JP4040432B2 - トナー、画像形成方法および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷、トナージェットのような画像形成方法に使用されるトナー、該トナーを用いた画像形成方法および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される定着装置としては、未定着トナー像を担持した記録材を、互いに圧接して回転する定着ローラと加圧ローラとにより形成されるニップ部を通過させることにより記録材上に定着させる、いわゆる加熱定着装置が広く用いられている。
【0003】
従来の加熱定着装置の1例を図10に示す。40は加熱手段を具備した定着ローラであり、機械的強度を満足するように厚さを1〜4mm程度としたアルミの中空芯金42の内部にハロゲンランプ41が配設されている。このハロゲンランプ41は、不図示の電源からの通電により、中空芯金42内部から記録材P上のトナーを融解させるのに十分な加熱を行う。
【0004】
中空芯金42の内部はハロゲンランプ41による輻射熱の吸収を良好にするために、一般的に吸収率90%以上の黒色の物質(例えばオキツモ等)が全面に塗布されている。中空芯金42の内面は上記輻射熱の反射を防ぎ、吸収率を高くする目的で粗くなっており、Rz=10μm以上となっている。
【0005】
また記録材P上のトナーを、オフセットすることなく記録材P上に定着するために、中空芯金42の外側には離型性に優れた性能を示すポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン共重合体(PFA)などの離型性層43が形成されている。離型性層43は、外面をブラスト処理やエッチング処理等によって表面粗さをRz=5μm以上とした中空芯金42上に、チューブ状に形成されていたり、あるいは静電スプレー、ディッピング塗工等により形成されており、中空芯金42に対して接着力を有している。また、記録材Pの搬送によって定着ローラ40の表面がチャージアップするために発生するオフセットを防止するため、離型性層43にカーボンブラック等の導電部材を混入しているものもある。
【0006】
さらに定着ローラ40の中空芯金42は電気的にアース接続、もしくはダイオード素子を介して接地されていたり、不図示のバイアス印加手段によってバイアス印加されており、定着ローラ表面がチャージアップしてオフセット画像が発生するのを防止している。
【0007】
また、定着ローラ40の表面にはサーミスタ44が接触している。この定着ローラ40は、定着ローラ表面の温度を検知し、適度な温度で記録材P上のトナー像を加熱するようにハロゲンランプ41への給電をon/off制御する。
【0008】
一方、50は上記定着ローラ40とローラ長手方向両端部において不図示の加圧バネにより圧接して記録材Pを挟持搬送する加圧ローラである。加圧ローラ50は芯金51の外部に、シリコンゴムを成形した弾性層あるいはシリコンゴムを発泡して成るスポンジ弾性層52と、さらにその外層に定着ローラ40と同様のPTFEあるいはPFA、FEP等の離型性層53が、チューブ状にまたはコーティング塗工により形成されている。よって、加圧ローラ50の弾性により両ローラ40、50間に十分なニップ幅の定着ニップ部Nを形成することができる。記録材P上のトナー像は、記録材Pがこの定着ニップ部Nに挟持搬送され、定着ローラ40からの加熱されることにより定着される。
【0009】
また、特にスタンバイ時に加熱定着装置に電力を供給せず、消費電力を極力低く抑えた方法、詳しくはヒータ部と加圧ローラの間に薄肉のフィルムを介して記録材上のトナー像を定着するフィルム加熱方式による加熱定着方法の1例が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【0010】
図11にフィルム加熱方式の定着装置の1例の概略構成を示す。この定着装置は、ステイホルダー(支持体)62と、このステイホルダー62に固定支持された加熱部材(加熱体、以下ヒータと記す)61と、外周面を形成する耐熱性の薄肉フィルム(以下、定着フィルムと記す)63とを有する定着ローラ60を有する。また、上記定着装置は、弾性加圧ローラ50を有する。この弾性加圧ローラ50とヒータ61との間に定着フィルム63を挟むことにより、所定のニップ幅の定着ニップ部Nが形成される。
【0011】
ヒータ61は通電により所定の温度に加熱・温度調節される。定着フィルム63は不図示の駆動手段あるいは加圧ローラ50の回転力により、定着ニップ部Nにおいてヒータ61面に密着・摺動しつつ矢印の方向に搬送移動される、円筒状あるいはエンドレスベルト状、もしくはロール巻きの有端ウエブ状の部材である。
【0012】
ヒータ61を所定の温度に加熱・温度調節させ、定着フィルム63を矢印の方向に搬送移動させた状態において、定着ニップ部Nの定着フィルム63と加圧ローラ50との間に被加熱材としての未定着トナー像を形成担持させた記録材Pを導入すると、記録材Pは定着フィルム63の外周面に密着して該定着フィルム63と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送される。この定着ニップ部Nにおいて、記録材・トナー像がヒータ61により定着フィルム63を介して加熱され、記録材P上のトナー像が加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材部分は定着フィルム63の面から剥離して搬送される。
【0013】
加熱部材としてのヒータ61には一般にセラミックヒータが使用される。例えば、アルミナ等の電気絶縁性・良熱伝導性・低熱容量のセラミック基板の面(定着フィルム63と対面する側の面)に基板長手(図面に垂直の方向)に沿って銀パラジューム(Ag/Pd)・Ta2N等の通電発熱抵抗層をスクリーン印刷等で形成具備させ、さらに該発熱抵抗層が形成された面を薄肉のガラス保護層で覆ってなるものである。
【0014】
このセラミックヒータ61は通電発熱抵抗層に通電されることにより該通電発熱抵抗層が発熱してセラミック基板・ガラス保護層を含むヒータ全体が急速昇温する。このヒータ61の昇温がヒータ背面に設置された温度検知手段64により検知されて不図示の通電制御部へフィードバックされる。通電制御部は、温度検知手段64で検知されるヒータ温度が所定のほぼ一定温度(定着温度)に維持されるように通電発熱抵抗層に対する給電を制御する。すなわちヒータ61は所定の定着温度に加熱・温度調節される。
【0015】
定着フィルム63は、定着ニップ部Nにおいてヒータ61の熱を効率よく被加熱材としての記録材Pに与えるため、厚みは20〜70μmとかなり薄くしている。定着フィルム63はフィルム基層、導電性プライマー層、離型性層の3層構成で構成されており、フィルム基層側がヒータ側であり、離型性層が加圧ローラ側である。フィルム基層は絶縁性の高いポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等が用いられ、耐熱性、高弾性を有しており可撓性のある厚み15〜60μm程度に形成されている。また、フィルム基層により定着フィルム63全体の引裂強度等の機械的強度を保っている。導電性プライマー層は厚み2〜6μm程度の薄い層で形成されており、定着フィルム全体のチャージアップを防止するため、電気的にアースに接続されている。離型性層は定着フィルム63に対するトナーオフセット防止層であり、離型性の良好なPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂を厚み5〜14μm程度に被覆して形成してある。また、図10の定着ローラ40と同様に定着フィルム63表面のチャージアップを軽減し、静電オフセットを防止するため、離型性層中には比抵抗が103Ωcm〜106Ωcm程度のカーボンブラック等の導電部材が混入されている。
【0016】
また、ステイホルダー62は、例えば耐熱性プラスチック製部材より形成され、ヒータ61を保持するとともに定着フィルム63の搬送ガイドも兼ねている。よって定着フィルム63との摺動性を高めるために、定着フィルム63とヒータ61やステイホルダー62の外周面の間に耐熱性の高いグリース等を介在させてある。また、加圧部材50は上述した定着ローラ方式の加熱定着装置の加圧ローラと同様の構成を有している。
【0017】
また、ステイホルダー62は、定着フィルム63と加圧ローラ50の間で加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するため、ステイホルダー62の両端部より不図示の加圧バネによって加圧ローラ50側に加圧されている。これにより、ステイホルダー62に取り付けられたヒータ61は加圧ローラ50の周方向の一部、かつ長手方向全域に渡って定着フィルム63と密着した状態になる。
【0018】
また、加圧ローラ50が回転駆動されると、これに伴い、定着フィルム63が加圧ローラ50の表面によって従動回転させられる。この状態でヒータ61に形成された通電発熱抵抗層には不図示のコネクターによりヒータ61の両端部に形成された電極部を介して給電される。これにより、通電発熱抵抗層が加熱昇温し、定着ニップ部に挟持搬送された記録材上のトナー像を加熱定着する。
【0019】
しかしながら上述したような加熱定着装置を使用した場合、以下に挙げるような問題点がある。
【0020】
まず、定着ローラ40を用いた加熱定着装置の場合、定着ローラ芯金42の肉厚が機械的強度を満足するため、1〜4mm程度必要となり、大きな熱容量を有する。このため、画像形成装置がプリント信号を受信する前に、定着ローラ40を所定温度に予備加熱しておく必要がある。すなわち、未定着トナー像を形成した記録材Pが加熱定着装置に搬送されてくるまでの短い時間では、定着ローラ40を室温から定着可能温度まで加熱昇温させることが困難であるため、プリント信号を受信する前のスタンバイ状態である程度加熱昇温しておく必要が生じる。
【0021】
このため、室温状態まで定着ローラ40が冷却された状態から画像形成装置の電源をONした場合などは、画像形成装置がプリント信号を受信可能になるまで、定着ローラ40を加熱昇温させる必要があった。また、スタンバイ中にヒータ41への通電により定着ローラ40を所定温度に加熱昇温させる必要があることから、エネルギーを無駄に使用していた。
【0022】
また、芯金42の肉厚を薄くすることで上記問題点に対応しようとした場合でも、上記従来例のようにヒータ41の輻射熱で定着ローラを加熱する場合には熱効率が良くないので、画像形成装置の高速化によって記録材搬送スピードが速くなった場合には同様に予備加熱が必要となる。
【0023】
また、芯金42の肉厚を薄くして昇温スピードを速くしようとした場合、芯金42の強度が十分でないために、強い加圧力で加圧した場合大きく撓み、亀裂が入る等、耐久性に問題があった。耐久性を考慮して弱い加圧力で加圧した場合は、トナーの定着性が不十分となる。
【0024】
一方、フィルム加熱方式の加熱定着装置では、上記のようなスタンバイ中のヒータ61への通電を必要とせず、画像形成装置がプリント信号を受信してから、ヒータ61への通電を行っても記録材Pが加熱定着装置に到達するまでに加熱可能な状態にすることができる。よって省エネの観点からフィルム加熱方式の加熱定着装置はエネルギーを無駄にしない、優れた加熱定着装置である。
【0025】
しかし、定着フィルム63は熱伝導性の悪い樹脂層により形成されており、画像形成装置の高速化には不向きとなっていた。すなわち、画像形成装置が高速化した場合、ヒータ61からの熱を定着フィルム63を介して記録材Pに与えるスピードが装置の高速化に対応して増加しなければならないが、樹脂製の定着フィルム63では、熱伝導性フィラを混入する等の対策をとったとしても限度があり、更なる高速化には対応ができなくなる。
【0026】
また、加圧ローラ50を高い加圧力で定着フィルム63に圧接させた場合、記録材Pにトナー像を強い密着力で押し付けることが可能になり、定着性能が上がるが、樹脂製フィルムでは耐久的な使用により内面が削れ、破損に至ることがあり、高速化、耐久性を両立させることは困難であった。
【0027】
さらに、樹脂製の定着フィルム63に熱伝導性フィラを多量に添加した場合には、引裂強度等の機械的強度が失われ、例えば、端部の規制部材等でスラスト方向の位置を規制するとき、定着フィルム63の端部が規制部材等の端面に寄った状態で回転するので、定着フィルム63の端部が裂ける等の問題が生じ、耐久性の悪化を招いてしまう。また、端部への寄りを制御しようとした場合には、構造が複雑になり、装置の大型化、高コスト化を招いてしまう。
【0028】
よって、簡単な構成でかつ定着性確保、耐久性確保の双方を満足した加熱定着装置の高速化には樹脂製フィルムを用いたシステムは不向きであった。
【0029】
また、フィルム加熱方式の定着装置を用いた場合、以下のような問題も存在する。CaCO3を含有する記録材は極めて一般的に用いられるものであるが、このような記録材を用いた場合、記録材から脱落するCaCO3が回転部材に付着することによって回転部材汚れが発生しやすく、この汚れに起因して画像不良が発生することがある。
【0030】
また、ベタ画像を印刷した際に、回転加熱部材と回転加圧部材のニップ部内で記録材がスリップすることにより、画像の端部の画像濃度が中央部分に比較して薄くなる、いわゆる端部濃度薄が発生するという問題もある。
【0031】
一方、トナーに関しても省エネルギー化および高速化に対応すべく、より低温で定着するトナーが望まれている。しかしながら、低温定着性を追求するあまり、高温でのオフセット性が悪化するという問題が生じてしまう。
【0032】
