JP4001006B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気再循環装置を有する内燃機関の点火時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排気再循環装置によって機関排気系から気筒内へ排気ガスを再循環させると、燃焼温度を低下させてNOXの発生量を低減することができる。しかしながら、その一方で気筒内の排気ガスが燃料の燃焼を阻害して燃焼が緩慢となるために、点火時期を進角することが必要とされる。
【0003】
それにより、一般的には、排気再循環を停止した時の基準点火時期を機関運転状態毎に定めると共に、制御弁が目標開度とされて排気再循環を実施した時の点火時期進角量を機関運転状態毎に定めて、排気再循環の停止及び実施に応じて点火時期が制御される。
【0004】
排気再循環の実施及び停止を切り換えるには、排気再循環通路に配置された制御弁を開閉することとなるが、制御弁は直ぐに目標開度とはならず、目標開度に見合った定常量の排気ガスが直ぐに気筒内へは供給されない。それにより、制御弁の開弁指令直後において、定常量の排気ガスが気筒内へ再循環されていることを意図して設定された点火時期進角量によって点火時期を進角すると、実際に気筒内へ供給されている排気ガス量に対しては点火時期が進角され過ぎることとなり、燃焼が悪化する。
【0005】
この問題を解決するために、従来においては、制御弁の開弁に際して排気ガスは一次遅れにより気筒内へ供給されて吸入空気量が減少するとして、吸入空気量減少割合を算出し、この吸入空気量減少割合に基づき点火時期を最終的な点火時期進角量まで徐々に進角することが提案されている。また、機関運転状態によっては制御弁を徐々に開弁してトルクショックの発生を抑制することも提案されており、この時にも、再循環排気ガスの一次遅れを考慮して吸入空気量減少割合を算出し、それに基づいて点火時期は徐々に進角される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−197876号公報(段落番号0026−0050、図11)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術において、吸入空気量減少割合は、制御弁開度だけに応じて制御弁を通過する排気ガス量が変化し、この排気ガス量が一次遅れで気筒内へ供給されるとして算出されるものである。しかしながら、制御弁を通過する排気ガス量は、制御弁開度だけに依存するものではないために、算出される吸入空気量減少割合が不正確となって適当な点火時期制御が実現されず、十分に燃焼の悪化を防止することができない。
【0008】
従って、本発明の目的は、制御弁を備える排気再循環通路がスロットル弁の下流側の吸気管へ接続されている内燃機関の点火時期制御装置において、再循環排気ガス量に応じた点火時期制御を実施して、制御弁の開閉指令直後においても十分に燃焼の悪化を防止可能とすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置は、制御弁を備える排気再循環通路がスロットル弁の下流側の吸気管へ接続されている内燃機関の点火時期制御装置であって、機関運転状態毎に、前記制御弁を全閉とした時の基準点火時期と、前記制御弁の目標設定開度と、前記制御弁が前記目標設定開度とされた時の定常時の吸入排気ガス量に適した点火時期進角量とが設定され、機関運転状態毎に前記点火時期進角量だけ前記基準点火時期を進角して点火を実施する内燃機関の点火時期制御装置において、機関運転状態が変化する機関過渡時に、前記点火時期進角量は、前記制御弁の現在の開度と現在の吸気管圧力とに基づき算出される気筒内への現在の吸入排気ガス量と、前記定常時の吸入排気ガス量との比によって補正され、前記現在の吸気管圧力は、吸気管内に存在する吸気及び排気ガスの質量保存則、エネルギ保存則、及び状態方程式を使用して、離散時間毎に、前回の吸気管圧力と、前回のスロットル弁通過空気量と、前回の制御弁通過排気ガス量と、前回の吸入ガス量と、前回の吸気温度と、前回の排気ガス温度とに基づき算出され、補正された前記点火時期進角量だけ前記基準点火時期を進角して点火を実施することを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
【0010】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の点火時期制御装置は、請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置において、前記点火時期進角量を補正するための前記比を機関負荷に応じて補正する補正係数を有し、前記補正係数は、前記比を機関低負荷時より機関高負荷時の方が大きくなるように補正することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による点火時期制御装置が取り付けられる内燃機関を示す概略図である。同図において、1は機関本体であり、2は各気筒共通のサージタンクである。3はサージタンク2と各気筒とを連通する吸気枝管であり、4はサージタンク2の上流側の吸気通路である。各吸気枝管3には燃料噴射弁5が配置され、吸気通路4におけるサージタンク2の直上流側にはスロットル弁6が配置されている。スロットル弁6は、アクセルペダルに連動するものではなく、ステップモータ等の駆動装置によって自由に開度設定可能なものである。しかしながら、これは本発明を限定するものではなく、スロットル弁6はアクセルペダルと機械的に連動するものでも良い。7は吸気通路4のスロットル弁6より上流側の吸気流量を検出するエアフローメータである。機関本体1において、8は吸気弁、9は排気弁、10はピストン、11は点火プラグである。
