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JP4113945B2 - キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィおよびその装置 - Google Patents

キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィおよびその装置 Download PDF

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JP4113945B2
JP4113945B2 JP2003185233A JP2003185233A JP4113945B2 JP 4113945 B2 JP4113945 B2 JP 4113945B2 JP 2003185233 A JP2003185233 A JP 2003185233A JP 2003185233 A JP2003185233 A JP 2003185233A JP 4113945 B2 JP4113945 B2 JP 4113945B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィおよびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バイオテクノロジー、分子生物学、臨床検査分野では、血中細胞、細胞内微粒子、タンパク質などの分離が求められているが、マイクロメータレベルのサイズの微粒子については、従来の電磁泳動やクロマトグラフィなどによる分離が不可能であった。細胞レベルの微粒子の分離法としては、現在、セルソーター即ちフローサイトメータが市販・利用されているが、この従来技術では、それぞれの細胞に選択的な蛍光ラベル化試薬でラベリングする必要があり、分離した細胞を利用する際にはラベル化試薬を除去が必要であるなどの問題があった。
また、液中の微粒子の電磁泳動に関しては、本願の発明者である渡會他による「液中微粒子の電磁泳動分析法およびその装置」(特許文献1を参照されたい。)があるが、これは、液中微粒子の電磁泳動の原理的な挙動を明確にした基本原理ではあるが、媒体内の個々の微粒子の電磁泳動のみを利用した分離方法・装置であるため、分離の効率・速度が遅いという問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−105218号公報(段落0005、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した諸課題を解決した液中の微粒子の分離・精製・分析するキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィおよびその装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィは、
キャピラリ内に微粒子を含む溶液を流すステップと、
前記キャピラリ内を流れる前記溶液に磁場をかけ、その磁場とほぼ直交するように電流を流すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を電磁泳動させ、さらに前記電流の極性の反転を繰り返す(例えば、所定の周期で反転させるなど)ことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を前記キャピラリ内壁と吸脱着させるステップと、
流れにより前記微粒子を移動させるステップと、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、媒体内の個々の微粒子の電磁的な浮力を利用して電磁泳動させ、さらに個々の微粒子に固有な微粒子表面とキャピラリ内壁との相互作用を利用するものであるため、微粒子の分離効率、分離速度を顕著に向上させることができる。本発明によれば、電磁泳動は、通常のモデルでは、微粒子の粒径の大小に応じて移動速度が変化すると考えされるため、粒径が異なる微粒子はこの原理で分離することができることとなる。さらに、本発明は、キャピラリの素材と微粒子との相互作用をも利用するため、キャピラリの素材と微粒子との相互作用(キャピラリ内壁との吸脱着に大きなエネルギーを要するもの)が大きな微粒子と、相互作用が小さな微粒子とが混在している場合は、非常に高速かつ高効率で試料の分離・精製が可能となる。また、キャピラリの素材を分離対象とする微粒子に応じて適宜選択することによって、微粒子の分離効率、分離速度をさらに向上させることも可能である。本発明では、従来技術のセルソーターで必要とされるラベル試薬が不用であり、よってラベル試薬の分離が不用であり、キャピラリから出てきた分離後の微粒子を何ら処理せずにすぐに利用することが可能である。
【0006】
また、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィは、
さらに、前記キャピラリ内の前記微粒子を顕微鏡(光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、光の吸収・散乱を測定する顕微鏡システムなど)を用いて検出するステップ、
をも含むことを特徴とする。
本発明によれば、肉眼では観察不可能なナノメートルオーダーの微粒子の動きを観察することができるため、移動する微粒子が壁に吸着するタイミングを把握して電流の極性を変えたり、微粒子の泳動状態や泳動速度などを観察したりできるため、より詳細に微粒子の挙動を把握してより効率良く迅速に微粒子を分離することが可能となる。
【0007】
また、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィは、
前記キャピラリ断面の形状は、正方形、長方形、楕円形、或いは円形である、ことを特徴とする。
