JP4035453B2 - 構造体、構造体の製造方法、及び該構造体を用いたデバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、柱状部材を含む構造体、その製造方法、及び当該構造体を用いたデバイスに関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、機能性材料としての微細構造体への関心が高まっている。
【0003】
こうした微細構造体の作製手法としては、フォトリソグラフィーなどの微細パターン形成技術を代表される半導体加工技術によって直接的に微細構造体を作製する手法が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、上述の半導体加工技術とは別に、材料の自己組織化(self−organization)現象あるいは自己形成化現象を利用する手法がある。即ち、自然に形成される規則的な構造をべースに、新規な微細構造体を実現しようというものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−55545号公報(第3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この自己組織化現象あるいは自己形成化現象を利用する手法では、ミクロンオーダーは勿論、ナノオーダーの構造体を実現できる可能性があるため、多くの研究が行われているものの新規な微細構造体の提供やその製造方法の確立が求められていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、新規な構造体、その製造方法、及びそれを利用した装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る構造体は、第1の材料と第2の材料(該第2の材料がGeのみである場合を除く。)を含み構成される構造体であって、該第1の材料を含み構成される柱状の部材が、該第2の材料を含み構成される領域に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記第1の材料は、例えばアルミニウムであり、前記第2の材料は、例えばシリコンやシリコンとゲルマニウムの混合物である。前記柱状部材の平均径は、例えば50nm以下であり、互いに隣り合う前記柱状の部材同士の中心間距離が例えば30nm以下である。
【0010】
また、本発明に係る構造体の製造方法は、基板を用意する工程、及び該基板上に非平衡状態で成膜し、第1の材料を含み構成される柱状の部材と、第2の材料(該第2の材料がGeのみである場合を除く。)を含み構成され該柱状の部材を取り囲む領域とを有する構造体を形成する工程を含み、該構造体に該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれるように該構造体を形成することを特徴とする。
【0011】
また、前記構造体を利用した電子デバイスを提供することができる。例えば、前記構造体上に絶縁領域等を形成することにより実現される。ここでいう、電子デバイスとは、たとえば、単電子トランジスタ、あるいは単電子メモリであり、更には、それらを備えた情報処理装置をも含むものである。
【0012】
また、本発明に係るアルミニウムシリコン混合体は、膜状のアルミニウムシリコン混合体であって、アルミニウムを含み構成される柱状構造体と該柱状構造体を取り囲むシリコン領域を有し、且つ該混合体にはシリコンが20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体は、膜状のアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体であって、アルミニウムを含み構成される柱状構造体と該柱状構造体を取り囲むシリコンゲルマニウム領域を有し、且つ該混合体にはシリコンとゲルマニウムの総量が20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る構造体は、複数の柱状の部材、該複数の柱状の部材の側面を取り囲む領域を備えている構造体であって、該柱状の部材は20nm未満の径を有し、且つ該複数の柱状の部材間の中心間距離が30nm以下であることを特徴とする。また、本発明に係る構造体は、アルミニウムを含み構成される柱状の部材と該柱状の部材を取り囲む領域とが同時に形成され、且つ該柱状の部材は20nm未満の径を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る柱状の部材を含む構造体(例えばアルミニウムシリコン混合体)は、種々の母材として応用が考えられ、例えば単電子トランジスタや単電子メモリなど様々な量子デバイスに適用できる。
【0016】
以下具体的に、本発明について説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本発明に係る構造体に関して、図1を用いて説明する。
【0018】
図は、柱状構造体1が、それを取り囲む領域2に分散している状態を示しており、図1(a)及び(b)はそれぞれ、上面図と断面図である。3は基板である。
【0019】
図中の構造体100は、第1の材料を含み構成される柱状の部材1が、第2の材料を含み構成される領域2に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれている。後述の実施例で示すように、本発明者らが検討した結果、上記割合の範囲であれば、実質的に柱状の部材がそれを取り囲むマトリックス領域に分散した構造体の提供が可能であった。なお、構造体が形成される下地の基板形状にもよるが、該基板形状が水平であれば柱状の部材は、当該基板にほぼ垂直な配置をとる。
【0020】
上記割合は、構造体を構成する前記第1の材料と第2の材料の全量に対する前記第2の材料の割合のことであり、好ましくは25atomic%以上65atomic%以下、より好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。上記割合は例えば誘導結合型プラズマ発光分析法で定量分析することにより得られる。
【0021】
なお、実質的に柱状形状が実現していればよく、例えば柱状に部材の成分として第2の材料が含まれていてもよいし、前記領域に第1の材料が含まれていてもよい。また、上記柱状の部材やその周囲の領域に酸素、アルゴンなどの不純物が含まれていてもよい。
【0022】
ここで第1の材料としては、AlやAuなどが挙げられる。第2の材料としては、Si、Ge、SiとGeの混合物(以降、SixGe1−x(0<x<1)と記載することがある。)、あるいはCなどが挙げられる。特に第2の材料としては、非晶質となり得る材料であることが望ましい。
【0023】
また、第1及び第2の材料としては、両者の成分系相平衡図において、共晶点を有する材料(いわゆる共晶系の材料)であることが好ましい。特に共晶温度が300℃以上好ましくは400℃以上であるのがよい。なお、共析系の材料を用いることも出来る。
【0024】
なお、第1の材料と第2の材料として好ましい組み合わせとしては、第1の材料としてAlを用い、第2の材料としてSiを用いる形態、あるいは第1の材料としてAlを用い、第2の材料としてSixGe1−x(0<x<1)を用いる形態が挙げられる。
【0025】
前記柱状の部材は、少なくとも一部が多結晶であり、前記柱状の部材を取り囲む領域は、非晶質であることが望ましい。前記柱状の部材の平面形状としては円形あるいは楕円形状である。
【0026】
前記構造体には、前記第2の材料を含み構成されるマトリックス中に複数の前記柱状の部材が分散していることになる。柱状の部材の径(平面形状が円の場合は直径)は、主として前記構造体の組成(即ち、前記第2の材料の割合)などに応じて制御可能であるが、その平均径は、0.5nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上20nm以下、さらに好ましくは2nm以上10nm以下である。特に20nm未満の径であることが好適である。ここでいう径とは図1(b)における2rである。なお、楕円等の場合は、最も長い外径部が、上記範囲内であればよい。ここで平均径とは、例えば、実際のSEM写真(約100nm×100nmの範囲)で観察される柱状の部分を、その写真から直接、あるいはコンピュータで画像処理して、導出される値である。もっとも、用いる材料や組成あるいは、構造体の用途によって最適な径や下記間隔は変動し得る。
【0027】
