(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るアナログFIFOメモリを示す図であり、(a)は構成の概略を示す図、(b)は動作の概略を示す図である。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリは、図1(a)に示すように、アナログ信号を記憶するメモリセルが接続されたメモリバスを有するメモリバス回路1、メモリセルにメモリバスを介してアナログ信号を書き込む書き込み回路2、及びメモリセルからメモリバスを介してアナログ信号を読み出す読み出し回路3によって構成されている。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリにおいて特徴的なことは、読み出し動作の前に、メモリバスの寄生容量に蓄積された電荷を取り除くリセット動作を行うことである。すなわち図1(b)に示すように、本実施形態に係るアナログFIFOメモリの動作は、基本的にリセット、読み出し及び書き込みの3つに分けられる。まずリセット動作によってメモリバスをリセットし、次に読み出し動作によって、リセットしたメモリバスに接続されたメモリセル(アドレスm)からアナログ信号を読み出す。このとき、アナログ信号が読み出されたメモリセルに蓄積されている電荷量は0になるので、次に書き込み動作によって、このメモリセルに入力信号を書き込む。
従来のアナログFIFOメモリでは、メモリバスの寄生容量の存在によって、アナログFIFOメモリから読み出されるアナログ信号がその直前にアナログFIFOメモリに書き込まれたアナログ信号の影響を受けてしまうという問題があった。したがって、直前に書き込まれたアナログ信号の影響を排除するために、メモリバスをリセットする動作をアナログ信号の読み出し動作の前に行う。
図2はメモリバス回路1の構成の一例を示す回路図である。図2において、10はアナログ信号を記憶するメモリセル、13は第1及び第2のバス配線13A,13Bからなるメモリバス、15は書き込み回路2とメモリバス13との接続状態を制御する入力手段、16は読み出し回路3とメモリバス13との接続状態を制御する出力手段である。メモリセル10は第1及び第2のバス配線13A,13B間に直列に接続された,アナログ信号を電荷の形で蓄積する容量素子11及びスイッチ12を有しており、スイッチ12はメモリセルスイッチ駆動信号S1及びメモリセル選択信号SLに従って動作するスイッチ制御手段12cによってオンオフを切替制御される。入力手段15はスイッチ15A,15Bを有しており、スイッチ15A,15Bは入力スイッチ駆動信号S2及びメモリセル選択信号SLに従って動作するスイッチ制御手段15cによってオンオフを切替制御される。出力手段16はスイッチ16A,16Bを有しており、スイッチ16A,16Bは出力スイッチ駆動信号S3及びメモリセル選択信号SLに従って動作するスイッチ制御手段16cによってオンオフを切替制御される。
メモリバスのリセットとは、図2に示すようなメモリバス回路1を例にとると、第1及び第2のバス配線13A,13Bの電位を同一電位又は一定電位差にする動作のことである。これによりメモリバス13の寄生容量に蓄積される電荷は0又は一定になり、アナログ信号の読み出し動作において、直前に書き込まれたアナログ信号の影響を受けることはなくなる。
図3(a)は書き込み回路2の構成の一例を示す図であり、図3(b)は読み出し回路3の構成の一例を示す図である。図3(a)に示すように、書き込み回路2はスイッチトキャパシタサンプルホールド回路(SCSH回路)20及び演算増幅器25によって構成されており、SCSH回路20は入力信号を電荷の形で一旦蓄積する容量素子21、及びスイッチ22a,22b,22c,22dからなる。スイッチ22a,22cは第1の書き込みスイッチ駆動信号S4によってオンオフを切替制御される一方、スイッチ22b,22dは第2の書き込みスイッチ駆動信号S5によってオンオフを切替制御される。また図3(b)に示すように、読み出し回路3は出力信号を電荷の形で一旦蓄積する容量素子31、スイッチ32及び演算増幅器33によって構成されている。スイッチ32は読み出しスイッチ駆動信号S6によってオンオフを切替制御される。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリのリセット動作、読み出し動作及び書き込み動作について図4〜図6を用いて説明する。
図4〜図6は図1(a)の概略構成において図2及び図3の回路構成を用いたときの本実施形態に係るアナログFIFOメモリの構成を示す図である。図4はリセット動作のときの状態を、図5は読み出し動作のときの状態を、図6は書き込み動作のときの状態をそれぞれ示している。また61はメモリバス13の寄生容量であって第1及び第2のバス配線13A,13B間の配線間容量である。なお図4〜図6において、説明を簡単にするために、メモリセル10は1個のみを示しており、また各スイッチの制御に関わる制御手段及び信号は省略している。
本実施形態に係るリセット動作では、第1のバス配線13Aと第2のバス配線13Bを所定の電位(例えばアナロググランド電位)にし、さらに読み出し回路3において演算増幅器33と並列に接続された容量素子31の電荷量を0にする。このようなリセット動作によって、第1及び第2のバス配線13A,13Bは同一電位になるため、第1及び第2のバス配線13A,13Bの配線間容量61に蓄積された電荷量は0になる。さらに、読み出し動作開始時と書き込み動作開始時とにおいて第1及び第2のバス配線13A,13Bの電位が等しくなるため、第1及び第2のバス配線13A,13B間の配線間容量61の影響を受けることなくメモリセル10から電荷の読み出しを行うことができる。
