JP4080199B2 - 核燃料ペレットの製造方法、その核燃料ペレットを使用した燃料要素、及び燃料集合体 - Google Patents
核燃料ペレットの製造方法、その核燃料ペレットを使用した燃料要素、及び燃料集合体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Gd2O3等の核的毒物を含有する核燃料ペレット、その製造方法、その核燃料ペレットを装填した燃料要素及びその燃料要素を組み込んだ燃料集合体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在の軽水炉用燃料では中性子吸収材としてガドリニウム(Gd)が利用されており、軽水炉用核燃料の高燃焼度化に伴ってGdの添加濃度が増加する傾向にある。通常、燃料としてのUO2にGdを添加して焼結したUO2燃料ペレットはUO2粉末とGd2O3粉末とを機械的に混合し、これを粉末成形した後に還元性雰囲気下で焼結して得られる。
【0003】
UO2とGd2O3とを混合した粉末はUO2に比べて焼結性が低く、同一製造条件下では、得られるペレットの密度や結晶粒径が共にUO2よりも小さくなることが知られている。また、Gdの添加濃度が高い場合には、焼結中にペレット内に微細な割れ(マイクロクラック)が発生し易いことも知られている。
【0004】
結晶粒径が小さいと、核分裂に伴って生成する核分裂生成ガス(FPガス)の拡散距離が短くなるため、燃焼中にペレットから放出されるFPガスの量及びペレットの体積変化量(スエリング量)が大きくなる欠点がある。また、ペレット内にマイクロクラックが存在すると、ペレットの実効的な熱伝導率を低下させ、ひいては燃焼中のFPガス放出量及びスエリング量を増加させる要因となる。
【0005】
Gd2O3を添加したUO2ペレットの結晶粒径を増大させ、かつマイクロクラックの発生を防止するためには、UO2とGd2O3との固溶状態を良くする必要があると考えられており、従来、均一な組織を有するペレット、すなわちUO2とGd2O3との固溶状態がよいペレットを製造する方法が検討されてきた。そのうちの一つとして、溶液状態でUとGdを混合した後両者を同時に沈殿させて混合粉末を製造する共沈法でUとGdと混合状態が均一な粉末を作成し、この粉末を使用してペレットを製造する方法がある。この方法で製造したペレットは、UO2とGd2O3との固溶状態が極めて良好であり、得られたペレットの組織も均一である。
【0006】
しかしながら、この方法は工程が非常に複雑であるため、ペレットの製造費用が高くなる上に、沈殿工程時に核燃料物質で汚染された多量の放射性廃液が発生するという欠点がある。そこで、機械的に混合されたUO2ーGd2O3混合粉末を利用して固溶状態の良いペレットを得る製造方法が提案されている(例えば、特開平5−11088号公報、特開平1−193691号公報、特開平2−242195号公報)。
【0007】
一方、UO2にGd2O3が固溶すると、UO2中の不純物濃度が増加することによってペレットの熱伝導率が低下することも知られている。このペレットの熱伝導率の低下は、燃料中心温度の増大、その結果としてFPガス放出量及びスエリング量の増加をもたらし、ペレット−被覆管の相互作用の増大を招く。このため、燃料集合体を構成する燃料要素のうち、Gd2O3添加ペレットを装填した燃料要素が経験する最大出力は、通常、UO2 燃料よりも低めに設計されている。
【0008】
そこで、特許第1469601号、特開昭60−231195号公報、及び特開平11−287883号公報記載のように、核分裂性物質中へのGdの固溶を故意に抑えることにより、ペレットの熱伝導率低下を低減する方法が提案されている。すなわち、特許第1469601号には、ホウ化タングステンで被覆した1〜20μmのGd2O3粒子を添加することにより、焼結中におけるUO2粒子とGd2O3粒子との接触を避けてGdを固溶させない方法が示されている。また、特開昭60−231195号公報には、1mm以上のGd2O3粒子を添加することにより、焼結中におけるUO2粒子とGd2O3粒子の接触面積を少なくしてGdの固溶を抑える方法が示されている。さらに、特開平11−287883号公報では、Gd2O3単体を添加するのではなく、UO2と類似の結晶構造を有するUO2とGd2O3の固溶体を添加する方法が示されている。
【0009】
しかしながら、特開昭60−231195号公報記載の方法では、焼結中にUO2とGd2O3との反応を完全に避けることができず、焼結中にUO2とGd2O3との反応界面で、体積変化を伴う相変化が起こり続けるために、界面近傍に気孔やクラックが発生する。これらの気孔やクラックは、密度の減少及び熱伝導率の低下並びにFPガスの放出経路の増加を招くことになり、期待する効果が得られない等の問題がある。
【0010】
