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JP4132125B2 - ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤 - Google Patents

ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)接着阻害剤に関する。さらに詳しくは、胃粘膜上皮細胞へのヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、強酸性である胃内には細菌は棲息していないと考えられていた。しかし、オーストラリアのWarren、Marshallらは、ヒトの胃粘膜からヘリコバクター・ピロリという鞭毛を有するグラム陰性桿菌を単離し、培養に成功した(Warren J R et al、Lancet、、1273(1983)参照)。種々の研究の結果、この菌は胃炎(Morris. A et al、Am. J. Gastroenterol.、82、192(1987)参照)や胃十二指腸潰瘍(Asaka. M et al、Gastroenterol. Jap.、28(suppl. 5)163(1993)参照)、さらには胃癌(Personnet. J et al、N. Eng. J. Med.、325、1127(1991)参照)の発症に関与することが強く推察されている。さらにこの菌の除菌により胃炎や胃十二指腸潰瘍の再発が見られなくなることから(Marshall B J et al、Lancet、、1437(1988)参照)、H2ブロッカーなどを用いた従来型の治療で見られた再発という現象にこの細菌が大きく関与していることが明らかになった。
【0003】
近年、抗生剤とプロトンポンプインヒビターを用いたヘリコバクター・ピロリの除菌治療が行なわれているが、大量の抗生剤を長期投与する必要があるため、副作用や耐性菌の出現などの問題が生じており(Maeyama. H et al、日本消化器病学会雑誌、92、237(1995)参照)、より副作用の少ないヘリコバクター・ピロリ除菌剤の開発が求められている。そこで、我々は、新たなヘリコバクター・ピロリ除菌剤の開発を目指して、ヘリコバクター・ピロリと胃粘膜上皮細胞の接着過程に注目した。
【0004】
ヘリコバクター・ピロリはアンモニアの産生源であるウレアーゼや重炭酸イオン、各種栄養物質に対する正の走化性(これらの物質、つまりウレアーゼや重炭酸イオン、各種栄養物質の産生源へ移動する)および、酸に対する負の走化性を有しており、これらの条件のえられる部位、つまり幽門部の上皮細胞(pH7〜8)に最初に接着する(中澤晶子、日本細菌学雑誌、50(3)、777(1995)参照)。この際、ヘリコバクター・ピロリ側では、ice遺伝子(上皮と接触することにより誘導される遺伝子)由来の20.6kDaのタンパクの産生が高まり、接着能が亢進することが報告されている(杉山敏郎、Mebio、13(10)、25(1996)参照)。また、ヘリコバクター・ピロリと細胞との接着には硫酸化糖(Sloamiany B L et al、Biochem. International、19(4)、929(1989)参照)やフコース(Falk. P、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、90、2035(1993)参照)、シアル酸糖(Evans D G et al、J. Bacteriol.、175、674(1993)参照)の関与が報告されている。
【0005】
フコースはABO式血液型のうちO型の血液型物質の糖鎖を構成する糖の中の1つであり、フコースを有するルイス血液型抗原Lewis bにヘリコバクター・ピロリが結合したという報告がサイエンス誌(Boren. T et al、Science、262、1892(1993)参照)に掲載され注目を集めたが、Lewis b分泌型、非分泌型でヘリコバクター・ピロリ感染率に差違を認めないとの報告(Yaron. N et al、Am. J. Gastroenterol.、91、101(1996)参照)が多く出され、現在では否定的である。また、シアル酸に関しては、N−アセチルノイラミニル−α(2,3)ラクトースに特異的な20kDaのHpaAタンパクが菌体に認められている点(Evans D G、J. Bacteriol.、175、674(1993)参照)、シアル酸残基を多く持つフェツインによりヘリコバクター・ピロリと細胞の接着が阻害されたという報告(Kobayashi. Y et al、Infect. Immun.、61、4058(1993)参照)から注目されているが、フェツインによりヘリコバクター・ピロリと細胞の接着は影響されなかった(Kobayashi. Y et al、Infect. Immun.、61、4058(1993)参照)という先ほどの報告とは逆の結果が出されている点、細胞をシアリダーゼ処理してシアル酸を除いても接着に影響がなかったという報告(Kamisago. S et al、Infect. Immun.、64、624(1996)参照)からシアル酸受容因子説には不明な点が多い。一方、硫酸化糖脂質であるスルファチドは酸性条件下でも安定であり、ヘリコバクター・ピロリが最初に生着する幽門部に多く存在する(Natomi. H et al、Biochim. Biophys. Acta、961、213(1988)参照)。また、ヒトの胃粘膜から抽出した糖脂質をTLCで展開し、ヘリコバクター・ピロリとインキュベートしたところ、スルファチド画分に強い接着が見られたという報告(Saitoh. T et al、FEBS. Lett.、282、385(1991)参照)、細胞に対するヘリコバクター・ピロリの接着が抗スルファチド抗体で抑制されたという報告(Saitoh. T et al、FEBS. Lett.、282、385(1991)参照)、ヘリコバクター・ピロリを酸処理したところ様々な糖脂質のうちスルファチドに対する接着能が顕著に強くなったという報告(Huesca. M et al、Infect. Immun.、64、2643(1996)参照)がある。