本実施形態に係るリセット動作には読み出し回路3を利用する。すなわち図4に示すように、リセット動作において、メモリバス回路1の入力手段15のスイッチ15A,15Bをオフ状態にすると共に出力手段16のスイッチ16A,16Bをオン状態にし、またメモリバス13に接続された全てのメモリセル10のスイッチ12をオフ状態にする。さらに読み出し回路3のスイッチ32をオン状態にする。このとき、読み出し回路3の演算増幅器33の逆相及び正相入力端子33a,33bは同一電位になり、これによって、読み出し回路3の演算増幅器33の逆相及び正相入力端子33a,33bに出力手段16を介してそれぞれ接続された,メモリバス回路1の第1及び第2のバス配線13A,13Bは同一電位になる。このため、配線間容量61に蓄えられた電荷は放電され、配線間容量61の電荷量は0になる。このようにして、本実施形態に係るアナログFIFOメモリにおけるリセット動作が完了する。
次にリセット動作に引き続いて読み出し動作が行われる。図5に示すように、読み出し動作において、読み出し回路3のスイッチ32をオフ状態にして演算増幅器33のリセット状態を解除する。この後、メモリセル10のスイッチ12をオン状態にし、メモリセル10の容量素子11に蓄積された電荷を読み出し回路3の容量素子31に転送する。電荷の転送が完了すると、メモリバス回路1の第1及び第2のバス配線13A,13Bは再び同一電位になる。このようにして、読み出し動作が完了する。
またリセット動作及び読み出し動作において、書き込み回路2のSCSH回路20において、スイッチ22a,22cをオン状態にすると共にスイッチ22b,22dをオフ状態にする。これによって、入力アナログ信号が電荷の形でSCSH回路20の容量素子21に蓄積される。
次に読み出し動作に引き続いて書き込み動作が行われる。図6に示すように、書き込み動作において、メモリバス回路1の入力手段15のスイッチ15A,15Bをオン状態にすると共に、出力手段16のスイッチ16A,16Bをオフ状態にする。一方、書き込み回路2のSCSH回路20において、スイッチ22b,22dをオン状態にすると共にスイッチ22a,22cをオフ状態にする。このとき、書き込み回路2の演算増幅器25によって、SCSH回路20の容量素子21に蓄積された電荷がメモリセル10の容量素子11まで転送される。
(第1の実施形態の変形例)
図7は図3(b)に示す通常のアナログFIFOメモリの読み出し回路3に代えて用いられる、本変形例に係る読み出し回路3Aの構成を示す図である。図7に示す本変形例に係る読み出し回路3Aでは、通常のアナログFIFOメモリの読み出し回路3におけるスイッチ32に代えて、演算増幅器33の逆相入力端子33a及び出力端子33cをアナロググランド電源に接続するか否かを切替制御する第1及び第2のスイッチ32A,32Bが設けられている。第1及び第2のスイッチ32A,32Bは、共に、読み出しスイッチ駆動信号S6によって制御される。
図3(b)に示す読み出し回路3において、スイッチ32の役割は演算増幅器33の逆相入力端子33aと出力端子33cとを短絡し、逆相入力端子33a及び出力端子33cの電位をアナロググランド電位にして容量素子31の電荷量を0にすることである。ところが、逆相入力端子33aと出力端子33cとを短絡すると、読み出し回路3が不安定になり発振してしまう可能性がある。
図3(b)に示すような容量素子31によって帰還がかけられた演算増幅器33では、容量素子31の逆相入力端子33a側の電荷が固定されたときは、容量素子31の電荷は動けなくなるため演算増幅器33の状態も安定する。このことは、演算増幅器33の状態が無条件に安定になることを示している。言い換えると、SCSH回路20のように演算増幅器25の逆相入力端子25aと出力端子25cとの間に並列接続された容量に電荷を転送する回路では、電荷を転送し終わったとき回路は必ず安定状態になり、発振状態になることはない。
すなわち図3(b)に示すような読み出し回路3が不安定状態になるすなわち発振状態に陥る可能性があるのは、スイッチ32がオン状態になったときである。
そこで図7に示す本変形例に係る読み出し回路3Aでは、演算増幅器33の逆相入力端子33aと出力端子33cとを短絡するとき、逆相入力端子33a及び出力端子33cを共に直接アナロググランド電源に接続することによって、その電位を強制的にアナロググランド電位にすることを特徴とする。
すなわち図7に示す読み出し回路3Aにおいて、演算増幅器33の逆相入力端子33aと出力端子33cとを短絡するときは、第1及び第2のスイッチ32A,32Bを共にオン状態にして逆相入力端子33a及び出力端子33cの電位を共にアナロググランド電位にすることによって、回路をリセットする。このような方式によって、演算増幅器33の逆相入力端子33aと出力端子33cとを短絡するとき、その電位がアナロググランド電源によって強制的にアナロググランド電位に固定されることになる。したがって、いかなる状態でも発振する危険性のない安定した読み出し回路3Aが実現できる。
なお本発明の第1の実施形態は、複数個のメモリセル10を有する複数のメモリバス回路1を備えたアナログFIFOメモリにも容易に適用することができる。
図8はアナログFIFOメモリを複数メモリバス構成にした場合の回路構成の一例を示す図であり、書き込み回路2と読み出し回路3との間に複数のメモリバス回路1が並列に構成されたものを示している。なお図8では書き込み回路2との接続端子4a,4b及び読み出し回路3との接続端子5a,5bを示しており、書き込み回路2と読み出し回路3は図示を省略している。
図8において、41はメモリセル選択信号SLを出力するアドレス発生回路である。メモリセル選択信号SLは、行アドレス選択信号SR1〜SR3と列アドレス選択信号SC1〜SC3との2つに分かれる。ここでは各信号は全てローアクティブであるものとしているので、入力手段15のスイッチ制御手段15cはORゲート15dによって実現されると共に出力手段16のスイッチ制御手段16cはORゲート16dによって実現される。すなわち、入力手段15において、行アドレス選択信号SR1〜SR3と入力スイッチ駆動信号S2とが共に“L”のときスイッチ15A,15Bがオン状態になり、出力手段16において、行アドレス選択信号SR1〜SR3と出力スイッチ駆動信号S3とが共に“L”のときスイッチ16A,16Bがオン状態になる。言い換えると、行アドレス選択信号SR1〜SR3によって選択されたメモリバス回路1のみが、入力手段15のスイッチ15A,15B及び出力手段16のスイッチ16A,16Bをオン状態にすることができる。