そこで、低温時の定着性と高温時の耐オフセット性を両立すべく、種々のトナーが提案されている。トナーのバインダー樹脂の改良に関する技術として、例えばGPCによる分子量分布において、分子量1×103〜8×104及び分子量1×105〜2×106のそれぞれの領域に少なくとも1つの極大値を持つ結着樹脂成分を含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、更なる低温定着性及び耐オフセット性の向上が要求されている。
【0033】
また、THF不溶分をバインダー樹脂基準で10〜60質量%含有し、THF可溶分のGPCによる分子量分布において、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が5以上であり、分子量2×103〜1×104の領域にピークを有し、分子量1.5×104〜1×105の領域にピーク又はショルダーを有し、分子量1×104以下の成分をバインダー樹脂に10〜50質量%含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0034】
この場合、粉砕性、定着性、感光体へのフィルミングや融着、画像性、耐オフセット性(特に高温側での耐オフセット性)は優れているが、更なる低温定着性及び耐オフセット性向上が要求されている。
【0035】
更に、結着樹脂中の低分子量成分と高分子量成分の分子量、混合比、酸価及びその比率をコントロールして定着性、耐オフセット性、画像特性及び耐ブロッキング性、帯電の立ち上がり特性等を改良したトナー用バインダー組成物及びトナーが提案されているが、更なる低温定着性及び耐オフセット性向上が要求されている(例えば、特許文献7〜特許文献10参照)。
【0036】
一方、トナーに耐オフセット性を与える技術としてポリオレフィン等よりなる低軟化点離型剤(ワックス)を含有させる手段が知られている。例えば、離型剤として、固形シリコーンワニス、高級脂肪酸系ワックス、高級アルコール系ワックス、植物系天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックス)、モンタン系エステルワックス等のトナーへの添加が知られているが、従来のワックスを用いるのみでは、いずれも低温定着性と耐オフセット性の両立が十分にはなされていない(例えば、特許文献11〜特許文献16参照)。
【0037】
一般にこの様な低軟化点離型剤をトナーに含有させると流動性が低下するため、現像性、転写性が低下し、帯電特性、耐久性、保存性にも悪影響を及ぼすことがある。
【0038】
【特許文献1】
特開昭63−313182号公報
【特許文献2】
特開平2−157878号公報
【特許文献3】
特開平4−44075号公報
【特許文献4】
特開平4−204980号公報
【特許文献5】
特開昭56−16144号公報
【特許文献6】
特開昭63−223662号公報
【特許文献7】
特開平2−168264号公報
【特許文献8】
特開平2−235069号公報
【特許文献9】
特開平5−173363号公報
【特許文献10】
特開平5−241371号公報
【特許文献11】
特開昭51−14333号公報
【特許文献12】
特開昭57−14875号公報
【特許文献13】
特開昭58−97056号公報
【特許文献14】
特開昭60−247250号公報
【特許文献15】
特開平4−362953号公報
【特許文献16】
特開平6−230600号公報
【0039】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、金属製スリーブと加圧部材の間で形成される加熱ニップ相当部において、該金属製スリーブ内面に加熱用部材を接触配置していることを特徴とするフィルム加熱方式の加熱定着装置において、良好な低温定着性、耐高温オフセット性、耐低温オフセット性を示し、回転加圧部材汚れや端部濃度薄を起こさない、現像性に優れたトナー、該トナーを用いた画像形成方法及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【0040】
つまり本発明は、定着性能、クイックスタート性を達成する高速オンデマンド定着に対応するトナー及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トナーを構成する結着樹脂およびワックスの物性並びにトナーの空隙率に着目し、これらを特定の値とすることにより、フィルム加熱方式の加熱定着装置を用いた画像形成方法において良好な定着性を実現し、優れた画像形成を行えることを見出した。
【0042】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0043】
(1)記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、このトナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着する定着工程を含み、
前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
前記加熱用金属製スリーブの長手方向の表面粗さRzが3μm以下、周方向の表面粗さRz’が3μm以下、RzとRz’の関係がRz>Rz’であり、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは結着樹脂とワックスとを少なくとも含有し、
前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによって得られるクロマトグラムにおいて、分子量3.0×103〜3.0×104の領域にメインピークを有し、かつ分子量1.0×105〜3.0×106の領域にサブピークまたはショルダーを有し、
前記ワックスの示差熱分析により測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であり、
前記トナーのタップ密度から求めた空隙率が0.4〜0.7であることを特徴とする画像形成方法。
【0044】
(2)前記ワックスのE型粘度計で測定される120℃における溶融粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする(1)記載の画像形成方法。
【0045】
(3)前記ワックスのE型粘度計で測定される120℃における溶融粘度が1〜50mPa・sであることを特徴とする(1)記載の画像形成方法。
【0046】
(4)120℃における粘度が1×103〜5×105Pa・sであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0047】
(5)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜100℃であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0048】
(6)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜80℃であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0049】
(7)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピーク半値幅が12℃以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0050】
(8)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピーク半値幅が8℃以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0051】
(9)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける始点オンセット温度が50℃以上であり、終点オンセット温度が100℃以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0052】
(10)前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける始点オンセット温度が60℃以上であり、終点オンセット温度が90℃以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0053】
(11)前記タップ密度から求めた空隙率が0.45〜0.65であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0054】
(12)前記結着樹脂の酸価が0.1〜100mgKOH/gであることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか一に記載の画像形成方法。
【0060】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材とを少なくとも有する定着手段を用いて、前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが圧接されることにより形成される定着ニップ部に、未定着トナー画像が形成された記録材を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着する定着工程を有する画像形成方法に用いられるトナーであって、結着樹脂とワックスとを少なくとも含有し、(A)トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによって得られるクロマトグラムにおいて、分子量3.0×103〜3.0×104の領域にメインピークを有し、且つ分子量1.0×105〜3.0×106の領域にサブピークまたはショルダーを有し、(B)前記ワックスの示差熱分析により測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であり、(C)前記トナーのタップ密度から求めた空隙率が0.4〜0.7であることを特徴とする。
【0061】
また、本発明の画像形成方法は上記本発明のトナーを用いるものであり、記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、このトナー画像を記録材上に定着させることにより記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、(a)未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着する定着工程を含み、(b)定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、(c)加熱用金属製スリーブと加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップが形成され、(d)加熱用金属製スリーブは加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を定着ニップ間を通過させることにより、未定着トナー画像を記録材上に定着させるものである。
【0062】
本発明者らは上述の画像形成方法とトナーとを組み合わせることで、現像性、低温定着性、耐高温オフセット性、耐低温オフセット性にすぐれ、かつ回転する加圧部材汚れや端部濃度薄の発生防止に特に優れた性能を示すことを見出した。
【0063】
加圧部材汚れは、低温環境で5枚以下程度の比較的少ない枚数の印刷を10〜20分間以上の間隔をあけてプリントする様な状況を続けると発生し易いことが分かっている。この現象のメカニズムに関しては、以下のように考えられる。
【0064】
上記加熱定着方式による定着装置は回転加熱部材である加熱用金属製スリーブの温度の立ち上がりが早く、熱ロール定着方式と比べて非常に短い予熱時間でプリントが行われるが、5枚以下程度のプリント枚数では加圧部材に熱を伝える時間が短く、加圧部材の表面温度があまり上がらないため、加熱された加熱用金属製スリーブとの温度差が非常に大きくなる。そのため記録材上のトナー画像から加熱用金属製スリーブにわずかにオフセットしたトナーは、記録材が定着器を通過した後、加熱用金属製スリーブと加圧部材のニップ部分において温度の低い加圧部材表面に移行する。そして次のプリントまで10〜20分間以上の間隔があると、低温環境では加圧部材の表面温度が再び初期状態の温度付近まで下がってしまう。上記間隔を空けてさらに5枚以下程度のプリントが行われることで同様の現象が繰り返され、加圧部材表面にトナーが蓄積される。
【0065】
加圧部材に蓄積されたトナーがある程度の量に達すると、トナーの固まりとして加圧部材表面に付着した状態となる。すると、蓄積されたトナーの固まりは加圧部材表面からはがれて加熱用金属製スリーブに移行するか、または記録材に直接移行し、黒ポチ等の画像欠陥の原因となる。
【0066】
一度に10枚以上程度のプリントが行われる場合や、時間をあけずに次のプリントが行われる場合は、加圧部材表面が十分に熱せられて温度が高くなるため、加熱用金属製スリーブとの温度差が小さくなる。このような状況では、定着工程において記録材上のトナー画像から加熱用金属製スリーブにトナーがオフセットしても、該オフセットトナーが加圧部材移行することはなく、加熱用金属製スリーブから記録材上にトナーが少しずつ排出されるために画像欠陥とはならないものと考えられる。
【0067】
ここでいう加熱用金属製スリーブにわずかにオフセットしたトナーはいわゆる低温オフセットや高温オフセットとは異なり、静電的にオフセットしたトナーがほとんどであり、トナーの低温定着性や高温オフセット性などの定着性能とは基本的に関係しない事が実験的に分かっている。そのため、加圧部材汚れをトナーで改良するには、定着性能とは別の観点でトナー設計を行う必要がある。
【0068】
