放送や通信の分野では、デジタルデータを伝送する場合、伝送路のノイズ等によって受信データに誤りが発生する。そこで、この誤りを訂正するために、送信データに誤り訂正符号を付加し、受信装置においてこれを復号することによって誤りを訂正することが一般的に行なわれている。
地上波デジタル放送や移動体通信など伝送路が特に劣悪なシステムにおいても強力な誤り訂正能力を有する誤り訂正方式としてビタビ復号が知られている。ビタビ復号は、畳込み符号の最尤復号を効率よく実現する誤り訂正方式であって、伝送されてきた受信系列に最も近い伝送系列を推定し、元の情報系列を復号する最尤復号方式の1つである(非特許文献1参照)。
図9は、ビタビ復号器を備える従来のデジタル放送受信装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。図9では、デジタル放送受信装置のうち、誤り訂正に関する部分が主に示されている。
図9を参照して、デジタル放送受信装置100は、アンテナ102と、復調部104と、多重フレーム構成部106と、ビタビ復号器108と、リードソロモン(以下、「RS」とも称する。)復号器110とを備える。アンテナ102は、デジタル変調された無線周波信号(以下、「RF(Radio Frequency)信号」とも称する。)を受信して復調部104へ出力する。復調部104は、アンテナ102から受けるRF信号を各種復調処理によって符号化データに復調する。
多重フレーム構成部106は、復調部104から受ける符号化データをトランスポートストリームデータ(以下、「TSデータ」とも称する。)に変換し、そのTSデータを伝送パケット単位で出力する(以下、TSデータを構成する伝送パケットを「TSP(トランスポートストリームパケット)」と称する。)。
ビタビ復号器108は、多重フレーム構成部106からTSデータをTSP単位で受け、送信装置側で畳込み符号化されているTSデータをビタビ復号して誤り訂正を行なう。
RS復号部110は、ビタビ復号されたTSデータをビタビ復号器108から受け、送信装置側でRS符号化されているTSデータをRS復号する。そして、RS復号部110は、誤り訂正された復号データを図示されないデコーダへ出力し、デコードされたデータが表示装置などに表示される。
図10は、図9に示した多重フレーム構成部106の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図10を参照して、多重フレーム構成部106は、階層分割/階層合成部112と、TSバッファ114と、ヌルパケット生成部116と、セレクトスイッチ118と、TS再生部120とを含む。
階層分割/階層合成部112は、図示されない復調部104によって復調された符号化データを、階層分割、デパンクチャードおよび階層合成などの一連の処理によってTSデータに変換し、その変換されたTSデータをTSバッファ114へ出力する。
TSバッファ114は、階層分割/階層合成部112から受けるTSデータを蓄積する。TS再生部120は、一定時間ごとにTSバッファ114におけるTSデータの蓄積量をチェックし、1TSP分以上のTSデータがTSバッファ114に蓄積されていれば、セレクトスイッチ118をTSバッファ114側に切替える。そして、TS再生部120は、TSバッファ114から出力されるデータパケットDTPを図示されないビタビ復号器108へ出力する。
一方、TS再生部120は、TSバッファ114のデータ蓄積量が1TSP分よりも少ないときは、セレクトスイッチ118をヌルパケット生成部116側に切替える。そして、TS再生部120は、ヌルパケット生成部116によって生成されるヌルパケットNLPをビタビ復号器108へ出力する。
このように、1TSP分のデータがTSバッファ114に蓄積されていないときにヌルパケットNLPを出力するのは、デコード処理の関係上、図示されないデコード部に一定のレートでTSデータが供給される必要があるからである。
図11は、図9に示したビタビ復号器108の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図11を参照して、ビタビ復号器108は、枝メトリック計算回路52と、ACS(加算比較選択)回路54と、パスメトリックメモリ56と、パスメモリ122と、トレースバック回路124と、パスメトリック最小値&状態検索回路126とを含む。
