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JP4099317B2 - 半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

半導体レーザ素子の製造方法 Download PDF

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JP4099317B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク用などに用いられる半導体レーザ素子の製造方法に関するものであり、特に高出力動作の特性に優れた窓構造半導体レーザ素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスク装置用光源として、各種の半導体レーザが広汎に利用されている。とりわけ、高出力半導体レーザは、DVDプレーヤ、DVD−RAMドライブ等のディスクへの書き込み用光源として用いられており、さらなる高出力化が強く求められている。
【0003】
半導体レーザの高出力化を制限している要因の一つは、レーザ共振器端面近傍の活性層領域での光出力密度の増加に伴い発生する光学損傷(COD;Catastrophic Optical Damage)である。
【0004】
前記CODの発生原因は、レーザ共振器端面近傍の活性層領域がレーザ光に対する吸収領域になっているためである。レーザ共振器端面では、表面準位または界面準位といわれる非発光再結合中心が多く存在する。レーザ共振器端面近傍の活性層に注入されたキャリアはこの非発光再結合によって失われるので、レーザ共振器端面近傍の活性層の注入キャリア密度は中央部に比べて少ない。その結果、中央部の高い注入キャリア密度によって作られるレーザ光の波長に対して、レーザ共振器端面近傍の活性層領域は吸収領域になる。
【0005】
光出力密度が高くなると吸収領域での局所的発熱が大きくなり、温度が上がってバンドギャップエネルギーが縮小する。その結果、更に吸収係数が大きくなって温度上昇する、という正帰還がかかり、レーザ共振器端面近傍の吸収領域の温度はついに融点にまで達し、CODが発生する。
【0006】
前記CODレベルの向上のために、半導体レーザの高出力化の一つの方法として、特開平11−284280号公報に記載されている、多重量子井戸構造活性層の無秩序化による窓構造を利用する手法がとられてきた。
【0007】
この窓構造を有する半導体レーザの従来技術として、特開平11−284280号公報に記載されている半導体レーザ素子の構造図を図10に示す。図10において、1001はn型GaAs基板、1002はn型GaAsバッファ層、1003はn型AlGaInPクラッド層、1004は活性領域、1005はp型AlGaInPクラッド層、1006はp型GaInP通電容易層、1010(斜線部)はZn拡散領域、1012はn型GaAs電流ブロック層、1013はp型GaAsコンタクト層、1014はp側電極、1015はn側電極である。また、前記活性領域1004はAlGaInP第一光ガイド層1016、GaInPウェル層1017とAlGaInPバリア層1018とからなるMQW活性層1020、及びAlGaInP第二光ガイド層1019からなる。次に従来の半導体レーザ素子の製造方法を図11に示す工程図を参照して説明する。
【0008】
n型GaAs基板1001上にn型GaAsバッファ層1002、n型AlGaInPクラッド層1003、活性領域1004、p型AlGaInPクラッド層1005、p型GaInP通電容易層1006、n型GaAsキャップ層1007を順次形成する。次に半導体レーザの共振器端面に平行にストライプ状のSiO2マスク1008を形成し、p型GaInP通電容易層1006、n型GaAsキャップ層1007をエッチングする。(図11(a))次に、Znを高濃度に含んだp型GaAs層1009を選択成長し、その後アニール処理を加えて、Znをp型GaAs層1009からn型AlGaInPクラッド層1003の途中まで拡散させ、Znが拡散された窓領域1010をSiO2マスク1008の開口部の下に選択的に形成する。(図11(b))これにより、MQW活性層1020とAlGaInP光ガイド層1016,1019からなる活性領域1004は、実効的なバンドギャップが増大して窓領域となる。
【0009】
次に、p型GaAs層1009をエッチングにより除去し、SiO2マスク1008の開口部にp型AlGaInPクラッド層1005のZn拡散領域1010を露出させる。(図11(c))この後、SiO2マスク1008を取り除きn型GaAsキャップ層1007を露出させた後、ストライプ状のSiO2マスク1011をn型GaAsキャップ層1007のストライプ状の開口部に対して直行にするように形成し(図11(d))、p型GaInP通電容易層1006、n型GaAsキャップ層1007をエッチングして取り除き(図11(e))、p型AlGaInPクラッド層1005をリッジストライプ状に形成する。(図11(f))次に、n型GaAs電流ブロック層1012をリッジの側面に選択成長させ(図11(g))、その後、ストライプ状のSiO2マスク1011をエッチングにより取り除く。(図11(h))さらに、n型GaAsキャップ層1007をエッチングにより取り除くことにより、p型AlGaInPクラッド層1005のリッジストライプ上には、Zn拡散領域を開口部とするp型GaInP通電容易層1006が露出した形となる(図11(i))。
【0010】
この後、p型GaAsコンタクト層1013を形成し、p型電極としてAuZn/Au1014を形成し、n型電極としてAuGe/Au1015を形成し、その後ウエハをへき開して、図10の半導体レーザ素子を得る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の窓構造半導体レーザ素子では、レーザ共振器端面近傍に形成された窓領域1010において、レーザ発振波長に相当するバンドギャップエネルギーよりも大きくなるように、Zn原子を高濃度に含んだp型GaAs層1009を選択成長し、MQW活性層1020へのZn原子の拡散を行っている。
【0012】
しかしながら、上記従来方法では、光出射端面近傍の活性層のバンドギャップエネルギーをレーザ発振波長に相当するバンドギャップエネルギーよりも大きくなるようにするためには、高温でのアニールを長時間行う必要がある。
【0013】
その結果、窓領域以外の領域においても、p型導電性を有する各層1005,1006に存在するZn原子等の不純物が、MQW活性層1020へ大量に拡散するので、高出力時の駆動電流,駆動電圧の上昇と長期信頼性の低下を招いてしまう。
【0014】
また、アニール温度を低くすれば、窓領域以外の領域でのMQW活性層1020へのZn原子等の不純物拡散を抑制できるが、窓領域1010でのMQW活性層1020へのZn原子の拡散が不十分となり、共振器端面近傍領域において、レーザ光を吸収してしまう。
【0015】
その結果、光出射端面近傍の活性層領域でCODが発生しやすくなり、高出力駆動時の最大光出力の低下を引き起こし、十分な長期信頼性が得られない。
【0016】
本発明は、上記の問題について検討した結果、高出力時の駆動電流,駆動電圧を低減し、且つ、長期信頼性に優れた半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、リッジ状ストライプを有し、一対のクラッド層で挟まれた活性層と、上記リッジ状ストライプの側面に形成された電流ブロック層とを備えた半導体レーザ素子において、少なくとも、そのレーザ共振器端面近傍領域における上記電流ブロック層以外の領域に水素原子が含まれる一方、上記電流ブロック層と、レーザ共振器端面近傍領域以外の領域とには、水素原子が含まれず、且つ、レーザ共振器端面近傍領域の活性層のバンドギャップが、レーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップよりも大きくてなることにより、上記の目的を達成する。
【0018】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、レーザ共振器端面領域における上記電流ブロック層以外の領域に含まれる水素原子濃度、レーザ共振器内部領域よりも高濃度であることにより、上記の目的を達成する。
【0019】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、第一導電型の基板上に、第一導電型のクラッド層、バリア層及びウエル層とが交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、上記リッジ状ストライプを有する第二の第二導電型クラッド層を備えた、半導体レーザ素子であって、少なくとも、レーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に水素原子が含まれてなることによって、上記の目的を達成する。
【0020】
このとき、レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、1×1018atoms/cm3以上であることが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、少なくとも、リッジ状ストライプを有する第二の第二導電型クラッド層のレーザ共振器端面近傍領域に、水素原子を含ませることに特徴があり、該領域以外に、第一の第二導電型クラッド層のレーザ共振器端面近傍領域、及び/又は前記リッジ状ストライプの側面に配置される電流ブロック層内に水素原子を含ませてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、前記基板がGaAsであり、前記第一導電型のクラッド層、活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層がAlGaInP材料からなることによって、上記の目的を達成する。