さらに、本発明で使用される金属製の定着フィルムは、従来使用されてきたポリイミドやポリアミドイミド、PEEK等の樹脂製の定着フィルムに比べて定着フィルムの強度が強い為に、フィルムが撓みにくく、定着ニップ部のフィルム内面とヒーターが接触する部分でフィルムがヒーターに密着しにくい。そのため、記録材がニップに入る部分と出る部分はヒーターとフィルムの隙間が大きく、ニップ中央部分はヒーターとの隙間が小さい構成となり、定着ニップ部が記録材進行方向に対して凹凸のある、平滑な面ではなくなるため、上記加圧部材汚れがより悪化しやすくなる。優れた定着性や耐高温オフセット性を達成しつつ加圧部材汚れを抑制する為には、定着器の構成に合ったトナーを組み合わせることが重要である。
【0069】
そこで本発明者らは、加熱用金属製スリーブにオフセットしたトナーを加圧部材に蓄積させず、いかに記録材上に排出させていくか検討を行った結果、上記したように、(A)トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって得られるクロマトグラムにおいて、分子量3.0×103〜3.0×104の領域にメインピークを有し、且つ分子量1.0×105〜3.0×106の領域にサブピークまたはショルダーを有し、(B)ワックスの示差熱分析(DSC)により測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であるトナーが、加圧部材汚れを大幅に改善できることが分かった。このメカニズムは以下のように推察できる。
【0070】
低温環境で5枚以下程度の印刷を10〜20分間以上の間隔をあけて行った場合、加圧部材の表面温度は最大でも120℃程度までしか昇温しないが、本発明のトナーに用いられる、DSCにより測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であるワックスはこの温度でも十分に溶融している。
【0071】
また、本発明のトナーのTHF可溶分の分子量分布は、実質的にはトナーに含有される結着樹脂の分子量分布を表している。すなわち、上記分子量分布を持つ結着樹脂はこの温度でも十分な弾性を維持しているため、ワックス成分は結着樹脂を過度に可塑化させずにトナー表面に溶け出し易い。その結果、温度の低い加圧部材に対しても十分な離型性を発揮できるので、加熱用金属製スリーブに付着したトナーが加圧部材表面に移行するのを防ぎ、加圧部材汚れを抑止するものと思われる。
【0072】
一方、ベタ画像を印刷した際に画像の端部の画像濃度が中央に比較して薄くなる、端部濃度薄という問題は、定着器に入る前の未定着画像では均一なベタ画像であるにもかかわらず、定着器に未定着画像を通し、記録材上のトナー像を定着させると、記録材の端部の画像濃度だけが薄くなるという現象で、定着スピードを速くし、加圧部材の加圧力を小さくした際に起き易い現象であることが分かった。定着速度が速く、加圧力が小さいと加熱用金属製スリーブと加圧部材のニップ部で記録材がスリップし易くなり、記録材の中央部と端部で定着スピードにわずかなずれが生じる。そのため記録材端部のトナー画像が定着ニップ部でわずかにこすられて像が乱れてムラになり、端部の濃度が薄くなるということが分かった。
【0073】
そこで本発明者らが検討を行った結果、(C)トナーのタップ密度から求めた空隙率を0.4〜0.7にコントロールすることが端部濃度薄の改善に効果のあることが分かった。
【0074】
トナーの空隙率が0.4〜0.7であると、記録材上のトナー画像を構成するトナーが密に詰まった状態で存在するため、定着ニップ部で記録材端部と中央部で定着スピードのずれが多少生じても像の乱れが生じにくくなる。さらにこのとき、本発明のトナーにおいては上述したように、比較的低い温度でもワックス成分がトナー表面に溶け出し易いため、トナー表面に溶け出したワックスが記録材上のトナー粒子個々を繋ぎ止める役割をして、定着スピードのずれによる像の乱れに対してさらに強くなり、端部濃度薄を防いでいると考えられる。
【0075】
また、これと同様の理由でトナー粒子個々を記録材と繋ぎ止める力が働くために、現像されたトナーと記録材との接着力を大きくすることが出来、定着器が冷えた状態から印刷を行っても低温オフセットを発生しにくくすることが可能となる。
【0076】
すなわち、本発明においてはトナーのTHF可溶分のGPCにより得られる分子量分布、ワックスの昇温時のDSC曲線のピークトップ温度、および空隙率を上記範囲とすることにより、省エネルギーでクイックスタート性に優れたフィルム加熱方式の定着方法を用いた画像形成方法において優れた定着性を達成することができ、且つ少ない枚数の印刷を時間を空けて行った場合に回転部材のトナーが付着することに起因する画像不良や、定着速度の高速化により生じる端部濃度薄を防止することができる。
【0077】
上述したように、本発明のトナーはTHF可溶分のGPCにより得られるクロマトグラムにおいて、分子量3.0×103〜3.0×104(好ましくは分子量5.0×103〜2.0×104、より好ましくは分子量1.0×104〜2.0×104)の領域にメインピークを有し、且つ分子量1.0×105〜3.0×106(好ましくは5.0×105〜1.0×106、より好ましくは分子量6.0×105〜9.0×105)の領域にサブピークまたはショルダーを有する。
【0078】
メインピークが分子量3.0×103より小さい領域にある場合は高温オフセット性や現像性、保存性が悪化しやすく、メインピークのが分子量3.0×104より大きい領域にある場合は低温定着性が悪化し易い。サブピークまたはショルダーが分子量1.0×105より小さい領域にある場合は高温オフセット性が悪化するとともに、結着樹脂がワックスにより可塑化され易くなりワックスがトナー表面に溶け出しにくくなるため、低温オフセット性や加圧部材汚れ、端部濃度薄が悪化することがある。サブピークまたはショルダーが分子量3.0×106より大きい領域にある場合は低温定着性が悪化し易い。
【0079】
一般にトナーのTHF可溶分とは、実質的にはトナーに含有される結着樹脂のTHF可溶分に相当する。従って、結着樹脂のTHF可溶分の分子量分布を上記範囲に制御することにより、上記ピークを有する本発明のトナーを得ることができる。
本発明において、トナーの分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によって次の条件で測定される。
【0080】
〈GPC測定条件〉
装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801〜7(ショウデックス社製)の7連
温度:40℃
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/min
試料:濃度0.05〜0.6質量%の試料を0.1ml注入
【0081】
本発明のトナーに用いる結着樹脂は、THF不溶分が樹脂組成物基準で0〜10質量%のものが好ましく用いられる。この結着樹脂のTHF不溶分は、より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜3質量%である。
【0082】
本発明における結着樹脂のTHF不溶分とは、トナー中のTHF溶媒に対して不溶性となったポリマー成分(実質的には架橋ポリマー)の質量割合を示し、架橋成分を含む樹脂組成物の架橋の程度を示すパラメーターとして使うことができる。THF不溶分とは、以下のように測定された値をもって定義する。
【0083】
トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し(w1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(w2g)。トナー中の磁性体や顔料のような樹脂成分以外の成分の質量を(w3g)とする。THF不溶分は、下記式(1)から求められる。
【0084】
【数1】
【0085】
また、本発明に使用される結着樹脂は、酸価が0.1〜100(より好ましくは1〜50)mgKOH/gであることが好ましい。結着樹脂の酸価を上記範囲とすることで結着樹脂とワックスとの極性の差が大きくなり、トナー表面にワックス成分が溶け出し易くなり、加圧部材汚れや端部濃度薄、コールドオフセットの防止に効果を発揮する。また、結着樹脂の極性が大きくなることで、加圧部材と結着樹脂との離型性も向上し、加圧部材汚れを発生しにくくする。
【0086】
結着樹脂の酸価が0.1mgKOH/gより小さいとトナー表面にワックス成分が溶け出しにくく、加圧部材汚れや端部濃度薄、コールドオフセットの防止に効果が得られにくい。また酸価が100mgKOH/gより大きいとトナーの帯電性が安定しなくなり、高湿環境での現像性や低湿環境でのカブリが悪化しやすい。
【0087】
本発明において結着樹脂の酸価(JIS酸価)は以下の方法により求める。
【0088】
〈酸価(JIS酸価)の測定〉
1)試料の粉砕品0.1〜2.0gを精秤し、その重さをW(g)とする。
【0089】
2)20cc三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液10ccを加え溶解する。
【0090】
3)指示薬としてフェノールフタレインのアルコール溶液を数滴加える。
【0091】
4)0.1mol/lのKOHのアルコール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
【0092】
5)下記式(2)により酸価を計算する(下記式(2)においてfはKOH溶液のファクターを表す)。
【0093】
【数2】
酸価 = (S−B)×f×5.61/W (2)
【0094】
結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体や、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体、又は無水マレイン酸などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価をコントロールする上で好ましい。
【0095】
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステルなどのような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;などが挙げられる。
【0096】
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成する全モノマーに対し0.1〜30wt%添加すればよい。
【0097】
上記のようなジカルボン酸のモノエステルモノマーが選択される理由は、懸濁重合によりトナーを製造する際、水系の懸濁液に対して溶解度の高い酸モノマーの形で使用するのは適切でなく、溶解度の低いエステルの形で用いるのが好ましいからである。
【0098】
本発明のトナーは、120℃における粘度が1×103〜5×105Pa・sであることが好ましい。トナーの120℃における粘度を上記範囲に設定することにより、ワックス成分がトナー表面に溶け出し易くなり、低温オフセットや加圧部材汚れ、端部濃度薄の防止により効果を発揮する。
【0099】
トナーの120℃における粘度が1×103Pa・sより小さい場合には、結着樹脂がワックス成分によって可塑化され易く、加圧部材汚れや端部濃度薄が悪化し易い。一方、上記粘度が5×105Pa・sより大きい場合には、トナーの低温定着性を悪化させ易いうえに、定着時にトナーが加熱されても、トナーの弾性が大きすぎるためにトナー粒子個々を繋ぎ止める力が働きにくく、低温オフセットや端部濃度薄が悪化し易い。
【0100】
トナーの120℃における粘度は以下の方法により求める。
【0101】
〈トナーの粘度の測定〉
トナーの粘度測定は高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−500形)を用い、加圧成形器を用いて成形した約1.5gの試料を、一定温度下でプランジャーにより98.0Nの荷重をかけ、直径1mm、長さ1mmのノズルより押し出す。これによりフローテスターのプランジャー降下量(流出速度)を測定する。この流出速度を各温度(100℃〜180℃の温度範囲を5℃間隔)で測定し、この値より本発明における粘度としての見掛粘度η'を下記式(3)により求める。
【0102】
【数3】
η'(Pa・s)= TW'/DW' = πPR4/8LQ (3)
但し、上記式において
TW' = PR/2L(N/m2)
DW' = 4Q/πR3(sec-1)
η':見掛けの粘度(Pa・s)
TW':管壁の見掛けのずり応力(N/m2)
DW':管壁の見掛けのずり速度(sec-1)
Q:流出速度(m3/sec)
P:押出圧力(N/m2)
R:ノズルの半径(m)
L:ノズルの長さ(m)
【0103】
本発明の結着樹脂は、保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が50〜70℃であることが好ましく、55〜65℃であることがより好ましい。Tgが50℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時に高温オフセットが発生しやすくなる。また、Tgが70℃を超えると、低温定着性が低下する傾向にある。
【0104】
本発明で用いられる結着樹脂を製造する方法としては、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、または押出機等により溶融混練するドライブレンド法等が挙げられる。しかしながら、ドライブレンド法では、均一な分散、相溶の点で問題があるため、溶液ブレンド法が最も好適である。また、低分子量重合体に所定の酸価を導入する方法としては、水系の重合法に比べ酸価の設定が容易である溶液重合が好ましい。
【0105】
高分子量重合体の合成方法として本発明に用いることの出来る重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0106】
乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤を用いて小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合濃度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナー製造時において着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であるという、トナー用結着樹脂の製造方法として有利な点がある。
【0107】
しかしながら、上記乳化重合法では添加される乳化剤のために重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要である。この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
【0108】
懸濁重合は、水系溶媒100質量部に対してモノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)を用いて行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が挙げられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部が用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
【0109】
結着樹脂の調製に使用される高分子量重合体は、本発明の目的を達成する為に以下に例示する様な多官能性重合開始剤を単独で用いるか、あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
【0110】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
【0111】
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0112】
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する結着樹脂を得る為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
【0113】
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジーt−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
【0114】
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
【0115】
これらの開始剤は、効率の点から結着樹脂を構成するモノマー100質量部に対して0.05〜2質量部用いるのが好ましい。
【0116】
高分子量重合体は、本発明の目的を良好に達成する為に以下に例示する様な架橋性モノマーで架橋されていることが好ましい。
【0117】
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。架橋性モノマーのうち単官能のものとしては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。
【0118】
多官能の架橋性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
【0119】
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量部に対して1質量部以下、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0120】
これらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点からトナー用結着樹脂に好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0121】
低分子量重合体の合成方法としては、公知の方法を用いることが出来る。しかしながら、塊状重合法は、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることが出来るが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法は、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また開始剤量や反応温度を調整して、低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることが出来るため、結着樹脂中の低分子量重合体を得るには特に好ましい。特に、重合開始剤の使用量を最小限に抑え、開始剤残渣の影響を極力抑えるという点から、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
【0122】
高分子量重合体を得る為のモノマー及び、低分子量重合体を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
【0123】
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンのようなスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンのような不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、沸化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルのようなビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
【0124】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0125】
前述したように、本発明のトナーは、DSCにより測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であるワックスを含有することを特徴としている。このワックスのピークトップ温度は好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜90℃、更に好ましくは70〜80℃である。このようなワックス成分は、加圧部材汚れや端部濃度薄、低温オフセットが発生し易い状況でトナー表面に溶け出しやすく、金属製スリーブに対する離型剤を向上することができるため効果を示す。
【0126】
最大吸熱ピークのピークトップ温度が70℃より低い場合には、トナーの保存性、現像耐久性、高温オフセット性等が悪化し易い。また、最大吸熱ピークのピークトップ温度が120℃より高すぎる場合には、ワックス成分がトナー表面に溶け出しにくくなり、加圧部材汚れや端部濃度薄、低温オフセットの発生防止の効果が望めなくなる。
【0127】
また、本発明で用いられるワックスは、DSCで測定される昇温時の吸熱ピークにおいて、最大吸熱ピークのピーク半値幅が12℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、8℃以下であることがさらに好ましい。
【0128】
このような半値幅を持つワックスはトナー表面に溶け出し易い性質があるため、少ない添加量でも優れた効果が得られる。また、添加量を増やしてもトナーの保存性に悪影響を及ぼさないため、更に効果を増すことも可能となる。半値幅が12℃より大きいと、保存性が悪化する場合がある。
【0129】
さらに、本発明で用いられるワックスは、DSCで測定される昇温時の吸熱ピークにおいて、始点オンセット温度が50℃以上(より好ましくは60℃以上)であり、終点オンセット温度が100℃以下(より好ましくは90℃以下)であることが好ましい。このようなワックスはトナーの弾性を維持しながらトナー表面に溶け出すために、加圧部材汚れや端部濃度薄、低温オフセット発生防止に効果がある。
【0130】
上記始点オンセット温度が50℃以下であるとトナーの保存性が悪化しやすい。また、上記終点オンセット温度が100℃以上であると、トナー表面にワックス成分が溶け出しにくくなり、ワックスの効果が減少することがある。
【0131】
本発明におけるワックスのDSCの測定方法を以下に示す。
【0132】
〈DSC測定法〉
本発明におけるDSC測定では、DSC−7(パーキンエルマー社製)またはDSC2920(TAインスルツルメンツジャパン社製)が利用できる。測定方法はASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温させ前履歴をとった後、温度速度10℃/minで降温し、2度目の昇温時に測定されるDSC曲線を用いる。各温度の定義は次のように定める。
【0133】
・最大吸熱ピークのピークトップ温度
ベースラインからの高さが最も高いピークのピークトップ温度。
【0134】
・最大吸熱ピークの半値幅
ベースラインからの高さが最も高いピークの、ベースラインからピークトップまでの高さの2分の1の高さにおける温度幅。
【0135】
・吸熱ピークの始点オンセット温度
昇温時曲線の微分値が最大となる点における曲線の接線とベースラインとの交点の温度。
【0136】
・吸熱ピークの終点オンセット温度
昇温時曲線の微分値が最小となる点における曲線の接線とベースラインとの交点の温度。
【0137】
さらに本発明で用いられるワックスは、E型粘度計で測定される120℃における溶融粘度が100mPa・s以下(好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは1〜30mPa・s、更に好ましくは1〜15mPa・s)であることが好ましい。このような粘度の低いワックスはトナーが加熱されワックスが溶融した際に結着樹脂中を移動し易く、トナー表面に溶け出しやすいため効果を発揮しやすい。溶融粘度が100mPa・sより大きい場合には、本発明で用いる定着装置においては十分な効果を発揮しにくく、加圧部材汚れや端部濃度薄、低温オフセットの発生防止に対する効果が得られにくい。
【0138】
本発明におけるワックスの溶融粘度の測定方法を以下に示す。
〈ワックスの溶融粘度の測定〉
ワックス成分の溶融粘度はE型回転粘度計を用いて測定される。粘度計としては、VT−500(HAAKE社製)を利用する。後述する実施例においては、VT−500を用い、温度レギュレータ付きオイルバスにより測定温度を120℃に温度調整し、センサーにPK1,0.5°を使用し、シェアレート6,000s-1で測定した。
【0139】
本発明に用いられるワックスとして、次のようなものが利用できる。例えばポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、高級アルコール系ワックス、エステルワックス等の化合物、及びこれらの酸化物やグラフト変性物が挙げられる。
【0140】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧化でラジカル重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;低圧化でチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を用いて重合したポリオレフィン;放射線、電磁波、光等を利用して重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン;パラフィンワックス;マイクロクリスタリンワックス;フィッシャートロプシュワックス;ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス;水酸基、カルボキシル基などの官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物などがある。
【0141】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法、融液晶析法等を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものが好ましく用いられる。
【0142】
特に好ましく用いられるのは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン、ポリエチレン重合時に得られる低分子量副生物の蒸留生成物等である。
【0143】
本発明のトナーにおいては、これらのワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部で用いるのが良い。
【0144】
また、本発明のトナーはタップ密度から求めた空隙率が0.4〜0.7(好ましくは0.45〜0.65、より好ましくは0.50〜0.60)であることを特徴とする。空隙率がこの範囲にあると、記録材上にトナー粒子が密に詰まった状態(記録材単位面積当たりに現像されているトナー質量が同じでも、トナー像の高さが低い)で現像されているため、定着装置のニップ部で多少こすられてもトナー像の乱れが起こりにくく、端部濃度薄の発生防止に効果がある。また、記録材上にトナー粒子が密に詰まった状態で現像されるため、定着時に小さな加圧力でトナーと記録材の接着力を高めることが出来、本発明で用いる定着装置においても低温オフセットの発生を抑制することが出来る。
【0145】
上記空隙率が0.4より小さいとトナーが均一に帯電しにくくなり、画像濃度が低くなったり、カブリが多くなることがある。また、上記空隙率が0.7より大きいと端部濃度薄、低温オフセットの発生防止に効果がなくなることがある。
【0146】