枝メトリック計算回路52は、図示されない多重フレーム構成部106からTSデータを受けると、畳込み符号器のとり得る状態ごとに、その受けたTSデータと当該状態において想定される受信データとの差異を示す枝メトリックを算出し、その枝メトリックをACS回路54へ出力する。
ACS回路54は、枝メトリック計算回路52から各状態に対応する枝メトリックを受け、パスメトリックメモリ56から各状態のパスメトリックを受ける。ここで、各状態は、その状態に対して遷移してくる2つのパスを有しており、ACS回路54は、その2つのパスにそれぞれ付随する2つのパスメトリックの各々に、対応する枝メトリックを加算する。
そして、ACS回路54は、各状態ごとに、当該状態へと遷移する2つのパスについての加算結果を相互に比較し、加算結果の小さい方のパス、すなわち尤度の高い方のパスを選択する。パスが選択されると、ACS回路54は、各状態ごとに選択されたパスにそれぞれ対応する各状態のパスメトリックをパスメトリックメモリ56へ出力し、選択されたパスをパスメモリ122へ出力する。なお、選択されたパスは、「生残りパス」と一般に称され、一方、選択されなかった他方のパスは捨てられる。
パスメトリックメモリ56は、ACS回路54から各状態のパスメトリックを受けると、内部に格納されているパスメトリックをその受けたパスメトリックで更新する。パスメトリック最小値&状態検索回路126は、パスメトリックが単調非減少のものであるため、各状態のパスメトリックのうち最小値のものを検索し、たとえば、各状態のパスメトリックからその最小値を引くなどして、パスメトリックメモリ56に格納されるパスメトリックを規格化する。また、パスメトリック最小値&状態検索回路126は、検索された最小パスメトリックに対応する現時点の状態を検索し、検索された状態をトレースバック回路124へ出力する。
パスメモリ122は、ACS回路54によって選択された各状態ごとの生残りパスについて、その各生残りパスを特定するためのパス情報をパスメモリ長分だけ記憶する。ここで、各状態の生残りパスは、時刻の経過に伴なって1本に収束し、この収束にかかる時間は、システムの性能などによって異なるところ、パスメモリ長は、システムに応じて適切な長さに決定される。
トレースバック回路124は、最小パスメトリックに対応する状態をパスメトリック最小値&状態検索回路126から受け、その状態を起点としてパスメモリ122に記憶されるパス情報を時間的に逆方向にトレースして読出す。そして、トレースバック回路124は、その読出されたパス情報を復号データとして出力する。
上記のビタビ復号は、トレースバック法と呼ばれる。ビタビ復号には、パスメモリがハードレジスタによって構成されるレジスタ法と、パスメモリがRAM(Random Access Memory)などによって構成される上述したトレースバック法とが知られているが、システムが備える性能を考慮してパスメモリ長および状態数が大きくなるデジタル放送受信装置などにおいては、回路規模や消費電力などの観点からトレースバック法が有利であると考えられる。
上述したようなデジタル放送受信装置におけるデジタル変調方式としては、高品質な伝送や周波数利用効率の向上に優れる方式として直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、以下「OFDM」とも称する。)方式が知られている。OFDM方式とは、各搬送波を互いに直交させ、各搬送波ごとにデジタル変調する多重化方式であって、1チャンネルの帯域内に多数のサブキャリアが設けられ、耐マルチパス妨害に優れた変調方式である。このOFDM方式は、今後放送が開始される地上波デジタル放送の変調方式としても採用されている。
OFDM方式による変調データは、「フレーム」と呼ばれる単位で構成されており、各フレームは、「シンボル」と呼ばれる204個のデータ単位を含む。各シンボルは、有効データ、ならびにガードインターバルおよびヌルキャリアを含む無効データからなる。
図12は、OFDMシンボルにおける有効データの構成を示す図である。
図12を参照して、有効データは、所定の単位でグループ化されたデータにパイロット信号が付加された「セグメント」と称される13個のデータ単位で構成される。