【0012】
12は機関排気系であり、13は機関排気系における各気筒の排気集合部下流側と各気筒の吸気枝管3とを連通する排気再循環通路である。排気再循環通路13を介して排気ガスを気筒内へ供給することにより、燃焼温度を低下させてNOX発生量の抑制が可能となる。再循環排気ガス量を増加するほどNOX発生量を抑制することができるが、その一方で機関出力が大幅に低下することとなり、排気再循環通路13には制御弁14が配置され、制御弁14により再循環排気ガス量が制御される。制御弁14の目標開度は、機関回転数及び機関負荷等により定まる機関運転状態毎に設定されている。ここで、スロットル弁6及び制御弁14の下流側の機関吸気系(サージタンク2、排気再循環通路13の一部、及び吸気枝管3)を吸気管と称し、吸気管の容積を吸気管容積と称する。
【0013】
内燃機関1における燃焼空燃比を、例えば、理論空燃比等の所望空燃比にするためには、機関過渡時を含めて気筒内へ流入した吸入空気量を正確に推定することが必要とされる。エアフローメータ7は、機関定常時においては、比較的正確に吸入空気量を測定することができる。しかしながら、機関過渡時においては、急激に変化する吸入空気量に対してエアフローメータ7の出力が直ぐに応答せず、正確な吸入空気量の測定は不可能である。
【0014】
機関過渡時においても、正確な吸入空気量を把握することを可能とするために、機関吸気系をモデル化して吸入空気量を推定するようになっている。
【0015】
先ず、スロットル弁6をモデル化することにより、吸気がスロットル弁6を通過する際のエネルギ保存則、運動量保存則、及び、状態方程式を使用して、今回のスロットル弁通過空気量mt(i)(g/sec)が、次式(1)によって表される。以下の式を含めて、スロットル弁通過空気量等の変数の添え字(i)は今回を示し、(i−1)は前回を示している。
【数1】
【0016】
ここで、μ1(i)は流量係数であり、At(i)はスロットル弁6の開口面積(m3)である。もちろん、機関吸気系にアイドルスピードコントロールバルブ(ISC弁)が設けられている時には、At(i)には、ISC弁の開口面積が加えられる。流量係数及びスロットル弁の開口面積は、それぞれがスロットル弁開度TA(i)(度)の関数となっており、図2及び3には、それぞれのスロットル弁開度TAに対するマップが図示されている。Rは気体定数であり、Taはスロットル弁上流側の吸気温度(K)であり、Paはスロットル弁上流側の吸気通路圧力(kPa)であり、Pm(i)はスロットル弁下流側の吸気管圧力(kPa)である。また、関数Φ(Pm(i)/Pa)は、比熱比κを使用して次式(2)によって表されるものであり、図4にはPm/Paに対するマップが図示されている。
【数2】
【0017】
図1に示す内燃機関において、吸気管には、スロットル弁6を通過する空気だけでなく、排気再循環通路13の制御弁14を介して、機関排気系12から排気ガスも流入する。それにより、次いで、制御弁14をモデル化する。排気ガスが制御弁14を通過する際のエネルギ保存則、運動量保存則、及び、状態方程式を使用して、今回の制御弁通過排気ガス量megr(i)(g/sec)が、スロットル弁通過空気量と同様に、次式(3)によって表される。
【数3】
【0018】
ここで、μ2(i)は流量係数であり、Ae(i)は制御弁14の開口面積(m3)である。流量係数及び制御弁の開口面積は、それぞれが制御弁開度EA(i)(度)の関数となっており、図2及び3と同様に、それぞれの制御弁開度EAに対してマップ化されている。Rは気体定数であり、Teは制御弁上流側の排気ガス温度(K)であり、Peは制御弁上流側の排気圧力(kPa)であり、Pm(i)は制御弁下流側の吸気管圧力(kPa)である。また、関数Φ(Pm(i)/Pe)は、式(2)において吸気通路圧力Paを排気圧力Peに置き換えたものである。
【0019】
式(3)の右辺において、関数Φ(Pm(i)/Pe)以外の部分を、制御弁開度EAの関数Bとして置き換えると、次式(4)を得ることができる。すなわち、制御弁通過排気ガス量megrは、任意の制御弁開度において、関数Φ(Pm(i)/Pe)によってのみ変化するものとすることができる。吸入空気量が少ない領域では、排気圧力Peは大気圧Paにほぼ等しく、また、吸入空気量が多い領域では、吸入空気量の増加に応じて排気圧力Peが上昇する。ここで、吸入空気量と吸気管圧力Pmとは比例関係にあるために、制御弁開度が定まれば、制御弁通過排気ガス量megrは、機関回転数毎に、図5に示すような吸気管圧力Pmの連続する二つの一次式によって近似することができる。