空隙率は、トナー粒子の粒度分布や、シリカなどの外部添加剤の量や種類を変化させることで調節できる(外部添加剤については後述する)。具体的には、トナーの粒径を小さく、微粉量を多くするほど空隙率は大きくなり易く、逆にトナーの粒径を大きく、微粉量を少なくするほど空隙率は小さくなり易い。また、シリカなどの外部添加剤の量を多くしてトナーの流動性を良くすると空隙率は小さくなり易い。
【0147】
本発明における空隙率は以下の式で求められる。
【0148】
【数4】
空隙率 = (真密度−タップ密度)/真密度
【0149】
真密度及びタップ密度の測定法を以下に示す。
【0150】
〈真密度の測定〉
トナー1gをIR測定用錠剤成型器に入れ、約1.96MPa(200kgf/cm2)の圧力で1分間加圧し成型する。このサンプルの体積及び質量を測定し真密度を求める。
【0151】
〈タップ密度の測定〉
ホソカワミクロン(株)製のパウダーテスターを用い、該パウダーテスターに付属している容器を使用して、該パウダーテスターの取扱説明書の手順にしたがって測定した値を言う。すなわち、パウダーテスターの測定用カップ(内容積:Vcm3)にトナーをすり切り一杯入れ、タッピングを行う。タッピング終了後、余分なトナーをブレードですり切った後トナーの質量(Wg)を測定し、次の式によりタップ密度を得ることができる。
【0152】
【数5】
タップ密度 = W/V(g/cm3)
【0153】
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いても良いし、トナーのみからなる(キャリアを用いない)一成分現像剤として用いても良い。本発明のトナーを二成分現像剤として用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものがすべて使用可能であるが、具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金または酸化物などの平均粒径20〜300μmの粒子が使用される。
【0154】
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着または被覆させたものが好ましく使用される。
【0155】
本発明のトナーは更に磁性材料を含有させて、磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらと金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
【0156】
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μmのものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対して約20〜200質量部、特に好ましくは結着樹脂100質量部に対し40〜150質量部が良い。
【0157】
本発明のトナーに使用し得る着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料があげられる。トナーの着色剤としては、例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。また同様の目的で、更に染料が用いられる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、結着樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0158】
本発明のトナーは荷電制御剤をさらに有していても良い。トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0159】
例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0160】
また、次に示した一般式(1)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
【0161】
【化1】
[式中、Mは配位中心金属を表し、Sc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn、Fe等があげられる。Arはアリール基であり、フェニル基、ナフチル基などがあげられ、置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基および炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基などがある。X,X'、Y,Y'は−O−、−CO−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。A+は水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、脂肪族アンモニウムあるいはなしを示す。]
【0162】
上記一般式(1)中の配位中心金属としては、Fe又はCrが特に好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基、アニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
【0163】
あるいは、次の一般式(2)に示した塩基性有機酸金属錯体も負帯電性を与えるものであり、本発明に使用できる。
【0164】
【化2】
【0165】
上記一般式(2)において、中心金属としてはFe、Cr、Si、Zn、Alが特に好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
【0166】
上記負帯電性の荷電制御剤の中でも、上記一般式(1)で表されるアゾ系金属錯体がより好ましく、とりわけ、下記式(3)で表されるアゾ系鉄錯体が最も好ましい。
【0167】
【化3】
【0168】
次に、該錯体の具体例を示す。
【0169】
【化4】
【0170】
【化5】
【0171】
【化6】
【0172】
また、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤として下記の物質がある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また、一般式(4)
【0173】
【化7】
[式中、R1はHまたはCH3を示し、R2及びR3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、C1〜C4)を示す]
【0174】
で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのような重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合、これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
【0175】
特に下記一般式(5)で表される化合物が本発明の構成においては好ましい。
【0176】
【化8】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表し、R7、R8及びR9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、A-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン又はテトラフルオロボレートから選択される陰イオンを示す。]
【0177】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法とトナー粒子に外部添加(外添)する方法とがある。これらの電荷制御剤の使用量は結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナーの製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
【0178】
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上の為、シリカ微粉末を外部添加剤として添加することが好ましい。
【0179】
本発明に用いられるシリカ微粉末は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が20m2/g以上(特に30〜400m2/g)の範囲内のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対してシリカ微粉体0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量部使用するのが良い。
【0180】
また、上記シリカ微粉末は、必要に応じ、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリル化剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤で、あるいは種々の処理剤で併用して処理されていることも好ましい。
【0181】
また、現像性、耐久性を向上させるために次の無機粉体を外部添加剤として添加することも好ましい。マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモンなどの金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムなどの複合金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム等の金属塩;カオリンなどの粘土鉱物;アパタイトなどのリン酸化合物;炭化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物;カーボンブラックやグラファイトなどの炭素粉末が挙げられる。なかでも、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムなどが好ましい。
【0182】
更に次のような滑剤粉末を外部添加剤として添加することもできる。テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;フッ化カーボンなどのフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステル等の脂肪酸誘導体;硫化モリブデン、アミノ酸およびアミノ酸誘導体が挙げられる。
【0183】
本発明のトナーを作製するには結着樹脂、ワックス、必要に応じて着色剤としての顔料又は染料、磁性体、荷電制御剤、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶させる。その中に顔料、染料、磁性体等を分散又は溶解させ、冷却固化後粉砕及び分級を行ってトナー粒子を得る。さらに必要に応じ、シリカ微粉末や他の無機粉体等の所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により充分混合することによって本発明のトナーを得ることができる。
【0184】
トナー製造装置としては、例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0185】
以下、上記本発明のトナーを用いた本発明の画像形成方法および画像形成装置について説明する。
【0186】
本発明の画像形成方法は、記録材上に形成された未定着トナー画像を、上記本発明で用いられる定着手段によって定着させる工程を含む。また、本発明の画像形成装置は上記本発明で用いられる定着手段を有し、上記本発明のトナーを用いて画像形成を行う装置である。
【0187】
本発明で用いられる定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、この加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され上記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、上記加熱用金属製スリーブを介して加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な軸を有する円筒形状の加圧部材と、を少なくとも有する加熱定着装置である。上記本発明の加熱定着装置において、上記加熱用金属製スリーブ(以下、単に「金属製スリーブ」ということがある)と上記加圧部材とが互いに圧接されることにより所定の温度に維持された定着ニップ部が形成され、未定着トナー画像が形成された記録材がこのニップ部を通過することにより、上記未定着トナー画像が記録材上に定着される。
【0188】
本発明で用いられる金属製スリーブを構成する金属素管の厚さは20〜100μmであることが好ましい。また、この金属製スリーブ内面は加熱用部材との接触熱抵抗を低く抑え、定着ニップ部への伝熱を良好にするために、表面粗さRz=3μm以下とすることが好ましい。さらに金属製スリーブ外面の表面粗さをRz=3μm以下とし、この金属製スリーブ上に、接着層としてのプライマー層を含めた離型性層を厚さ20μm以下で形成することも好ましい構成である。
【0189】
このように本発明で用いられる加熱定着装置では、熱伝導性が良好な金属製スリーブ内面から加熱用部材により接触加熱することで、画像形成装置の高速化に対応した加熱定着を高い熱効率で実施できる。よって、画像形成装置がプリント信号を受信していない状態のスタンバイ中にヒータへの通電をシャットダウンしておくことができ、省エネルギーの加熱定着が実現できる。
【0190】
また、室温状態から画像形成装置の電源をONにした場合でも、即座にプリント信号受信可能になるため、ユーザーを待たせることがない。よって画像形成装置が高速化した場合でも、クイックスタート性に優れ、ファーストプリントタイムも速い加熱定着装置を提供することが可能となる。