次にメモリセル10のスイッチ12の駆動方法について説明する。メモリセル10のスイッチ12は、ORゲート12d,12eによって生成される,行アドレス選択信号SR1〜SR3のうちの1つと列アドレス選択信号SC1〜SC3のうちの1つとメモリセルスイッチ駆動信号S1との論理和信号によって駆動される。したがって、行アドレス選択信号と列アドレス選択信号により選択されたメモリセル10のみがメモリセルスイッチ駆動信号S1をスイッチ12に伝達することができる。例えば図8において行アドレス選択信号SR2と列アドレス選択信号SC2とが“L”になったときには、メモリセル10xのみがメモリセルスイッチ駆動信号S1をスイッチ12に伝達することができる。すなわち、行アドレス選択信号と列アドレス選択信号によってメモリバス回路1とメモリセル10とを自由に選択することができるので、任意のメモリセル10に対してアナログ信号の書き込み読み出しを行うことができる。
図9はアナログFIFOメモリの具体的なアドレッシング手法を説明するための図である。図9ではm行n列のメモリセルを備えたアナログFIFOメモリを示している。図9において、42aはm進カウンタであってメモリアドレスの上位ビットを指定する上位カウンタ、42bはn進カウンタであってメモリアドレスの下位ビットを指定する下位カウンタであり、上位カウンタ42a及び下位カウンタ42bによってアドレス信号発生回路が構成されている。下位カウンタ42bは外部から与えられるクロックに従ってインクリメント動作を行う。また43は下位カウンタ42bの桁あふれ信号であり、上位カウンタ42aはこの桁あふれ信号43に従ってインクリメント動作を行う。
すなわち、メモリアドレスは下位カウンタ42bのインクリメント動作によって順に(1,1)、(1,2)、(1,3)と進み、(1,n)までいくと下位カウンタ42bから桁あふれ信号43が出力されるので上位カウンタ42aがインクリメント動作を行い、これによって(2,1)がメモリアドレスとして指定される。同様にして(m,n)までメモリアドレスが指定された後、再び(1,1)に戻る。したがって、各メモリセルに書き込まれたアナログ信号は、下位カウンタ42bに与えられるクロックの周期をTとすると、(m*n*T)後に読み出されることになる。
本実施形態におけるメモリセルアドレス切り替えのタイミングは、図1に示すように、メモリセルに信号を書き込んだ後である。すなわち、入力されたアナログ信号をメモリセルに書き込んだ後に次のメモリセルがアクセスされ、リセット動作の後にアナログ信号が読み出される。このときこのメモリセルには、前記の説明のとおり(m*n*T)前に書き込まれたアナログ信号が格納されている。したがって、図9に示すようなアドレッシングによって、遅延時間が(m*n*T)のアナログFIFOメモリとして動作することになる。
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係るアナログFIFOメモリの構成の概略を示す図である。図10に示すように、本発明の第2の実施形態に係るアナログFIFOメモリは、同一構成からなる第1及び第2のメモリ部101a,101bを備えており、第1及び第2のメモリ部101a,101bはそれぞれ、アナログ信号を記憶するメモリセルが接続されたメモリバスを有するメモリバス回路1、メモリセルにメモリバスを介してアナログ信号を書き込む書き込み回路2、メモリセルからメモリバスを介してアナログ信号を読み出す読み出し回路3によって構成されている。
また5は第1及び第2のメモリ部101a,101bから出力されたアナログ信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路であり、51は第1及び第2のメモリ部101a,101bから出力されたアナログ信号を電荷の形で蓄積する容量素子、52aは第1のメモリ部101aと容量素子51との接続/非接続を切替制御するスイッチ、52bは第2のメモリ部101bと容量素子51との接続/非接続を切替制御するスイッチ、53はバッファアンプである。スイッチ52aは第1のサンプルホールドスイッチ駆動信号S7によって制御される一方、スイッチ52bは第2のサンプルホールドスイッチ駆動信号S8によって制御される。
図11は図10に示す本実施形態に係るアナログFIFOメモリの動作の概略を示す図である。図11に示すように、本実施形態に係るアナログFIFOメモリにおいて、第1及び第2のメモリ部101a,101bは共に第1の実施形態と同様に、リセット動作、読み出し動作及び書き込み動作を繰り返し行う。また第1及び第2のメモリ部101a,101bは並列動作し、クロック信号に同期して、一方が書き込み動作を行う間に他方がリセット動作及び読み出し動作を行う。この結果、クロック周期毎にアナログ信号の入出力が行われる。
図10及び図11に示すように、本実施形態では、アナログFIFOメモリを同一の構成からなる2つのメモリ部101a,101bに分けて、それぞれ並列動作させている。このような並列構成は、例えばTV信号の遅延用に用いる場合に極めて有効である。このことについて説明する。