【0006】
本発明者らは、スルファチドが有力なヘリコバクター・ピロリの胃粘膜上皮細胞側の接着因子ではないかと考え、ELISA法を用いたスルファチドに対するヘリコバクター・ピロリの接着系を確立し、さらに、砂ネズミを用いたヘリコバクター・ピロリ感染モデル(Hirayama. F et al、実験潰瘍、23(1)、56(1996)参照)を用いて、ヘリコバクター・ピロリ接着阻害物質の検討をした。
【0007】
一方、フコイダンは褐藻類(たとえば、ヒバマタ(Fucus)属、コンブ(Laminaria)属またはエゾイシゲ(Pelvetia)属など)由来のフコース硫酸含有多糖類である。
【0008】
このフコイダンは血液凝固阻止作用、抗高脂血症作用、制癌作用などの生理活性を示すことが報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヘリコバクター・ピロリの胃粘膜上皮細胞への接着を阻害する物質を有効成分とするヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新しいヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤を開発すべく、鋭意検討した結果、ガゴメコンブ(Kjellmaniella crassifolia)から、グルクロン酸含有フコイダンとグルクロン酸非含有フコイダンとを分離することに成功し、前記グルクロン酸含有フコイダンがヘリコバクター・ピロリのスルファチドに対する接着を強く阻害することを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、グルクロン酸含有フコイダンを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤の有効成分であるフコイダンは海藻由来のフコイダンから調製されるグルクロン酸を有意に含有するグルクロン酸含有フコイダンであればよく、とくに制限はないが、ガゴメコンブ由来の多糖類から調製されるグルクロン酸含有フコイダンが好ましい。
【0013】
以下、ガゴメコンブを出発物質とするばあいについて具体的に説明する。
【0014】
ガゴメコンブは通常食用として用いられており、本発明で用いるガゴメコンブは、天然のものであっても加工されたものであってもいずれのものでもよい。
【0015】
ガゴメコンブ由来のフコイダン中グルクロン酸含有フコイダンとグルクロン酸非含有フコイダンの存在比は約1:2であり、グルクロン酸含有フコイダンはフコース、マンノース、ガラクトース、グルクロン酸などを含み、該フコイダン中のグルクロン酸含量は10〜30重量%、通常15〜24重量%、硫酸含量は約20重量%である。一方、グルクロン酸非含有フコイダンはフコースとガラクトースを含み、硫酸含量は約50重量%である。分子量は両物質ともに約20万を中心に分布している(第18回糖質シンポジウム要旨集、159頁、(1996)参照)。
【0016】
ガゴメコンブ由来のフコイダンは、通常のフコイダンの製造法にしたがって製造される。たとえば、エタノール洗浄、熱水抽出を行なったのちに、塩化セチルピリジニウムを用いてフコイダンを沈殿させることによりえられる。
【0017】
グルクロン酸含有フコイダンおよびグルクロン酸非含有フコイダンはガゴメコンブから前記のようにしてフコイダンを調製したのち、陰イオン交換樹脂、界面活性剤などを用いて分離される。
【0018】
前記陰イオン交換樹脂の具体例としては、DEAE−セルロース、DEAE−デキストランなどがあげられ、なかでもDEAE−セルロファイン(Cellulofine、商品名、生化学工業(株)製、DEAE−セファデックス(Sephadex、商品名、ファルマシア社製)が好ましく、とりわけDEAE−セルロファインA−800(商品名、生化学工業(株)製)が好ましい。
【0019】
陰イオン交換樹脂を用いる分離方法としては、前記樹脂を充填剤とするカラムクロマトグラフ法において緩衝液としてCaCl2/酢酸ナトリウム、展開溶媒としてNaCl溶液を用いる勾配溶出法がよい。この分離法ではグルクロン酸含有フコイダンが1番目のピークとして、グルクロン酸非含有フコイダンが2番目のピークとして溶出する。
【0020】
前記界面活性剤の好ましい具体例としては、陽イオン性界面活性剤があげられ、なかでも塩化セチルピリジニウムが好ましい。
【0021】
界面活性剤を用いる分離方法としては、界面活性剤を溶解したNaCl溶液にフコイダンを溶解し、溶解性のグルクロン酸含有フコイダンを遠心分離上清として調製し、そののち限界ろ過、エタノール沈殿を行なう方法がよい。
【0022】