【0023】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、前記第一、及び第二の第二導電型クラッド層には、II族原子が含まれてなることによって、上記の目的を達成する。
【0024】
ここで、II族原子として、Zn、Beを用いることが可能であるが、上記材料系においては、Be原子の方が好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子は、前記第一導電型の、基板、及びクラッド層には、Si原子が含まれてなることによって、上記の目的を達成する。
【0026】
本発明による半導体レーザ素子の製造方法は、第一導電型のクラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層を含む各層を、第一導電型の半導体ウエハ上にエピタキシャル成長させる工程と、レーザ共振器内部領域の前記エピタキシャル成長されたウエハ表面上にマスクを形成する工程と、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールする工程と、前記第二の第二導電型クラッド層にリッジ状のストライプを形成する工程と、前記リッジ状のストライプを埋め込む、第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程と、水素原子がドーピングされた領域を、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域における前記電流ブロック層以外の領域にする工程とを備え、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールする工程とを同時に行い、上記水素原子をドーピングする工程および上記ウエハをアニールする工程は、真空中でウエハ温度を600℃にし、水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeを同時に照射することによって行い、前記水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeは、水素原子を多量に含むAs固体ソース、及び水素原子を多量に含むBe固体ソースをMBE装置内において、加熱させて得られることによって、上記の目的を達成する。
【0027】
このウエハアニール工程によって、レーザ共振器端面近傍領域の第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層に含まれる、第二導電性を示す不純物を活性層へ拡散させることとなり、上記活性層における、レーザ共振器端面近傍領域のバンドギャップを、レーザ共振器内部領域のバンドギャップより大きくすることができる。
【0028】
本発明による半導体レーザ素子の製造方法は、前記半導体レーザ素子の製造方法において、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程の前に、前記第二の第二導電型クラッド層にリッジ状のストライプを形成する工程と、前記リッジ状のストライプを埋め込む、第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程とを更に備えたことによって、上記の目的を達成する。
【0029】
本発明による半導体レーザ素子の製造方法は、前記レーザ共振器端面近傍領域への水素原子ドーピング工程が、1200eV以下の照射エネルギーで水素イオンをレーザ共振器端面近傍領域に照射するものであることによって、上記の目的を達成する。
【0030】
【0031】
本発明による半導体レーザ素子の製造方法において、該ウエハを真空中で加熱しながら、水素原子と結合したII族原子、又は、水素原子と結合したV族原子をレーザ共振器端面近傍領域に照射することによって、上記の目的を達成する。
【0032】
本発明による半導体レーザ素子の製造方法において、分子線エピタキシ−(MBE)装置又はガスソース分子線エピタキシ−(GS−MBE)装置を用いることによって、上記の目的を達成する。
【0033】
本発明において、第一導電型クラッド層、活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層、を含む各層を第一導電型の半導体基板に成長させる工程、及び前記第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程は、分子線エピタキシー(MBE)成長法によって行われることが、より好ましい。
【0034】
以下、本発明の作用を記載する。
【0035】
本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、第一導電型半導体基板上に、第一導電型クラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、リッジ状のストライプを有する第二の第二導電型クラッド層、及び該リッジストライプ状の開口を有する第一導電型電流ブロック層を有する半導体レーザ素子において、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子が含まれている。これにより、レーザ共振器端面近傍領域の第二導電性を示す不純物を加速的に拡散させることが可能となるため、アニール温度の低温化が可能となり、レーザ共振器内部領域の第一の第二導電型クラッド層、及び第二の第二導電型クラッド層に存在する、第二導電性を示す不純物原子の活性層への拡散を抑制でき、高出力時の駆動電流,駆動電圧を低減できる。
【0036】
そして、レーザ共振器端面近傍領域の前記活性層のバンドギャップがレーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップより大きいため、レーザ共振器端面近傍領域の活性層において、レーザ光の吸収が無い窓領域が形成されることとなり、これにより、レーザ共振器端面近傍領域の活性層でのCODを抑制できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を詳細に説明する。
【0038】
(実施例1)図1は実施例1で製造された半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。図1において、(a)は光出射端面を含む斜視図、(b)は図1(a)のIa−Ia'線における導波路の断面図、(c)は図1(a)のIb−Ib'線における層厚方向の断面図である。また、101はn型GaAs基板、102はn型GayInzP(y,zは0以上1以下;以下省略)バッファ層、103はn型AlxGayInzP(x,y,zは0以上1以下;以下省略)第1クラッド層、104はバリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層(MQW活性層)、105はp型AlxGayInzP第2クラッド層、106はp型エッチングストップ層、107は共振器方向にリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層、108はp型GayInzP中間層、109はp型GaAs保護層、110はリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層の側面を埋め込む様に形成されたn型AlxInzP(x,zは0以上1以下;以下省略)電流ブロック(狭窄)層、111はp型GaAsコンタクト層、112はp側電極、113はn側電極である。
【0039】
また、図1において、114はレーザ共振器端面近傍のMQW活性層のバンドギャップエネルギーがレーザ共振器内部のMQW活性層104のバンドギャップエネルギーよりも大きい領域(窓領域)、115はp型GaAs保護層109上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層110からなる電流非注入領域、116はp型AlxGayInzP第3クラッド層107、p型GayInzP中間層108、p型GaAs保護層109からなるストライプ状のリッジであり、図中の斜線部は水素原子が含まれている領域(p型AlxGayInzP第2クラッド層105、p型エッチングストップ層106、p型AlxGayInzP第3クラッド層107、p型GayInzP中間層108、p型GaAs保護層109からなるレーザ共振器端面近傍領域)である。
【0040】
次に製造方法について図2に基づいて説明する。n型GaAs基板101(キャリア濃度2×1018cm-3)上に順次、分子線エピタキシー(MBE)法にてn型GayInzPバッファ層102(キャリア濃度1×1018cm-3)、n型AlxGayInzP第1クラッド層103(キャリア濃度1×1018cm-3)、MQW活性層104、p型AlxGayInzP第2クラッド層105(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型エッチングストップ層106、p型AlxGayInzP第3クラッド層107(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型GayInzP中間層108、p型GaAs保護層109(キャリア濃度1×1019cm-3)をエピタキシャル成長させる(図2(a))。この時、101〜103の各層にはSi原子が、105〜109の各層にはII族原子であるBe原子が含まれている。