図13は、図12に示した各セグメントの構成を示す図である。
図13を参照して、各セグメントは、108×2(M−1)(Mは、モードを表わし、1,2,3のいずれかの値からなる。)個のキャリアで構成されている。図13では、モード1の場合が示されており、各セグメントは、キャリア0〜キャリア107の108個のキャリアで構成される。
このOFDM方式においては、受信装置においてセグメント0〜12の13セグメントを全て受信する場合のほか(以下、このような受信を「13セグメント受信」とも称する。)、一部のセグメントのみを部分的に受信する「部分受信」が可能である。このような受信形態については、デジタル放送受信装置の標準規格として定められている(非特許文献2,3参照)。
岩垂好裕、「符号理論入門」、株式会社昭晃堂、平成4年12月、p.135−159
社団法人電波産業会、「地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 標準規格」、ARIB STD−B31 1.1版、社団法人電波産業会、平成13年11月
社団法人電波産業会、「地上デジタルテレビジョン放送運用規定 技術資料」、ARIB TR−B14 1.1版、社団法人電波産業会、平成14年7月
従来のビタビ復号器においては、有効データを含むデータパケットDLPを前段の多重フレーム構成部から連続して受けることが想定されている。そして、ビタビ復号器がデータパケットDLPを連続して受けることがある場合には、ACS回路によるパスメモリへのデータの書込みとトレースバック部によるパスメモリからのデータの読出しとを並列処理するために、交互に動作する2つのメモリ領域をパスメモリ内に有する必要がある。
図14は、図11に示した従来のビタビ復号器におけるメモリ動作を説明するための図である。
図14を参照して、ビタビ復号器108は、前段の多重フレーム構成部106からTSデータをTSP単位で受ける。TSPは、上述したように、データパケットDTPまたはヌルパケットNLPからなる。
時刻T1において、ビタビ復号器108は、多重フレーム構成部106からデータパケットDTPを受け、そのデータパケットDTPに対応するパス情報がパスメモリ122の領域1に書込まれ、領域1内のパス情報が更新される。
時刻T2において、時刻T1に続いてデータパケットDTPが入力されると、そのデータパケットDTPに対応するパス情報がパスメモリ122の領域2に書込まれ、領域2内のパス情報が更新される。そして、領域2にパス情報が書込まれている間、トレースバック部124は、領域1のパス情報をトレースバックし、そのトレースバック結果が領域1から読出されて生残りパスメモリ領域1に書込まれる。
時刻T3において、時刻T2に続いてデータパケットDTPが入力されると、そのデータパケットDTPに対応するパス情報がパスメモリ122の領域1に書込まれ、領域1内のパス情報が更新される。そして、領域1にパス情報が書込まれている間、トレースバック部124は、領域2のパス情報をトレースバックし、そのトレースバック結果が領域2から読出されて生残りパスメモリ領域2に書込まれる。
このように、データパケットDTPが連続して入力される場合には、パス情報を格納するメモリ領域をパスメモリ内に2つ設け、それらを交互に使用することによってデータの書込みと読出しとを並列処理する必要がある。
一方、データパケットDTPが連続して入力されない場合には、パスメモリからの読出処理とパスメモリへの書込処理とが同時に行なわれることはなく、上記のようなメモリ構成とする必要はない。しかしながら、従来のビタビ復号器は、入力データの特性を考慮せずに、データパケットDTPを連続して受けることを前提としていたため、データパケットDTPが連続して入力されないことが予めわかっている場合に対しても、従来のようなメモリ構成を有していた。
また、上記のトレースバック法においては、最小のパスメトリックに対応する現時点の状態がパスメトリック最小値&状態検索回路126によって検索され、その状態を起点としてトレースバックが行なわれる。ここで、データの一部に既知のデータが含まれていることが予め判っているときは、その既知データに対応する部分を受けたときの状態を予め決定できる。したがって、このような既知データを利用してトレースバックを行なうことによって、最小のパスメトリックに対応する状態の検索処理を不要とすることができる。