本発明でいう、ヘリコバクター・ピロリの接着とは、胃粘膜上皮細胞に対するヘリコバクター・ピロリの接着を意味する。
【0023】
本発明で用いるELISA法を用いたヘリコバクター・ピロリの接着系とは、胃粘膜上皮細胞のヘリコバクター・ピロリの接着因子の1つと考えられているスルファチドをELISAプレートにコーティングし、そこに各試験物質と前培養したヘリコバクター・ピロリを加え、接着したヘリコバクター・ピロリを抗原・抗体反応により検出する系である。
【0024】
本発明の接着阻害剤は、一般的な医薬製剤の形態に調製される。前記製剤は、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤および滑沢剤などの希釈剤あるいは賦形剤を用いて通常の方法で調製される。これら医薬製剤は、各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして、錠剤、丸剤、散剤、液剤、顆粒剤、カプセル剤またはシロップ剤などがあげられる。
【0025】
本発明の医薬の投与方法は、各種製剤形態、患者の年齢、性別そのほかの条件、疾患の程度などに応じて経口投与されるほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。。
【0026】
所望の治療的効果を達成するためには、有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別およびそのほかの条件、疾患の程度などにより適宜選択されるが、通常、成人1日当り1〜50000mgの範囲にあり、好ましくは5〜10000mgから選択される。単位投与形態は少なくとも1日1回、好ましくは1日3回、より好ましくは1日5回投与することができる。
【0027】
また、経口投与では1000mg/kgの投与量でも毒性が認められなかった。
【0028】
本発明のヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤は、胃炎、胃十二指腸潰瘍の予防薬または治療薬として、さらには胃癌の発症を抑制する薬物として有用である。加えて、本発明に用いるガゴメコンブ由来フコイダンは工業的に供給可能である点、原料の褐藻類は日常的に食品として摂取しているものであり、安全性が高いという点でもすぐれている。
【0029】
【実施例】
つぎに、実施例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、実施例における%は重量%を意味する。
【0030】
実施例1
(1)市販のガゴメコンブ粉末2kgを80%エタノールで80℃、2時間洗浄し、ろ過によりエタノール洗浄粉末を調製した。つぎに95℃、2時間の熱水抽出を行ない、ろ過により熱水抽出液40リットルをえた。この抽出液に塩化セチルピリジニウムをこれ以上沈殿が生成しなくなるまで添加し、生成した沈殿(フコイダン)を遠心分離し、えられた沈殿を80%エタノールで洗浄したのち、2MのNaCl溶液に溶解し、3リットルの溶液を調製した。この溶液を陰イオン交換樹脂であるDEAE−セルロファインA−800(生化学工業(株)製)処理、ポアサイズ10万の限外ろ過膜を用いる限外ろ過処理、11000g、40分間の遠心分離処理をし、精製フコイダン溶液4リットルを調製した。ついで凍結乾燥により精製乾燥フコイダン約80gを調製した。
【0031】
(2)前記(1)でえられた精製フコイダン8gをDEAE−セルロファインA−800カラムによりグルクロン酸含有フコイダンとグルクロン酸非含有フコイダンに分離し、脱塩後各フコイダンの凍結乾燥物を調製した。カラムサイズが10.5×46.5cmのカラム、0.1M CaCl2/20mM酢酸ナトリウム(pH6.0)の緩衝液、0.0〜1.5Mの濃度勾配のNaClを用いてクロマトグラフィーを行なった。結果を図1に示す。図1はグルクロン酸含有フコイダンとグルクロン酸非含有フコイダンの分離パターンを示す図であり、縦軸は吸光度、横軸は1画分500mlでの画分番号を示し、図中、黒丸はDuboisらの方法(Analytical Chemistry、28、350〜356、(1956))のフェノール硫酸法により測定した各画分の480nmでの吸光度、黒三角はBitterらの方法(Analytical Biochemistry、、330〜334、(1962))のカルバゾール硫酸法で測定した各画分の530nmでの吸光度を示す。図中、前ピークがグルクロン酸含有フコイダン、後ろピークがグルクロン酸非含有フコイダンを示すピークである。
【0032】
(3)前記(1)でえられた精製フコイダン117gを5850mlの2M NaCl溶液に溶解後、陽イオン性界面活性剤である塩化セチルピリジニウムを2M NaCl溶液に1.25%で溶解したもの18.72リットルを添加し、グルクロン酸含有フコイダンを溶解し、溶解性のグルクロン酸含有フコイダンを1100g、40分間遠心分離処理することにより調製した。この遠心分離上清をポアサイズ10万の限外ろ過膜を用いる限外ろ過法により濃縮し、限外ろ過内液中のグルクロン酸含有フコイダンを終濃度80%のエタノールにより沈殿させた。エタノール沈殿を100%エタノールで洗浄後、10mM NaCl 300mlに溶解後、凍結乾燥によりグルクロン酸含有フコイダン16.4gを調製した。
【0033】