また、複数の柱状の部材間の中心間距離2R(図1(b))は、2nm以上30nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下、更に好ましくは5nm以上15nm以下である。勿論、中心間距離の下限として上記2Rは柱状構造体どうしが接触しない間隔は最低限備えている必要がある。なお、上記第2の材料(即ち、柱状の部材を取り囲む領域の構成材料)として、複数の元素の混合物(例えば、SixGe1−x)を用いれば、その混合比の割合によっても上記中心間距離の制御が可能となる。また、ここで柱状の部材間の中心間距離とは、互いに隣り合う柱状の部材同士の中心間距離である。
【0028】
また、前記構造体は、膜状の構造体であることが好ましく、かかる場合、前記柱状の部材は膜の面内方向に対して略垂直になるように前記第2の材料を含み構成されるマトリックス中に分散していることになる。膜状構造体の膜厚としては、特に限定されるものではないが、1nm〜100μmの範囲で適用できる。プロセス時間等を考慮してより現実的な膜厚としては、1nm〜1μm、あるいは1nm〜3μm、程度である。特に300nm以上の膜厚でも柱状構造が維持されていることが好ましい。また、柱状の部材は、厚さ方向(長さ方向)に対しては、実質的に分岐をもたない構造が好ましい。
【0029】
前記構造体は膜状の構造体であることが好ましく、基板上に当該構造体が設けられていてもよい。基板としては、特に限定されるものではないが、絶縁物や表面に絶縁層を有する基板であったり、石英ガラス、強化ガラス、結晶化ガラス、ガラスなどの絶縁性基板、シリコン基板、ガリウム砒素、あるいはインジウム燐などの半導体基板、アルミニウムなどの金属基板あるいは支持部材としての基板上に上記構造体が形成できるのであれば、フレキシブル基板(例えばポリイミド樹脂など)も用いることができる。なお、シリコン基板の場合は、P型、N型、高抵抗基板、あるいは低抵抗基板など適宜用いることが出来る。
【0030】
なお、前記構造体上に更に絶縁膜などを形成することにより、電子デバイスを提供することができる。ここでいう、電子デバイスとは、量子ドット、量子細線、量子細線トランジスタ、単電子トランジスタ、あるいは単電子メモリなどであり、更には、それらを備えた情報処理装置をも含むものである。
【0031】
本発明における上述した構造体(以下、混合体という場合もある。)は、種々の母材として応用が考えられ、例えば単電子トランジスタや単電子メモリなど様々な量子デバイスや微小電極等に適用できる。
【0032】
また、本発明おける上記構造体(例えばアルミニウムシリコン混合体)を、別の基板あるいは基板上の膜を加工する目的で、ドライエッチング用あるいはウエットエッチング用マスクとして使用することもできる。
【0033】
また、本発明は、量子ドットや量子細線などの柱状構造体をさまざまな形態で応用することを可能とするものであり、その応用範囲を著しく広げるものである。本発明における構造体は、それ自体機能材料として使用可能である。
【0034】
(製造方法)
前記構造体は、非平衡状態で成膜する方法を利用して作製することができる。当該成膜方法としては、スパッタリング法が好ましいが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、イオンプレーティング法をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。スパッタリング法で行う場合には、マグネトロンスパッタリング、RFスパッタリング、ECRスパッタリング、DCスパッタリング法を用いることができる。スパッタリング法で行う場合は、アルゴンガス雰囲気中で反応装置内の圧力を0.2から1Pa程度、あるいは0.1から1Pa程度にして成膜を行う。スパッタリングの際には、ターゲット原料として前記第1の材料と第2の材料をそれぞれ別途用意しても良いが(例えば、アルミニウムとシリコンが分離されたターゲット材料を用いる。)、予め所望の割合で第1の材料と第2の材料が焼成されたターゲット材料を用いてもよい。本実施形態に係る構造体は、柱状の部材とその側面を取り囲む領域とが同時に形成されることになる。なお、膜が成長する基板に、プラズマが接しない状態でスパッタリングを行うことも好ましい。
【0035】
また、本発明に係る構造体は、所定膜厚以上成膜しても、前記柱状構造の部材の側面がそれを取り囲む領域に分散した状態が維持できるものである。即ち、膜厚が厚くなっても、膜厚方向に対して、柱状構造体の径が大きく変化しないのである。前記所定膜厚とは、110nm以上、より好適には300nm以上である。
【0036】
基板上に形成される前記構造体は、基板温度が300℃以下で作製可能であり、好適には、20℃以上200℃以下、より好適には100℃以上150℃以下であることが特に好ましい。
【0037】
(実施形態2:アルミニウムシリコン混合体の場合)
上記実施形態で説明した図1を再度利用して、第1及び第2の材料を、それぞれアルミニウム、シリコンとした場合の構造体について説明する。
【0038】
図1(a)は、本発明に係るアルミニウムシリコン混合体の模式的平面図である。また、図1(b)は、図1(a)の破線AA’に沿って試料を切断した場合の模式的断面図である。図1において、1はアルミニウムを含む柱状構造体、2は、該柱状構造体を取り囲むシリコン領域である。また、図1(b)において、3は基板である。
【0039】
基板3上に形成された、膜状のアルミニウムシリコン混合体100は、その全量に対するシリコンの割合が20atomic%以上70atomic%以下である。好ましくは、25atomic%以上65atomic%以下、さらに好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。なお、シリコンの割合が上記範囲内でれば、シリコン領域2内に柱状構造体1が分散したアルミニウムシリコン混合体が得られる。
【0040】
上記割合(atomic%)とは、例えば誘導結合型プラズマ発光分析法でアルミニウムシリコン混合体膜中のシリコンとアルミニウムの量を定量分析したときの値である。
【0041】
なお、上記割合においては、atomic%を単位として用いたが、wt%を単位として用いる場合は、20Atomic%以上70Atomic%以下の場合は、20.65wt%以上70.84wt%以下となる(Alの原子量を26.982、Siの原子量を28.086として換算している)。
【0042】
本発明におけるアルミニウムシリコン混合体100は、アルミニウムを主成分とする組成からなるアルミニウム柱状構造体と、その周囲のシリコンを主成分とするシリコン領域部を備える。
【0043】
また、アルミニウムを含有する柱状構造体部1の組成は、アルミニウムを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、シリコン、酸素、アルゴンなどの他の元素を含有していてもよい。なお、主成分とは、例えば柱状構造体部の成分構成比においてアルミニウムの割合が50atomic%以上、より好適には80atomic%以上ということである。
【0044】
また、柱状構造体の周囲を取り囲んでいるシリコン領域部の組成は、シリコンを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、アルミニウム、酸素、アルゴンなどの各種の元素を含有してもよい。なお、主成分とは、例えばシリコン領域部の成分構成比においてシリコンの割合が50atomic%以上、より好適には80atomic%以上ということである。
【0045】
なお、シリコン領域部は非晶質であることが望ましい。また、前記シリコン領域部が非晶質シリコンであることは絶縁性と言う観点からも好ましい。その理由は、非晶質シリコンは結晶質シリコンに比べて、欠陥密度が多く、さらにはバンドギャップが大きいため、柱状構造体を隔てる母体材料の電気的な絶縁性が向上するからである。
【0046】
なお、ここで用いている混合体とは、シリコン母体中にアルミニウムが遊離している状態を示している。
【0047】
(構造)
アルミニウムを含む柱状構造体1は、その膜面から見た平面形状は円形、あるいは楕円形である。勿論、シリコン領域2に前記柱状構造体1が適度に分散していれば、任意の形状であってもよい。
【0048】
本発明に係るアルミニウムシリコン混合体における柱状構造体の径としては、特に限定されるものではないが、平均径が0.5nm以上50nm以下、好ましくは0.5nm以上20nm以下、さらに好ましくは0.5nm以上10nm以下であるのがよい。ここでいう径とは図1(b)における2rである。なお、楕円等の場合は、最も長い外径部が、上記範囲内であればよい。ここで平均径とは、例えば、実際のSEM写真(約100nm×100nmの範囲)で観察されるアルミニウム部分をコンピュータで画像処理して、導出される値である。
【0049】