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、入力データの特性を利用して必要メモリ量の削減を図るビタビ復号器を提供することである。
また、この発明の別の目的は、入力データの特性を利用して必要メモリ量の削減を図るデジタル受信装置を提供することである。
また、この発明の別の目的は、入力データの特性を利用してトレースバック処理を行なうビタビ復号器を提供することである。
また、この発明の別の目的は、入力データの特性を利用してトレースバック処理を行なうデジタル受信装置を提供することである。
この発明によれば、ビタビ復号器は、畳込み符号化された所定単位のデータを少なくとも所定単位に対応する間隔をおいて受けるビタビ復号器であって、所定単位のデータに基づいて算出された生残りパスに対応するパス情報を内部状態ごとに記憶するパスメモリと、パスメモリへパス情報の書込みが行なわれた後、パスメモリに記憶されたパス情報をトレースバックし、最尤パスメトリックを有するパス情報を読出して出力するトレースバック部とを備える。
好ましくは、パスメモリは、少なくとも所定単位のデータ分以上パス情報を内部状態ごとに記憶し、トレースバック部は、所定単位のデータに含まれる既知データによって決定される状態を起点として、パスメモリに記憶されたパス情報をトレースバックする。
好ましくは、所定単位は、所定の規格に基づいたトランスポートストリームパケット単位である。
また、この発明によれば、デジタル受信装置は、畳込み符号化された符号化データを含む伝送信号を受信するデジタル受信装置であって、受信信号を連続する所定単位のデータに変換して出力するデータ変換部と、データ変換部から所定単位のデータを受け、畳込み符号化された符号化データを最尤復号法によって復号するビタビ復号器とを備え、データ変換部は、所定単位のデータを少なくとも所定単位に対応する間隔をおいて出力し、ビタビ復号器は、所定単位のデータに基づいて算出された生残りパスに対応するパス情報を内部状態ごとに記憶するパスメモリと、パスメモリへパス情報の書込みが行なわれた後、パスメモリに記憶されたパス情報をトレースバックし、最尤パスメトリックを有するパス情報を読出して出力するトレースバック部とを含む。
好ましくは、パスメモリは、少なくとも所定単位のデータ分以上パス情報を内部状態ごとに記憶し、トレースバック部は、所定単位のデータに含まれる既知データによって決定される状態を起点として、パスメモリに記憶されたパス情報をトレースバックする。
好ましくは、受信信号は、直交周波数分割多重方式によって変調された部分受信信号である。
好ましくは、所定単位は、所定の規格に基づいたトランスポートストリームパケット単位である。
この発明によれば、ビタビ復号器において、入力データの特性を考慮してパスメモリへのデータの書込みとパスメモリからのデータの読出しとを同時に行なわないようしたので、ビタビ復号器におけるパスメモリの必要メモリ量を半減することができる。したがって、回路面積の縮小および消費電力の削減を図ることができる。
また、この発明によれば、ビタビ復号器において、所定単位のデータに含まれる既知データによって決定される状態を起点としてトレースバックするようにしたので、最小パスメトリックに対応する状態を検索する回路を設けることなく最尤の生残りパスを決定できる。したがって、さらに、回路面積の縮小および消費電力の削減を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明によるデジタル放送受信装置におけるフロントエンド部の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図1を参照して、デジタル放送受信装置1は、チューナ2と、A/D変換部4と、ヒルベルト変換部6と、遅延回路8と、狭帯域自動周波数同調(AFC:Auto Frequency Control)、クロック再生およびシンボル同期の各処理を行なう処理部10と、高速フーリエ変換部(以下、「FFT部」とも称する。)12と、広帯域AFC部14と、フレーム同期/TMCC復号部16と、差動検波/同期検波部18と、周波数デインタリーブ部20と、時間デインタリーブ部22と、デマッピング部24と、ビットデインタリーブ部26と、多重フレーム構成部28と、ビタビ復号器30と、バイトデインタリーブ部32と、エネルギー拡散部34と、RS復号器36とを備える。