2M NaCl存在下で塩化セチルピリジニウムに非溶解性のグルクロン酸非含有フコイダンは、前記遠心分離により沈殿としてえたのち、100%エタノールで洗浄し、10mM NaCl 2リットルに溶解後、凍結乾燥により調製した(77g)。
【0034】
実施例2
5gのグルクロン酸含有フコイダンを水などで溶解し、ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤とした。
【0035】
実施例3
5gのグルクロン酸含有フコイダンと400mgのファモチジンを水などで溶解し、ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤とした。
【0036】
実施例4
5gのグルクロン酸含有フコイダンと20mgのオメプラゾールを水などで溶解し、ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤とした。
【0037】
実施例5
5gのグルクロン酸含有フコイダン、20mgのオメプラゾール、400mgのクラリスロマイシン、500mgのメトロニダゾールを水などで溶解し、ヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤とした。
【0038】
つぎに、試験例によって本発明の接着阻害剤の作用効果を説明する。
【0039】
[試験例]
実験動物
ヘリコバクター・ピロリ感染モデル用として6週齢のMGS/Sea系砂ネズミ(セアック吉富(株)製)を1週間予備飼育したのち実験に供した。予備飼育期間中、滅菌済飼料であるMF(オリエンタル酵母工業(株)製)および水(水道水、滅菌済)は自由摂取させた。
【0040】
投与菌液の調製
ヘリコバクター・ピロリ ATCC43504株をBHIA(ブレインハートインフュージョン寒天培地、日水製薬(株)製)を用いて37℃、微好気性条件下で72時間培養し、発育したコロニーを7%FCS添加ブルセラブロスに懸濁した。懸濁液を37℃、微好気性条件下で24時間振とう培養した。培養菌液を新鮮7%FCS添加ブルセラブロスで100倍希釈してさらに37℃、微好気性条件下で24時間振とう培養したのち、2500rpm、4℃、10分間遠心し、菌体を集めた。これを元の溶液量の1/4量のリン酸緩衝液で懸濁した。この菌液と表の各試験物質を等量混合し、1時間微好気性条件下で振とう培養した(約108 CFU(コロニー形成単位))。
【0041】
【表1】
Figure 0004132125
【0042】
実験方法
(A)in vitro試験(ELISA法を用いたヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤の探索)
(1)スルファチド(シグマ社製)を96ウェルマイクロプレートにコートし(1μg)、表1に示す各試験物質と振とう培養したヘリコバクター・ピロリ菌液をプレートに添加し、微好気性条件下で、37℃、90分間インキュベートした。そこにヘリコバクター・ピロリ抗血清を加え反応させた。つぎに、アフィニティ精製ぺルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体(オルガノン・テクニカ社製)を反応させた。発色試薬により発色をさせた。0.5M硫酸を加え反応を停止し、プレートリーダー(EFLAB社製)で波長450nm〜620nmの吸光度を測定した。
【0043】
(2)ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用(用量反応性の検討−1)
前記A−(1)で効果の見られたガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンについて用量反応性を調べた。測定は、表1に示す各試験物質を用いて前記A−(1)と同様に行なった。
【0044】
(3)ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用(用量反応性の検討−2)
ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンについて、in vivoで効果がえられると考えられる用量を決めるために、前記A−(1)および(2)よりもさらに高用量の前記フコイダンを用いてヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用を調べた。測定は表1に示す各試験物質を用いて前記A−(1)と同様に行なった。
【0045】
(B)in vivo試験(ヘリコバクター・ピロリ感染モデル)
(1)ヘリコバクター・ピロリ感染砂ネズミモデル
表1に示す試験物質と振とう培養したヘリコバクター・ピロリ菌液0.5mlを、7週齢の砂ネズミ46匹に1日3回、4時間間隔で経口投与して感染させた。その後さらに、試験物質(実施例1(2)のグルクロン酸含有フコイダンおよびヒバマタ由来フコイダン(シグマ社製)各10mg/匹、ならびにリン酸緩衝液(溶媒)0.5ml)を、8時間おきに2回(感染1日後に解剖する砂ネズミのばあい)または5回(感染2日後に解剖する砂ネズミのばあい)、経口投与した。最終投与の4時間後(感染1日後および2日後)に胃を摘出して感染率および生菌数をつぎの培養法で測定した。
【0046】
(2)胃内菌数の測定
摘出した胃を大弯に沿って開き、スライドガラスで粘膜をかきとり、2.5%FCS添加ブルセラブロスに浮遊させた。浮遊液をガラスホモジナイザーを用いて懸濁した。懸濁液を2.5%FCS添加ブルセラブロスで適宜希釈して、選択培地上で7日間培養した。ヘリコバクター・ピロリのコロニーをカウントし、胃あたりの菌数とした。