【数4】
【0020】
次いで、吸気弁をモデル化する。吸気管から気筒内へ供給される吸入ガス量mc(g/sec)は、吸気管圧力Pmの一次式により近似することができる。図6は、バルブオーバーラップが所定量の場合を示している。バルブオーバーラップ量が0又は小さく、気筒内の排気ガスが吸気管へ逆流しない場合において、制御弁が全閉されて吸気管が新気によって満たされている時には、吸入ガス量は吸入空気量KLとなり、吸気管圧力Pmに対する吸入空気量KLは、単なる一次式によって近似可能である。しかしながら、気筒内の排気ガスが吸気管へ逆流するほどバルブオーバーラップ量が大きい場合には、逆流排気ガスにより吸入空気量が減少して吸入空気量KLも低下する。逆流排気ガス量はバルブオーバーラップ量が大きくなるほど多くなる。また、バルブオーバーラップ時の吸気弁のリフト量が大きいほど多くなる。吸気管圧力Pmが所定値bを超えて高くなれば、排気ガスは徐々に逆流し難くなるために、この時には、吸入空気量の減少分が徐々に少なくなる。これを考慮して、バルブオーバーラップ量が所定値の時の吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとは、図6の実線L1のように設定することができる。
【0021】
また、実線L2は、制御弁開度がEA1であり、制御弁14を介して排気ガスが吸気管へ流入している時である。制御弁14を通過する排気ガス量は、機関定常時において、吸気管から気筒内への吸入排気ガス量と等しい。すなわち、機関定常時には、制御弁開度に応じて、吸入排気ガス量が図5に示すと同様に吸気管圧力により一次的に変化する。こうして、吸入排気ガス量に伴う吸入空気量減少分を考えれば、制御弁開度EA1の時の吸気管圧力Pmに対する吸入空気量KLを実線L12のように予め設定することができる。
【0022】
図6の実線L3は、制御弁開度がEA1より大きなEA2の時の吸気管圧力Pmに対する吸入空気量KLを示し、気筒内への吸入排気ガス量が全体的に増加することを考慮して、前述同様に設定されている。図6においては省略されているが、吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとの関係式は、制御弁14の開度毎に設定されている。実際的には、次式(5)の形で本吸入空気量推定装置に記憶されている。
KL=e(Pm−g)+r ・・・(5)
吸入空気量KLは、同じ吸気管圧力に対して機関回転数に応じて変化するために、式(5)において、第1係数e、第2係数g、及び、第3係数rは、機関回転数及び制御弁開度の二次元マップで設定されれば良い。さらに、本実施形態のように、吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとが図6に示すように折れ線で設定される場合には、第1係数eは、吸気管圧力Pmが第2係数gと等しくなる時を境に異なる値として設定される。
【0023】
制御弁が開度0度の時の吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとの関係式は、次式(6)の形で本吸入空気量推定装置に記憶されている。
KL=a(Pm−b)+c ・・・(6)
ここで、第4係数a、第5係数b、及び、第6係数cは、機関回転数の一次元マップで設定されれば良い。また、第4係数a、第5係数b、及び、第6係数cは、本実施形態のように、バルブオーバーラップを考慮して吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとが図6の実線L1に示すように設定される場合には、第4係数aは、吸気管圧力Pmが第5係数bと等しくなる時を境に異なる値として設定される。バルブオーバーラップ量が可変とされる場合には、前述の式(5)及び(6)において、第1係数e、第2係数g、及び、第3係数rは、機関回転数及び制御弁開度だけでなく、バルブオーバーラップ量も含めた三次元マップで設定され、第4係数a、第5係数b、及び、第6係数cは、機関回転数だけでなく、バルブオーバーラップ量も含めた二次元マップで設定されることが好ましい。但し、第2係数g及び第5係数bは、簡単のために、それぞれ機関回転数の一次元マップとしても良く、また、第2係数及び第5係数bを同じ値として機関回転数の一次元マップに設定しても良い。
【0024】
次いで、吸気管をモデル化する。吸気管内に存在する吸気及び排気ガスの質量保存則、エネルギ保存則、及び、状態方程式を使用して、吸気管圧力Pmと吸気管内のガス温度Tmとの比における時間変化率は次式(7)によって表され、また、吸気管圧力Pmの時間変化率は次式(8)によって表される。ここで、Vは吸気管の容積(m3)であり、サージタンク2と吸気枝管3との合計容積とすることができ、また、mcは、気筒内へ吸入される吸入ガス量(g/sec)である。
【数5】
【0025】
式(7)及び式(8)は離散化され、それぞれ、次式(9)及び(10)が得られ、式(10)によって今回の吸気管圧力Pm(i)が得られれば、式(9)によって今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)を得ることができる。式(9)及び(10)において、離散時間Δtは、現在の吸入ガス量mc(i)を算出するためのフローチャート(図7)の実行間隔とされ、例えば8msである。