例えば、断面が正方形や長方形のキャピラリを使用する場合は、微粒子が対向する2平面を行ったり来たりして吸着・脱着を繰り返すような泳動モデルを観察するのに適している。また、断面が円形のキャピラリを使用する場合は、微粒子が外力により寄せられて、直径の軸上を移動するようになるため吸脱着クロマトグラフィに適している。このように、キャピラリは用途により形状や材質を様々なものを使用し得る。
【0008】
また、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィは、
前記キャピラリの内壁は、表面処理が施されている、
ことを特徴とする。
本発明においては、粒子と内壁との相互作用は、非常に重要なパラメーターであり、この相互作用に応じて脱着電流が変化する。従って、表面を修飾して化学的、選択的、或いは官能基に特異的な「相互作用」を設計することが可能である。種々の細胞や、蛋白質の分離分析には、このようなキャピラリ内壁の表面処理は非常に効果がある。即ち、ファンデアワールス力の物理的な吸着力に加え、キャピラリ内壁に表面処理を施すことによって種々の化学的な吸着力を付加して選択性を増すことができる。表面処理としては、化学的な処理、物理的な処理、電気的な処理など様々なものが考えられるが、例えば、親水性、非親水性処理、或いは、様々な物質(金属、化学物質など)を塗布、蒸着、またはエッチングし被膜を形成したり、表面を改質したりするなどがある。このように、通常のキャピラリとして使用されるようなガラスや各種プラスチックに、分離を所望する微粒子に適した表面処理を施すことによって、微粒子との相互作用(即ち脱着電流)を変化させることができるため、微粒子の分離効率を向上させたり、通常の素材では分離できないような微粒子なども分離することが可能となる。
【0009】
本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置は、
キャピラリと、
磁場発生手段と、
電流供給手段と、
前記キャピラリ内に微粒子を含む溶液を流す手段と、
前記キャピラリ内を流れる前記溶液に磁場発生手段を用いて磁場をかけ、その磁場とほぼ直交するように電流供給手段を用いて電流を流すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を電磁泳動させ、さらに前記電流の極性の反転を繰り返すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を前記キャピラリ内壁と吸脱着させる手段と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置は、
さらに、前記キャピラリ内の前記微粒子を検出する顕微鏡、
をも含むことを特徴とする。
また、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置は、
前記キャピラリ断面の形状は、正方形、長方形、楕円形、或いは円形である、ことを特徴とする。
また本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置は、
前記キャピラリの内壁は、表面処理が施されている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の原理は、微粒子を含む電解質溶液に均一磁場を印加し、それにほぼ直交するように電流を流すと、媒体である溶液に電磁力が働き、それが微粒子に対しては「浮力」として働き、微粒子の「泳動」を引き起こすというものである。即ち、本発明は、電磁力を用いてフロー溶液中の微粒子を分離する新しい方法・装置を開発したものである。均一な磁場に設置したガラスキャピラリに微粒子を含む電解質溶液を流し、磁力線とほぼ直交するようにキャピラリ内に波形を制御した交流電流を印加する。このときに生じる電磁浮力により、移動する微粒子はキャピラリ内壁との吸着・脱着を繰り返してクロマトグラフ分離が達成される。本発明によれば、通常の方法では分離不可能な環境微粒子や生体微粒子の単一粒子レベルでも新しい分離分析法が可能となる。
上述したように、本発明の特徴は、キャピラリ内を流れる媒体中の微粒子に対して、電磁浮力に基づく移動力を与えることによって、容器内壁への吸脱着挙動を制御することである。即ち、電流の方向を切り替えることにより、吸着と脱着を繰り返すことができ、キャピラリからの流れ出る微粒子の速度を個々の微粒子に特徴的な値にすることが可能である。媒体の流速、電流の大きさとその周期パターン、および方向を適切に設定することによって、多段階の吸脱着によるクロマトグラフ分離性能を最適化することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、諸図面を参照しつつ本発明の実施態様を詳細に説明する。
本発明により実現されるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィとは、液中微粒子の電磁泳動(Electromagnetophoresis)をキャピラリフロー系に応用し、微粒子に作用する電磁泳動力と、微粒子のキャピラリ内壁への吸着・脱着とを利用して、微粒子の分離や精製を行う技法である。電磁泳動とは、微粒子を分散させた電解質溶液に均一電場と、さらにそれに直交する均一磁場とをかけることによって、微粒子が電場と磁場とに対して直角方向に泳動する現象である。電磁泳動では、電流の極性を変えてやると、電流の方向に応じて電磁泳動力の作用する向きが変わり、微粒子の泳動方向が反転する。キャピラリフロー系において、電流の極性を変えながら電磁泳動を行うと、微粒子はキャピラリ内の媒体中を泳動し、キャピラリ内壁に到達すると電磁泳動力によりキャピラリ内壁に押し付けられ吸着する。その後、電流の極性が変わり、ある特定の脱着電流以上になると、微粒子は電磁泳動力によってキャピラリ内壁から脱着し、また、反対側の内壁に向かって泳動する。つまり、微粒子は、「泳動→吸着→脱着→泳動」のサイクルを繰り返すこととなる。このとき、フロー速度が吸着されている微粒子を押し流してしまうほど速くない場合は、微粒子は泳動している間のみフローにより流され、キャピリ中をジグザグに泳動することとなる。脱着から吸着までの1サイクルの間にフローによって流される距離は、キャピラリを横切る時間が長いほど、つまり電磁泳動速度が遅いほど大きくなる。この距離が個々の微粒子同士で異なれば、吸脱着を繰り返すことによってその差が広がり、微粒子の種類によってキャピラリからの流出時間が異なる。この流出時間の差により、微粒子を分離・分析するというのがこの吸着クロマトグラフィの基本概念である。