同様の概念を応用し、Gd2O3の小球を熱処理してUO2粉末に混合し焼結することによって、Gd2O3小球分散型ペレットを得ることも報告されている。しかし、このGd2O3小球分散型ペレットには、マイクロクラックは観測されなかったが、Gd2O3小球の周囲に気泡が集まり、一部連結している。したがって、これらの気泡が存在することにより、ペレット熱伝導率の向上は小さいものと推察される。
【0011】
また、特許第1469601号の方法では、Gd2O3微粒子の周囲にホウ化タングステンを均一にコーティングする必要がある等、製造工程が複雑で費用が高くなり、工業的でない上、ホウ化タングステンとUO2との熱膨張率が異なること等により、界面近傍にクラックが発生することが予想され、熱伝導率向上の観点から期待される効果が得られない等の問題がある。
【0012】
さらに、特開平11−287883号公報には、UO2に類似したUO2ーGd2O3固溶体を分散相とし、UO2ペレット内に分散させることにより、高濃度のGd2O3を含む領域周辺の割れの発生を抑え、ペレットの熱伝導率を向上させる方法が開示されている。しかし、この方法では、Gd2O3粒子以外の領域、すなわちUO2の領域については制御することができないため、これらの方法で作成したペレットのUO2領域の結晶粒径は10μm前後であり、ペレット燃焼中のFPガス放出を抑えるために最低限必要な30μmに達しない等の問題がある。
【0013】
さらに、Gd2O3粒子以外の領域、すなわちUO2の領域について制御しようとした例が特願2000−375959号に開示されている。この例では、焼結助剤となる物質を予めUO2粉末内に添加しておき、その後Gd2O3粒子を混合して焼結し、UO2領域の結晶粒径を増大させている。しかしながら、Gd2O3は焼結助剤であるアルミナシリケート(アルミニウムと珪素の混合酸化物)と容易に反応するため、Gd2O3を添加しない場合に比べて焼結助剤の結晶粒径増大効果は小さい。言い換えると、燃焼中にペレットから放出されるPFガス量を抑えるのに必要な結晶粒径を得ようとすると、Gd2O3を添加しない場合に比べてGd2O3を添加した場合の方が、焼結助剤の添加量を多くしなければならない。焼結助剤の添加量を多くすることは、ペレット中の核燃料物質量を減らすことを意味し、燃料の炉内性能及びコストの面で不利となる。
【0014】
本発明はこのような点に鑑み、ペレット内に、Gd等の核的毒物濃度がペレット平均濃度よりも高い領域とその周囲の核的毒物を含む物質以外の物質からなる領域を設け、核的毒物と核分裂性物質との固溶を抑制することにより、核的毒物濃度の高い領域とUO2等の核分裂性物質からなる領域との界面における気泡やクラックの発生を抑えるようにした核的毒物添加のペレット、及びその製造方法、並びに、その製造方法で得られた燃料ペレットを被覆管内に装填し封入した燃料要素、及びその燃料要素を多数結束した燃料集合体を得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域が、核分裂性物質を含む物質からなる領域中に分散して設けられている核燃料ペレットの製造方法において、
前記核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質を粒子状に形成する工程と、
前記核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子の周囲に有機系バインダーを塗布する工程と、
前記有機系バインダーを塗布した核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子の周囲に、金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させる工程と、
前記有機系バインダーを塗布しその周囲に前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させた核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子を、核分裂性物質を含む物質中に混合する工程と、
前記有機系バインダーを塗布しその周囲に前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させた核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子と前記核分裂性物質を含む物質を混合したものをペレット状に成型して焼成する工程と、
を含むことを特徴とする。
前記有機系バインダーは、0℃以上1000℃以下の温度で分解または蒸発する有機系バインダーとすることができる。
前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質は、金属モリブデン、金属タングステン、モリブデンを含む物質、タングステンを含む物質、或いは少なくともこれらの物質の1つを含む物質であるようにすることができる。
前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質の層の平均厚さが、1μm以上、1mm以下であるようにすることができる。