チューナ2は、図示されないアンテナによって受信されたRF信号を受け、そのRF信号を中間周波数(IF周波数)にダウンコンバートし、IFフィルタで所望の周波数を抽出した後、さらに周波数変換を施してIF周波数の信号をベースバンド信号に変換する。
A/D変換部4は、チューナ2からベースバンド信号を受け、アナログ信号であるベースバンド信号をデジタル信号に変換する。
ヒルベルト変換部6は、A/D変換部4からの出力を受けてヒルベルト変換を行なう。遅延回路8は、A/D変換部4からの出力を所定時間遅延させて処理部10へ出力する。処理部10は、ヒルベルト変換部6および遅延回路8からの出力を受け、狭帯域AFC、クロック再生およびシンボル同期の各処理を行なう。そして、処理部10は、実軸(以下、「I軸」とも称する。)成分の信号(同相検波軸信号)、および虚軸(以下、「Q軸」とも称する。)成分の信号(直交検波軸信号)をFFT部12へ出力する。
FFT部12は、入力信号に対して高速フーリエ変換を行ない、時間軸データを周波数軸データに変換する。広帯域AFC部14は、FFT部12からの出力を受け、データ内に所定の規格に定められた配置位置で配置されている多数のパイロット信号のパターンマッチングを行なうことにより、各放送形態でのキャリア間隔単位の周波数ずれを調整する。
フレーム同期/TMCC復号部16は、広帯域AFC部14からの出力を受け、1シンボルにつきTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号を1ビット復号する。TMCC信号には同期ワードおよび各種伝送パラメータが含まれている。1フレーム分のTMCC信号が復号されると、フレーム同期/TMCC復号部16は、同期ワードを検出することによりフレーム先頭位置を決定し、これによってフレーム同期がとられる。その後、フレーム同期/TMCC復号部16は、TMCC信号の誤り訂正を行なう。
差動検波/同期検波部18は、TMCC信号に含まれる各種伝送パラメータに基づいて、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の各変調方式を判別し、その判別結果に基づいて復調処理を行なう。
周波数デインタリーブ部20は、差動検波/同期検波部18からの出力を受け、電波の反射などによる特定周波数の信号の欠落を補うために行なわれた周波数インタリーブを元に戻す処理を行なう。時間デインタリーブ部544は、対フェージングなどのために施された時間インタリーブを元に戻す処理を行なう。
デマッピング部24は、時間デインタリーブが行なわれたI軸成分およびQ軸成分の信号を、6ビット(QPSKの場合)、12ビット(16QAMの場合)または18ビット(64QAMの場合)の信号に変換する。ビットデインタリーブ部26は、誤り耐性を増加させる目的で行なわれたビットインタリーブを解除する処理を行なう。
多重フレーム構成部28は、ビットデインタリーブ部26からの出力を受け、その受けたデータをTSデータに変換し、そのTSデータをTSP単位で出力する。なお、この多重フレーム構成部28の構成は、背景技術で説明した多重フレーム構成部106の構成と同じである。
ビタビ復号器30は、多重フレーム構成部28からTSデータをTSP単位で受け、送信装置側で畳込み符号化されているTSデータをビタビ復号して誤り訂正を行なう。ビタビ復号器30の構成については、後ほど詳しく述べる。
バイトデインタリーブ部32は、ビットインタリーブ同様、誤り耐性を増加させる目的で行なわれたバイトインタリーブを解除する。エネルギー拡散部34は、バイトデインタリーブ部32からの出力を受けてエネルギー拡散処理を行なう。RS復号器36は、エネルギー拡散部34からの出力を受け、送信装置側でRS符号化されているTSデータをRS復号する。
そして、RS復号されたTSデータは、図示しないMPEGデコード部において圧縮信号が伸張され、図示しないデジタル/アナログ変換部を経由してアナログ映像やアナログ音声に変換される。