【0041】
上記方法によって得られた102〜109の各層を2次イオン質量分析(SIMS)装置で測定した結果、水素原子は検出下限(7×1017atoms/cm)以下であり、102〜109の各層の成膜中において、明らかな水素原子の混入は発生していない。
【0042】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、レーザ共振器内部領域のp型GaAs保護層109の表面に、リッジストライプと直交する方向に幅760μmストライプ状のレジストマスク117を形成する。前記レジストマスク117は、レーザ共振器内部領域に、水素原子がドーピングされないために形成されたものである。なお、ストライプのピッチは共振器長と同じ800μmとした。その後、レーザ共振器端面近傍領域のp型AlxGayInzP第3クラッド層107に含まれる水素原子濃度が、2×1018atoms/cmとなるように、レーザ共振器端面近傍領域のp型GaAs保護層109表面から、水素原子のドーピングを行う。本実施例では、照射エネルギー1000eV、照射時間2時間の条件下でイオン化された水素原子の照射(水素イオン照射)を行った(図2(b))。
【0043】
上記方法によって得られたマスク117に覆われたレーザ共振器内部領域のMQW活性層の水素イオン照射前後でのPL強度をPL法にて比較した結果、同等のPL強度であった。従って、上記方法での水素原子のドーピングを行っても、レーザ共振器内部領域のMQW活性層へのダメージは全く無いことが明らかである。
【0044】
次に、レジストマスク117を除去し、アニールを行う。これにより、水素イオン照射が行われたレーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層(窓領域)114のバンドギャップエネルギーをレーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)104のバンドギャップエネルギーよりも大きくさせる。この時のアニール条件は、V族原子であるN原子を含む雰囲気下で、温度700℃、保持時間2時間で行った。
【0045】
その後、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、p型GaAs保護層109上にレーザ共振器端面に垂直方向へ伸びたストライプ状のレジストマスク118を形成し、公知のエッチング技術を用いて、p型エッチングストップ層106に到達するように、p型GaAs保護層109とp型GayInzP中間層108とp型AlxGayInzP第3クラッド層107を約3μm幅のストライプ状のリッジ116に加工する(図2(c))。
【0046】
次に、p型GaAs保護層109上に形成されたストライプ状のレジストマスク118を除去し、2回目のMBE法によって、p型AlxGayInzP第3クラッド層107、p型GayInzP中間層108、p型GaAs保護層109からなるリッジ116の側面をn型AlxInzP電流ブロック層110で埋め込む(図2(d))。
【0047】
その後、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、リッジ116の側面に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層110、及び、リッジ116上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層110の幅40μmのストライプ状のレーザ共振器端面近傍領域にレジストマスク119を形成し、公知のエッチング技術を用いて、レジストマスク119開口部のn型AlxInzP電流ブロック層110を選択的に除去する(図2(e))。
【0048】
リッジ116上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層110を除去する工程が、電流非注入領域115の形成工程を兼ねるので、工程数の削減が可能となっており、さらに、前記プロセスによって形成された電流非注入領域115が、窓領域114の直上になっているので、窓領域への電流注入を防ぎ、窓領域でのキャリア損失を抑えられるので、発光に寄与しない無効電流が低減される。
【0049】
次に、n型AlxInzP電流ブロック層110上に形成されたレジストマスク119を除去し、3回目のMBE法でp型GaAsコンタクト層111を形成する(図2(f))。さらに、上面にはp電極112、下面にはn電極113を形成する。
【0050】
その後、40μm幅のレーザ共振器端面近傍領域のほぼ中央にスクライブラインを入れて、共振器の長さにバー状に分割し、最後にバーの両側の光出射に反射膜をコーティングし、さらにチップに分割して、長さ800μmの共振器のレーザ共振器端面部に約20μmの窓領域及び電流非注入領域を有した素子が作製される。
【0051】
上記の本発明の半導体レーザ素子の製造方法を用いた、アニール後のウエハの一部を、PL法にてレーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層(窓領域)114とレーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)104のそれぞれの波長を測定した。また、比較のために、上記の本発明の半導体レーザ素子の製造方法において、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子のドーピングを行わずに、不純物原子拡散だけによって活性層の無秩序化を行う、従来方法を用いたウエハも同時に、PL法にて、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層(窓領域)と共振器内部のMQW活性層(活性領域)のそれぞれの波長を測定した。
【0052】
その結果、本発明の半導体レーザ素子の製造方法を用いた場合、窓領域114からの発光スペクトルは、活性領域104からの発光スペクトルよりも40nm短波長側に波長シフトし、従来方法を用いた場合、窓領域114からの発光スペクトルは、活性領域104からの発光スペクトルよりも20nm短波長側に波長シフトしていた。このことから、アニール条件が同じである場合、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子のドーピングを行うことにより、窓領域の波長シフト量を増大できることが明らかである。
【0053】
上記の本発明の製造方法では、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングすることにより、レーザ共振器端面近傍領域のp型AlxGayInzP第2クラッド層105、p型エッチングストップ層106、p型AlxGayInzP第3クラッド層107、p型GayInzP中間層108、p型GaAs保護層109に存在している、II族原子であるBe原子を拡散しやすい状態にし、該ウエハをアニールすることにより、レーザ共振器端面近傍領域のII族原子であるBe原子をn型GaAs基板101方向へ加速的に拡散させることが可能となるため、窓領域の波長シフト量を増大できるのである。
【0054】
また、図3に、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする本発明の製造方法を用いた場合、及び、上記の本発明の半導体レーザ素子の製造方法において、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子のドーピングを行わずに、不純物原子拡散だけによって活性層の無秩序化を行う、従来技術の製造方法を用いた場合の活性領域の波長に対する窓領域の波長シフト量とアニール温度の関係を示す。この時のアニール時間は2時間であり、活性領域の波長に対して窓領域の波長は全て短波長側へシフトしていた。図3の縦軸は活性領域の波長に対する窓領域の波長シフト量(nm)、横軸はアニール温度(℃)であり、図中の実線は本発明の製造方法を用いた時、図中の破線は従来技術の製造方法を用いた時の窓領域の波長シフト量を示している。
【0055】
図3から判るように、活性領域の波長に対して窓領域の波長を短波長側へ40nmシフトさせるためには、従来技術の製造方法を用いた場合、アニール温度を800℃必要とするが、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする本発明の製造方法を用いた場合、アニール温度は700℃でよく、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする本発明の製造方法を用いることにより、アニール温度の低温化が可能であることが明らかである。
【0056】
上記の本発明の製造方法によって得られた半導体レーザ素子の特性測定を行った。
【0057】
また、比較のために、上記の本発明の製造方法において、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングを行わず、且つ、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層からの発光スペクトルが共振器内部のMQW活性層からの発光スペクトルより40nm短波長側に波長シフトするように、アニール温度を800℃にして得られた従来技術の半導体レーザ素子の特性測定も同時に行った。