【数6】
【0026】
次に、図7に示すフローチャートを説明する。本フローチャートは、機関始動完了と同時に実行される。先ず、ステップ101において、式(10)を使用して吸気管圧力Pm(i)が算出される。式(10)は、前回の吸気管圧力Pm(i-1)と、前回のスロットル弁通過空気量mt(i-1)と、前回の制御弁通過排気ガス量megr(i-1)と、前回の吸入ガス量mc(i-1)と、前回の吸気管内の吸気温度Tm(i-1)と、前回の排気ガス温度Te(i-1)とに基づき、今回の吸気管圧力Pm(i)を算出するようになっている。これらの初期値として、Pm(i-1)には大気圧Paが、Tm(i-1)にはスロットル弁上流側の吸気温度Taが、また、Te(i-1)には排気ガス温度がそれぞれ実測又は推定されて使用される。これらの値を使用して、mt(i-1)、megr(i-1)、及び、mc(i-1)は、以下のステップ103、105、及び、106と同様に算出された値が使用される。次回以降の排気ガス温度Teに関して、排気温度センサが設けられていない場合には、前回の吸入空気量mair又は前回の燃料噴射量等に基づき推定可能である。
【0027】
次いで、ステップ102において、ステップ101において算出された今回の吸気管圧力Pm(i)に基づき式(9)を使用して今回の吸気管内の吸気温度Tm(i)が算出される。次いで、ステップ103において、式(1)を使用して今回のスロットル弁通過空気量mt(i)が算出される。式(1)を使用するスロットル弁通過空気量mt(i)の算出において、現在のスロットル弁開度TAは、スロットル弁が駆動装置によって駆動される場合には、駆動装置(ステップモータ)の応答遅れが考慮される。
【0028】
次いで、ステップ104において、機関過渡終了後の機関運転状態に対する目標設定開度が実現された場合の制御弁通過排気ガス量megrrq(i)が、式(6)と式(5)との差として次式(11)により算出される。
megrrq(i)=
a(Pmta(i)−b)+c−(e(Pmta(i)−g)+r)・・・(11)
ここで、第1係数e、第2係数g、及び、第3係数rは、機関過渡終了後の定常運転時の機関回転数、及び、制御弁の目標設定開度に基づき設定された値が使用され、第4係数a,第5係数b、及び第6係数cは、定常運転時の機関回転数に基づき設定された値が使用され、また、吸気管圧力Pmtaも、機関過渡終了後のスロットル弁開度、機関回転数、及び制御弁開度等に基づく、機関定常時の吸気管圧力である。ここで、第1係数e、第2係数g、第3係数r、第4係数a,第5係数b、及び第6係数cは、標準大気状態に対して設定されており、機関定常時の吸気管内の状態に合わせて補正される。この制御弁の目標設定開度に対する制御弁通過排気ガス量megrrq(i)は、機関定常時の吸入排気ガス量となる。
【0029】
次いで、ステップ105において、今回の吸気管圧力Pm(i)に基づき、今回の制御弁通過排気ガス量megr(i)が、式(6)と式(5)との差として次式(12)により算出される。
megr(i)=a(Pm(i)−b)+c−(e(Pm(i)−g)+r)・・・(12)
ここで、第1係数e、第2係数g、及び、第3係数rは、前述したように、現在の機関回転数、及び、現在の制御弁開度に基づき設定された値が使用され、第4係数a,第5係数b、及び第6係数cは、現在の機関回転数に基づき設定された値が使用される。ここで、第1係数e、第2係数g、第3係数r、第4係数a,第5係数b、及び第6係数cは、標準大気状態に対して設定されており、ステップ102において算出された吸気管内の温度Tm及び大気温度Ta等に基づき現在の吸気管内の状態に合わせて補正される。制御弁14のアクチュエータへは、機関運転状態の変化によって、目標設定開度を新たな目標設定開度へ変更するための作動信号が発せられる。この瞬間に制御弁14の開度が新たな目標設定開度へ変更されるのではなく、実際には、アクチュエータの応答遅れ及び制御弁の応答遅れによって作動信号が発せられてから短時間ではあるが徐々に新たな目標設定開度へ変更されることとなる。現在の制御弁の開度は、これら応答遅れを考慮して推定することができる。現在の制御弁の開度に対して第1係数e、第2係数g、及び第3係数rを細かくマップ化しておいても良いが、データ記憶量を減少するために、これらが機関運転状態毎の制御弁の目標設定開度毎にしか設定されていない場合には、二つの目標設定開度に対して設定された値を現在の制御弁開度に対して補完して使用することとなる。
【0030】
次いで、ステップ106において、今回の吸気管圧力Pm(i)に基づき今回の吸入ガス量の相当値mc(i)が算出される。この吸入ガス量mc(i)は、制御弁が全閉されて吸気管内が新気により満たされている場合の吸入空気量KLに一致する値であり、式(6)を使用して算出される。
【0031】
