0030】
図5から明らかなように、消費電力については、溝底厚さtのバラツキ量の大きさΔtやその分布形状による有意差はみられない。
しかし、駆動周波数差については、「二つ山型」及び「ランダム型」は、15μm超で値が小さくなる傾向がみられ、「偏芯型」及び「段付き型」は、10μm超で値が小さくなる傾向がみられた。
【0031】
本試作品の平均溝底厚さtmは、1. 5mmであるので、「二つ山型」及び「ランダム型」については、平均溝底厚さtmに対して、バラツキ幅Δtが1. 0%以上ばらつくと駆動周波数差(fL−fH)が小さくなり、「偏芯型」及び「段付き型」については、平均溝底厚さtmに対して、バラツキ幅Δtが0. 7%以上ばらつくと駆動周波数差(fL−fH)が小さくなる結果となった。
【0032】
また、「二つ山型」と「ランダム型」よりも「偏芯型」と「段付き型」の方が、性能劣化に対する影響が大きい結果となった。これは、溝底厚さが全体に対称的又は一様に変化しているよりは、局所的に厚さが異なることや不連続部がある方が進行性振動波の波形や位相速度に影響を与えてるものと推定される。
【0033】
弾性体12に発生する進行性振動波は、圧電体13の励振により生じる二つの曲げ振動の定在波を合成することにより得られる。従って、弾性体12の溝底厚さtにバラツキがあった場合に、二つの定在波の振幅分布形状が歪んだりして異なってしまい、合成された進行性振動波は、場所によっては、振幅が異なってしまうということが生じる。
【0034】
また、進行性振動波は、曲げの波動であり、波の位相速度は厚さに比例する。従って、弾性体12の溝底厚さtにバラツキあった場合に、進行性振動波の位相速度は、場所により異なってしまうということが生じる。これらの理由により、特に、共振から離れた周波数の進行性振動波の形状が乱れ、所望の速度より小さくなるため、駆動周波数差(fL−fH)が小さくなるといった現象が生じるものと考えられる。
【0035】
溝底厚さtのバラツキが生じる原因は、以下の通りである。
▲1▼ 「二つ山型」については、加工前の弾性体の形状が二つ折れ形状となっていて、その状態で溝加工するために生じた。弾性体の形状が二つ折れ形状とは、加工前の弾性体の駆動面と圧電体を貼る面が平ら且つ平行になっていないことをいう。
▲2▼ 「偏芯型」については、加工後の掃除が不十分で、弾性体と雇いの間に異物が挟まったままチャッキングしてしまったために生じた。雇いは、弾性体を固定する加工治具である。
▲3▼ 「段付き型」については、機械の暖気運転が不十分で、加工している内に装置や工具が暖まってしまうために生じた。
▲4▼ 「ランダム型」については、上記した3つの原因の複合と、雇いの変形等により発生した。
【0036】
これらの原因を基に以下の対策を行った。
▲1▼ 二つ山型については、加工前の弾性体に両面ラップ等を行い、上下面の平行度の精度を向上させた。
▲2▼ 偏芯型については、加工後の掃除作業の手順を規定し、異物が残らないようにした。
▲3▼ 段付き型については、機械の暖気運転の手順及び時間を規定した。
▲4▼ ランダム型については、変形しない雇いを作製した。
【0037】
上述した対策を施した上に、弾性体12の溝底厚さtのバラツキ幅Δtを検出し、溝底厚さtの周方向沿った分布が、「二つ山型」に類型されるバラツキ幅Δtの分布が点対称なもの及び「ランダム型」に類型されるバラツキ幅にランダムな分布があるものについては、平均溝底厚さtmに対して、Δt/tmが0.01以内のバラツキを有するようにすることにより、駆動周波数差が均一な超音波モータが得られるようになった。
【0038】
また、「偏芯型」に類型される周方向に対する厚さのバラツキ幅の分布が一部分に偏っている場合には、△t/tmが0.007以下のバラツキを有するようにすることにより、駆動周波数差が均一な超音波モータが得られるようになった。
【0039】
さらに、「段付き型」に類型されるある溝部の厚さとそれに隣接する溝部の厚さとの差をtsと定義した場合であって、ts/tmが0. 005以上のときには、△t/tmが0.007以下のバラツキを有するようにすることにより、駆動周波数差が均一な超音波モータが得られるようになった。
【0040】
これらの結果、各個体の駆動周波数差が均一となったために、個々の個体で制御パラメータを調整する必要がなくなり、工数を減らすことができた。
【0041】
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
本実施形態に用いた超音波モータは、9波の進行性振動波で、54個の溝がある弾性体であるが、他の波数の進行性振動波でも、他の数の溝数でも、進行性振動波を用いた超音波モータであれば同様に適用でき、同様な効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、弾性体の駆動面側に複数の溝部を有し、その溝部の溝底までの各溝平均厚さに対するバラツキ幅の分布が所定の範囲内のバラツキとなるようにしたので、駆動周波数差が均一な超音波モータが得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の超音波モータ10を説明する図である。
【図2】本実施形態の超音波モータ10の振動子11及び移動子17を示す外観斜視図である。
【図3】本実施形態による超音波モータの駆動制御装置20を説明するブロック図である。
【図4】本実施形態による超音波モータの弾性体の溝形状を説明する図である。
【図5】各試作品の内容と性能概要を示す図である。
【図6】超音波モータの駆動周波数と回転速度の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
10 超音波モータ
11 振動子
12 弾性体
12a 溝
12b 突起部
12c 駆動面
13 圧電体
14 緩衝部材
15 加圧板
16 加圧部材
17 移動子
18 振動吸収部材
19A 支持部材
19B 回転部材
20 駆動制御装置
21 発振部
22 制御部
23 移相部
24,25 増幅部
26 検出部
Claims (2)
- 駆動信号による圧電体の励振により駆動面に進行性振動波を生じる環状の弾性体に、前記駆動面に溝部を一溝ずつ周方向に沿って形成する工程と、
前記弾性体の前記駆動面とは反対の面に前記圧電体を接合して振動子とする工程と、
前記弾性体の駆動面に、前記進行性振動波によって駆動される移動子を加圧接触する工程と;を含む振動波モータの製造工程の変更方法であって、
少なくとも一つの加工物を作製し、
前記加工物の圧電体接合面から前記溝部の溝底までの各溝の厚さtと前記厚さtのバラツキ幅△tとを検出し、
検出した前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況と、前記溝底厚さtに比較的大なる段状部分が形成されているか否かの2点を調べ、
前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況が、二つの山と谷で対称形を呈した場合には、前記溝部を形成する工程の前に、前記弾性体に両面ラップを施す処理を、前記製造工程に加え、
前記バラツキ幅Δtの周方向に沿った分布状況が、ある一部分に偏る分布形状を呈した場合には、前記溝部を形成する工程において前記弾性体の固定に用いられる加工治具を清掃する処理を、前記製造工程に加え、
前記厚さtに比較的大なる段状部分が形成されている場合には、一つの前記弾性体に前記溝部を形成する工程に要する暖機運転の時間を調整する処理を、前記製造工程に加えること、を特徴とする振動波モータの製造工程の変更方法。 - 請求項1に記載の振動波モータの製造工程の変更方法において、
前記厚さtに比較的大なる段状部分が形成されている場合とは、ある溝部の厚さとそれに隣接する溝部の厚さとの差をtsとし、前記厚さtの平均をtmとし、ts/tmが0 . 005以上を呈するときであることを特徴とする振動波モータの製造工程の変更方法。
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