JP3995520B2 - 磁気再生ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気的に磁化方向が固定される被固定層を含む磁気再生ヘッドおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
初期の磁気再生ヘッドでは、パーマロイ(ニッケル鉄合金)のような強磁性材料が示す異方性磁気抵抗(AMR)効果を利用することにより、ディスクあるいはテープのような媒体上に磁気的に記録されたデータを読み取り、再生していた。AMR効果とは、外部磁場により特定の磁性材料の電気抵抗rが変化することである。この場合、電気抵抗rは、この磁性材料の磁化方向と、この磁性材料を流れる電流の方向とがなす角度に比例する。磁気的に情報がコード化されたディスクやテープ等の記録媒体を再生するには、次のように行う。すなわち、記録媒体を回転させて磁場を変化させることにより、再生ヘッドにおける磁化方向を変える。この際、AMR効果による抵抗変化が生じるので、これを適切な回路によって感知し記録媒体上の情報として再生する。
【0003】
しかし、AMR効果により生じるわずかな抵抗変化、すなわちDr/r(Drは異方性磁場Hkにおける抵抗と、磁場が0の場合の抵抗との差を表す。)は最大でも数パーセント程度しかない。このため、上述した抵抗変化を正確に検出することが困難であった。これがAMR効果の欠点の一つである。
【0004】
1980年後半から1990年代の初めにかけて、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance )効果という現象が発見され、磁気再生ヘッド技術に直ちに応用された。GMR効果を利用した磁気再生ヘッドは、厚みが実に2nmから8nm程度という薄い2つの強磁性層と、それら2つの強磁性層を隔てるように設けられた、さらに薄い(2nmから3nm程度の厚み)導電性非磁性層とを含む積層体を有している。GMR効果とは、上記のような磁気再生ヘッドの積層体において、2つの強磁性層のスピン間の交換相互作用により、強磁性状態(2つの強磁性層の磁化方向が互いに平行な状態)あるいは反強磁性状態(2つの強磁性層の磁化方向が互いに反平行な状態)になるという現象から得られる効果である。このような積層体に電流を流した場合、積層体の中を通過する電子は導電性非磁性層と強磁性層との界面においてスピン依存散乱をする。このため、積層体が反強磁性状態の場合には、強磁性状態の場合よりも磁気抵抗効果がはるかに高くなる。さらには、抵抗値変化はわずかなものではあるが、個々の磁性層が示すAMR効果による抵抗値変化よりもはるかに大きい。
【0005】
GMR効果が発見された直後にスピンバルブ磁気抵抗効果(SVMR:Spin Valve Magnetoresistance)と呼ばれる一種のGMR効果が発見され、再生ヘッドに導入された。GMR効果の一種であるこのSVMR効果は、次のような積層体によって発揮される。その積層体は、例えばコバルト鉄合金あるいはニッケル鉄合金によって形成される2つの強磁性層と、この2つの強磁性層を隔てるように導電性非磁性材料(例えば銅)によって形成される薄膜と、2つの強磁性層のうちの一方に隣接して形成される反強磁性層とからなる。一方の強磁性層は、磁化方向が固定された被固定層であり、この被固定層に隣接して形成された反強磁性層による交換結合磁場によって、磁化方向が固定されている。他方の強磁性層は、磁化方向が固定されていないフリー層である。磁気媒体からの情報再生時に磁気媒体が移動することによって外部磁場の小さな変化が生じるが、この変化に応じて、フリー層の磁化方向が回転する。ところが一方の被固定層における磁化方向はこの小さな変化に影響されない。このように、フリー層の磁化方向が回転して被固定層の磁化方向とは別の方向になると、上記積層体の磁気抵抗効果が変化するのである。
【0006】
スピンバルブ構造は、現在では、磁気再生ヘッドを形成する重要な構成要素の1つとなっている。最近の特許では、様々な新規材料を適用して、強磁性あるいは反強磁性を示す被固定層あるいは固定作用層を形成したり、層の数、配置あるいは面積を変えたりすることによって、スピンバルブ構造の感度や安定性を改良する発明が多くみられる傾向にある。これに関連し、Kanai による米国特許第5896252号では、コバルト鉄合金層およびニッケル鉄合金層よりなる2層構造中にフリー層を組み込んだスピンバルブ磁気抵抗効果(SVMR)ヘッドを形成する方法について開示されている。また、Fontana Jr. 等による米国特許第5701223号では、反強磁性交換バイアス層と結合し、磁気的な交換結合によって反平行配置となる被固定層を用いたスピンバルブ磁気抵抗効果センサの製造方法が開示されている。この被固定層は、非磁性交換結合層によって隔てられた2つの強磁性膜を備える。