吸入ガス量mc(i)は、吸入排気ガス量と吸入空気量との合計であり、今回の吸入排気ガス量megrsm(i)が解かれば、今回の吸入空気量mair(i)を算出することができる(mair(i)=mc(i)−megrsm(i))。ところで、ステップ105において算出した今回の制御弁通過排気ガス量megr(i)は、拡散しながら気筒内へ吸入されるために、一次遅れが発生する。また、制御弁から気筒内への輸送遅れによる無駄時間も発生する。こうして、今回の制御弁通過排気ガス量は、遅れて気筒内へ吸入されることとなる。
【0032】
一次遅れの時定数をτとし、無駄時間をTdとすると、現在時刻の制御弁通過排気ガス量megr(i)を時定数τによりなました吸入排気ガス量は、今から無駄時間Td後の吸入排気ガス量megrsm(i+Td/ Δ t)となる。
megrsm(i+Td/ Δ t)=
Δt/τ(megr(i)−megrsm(i+Td/ Δ t-1))・・・(13)
【0033】
こうして、式(13)を使用して吸入排気ガス量megrsmを算出して記憶しておけば、ステップ107において、現在の吸入排気ガス量megrsm(i)を呼び出すことができる。
【0034】
次いで、ステップ108では、今回の吸入ガス量mc(i)から今回の吸入排気ガス量megrsm(i)を減算することにより、今回の吸入空気量mair(i)を算出する。
【0035】
次いで、ステップ109においては、今回の吸気管圧力Pm(i)が前回の吸気管圧力Pm(i-1)とされ、ステップ110では、今回の吸気管内のガス温度Tm(i)が前回の吸気管内のガス温度Tm(i-1)とされる。さらに、ステップ111では、今回のスロットル弁通過空気量mt(i)が前回のスロットル弁通過空気量mt(i-1)とされ、ステップ112では、今回の制御弁通過排気ガス量megr(i)が前回の制御弁通過排気ガス量megr(i-1)とされ、ステップ113では、今回の吸入ガス量mc(i)が前回の吸入ガス量mc(i-1)とされる。
【0036】
こうして、吸入空気量mairは、制御弁の開度を考慮して、機関始動完了と同時に逐次算出される吸気管圧力Pmに基づき、逐次推定されることとなる。
【0037】
ところで、機関定常時においては、この機関定常時の吸気管圧力Pmtaを使用して、スロットル弁通過空気量mt(i)は、次式(14)により算出可能である。
【数7】
【0038】
本フローチャートのステップ103において、式(1)に代えて、式(14)を使用してスロットル弁通過空気量mt(i)を算出しても良い。ここで、機関定常時の吸気管圧力Pmtaは、今回の過渡終了時におけるスロットル弁開度、機関回転数、制御弁開度、及び、バルブオーバーラップ量に基づいて予めマップ化しておくことができる。
【0039】
こうして、機関回転数に応じて式(6)を使用して吸入ガス量が算出され、機関回転数と制御弁開度とに応じて式(5)を使用して吸入空気量が算出される。こうして算出された吸入ガス量と吸入空気量との差は制御弁通過排気ガス量となり、この制御弁通過排気ガス量に基づき吸入排気ガス量が算出される。次いで、吸入ガス量から吸入排気ガス量を減算することによって吸入空気量を算出することができるのである。
【0040】
式(6)及び式(5)は、特定排気量の内燃機関に合わせた吸入ガス量及び吸入空気量を表すものとしたが、任意の排気量の内燃機関に適合させるために、式(6)は、吸入ガス量相当値として、制御弁閉弁時の負荷率(吸入空気量/(一気筒分容積*標準状態空気密度))又は吸気充填効率を表すものとし、また、式(5)は吸入空気量相当値として負荷率又は吸気充填効率を表すものとしても良い。
【0041】
ところで、前述したように、制御弁の目標設定開度EAは、図8に示すように、機関負荷Lと機関回転数Nとにより定まる機関運転状態毎に設定されており、また、基準点火時期Aも図9に示すように機関運転状態毎に設定されている。基準点火時期Aは、制御弁開度0、すなわち、制御弁14が全閉されて排気再循環が停止されている場合における最適な点火時期である。それにより、制御弁が開弁されて排気再循環が実施されている時には、良好な燃焼を実現するために基準点火時期Aを進角しなければならず、そのための点火時期進角量ΔAも図10に示すように機関運転状態毎に設定されている。
【0042】
図9において、基準点火時期Aは、機関回転数が低いほど遅角側とされ、また、機関負荷が高いほど遅角側とされている。また、図10において、点火時期進角量ΔAは、吸入ガス量に対する吸入排気ガス量の割合が小さいほど小さくされている。
【0043】
各機関運転状態の点火時期進角量ΔAは、各機関運転状態において制御弁14が設定開度で開弁されて、この設定開度に見合った定常量の排気ガスが気筒内へ再循環された時に適して基準点火時期を進角するように設定されている。それにより、機関運転状態の変化に伴って制御弁開度が変化している途中又は変化直後において、変化後の機関運転状態に対して設定された基準点火時期A及び点火時期進角量ΔAを使用して点火時期を決定しても、この時には、意図する定常量の排気ガスが気筒内へ再循環されておらず、良好な燃焼を実現することができない。
【0044】
本実施形態では、前述のフローチャートのステップ107において読み込まれた現在の吸入排気ガス量megrsm(i)と、ステップ104において算出した定常時の吸入排気ガス量megrrq(i)との比rによって次式(15)のように補正し、補正された点火時期進角量ΔA’により基準点火時期Aを進角するようにしている。