前記核分裂性物質を含む領域の結晶粒径を増大させる焼結助剤を添加するようにすることができる。
前記焼結助剤は、珪素、アルミニウム、珪素の酸化物、アルミニウムの酸化物、珪素及びアルミニウムの混合酸化物から選択された少なくとも1種からなる物質を含むようにすることができる。
【0016】
また、第2の発明は、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域が、核分裂性物質を含む物質からなる領域中に分散して設けられている核燃料ペレットの製造方法において、上記核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域を形成させる際に、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子の周囲に核的毒物を含む物質以外の物質を付着させることを特徴とする。
【0017】
第3の発明は、燃料要素において、請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料ペレットを被覆管内に封入したことを特徴とする。
【0018】
第4の発明は、燃料集合体において、請求項1乃至8のいずれかに記載の燃料ペレットを用いた多数本の燃料要素を上下タイプレートに固定して組み込んだことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1(a)は本発明に係る燃料集合体10の斜視図であって、複数本の燃料要素11が正方格子状に配列され、軸方向に間隔をもって配設された複数個のスペーサ12により相互間の間隙が適切に保持されている。上記燃料要素11の上端部及び下端部はそれぞれ上部タイプレート13及び下部タイプレート14で保持されている。上記燃料集合体10は炉心内に装荷された場合、その外側が図示しないチャンネルボックスで包囲されている。
【0021】
上記燃料要素11は、図1(b)に示すように、例えばジルコニウム基合金からなる長尺円筒状の燃料被覆管15内に複数個の燃料ペレット16が積層して装填されており、燃料被覆管15の上下両端部は上部端栓17と下部端栓18で密封されている。上部端栓17と燃料ペレット16の上端との間にはプレナムスプリング19が設けられており、プレナムスプリング19により燃料ペレット16の上下動が防止されている。
【0022】
図2は、本発明に係る燃料ペレット16の金相を模式的に示したものであり、燃料ペレット16内に分散されたGd2O3粒子20の周囲には金属モリブデン微粉末からなる被覆層21が設けられている。
【0023】
すなわち、Gd2O3粉末粒子に有機系のバインダーを塗布した後、Gd2O3粉末粒子表面を市販の金属モリブデン微粉末で被覆した金属モリブデン被覆Gd2O3粉末粒子をUO2粉末に添加して混合し、その混合粉末をプレスして圧粉成形体を得、この圧粉成形体を焼結して燃料ペレットが形成されている。
【0024】
しかして、このようにして製造された燃料ペレット16は、核的毒物であるGd2O3粒子20の周囲に核的毒物を含む物質以外の物質である金属モリブデン微粉末からなる被覆層21が設けられているので、Gd2O3粒子20と核分裂性物質であるUO2粉末との反応が抑制され、両者の界面における気泡やクラックの発生が抑制されるとともに、核的毒物であるGd2O3が核分裂性物質であるUO2に固溶する量が低減される。したがって、従来の核的毒物添加ペレットに比べて核的毒物の固溶によるペレットの熱伝導率の低下が抑制される。これにより、従来の核的毒物添加ペレットに比べ燃焼中のペレットからのFPガス放出量を少なくし、且つペレット中の核分裂性物質量を確保することができる。
【0025】
ところで、核的毒物としてはGd2O3単体である必要はなく、ペレット内で核的毒物濃度が局所的に高い組成からなる領域を分散させればよいので、ペレット平均濃度より高いGd2O3濃度を有するUO2とGd2O3の固溶体、すなわち核的毒物と核分裂性物質を含む物質を使用しても良い。また、核分裂性物質を含む粉末としてUO2を使用したものを示したが、UO2以外の核分裂性物質の粉末、例えば二酸化プルトニウム(PuO2)や二酸化トリウム(ThO2)、それらの混合粉末を用いてもよい。さらに、核的毒物を含む物質以外の物質としては、金属、金属間化合物またはセラミックスでよく、金属モリブデン以外に、金属タングステン、モリブデンを含む物質、タングステンを含む物質、或いは少なくともこれらの物質の1つを含む物質でもよい。さらに、ペレットの焼結中に金属モリブデンとなるような物質、例えば二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、珪化モリブデン等を使用してもよい。
【0026】