図29は従来のアナログFIFOメモリの動作の概略を示す図である。図29に示すように、従来のアナログFIFOメモリではクロック周期毎にアナログ信号の読み出し動作及び書き込み動作を行う。すなわち、読み出し動作や書き込み動作に割り当て可能な時間はクロック周期の半分ということになる。通常、NTSCカラー信号をアナログFIFOメモリを用いて遅延する場合は、クロック周期は約70nsである。したがって、読み出し動作や書き込み動作に割り当て可能な時間は約35nsになる。この時間内にアナログ信号の読み出しや書き込みを行うためにはアナログFIFOメモリに対して非常な高速動作が要求され、この時間内に、さらにリセット動作等の読み出しや書き込み以外の動作を実施することは事実上不可能である。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリでは、2つのメモリ部101a,101bを並列構成して読み出し動作と書き込み動作とを並列に実行するので、従来と比べて2倍の時間を読み出し動作や書き込み動作に割り当てることができ、読み出し動作の前にリセット動作を実行可能な時間の余裕を作ることができる。したがって、例えばTV信号の遅延用に用いる場合でも、読み出し動作の前にリセット動作を実行することができる。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリの具体的な動作について図12〜図17を用いて詳しく説明する。
図12は図10の概略構成において図2及び図3の回路構成を用いたときの本実施形態に係るアナログFIFOメモリの構成を示す図である。また図12では各スイッチを制御する制御信号も併せて図示している。なお説明を簡単にするために、第1及び第2のメモリ部101a,101bのメモリセル10はそれぞれ1個のみを示している。
図12に示すように、制御信号M1R1は、第1のメモリ部101aにおいて、書き込み回路2の第1の書き込みスイッチ駆動信号S4及びメモリセル回路1の出力スイッチ駆動信号S3として与えられる一方、第2のメモリ部101bにおいて、書き込み回路2の第2の書き込みスイッチ駆動信号S5及びメモリセル回路1の入力スイッチ駆動信号S2として与えられる。すなわち、制御信号M1R1によって、第1のメモリ部101aでは書き込み回路2のスイッチ22a,22c、及びメモリセル回路1のスイッチ16A,16Bが制御される一方、第2のメモリ部101bでは書き込み回路2のスイッチ22b,22d、及びメモリセル回路1のスイッチ15A,15Bが制御される。
一方、制御信号M2R1は、第1のメモリ部101aにおいて、書き込み回路2の第2の書き込みスイッチ駆動信号S5及びメモリセル回路1の入力スイッチ駆動信号S2として与えられる一方、第2のメモリ部101bにおいて、書き込み回路2の第1の書き込みスイッチ駆動信号S4及びメモリセル回路1の出力スイッチ駆動信号S3として与えられる。すなわち、制御信号M2R1によって、第1のメモリ部101aでは書き込み回路2のスイッチ22b,22d、及びメモリセル回路1のスイッチ15A,15Bが制御される一方、第2のメモリ部101bでは書き込み回路2のスイッチ22a,22c、及びメモリセル回路1のスイッチ16A,16Bが制御される。
また制御信号M1R2は、第1のメモリ部101aの読み出し回路3の読み出しスイッチ駆動信号S6及びサンプルホールド回路5の第2のサンプルホールドスイッチ駆動信号S8として与えられる。すなわち、制御信号M1R2によって、第1のメモリ部101aの読み出し回路3のスイッチ32及びサンプルホールド回路5のスイッチ52bが制御される。
一方、制御信号M2R2は、第2のメモリ部101bの読み出し回路3の読み出しスイッチ駆動信号S6及びサンプルホールド回路5の第1のサンプルホールドスイッチ駆動信号S7として与えられる。すなわち、制御信号M2R2によって、第2のメモリ部101aの読み出し回路3のスイッチ32及びサンプルホールド回路5のスイッチ52aが制御される。
また制御信号M1R3は第1のメモリ部101aのメモリバス回路1のメモリセルスイッチ駆動信号S1として与えられ、制御信号M2R1と共にORゲート12fに入力される。第1のメモリ部101aのメモリセル10のスイッチ12は、制御信号M1R3,M2R1の論理和信号によって制御される。一方、制御信号M2R3は第2のメモリ部101bのメモリバス回路1のメモリセルスイッチ駆動信号S1として与えられ、制御信号M1R1と共にORゲート12fに入力される。第2のメモリ部101bのメモリセル10のスイッチ12は、制御信号M2R3,M1R1の論理和信号によって制御される。
図13は図12に示すアナログFIFOメモリを制御する各制御信号の時間変化を示す図である。図13において、制御信号は全てローアクティブな信号であるあるものとしている。またM1Addressは第1のメモリ部101aのメモリセルアドレスであり、M2Addressは第2のメモリ部101bのメモリセルアドレスである。
図13に示すように、図12に示すアナログFIFOメモリの動作は、各制御信号の時間変化に従って、4つのモードMODE1〜MODE4に分けられる。図14〜図17は図12に示すアナログFIFOメモリの各モードMODE1〜MODE4における状態を示す図である。図12に示すアナログFIFOメモリの各モードにおける動作を、図14〜図17を用いて説明する。
(MODE1)
まずMODE1では、第1のメモリ部101aは読み出し動作のためのメモリバス13のリセット動作及び入力アナログ信号のサンプリングを行い、一方、第2のメモリ部101bは書き込み動作を行う。
メモリバス13のリセット動作には読み出し回路3を利用する。すなわち図14に示すように、第1のメモリ部101aにおいて、読み出し回路3のスイッチ32をオン状態にするとともに出力手段16のスイッチ16A,16Bをオン状態にする。すると、第1のバス配線13Aと第2のバス配線13Bは共にアナロググランド電位になり、さらに容量素子31に蓄えられる電荷も0になる。このとき、メモリセル10のスイッチ12は容量素子11がリセットされないようにオフ状態になっている。また、これと同時にSCSH回路20のスイッチ22a,22cがオン状態になることによって、入力アナログ信号が容量素子21にサンプリングされる。
一方、第2のメモリ部101bにおいて、SCSH回路20のスイッチ22b,22dがオン状態になり、かつ、入力手段15のスイッチ15A,15Bがオン状態になるので、容量素子21の電荷がメモリバス13を介してメモリセル10の容量素子11に転送される。すなわち書き込み動作が行われる。さらにこのとき、サンプルホールド回路5のスイッチ52bがオン状態になることによって、読み出し回路3の出力アナログ信号がサンプルホールド回路5の容量素子51にサンプリングされる。