【0045】
機関運転状態の変化によって制御弁の設定開度が大きくなる場合には、前述の比r(i)は1より小さな値から1へ向かって収束することとなる。しかしながら、制御弁の設定開度が小さくなる場合には、前述の比r(i)は1より大きな値から1へ向かって収束するようになり、この場合には、変化後、すなわち、現在の機関運転状態に対応する点火時期進角量ΔAは、比rによって大きく補正されることとなる。
【0046】
点火時期進角量ΔAは、前述したように、現在の機関運転状態における制御弁の目標設定開度に基づく定常時の吸入排気ガス量に基づき定められたものであり、この点火時期進角量ΔAを、現在の実際の制御弁開度と現在の吸気管圧力とに基づき正確に現在の吸入排気ガス量を算出して補正するために、現在の吸入排気ガス量に適した点火時期進角量ΔA’が算出され、良好な燃焼を実現することができる。
【0047】
前述の比r(i)の分子は、気筒内への流入遅れを考慮した現在の吸入排気ガス量megrsm(i)としたが、現在の制御弁開度に基づく制御弁通過排気ガス量megr(i)としても、従来に比較して良好な点火時期進角量ΔA’を算出することができる。
【0048】
前述したように、現在の制御弁開度と現在の吸気管圧力とに基づき算出される現在の吸入排気ガス量に応じて点火時期進角量ΔAが補正されるようになっているために、制御弁開度が目標設定開度へ変化するまでに、何らかの要因に伴うガード処理(例えば、機関冷間時に再循環排気ガス量を減少させるためのガード処置)によって制御弁動作が停止させられて制御弁の目標設定開度が実現されないような場合にも良好な点火時期進角量ΔAの補正を実施することができる。
【0049】
ところで、機関高負荷時は、それだけでもノッキングが発生し易いことに加えて、再循環排気ガスによって気筒内の温度が高まると、さらにノッキングが発生し易くなる。それにより、機関低負荷時と同様に点火時期進角量ΔAを補正したのでは、現在の吸入排気ガス量に対して進角が不十分となってノッキングが発生することがある。
【0050】
それにより、前述の比rを補正するための補正係数qを設けて、次式(16)のように点火時期進角量ΔAを補正するようにし、機関負荷が高まるほど比rを大きくするようにしても良い。
ΔA’=ΔA・r(i)・q(i) ・・・(16)
【0051】
具体的には、q(i)は比r(i)と機関負荷Lとに基づき図11のように設定される。こうして、制御弁のアクチュエータへ作動信号が与えられてから制御弁が目標設定開度となった後に吸入排気ガス量が定常量となるまでの間において、制御弁の設定開度が増加する場合には、機関負荷が高いほど早く設定点火時期進角量ΔAに近い進角量を使用しての点火時期の進角が実施され、また、制御弁の設定開度が減少する場合(この場合には、機関運転状態の変化前後で設定点火時期進角量ΔAは小さくなる)には、機関負荷が高いほど遅く設定点火時期進角量ΔAに近い進角量を使用しての点火時期の進角が実施される。こうして、いずれの場合にも、機関負荷が高いほど、当初の点火時期は基準点火時期から大きく進角されることとなり、言い換えれば、当初から基準点火時期近傍での点火は実施され難くなり、良好な点火時期を実現することができる。
【0052】
図11において、補正係数qは、機関低負荷時には比rに係らずに1が設定され、比rが小さい時には機関負荷が高まるほど大きな値が設定されている。また、1より大きな各機関負荷での補正係数は、比rが大きくなるにつれて徐々に1へ近づけられ、比rが1となる時には、機関負荷に係らずに1とされている。補正係数qの最大値は、比rが小さくて機関高負荷時の場合であり、例えば2が設定されているが、この最大値は、1より大きな任意の値として良い。しかしながら、最大値を大きくし過ぎると、特に機関運転状態の変化前後で制御弁の目標設定開度が減少する場合に、この補正係数最大値が使用されると、機関運転状態の変化直後、すなわち、吸入排気ガス量が僅かしか減少しておらず、変化後の機関運転状態に対する定常時の吸入排気ガス量より多い時に、変化前の機関運転状態に対する設定点火時期進角量より変化後の機関運転状態に対する設定点火時期進角量を補正した値ΔA’が大きくなり、吸入排気ガス量が僅かであっても減少しているのに、点火時期が進角されてしまうことがあり、これは好ましくない。このような場合に備えて、補正された点火時期進角量ΔA’にガード処理を実施するようにしても良い。
【0053】
ところで、燃焼空燃比を正確に制御するためには、燃料噴射を開始する以前に気筒内への正確な吸入空気量を推定して、燃料噴射量を決定しなければならない。しかしながら、正確な吸入空気量を推定するためには、厳密には、吸気弁閉弁時における吸入空気流量を算出しなければならない。すなわち、燃料噴射量を決定する時において、現在の吸入空気量mair(i)ではなく、吸気弁閉弁時における吸入空気量mair(i+n)を算出しなければならない。これは、図1に示すような吸気枝管3に燃料を噴射する内燃機関だけでなく、吸気行程において筒内へ直接燃料を噴射する内燃機関においても同様である。
【0054】