【0058】
その結果、CW50mWでの発振波長(λ)は本発明で製造された半導体レーザ素子及び従来技術の半導体レーザ素子ともに655nm、本発明で製造された半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電流(Iop)は80mA、従来技術の半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電流(Iop)は100mAであり、本発明の半導体レーザ素子の製造方法では、駆動電流の低電流化が実現されていることが明らかである。この駆動電流の低電流化は、レーザ共振器内部領域への水素原子の混入を抑制しつつ、レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度をレーザ共振器内部領域より高濃度にし、且つ、アニール温度を低温化することによって、共振器内部のMQW活性層へのII族原子であるBe原子の拡散が低減された効果である。
【0059】
また、最大光出力試験の結果は、本発明で製造された半導体レーザ素子及び従来技術の半導体レーザ素子ともに300mW以上の光出力においてもCODフリーであり、これらを70℃50mWの信頼性試験を行ったところ、従来技術の半導体レーザ素子の平均寿命は1000時間であるのに対し、本発明の半導体レーザ素子では約2000時間と約2倍も平均寿命が向上した。
【0060】
本実施例では、レーザ共振器内部領域に水素原子がドーピングされないためのマスクとしてレジストマスク117を用いたが、AlxOy,SixOy,SixNy,SixOyNz(x,y,zは1以上)等の誘電体膜であっても、上記と同様の効果が得られる。
【0061】
本実施例では、レーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に含まれる水素原子濃度が、2×1018atoms/cmとなるように、イオン化された水素原子を照射エネルギー1000eV、照射時間2時間の条件下で照射を行っているが、前記水素原子濃度の制御は、照射エネルギー及び照射時間を適宜調整することにより可能である。
【0062】
本実施例では、レーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に含まれる水素原子濃度を2×1018atoms/cmとしたが、前記レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、1×1018atoms/cm以上であれば、上記と同様の効果が得られる。また、前記レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度を適宜調整することにより、II族原子であるBe原子の拡散速度を変化させることができ、窓領域の所望の波長シフト量を得ることが可能である。
【0063】
本実施例では、照射エネルギー1000eVでのイオン化された水素原子の照射を行っているが、1200eV以下の照射エネルギーであれば、レーザ共振器内部領域のMQW活性層へのダメージが全く無いので、上記と同様の効果が得られる。
【0064】
本実施例では、II族原子としてBe原子を用いているが、Zn原子であっても、上記と同様の効果が得られる。但し、II族原子としてBe原子を用いた場合の方が、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層へのII族原子の拡散量が多くなるので、より効果的に窓領域の波長シフト量を増大できる。
【0065】
本実施例では、本発明で製造された半導体レーザ素子の102〜111の各層を成膜する方法として、MBE法を用いているが、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いても、上記と同様の効果が得られる。但し、MBE法を用いた方が水素(H2),アルシン(AsH3),ホスフィン(PH3)等の水素化物を使用しないので、成膜中において、102〜111の各層への水素原子の混入の抑制及び制御が容易にできる。
【0066】
(参考例)参考例の製造方法について図4に基づいて説明する。
【0067】
図4において、(a)は光出射端面を含む斜視図、(b)は図4(a)のIa−Ia'線における導波路の断面図、(c)は図4(a)のIb−Ib'線における層厚方向の断面図である。また、201はn型GaAs基板、202はn型GayInzP(y,zは0以上1以下;以下省略)バッファ層、203はn型AlxGayInzP(x,y,zは0以上1以下;以下省略)第1クラッド層、204はバリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層(MQW活性層)、205はp型AlxGayInzP第2クラッド層、206はp型エッチングストップ層、207は共振器方向にリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層、208はp型GayInzP中間層、209はp型GaAs保護層、210はリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層の側面を埋め込む様に形成されたn型AlxInzP(x,zは0以上1以下;以下省略)電流ブロック(狭窄)層、211はp型GaAsコンタクト層、212はp側電極、213はn側電極である。
【0068】
また、図4において、214はレーザ共振器端面近傍のMQW活性層のバンドギャップエネルギーがレーザ共振器内部のMQW活性層204のバンドギャップエネルギーよりも大きい領域(窓領域)、215はp型GaAs保護層209上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層210からなる電流非注入領域、216はp型AlxGayInzP第3クラッド層207、p型GayInzP中間層208、p型GaAs保護層209からなるストライプ状のリッジであり、図中の斜線部は水素原子が含まれている領域(p型AlxGayInzP第2クラッド層205、p型エッチングストップ層206、p型AlxGayInzP第3クラッド層207、p型GayInzP中間層208、p型GaAs保護層209からなるn型AlxInzP電流ブロック層210下部領域)である。
【0069】
次に製造方法について図5に基づいて説明する。n型GaAs基板201(キャリア濃度2×1018cm-3)上に順次、分子線エピタキシー(MBE)法にてn型GayInzPバッファ層202(キャリア濃度1×1018cm-3)、n型AlxGayInzP第1クラッド層203(キャリア濃度1×1018cm-3)、MQW活性層204、p型AlxGayInzP第2クラッド層205(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型エッチングストップ層206、p型AlxGayInzP第3クラッド層207(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型GayInzP中間層208、p型GaAs保護層209(キャリア濃度1×1019cm-3)をエピタキシャル成長させる(図5(a))。この時、201〜203の各層にはSi原子が、205〜209の各層にはII族原子であるBe原子が含まれている。
【0070】
上記方法によって得られた202〜209の各層を2次イオン質量分析(SIMS)装置で測定した結果、水素原子は検出下限(7×1017atoms/cm)以下であり、202〜209の各層の成膜中において、明らかな水素原子の混入は発生していない。
【0071】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、p型GaAs保護層209上にレーザ共振器端面に垂直方向へ伸びたストライプ状のレジストマスク217を形成し、公知のエッチング技術を用いて、p型エッチングストップ層206に到達するようにp型GaAs保護層209とp型GayInzP中間層208とp型AlxGayInzP第3クラッド層207を約3μm幅のストライプ状のリッジ216に加工する(図5(b))。
【0072】
その後、p型GaAs保護層209上に形成されたストライプ状のレジストマスク217を除去し、2回目のMBE法によって、p型AlxGayInzP第3クラッド層207、p型GayInzP中間層208、p型GaAs保護層209からなるリッジ216の側面をn型AlxInzP電流ブロック層210で埋め込む。
【0073】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、リッジ216の側面に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層210、及び、リッジ216上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層210の幅40μmのストライプ状のレーザ共振器端面近傍領域にレジストマスク218を形成し、公知のエッチング技術を用いて、レジストマスク218開口部のn型AlxInzP電流ブロック層210を選択的に除去する(図5(c))。
【0074】