ところで、ナノメートルサイズのナノ構造体(概ね0.1nm〜100nmの範囲)においては、ある特徴的な長さより小さいサイズとなることで、電子の動きが閉じ込められることにより、特異な電気的、光学的、化学的性質を示すことがある。このような観点から、機能性材料としてナノ構造体は有用であり、本発明に係るアルミニウムシリコン混合体においても、当該混合体を構成する柱状構造体の径が0.5nm以上50nm以下、特に0.5nm以上10nm以下である場合には、ナノ構造体として種々の利用が可能である。
【0050】
また、複数の柱状構造体1の中心間距離2R(図1(b))は、30nm以下、好ましくは15nm以下であるのがよい。もちろん、上記2Rは柱状構造体どうしが接触しない間隔は有する。特に径2r及び中心間距離2Rが共に上記範囲内にあるのが良い。
【0051】
たとえば、前記アルミニウムナノ構造の径が1〜9nmであり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体の間隔が5〜10nmであり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体の高さと径の比が0.1〜100000であり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体が基板に対して垂直である微細構造体などが挙げられる。
【0052】
また、柱状構造体1の基板断面からみた形状は、図1(b)のように長方形形状が好ましいが、正方形や台形などの形状をとりうる。なお、柱状構造とは、任意のアスペクト比(径/長さ)を有する形状を含むものである。例えば、アスペクト比(径2r/長さL)として、0.1〜100000をとることができる。
【0053】
例えば、柱状構造の長さLとしては、1nm〜100μmの範囲で適用できる。
【0054】
特に、柱状構造体の径2rが例えば1〜10nmであり、その中心間距離2Rが5〜15nmである場合に、長さLを1nm〜数μmの範囲で制御する場合を考える。長さLが数nm〜数十nmのとき(長さと径の比が低いとき)、柱状構造体1はアルミニウム量子ドットとなり、それよりも大きい場合はアルミニウム量子細線となる。
【0055】
また、前記アルミニウム含有の柱状構造体1は、図1(b)に示されているようにシリコンを主成分とするシリコン領域部により互いに分離されている。即ち、複数の柱状構造がシリコン領域中に分散している。
【0056】
アルミニウム含有の柱状構造体1は、特定方向に整列しているのがよい。図1(b)に示すように、特に基板に対して垂直方向に整列しているのがよい。
【0057】
基板3としては、特に限定されるものではないが、石英ガラスなどの絶縁性基板、シリコン基板、ガリウム砒素、あるいはインジウム燐などの半導体基板、あるいは支持部材としての基板上にアルミニウムシリコン混合体が形成できるのであれば、フレキシブル基板(例えばポリイミド樹脂など)も用いることができる。さらには、支持基板上に一層以上の膜が形成されているものを使用してもかまわない。
【0058】
(実施形態3:アルミニウムシリコン混合体の作製方法)
図2を用いて、本発明に係るアルミニウムシリコン混合体の作製方法について説明する。ここでは、非平衡状態で成膜する方法として、スパッタリング法を用いた例を示す。なお、図2において、11が基板、12がスパッタリングターゲットである。スパッタリング法を用いる場合は、アルミニウムとシリコンの割合を簡単に変化させることができる。
【0059】
図2に示したように、基板上に、非平衡状態で物質を形成する成膜法であるマグネトロンスパッタリング法により、アルミニウムシリコン混合膜を形成する。
【0060】
原料としてのシリコン及びアルミニウムは、図2のようにアルミニウムのターゲット基板上にシリコンチップを配することで達成される。シリコンチップは、図2では、複数に分けて配置しているが、勿論これに限定されるものではなく、所望の成膜が可能であれば、1つであっても良い。但し、均一なアルミニウム含有の柱状構造体をシリコン領域内に均一に分散させるには、基板11に対象に配置しておいた方が良い。
【0061】
また、所定量のアルミニウムとシリコンとの粉末を焼成して作製したアルミニウムシリコン焼成物を成膜のターゲット材として用いることもできる。
【0062】
また、アルミニウムターゲットとシリコンターゲットを別々に用意し、同時に両方のターゲットをスパッタリングする方法を用いても良い。
【0063】
形成される膜中のシリコンの量は、アルミニウムとシリコンの全量に対して20atomic%以上70atomic%以下であり、好ましくは25atomic%以上65atomic%以下、さらに好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。
【0064】
また、基板温度としては300℃以下、好適には20℃以上200℃以下であり、さらに好ましくは100℃以上150℃以下であるのがよい。シリコン量が斯かる範囲内であれば、シリコン領域内に柱状構造体が分散したアルミニウムシリコン混合体が得られる。
【0065】
前記アルミニウムシリコン混合膜を形成しているときの試料温度は300℃以下、好適には200℃以下が好ましい。このように、300℃以下の試料温度でアルミニウムとシリコンを非平衡状態で物質を形成する成膜法で形成することにより、作製されたアルミニウムシリコン混合膜は、アルミニウムとシリコンが準安定状態の共晶型組織となり、アルミニウムが数nmレベルのナノ柱状構造体を形成し、自己形成的に分離する。
【0066】
アルミニウムシリコン混合体のシリコンの量は、例えばアルミニウムターゲット上に置くシリコンチップの量を変えることで制御できる。
【0067】
非平衡状態で成膜を行う場合、特にスパッタリング法の場合は、アルゴンガスを流したときの反応装置内の圧力は、0.2〜1Pa程度、あるいは0.1〜1Paがよい。しかし、特に、これに限定されるものではなく、アルゴンプラズマが安定に形成される圧力であればよい。
【0068】
基板11としては、例えば石英ガラスをはじめとする絶縁体基板やシリコンやガリウム砒素をはじめとする半導体基板などの基板や、これらの基板の上に1層以上の膜を形成したものが挙げられる。なお、アルミニウムシリコンナノ構造体の形成に不都合がなければ、基体の材質、厚さ、機械的強度などは特に限定されるものではない。また、基板の形状としては平滑な板状のものに限らず、曲面を有するもの、表面にある程度の凹凸や段差を有するものなどが挙げられるが、アルミニウムシリコンナノ構造体に不都合がなければ、特に限定されるものではない。
【0069】
非平衡状態で物質を形成する成膜法は、スパッタリング法が好ましいが抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、イオンプレーティング法をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。
【0070】
また、成膜のやり方としては、シリコンとアルミニウムを同時に形成する同時成膜プロセスを用いても良いし、シリコンとアルミニウムを数原子層づつ積層する積層成膜プロセスを用いてもかまわない。
【0071】
(実施形態4:アルミニウムシリコン混合体を用いた装置)
図5にアルミニウムシリコン混合体を用いた、単電子トランジスタの模式図を示す。図のようにアルミニウムを量子ドットとすることで、ゲート電極に印加した電圧を制御することによりソース・ドレイン間に流れる電流をオン・オフすることができる。これによりトランジスタとして図5のデバイスは機能する。なお、図中51は基板、52は絶縁体(例えば酸化シリコン)、53はアルミニウムシリコン混合体、54はドレイン電極、55はゲート絶縁物(絶縁膜)、56はゲート電極、57はソース電極である。勿論、柱状構造体が実現できていれば、上記53は種々の材料により作製された物を適用できる。なお、説明ではアルミニウムシリコン混合体について説明したが、柱状の部材が分散した構造が実現できるのであれば、例えばシリコンに変えて、シリコンとゲルマニウムを用いることもできる。
【0072】
このようにアルミニウムシリコン構造体を応用することで、量子効果を利用した単電子メモリ、あるいは同様な方法で単電子トランジスタなどとして利用することができる。
【0073】
また、本発明は、量子ドットや量子細線などのアルミニウムナノ構造体をさまざまな形態で応用することを可能とするものであり、その応用範囲を著しく広げるものである。本発明における構造体は、それ自体機能材料として使用可能である。
【0074】
(実施形態5:アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の構成)
図1を再度利用して、柱状の部材を構成する第1の材料としてアルミニウムを、第2の材料としてSixGe1−x(0<x<1)を用いる場合について説明する。
【0075】