【0012】
微粒子分離モデル
次に、本発明で利用するキャピラリフロー系電磁泳動において、吸脱着を利用する微粒子分離のモデルを以下のようにたてる。
電磁泳動において液中微粒子には、粒子自体に働く電磁力FEMW(Electromagnetophoretic weight)と、媒体に働く電磁力とは逆向きの電磁浮力FEMB(Electromagnetophoretic Buoyancy)との両者が作用するので、液中微粒子に働く電磁泳動力FEMPは、この2つの力の和であり、下式のように表される。
【数1】
Figure 0004113945
ここでBは外部磁場(T)、iは電流(A)、Vは微粒子の体積(m3)、Sはキャピラリの断面積(m)、σとσは、それぞれ、媒体の伝導率(Sm−1)および液中微粒子の電気二重層に起因する微粒子の表面伝導率(Sm−1)である。さらに、(1)式と粘性抵抗力の式から微粒子の電磁泳動速度vEMPは下式のように表される。
【数2】
Figure 0004113945
ここでrは粒子半径(m)、ηは媒体の粘度(Pas)、Cはキャピラリ内壁の抵抗係数である。このように電磁泳動力は粒子の体積、電流および外部磁場に、泳動速度は粒子半径の二乗、電流および外部磁場に比例する。
【0013】
図1は、キャピラリ内壁に吸着した微粒子に供給される電流と時間との関係を示すグラフである。図に示すように、キャピラリ内壁に吸着した微粒子を時間tの間に電流値imaxまで増加する波形の電流を印加し電磁泳動力により脱着を行うと、電流値が増加するにつれて電磁泳動力が増大してゆき、電磁泳動力が吸着力Fに対して
【数3】
Figure 0004113945
となったときに微粒子の脱着が起こる。微粒子が脱着したときの電流値を脱着電流iとする。
【0014】
図2は、キャピラリフロー系において微粒子が脱着してから吸着するまでの移動距離dを示した概念図である。図に示すように、キャピラリ内壁に吸着している粒子が電磁泳動力によって壁から脱着し、電磁泳動によってキャピラリを横切っている間、フローによって移動する。図1に示した波形の電流により、粒子は脱着電流iDのときに脱着し、泳動し始める。泳動しているときの速度変化が小さいとすると、半径rの粒子が内径wのキャピラリを電磁泳動により横断するのに要する時間tは、
【数4】
Figure 0004113945
となる。ここでkは(2)式の電流と半径以外の項をまとめた係数である。粒子は時間tの間フローによって移動するので、フロー速度をvとすると移動距離dは、
【数5】
Figure 0004113945
となる。(5)式で表したように、移動距離dは粒子の半径と脱着電流に依存すると考えられる。そのため個々の粒子の性質により移動距離dは異なる。
【0015】
図3は、キャピラリフロー系において2種類の微粒子が吸脱着を繰り返した場合のそれぞれの移動距離を示す概念図である。図の上部と下部の各キャピラリ内の白丸および黒丸で粒子の移動の様子を模式的に示すように、微粒子の性質(粒径、内壁との相互作用など)に応じて一回の吸脱着の移動距離dが異なれば、吸脱着を繰り返すことによって、同じ流速であっても一定距離を進むのに要する時間に差ができ、一定のキャピラリ長における保持時間が異なる。このときの粒子の保持時間は、
【数6】
Figure 0004113945
で表される。ここでlはキャピラリ有効長である。(6)式のように、保持時間は脱着電流iおよび粒子半径rに依存すると考えられ、これらの違いにより微粒子の分離が可能となる。
【0016】
図4は、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置で用いる電磁泳動用キャピラリフローセル部のキャピラリセルを示す概略図である。図に示すように、キャピラリセル10は、内径100×100μm、長さ2cmの正方形フューズドシリカのキャピラリ12(Polymicro Technologies社製)を具え、この両端を熱収縮チューブ14を用いてPTFEチューブ16につなぎ合わせたものである。
【0017】
図5は、図4に示したキャピラリセルを含む電磁泳動用キャピラリフローセル部を示す概略図である。この図はキャピラリフローセルの全体図であり、図に示すように、キャピラリフローセル部100は、キャピラリセル110を具え、この両端に三方コネクタ120を接続し、三方コネクタ120の残りの一方からAg|AgCl電極130を挿入し、他方に送液用PTFEチューブ140を接続したものである。Ag|AgCl電極は、銅線を塩化カリウム水溶液中で電気分解することにより作製さいた。その手順は、銅線を電源の+極につなぎ、白金線を−極につないで、その2本の金属線を1M塩化カリウム水溶液に浸す。それから、5Vで5分間電流を流すと銅線の先端に塩化銀が生成してAg|AgCl電極が完成する。ここで、磁場発生装置(図示しない)から生じた均一な磁場は図の上下方向に生じ、一方、電極から生じた電流iの流れる方向は図に示すように、磁場と実質的に直交するように左右方向に交互に反転する。