【0191】
また、樹脂製フィルムに比べ剛性の高い金属製スリーブを使用することで、加圧力を高く設定することが可能になり、さらに画像形成装置の高速化に対応することが可能になる。
【0192】
また、金属製スリーブ内面に接触して定着ニップ部を加熱する表面に、耐熱性を有するポリイミド樹脂等の樹脂部材を設けることが好ましい。これにより、金属製スリーブ内面と加熱用部材との摺動をスムーズにすることができるため、さらに高耐久の加熱定着が可能となる。
【0193】
また、金属製スリーブに上記表面粗さ内の周方向のスジ加工を施すことにより金属スリーブの回転をスムーズにし、上記加熱用部材表面を傷つけにくくすることができる。
【0194】
また、未定着トナー像を記録材上に固着させる加熱定着装置においてトナーと逆極性のバイアスを加圧ローラ側に印加し、金属製スリーブを接地あるいはダイオード接続することで、紙粉、トナー等が金属製スリーブに吸着されることを防止する。これにより耐久的な使用によって金属製スリーブが汚れる等の問題もなく、高耐久の加熱定着装置を提供できる。
【0195】
このように、上記加熱定着装置と本発明のトナーとを組み合わせて用いることにより、電源投入直後に定着可能な、待機中の予備加熱を必要としない、消費電力の大幅な低下を実現するオンデマンドタイプの加熱定着装置による高速定着を可能とし、同時に低温オフセット、高温オフセットを発生することなく充分な定着性を有し、さらには加圧部材汚れおよび端部濃度薄をこれまで以上に改善できる画像形成方法を提供できる。
【0196】
本発明の画像形成方法は、公知の部材及び手段等を適宜組み合わせて実現することができる。より具体的には、本発明の画像形成方法は、前述した定着工程を実現する定着手段を搭載する改造を、公知の画像形成装置に施すことによって実現することが可能である。以下に、本発明の画像形成方法を実現する上で好適な画像形成装置である本発明の画像形成装置の具体的一例を、図面を参照して説明する。
【0197】
(A)画像形成装置の例
図1は本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。1は感光ドラムであり、OPC、アモルファスSe、アモルファスSi等の感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されている。感光ドラム1は矢印の方向に回転駆動され、まず、その表面は帯電装置としての帯電ローラ2によって一様帯電される(帯電工程)。
【0198】
次に、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザビーム3による走査露光が施され、静電潜像が形成される(潜像形成工程)。この静電潜像は現像装置4で現像、可視化され、トナー画像となる(現像工程)。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0199】
可視化されたトナー画像は、転写装置としての転写ローラ5により、所定のタイミングで搬送された転写材としての記録材P上に感光ドラム1上より転写される(転写工程)。ここで感光ドラム1上のトナー像の画像形成位置と記録材の先端の書き出し位置が合致するようにセンサ8にて記録材Pの先端を検知し、搬送のタイミングを合わせている。所定のタイミングで搬送された記録材Pは感光ドラム1と転写ローラ5に一定の加圧力で挟持搬送される。
【0200】
この未定着のトナー画像が転写された記録材Pは加熱定着装置6へと搬送され定着される(定着工程)。一方、感光ドラム1上に残存する転写残りの残留トナーは、クリーニング装置7により感光ドラム1表面より除去される(クリーニング工程)。
【0201】
(B)加熱定着装置6
図2は加熱定着装置6の概略構成図である。図2において、10は定着部材、20は加圧部材である。定着部材10は加熱用部材としてのヒータ11、断熱ステイホルダー12、定着スリーブとして用いられる金属製スリーブ13等からなる。加圧部材20は耐熱性弾性加圧ローラであり、金属製スリーブ13に圧接されている。すなわち、金属製スリーブ13と加圧部材20とが互いに圧接されることにより、定着ニップ部Nが形成されている。
【0202】
a)加熱用金属製スリーブ13
定着スリーブとして用いられる加熱用金属製スリーブ13は熱容量の小さなスリーブであり、クイックスタートを可能にするために厚さが100μm以下であり、耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Cu、Zn等の金属の単独あるいは合金からなる可撓性の円筒状の金属素管を基層とした金属製スリーブ(フィルム)である。
【0203】
この金属製スリーブ13は、長寿命の加熱定着装置を構成するために充分な強度を持ち、耐久性に優れた金属製スリーブとするために、20μm以上の厚さが必要である。よって金属製スリーブ13の厚さとしては20μm以上100μm以下が最適である。
【0204】
さらにオフセット防止や記録材の分離性を確保するために、金属製スリーブ13の表層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型性の良好な耐熱樹脂が単独でまたは2種以上が混合されてなる離型性層(図示せず)によって被覆されている。
【0205】
金属製スリーブ13表面を上記離型性層により被覆する方法としては、金属製スリーブ基層の外表面に接着層としてのプライマー層を塗布した後に、上記離型性層を形成する。離型性層の形成はディッピング、粉体スプレー等の塗布によるものであっても良いし、チューブ状に形成されたものを金属製スリーブの表面に被せる方式のものであっても良い。
【0206】
なお、金属製スリーブの内外面の表面性状および離型性層の厚さ等については後記e)項で詳述する。
【0207】
b)加熱用ヒータ11
加熱用部材としての加熱用ヒータ11は金属製スリーブ13の内面に接触配置され、記録材P上のトナー像を溶融、定着させるニップ部の加熱を行うべく金属製スリーブ13を加熱する。
【0208】
図3は、図2の定着ニップ部N近傍の部分的拡大図である。また、図4は図2のI−I線に沿った模式的断面図である。図3において、加熱用ヒータ11は、アルミナ、AlN(チッ化アルミ)等の高絶縁性のセラミックスやポリイミド、PPS、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂からなる基板11aの表面に長手方向(図面と直交する方向)に沿って、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の通電発熱抵抗層11bをスクリーン印刷等により、厚さ10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状に塗工して形成してなる通電加熱用部材である。通電発熱抵抗層11bの表面には、金属製スリーブ13との摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層11cが設けられている。
【0209】
上記基板11aの背面(定着ニップ部Nと反対側の面)には通電発熱抵抗層11bの発熱に応じて昇温した加熱用ヒータ11の温度を検知するためのサーミスタ等の温度検知素子14が配設されている。この温度検知素子14の信号に応じて、図4に示す長手方向(図4中芯金21に平行な方向)端部にある電極部11fおよび11gから通電発熱抵抗層11bに印加される電圧のデューティー比や波数等を適切に制御することで、定着ニップ部N内での温度を略一定に保ち、記録材P上のトナー像を定着するのに必要な加熱を行う。温度検知素子14から不図示の温度制御部へのDC通電は不図示のDC通電部およびDC電極部を介して不図示のコネクターにより達成している。
【0210】
加熱用ヒータの他の実施形態を図5に示す。この図5も、図3と同様に加熱定着装置の加熱ヒーター近傍を示す部分的断面図である。図5に示すように、ヒータ基板11aとして熱伝導性の良好なAlN(チッ化アルミ)等を用いた場合には、通電発熱抵抗層11bを基板11aの定着ニップ部Nと反対側に形成してあっても良い。図5において、11dは基板11a上に形成された通電発熱抵抗層11dと温度検知素子14の間の耐電圧を満足するために設けたガラスコート、フッ素樹脂層等の保護層である。また、11eは上述の11cと同様に金属製スリーブとの摺擦に耐えることが可能な薄層のフッ素樹脂層、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂層からなる摺動層である。
【0211】
また、上記金属製スリーブ13の内面において、加熱用ヒータ11の定着ニップ部N側の形状を曲面とすることで、金属製スリーブ13に屈曲負荷を与えないようにした方が長寿命の定着部材が形成される。あるいは、基板(11a)を金属製のものとし、この金属製基板の上の定着ニップ部の反対側に絶縁層、通電発熱抵抗層を順次積層してなり、上記金属製基板は定着ニップ部側が金属製スリーブと同方向に湾曲した形状を有する金属製の加熱用ヒータを用いてもよい。
【0212】
c)断熱ステイホルダー12
断熱ステイホルダー12は、加熱用ヒータ11を保持し、定着ニップ部Nと反対方向への放熱を防ぐための断熱部材であり、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成される。この断熱ステイホルダー12には金属製スリーブ13が余裕をもってルーズに外嵌されており、金属製スリーブ13は矢印の方向に回転自在に配置されている。
【0213】
また、金属製スリーブ13は内部の加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と摺擦しながら回転するため、加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12と金属製スリーブ13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。このため加熱用ヒータ11および断熱ステイホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤が少量介在されている。これにより金属製スリーブ13はスムーズに回転することが可能となる。
【0214】
d)加圧部材20
加圧部材20は、芯金21の外側に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムあるいはシリコーンゴムを発泡して形成された弾性層22からなるローラ部材であり、弾性層22の上にPFA、PTFE、FEP等からなる離型性層23が形成されていてもよい。
【0215】
図4に示すように、定着部材10は、断熱ステイホルダー12の一部に直接、または断熱ステイホルダーに嵌合等により取り付けられた部材を介して設けられたバネ等の加圧手段17により、加熱定着に必要な定着ニップ部Nを形成するべく長手方向両端部から加圧部材20に対して十分に加圧されている。また、加圧部材20の芯金21の端部に取り付けられた駆動ギア16により加圧部材20を回転駆動し、加圧ローラ表面と金属製スリーブ13表面の摩擦により該金属製スリーブ13を所定の速度で従動回転させる。
【0216】
以上が加熱定着装置6の構成であるが、図2において記録材Pは不図示の供給手段によって適宜供給され、耐熱性の定着入口ガイド15に沿って加熱部材10と加圧部材20によって形成される定着ニップ部Nに搬送される。そして、加圧部材20および金属製スリーブ13の回転によって記録材Pが定着ニップ部Nを通過することにより、記録材P上に未定着画像が定着され、定着画像が得られる。
【0217】
e)金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ等について
ここで金属製スリーブ13の内外面の表面粗さ、離型性層の厚さ等に関して以下に説明する。
【0218】
まず、金属製スリーブ13の内面は上記加熱用ヒータ11と所定の接触幅をもって接触することで加熱用ヒータ11より発生した熱を定着ニップ部Nへ伝熱する必要があり、従来使用されてきた輻射熱による加熱を行う熱ローラ定着装置(図10参照)とは思想が異なる。よって加熱用ヒータ11と接触伝熱する金属製スリーブ13内面の表面粗さは、熱効率に大いに影響する。特に加熱用ヒータ11の摺動層(図3の11cまたは図5の11e)の表面と金属製スリーブ13の内面との接触熱抵抗が大きくなると、熱効率が悪化し、定着不良を起こしてしまう。仮に熱伝導グリース等を介在させた場合でも熱効率の高い加熱定着装置を構成するためには、所定以下の表面粗さに抑えることが好ましい。
【0219】
また、上述したように、金属製スリーブ13の外面には離型性層が形成されているが、離型性層は一般にフッ素樹脂より形成されるため、その熱伝導性は金属製スリーブ13の熱伝導性に比べて極端に低い。よって、離型性層をあまり厚く形成すると、熱伝導の悪化を招き画像形成装置の高速化に対し、定着ニップ部Nで記録材P上のトナー像に対し十分な熱供給ができなくなる。よって薄い離型性層を金属製スリーブ13上に形成する必要がある。このとき、金属製スリーブ13外面の表面粗さは所定以下に抑えることが好ましい。すなわち、離型性層を薄くした場合には、金属製スリーブ13外面の表面粗さを離型性層によって緩和する効果が得られないため、金属製スリーブ13外面に離型性層を塗布形成した後の表面粗さは金属スリーブ13素管の表面粗さと同等か若干小さい粗さのものとなる。よって、金属製スリーブ13素管の表面粗さが大きいと離型性層を塗布形成後も大きな表面粗さとなり、定着ニップ部Nで記録材Pとの密着力が得られず、定着不良を引き起こす可能性が大きくなる。
【0220】
以上のことから、金属製スリーブ13の外面の表面粗さを所定以下とし、且つ接着層としてのプライマー層を含み離型性層を所定以下の厚みで塗布形成することにより、十分な定着性能が得られ、画像形成装置の高速化に対応可能となる。