また、焼結時には、核分裂性物質からなる領域の結晶粒径を増大させるために焼結助剤を添加することが行われているが、核的毒物として代表的なGd2O3は、上記結晶粒径を増大させるために使用される代表的な焼結助剤のアルミナシリケート(アルミニウム珪素混合酸化物)と反応しやすい。すなわち、UO2の領域の結晶粒径を増大させるためにアルミナシリケートを添加しても、Gd2O3粒子が存在するとGd2O3粒子の方にアルミナシリケートが吸収されてしまい、UO2の領域におけるアルミナシリケートの結晶粒径増大効果が小さくなる。本発明によれば、核的毒物であるGd2O3の粒子表面を例えば金属モリブデンで被覆することにより、アルミナシリケートとGd2O3との反応を抑えることが可能になる。これは、核分裂性物質を含む領域の結晶粒径を増大させるために必要なアルミナシリケートの添加量を従来の方法よりも低減させる効果がある。したがって、添加する焼結助剤のペレット内における濃度が重量割合で250乃至2500ppmとすることができ、そのように焼結助剤の添加量を低減することにより、ペレット内に必要な核分裂性物質を確保することができる。
【0027】
ペレット内に存在する核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域を、これらの物質からなる粒子(母粒子)を核分裂性物質を含む物質に混合して作成する場合、その周囲に配置する核的毒物を含む物質以外の物質(子粒子)の平均粒子径は、母粒子の1/10以下にする必要があることが知られている。子粒子を上述のように金属モリブデンとすると、通常市販されている金属モリブデン微粉末の平均粒子径は1μm前後である。さらに核的毒物と核分裂性物質の相互拡散を抑制しようとすると、子粒子の平均粒子径としてやはり1μm程度が必要である。したがって、母粒子の大きさは最小でも10μmは必要である。これ以下の粒子径を有する核的毒物の母粒子を使用しても、金属モリブデン粒子が母粒子の周囲を十分に被覆することができず、本発明のよる固溶抑制効果を得ることができない。
【0028】
また、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む粒子の最大直径については、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む粒子の直径がペレットの寸法(通常直径10mm、高さ10mm)を超えなければ、本発明によりもたらされる効果を得ることができる。なお、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む領域と核分裂性物質を含む領域との界面に存在する核的毒物を含む物質以外の物質、例えば金属モリブデンの厚さについては、使用する子粒子の大きさに依存しており、1μm乃至1mmの範囲とされる。
【0029】
本発明で使用される核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む粒子については、通常の粉末処理方法で製造されたもので問題はない。この場合、得られる粒子の密度は処理方法によって異なるが、30乃至90%TDの範囲にあることが多い。一般に、焼結前のペレットの成形密度は約50%TDであることから、添加される核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む粒子の密度がこの成形密度を超えるような場合には、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む領域と核分裂性物質を含む領域との界面で、両者の焼結収縮率の差に起因するクラックが発生する。このクラックの発生を防止するためには、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む粒子の表面に空隙を発生させる物質を予め塗布しておき、焼結中にこの粒子と核分裂性物質を含む領域との界面で空隙を発生させ、両者の収縮率の差を打ち消すようにすればよい。ただし、塗布した物質が製品ペレットの焼結温度まで残存するとペレットの焼結状態に影響が現れるため、塗布する物質としては、核分裂性物質が焼結を開始する温度(一般に1000℃)までに分解・揮発するものが適している。なお、このような物質を塗布することにより、母粒子に子粒子を付着・密着させることがより容易になる。
【0030】
本発明の場合、得られた焼結前のペレットの焼結条件(焼結温度、雰囲気)については、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む領域と核分裂性物質を含む領域との界面に存在する核的毒物を含む物質以外の物質によっては、従来の焼結条件が適用できない場合があるが、核的毒物を含む物質以外の物質として金属モリブデンを使用すれば従来のペレットの焼結条件が適用できる。すなわち、従来使用されているペレットの焼結炉を使用することができ、炉の改善等を一切必要としない。なお、一般に市販されている金属モリブデン微粉末は表面が酸化しており、この酸化の影響を除去するためにも従来のペレットの焼結条件が適している。また、焼結助剤として使用されているアルミナシリケートは、酸素ポテンシャルの影響で水素を含むような還元性雰囲気下で珪素が選択的に揮発しやすい性質を有しているが、表面が酸化している金属モリブデン微粒子を使用することにより、ペレット内部での酸素ポテンシャルが上昇し、焼結中にアルミナシリケートから揮発する珪素の量を低減する作用も有している。