【0018】
図6は、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置の全体を示す概略図である。図に示すように、キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置200は、磁場発生手段として、液体ヘリウムが不要な無冷媒型超伝導磁石220(JMT社製、JMTD-10T100HH1)を具える。この超伝導磁石220は、直径100mm、長さ950mmの室温ボアを持ち、上フランジ面から560mm±5mmに0〜10Tの均一磁場を作り出すことができ、磁場の方向は図中の「矢印B」で示すように重力方向(下方)である。このように、磁場がキャピラリの長手方向(即ち電流の流れる方向)に対して直角となるように、装置を配置する。また、本クロマトグラフィ装置200は、前記均一磁場内のセルホルダに固定されたキャピラリフローセル230、PC240、ファンクションシンセサイザー250(NF社製)、アンプ260(TREC社製、MODEL610-C)、デジタルマルチメータ270(IWATSU社製電流計、VOAC7512)、ビデオレコーダ280、モニタ290、シリンジポンプ300(Harvard Apparatus社製、pump II)光源310(オリンパス社製、MODEL ILV)、CCDカメラ320(ELMO社製、ME421)、および光学顕微鏡330をも具える。PC240には、「任意波形作成ソフトウェア0105(NF社製)」が導入されており、これを用いて所望の印加電流波形を作成し、ファンクションシンセサイザー250に波形を送り電圧を出力し、アンプ260により電圧を増幅し、セル中の試料液に印加し、デジタルマルチメータ270により電流を測定する。キャピラリフローセル230に含まれるPTFEチューブの一端を内容量100μlのシリンジ(HAMILTON社製、GASTIGHT#1701)に接続し、シリンジポンプ300により微粒子が含まれる試料液を送液する。光源310を用いて下方から光を入れ、上方から10倍の対物レンズの付いた光学顕微鏡330で観測し、CCDカメラ320で微粒子の泳動挙動を撮影してこれをモニタ290に出力し、ビデオ280で録画する。磁場が均一になるように、超伝導磁石のボア内に入れる装置は、全て非磁性のアクリル、アルミ、或いは真鍮を用いて作製してある。
【0019】
本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置を用いて、その性能および効果を確認するために、2種類の粒径が異なる微粒子を含む溶液を用いて分離実験を行った。
試料
試料液としては、粒径20μm、10μmの2種類のポリスチレン粒子を、0.01%の界面活性剤Triton X-100を含む1M塩化カリウム溶液に分散させたものを使用した。このときの媒体の密度は、ポリスチレンの密度(1.05gcm-3)とほぼ一致している。
【0020】
ポリスチレン粒子の保持時間の測定
本実験では、本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置に直径200μmの円形シリカキャピラリを使用した。本装置において、キャピラリ有効長1mmでのポリスチレン粒子の保持時間の測定を行った。図1に示した波形の電流をimax=2000μAに、t=2sに設定して、試料液に電流を供給した。試料液のフロー速度が40〜100μL/hの範囲内においてポリスチレン粒子の挙動を観察し、ポリスチレン粒子がキャピラリ中を1mm移動するのにかかる時間をモニタ上で測定し、ポリスチレン粒子の保持時間を求めた。
【0021】
測定結果
図7は、種類の粒径のポリスチレン粒子の保持時間と流速との関係を示すグラフである。測定条件は、imax=2000μA、t=2sに設定し、粒径10μm、および20μm、直径200μmの円形シリカキャピラリでの有効長1mmである。このような条件において、流速即ちフロー速度を変化させて、保持時間を測定した。どのフロー速度においても、粒径10μmの粒子の保持時間の方が、粒径20μmよりも小さくなった。クロマトグラフ法の分離能Rは物質の保持時間を用いて次式で表される。
【数7】
Figure 0004113945
ここでtおよびtは、それぞれ物質1および物質2の保持時間である。この分離能Rが1以上であるとき、そのクロマトグラフ法によって物質1、2の分離が可能となる。本測定の場合は、分離能R=t20/t10=3.1となり、ポリスチレン粒子を粒径によって分離することが可能であることが示された。また、この実験において、吸脱着の際のポリスチレン粒子の脱着電流iは、粒径10、20μmともに約1000μAであった。図7中の曲線はこの脱着電流を用いて(6)式から描いた理論曲線である。破線が粒径20μm、実線が粒径10μmを表しており、測定値と理論値とはほぼ一致していることが判明した。このように、(6)式から粒子の保持時間を予測することが可能であり、保持時間から微粒子を同定することが可能である。
この実施例では、電流の正、負の切替が2秒としてるので、フロー速度が40μL/hの場合、20マイクロメートルのポリスチレン微粒子で55回、10マイクロメートルの微粒子で20回程度、1mmのキャピラリ内で吸脱着を行なったことになる。
【0022】
本発明による装置や方法は、微粒子の分離法や分離装置として、環境および保健分野、機能性素材の製造分野、食品・衛生分野などで広く利用され得るものである。
本明細書では、様々な実施態様で本発明の原理を説明してきたが、本発明は上述した実施例に限定されず幾多の変形および修正を施すことが可能であり、これら変形および修正されたものも本発明に含まれることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、キャピラリ内壁に吸着した微粒子に供給される電流と時間との関係を示すグラフである。