【0221】
また、金属製スリーブ13に周方向に所定以下の表面粗さを有する凹凸形状を施すことにより、金属製スリーブ13の回転をよりスムーズにすると共に加熱用ヒータ11の表面にコーティングした離型性層を傷つけにくくする。これによりさらに高耐久の高速対応可能な加熱定着用金属製スリーブ13を提供することができる。
【0222】
以下、図6〜図8を参照して、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13の製法を示す。まず、図6において、31は金属製スリーブ13の基材であり、0.1〜0.5mm程度のSUS、Al、Ni、Cu、Zn等が単独ないしは2種以上の合金状態で形成される金属平板(プランク)である。32は一般的な深絞り製法における円形内型(ポンチ)、33は円筒容器状の外型(ダイス)であり、それぞれ金属材料の表面に超硬メッキ等を施した金型である。図6において、金属平板31を内型32と外型33の間に挟み矢印の方向に内型32を外型33の方向へ押し込む。また、金属平板31と外型33の間には粘度の高い潤滑油、あるいは黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を介在させ、絞り性を良くしてある。以上の工程を通常は2〜4回程度、異なる金型で深絞り加工することにより、図7に示すようなカップ状の金属製円筒部材34を製造する。
【0223】
次に、この金属製円筒部材34が所定の厚みに形成されるようにしごき加工を施す。しごき加工としては、圧延加工、引き抜き加工、絞り加工等どのような加工を途中に経緯してもよいが、最終加工としては、以下に示すような加工方法により金属製スリーブの周方向に所定以下の凹凸を有する加工を施す。例えば、図8の(a)および(b)に示すような加工方法が用いられる。
【0224】
まず、図8の(a)は一般的な絞りスピニング加工を示すものである。図8(a)において、固定台36cに取り付けられた軸36bに回転自在に取り付けられた押し当てローラ36aを、金属製内型35と所定の距離だけ常に離間した状態で金属製内型35方向へ押し付けられるようになっている。金属製内型35に、上記カップ状に深絞り加工を施した金属製円筒部材34がはめ込まれ、押さえ部材37によって金属製円筒部材34のカップ形状底部が金属製内型35に密着状態で固定される。この状態で金属製内型35、金属製円筒部材34、押さえ部材37を図の矢印Aの方向に回転させながら、紙面右方(図8の矢印B方向)へ徐々に送り込む。端部からは金属製内型35と所定距離を保って回転自在のローラ36aが押し当てられる。
【0225】
これにより、金属製円筒部材34がしごき加工により端部から徐々に薄肉化され、最終的には図8(c)に示すように本実施例における金属製スリーブ13の所定厚さにまで加工されたカップ状の金属製円筒部材39が形成される。
【0226】
金属製円筒部材39には、周方向に絞りスピニング加工時のローラ押し当ての凹凸跡39aが残る。最終的には、金属製円筒部材39のカップ形状底部を切り落とすことにより、周方向に適度な凹凸を有する金属製スリーブ13を得る。
【0227】
また、図8(b)に示すように、押し当てローラ36aの代わりに段階的に内径が小さく形成された連続ダイス38a、38b、38cを用い、金属製内型35と押さえ部材37により固定された金属製円筒部材34を回転させながら送り込みしごき加工を行って、金属製円筒部材34を薄肉化しながら周方向の凹凸形状を付与させる方式であっても良い。
【0228】
その他、へら絞り加工等、金属製スリーブ13の周方向に所定量以下の凹凸を形成できる方法であれば、どのようなしごき加工の加工方法であっても構わない。
【0229】
以上の製法で製造した金属製スリーブ13を用いて、未定着トナー画像が形成された記録材Pを加熱定着する場合、熱伝導の観点から、上記周方向の凹凸は3μm以下に抑えることが好ましい。
【0230】
金属製スリーブ13の周方向に3μm以下の凹凸を形成し、好ましくは、長手方向の表面粗さRzを3μm以下とし、周方向の表面粗さRz'との関係をRz>Rz'とすることで、加熱定着装置の回転駆動を低く抑え、回転をスムーズにすると共に、耐久的な使用による金属製スリーブ内面に接触する加熱用ヒータの樹脂コートを傷つけにくくし、加熱定着装置のさらなる高耐久、高速化を達成することが可能になる。
【0231】
さらに、金属製スリーブ13と加圧部材である加圧ローラ20の間に電位差を形成し、かつ金属製スリーブ13を接地状態、もしくはダイオードを介して接地状態とすることで金属製スリーブ13に紙粉やトナーを付着しにくい構成とすることで、耐久使用を通じて離型性を維持する加熱定着装置を提供することが可能になる。
【0232】
金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図を図9(a)に、図9(a)のII−II線に沿った模式的断面図を図9(b)に、それぞれ示す。図9において、加圧部材である加圧ローラ20の導電性弾性層22は、導電性シリコーンゴム、導電性シリコーンスポンジ等からなる導電性が付与された弾性層であり、加圧ローラ芯金21または導電性弾性層22に、導電性カーボンチップ等よりなるチップ電極25を介してバイアス印加手段24によってトナー像と逆極性のバイアスを印加する。
【0233】
図では、トナーが現像部でマイナス帯電される画像形成装置を元に図示しており、加圧ローラ芯金部21には、プラスバイアスが印加される構成となっている。
【0234】
よってトナーが現像部でプラス帯電される画像形成装置の場合、加圧ローラ芯金21には、マイナスバイアスが印加される構成となる。
【0235】
また、金属製スリーブ13の端部では、接着層としてのプライマー層、フッ素樹脂層からなる離型性層がコーティングされていない金属製スリーブ素材がむき出しになっている部位13aを設け、この部位13aよりアモルファス導電繊維よりなる導電ブラシ18を介して接地状態に構成されている。
【0236】
または、トナー像と同電位の電荷が金属製スリーブ13に保持されるようにダイオード接続されていても良い。
【0237】
以上の構成により、加圧ローラ20側に積極的にバイアス印加する構成とすることで、金属製スリーブ13には紙粉、トナー等が吸着されにくくなる。よってパルプ材を主原料とするカット紙等に形成されたトナー像を加熱定着する場合の上記加熱定着装置においては、表面粗さRz=3μm以下とした金属製スリーブ13の表面の離型性層には、静電気的にも紙粉やトナーの汚染が発生しづらく、耐久的な使用によって離型性が損なわれることがないため、長寿命の加熱定着装置が提供される。
【0238】
なお、本発明に用いられる定着手段は、定着部材の離型性を維持するためのオイルを定着部材に塗布するオイル塗布方式の定着手段であっても良いし、オイルレス系の定着手段であっても良く、これらの方式の違いによらず同様に効果を奏する。
【0239】
また、本発明に用いられる定着手段において、加熱用部材は、通電により発熱するものであれば、通電時の抵抗によって発熱するものに限定されず、例えば通電時の電磁誘導によって発熱する電磁誘導発熱性部材によって形成することもできる。
【0240】
また、本発明に用いられる定着手段は、記録材上のトナーの加熱に広く適用することが可能であり、例えば記録材上の画像を仮定着処理する像加熱装置、つや等の画像表面性を改質する像加熱装置等にも適用することができる。
【0241】
また、前述した実施の形態では、定着部材10を加圧部材20に向けて付勢する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、加圧部材20を定着部材10に向けて付勢しても良く、また定着部材10および加圧部材20の両方を互いに接近する方向に付勢しても良い。
【0242】
また、前述した実施の形態では、バネに代表されるような、充分な付勢力を発現する加圧手段17による付勢によって定着ニップ部Nを形成する構成を示したが、本発明はこの構成に限定されず、定着部材10と加圧部材20の位置を固定して所望の定着ニップNを形成しても良い。
【0243】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0244】
〈ワックス〉
実施例及び比較例で使用した各ワックスA〜Iの物性を表1に示す。また、ワックスAのDSC測定により得られた昇温曲線を図12に示す。
【0245】
【表1】
【0246】
次に、トナーに用いられる結着樹脂を以下のように調製した。
【0247】
〈結着樹脂の製造例1〉
[低分子量重合体(L−1)の合成]
4つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。この還流下で、スチレン75質量部、アクリル酸−n−ブチル18質量部、マレイン酸モノブチル7質量部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部の混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持して重合を完了し、低分子量重合体(L−1)溶液を得た。
【0248】
[高分子量重合体(H−1)の合成]
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル25質量部、マレイン酸モノブチル5質量部、ジビニルベンゼン0.005質量部、及び2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間、温度;92℃)0.1質量部の混合液を加え、攪拌して懸濁液とした。
【0249】
フラスコ内を十分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して重合を開始した。同温度に24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間、温度;72℃)0.1質量部を追加添加した。さらに、12時間保持して重合を完了した。その後、得られた高分子量重合体(H−1)を濾別し、水洗、乾燥させた。
【0250】
[結着樹脂の製造例1]
4つ口フラスコ内に、キシレン100質量部、上記高分子量重合体(H−1)25質量部を投入し、昇温して還流下で攪拌し、予備溶解を行った。この状態で12時間保持し、予備溶解液(Y−1)を得た。
【0251】
一方、別容器に上記低分子量重合体(L−1)の均一溶液300質量部を投入し、還流させた。上記予備溶解液(Y−1)と低分子量重合体(L−1)溶液を還流下で混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後粉砕してトナー用結着樹脂(I)を得た。
【0252】
上記結着樹脂(I)を分析したところ、GPCにより得られた分子量分布におけるメインピークはMw(重量平均分子量)=15600、サブピークがMw=114万、THF不溶分は2.1質量%、酸価は21mgKOH/gであった。結着樹脂(I)の分子量分布等の物性を表2に示す。
【0253】
[低分子量重合体(L−2)の合成]
4つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。この還流下で、スチレン75質量部、アクリル酸−n−ブチル18質量部、マレイン酸モノブチル7質量部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド2.5質量部の混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持して重合を完了し、低分子量重合体(L−2)溶液を得た。
【0254】
[低分子量重合体(L−3)の合成]
4つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。この還流下で、スチレン75質量部、アクリル酸−n−ブチル18質量部、マレイン酸モノブチル7質量部及びジ−tert−ブチルパーオキサイド1.5質量部の混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持して重合を完了し、低分子量重合体(L−3)溶液を得た。
【0255】
[高分子量重合体(H−2)の合成]
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル25質量部、マレイン酸モノブチル5質量部、ジビニルベンゼン0.003質量部、及び2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間、温度;92℃)0.15質量部の混合液を加え、攪拌して懸濁液とした。
【0256】
フラスコ内を十分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して重合を開始した。同温度に24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間、温度;72℃)0.15質量部を追加添加した。さらに、12時間保持して重合を完了した。その後、得られた高分子量重合体(H−2)を濾別し、水洗、乾燥させた。
【0257】
[高分子量重合体(H−3)の合成]
4つ口フラスコにスチレン85質量部、メタアクリル酸ブチル15質量部を投入し、塊状重合させた後、キシレンを添加して溶媒存在下で溶液重合を完了し、高分子量重合体(H−3)を得た。
【0258】
[結着樹脂の製造例2〜4]
結着樹脂の製造例1において、高分子量重合体H−1〜H−3と低分子量重合体L−1〜L−3を表2に示すように組み合わせた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いて結着樹脂II〜IVを得た。得られた結着樹脂II〜IVの分子量分布等の物性を表2に示す。
【0259】
[結着樹脂の製造例5]