そのためには、現在において、現在のスロットル弁開度TA(i)だけでなく、吸気弁閉弁時までの時間Δt毎のスロットル弁開度TA(i+1),TA(i+2),・・・TA(i+n)に基づき、式(1)においてμ1・Atを変化させ、又は、式(15)においてPmTAを変化させ、各時間のスロットル弁通過空気量mtを算出することが必要となる。
【0055】
各時間のスロットル弁開度TAは、現在の時間に対するアクセルペダルの踏み込み変化量に基づき、この踏み込み変化量が吸気弁閉弁時まで持続するとして、各時間のアクセルペダルの踏み込み量を推定し、それぞれの推定踏み込み量に対して、スロットル弁アクチュエータの応答遅れを考慮して決定することが考えられる。この方法は、スロットル弁がアクセルペダルと機械的に連結されている場合にも適用することができる。
【0056】
しかしながら、こうして推定される吸気弁閉弁時におけるスロットル弁開度TA(i+n)は、あくまでも予測であり、実際と一致している保証はない。吸気弁閉弁時におけるスロットル弁開度TA(i+n)を実際と一致させるために、スロットル弁を遅れ制御するようにしても良い。アクセルペダルの踏み込み量が変化した時に、アクチュエータの応答遅れによって、スロットル弁開度は遅れて変化するが、この遅れ制御は、このスロットル弁の応答遅れを意図的に増大させるものである。
【0057】
例えば、機関過渡時において、燃料噴射量を決定する時における現在のアクセルペダルの踏み込み量に対応するスロットル弁開度が、吸気弁閉弁時に実現されるように、実際の応答遅れ(無駄時間)を考慮してスロットル弁のアクチュエータを制御すれば、現在から吸気弁閉弁時までの時間毎のスロットル弁開度TA(i),TA(i+1),・・・TA(i+n)を正確に把握することができる。さらに具体的に言えば、アクセルペダルの踏み込み量が変化する時には、直ぐにアクチュエータへ作動信号を発するのではなく、燃料噴射量を決定する時から吸気弁閉弁時までの時間から無駄時間を差し引いた時間だけ経過した時にアクチュエータへの作動信号を発するようにするのである。もちろん、現在のアクセルペダルの踏み込み量に対応するスロットル弁開度を、吸気弁閉弁時以降に実現するようにスロットル弁の遅れ制御を実施しても良い。
【0058】
ところで、吸気通路4には、エアフローメータ7が配置されている。図12はエアフローメータ7の断面モデルを示している。エアフローメータ7は、熱線7aの周囲を吸気が通過する際に熱線7aから奪われる熱量がこの吸気量、すなわち、スロットル弁通過空気量に応じて変化するのを利用してスロットル弁通過空気量を検出するものである。こうして、エアフローメータ7の出力に基づきマップ等からスロットル弁通過空気量GA(i)(このマップ値には、算出されるスロットル弁通過空気量mt(i)と区別するために異なる記号を付する)を得ることができる。
【0059】
しかしながら、一般的なエアフローメータにおいて、熱線7aの回りにはガラス層7bが設けられていて、このガラス層7bの熱容量は比較的大きい。それにより、実際のスロットル弁通過空気量の変化に対してエアフローメータ7の出力は直ぐには変化せずに応答遅れが発生する。この応答遅れを見越してエアフローメータの出力から実際のスロットル弁通過空気量mt(i)を算出することを考える。
【0060】
現在の熱線7aの温度をThとすると、熱線7aからガラス層7bへ伝達される熱量と、ガラス層7bから吸気へ伝達される熱量とは等しいために、ガラス層Bの温度変化量dTg/dtは次式(17)のように表すことができる。
【数8】
【0061】
ここで、C、D、E、及びFは、熱線7aの断面積、長さ、及びその抵抗率や、ガラス層7bと熱線7aとの間の熱伝達率、ガラス層7bと吸気との間の熱伝達率等に応じて決定される定数である。式(17)において、定常運転時には、ガラス層7bと、熱線7a及び吸気との間の熱の授受が無くなるために、ガラス層7bの温度変化量dTg/dt、すなわち、式(17)の右辺は0になり、また、この時、スロットル弁通過空気量のマップ値GAと算出値mtとは等しくなる。この条件により、GAを熱線7aの温度Th、ガラス層7bの温度Tg、及び、吸気温度Taにより表して、式(17)においてガラス層7bの温度Tgを消去することにより、次式(18)を得ることができる。
【数9】
【0062】
式(18)において、α及びβは、前述の定数C、D、E、及びFによって定まる定数であり、こうして、スロットル弁通過空気mt(i)は、エアフローメータの応答遅れを考慮して、現在のエアフローメータ7の出力に基づくスロットル弁通過空気量のマップ値GA(i)と、前回のエアフローメータ7の出力に基づくスロットル弁通過空気量のマップ値GA(i-1)とに基づいて算出することができる。
【0063】
エアフローメータ7の出力は機関定常時において信頼性が高く、それにより、機関定常時においては、式(18)を使用して算出される現在のスロットル弁通過空気量mt(i)は、式(1)又は(14)により算出されるスロットル弁通過空気量よりも信頼性が高い。こうして、機関定常時には、式(18)により算出された前回のスロットル弁通過空気量mt(i-1)を使用して、式(10)において今回の吸気管圧力Pm(i)を算出すると共に式(9)において今回のスロットル弁下流側の吸気温度Tm(i)を算出して、今回の吸入空気量mair(i)を算出することが好ましい。