なお、多重フレーム構成部28は、「データ変換部」を構成する。
図2は、図1に示したビタビ復号器30が受けるTSデータの構成を説明するための図である。
図2を参照して、多重フレーム構成部28によって生成されビタビ復号器30に入力されるTSデータはTSP単位からなり、TSPは、上述したように、データパケットDTPまたはヌルパケットNLPからなる。イネーブル信号は、多重フレーム構成部30によって生成され、データパケットDTPの出力に応じてH(論理ハイ)レベルとなる。
ここで、デジタル受信装置1は、デジタル変調方式としてOFDM方式を用いており、さらに、シンボルを構成する13セグメントのうち1セグメントのみを受信する部分受信を行なう。そして、上述した非特許文献2,3に示される標準規格によれば、13セグメント受信時は、背景技術において説明したようにデータ受信時にデータパケットDTPが連続するのに対し、部分受信時は、上記標準規格によると、キャリア変調方式および符号化率がそれぞれ16QAMおよび1/2の最大伝送容量時を想定しても、データパケットDTPが連続することがない。
したがって、図2に示されるように、TSデータにおいてデータパケットDTPが連続することはなく、部分受信が行なわれるこのデジタル放送受信装置1においては、データパケットDTPの次のTSPは、必ずヌルパケットNLPとなる。なお、上述したように、データパケットDTPに応じて、イネーブル信号はHレベルとなる。
さらに、全てのTSPの最後部には、所定の既知データが付加されている。
図3は、図1に示したビタビ復号器30が受けるTSPの構成を示す図である。
図3を参照して、各TSPの最後部には、16進数で表現される“47”(以下、「47Hex」と称する。)が既知データとして必ず付加されている。すなわち、TSデータは、一定間隔ごとに47Hexを必ず含む。したがって、この既知データを利用することによって、後述するように、ビタビ復号器30においてパスメモリをトレースバックする際に、最適パスを一意に決定することができる。
図4は、図1に示したビタビ復号器30の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図4を参照して、ビタビ復号器30は、枝メトリック計算回路52と、ACS回路54と、パスメトリックメモリ56と、パスメトリック最小値検索回路58と、パスメモリ60と、トレースバック回路62とを含む。枝メトリック計算回路52、ACS回路54、およびパスメトリックメモリ56の各々は、背景技術において説明したビタビ復号器108における各回路とそれぞれ同じであるので、その説明は繰返さない。
パスメトリック最小値検索回路58は、各状態のパスメトリックのうち最小値のものを検索し、パスメトリックメモリ56に格納されるパスメトリックを規格化する処理を行なう。
パスメモリ60は、ACS回路54によって選択された各状態ごとの生残りパスについて、その各生残りパスを特定するためのパス情報をパスメモリ長分だけ記憶する。ここで、このパスメモリ60は、背景技術において説明したような交互に動作する2つのメモリ領域を備えていない。その理由は、上述したように、このデジタル受信装置1においては、部分受信が行なわれるところ、図2に示したように、ビタビ復号器30はデータパケットDTPを連続して受けることがないので、パスメモリ60において、ACS回路54によるデータの書込みと後述するトレースバック回路62によるデータの読出しとをシリアルに処理することができるからである。
トレースバック回路62は、パスメモリ60に記憶されるパス情報を時間的に逆方向にトレースして読出す。ここで、トレースバック回路62は、パスメモリ60に記憶される1TSP分のパス情報に含まれる既知データの47Hexを用いてパス情報をトレースする。すなわち、TSPの最後部には既知データである47Hexが付加されているので、トレースバック回路62は、この既知データによって決定される状態を起点として1TSP分のパス情報をトレースする。
したがって、このビタビ復号器30においては、パスメトリック最小値検索回路58は、背景技術において説明したビタビ復号器108におけるパスメトリック最小値&状態検索回路126に設けられていた、最小パスメトリックに対応する状態を検索する処理を備えていない。