図1(a)は、本発明に係るアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の模式的平面図である。また、図1(b)は、図1(a)の破線AA’に沿って試料を切断した場合の模式的断面図である。図1において、1はアルミニウムを含む柱状構造体、2は、該柱状構造体を取り囲むシリコンゲルマニウム領域である。また、図1(b)において、3は基板である。
【0076】
基板3上に形成された、膜状のアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体100は、その全量に対するシリコンとゲルマニウムの合計の割合が20atomic%以上70atomic%以下である。好ましくは、25atomic%以上65atomic%以下、さらに好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。なお、シリコンゲルマニウムの割合が上記範囲内でれば、シリコンゲルマニウム領域2内に柱状構造体1が分散したアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体が得られる。
【0077】
上記割合(atomic%)とは、例えば誘導結合型プラズマ発光分析法でアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体膜中のシリコンゲルマニウムとアルミニウムの量を定量分析したときの値である。
【0078】
なお、シリコンとアルミニウムとゲルマニウムの全量に対するシリコンとゲルマニウムの総量の割合とは、シリコンの量をSi、ゲルマニウムの量をGe、アルミニウムの量をAlとしたときに、(Si+Ge)/(Si+Ge+Al)×100で表される値のことである。つまり、Si+Ge+Alを100atomic%としたときに、その中のSi+Geの割合である。
【0079】
また、本発明のシリコンゲルマニウムナノ構造体を構成しているシリコンゲルマニウム領域のシリコンとゲルマニウムの組成比は、特に限定されるものではなく、少なくともシリコン元素とゲルマニウム元素の両方が含まれてればよい。つまり、シリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)の組成割合をSixGe1−xとしたとき、0<x<1の範囲で有ればよい。組成がこの範囲であれば、アルミニウムシリコンナノ構造体やアルミニウムゲルマニウムナノ構造体で可能なアルミニウムナノ柱状構造体の間隔あるいは径の制御よりも、広範囲にアルミニウムナノ柱状構造体の間隔等を制御することが可能となる。かかる意味では、本発明は、柱状の部材間の間隔や径の制御方法をも含むものである。
【0080】
本発明におけるアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体100は、アルミニウムを主成分とする組成からなるアルミニウム柱状構造体と、その周囲のシリコンゲルマニウムを主成分とするシリコンゲルマニウム領域部を備える。
【0081】
また、アルミニウムを含有する柱状構造体部1の組成は、アルミニウムを主成分とするが、柱状構造の微細構造体が得られていれば、シリコン、ゲルマニウム、酸素、アルゴン、などの他の元素を含有していてもよい。なお、主成分とは、例えば柱状構造体部の成分構成比においてアルミニウムの割合が50atomic%以上、より好適には80atomic%以上ということである。
【0082】
また、柱状構造体の周囲を取り囲んでいるシリコンゲルマニウム領域部の組成は、シリコンとゲルマニウムを主成分とするが、アルミニウムを含有する柱状構造の微細構造体の周囲を囲んでさえいれば、アルミニウム、酸素、アルゴン、などの各種の元素を含有してもよい。なお、主成分とは、例えばシリコンゲルマニウム領域部の成分構成比においてシリコンとゲルマニウムの合計の割合が50atomic%以上、より好適には80atomic%以上ということである。
【0083】
当該シリコン領域部は非晶質であることが望ましい。また、前記シリコンゲルマニウム領域部が非晶質シリコンゲルマニウムであることは絶縁性と言う観点からは好ましいものである。その理由は、非晶質シリコンゲルマニウムは、バンドギャップが大きく、柱状構造体を隔てる母体材料の電気的な絶縁性が高いからである。
【0084】
なお、ここで用いている混合体とは、シリコンとゲルマニウム母体中にアルミニウムが遊離している状態を示している。
【0085】
(構造)
アルミニウムを含む柱状構造体1は、膜面から見たその平面形状は円形、あるいは楕円形である。勿論、シリコンゲルマニウム領域2に前記柱状構造体1が適度に分散していれば、任意の形状であってもよい。
【0086】
本発明に係るアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体における柱状構造体の径としては、特に限定されるものではないが、平均径が0.5nm以上30nm以下、好ましくは0.5nm以上20nm以下、さらに好ましくは0.5nm以上15nm以下であるのがよい。下限値は1nmあるいは2nmでもよい。ここでいう径とは図1(b)における2rである。なお、楕円等の場合は、最も長い外径部が、上記範囲内であればよい。ここで平均径とは、例えば、実際の膜表面のSEM写真(約100nm×100nmの範囲)で観察されるアルミニウム部分をコンピュータで画像処理して、そのアルミニウム部分を楕円と仮定したとき、長軸として導出される長さの平均値である。
【0087】
ところで、ナノメートルサイズのナノ構造体(概ね0.1nm〜100nmの範囲)においては、ある特徴的な長さ(平均自由工程等)より小さいサイズとなることで、特異な電気的、光学的、化学的性質を示すことがある。このような観点から、機能性材料としてナノ構造体は有用であり、本発明に係るアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体においても、当該混合体を構成する柱状構造体の径が0.5nm以上30nm以下、特に0.5nm以上15nm以下である場合には、ナノ構造体として種々の利用が可能である。
【0088】
また、複数の柱状構造体1の中心間距離2R(図1(b))は、30nm以下、好ましくは20nm以下であるのがよい。もちろん、上記2Rは柱状構造体どうしが接触しない間隔は有する。特に径2r及び中心間距離2Rが共に上記範囲内にあるのが良い。ここで、2Rは、隣り合う柱状部材の中心間距離ともいえる。
【0089】
たとえば、柱状構造をした前記アルミニウムナノ構造の径が1〜15nmであり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体の間隔が10〜20nmであり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体の高さと径の比が0.1〜100000であり、かつ、前記アルミニウムナノ構造体が基板に対して垂直である微細構造体などが挙げられる。
【0090】
また、柱状構造体1の基板断面からみた形状は、図1(b)のように長方形形状でも良いし、正方形や台形など任意の形状が可能である。なお、柱状構造とは、任意のアスペクト比(径/長さ)を有する形状を含むものである。例えば、アスペクト比(径2r/長さL)として、0.1〜100000をとることができる。
【0091】
例えば、柱状構造の長さLとしては、1nm〜100μmの範囲で適用できる。
【0092】
特に、柱状構造体の径2rが例えば1〜15nmであり、その中心間距離2Rが10〜20nmである場合に、長さLを1nm〜数μmの範囲で制御する場合を考える。長さLが数nm〜数十nmのとき(長さと径の比が低いとき)、柱状構造体1はアルミニウム量子ドット(0次元)として作用し、それよりも大きい場合はアルミニウム量子細線(1次元)として作用する。
【0093】
また、前記アルミニウム含有の柱状構造体1は、図1(b)に示されているようにシリコンとゲルマニウムを主成分とするシリコンゲルマニウム領域部により互いに分離されている。即ち、複数の柱状構造がシリコンゲルマニウム領域中に分散している。
【0094】
アルミニウム含有の柱状構造体1は、特定方向に整列しているのがよい。図1(b)に示すように、特に基板に対して垂直方向に整列しているのがよい。
【0095】
基板3としては、特に限定されるものではないが、石英ガラスやプラスチックなどの絶縁性基板、シリコン基板、ゲルマニウム基板、ガリウム砒素、あるいはインジウム燐などの半導体基板、あるいは支持部材としての基板上にアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体が形成できるのであれば、フレキシブルな基板(例えばポリイミド樹脂など)も用いることができる。さらには、支持基板上に一層以上の膜が形成されているものを使用してもかまわない。
【0096】
(実施形態6:アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の作製方法)