結着樹脂の製造例1の低分子量重合体(L−1)の合成において、マレイン酸モノブチルを使用せず、ジビニルベンゼンを用い且つ開始剤量を調整した以外は上記L−1の合成方法と同様の方法を用いてGPC測定による分子量分布におけるピークが一つの結着樹脂(V)を得た。得られた結着樹脂Vの分子量分布等の物性を表2に示す。
【0260】
【表2】
【0261】
〈実施例1〉
結着樹脂(I) 100質量部
マグネタイト(平均粒径0.25μm) 100質量部
モノアゾ鉄錯体 2質量部
ワックスA 3質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、120℃に設定した二軸混練押し出し機によって混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕した。得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均径6.8μmの負帯電性磁性トナーを得た。このトナー100質量部に負帯電性疎水性シリカ0.8質量部をヘンシェルミキサーで外添混合してトナー1を得た。トナー1のTHF不溶分量、THF可溶成分のGPC測定により得られる分子量分布におけるピーク分子量、120℃における溶融粘度、タップ密度から求めた空隙率を表3に示す。
【0262】
この磁性トナー1の定着試験、オフセット試験、保存性試験、現像耐久試験、加圧部材汚れ及び端部濃度薄の評価を以下の方法により行った。
【0263】
実験に用いた加熱定着装置の基本的構成として、加熱用ヒータ11としては、図5に示す構成のものを用いた。即ち、AlNからなる基板11aを用い、このヒータ基板11aの定着ニップ部Nが形成される面の反対側の面に、通電発熱抵抗層11bを形成した。この通電発熱抵抗層としては、Ag/Pdの導電剤とマトリックス成分としての燐酸系ガラスの混合物を有機溶剤、バインダー、分散剤等と混合してペースト状にしたものをスクリーン印刷して600℃で焼成したものを用いた。また、AlNのヒータ基板11aの定着ニップ部N側の面には摺動性の良好なポリイミドからなる摺動層11eを10μmの厚さでスクリーン印刷して形成した。
【0264】
また、金属製スリーブ13(図2参照)として、内径30mm、厚み50μmの円筒状ステンレス鋼にプライマー層を5μm、PFA樹脂を10μmディッピングによって塗布し、外径30.13mmの円筒状に形成したものを用いた。金属製スリーブ13の内面の表面粗さRzを2μm、外面の表面粗さRzを2μmとした。
【0265】
また、加圧ローラ20(図2参照)は、φ20mmのAl芯金21に、シリコーンゴム層を厚み5mmで形成し、さらに外層にPFAチューブを被覆したものを用いた。
【0266】
[定着性及びオフセット試験]
実験では、画像形成装置の記録材搬送スピードが200mm/secとなるように調整して、加熱用ヒータ11による温度調節を任意に設定できるようにし、加熱用ヒータ11の通電発熱抵抗層11bへの通電を開始してから6秒後に未定着トナー像が形成された記録材Pを定着ニップ部Nに挿入し、各項目に対して確認した。
【0267】
定着試験は、110〜220℃の範囲で金属製スリーブ中心部の温度を5℃おきに調節し、それぞれの温度で75g/m2紙を用いた未定着画像の定着を行い、得られた画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が5%以下になる点を定着温度とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。
【0268】
高温オフセット性については、上記定着試験で画像上にオフセット現象による汚れが発生した温度を目視で確認した。この温度が高いほど高温オフセット性に優れたトナーである。
【0269】
低温オフセット性については、上記定着試験で画像上にオフセット現象による汚れが発生した温度を目視で確認した。この温度が低いほど低温オフセット性に優れたトナーである。
【0270】
[耐久現像試験]
市販のレーザービームプリンタLaserJet 4000(A4、16枚/分:Hewlett Packard社製)を改造して上記定着方式による定着装置を組み込み、A4サイズの画像面積率5%の原稿を用い、A4サイズの75g/m2の転写紙に低温低湿(15℃、10%RH)、高温高湿(32.5℃、80%RH)環境でそれぞれ5000枚の画出し試験を行い、試験後のベタ黒画像の画像濃度を測定した。低温低湿環境についてはベタ白画像のカブリも測定を行った。画像濃度はマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して反射濃度の測定を行い、5点平均で算出した。カブリは反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて測定し、ベタ白部反射濃度の最悪値から、画像形成前の転写材の反射平均濃度を引いたものをカブリ量とした。
【0271】
[保存性]
トナー10gを50mlのポリカップに入れ、50℃の恒温槽に5日間安置し、その時のトナーのブロッキング程度を評価した。
【0272】
A:トナーの流動性は変わらない
B:流動性は悪化しているがすぐ回復する
C:凝集体がある
D:ブロッキングしている
【0273】
[加圧部材汚れ]
耐久現像試験で用いた改造機を使用し、75g/m2のA4サイズの転写紙に画像面積率5%の原稿を低温低湿環境で3枚連続プリント後10分間停止するというプリントモードで、1000枚の画出し試験を行い、試験後の定着器の加圧部材の汚れの程度と、転写紙に黒ポチ等の汚れが出ているかを目視で評価した。
【0274】
A:加圧部材に汚れが全く無い
B:加圧部材にわずかに汚れがあるが、転写紙には汚れは出ていない
C:転写紙1枚あたりに1〜3点の汚れが出ている
D:転写紙1枚あたりに4〜6点の汚れが出ている
E:転写紙1枚あたりに7〜10点の汚れが出ている
F:転写紙全体にひどい汚れがある
【0275】
[端部濃度薄]
定着性及びオフセット試験で用いた上記定着方式による外部定着装置を用い、定着温度190℃、プロセススピードを200mm/sec、加圧力を78N、ニップが6mmとなるように設定し、75g/m2紙を用いた均一なベタ黒未定着画像の定着を行い、得られた画像の両端から1cmの部分の画像濃度6点の平均を端部濃度とし、中央部の画像濃度3点の平均から引いた濃度差を端部濃度薄として評価した。
【0276】
画像濃度はマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して反射濃度の測定を行った。濃度差が小さいほど濃度均一性に優れたトナーである。
【0277】
A:濃度差 0以上0.02未満
B:濃度差 0.02以上0.05未満
C:濃度差 0.05以上0.10未満
D:濃度差 0.10以上0.15未満
E:濃度差 0.15以上0.20未満
F:濃度差 0.20以上
【0278】
各試験の評価結果を表4に示す。表4から分かるように、良好な定着特性、耐久特性、保存性が得られ、加圧部材汚れ及び端部濃度薄の発生もなかった。
【0279】
〈実施例2〜10〉
実施例1において、結着樹脂とワックスを表3に示す様に変えた以外は実施例1と同様の方法を用いてトナー2〜10を得た。得られたトナー2〜10について実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0280】
〈実施例11〉
実施例1のトナー製造時の粉砕、分級条件を変更して重量平均径10.2μmの負帯電性磁性トナーを得た。このトナー100質量部に負帯電性疎水性シリカ0.6質量部をヘンシェルミキサーで外添混合してトナー11を得た。得られたトナー11について実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0281】
〈実施例12〉
実施例1のトナー製造時の粉砕、分級条件を変更して重量平均径4.1μmの負帯電性磁性トナーを得た。このトナー100質量部に負帯電性疎水性シリカ1.2質量部をヘンシェルミキサーで外添混合してトナー12を得た。得られたトナー12について実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0282】
〈比較例1〜3〉
実施例1において、結着樹脂とワックスを表3に示す様に変えた以外は実施例1と同様にして、トナー13〜15を得た。得られたトナー13〜15について実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0283】
【表3】
【0284】
【表4】
【0285】
【発明の効果】
本発明によれば、現像性、低温定着性、高温オフセット性、低温オフセット性に優れ、かつ加圧部材汚れや端部濃度薄の発生の防止に特に優れた性能を示すトナー及び画像形成方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図
【図2】 加熱定着装置6の概略構成図(横断面模型図)
【図3】 図2の定着ニップ部近傍の部分的拡大図
【図4】 加熱定着装置の縦断面図(図2のI−I線に沿った模式的断面図)
【図5】 加熱用ヒータの他の実施形態を表す部分的模式図
【図6】 金属製スリーブ製造方法である深絞り加工の説明図
【図7】 製造途中の金属製スリーブの形状を説明する図
【図8】 (a)と(b)は金属製スリーブ製造方法であるしごき加工の説明図、(c)はしごき加工終了時の金属製スリーブ形状の説明図
【図9】 金属製スリーブ13と加圧ローラ20の間に電位差が設けられた加熱定着装置の模式的断面図
【図10】 従来技術の加熱定着装置(定着ローラ方式)の概略構成図
【図11】 従来の加熱定着装置(定着フィルム方式)の概略構成図
【図12】 ワックスAのDSC測定図
【符号の説明】
11 加熱用ヒータ
12 断熱ステイホルダー
13 金属製スリーブ
14 温度検知素子
20 加圧部材
24 バイアス印加手段
Claims (12)
- 記録材上にトナーからなる未定着トナー画像を形成し、このトナー画像を前記記録材上に定着させることにより前記記録材上に画像を形成する画像形成方法であって、
前記未定着トナー画像を定着手段によって前記記録材上に定着する定着工程を含み、
前記定着手段は、可撓性の円筒状金属素管を基層とする加熱用金属製スリーブと、該加熱用金属製スリーブの内面に接触配置され前記加熱用金属製スリーブを加熱する加熱用部材と、前記加熱用金属製スリーブを介して前記加熱用部材に圧接され且つ前記加熱用金属製スリーブと平行な回転軸を有する回転可能な加圧部材と、を少なくとも有し、
前記加熱用金属製スリーブの長手方向の表面粗さRzが3μm以下、周方向の表面粗さRz’が3μm以下、RzとRz’の関係がRz>Rz’であり、
前記加熱用金属製スリーブと前記加圧部材とが互いに圧接されることにより定着ニップ部が形成され、
前記加熱用金属製スリーブは前記加圧部材の回転に連動して回転し、未定着トナー画像が形成された記録材を前記定着ニップ部を通過させることにより、前記未定着トナー画像を前記記録材上に定着させ、
前記未定着トナー画像を構成するトナーは結着樹脂とワックスとを少なくとも含有し、
前記トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィによって得られるクロマトグラムにおいて、分子量3.0×103〜3.0×104の領域にメインピークを有し、かつ分子量1.0×105〜3.0×106の領域にサブピークまたはショルダーを有し、
前記ワックスの示差熱分析により測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜120℃であり、
前記トナーのタップ密度から求めた空隙率が0.4〜0.7であることを特徴とする画像形成方法。 - 前記ワックスのE型粘度計で測定される120℃における溶融粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
- 前記ワックスのE型粘度計で測定される120℃における溶融粘度が1〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
- 120℃における粘度が1×103〜5×105Pa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜100℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピークトップ温度が70〜80℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピーク半値幅が12℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける最大吸熱ピークのピーク半値幅が8℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける始点オンセット温度が50℃以上であり、終点オンセット温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記ワックスの示差熱分析で測定される昇温時の吸熱ピークにおける始点オンセット温度が60℃以上であり、終点オンセット温度が90℃以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記タップ密度から求めた空隙率が0.45〜0.65であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の画像形成方法。
- 前記結着樹脂の酸価が0.1〜100mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の画像形成方法。
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