【0064】
それにより、図7に示すフローチャートを使用して、現在の吸入空気量mair(i)及び吸気弁閉弁時の吸入空気量mair(i+n)を算出すると共に、前述のように式(18)に基づき現在の吸入空気量mairf(i)を逐次算出し、吸気弁閉弁時の吸入空気量を、mair(i+n)−mair(i)+mairf(i)により算出するようにしても良い。このような算出方法により、機関定常時には、同じモデル式に基づき同じスロットル弁開度として算出されるmair(i+n)とmair(i)とが確実に相殺され、エアフローメータの出力に基づき算出される正確な現在の吸入空気量が、吸気弁閉弁時の吸入空気量として得られる。
【0065】
また、機関過渡時には、mair(i)とmairf(i)とがほぼ相殺されるために、mair(i+n)として算出された吸気弁閉弁時の吸入空気量を得ることができる。以上は、エアフローメータを有する実施形態の場合であるが、吸気管内に圧力センサを配置して、吸入空気量の算出に使用する吸気管圧力Pmを、計算値でなく、圧力センサに出力値としても良い。本実施形態において、機関運転状態毎に点火時期進角量ΔAを設定したが、もちろん、機関運転状態毎に排気再循環実施時の点火時期を設定し、この点火時期と排気再循環停止時の基準点火時期Aとの差を点火時期進角量ΔAとして算出するようにしても良い。
【0066】
【発明の効果】
本発明による内燃機関の点火時期制御装置は、機関運転状態毎に、制御弁を全閉とした時の基準点火時期と、制御弁の目標設定開度と、制御弁が目標設定開度とされた時の定常時の吸入排気ガス量に適した点火時期進角量とが設定され、機関運転状態が変化する機関過渡時に、点火時期進角量は、制御弁の現在の開度と現在の吸気管圧力とに基づき算出される気筒内への現在の吸入排気ガス量と、定常時の吸入排気ガス量との比によって補正され、補正された点火時期進角量だけ基準点火時期を進角して点火を実施するようになっている。それにより、現在の吸入排気ガス量は、制御弁の開閉指令直後における機関過渡時においても、制御弁の開度だけでなく吸気管圧力を考慮して正確に算出されており、吸入排気ガス量、すなわち、再循環排気ガス量に応じた良好な点火時期制御が実現され、十分に燃焼の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による点火時期制御装置が取り付けられる内燃機関の概略図である。
【図2】スロットル弁開度TAと流量係数μ1との関係を示すマップである。
【図3】スロットル弁開度TAとスロットル弁の開口面積Atとの関係を示すマップである。
【図4】吸気管圧力Pmと大気圧Paとの比と、関数Φとの関係を示すマップである。
【図5】吸気管圧力Pmと制御弁通過排気ガス量megrとの関係を示すグラフである。
【図6】制御弁開度毎の吸気管圧力Pmと吸入空気量KLとの関係式を示している。
【図7】吸入空気量を算出するためのフローチャートである。
【図8】制御弁の設定開度のマップである。
【図9】基準点火時期のマップである。
【図10】点火時期進角量のマップである。
【図11】補正係数のマップである。
【図12】エアフローメータの断面モデルを示す図である。
【符号の説明】
1…機関本体
2…サージタンク
3…吸気枝管
4…吸気通路
6…スロットル弁
7…エアフローメータ
8…吸気弁
13…排気再循環通路
14…制御弁
Claims (2)
- 制御弁を備える排気再循環通路がスロットル弁の下流側の吸気管へ接続されている内燃機関の点火時期制御装置であって、機関運転状態毎に、前記制御弁を全閉とした時の基準点火時期と、前記制御弁の目標設定開度と、前記制御弁が前記目標設定開度とされた時の定常時の吸入排気ガス量に適した点火時期進角量とが設定され、機関運転状態毎に前記点火時期進角量だけ前記基準点火時期を進角して点火を実施する内燃機関の点火時期制御装置において、機関運転状態が変化する機関過渡時に、前記点火時期進角量は、前記制御弁の現在の開度と現在の吸気管圧力とに基づき算出される気筒内への現在の吸入排気ガス量と、前記定常時の吸入排気ガス量との比によって補正され、前記現在の吸気管圧力は、吸気管内に存在する吸気及び排気ガスの質量保存則、エネルギ保存則、及び状態方程式を使用して、離散時間毎に、前回の吸気管圧力と、前回のスロットル弁通過空気量と、前回の制御弁通過排気ガス量と、前回の吸入ガス量と、前回の吸気温度と、前回の排気ガス温度とに基づき算出され、補正された前記点火時期進角量だけ前記基準点火時期を進角して点火を実施することを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
- 前記点火時期進角量を補正するための前記比を機関負荷に応じて補正する補正係数を有し、前記補正係数は、前記比を機関低負荷時より機関高負荷時の方が大きくなるように補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置。
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