図2を再度利用して、本発明に係るアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の作製方法について説明する。ここでは、非平衡状態で成膜する方法として、スパッタリング法を用いた例を示す。なお、図2において、11が基板、12がスパッタリングターゲットである。スパッタリング法を用いる場合は、ターゲット材料を変化させることで、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの割合を簡単に変化させることができる。13はシリコンチップと記載されているが本実施形態では、シリコンチップあるいはゲルマニウムチップということになる。
【0097】
図2に示したように、基板上に、非平衡状態で物質を形成する成膜法であるマグネトロンスパッタリング法により、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を形成する。
【0098】
原料としてのシリコン、ゲルマニウム及びアルミニウムは、図2のようにアルミニウムのターゲット基板上にシリコンチップとゲルマニウムチップを配することで達成される。シリコンチップあるいはゲルマニウムチップは、図2では、複数に分けて配置しているが、勿論これに限定されるものではなく、所望の成膜が可能であれば、1つであっても良い。但し、均一なアルミニウム含有の柱状構造体をシリコンゲルマニウム領域内に均一に分散させるには、図2に示したように基板11に対象に配置しておいた方が良い。
【0099】
また、所定量のアルミニウムとシリコンとゲルマニウムとの粉末を焼成して作製したアルミニウムシリコンゲルマニウム焼成物を成膜のターゲット材として用いることもできる。このようなターゲットを用いることにより、膜組成のばらつきの少ない、均質な膜を形成することが可能となる。
【0100】
また、アルミニウムターゲット、シリコンターゲット、ゲルマニウムターゲットを別々に用意し、同時に各々のターゲットをスパッタリングする方法を用いても良い。
【0101】
形成される膜中のシリコンとゲルマニウムの合計総量は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して20atomic%以上70atomic%以下であり、好ましくは25atomic%以上65atomic%以下、さらに好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。
【0102】
また、基板温度としては、300℃以下、好適には200℃以下であり、好ましくは100℃以上150℃以下であるのがよい。下限としては、0℃あるいは室温である。シリコンとゲルマニウムの合計量が斯かる温度範囲内で作製されれば、シリコンゲルマニウム領域内に柱状構造体が分散したアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体が得られる。
【0103】
前記アルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を形成しているときの試料温度は300℃以下、好ましくは200℃以下が好ましい。このように、成膜条件にもよるが、300℃以下の試料温度でアルミニウムとシリコンとゲルマニウムを非平衡状態で物質を形成する成膜法で形成することにより、作製されたアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムが準安定状態の共晶型組織となり、アルミニウムが数nmレベルのナノ柱状構造体を形成し、シリコンゲルマニウム領域と自己形成的に分離する。
【0104】
アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体のシリコンとゲルマニウムの総量は、例えばアルミニウムターゲット上に置くシリコンチップあるいはゲルマニウムチップの量を変えることや、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの粉末の混合量を変えて作製したターゲットを用いることにより制御できる。
【0105】
非平衡状態で成膜を行う場合、特にスパッタリング法の場合は、アルゴンガスを流したときの反応装置内の圧力は、0.2〜1Pa程度、あるいは0.1〜1Paがよい。しかし、特に、これに限定されるものではなく、アルゴンプラズマが安定に形成される圧力であればよい。
【0106】
基板11としては、例えば石英ガラスをはじめとする絶縁体基板やシリコンやガリウム砒素をはじめとする半導体基板などの基板や、これらの基板の上に1層以上の膜を形成したものが挙げられる。なお、アルミニウムのナノ柱状構造体の形成に不都合がなければ、基体の材質、厚さ、機械的強度などは特に限定されるものではない。また、基板の形状としては平滑な板状のものに限らず、曲面を有するもの、表面にある程度の凹凸や段差を有するものなどが挙げられるが、アルミニウムのナノ柱状構造体に不都合がなければ、特に限定されるものではない。
【0107】
非平衡状態で物質を形成する成膜法は、スパッタリング法が好ましいが蒸着法(抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着等)、イオンプレーティング法をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。
【0108】
また、成膜のやり方としては、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムを同時に形成する同時成膜プロセスを用いても良いし、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムを数原子層づつ積層する積層成膜プロセスを用いてもかまわない。
【0109】
(実施形態7:アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体を用いた装置)
図9にアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体を用いた、単電子メモリの模式図を示す。
【0110】
91は基板、92は絶縁体(例えば酸化シリコン)、93は柱状のアルミニウムがシリコンとゲルマニウムの混合物中に分散した構造体(アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体)、94はドレイン領域、95はゲート絶縁領域、96はゲート電極、97はソース領域である。
【0111】
図9のようにアルミニウムを量子ドットとすることで、量子ドットに蓄積された電荷の影響によりチャネル部分の電気的特性を制御することができる。また、量子ドットには長い時間電荷を蓄積できるので、電源も切っては情報が消えない不揮発性メモリを形成できる。なお、説明では、アルミニウムシリコンゲルマニウム構造体を用いたが、柱状の部材が分散した構造体が得られるのであれば、他の材料(例えば、アルミニウムシリコンゲルマニウムに替えてアルミニウムシリコン)を利用することもできる。
【0112】
このようにアルミニウムシリコンゲルマニウム構造体を応用することで、量子効果を利用した単電子メモリ、あるいは同様な原理を用いて、単電子トランジスタなどとしても利用することができる。
【0113】
また、本発明は、量子ドットや量子細線などのアルミニウムのナノ柱状構造体をさまざまな形態で応用することを可能とするものであり、その応用範囲を著しく広げるものである。
【0114】
(実施例1:第1の材料Al、第2の材料Si)
図3に本発明のアルミニウムシリコン構造体の概略図を示す。ここでは、シリコンに周囲を囲まれたアルミニウム構造体部分が円柱状構造であり、その径2rが3nmであり、間隔2Rが7nm、長さLが200nmであるアルミニウム細線について示す。なお、図3において、21が基板で、22がアルミニウム量子細線、23がシリコンである。図6に実際のSEM写真を示す。
【0115】
まず、アルミニウム細線の作製方法を説明する。
【0116】
ガラス基板21上に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して55atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成する。ターゲットには、図2に示すように、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を8枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0117】