リッジ216上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層210を除去する工程が、電流非注入領域215の形成工程を兼ねるので、工程数の削減が可能となっており、さらに、前記プロセスによって形成された電流非注入領域215が、窓領域214の直上になっているので、窓領域への電流注入を防ぎ、窓領域でのキャリア損失を抑えられるので、発光に寄与しない無効電流が低減される。その後、プラズマCVD法によって、ウエハ全面に誘電体膜であるSixOy(x,yは1以上)マスク219を形成し、その後、リフトオフ法を用いて、レジストマスク218を除去することにより、レジストマスク218開口部のp型GaAs保護層209表面だけにストライプ状のSixOy(x,yは1以上)マスク219を残す(図5(d))。前記SixOy(x,yは1以上)マスク219は、リッジ216内部のレーザ共振器内部領域に、水素原子がドーピングされないために形成されたものである。
【0075】
次に、レーザ共振器端面近傍領域のp型AlxGayInzP第3クラッド層207に含まれる水素原子濃度が、4×1019atoms/cmとなるように、レーザ共振器端面近傍領域のp型GaAs保護層209表面から、水素原子のドーピングを行う。本参考例では、イオン化された水素原子を照射エネルギー1000eV、照射時間4時間の条件下で照射(水素イオン照射)を行った。
【0076】
次に、p型GaAs保護層209表面に形成されているストライプ状のSixOy(x,yは1以上)マスク219を除去し(図5(e))、アニールを行う。これにより、水素イオン照射が行われたレーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層(窓領域)214のバンドギャップエネルギーをレーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)204のバンドギャップエネルギーよりも大きくさせる。この時のアニール条件は、V族原子であるN原子を含む雰囲気下で、温度600℃、保持時間2時間で行った。
【0077】
記本発明の半導体レーザ素子の製造方法を用いた、アニール後のウエハの一部を、PL法にてレーザ共振器端面近傍領域のリッジ216下部のMQW活性層(窓領域)214と、レーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)204のそれぞれの波長を測定した。
【0078】
その結果、窓領域214が600nm、活性領域204が640nmであり、窓領域214からの発光スペクトルは、活性領域204からの発光スペクトルよりも40nm短波長側に波長シフトしていた。
【0079】
このことから、レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度を増加し、且つ、アニール温度の低温化を行っても、窓領域での十分な波長シフト量を確保できることが明らかである。また、リッジ形成後に水素原子をドーピングし、アニールを行っても、窓領域での十分な波長シフト量を確保できることが明らかである。
【0080】
次に、3回目のMBE法でp型GaAsコンタクト層211を形成する(図5(f))。さらに、上面にはp電極212、下面にはn電極213を形成する。その後、40μm幅のレーザ共振器端面近傍領域のほぼ中央にスクライブラインを入れて、共振器の長さにバー状に分割し、最後にバーの両側の光出射に反射膜をコーティングし、さらにチップに分割して、長さ800μmの共振器のレーザ共振器端面部に約20μmの窓領域及び電流非注入領域を有した素子が作製される。
【0081】
上記の本参考例の製造方法によって得られた半導体レーザ素子の特性測定を行った。
【0082】
また、比較のために、実施例1で製造された製造方法によって得られた半導体レーザ素子の特性測定も同時に行った。
【0083】
その結果、CW50mWでの発振波長(λ)は本参考例及び実施例1で製造された半導体レーザ素子ともに655nm、本参考例の半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電流(Iop)は70mA、実施例1で製造された半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電流(Iop)は80mA、本参考例の半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電圧(Vop)は2.3V、実施例1で製造された半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電圧(Vop)は2.4Vであり、本参考例の半導体レーザ素子の製造方法では、更なる駆動電流の低電流化と駆動電圧の低電圧化が実現されていることが明らかである。この駆動電流の低電流化は、更なるアニール温度の低温化によって、共振器内部のMQW活性層へのII族原子であるBe原子の拡散が低減された効果であり、この駆動電圧の低電圧化は、更なるアニール温度の低温化によって、リッジ216内部のレーザ共振器内部領域でのII族原子であるBe原子の拡散が低減された効果である。
【0084】
また、本参考例では、リッジ形成後に水素原子をドーピングしアニールを行っているので、リッジ形成時に発生する窓領域でのp型エッチングストップ層206のエッチングストップ効果の低下を懸念する必要が無く、またそれに伴うプロセス不良が無くなり、歩留り良く上記半導体レーザ素子を得られた。
【0085】
本参考例では、レーザ共振器内部領域に水素原子がドーピングされないためのマスクとして、SixOy(x,yは1以上)マスク219を用いたが、AlxOy,SixNy,SixOyNz(x,y,zは1以上)等の誘電体膜であっても、上記と同様の効果が得られる。
【0086】
本参考例では、レーザ共振器内部領域のリッジ216上のp型GaAs保護層209表面だけに、SixOy(x,yは1以上)マスク219を形成したが、前記SixOy(x,yは1以上)マスク219を更にn型AlxInzP電流ブロック層210表面に形成しても、上記と同様の効果が得られる。
【0087】
本参考例では、レーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に含まれる水素原子濃度を4×1018atoms/cmとしたが、前記レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、1×1018atoms/cm以上であれば、上記と同様の効果が得られる。
【0088】
本参考例では、照射エネルギー1000eVでのイオン化された水素原子の照射を行っているが、1200eV以下の照射エネルギーであれば、レーザ共振器内部領域のMQW活性層へのダメージが全く無いので、上記と同様の効果が得られる。
【0089】
本参考例では、II族原子としてBe原子を用いているが、Zn原子であっても、上記と同様の効果が得られる。但し、II族原子としてBe原子を用いた場合の方が、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層へのII族原子の拡散量が多くなるので、より効果的に窓領域の波長シフト量を増大できる。
【0090】
本参考例では、半導体レーザ素子の202〜211の各層を成膜する方法として、MBE法を用いているが、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いても、上記と同様の効果が得られる。但し、MBE法を用いた方が水素(H2),アルシン(AsH3),ホスフィン(PH3)等の水素化物を使用しないので、成膜中において、202〜211の各層への水素原子の混入の抑制及び制御が容易にできる。
【0091】
(実施例2)実施例2の製造方法について図6に基づいて説明する。図6において、(a)は光出射端面を含む斜視図、(b)は図6(a)のIa−Ia'線における導波路の断面図、(c)は図6(a)のIb−Ib'線における層厚方向の断面図である。また、301はn型GaAs基板、302はn型GayInzP(y,zは0以上1以下;以下省略)バッファ層、303はn型AlxGayInzP(x,y,zは0以上1以下;以下省略)第1クラッド層、304はバリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層(MQW活性層)、305はp型AlxGayInzP第2クラッド層、306はp型エッチングストップ層、307は共振器方向にリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層、308はp型GayInzP中間層、309はp型GaAs保護層、310はリッジストライプからなるp型AlxGayInzP第3クラッド層の側面を埋め込む様に形成されたn型AlxInzP(x,zは0以上1以下;以下省略)電流ブロック(狭窄)層、311はp型GaAsコンタクト層、312はp側電極、313はn側電極である。
【0092】
また、図6において、314はレーザ共振器端面近傍のMQW活性層のバンドギャップエネルギーがレーザ共振器内部のMQW活性層304のバンドギャップエネルギーよりも大きい領域(窓領域)、315はp型GaAs保護層309上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310からなる電流非注入領域、316はp型AlxGayInzP第3クラッド層307、p型GayInzP中間層308、p型GaAs保護層309からなるストライプ状のリッジであり、図中の斜線部は水素原子が含まれている領域(p型AlxGayInzP第2クラッド層305、p型エッチングストップ層306、p型AlxGayInzP第3クラッド層307、p型GayInzP中間層308、p型GaAs保護層309からなるリッジ316内部及び下部のレーザ共振器端面近傍領域)である。