(MODE2)
次にMODE2では、第1のメモリ部101aは読み出し動作を行う。すなわち図15に示すように、第1のメモリ部101aにおいて、読み出し回路3のスイッチ32はオフ状態になると共にメモリセル10のスイッチ12がオン状態になり、これによって、メモリセル10の容量素子11の電荷はメモリバス13を介して読み出し回路3の容量素子31に転送される。
一方、第2のメモリ部101bは引き続き書き込み動作を行うが、サンプルホールド回路5はスイッチ52bがオフ状態になることによって、ホールド状態になる。
(MODE3)
MODE3ではMODE1とは逆に、第1のメモリ部101aは書き込み動作を行い、一方、第2のメモリ101bは読み出し動作のためのメモリバス13のリセット動作及び入力アナログ信号のサンプリングを行う。
すなわち図16に示すように、第1のメモリ部101aにおいて、SCSH回路20のスイッチ22b,22dがオン状態になると共に入力手段15のスイッチ15A,15Bはオン状態になるので、書き込み回路2の容量素子21の電荷がメモリバス13を介してメモリセル10の容量素子11に転送される。さらにこのとき、サンプルホールド回路5のスイッチ52aがオン状態になることによって、読み出し回路3の出力アナログ信号がサンプルホールド回路5の容量素子51にサンプリングされる。
一方、第2のメモリ部101bにおいて、読み出し回路3のスイッチ32をオン状態にすると共に出力手段16のスイッチ16A,16Bをオン状態にすることによって、メモりバス13、及び読み出し回路3の容量素子32はリセットされる。これと同時にSCSH回路20のスイッチ22a、22cがオン状態になることによって、入力アナログ信号が書き込み回路2の容量素子21にサンプリングされる。
(MODE4)
最後にMODE4では、MODE2とは逆に、第2のメモリ部101bが読み出し動作を行う。すなわち図17に示すように、第2のメモリ部101bにおいて、読み出し回路3のスイッチ32がオフ状態になると共にメモリセル10のスイッチ12がオン状態になることによって、メモリセル10の容量素子11に蓄積された電荷がメモリバス13を介して読み出し回路3の容量素子31に転送される。一方、第1のメモリ部101aは引き続き書き込み動作を行うが、サンプルホールド回路5はスイッチ52aがオフ状態になることによってホールド状態になる。
このような各モードMODE1〜MODE4における動作を繰り返すことによって、図11に示すような本実施形態に係るアナログFIFOメモリの動作を実現することができる。
なお、並列動作する第1及び第2のメモリ部101a,101bのうち、一方が読み出し動作を行う間に他方が書き込み動作及びリセット動作を行うように、各制御信号によって制御してもかまわない。
また、メモリバス回路1をそれぞれ有するメモリ部を3個以上設けて、並列動作させてもよい。この場合は例えば、一のメモリ部が書き込み動作を行うとき、他のメモリ部が読み出し動作を行うようにし、この間にまた別のメモリ部がリセット動作を行うようにすればよい。
(第3の実施形態)
図18は本発明の第3の実施形態に係るアナログFIFOメモリの構成の概略を示す図である。図18に示すように、本発明の第3の実施形態に係るアナログFIFOメモリは、アナログ信号を記憶するメモリセルが接続されたメモリバスを有するメモリバス回路1を複数個備えている。また6は読み出し回路3から出力されたアナログ信号をサンプルホールドするサンプルホールド回路であり、61は読み出し回路3から出力されたアナログ信号を電荷の形で蓄積する容量素子、62は読み出し回路3と容量素子61との接続/非接続を切替制御するスイッチ、63はバッファアンプである。
図19は本実施形態に係るアナログFIFOメモリにおけるメモリセルのアドレッシングを示す図である。本実施形態に係るアナログFIFOメモリでは、図19に示すように、メモリバス回路1におけるメモリセル10の並びに対して垂直な方向にメモリセル10のアドレッシングを行う,いわゆる垂直アドレッシングを採用する。
本実施形態に係るアナログFIFOメモリも、読み出し動作の前にリセット動作を行う点では第1の実施形態と同様である。本実施形態において特徴的なことは、メモリバスをリセットする動作をアナログ信号を書き込む動作と並行して行うことである。この点について説明する。
アナログFIFOメモリが扱う信号がビデオ信号であるとすると、アナログFIFOメモリのサンプリング周期は約70nsになる。したがって、メモリバスのリセット動作、並びにアナログ信号の読み出し動作及び書き込み動作を70nsの間に完了させる必要がある。すなわち各動作は約23ns以内に完了させなければならず、このとき書き込み回路2や読み出し回路3で用いる演算増幅器に要求されるGB積は1GHzにも及ぶことになるが、この値はとても現実的なものではない。
したがって、本実施形態では、リセット動作と書き込み動作とを並行して行い、この後に読み出し動作を行うことによって、アナログFIFOメモリをビデオ信号の遅延用に用いたときでも、各動作に対して約35nsの時間を割り当てることを可能にする。これによって、書き込み回路2及び読み出し回路3の演算増幅器の負担を軽減することができ、消費電力を削減することができる。
リセット動作と書き込み動作とを並行して行うためには、アナログ信号をメモリセルに書き込む期間にメモリバスのリセットも同時に行わなければならない。ところが当然のことながら、同じメモリバスについて書き込み動作とリセット動作とを同時に実行することはできないので、本実施形態では図19に示すように、垂直アドレッシングを採用することによって、書き込み動作とリセット動作とを並行して実行可能にする。垂直アドレッシングを採用することによって、一のメモリバス回路1にアナログ信号を書き込む動作と他のメモリバス回路1をリセットする動作とを並行して行うことができる。