なお、ここではターゲット12として、アルミニウムターゲット上にシリコンチップ13を8枚置いたものを用いたが、シリコンチップの枚数はこれに限定されるものではなく、スパッタ条件により変化し、アルミニウムシリコン混合膜の組成が約55atomic%近辺になれば良い。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にシリコンチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、シリコンとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0118】
次に、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約55atomic%であった。なお、ここでは測定の都合上、基板として、カーボン基板上に堆積したアルミニウムシリコン混合膜を用いた。
【0119】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、アルミニウムシリコン混合膜を観察した。基板真上方向から見た表面の形状は図3のように、シリコンに囲まれた円形のアルミニウムナノ構造体が二次元的に配列していた。アルミニウムナノ構造体部分の孔径は3nmであり、その平均中心間間隔は7nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、高さは200nmであり、それぞれのアルミニウムナノ構造体部分はお互いに独立していた。
【0120】
また、X線回折法でこの試料を観察した所、結晶性を示すシリコンのピークは確認できず、シリコンは非晶質であった。なお、アルミニウムの結晶性を示すピークが複数確認でき、少なくともアルミニウムの一部は多結晶であることが示された。
【0121】
従って、シリコンに周囲を囲まれた間隔2Rが7nm、径2rが3nm、高さLが200nmのアルミニウム細線を含んだアルミニウムシリコンナノ構造体を作製することができた。
【0122】
本実施例で説明したように、アルミニウムシリコン混合膜をスパッタ法などの非平衡状態で物質を形成する成膜法で形成することで、基板表面上のシリコンマトリックス内に数nmスケールのアルミニウム量子ドットあるいはアルミニウム量子細線などのアルミニウムナノ構造体を有するアルミニウムシリコンナノ構造体を形成することが可能となる。
【0123】
(比較例)
また、比較試料Aとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して15atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を2枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0124】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Aを観察した(図7参照)。基板真上方向から見た表面の形状は、アルミニウム部分は円形状にはなっておらず、アルミニウムが連続的に繋がった形状になっていた。即ち、アルミニウムの柱状構造体がシリコン領域内に均質に分散した微細構造体となっていなかった。さらに、その大きさは10nmを遥かに超えていた。また、断面をFE−SEMにて観察した所、アルミニウム部分の幅は15nmを超えていた。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約15atmic%であった。
【0125】
さらに、比較試料Bとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して75atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を14枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0126】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Bを観察した(図8参照)。基板真上方向から見た試料表面には、アルミニウム部分を観察することができなかった。また、断面をFE−SEMにて観察しても、明確にアルミニウム部分を観察することができなかった。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約75atomic%であった。
【0127】
また、比較試料Aを作製した場合と、シリコンチップの枚数の条件のみを変え、アルミニウムシリコン混合体の全量に対するシリコンの割合が、20atomic%、35atomic%、50atomic%、60atomic%、70atomic%である試料を作製した。アルミニウムの柱状構造体がシリコン領域内に分散した微細構造体となっている場合を○、なっていない場合を×としたものを以下に示す。なお、柱状構造体の均一性という点では、シリコンの割合が30以上60atomic%であることが好ましい。また、シリコンの割合が65や70atomic%の場合は、アルミニウムの結晶性が低く、アモルファス状態に近くなっていた。
【0128】
【表1】
【0129】
このように、アルミニウムとシリコンの全量に対するシリコン含有量を、20atomic%以上70atomic%以下に調整することで、アルミニウムの柱状構造体がシリコン領域内に分散した構造体が実現できる。アルミニウムとシリコンの組成を変化させることで、柱状構造体の孔径の制御が可能であり、また、直線性に優れたアルミニウム細線の作製が可能になる。なお、構造の確認には、SEMの他にもTEM(透過型電子顕微鏡)等を利用するのがよい。
【0130】
さらに、比較試料Cとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して55atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を8枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は350℃とした。
【0131】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Cを観察した。基板真上方向から見た試料表面には、大きなアルミニウムの塊が確認できた。また、エックス線回折測定により、シリコンが結晶化していることが確認された。つまり、柱状構造を有するアルミニウムナノ構造体を確認することができず、シリコン領域も非晶質ではなく結晶化していた。即ち、基板温度が高すぎると、より安定な状態に変化してしまうため、このようなアルミニウムナノ構造体を形成する膜成長ができていないと思われる。
【0132】
なお、柱状の部材が分散した構造体を得る為に、ターゲットの組成をAl:Si=55:45などに設定することも好ましい形態である。
【0133】
(実施例2)
図4に本発明のアルミニウムシリコンナノ構造体の概略図を示す。ここでは、シリコンに周囲を囲まれたアルミニウムナノ構造体部分が円柱構造であり、その径2rが6nm、間隔2Rが9nm、長さLが10nmであるアルミニウム量子ドットである場合について示す。なお、図4において、31が基板で、32がアルミニウム量子ドット、33がシリコンである。ます、アルミニウムナノ構造部分がアルミニウム量子ドットであるアルミニウムシリコンナノ構造体の作製方法を説明する。シリコン基板上に、物理蒸着法である電子ビーム蒸着法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して30atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約10nm形成する。ここではシリコンのるつぼとアルミニウムのるつぼの2種類のるつぼを同時に電子ビーム蒸着する。
【0134】
次に、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約30atomic%であった。なお、ここでは測定の都合上、基板として、カーボン基板上に堆積したアルミニウムシリコン混合膜を用いた。
【0135】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、作製した試料を観察した。基板真上方向から見た表面の形状は図4のように、シリコンにより囲まれた円形状のアルミニウム量子ドットが二次元的に配列していた。アルミニウムナノ構造体部分(アルミニウム量子ドット)の孔径2rは6nmであり、その平均中心間間隔2Rは9nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、高さは10nmであり、それぞれのアルミニウム量子ドットはお互いに独立していた。
【0136】
シリコンにより囲まれた間隔2Rが9nm、径2rが6nm、高さLが10nmのアルミニウム量子ドットを有したアルミニウムシリコンナノ構造体を作製することができた。なお、X線回折法でこの試料を観察した所、アルミニウムは結晶質であり、シリコンは非晶質であった。