【0007】
Yamadaによる米国特許第5852531号では、応答特性における非対称性を低減したスピンバルブ磁気抵抗効果(SVMR)ヘッドの製造方法が開示されている。このSVMRヘッドでは、被固定層とフリー層との磁化方向の変化によって引き起こされる巨大磁気抵抗(GMR)効果と、単一層からなるフリー層の磁化方向と電流方向とがなす角によって引き起こされる異方性磁気抵抗(AMR)効果とを競合させることによって非対称性を低減している。さらに、Gillによる米国特許第5920446号では、フリー層、被固定層および固定作用層を用いずに、2つのフリー層を用いて超高密度記録用GMRヘッドを形成する方法について開示されている。このような構造によって、再生ヘッド全体の厚みが薄くなり、記録密度がより高い媒体の情報の読み取りに適した再生ヘッドが得られる。また、この構造における2つのフリー層は、各々、スペーサ層を介して反平行の配置で結合した2つの強磁性層を含む積層体である。このような構造をもつ積層体にセンス電流が流れると、フリー層における磁化方向の決定に必要なバイアス磁場が生じ、少なくともどちらか一方のフリー層の磁化方向が変化する。これにより、読み取りに必要な抵抗変化が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ハードディスク等の磁気記録媒体の記録密度は増加する一方であり、現在では、1平方インチ当たり35ギガビット(35Gbits/inch2 ≒5.43Gbits/cm2 )を越える勢いである。したがって、今後、スピンバルブ磁気抵抗効果(SVMR)再生ヘッドの設計あるいは製造を行うにあたっては、上記のような超高密度記録媒体に対応できるように、さらなる改良が必要となる。具体的には、超高密度記録媒体の情報を読み取るには、再生ヘッドのリードギャップをさらに狭くする必要があり、これに応じて磁性層をさらに薄くする、あるいは磁性層の数をさらに少くする等の改良が必要となる。しかしながら、これらの層の厚みを減らすと、バイアス・ポイントの制御がますます困難になり、GMR比(Dr/r)が低下し、良好な軟質磁性が十分に得られなくなる。この結果、再生ヘッドの出力性能が低くなり信頼性がなくなる。また、現在製造されている上記のようなSVMRセンサは、1平方インチ当たり数ギガビット(およそ0.16〜1.55Gbits/cm2 )程度の記録密度に適しているが、高密度の記録媒体から情報を正確に再生するために必要な熱安定性などの物理的性質を備えていない。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、バイアスポイントの制御が容易で、高い磁気抵抗効果変化率(Dr/r)を保ち、良好な軟質磁性を得ることが可能な磁気再生ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、35Gbits/inch2 (≒5.43Gbits/cm2 )以上の超高密度記録に対応した磁気記録媒体の再生に適した磁気再生ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第3の目的は、優れたバイアスポイントの制御性、熱に対する安定性および高出力性能を有する磁気再生ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法は、超高記録密度に対応したスピンバルブ型構造を有する磁気再生ヘッドの製造方法であって、基板上に、ニッケルクロム合金を用いて4nm以上7nm以下の厚みとなるようにシード層を形成する第1の工程と、このシード層上に、ルテニウムを用いて、0.3nm以上0.5nm以下の厚みとなるように緩衝層を形成する第2の工程と、この緩衝層上に、コバルト鉄合金を用いて1.0nm以上6.0nm以下の厚みとなるように磁化方向が自由に回転するフリー層を形成する第3の工程と、このフリー層上に、銅を用いて、1.8nm以上3.0nm以下の厚みとなるように第1の非磁性スペーサ層を形成する第4の工程と、この第1の非磁性スペーサ層上に、コバルト鉄合金を含むと共に0.8nm以上2.0nm以下の厚みをなす第1の強磁性層と、ニッケルクロム合金を含むと共に0.2nm以上0.5nm以下の厚みをなす第2の非磁性スペーサ層と、コバルト鉄合金を含むと共に0.4nm以上1.0nm以下の厚みをなす第2の強磁性層とをこの順に積層することにより、強磁性結合構造を有する被固定層を形成する第5の工程と、この被固定層上に、マンガン白金合金を用いて10.0nm以上30.0nm以下の厚みとなるように固定作用層を形成する第6の工程と、この固定作用層上に、保護層を形成する第7の工程と、全体を第1の磁場においてアニール処理を施すことにより、被固定層の磁化方向を固定する第8の工程と、全体を第1の磁場よりも低い第2の磁場においてアニール処理を施すことにより、フリー層の磁化方向を初期状態に戻す第9の工程とを含むようにしたものである。