【0031】
図3は、上記燃料ペレット16の製造方法の一実施例を示すブロック図であり、立方晶の構造を有する天然核種組成のGd2O3粉末を平均粒径60ないし80μmの球形になるように調整し、大気中1700℃で1時間加熱して単斜晶の結晶構造を有する球形のGd2O3粉末粒子とした。このGd2O3粉末粒子の密度は、約60%TDであった(%TDは理論密度に対する粒子密度の百分率比)。そこで上記単斜晶のGd2O3粉末粒子に有機系のバインダーを塗布した後、粉末表面改質装置によりGd2O3粉末粒子表面を市販の金属モリブデン微粉末(平均粒径約1μm)で被覆し、金属モリブデン被覆Gd2O3粉末粒子を得た。
【0032】
この粉末粒子をUO2粉末に10wt%Gd2O3の添加濃度となるように秤量し添加して混合する。そして、得られた混合粉末を2.3t/cm2の圧力でプレスし、内部に金属モリブデン被覆されたGd2O3粒子を含む成形密度約50%のUO2圧粉成形体を得た。この圧粉成形体を露点9℃の40%H2−N2ガス中、1740℃で4時間にわたり焼結し、密度約95%TDの焼結ペレットを製造した。
【0033】
このようにして製造されたペレットにおいては、Gd2O3粒子の周囲にはGd2O3とUO2とが反応した層がほとんど観察されず、金属モリブデン粒子で被覆したことにより、核的毒物と核分裂性物質を含む粉末との反応が抑制されることが確認された。また、金属モリブデン被覆Gd2O3粉末粒子の周囲には、ペレットの熱伝導率に影響を及ぼすような大きなクラックや空隙は認められず、またペレットの熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定した結果、本実施例によるペレットの熱伝導率は、核的毒物がペレット内に含まれているにもかかわらず、UO2 単体のそれと同等であった。
【0034】
ところで、上記実施例においては、核的毒物としてガドリニウム酸化物の単体を使用したが、核的毒物からなる粒子と核分裂性物質を含む粉末や焼結助剤との反応を抑制する物質を予め核的毒物からなる物質に添加してもよく、核的毒性の高い核種を濃縮した物質を使用してもよい。また、Gdと化学的に似ているErやDy等の他の核的毒物を使用しても同様の効果を得ることができる。また、金属モリブデンを表面に被覆する前にGd2O3粉末表面に有機系のバインダーを塗布したが、塗布しなくてもよい。さらに、金属モリブデンは微粉末である必要はなく、モリブデン酸化物をGd2O3粉末表面に蒸着する等の方法を使用してもよい。ただし、モリブデン酸化物を厚く均一にGd2O3粉末表面に蒸着することは困難である。
【0035】
上記実施例においては、核的毒物粒子の形状を球形にしたが、球形である必要はない。しかし、焼結中にペレット内部で発生する応力をできるだけ緩和する観点からは球形である方がよい。
【0036】
また、上記実施例においては、核分裂性物質を含む領域の結晶粒径を増大させる焼結助剤を添加していないが、添加してもよい。焼結助剤としては、アルミナシリケートやチタン酸化物、ニオブ酸化物、或いはこれらを含む混合物や化合物を使用してもよい。ただし、チタン酸化物やニオブ酸化物は、UO2 等の核分裂性物質に固溶しやすく、固溶することでペレットからのFPガスの放出量を増大させることが知られており、これらの添加物を使用したペレットは、核分裂性物質を含む領域の結晶粒径が増大していたとしても、FPガス放出低減効果はない。
【0037】
上記方法で製造されたペレットは、ペレットの熱伝導率が従来の核的毒物添加ペレットに比べて向上しており、ペレット燃焼中のペレット温度を従来の核的毒物添加ペレットに比べて低減させることが可能である。すなわち、本発明に係るペレットは高い出力で燃焼させることが可能であり、燃焼温度に起因する燃料要素の出力制限を緩和させることができる。このことを考慮すると、燃料要素11内の全長にわたって本発明のペレットを配設する必要はなく、燃料要素11の軸方向で相対的に出力の高い位置のみに本発明に係るペレットを配設するだけでも、その性能を生かすことができる。しかして、上記燃料ペレットを配設することにより、燃料要素したがって燃料集合体の裕度が増し健全性を向上させることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域の周囲に、核的毒物を含む物質以外の物質からなる領域を設けたので、核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域から核分裂性物質を含む物質からなる領域への核的毒物の固溶を抑制することができ、核的毒物の固溶に伴う気泡、クラックの発生やペレットの熱伝導率の低下を抑制することができ、燃料の高燃焼度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る燃料集合体の斜視図、(b)はその燃料集合体に使用する燃料要素の一部断面斜視図。