【0137】
(実施例3)
図3を再度利用して、第1の材料とてアルミニウムを、第2の材料としてシリコンとゲルマニウムを用いた場合について説明する。図3は、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の概略図である。ここでは、シリコンゲルマニウムに周囲を囲まれたアルミニウムナノ構造体部分が円柱状構造であり、その径2rが7nmであり、間隔2Rが10nm、長さLが200nmであるアルミニウム細線について示す。なお、図3において、21が基板で、22がアルミニウム量子細線(アルミニウムを含み構成される柱状構造体)、23が非晶質シリコンゲルマニウムである。図10に実際のSEM写真を示す。
【0138】
まず、アルミニウム細線の作製方法を説明する。
【0139】
ガラス基板21上に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、シリコンとゲルマニウムの総量をアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して38atomic%含んだアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を約200nm形成する。ターゲットには、図2に示すように、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップを2枚及び、ゲルマニウムチップを2枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wとした。また、基板温度は室温とした。
【0140】
なお、ここではターゲット12として、アルミニウムターゲット上にシリコンとゲルマニウムチップ13を合計4枚置いたものを用いたが、シリコンとゲルマニウムチップの枚数はこれに限定されるものではなく、スパッタ条件により変化し、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して、シリコンとゲルマニウムの合計組成比が約38atomic%近辺になれば良い。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にシリコン及びゲルマニウムチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップとシリコンチップを置いたものでも良いし、シリコンとゲルマニウムとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0141】
さらに、ここではスパッタリング法としてRFスパッタリング法を用いたが、これに限定されるものではなく、ECRスパッタリング法、DCスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法でよい。さらに、スパッタリング条件は装置に依存しており、これに限定されるものではない。
【0142】
次に、このようにして得られたアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンとゲルマニウムとアルミニウムの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンとゲルマニウムの総量(合計組成比)は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して、約38atomic%であった。
【0143】
なお、ここでは測定の都合上、基板として、カーボン基板上に堆積したアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を用いた。
【0144】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を観察した。基板斜め真上方向から見た表面の形状は図3のように、シリコンとゲルマニウムの混合体に囲まれたほぼ円形のアルミニウムナノ柱状構造体が二次元的に配列していた。アルミニウムナノ構造体部分の画像処理より求めた孔径は7nmであり、その平均中心間間隔は10nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、膜の高さは200nmであり、それぞれのアルミニウムのナノ柱状構造体部分はお互いに独立していた。
【0145】
また、X線回折法でこの試料を観察した所、結晶性を示すシリコン及びゲルマニウムのピークは確認できず、シリコンとゲルマニウムの混合物は非晶質であった。なお、アルミニウムのピークが複数確認でき、多結晶であることが分かった。
【0146】
従って、シリコンとゲルマニウム混合体に周囲を囲まれた間隔2Rが10nm、径2rが7nm、高さLが200nmのアルミニウム細線を含んだアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体を作製することができた。
【0147】
本実施例で説明したように、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜をスパッタ法などの非平衡状態で物質を形成する成膜法で形成することで、基板表面上に数から数〜数十nmスケールのアルミニウム量子ドットあるいはアルミニウム量子細線などのアルミニウムのナノ柱状構造体がシリコンゲルマニウム中に2次元的に形成された構造を有するアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体を形成することが可能となる。
【0148】
(比較例)
また、比較試料Dとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンとゲルマニウムをアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して15atomic%含んだアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ及びゲルマニウムチップを各々1枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wとした。また、基板温度は室温とした。
【0149】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Dを観察した。基板真上方向から見た表面の形状は、アルミニウム部分は円形状にはなっておらず、各々のアルミニウム部分は、連続的につながったような構造を形成した。即ち、アルミニウムの柱状構造体がシリコンゲルマニウム領域内に分散した微細構造体となっていなかった。さらに、その大きさ(長さ)は20nmを遥かに超えていた。また、断面をFE−SEMにて観察した所、アルミニウム部分の幅は柱状にはなっておらず、数十nmを超える大きな塊を形成していた。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンとゲルマニウムのアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンとゲルマニウムの総量は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量(100atomic%とする)に対して、約15atomic%であった。
【0150】
さらに、比較試料Eとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンゲルマニウムをアルミニウムとシリコンゲルマニウムの全量に対して75atomic%含んだアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコン及びゲルマニウムチップを各々5枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wとした。また、基板温度は室温とした。
【0151】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Eを観察した。基板真上方向から見た試料表面には、アルミニウム部分を観察することができなかった。また、断面をFE−SEMにて観察しても、明確なアルミニウム部分を観察することができなかった。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンとゲルマニウムのアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンとゲルマニウムの総量は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量(100atomic%とする)に対しては約75atomic%であった。