【0013】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法では、シード層上に、磁気抵抗効果を増加させる材料からなる緩衝層と、強磁性材料からなり磁化方向が自由に回転するフリー層と、非磁性材料からなる第1の非磁性スペーサ層と、被固定層と、固定作用層とをこの順に形成するので、外部磁場が印加されたときの磁気抵抗変化率が向上する。続く工程で、全体を第1の磁場においてアニール処理を施すことによって被固定層の磁化方向を固定するので、外部磁場による被固定層の磁化方向変化を抑制することができる。さらに続く工程で、全体を第1の磁場よりも低い第2の磁場においてアニール処理を施すことによってフリー層の磁化方向を初期状態に戻すので、フリー層における困難軸方向への磁化に必要な磁場を小さくすることができる。
【0020】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法では、厚みの比率が2:1となるように第1および第2の強磁性層を形成することが望ましい。
【0023】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法では、第7の工程において、ニッケルクロム合金、ニッケル鉄クロム合金、およびタンタル(Ta)よりなる群のうちの少なくとも1種を用いて、2.0nm以上5.0nm以下の厚みとなるように保護層を形成するようにしてもよい。
【0024】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法では、第8の工程において、2000/(4π)×103 A/mの横方向の磁場中で、5時間に亘り、280℃の温度でアニール処理を行うようにしてもよい。
【0025】
本発明の磁気再生ヘッドの製造方法では、第9の工程において、50/(4π)×103 A/mの縦方向の磁場中において、30分間に亘り、290℃の温度でアニール処理を行うようにするとよい。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気再生ヘッドの構成について説明する。
【0038】
図1は、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドの要部断面構成を表すものである。この磁気再生ヘッドは、例えば基板10の上に、シード層12と、緩衝層14と、トップスピンバルブ構造体32と、保護層30とがこの順に積層された構造を含んでいる。
【0039】
基板10は、例えば、0.02以上0.04μm以下の厚みを有する酸化アルミニウム(Al2 O3 ;以下、「アルミナ」という。)によって構成されている。シード層12は、例えば、ニッケルクロム(NiCr)合金あるいはニッケル鉄クロム(NiFeCr)合金により構成され、厚みは4.0nm以上7.0nm以下であることが望ましい。続く緩衝層14は、磁気抵抗効果を増加させる機能を有する。この緩衝層14は、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)あるいはイリジウム(Ir)等により構成されており、その厚みは0.3nm以上2.5nm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5nmである。
【0040】
トップスピンバルブ構造体(以下、単に「SV構造体」という。)32は、フリー層16と、非磁性層18と、被固定層20と、固定作用層28とがこの順に積層された構造を有しており、一般に「シングルトップスピンバルブ型」と呼ばれるものである。トップスピンバルブの「トップ」とは、被固定層20がフリー層16を挟んで基板10から遠い側、すなわち、基板10を下にした場合に被固定層20がフリー層16よりも上部側にあることを意味する。ここで、非磁性層18が本実施の形態における「第1の非磁性スペーサ層」の一具体例に対応するである。
【0041】