【0093】
次に製造方法について図7に基づいて説明する。n型GaAs基板301(キャリア濃度2×1018cm-3)上に順次、分子線エピタキシー(MBE)法にてn型GayInzPバッファ層302(キャリア濃度1×1018cm-3)、n型AlxGayInzP第1クラッド層303(キャリア濃度1×1018cm-3)、MQW活性層304、p型AlxGayInzP第2クラッド層305(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型エッチングストップ層306、p型AlxGayInzP第3クラッド層307(キャリア濃度1×1018cm-3)、p型GayInzP中間層308、p型GaAs保護層309(キャリア濃度1×1019cm-3)をエピタキシャル成長させる(図7(a))。この時、301〜303の各層にはSi原子が、305〜309の各層にはII族原子であるBe原子が含まれている。
【0094】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、p型GaAs保護層309上にレーザ共振器端面に垂直方向へ伸びたストライプ状のレジストマスク317を形成し、公知のエッチング技術を用いて、p型エッチングストップ層306に到達するようにp型GaAs保護層309とp型GayInzP中間層308とp型AlxGayInzP第3クラッド層307を約3μm幅のストライプ状のリッジ316に加工する(図7(b))。
【0095】
その後、p型GaAs保護層309上に形成されたストライプ状のレジストマスク317を除去し、2回目のMBE法によって、p型AlxGayInzP第3クラッド層307、p型GayInzP中間層308、p型GaAs保護層309からなるリッジ316の側面をn型AlxInzP電流ブロック層310で埋め込む。
【0096】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、リッジ316の側面に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310、及び、リッジ316上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310の幅40μmのストライプ状のレーザ共振器端面近傍領域にレジストマスク318を形成し、公知のエッチング技術を用いて、レジストマスク318開口部のn型AlxInzP電流ブロック層310を選択的に除去する(図7(c))。
【0097】
リッジ316上に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310を除去する工程が、電流非注入領域315の形成工程を兼ねるので、工程数の削減が可能となっており、さらに、前記プロセスによって形成された電流非注入領域315が、窓領域314の直上になっているので、窓領域への電流注入を防ぎ、窓領域でのキャリア損失を抑えられるので、発光に寄与しない無効電流が低減される。その後、レジストマスク318を除去し、電子ビーム(EB)蒸着法とフォトリソグラフィー技術を用いて、レーザ共振器内部領域のp型GaAs保護層309、及びリッジ316の側面に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310の表面にAlxOy(x,yは1以上)マスク319を形成する(図7(d))。前記AlxOy(x,yは1以上)マスク319は、リッジ316内部のレーザ共振器内部領域に、水素原子がドーピングされないために形成されたものである。
【0098】
次に、前記AlxOy(x,yは1以上)マスク319で覆われているウエハを、分子線エピタキシ−(MBE)装置内で、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングと前記ウエハのアニールを同時に行う。これにより、レーザ共振器端面近傍領域のリッジ下部のMQW活性層(窓領域)314のバンドギャップエネルギーをレーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)304のバンドギャップエネルギーよりも大きくさせる。本実施例では、真空中でウエハ温度を600℃にし、水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeを同時に照射し、前記照射を2時間実施した。また、前記水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeは、水素原子を多量に含むAs固体ソース、及び水素原子を多量に含むBe固体ソースをMBE装置内において、加熱させて得られたものである。さらに、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピング量の制御は、MBE装置内に設置された四重極質量分析(QMS)装置で水素分圧をモニターしながら、照射時間で制御が行われている。
【0099】
上記製造方法によって得られる半導体レーザ素子のリッジ下部のレーザ共振器内部領域及びレーザ共振器端面近傍領域の水素原子の深さ方向分布を図8に、Be原子の深さ方向分布を図9に示す。
【0100】
図8,図9に示された水素原子,Be原子の深さ方向分布は、2次イオン質量分析装置(SIMS)で測定した結果であり、図8,図9の縦軸は不純物原子濃度(atoms/cm)、横軸はp型GaAs保護層からの深さ(μm)である。また、図8,図9において、破線がレーザ共振器内部領域、実線が共振器端面近傍領域の水素原子,Be原子の深さ方向分布を示している。さらに、図8の水素原子の深さ方向分布において、n型AlxGayInzP第1クラッド層303、p型AlxGayInzP第2クラッド層305、p型AlxGayInzP第3クラッド層307での水素原子の検出下限濃度は7×1017atoms/cmであり、p型GaAs保護層309での水素原子の検出下限濃度は7×1016atoms/cmである。
【0101】
図8から判るように、レーザ共振器端面近傍領域のp型AlxGayInzP第2クラッド層305、及びp型AlxGayInzP第3クラッド層307に、4×1018atoms/cmの水素原子濃度で均一にドーピング出来ており、また、レーザ共振器内部領域では、水素原子は前記の検出下限以下であった。このことから、MBE装置内で、水素原子と結合したV族原子であるAs、及び水素原子と結合したII族原子あるBeをレーザ共振器端面近傍領域へ照射する、上記製造方法を用いることにより、レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度をレーザ共振器内部領域より高濃度にすることができ、且つ、レーザ共振器内部領域への明らかな水素原子の混入を抑制できていることが明らかである。
【0102】
また、図9から判るように、レーザ共振器内部領域では、MBE装置内でアニールを行っても、MQW活性層304へのII族原子であるBe原子の拡散は見られないが、レーザ共振器端面近傍領域では、n型AlxGayInzP第1クラッド層303側まで、II族原子であるBe原子の拡散が見られる。
【0103】
このことから、MBE装置内で、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングと前記ウエハのアニールを同時に行っても、レーザ共振器内部領域の活性層にはII族原子であるBe原子を拡散させずに、レーザ共振器端面近傍領域でのみII族原子であるBe原子を拡散させられることが明らかである。
【0104】
さらに、上記の本発明の半導体レーザ素子の製造方法を用いた、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピング及びアニール後のウエハの一部を、PL法にてレーザ共振器端面近傍領域のリッジ316下部のMQW活性層(窓領域)314と、レーザ共振器内部領域のMQW活性層(活性領域)304のそれぞれの波長を測定した。
【0105】
その結果、窓領域314が600nm、活性領域304が640nmであり、窓領域314からの発光スペクトルは、活性領域304からの発光スペクトルよりも40nm短波長側に波長シフトしていた。
【0106】
このことから、MBE装置内で、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングと前記ウエハのアニールを同時に行っても、窓領域での十分な波長シフト量を確保できることが明らかである。また、リッジ形成後に水素原子をドーピングし、アニールを行っても、窓領域での十分な波長シフト量を確保できることが明らかである。
【0107】
次に、上記のMBE装置内でのレーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングと前記ウエハのアニールを同時に行った後、レーザ共振器内部領域のp型GaAs保護層309、及びリッジ316の側面に形成されたn型AlxInzP電流ブロック層310の表面に形成されているストライプ状のAlxOy(x,yは1以上)マスク319を除去する。(図7(e))