【図2】本発明の燃料ペレットの金相を示す模式図。
【図3】本発明の燃料ペレットの製造方法の一実施例を示すブロック図。
【符号の説明】
10 燃料集合体
11 燃料要素
12 スペーサ
13 上部タイプレート
14 下部タイプレート
16 燃料ペレット
20 Gd2O3粒子
21 被覆層
Claims (9)
- 核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる領域が、核分裂性物質を含む物質からなる領域中に分散して設けられている核燃料ペレットの製造方法において、
前記核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質を粒子状に形成する工程と、
前記核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子の周囲に有機系バインダーを塗布する工程と、
前記有機系バインダーを塗布した核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子の周囲に、金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させる工程と、
前記有機系バインダーを塗布しその周囲に前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させた核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子を、核分裂性物質を含む物質中に混合する工程と、
前記有機系バインダーを塗布しその周囲に前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質を付着させた核的毒物または核的毒物と核分裂性物質を含む物質からなる粒子と前記核分裂性物質を含む物質を混合したものをペレット状に成型して焼成する工程と、
を含むことを特徴とする、核燃料ペレットの製造方法。 - 前記有機系バインダーは、0℃以上1000℃以下の温度で分解または蒸発する有機系バインダーであることを特徴とする、請求項1記載の核燃料ペレットの製造方法。
- 前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質は、金属モリブデン、金属タングステン、モリブデンを含む物質、タングステンを含む物質、或いは少なくともこれらの物質の1つを含む物質であることを特徴とする、請求項1記載の核燃料ペレットの製造方法。
- 前記金属または金属間化合物またはセラミックスを含む物質の層の平均厚さが、1μm以上、1mm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
- 前記核分裂性物質を含む領域の結晶粒径を増大させる焼結助剤を添加することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の核燃料ペレットの製造方法。
- 前記焼結助剤は、珪素、アルミニウム、珪素の酸化物、アルミニウムの酸化物、珪素及びアルミニウムの混合酸化物から選択された少なくとも1種からなる物質を含むことを特徴とする、請求項5記載の核燃料ペレットの製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の核燃料ペレット製造方法によって製造された燃料ペレットを被覆管内に封入したことを特徴とする、燃料要素。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の核燃料ペレット製造方法によって製造された燃料ペレットを、燃料要素の軸方向出力を平均した値を超える部分に配置したことを特徴とする、燃料要素。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の核燃料ペレット製造方法によって製造された燃料ペレットを用いた多数本の燃料要素を上下タイプレートに固定して組み込んだことを特徴とする、燃料集合体。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2001368554A JP4080199B2 (ja) | 2001-12-03 | 2001-12-03 | 核燃料ペレットの製造方法、その核燃料ペレットを使用した燃料要素、及び燃料集合体 |
Applications Claiming Priority (1)
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