図20を用いて本実施形態に係るアナログFIFOメモリの動作について説明する。図20に示すアナログFIFOメモリは4個のメモリバス回路1A,1B,1C,1Dを備えており、図20(a)から(d)の順に各スイッチは動作する。図20では、オン状態になったスイッチに○を付している。
まず図20(a)に示すように、メモリバス回路1Aにおいて入力手段15のスイッチがオン状態になると共に一のメモリセル10のスイッチがオン状態になり、スイッチがオン状態になったこのメモリセル10にアナログ信号が書き込まれる。一方、次にアナログ信号が読み出されるメモリバス回路1Bでは出力手段16のスイッチがオン状態になり、かつ読み出し回路3のスイッチ32もオン状態になるので、メモリバス回路1Bのメモリバス13はリセットされる。すなわちメモリバス回路1Aに対する書き込み動作とメモリバス回路1Bに対するリセット動作とが並行して行われる。
次に図20(b)に示すように、メモリバス回路1Bに対して読み出し動作が行われる。読み出し回路3のスイッチ32がオフ状態になると共に、メモリバス回路1Bの一のメモリセル10のスイッチがオン状態になるので、スイッチがオン状態になったメモリセル10からアナログ信号が読み出される。
次に図20(c)に示すように、読み出し動作が行われたメモリバス回路1Bに対して書き込み動作が行われる。メモリバス回路1Bの入力手段15のスイッチがオン状態になると共に一のメモリセル10のスイッチがオン状態になり、スイッチがオン状態になったこのメモリセル10にアナログ信号が書き込まれる。一方、次にアナログ信号が読み出されるメモリバス回路1Cに対してリセット動作が行われる。メモリバス回路1Cでは出力手段16のスイッチがオン状態になり、かつ、読み出し回路3のスイッチ32もオン状態になるので、メモリバス回路1Cのメモリバス13はリセットされる。すなわちメモリバス回路1Bに対する書き込み動作とメモリバス回路1Cに対するリセット動作とが並行して行われる。
次に図20(d)に示すように、メモリバス回路1Cに対して読み出し動作が行われる。読み出し回路3のスイッチ32がオフ状態になると共に、メモリバス回路1Cの一のメモリセル10のスイッチがオン状態になるので、スイッチがオン状態になったメモリセル10からアナログ信号が読み出される。
図20から分かるように、本実施形態に係るアナログFIFOメモリでは、メモリセルに対して垂直にアドレッシングを行うことによって、一のメモリバス回路に対する書き込み動作と前記一のメモリバス回路の次に読み出し動作を行う他のメモリバス回路に対するリセット動作とを並行して行うことを可能にしている。本実施形態に係る技術的思想は、メモリバスに対して垂直にアドレッシングを実行することによって、書き込み動作とリセット動作とを並行して行うことを可能にし、各動作における動作時間を十分に確保することによって、演算増幅器の動作速度を低減し、その消費電力を低減させることにある。
なお、必ずしも垂直アドレッシングを採用しなくても、複数のメモリバス回路のうち一のメモリバス回路に対して読み出し動作及び書き込み動作を行ったとき、次に、前記一のメモリバス回路以外のメモリバス回路に対して読み出し動作及び書き込み動作を行うようにメモリセルのアドレスを指定すれば、本実施形態と同様に、書き込み動作とリセット動作とを並行して行うことが可能になる。
図21は本実施形態に係るアナログFIFOメモリの具体的な構成方法を示す図である。なお図21では書き込み回路2との接続端子4a,4b及び読み出し回路3との接続端子5a,5bを示しており、書き込み回路2と読み出し回路3は図示を省略している。図21に示すように、本実施形態に係る方式を実行させるために、書き込み動作を駆動する信号Saを生成する書き込み制御手段71と、読み出し動作を駆動する信号Sbを生成する読み出し制御手段72と、リセット動作を駆動する信号Scを生成するリセット制御手段73と、読み出し動作及び書き込み動作を行うメモリバスを指定する信号SA1を生成する第1のメモリバス指定手段74と、リセット動作を行うメモリバスを指定する信号SA2を生成する第2のメモリバス指定手段75とを設けている。
図22は図21に示すアナログFIFOメモリの動作を示すタイミングチャートであり、信号Sa,Sb,Scの時間変化及び信号SA1,SA2が指定するメモリバスのアドレスの時間変化を示している。ここでは、信号は全てローアクティブであるものとしている。
リセット動作を行うメモリバスは、常に、次に読み出し動作及び書き込み動作を行うメモリバスであればよい。したがって、第2のメモリバス指定手段75によって生成された信号SA2が指定するメモリバスのアドレスは、第1のメモリバス指定手段74によって生成された信号SA1が指定するメモリバスの次のメモリバスのアドレスとする。
各メモリバス回路1の入力手段15は、第1のメモリバス指定手段74によって生成された信号SA1によってアドレス指定された場合にのみ、書き込み制御手段71によって生成された駆動信号Saによってスイッチ15A,15Bを駆動する。また各メモリバス回路1の出力手段16は、第1のメモリバス指定手段75によって生成された信号SA1によってアドレス指定された場合は読み出し制御手段72によって生成された駆動信号Sbによってスイッチ16A,16Bを駆動する一方、第2のメモリバス指定手段75によって生成された信号SA2によってアドレス指定された場合はリセット制御手段73によって生成された駆動信号Scによって、スイッチ16A,16Bを駆動する。
図21に示すような回路構成において図22に示すような制御を行うことによって、図20に示すような各動作が具体的に実現される。
(第4の実施形態)
図23は本発明の第4の実施形態に係るアナログFIFOメモリの構成を示す回路図である。本発明の第4の実施形態では、図23に示すように、メモリセル回路1において、第1及び第2のバス配線13A,13B間に予めダミー容量素子121を設けている。ダミー容量素子121によってダミーメモリセル120が構成されている。