なお、特に図示しないが、ビタビ復号器30に含まれる各回路は、多重フレーム構成部28からイネーブル信号を受けており、イネーブル信号がL(論理ロー)レベルのとき、枝メトリック計算回路52、ACS回路54、およびパスメトリック最小値検索回路58については、動作が停止し、パスメトリックメモリ56およびパスメモリ60については、記憶データが保持される。
図5は、図4に示したパスメモリ60の構成を示す機能ブロック図である。
図5を参照して、パスメモリ60は、メモリ領域602と、メモリ制御部604とからなる。メモリ領域602は、ACS回路54によって選択された各状態ごとの生残りパスについて、その生残りパスを特定するためのパス情報を1TSP分記憶する。メモリ制御部604は、メモリ領域602へのデータの書込みおよびデータの読出しをシリアルに制御する。ここで、パスメモリ60は、交互に動作する2つのメモリ領域を備えないので、交互に動作する2つのメモリ領域を備える場合と比べて必要メモリ量は1/2である。
図6は、ビタビ復号器がデータパケットDTPを連続して受けることを想定しているパスメモリの構成例を示す機能ブロック図である。なお、このパスメモリは、図5に示したパスメモリ60と構成を比較するために示される一例であって、実際にビタビ復号器30に含まれるものではない。
図6を参照して、このパスメモリ60Aは、第1および第2のメモリ領域602A,602Bと、メモリ制御部604Aと、セレクトスイッチ606A,606Bとからなる。第1および第2のメモリ領域602A,602Bは、ACS回路54によって選択された各状態ごとの生残りパスについて、その生残りパスを特定するためのパス情報を1TSP分交互に記憶する。
メモリ制御部604Aは、TSPを受けるごとにセレクトスイッチ606A,606Bを切替える。そして、メモリ制御部604Aは、第1のメモリ領域602Aにパス情報が書込まれているときは、第2のメモリ領域602Bからパス情報が読出されるようにセレクトスイッチ606A,606Bを制御し、第2のメモリ領域602Bにパス情報が書込まれているときは、第1のメモリ領域602Aからパス情報が読出されるようにセレクトスイッチ606A,606Bを制御する。
このように、図5に示したパスメモリ60は、図6に示したパスメモリ60Aに比べて必要メモリ量を半減することができる。
図7は、図4に示したビタビ復号器30におけるメモリ動作を説明するための図である。
図7を参照して、ビタビ復号器30は、前段の多重フレーム構成部28からTSデータをTSP単位で受ける。TSPは、データパケットDTPまたはヌルパケットNLPからなり、上述したように、データパケットDTPが連続してビタビ復号器30に入力されることはない。
時刻T1において、ビタビ復号器30は、多重フレーム構成部28からデータパケットDTPを受け、そのデータパケットDTPに対応するパス情報がパスメモリ60のメモリ領域602に書込まれ、メモリ領域602内のパス情報が更新される。
時刻T2において、ビタビ復号器30は、多重フレーム構成部28からヌルパケットNLPを受ける。したがって、ビタビ復号器30においてパスメモリ60のメモリ領域602へのデータの書込みは行なわれない。一方、トレースバック回路62は、メモリ領域602のパス情報をトレースバックし、そのトレースバック結果がメモリ領域602から読出されて生残りパスメモリ領域に書込まれる。
時刻T3においても、ビタビ復号器30は、多重フレーム構成部28からヌルパケットNLPを受ける。したがって、ビタビ復号器30においてパスメモリ60のメモリ領域602へのデータの書込みは行なわれない。一方、トレースバック回路62は、トレースバック結果を生残りパスメモリ領域から読出し、その読出した結果を復号結果として出力する。
図8は、図4に示したビタビ復号器30の各部の動作を説明するための図である。
図8を参照して、時刻T1〜T2において、ビタビ復号器30は、ヌルパケットNLPおよびそれに応じてLレベルとなるイネーブル信号を多重フレーム構成部28から受ける。そうすると、枝メトリック計算回路52、ACS回路54、およびパスメトリック最小値検索回路58の各々は動作を停止し、パスメトリックメモリ56およびパスメモリ60は、それぞれ記憶しているパスメトリックおよびパス情報を保持する。なお、トレースバック回路62の状態は、時刻T1前の状態に依存する。