その後、3回目のMBE法でp型GaAsコンタクト層311を形成する(図7(f))。さらに、上面にはp電極312、下面にはn電極313を形成する。その後、40μm幅のレーザ共振器端面近傍領域のほぼ中央にスクライブラインを入れて、共振器の長さにバー状に分割し、最後にバーの両側の光出射に反射膜をコーティングし、さらにチップに分割して、長さ800μmの共振器のレーザ共振器端面部に約20μmの窓領域及び電流非注入領域を有した素子が作製される。
【0108】
上記の本実施例の製造方法によって得られた半導体レーザ素子の特性測定を行った。
【0109】
また、比較のために、参考例に記載の製造方法によって得られた半導体レーザ素子の特性測定も同時に行った。
【0110】
その結果、CW50mWでの発振波長(λ)は本実施例で製造の半導体レーザ素子及び参考例の半導体レーザ素子ともに655nm、本実施例で製造された半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電圧(Vop)は2.1V、参考例の半導体レーザ素子のCW50mWでの駆動電圧(Vop)は2.3Vである
【0111】
本実施例では、レーザ共振器内部領域に水素原子がドーピングされないためのマスクとしてAlxOy(x,yは1以上)マスク319を用いたが、SixOy,SixNy,SixOyNz(x,y,zは1以上)等の誘電体膜であっても、上記と同様の効果が得られる。
【0112】
本実施例では、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングとウエハのアニールを、MBE装置内で実施しているが、アルシン(AsH3)等のガスを原料として用いる、ガスソース分子線エピタキシー(GS−MBE)装置内で実施しても、原料として水素原子と結合したV族原子を用いるので、上記と同様の効果が得られる。
【0113】
【0114】
本実施例では、レーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に含まれる水素原子濃度が4×1018atoms/cmとなっているが、前記レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、1×1018atoms/cm以上であれば、上記と同様の効果が得られる。
【0115】
本実施例では、II族原子としてBe原子を用いているが、Zn原子であっても、上記と同様の効果が得られる。但し、II族原子としてBe原子を用いた場合の方が、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層へのII族原子の拡散量が多くなるので、より効果的に窓領域の波長シフト量を増大できる。
【0116】
本実施例では、リッジストライプ形成後に、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングとウエハのアニールを同時に行っているが、実施例1および参考例に記載のアニール方法の代りに、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子のドーピングとウエハのアニールを同時に行う、本実施例のアニール方法を用いても、上記と同様の効果が得られる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明で製造された半導体レーザ素子では、第一導電型の基板上に、第一導電型クラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層にリッジ状のストライプを有し、該リッジストライプの開口を有する第一導電型の電流ブロック層を有する半導体レーザ素子において、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子が含まれているので、レーザ共振器端面近傍領域の第二導電性を示す不純物を加速的に拡散させることが可能となるため、アニール温度の低温化が可能となり、レーザ共振器内部領域の第一の第二導電型クラッド層及び第二の第二導電型クラッド層に存在する、第二導電性を示す不純物原子の活性層への拡散を抑制でき、高出力時の駆動電流,駆動電圧を低減できる。
【0118】
且つ、レーザ共振器端面近傍領域の前記活性層のバンドギャップがレーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップより大きいので、レーザ共振器端面近傍領域の活性層ではレーザ光の吸収が無い窓領域が形成されることにより、レーザ共振器端面近傍領域の活性層でのCODを抑制できるので、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた、CODフリーである半導体レーザ素子を得られる。
【0119】
また、本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、前記半導体レーザ素子において、レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、レーザ共振器内部領域より高濃度であるので、レーザ共振器内部領域の活性層への第二導電性を示す不純物原子の拡散を抑制でき、高出力時の駆動電流が低減された半導体レーザ素子を得られる。
【0120】
また、本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、前記半導体レーザ素子において、少なくともレーザ共振器端面近傍領域の第二の第二導電型クラッド層に水素原子が含まれているので、より効果的にレーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層への第二導電性を示す不純物の拡散を促進できるため、窓領域の波長シフト量をより増大でき、レーザ共振器端面近傍領域の活性層でのCODを抑制できるので、高出力駆動における長期信頼性に優れた、CODフリーである半導体レーザ素子を得られる。
【0121】
また、本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、前記レーザ共振器端面近傍領域に含まれる水素原子濃度は、1×1018atoms/cm以上であるので、レーザ共振器端面近傍領域の第二導電性を示す不純物を加速的に拡散させることが可能となり、アニール温度の低温化が可能となり、レーザ共振器内部領域の第一の第二導電型クラッド層及び第二の第二導電型クラッド層に存在するBe等の不純物原子の活性層への拡散を抑制できるので、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減された半導体レーザ素子を得られる。
【0122】
また、本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、前記半導体レーザ素子において、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層には、Be原子が含まれているので、レーザ共振器端面近傍領域のMQW活性層への第二導電性を示す不純物の拡散量が多くなり、より効果的に窓領域の波長シフト量を増大でき、レーザ共振器端面近傍領域の活性層でのCODを抑制できるので、高出力駆動における長期信頼性に優れた、CODフリーである半導体レーザ素子を得られる。
【0123】
また、本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子では、前記第一導電型基板がGaAsであり、前記第一導電型クラッド層、活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層がAlxGayInzP(x,y,zは0以上1以下)で構成されているので、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子がドーピングされることにより、アニール温度の低温化が可能となり、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた、CODフリーである半導体レーザ素子を得られる。
【0124】
さらに、本発明では、第一導電型クラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層を含む各層を、第一導電型基板上にエピタキシャル成長させる工程と、レーザ共振器内部領域の前記エピタキシャル成長されたウエハ表面上にマスクを形成する工程と、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールし、レーザ共振器端面近傍領域の第一の第二導電型クラッド層,第二の第二導電型クラッド層に含まれる第二導電性を示す不純物を活性層へ拡散させ、上記活性層のレーザ共振器端面近傍領域のバンドギャップをレーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップより大きくする工程とを備えているので、レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングすることにより、レーザ共振器端面近傍領域の第一の第二導電型クラッド層,第二の第二導電型クラッド層に存在する第二導電性を示す不純物を拡散しやすい状態にし、該ウエハをアニールすることにより、レーザ共振器端面近傍領域の第二導電性を示す不純物を加速的に拡散させることが可能となるため、アニール温度の低温化を行っても、レーザ共振器端面近傍領域の前記活性層のバンドギャップをレーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップより十分大きく出来る。その結果、レーザ共振器内部領域の第一の第二導電型クラッド層,第二の第二導電型クラッド層に存在する第二導電性を示す不純物の活性層への拡散を抑制することが可能となるため、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた、CODフリーである半導体レーザ素子を得られる効果がある。