ここで、ダミー容量素子121の容量値をCd、第1及び第2のバス配線13A,13B間の配線間容量61の容量値をCp、メモリセル10の容量素子11の容量値をCc、読み出し回路3の容量素子31の容量値をCc、書き込み回路2の容量素子21の容量値を(Cc+Cd)とする。このとき、入力アナログ信号の電圧がVinであるとすると、書き込み回路2の容量素子21に蓄えられる電荷Q1は、次のようになる。
Q1=Vin(Cc+Cd) …(7)
この電荷Q1は書き込み動作において、メモリセル10の容量素子11とダミー容量素子121と配線間容量61とに、容量値に応じて分かれて蓄積される。このときメモリセル10の容量素子11に蓄積される電荷Q2は、次のようになる。
Q2=Vin(Cc+Cd)Cc/(Cc+Cd+Cp) …(8)
メモリセル10の容量素子11に蓄積された以外の、ダミー容量素子121及び配線間容量61に蓄えられた電荷は、リセット動作によって第1及び第2のバス配線13A,13Bがリセットされるのでなくなる。このため、読み出し動作において読み出し回路3の容量素子31に転送される電荷はメモリセル10の容量素子11に蓄積された電荷Q2のみになるので、この電荷Q2によって生じる出力電圧Voutは、次のようになる。
Vout=Q2・Cc
=Vin・(Cc+Cd)/(Cc+Cd+Cp)
=Vin/(1+Cp/(Cc+Cd)) …(9)
すなわち、式(9)から、配線間容量61が出力電圧Voutに及ぼす影響は次のような式で表されることが分かる。
Cp/(Cc+Cd) …(10)
つまり、配線間容量61が出力電圧Voutに及ぼす影響はダミー容量素子121の存在によって小さくなり、ダミー容量素子121の容量値Cdが大きければ大きいほど、配線間容量61が出力電圧Voutに及ぼす影響は小さくなることがわかる。
以上説明したように本実施形態によると、メモリバスに接続された容量素子を有するダミーメモリセルを設けることによって、メモリバスの寄生容量がアナログFIFOメモリの入出力動作に及ぼす影響を低減することができる。
本実施形態は第2の実施形態と組み合わせることによって、より顕著な効果を得ることができ、例えばTV信号の遅延用にアナログFIFOメモリを用いる場合でも、メモリバスの寄生容量の影響を低減することができる。
式(10)から明らかなように、ダミー容量素子121の容量値Cdが大きければ大きいほど、配線間容量61が出力電圧Voutに及ぼす影響が小さくなる。ところがダミー容量素子121の容量値Cdを大きくした場合には、これに応じて、書き込み回路2からメモリセル10に電荷を転送する際のセトリング時間を大きくとる必要が生じる。従来のアナログFIFOメモリでは、例えばTV信号の遅延用に用いる場合には回路を高速動作させる必要があるため、書き込み回路2からメモリセル10に電荷を転送する際のセトリング時間を大きくとることは実際には極めて困難であった。
ところが第2の実施形態によると、第1及び第2のメモリ部101a,101bの並列動作によって、書き込み動作に割り当てられた時間が従来の2倍になるので、書き込み回路2からメモリセル10に電荷を転送する際のセトリング時間を十分大きくとることができる。このためダミー容量素子121の容量値Cdを、メモリバスの寄生容量がアナログFIFOメモリの入出力動作に及ぼす影響を低減するのに十分な大きさにすることができる。
(第5の実施形態)
第4の実施形態は、メモリバスに予めダミーメモリセルを設けておくことによってメモリバスの寄生容量の影響を低減するものであった。本発明の第5の実施形態は、第4の実施形態で示したダミーメモリセルのレイアウト上の配置位置を工夫することによって、読み出し及び書き込みの対象となるメモリセルの位置によるアナログFIFOメモリの入出力特性のばらつきを抑制するものである。
図24(a)は本発明の第5の実施形態に係るアナログFIFOメモリのメモリバス回路1の構成を示す回路図である。本実施形態では、図24(a)に示すように、第4の実施の形態で示したダミーメモリセル120を2つに分割し、ダミーメモリセル130としてメモリバス13の両端にメモリセル10を挟み込むように配置する。ダミーメモリセル130は、メモリセル10の容量素子11と同じ容量値をもつダミー容量素子131、及びメモリセル10のスイッチ12のオン抵抗と同じ抵抗値を持つ抵抗素子132を備えている。本実施形態では、このダミーメモリセル130をメモリバス13の両端になるべく多く並列に配置する。
図24(b)は図24(a)に示すメモリバス回路1において1個のメモリセル10のスイッチがオン状態になった場合の等価回路を示す図である。図24(b)において、第1及び第2のバス配線13A,13Bの配線抵抗をRbとし、メモリセル10の1個あたりのスイッチ抵抗と容量値をそれぞれR1,Cmとする。
メモリバス13には複数個のメモリセル10が接続されているので、いずれのメモリセル10に電荷を転送するかによって電荷の転送経路が物理的に異なってくる。メモリバス13のインピーダンスの変化が最も大きいのは、読み出し及び書き込みの対象となるメモリセル10の位置が、メモリバス13の最も入力側から最も出力側に変化した場合である。このときのメモリバス13のインピーダンスの変化を計算する。
いま、ダミーメモリセル130はメモリバス13の入力側端に(y−1)個、、出力側端にx個配置されているものとする。読み出し及び書き込みの対象となるメモリセル10の位置が最も入力側であるとき、メモリバス13の入力側端にダミーメモリセル130を含めたメモリセルがy個、出力側端にダミーセル130を含めたメモリセルがx個並列に接続されていることになる。この場合、メモリバス13の入力側からみたインピーダンスZ1は次のようになる。
Z1={2Rb・x(R1+1/sCm)+(R1+1/sCm)2}
/{2Rb・xy+(x+y)(R1+1/sCm)} …(11)