時刻T2〜T3において、ビタビ復号器30は、データパケットDTPおよびそれに応じてHレベルとなるイネーブル信号を多重フレーム構成部28から受ける。そうすると、枝メトリック計算回路52、ACS回路54およびパスメトリック最小値検索回路58の各々は、上述した所定の処理を行なう。そして、パスメトリックメモリ56は、記憶しているパスメトリックの内容が更新され、パスメモリ60には、受けたデータパケットDTPに対応するパス情報が書込まれる。
なお、この期間においては、パスメモリ60にパス情報が書込まれているので、トレースバック回路62は、動作を停止している。また、データパケットDTPの最後部に付加されている47Hexの既知データを受けている期間において、図に示されるように、枝メトリック計算回路52は、その既知データに対応する枝メトリックを出力する外部終結処理を行なってもよく、パスメトリックメモリ56は、パスメトリックを初期化する内部終結処理(たとえば最小値に設定される。)を行なってもよい。
時刻T3〜T4において、ビタビ復号器30は、ヌルパケットNLPおよびそれに応じてLレベルとなるイネーブル信号を多重フレーム構成部28から受ける。したがって、時刻T1〜T2の場合と同様に、枝メトリック計算回路52、ACS回路54、およびパスメトリック最小値検索回路58の各々は、その動作を停止する。一方、トレースバック回路62は、時刻T2〜T3にパスメモリ60に書込まれたパス情報をトレースバックし、最尤の生残りパスを生残りパスメモリへ書込む。
時刻T4〜T5において、ビタビ復号器30は、ヌルパケットNLPおよびそれに応じてLレベルとなるイネーブル信号を多重フレーム構成部28から受ける。したがって、時刻T3〜T4に続いて、枝メトリック計算回路52、ACS回路54、およびパスメトリック最小値検索回路58の各々は、その動作を停止する。一方、トレースバック回路62は、時刻T3〜T4に生残りパスメモリに書込まれた最尤の生残りパスを読出し、その読出された最尤の生残りパスを復号結果として出力する。
時刻T5〜T6における各回路の処理は、時刻T2〜T3における各回路の処理とそれぞれ同じである。
以上のように、この実施の形態によるデジタル受信装置1によれば、部分受信時における受信信号の特性を考慮して、ビタビ復号器30におけるパスメモリへのデータの書込みとパスメモリからのデータの読出しとを同時に行なわないようしたので、ビタビ復号器30におけるパスメモリの必要メモリ量を半減することができる。したがって、回路面積の縮小および消費電力の削減を図ることができる。
また、この実施の形態によるデジタル受信装置1によれば、ビタビ復号器30においてTSPの最後部に含まれる既知データを起点としてトレースバックするようにしたので、最小パスメトリックに対応する状態を検索する回路を設けることなく最尤の生残りパスを決定できる。したがって、さらに、回路面積の縮小および消費電力の削減を図ることができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,100 デジタル放送受信装置、2 チューナ、4 A/D変換部、6 ヒルベルト変換部、8 遅延回路、10 処理部、12 FFT部、14 広帯域AFC部、16 フレーム同期/TMCC復号部、18 差動検波/同期検波部、20 周波数デインタリーブ部、22 時間デインタリーブ部、24 デマッピング部、26 ビットデインタリーブ部、28,106 多重フレーム構成部、30,108 ビタビ復号器、32 バイトデインタリーブ部、34 エネルギー拡散部、36,110 RS復号器、52 枝メトリック計算回路、54 ACS回路、56 パスメトリックメモリ、58 パスメトリック最小値検索回路、60,60A,122 パスメモリ、62,124 トレースバック回路、102 アンテナ、104 復調部、112 階層分割/階層合成部、114 TSバッファ、116 ヌルパケット生成部、118,606A,606B セレクトスイッチ、120 TS再生部、126 パスメトリック最小値&状態検索回路、602 メモリ領域、602A 第1のメモリ領域、602B 第2のメモリ領域、604,604A メモリ制御部。