【図2】 キャピラリフロー系において微粒子が脱着してから吸着するまでの移動距離dを示した概念図である。
【図3】 キャピラリフロー系において2種類の微粒子が吸脱着を繰り返した場合のそれぞれの移動距離を示す概念図である。
【図4】 本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置で用いるキャピラリセルを示す概略図である。
【図5】 図4に示したキャピラリセルを含む電磁泳動用キャピラリフローセル部を示す概略図である。
【図6】 本発明によるキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置の全体を示す概略図である。
【図7】 2種類の粒径のポリスチレン粒子の保持時間と流速との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
200 キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置200
220 超伝導磁石
230 キャピラリフローセル
240 PC
250 ファンクションシンセサイザー
260 アンプ
270 デジタルマルチメータ
280 ビデオレコーダ
290 モニタ
300 シリンジポンプ
310 光源
320 CCDカメラ
330 光学顕微鏡

Claims (10)

  1. キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィであって、
    キャピラリ内に微粒子を含む溶液を流すステップと、
    前記キャピラリ内を流れる前記溶液に磁場をかけ、その磁場とほぼ直交するように電流を流すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を電磁泳動させ、さらに前記電流の極性の反転を繰り返すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を前記キャピラリ内壁と吸脱着させ、前記微粒子を分離、および/または、精製するステップと、
    を含むことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ。
  2. 請求項1に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィにおいて、
    前記キャピラリの一定のキャピラリ長における前記微粒子の保持時間を測定するステップ、
    をも含む特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ。
  3. 請求項1または2に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィにおいて、
    さらに、前記キャピラリ内の前記微粒子を顕微鏡を用いて検出するステップ、
    をも含む特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィにおいて、
    前記キャピラリ断面の形状は、正方形、長方形、楕円形、或いは円形である、
    ことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィにおいて、
    前記キャピラリの内壁は、表面処理が施されている、
    ことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ。
  6. キャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置であって、
    キャピラリ内に微粒子を含む溶液を流す手段と、
    前記キャピラリ内を流れる前記溶液に磁場をかけ、その磁場とほぼ直交するように電流を流すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を電磁泳動させ、さらに前記電流の極性の反転を繰り返すことによって、前記溶液に含まれる前記微粒子を前記キャピラリ内壁と吸脱着させ、前記微粒子を分離、および/または、精製する手段と、
    を含むことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置。
  7. 請求項6に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置において、
    前記キャピラリの一定のキャピラリ長における前記微粒子の保持時間を測定する手段、
    をも含むことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置。
  8. 請求項7に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置において、
    さらに、前記キャピラリ内の前記微粒子を検出する顕微鏡、
    をも含むことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置において、
    前記キャピラリ断面の形状は、正方形、長方形、楕円形、或いは円形である、
    ことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載のキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置において、
    前記キャピラリの内壁は、表面処理が施されている、
    ことを特徴とするキャピラリ電磁泳動吸脱着クロマトグラフィ装置。
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