一方、読み出し及び書き込みの対象となるメモリセル10の位置が最も出力側であるとき、メモリバス13の入力側端にダミーメモリセル130を含めたメモリセルが(y−1)個、出力側端にダミーセル130を含めたメモリセルが(x+1)個並列に接続されていることになる。ここで、メモリバス13の入力側端に配置されたダミーメモリセル130の個数と、出力側端に配置されたダミーメモリセル130の個数とが等しいものとすると、
y−1=x …(12)
となるので、メモリバス13の入力側端にダミーメモリセル130を含めたメモリセルがx個、出力側端にダミーセル130を含めたメモリセルがy個並列に接続されていることになる。この場合のメモリバス13の入力側からみたインピーダンスZ2は、式(11)のxとyとを入れ替えることによって計算でき、次のようになる。
Z2={2Rb・y(R1+1/sCm)+(R1+1/sCm)2}
/{2Rb・xy+(x+y)(R1+1/sCm)} …(13)
したがって、読み出し及び書き込みの対象となるメモリセル10の位置が、メモリバス13の最も入力側から最も出力側に変化した場合のインピーダンスの変化Zcは、式(13)に示すインピーダンスZ2から式(11)に示すインピーダンスZ1を引くことによって、次のように求められる。
Zc=2Rb(R1+1/sCm)
/{2Rb・xy+(x+y)(R1+1/sCm)} …(14)
ここで、R1>>Rbであれば、式(14)は次のように近似される。
Zc=2Rb/(x+y) …(15)
式(15)から分かるように、インピーダンスの変化Zcに対する配線抵抗Rbの影響は1/(x+y)に低減される。すなわち、メモリバス13の両端にメモリセル10を挟み込むようにダミーメモリセル130を配置することによって、読み出し及び書き込みの対象となるメモリセル10の位置によるメモリバス13のインピーダンスの変化を抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態によると、ダミーメモリセルをメモリバスの両端に設けることによってメモリバスのインピーダンスを平均化することができるので、読み出し及び書き込み対象のメモリセルの位置によるアナログFIFOメモリの入出力特性のばらつきを抑制することができ、読み出し及び書き込み対象のメモリセルの位置によらず安定した入出力特性を実現することができる。
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態はメモリバスの寄生容量そのものを低減するトランジスタのレイアウトに関するものである。
図25は本発明の第6の実施形態を説明するための図であり、同図中、(a)は従来のトランジスタのレイアウトを示す図、(b)は本実施形態に係るトランジスタのレイアウトを示す図、(c)はメモリセルのスイッチとして用いられたトランジスタに寄生するドレイン−ソース間容量を示す模式図である。
メモリバスに寄生する配線間容量を減少させるためにはメモリバス配線間の距離をできるだけ大きくとればよい。ところが図25(c)に示すように、メモリセル10のスイッチ12を構成するCMOSトランジスタ12Aには、レイアウト上必然的にドレイン−ソース間容量146が生じる。すると、メモリセル10の容量素子11とCMOSトランジスタ12Aのドレイン−ソース間容量146との直列接続からなる配線間容量がメモリバスに寄生することになり、この配線間容量の容量値はほぼドレイン−ソース間容量146の容量値になる。このような配線間容量は、CMOSトランジスタ12Aのドレイン−ソース間容量146をなくさない限りなくなることはなく、またこのような配線間容量はメモリセル10の数が多くなればなるほど増加するので、メモリセル10を多数集積してアナログFIFOメモリを構成する場合には大きな問題となる。
そこで本実施形態では、ドレイン−ソース間に電気力線が走らないようなトランジスタのレイアウトを提案する。そもそも容量とは、電気力線が一の電極から他の電極に走ることによって形成される。したがって、電気力線が走らなければ容量が形成されることはない。本実施形態ではこの点に着目し、ドレイン−ソース間にゲート電極をレイアウトしてドレイン及びソースから発生する電気力線をゲート電極上に終端させることによって、ドレイン−ソース間に電気力線が走ることを防止し、ドレイン−ソース間容量が形成されないようにする。
図25(a)に示すように、従来のトランジスタのレイアウトでは、ドレイン143とソース141との間のゲート電極144が配置されていない部分において電気力線145がドレイン−ソース間を走るので、ドレイン−ソース間により容量が形成されてしまう。
これに対して本実施形態に係るトランジスタのレイアウトでは、図25(b)に示すように、ドレイン143とソース141との間にゲート電極144が隙間なく配置されるので、電気力線がドレイン−ソース間を走ることを防止することができる。このようなレイアウトによって、ドレイン−ソース間容量の発生を防いでいる。
以上説明したように、本実施形態によると、メモリセルのスイッチ素子として用いるCMOSトランジスタにおいて、ドレイン−ソース間を電気力線が走らないようなレイアウトにすることによってドレイン−ソース間容量の形成を防止することができる。これによって、メモリバスに寄生する寄生容量そのものを小さくすることができる。
なお本実施形態に係るトランジスタのレイアウトは、アナログFIFOメモリのメモリセルのスイッチとして用いられるトランジスタについてのみ適用されるものではなく、素子と信号線との接続状態を切替制御するスイッチング素子として用いられるトランジスタであれば適用することができ、本実施形態と同様の効果が得られる。
図30は本発明に係るリセット動作の効果を示す図であり、同図中、(a)は
リセット動作を行わないときのアナログFIFOメモリの周波数特性、(b)は本発明に係るリセット動作を行ったときのアナログFIFOメモリの周波数特性である。図30から分かるように、本発明に係るリセット動作を行うことによって、アナログFIFOメモリの周波数特性は平坦になり、従来よりもアナログFIFOメモリの入出力特性が改善される。