【0125】
また、本発明では、前記半導体レーザ素子の製造方法において、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程の前に、前記第二の第二導電型クラッド層にリッジ状のストライプを形成する工程と、前記リッジ状のストライプを埋め込む、第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程とを更に備えているので、リッジ形成時に発生する窓領域でのp型エッチングストップ層のエッチングストップ効果の低下を懸念する必要が無く、またそれに伴うプロセス不良が無くなるので、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子を歩留まり良く得られる効果がある。
【0126】
また、本発明では、前記レーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程は、1200eV以下の照射エネルギーで水素イオンをレーザ共振器端面近傍領域に照射するので、レーザ共振器内部領域のMQW活性層へのダメージが全く無くなり、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子を得られる効果がある。
【0127】
また、本発明では、前記半導体レーザ素子の製造方法において、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールし、レーザ共振器端面近傍領域の第一の第二導電型クラッド層,第二の第二導電型クラッド層に含まれる第二導電性を示す不純物を活性層へ拡散させ、上記活性層のレーザ共振器端面近傍領域のバンドギャップをレーザ共振器内部領域の活性層のバンドギャップより大きくする工程を同時に行うので、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子の製造工程を簡略化できる効果がある。
【0128】
また、本発明では、前記半導体レーザ素子の製造方法は、該ウエハを真空中で加熱しながら、水素原子と結合したII族原子、又は、水素原子と結合したV族原子をレーザ共振器端面近傍領域に照射するので、素子へのダメージを無くし、リッジ近傍部でのキャリア濃度の低下を抑制でき、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子を得られる効果がある。
【0129】
また、本発明では、前記半導体レーザ素子の製造方法は、分子線エピタキシ−(MBE)装置又はガスソース分子線エピタキシ−(GS−MBE)装置で行うので、レーザ共振器端面近傍領域への水素原子と結合したV族原子の照射が制御良く出来るため、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子を歩留まり良く得られる効果がある。
【0130】
この際、前記第一導電型クラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層を含む各層を、第一導電型基板上にエピタキシャル成長させる工程、及び、前記第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程を、分子線エピタキシ−(MBE)法を用いて行うことにより、レーザ共振器内部領域への水素原子の混入を無くすことが出来るので、それに伴うレーザ共振器内部領域での第二導電性を示す不純物の拡散が抑制できるので、高出力時の駆動電流・駆動電圧が低減され、高出力駆動における長期信頼性に優れた半導体レーザ素子を歩留まり良く得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造された半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。
【図2】実施例1の半導体レーザ素子の製造方法の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態で製造された半導体レーザ素子の活性領域の波長に対する窓領域の波長シフト量とアニール温度の関係である。
【図4】参考例の半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。
【図5】参考例の半導体レーザ素子の製造方法の説明図である。
【図6】実施例2で製造された半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。
【図7】 実施例で製造された半導体レーザ素子の製造方法の説明図である。
【図8】実施例2のリッジ下部のレーザ共振器内部領域及びレーザ共振器端面近傍領域の水素原子の深さ方向分布を示す図である。
【図9】実施例2のリッジ下部のレーザ共振器内部領域及びレーザ共振器端面近傍領域のBe原子の深さ方向分布を示す図である。
【図10】従来技術の半導体レーザ素子の構造を示す断面図である。
【図11】従来技術の半導体レーザ素子の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
101,201,301,1001…n型GaAs基板
102,202,302…n型GayInzPバッファ層
103,203,303…n型AlxGayInzP第1クラッド層
104,204,304,1020…MQW活性層
105,205,305…p型AlxGayInzP第2クラッド層
106,206,306…p型エッチングストップ層
107,207,307…p型AlxGayInzP第3クラッド層
108,208,308…p型GayInzP中間層
109,209,309…p型GaAs保護層
110,210,310…n型AlxInzP電流ブロック層
111,211,311,1013…p型GaAsコンタクト層
112,212,312,1014…p側電極
113,213,313,1015…n側電極
114,214,314…窓領域
115,215,315…電流非注入領域
116,216,316…ストライプ状のリッジ
117,118,119,217,218,317,318…レジストマスク
219…SixOyマスク
319…AlxOyマスク
1002…n型GaAsバッファ層
1003…n型AlGaInPクラッド層
1004…活性領域
1005…p型AlGaInPクラッド層
1006…p型GaInP通電容易層
1007…n型GaAsキャップ層
1008,1011…SiO2マスク
1009…Zn高濃度p型GaAs層
1010…Zn拡散領域
1012…n型GaAs電流ブロック層
1016…AlGaInP第一光ガイド層
1017…GaInPウェル層
1018…AlGaInPバリア層
1019…AlGaInP第二光ガイド層

Claims (3)

  1. 第一導電型のクラッド層、バリア層及びウェル層が交互に積層された多重量子井戸構造を光ガイド層で挟んでなる活性層、第一の第二導電型クラッド層、第二の第二導電型クラッド層を含む各層を、第一導電型の半導体ウエハ上にエピタキシャル成長させる工程と、レーザ共振器内部領域の前記エピタキシャル成長されたウエハ表面上にマスクを形成する工程と、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールする工程と、前記第二の第二導電型クラッド層にリッジ状のストライプを形成する工程と、前記リッジ状のストライプを埋め込む、第一導電型の電流ブロック層をエピタキシャル成長させる工程と、水素原子がドーピングされた領域を、該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域における前記電流ブロック層以外の領域にする工程とを備え、
    該ウエハのレーザ共振器端面近傍領域に水素原子をドーピングする工程と、該ウエハをアニールする工程とを同時に行い、
    上記水素原子をドーピングする工程および上記ウエハをアニールする工程は、真空中でウエハ温度を600℃にし、水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeを同時に照射することによって行い、
    前記水素原子と結合したV族原子であるAsと水素原子と結合したII族原子であるBeは、水素原子を多量に含むAs固体ソース、及び水素原子を多量に含むBe固体ソースをMBE装置内において、加熱させて得られることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造方法において、
    該ウエハを真空中で加熱しながら、水素原子と結合したII族原子、又は、水素原子と結合したV族原子をレーザ共振器端面近傍領域に照射することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  3. 分子線エピタキシ−(MBE)装置又はガスソース分子線エピタキシ−(GS−MBE)装置を用いることを特徴とする請求項1,又は2に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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