【0152】
このように、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対するシリコンとゲルマニウム含有量を、少なくとも20atomic%以上70atomic%以下に調整することで、シリコンゲルマニウム中にアルミニウムのナノ柱状構造体を形成することが可能であり、また、直線性に優れたアルミニウム細線の作製が可能になる。
【0153】
さらに、比較試料Fとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンとゲルマニウムの総量をアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して38atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ及びゲルマニウムチップを各々2枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wとした。また、基板温度は350℃とした。
【0154】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Fを観察した。基板真上方向から見た試料表面には、円形あるいは楕円形をしたアルミニウムを確認することができなかった。つまり、アルミニウムのナノ柱状構造体を確認することができなかった。即ち、基板温度が高すぎると、より安定な状態に変化してしまうため、図1や図3に示したようなアルミニウムのナノ柱状構造体を形成する膜成長ができていないと思われる。
【0155】
(実施例4)
図4を再度利用して、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体について説明する。ここでは、シリコンゲルマニウムに周囲を囲まれたアルミニウムのナノ構造体部分が円柱構造であり、その径2rが6nm、間隔2Rが8nm、長さLが10nmであるアルミニウム量子ドットである場合について示す。なお、図4において、31が基板で、32がアルミニウム量子ドット、33が非晶質シリコンゲルマニウムである。ます、アルミニウムのナノ柱状構造部分がアルミニウム量子ドットであるアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の作製方法を説明する。シリコン基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いて、シリコンとゲルマニウムをアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対して33atomic%含んだアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を約10nm形成する。
【0156】
次に、このようにして得られたアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンとゲルマニウムのアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンとゲルマニウムのアルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対する分量は約33atomic%であった。なお、ここでは測定の都合上、基板として、カーボン基板上に堆積したアルミニウムシリコンゲルマニウム混合膜を用いた。
【0157】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、作製した試料を観察した。基板斜め真上方向から見た表面の形状は図4のように、シリコンゲルマニウムにより囲まれた円形状のアルミニウム量子ドットが二次元的に配列していた。アルミニウムナノ構造体部分(アルミニウム量子ドット)の孔径2rは6nmであり、その平均中心間間隔2Rは8nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、高さは10nmであり、それぞれのアルミニウム量子ドットはお互いに独立していた。
【0158】
これによりシリコンゲルマニウムにより囲まれた間隔2Rが8nm、径2rが6nm、高さLが10nmのアルミニウム量子ドットを有したアルミニウムシリコンゲルマニウム混合体を作製することができた。なお、X線回折法でこの試料を観察した所、アルミニウムは結晶質であり、シリコンゲルマニウムは非晶質であった。
【0159】
アルミニウムとシリコンとゲルマニウムの全量に対するシリコンとゲルマニウム含有量を、変化させることで、シリコンゲルマニウム中にアルミニウムのナノ柱状構造体の径及び間隔を変化させることが可能であり(典型的には、シリコンとゲルマニウムの量を少なくすると、アルミニウムのナノ柱状構造の径が大きくなる)、また、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体の膜厚を調節することで、アルミニウムのナノ柱状構造体の高さを変えることができる。
【0160】
さらに、アルミニウムシリコンゲルマニウム混合体中のゲルマニウムとシリコンの組成比を変化させることで、アルミニウムの柱状構造体の径や間隔を変化させることも可能である。
【0161】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、柱状の部材がそれを取り囲む領域に分散した構造体、その製造方法、及び当該構造体を用いた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る構造体の一例を上面から見た概略図である。
(b)は本発明に係る構造体の一例を側面から見た概略図である。
【図2】本発明に係る構造体の作製方法の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る構造体の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る構造体の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る構造体を用いた単電子メモリの模式図である。
【図6】本発明に係るアルミニウムシリコン混合体のFE−SEM像である。
【図7】本発明に係るアルミニウムシリコン混合体のFE−SEM像である。
【図8】本発明に係るアルミニウムシリコン混合体のFE−SEM像である。
【図9】本発明に係る構造体を用いた単電子メモリの模式図である。
【図10】本発明に係る混合体のFE−SEM像である。
【符号の説明】
1、11 柱状構造体
2、23、33 柱状構造体を取り囲む領域
3、21、31、51 基板
12 ターゲット
13 シリコンチップあるいはゲルマニウムチップ
22 柱状構造体
32 柱状構造体
52 絶縁体
53 アルミニウムシリコン混合体
54 ドレイン電極
55 ゲート絶縁物
56 ゲート電極
57 ソース電極
Claims (7)
- 複数の柱状構造体と、該柱状構造体を取り囲む領域とを含み構成される膜の製造方法であって、
基板を用意する工程と、
該基板上に分散して配置されている前記柱状構造体と、該柱状構造体を取り囲む前記領域とを含み構成される前記膜をスパッタリング法により形成する工程とを含み、
前記柱状構造体は多結晶アルミニウムであり、前記領域は非晶質Si x Ge 1−x (0<x<1)で構成され、且つ前記膜には、前記Si x Ge 1−x が30atomic%以上60atomic%以下の割合で含まれるように該膜を形成することを特徴とする膜の製造方法。 - 前記膜の膜厚が、300nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の膜の製造方法。
- 前記スパッタリング法がRFマグネトロンスパッタリング法である請求項1あるいは2に記載の膜の製造方法。
- 前記スパッタリング法は、アルゴンガス雰囲気で、反応装置内の圧力を0.2Paから1Paの範囲にして行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
- 前記スパッタリング法は、基板温度を室温から300℃以下の範囲で行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
- 前記基板が、絶縁性基板、半導体基板、金属基板、あるいはフレキシブル基板であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
- 前記柱状構造体の径は、0.5nm以上15nm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
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