【0047】
データの表示法とその解析法
ヘリコバクター・ピロリ感染率(感染例)と生菌数を表示し、KRUSKAL−WALLIS(クラスカル−ワーリス)検定(分類値)を行なった。
【0048】
実験結果
(A)in vitro試験(ELISA法を用いたヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤の探索)
(1)ガゴメコンブ由来フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用
結果を表2に示す。表2に示したように、実施例1(2)でえられたガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダン(陰イオン交換クロマト分離精製物)および実施例1(3)でえられたガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダン(界面活性剤分離精製物)は、ヘリコバクター・ピロリのスルファチドに対する接着をそれぞれ54、56%阻害した。しかし、ほかの試験物質では接着阻害作用は見られなかった。
【0049】
【表2】
Figure 0004132125
【0050】
(2)ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用(用量反応性の検討−1)
結果を表3に示す。実施例1(2)でえられたガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダン(陰イオン交換クロマト分離精製物)および実施例1(3)でえられたガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダン(界面活性剤分離精製物)のいずれも、試験物質の用量が30、100、300、1000μg/mlと増加するにしたがい、34、57、59、69%(前者のばあい)、33、49、58、72(%)(後者のばあい)の接着阻害率で用量依存的にヘリコバクター・ピロリの接着を阻害した。
【0051】
【表3】
Figure 0004132125
【0052】
(3)ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用(用量反応性の検討−2)
結果を図2に示す。図中、縦軸は接着阻害(%)を、横軸は試験物質の用量(mg/ml)を示す。図2からわかるように、ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンは、試験物質の用量が0.3、0.6、1.25、2.5、5、10mg/mlと増加するにしたがい、40.5、53.6、61.5、78.6、85.5、93.8(%)の接着阻害率で用量依存的にヘリコバクター・ピロリの接着を阻害し、10mg/mlでヘリコバクター・ピロリの接着をほぼ完全に阻害した。
【0053】
(B)in vivo試験(ヘリコバクター・ピロリ感染砂ネズミモデル)
結果を表4に示す。表4に示したように溶媒群ではヘリコバクター・ピロリ感染1日後は7例中6例(感染率85.7%)が感染し、その生菌数は98CFUであった。それに対して、ガゴメコンブ由来フコイダン(陰イオン交換クロマト分離精製物)投与群では8例中2例(感染率25.0%)、生菌数55CFUと有意な(p=0.02327)感染阻害効果がみられた。また、溶媒群ではヘリコバクター・ピロリ感染2日後は7例中6例(感染率85.7%)が感染し、その生菌数は180CFUであり、生菌数の増加が見られた。それに対して、ガゴメコンブ由来フコイダン投与群(6例)のいずれも感染は認められなかった。一方、ヒバマタ由来フコイダン投与群ではヘリコバクター・ピロリ感染阻害効果は見られなかった。
【0054】
【表4】
Figure 0004132125
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘリコバクター・ピロリによる胃粘膜上皮細胞への接着を阻害しうるグルクロン酸含有フコイダンを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤をえることができ、この阻害剤により、胃炎や胃十二指腸潰瘍さらには胃癌の発症を抑制する可能性を高めることができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1(2)で行なった、ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンとグルクロン酸非含有フコイダンとの分離パターンを示す図である。
【図2】試験例A−(3)で行なった、ガゴメコンブ由来グルクロン酸含有フコイダンのヘリコバクター・ピロリ接着阻害作用における用量反応性試験の結果を示す図である。

Claims (1)

  1. フコース、マンノース、ガラクトースおよびグルクロン酸を含有するガゴメコンブ由来のグルクロン酸含有フコイダンを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ接着阻害剤。
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