フリー層16は、強磁性材料、例えばコバルト鉄(CoFe)合金あるいはコバルト鉄ボロン(CoFeB)合金等により構成され、磁気記録媒体等により発生される信号磁場に応じて磁化方向が自由に回転するようになっている。フリー層16の好ましい厚みは、1.0nm以上6.0nm以下であり、より好ましくは2nmである。非磁性層18は、非強磁性導電材料、例えば銅(Cu)等により構成されており、その好ましい厚みは1.8nm以上3.0nm以下である。被固定層20は、第1の強磁性層22と、非磁性層24と、第2の強磁性層26とがこの順に積層され、第1および第2の強磁性層22,26が強磁性結合したものである。ここで、非磁性層24が本発明における「第2の非磁性スペーサ層」の一具体例に対応するものである。
【0042】
第1の強磁性層22は、例えば、CoFe合金、NiFe合金、コバルト(Co)、あるいはCoFeB合金等により構成され、その厚みは0.8nm以上2.0nm以下であることが好ましく、1.1nmであることがより好ましい。非磁性層24は、例えば、好ましくは0.2nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.35nmの厚みを有し、NiCr合金あるいはNiFeCr合金等により構成されている。さらに第2の強磁性層26は、例えば第1の強磁性層22と同様に、CoFe合金、NiFe合金、コバルト(Co)、あるいはCoFeB合金等により構成されている。その厚みは、好ましくは0.4nm以上1.0nm以下であり、より好ましくは0.5nmである。第1および第2の強磁性層22,26が上記のようにCoFe合金、NiFe合金、コバルトあるいはCoFeB合金で構成されている場合、第1の強磁性層22と第2の強磁性層26との厚みの比率は2:1であることが好ましい。この比率で第1および第2の強磁性層22、26を構成すると、被固定層20の性能が効果的に発揮される。
【0043】
固定作用層28は、交換結合により被固定層20の磁化方向を固定するものである。この固定作用層28は、高いブロッキング温度、高い交換バイアス磁場(Hex)および優れた耐食性を有する材料により構成されていることが望ましい。例えば、マンガン白金(MnPt)合金あるいはマンガン白金パラジウム(MnPtPd)合金等である。上記の材料により構成される場合、10.0nm以上30.0nm以下の厚みであることが好ましく、特に20.0nmの厚みであることが好ましい。固定作用層28は、あるいは、イリジウムマンガン(IrMn)合金により構成されていてもよく、その場合、5.0nm以上15.0nm以下の厚みであることが望ましい。
【0044】
保護層30は、例えば、NiCr合金、NiFeCr合金、あるいはタンタル(Ta)等により構成されており、好ましくは2.0nm以上5.0nm以下の厚みを有し、より好ましくは3.0nmの厚みであることが好ましい。
【0045】
本実施の形態に係る磁気再生ヘッドの要部構成について、より好ましい例をまとめるとシード層12から保護層30まで積層順に「NiCr(ニッケルクロム合金)(X1)/Ru(ルテニウム)(X2)/CoFe(コバルト鉄合金)(X3)/Cu(銅)(X4)/CoFe(X5)/NiCr(X6)/CoFe(X7)/MnPt(マンガン白金合金)(X8)/NiCr(X9)」となる。ここで、括弧内に示したX1〜X9はそれぞれ各層の厚み範囲であり、それらの具体的数値は表1に示したとおりである。
【0046】
【表1】
【0047】
本実施の形態の磁気再生ヘッドでは、磁気再生ヘッドに備えられた図示しない強磁性層によりSV構造体32に対して縦方向バイアスが印加された状態で、図示しない導電リード層を通じてSV構造体32にセンス電流が流れると、巨大磁気抵抗(GMR)効果が生じる。このGMR効果を利用して、磁気記録媒体に記録された信号磁場がSV構造体32によって検出されることにより、情報の再生が行われる。
【0048】
次に、図1を参照して、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドの製造方法について説明する。なお、磁気再生ヘッドの各構成要素の材質、層厚、および構造的特徴等については既に詳細に説明したので、以下では適宜省略する。
【0049】
本実施の形態に係る磁気再生ヘッドは、以下のように、既存の成膜手法、例えば、DCマグネトロンスパッタリング等を利用して基板10上に各層を積層することにより形成する。具体的には、最初に基板10を用意する。次いで、この基板10上にシード層12、緩衝層14、フリー層16、非磁性層18、第1の強磁性層22、非磁性層24、第2の強磁性層26、固定作用層28および保護層30をこの順に積層することにより形成する。
【0050】
続いて、上記の工程によって形成された積層体、すなわち、基板10から保護層30までを含む積層体をアニール処理する。まず、この積層体に横方向、すなわち積層面内方向に、後述の第2の磁場よりも高い第1の磁場を印加してアニール処理を行う。この第1の磁場におけるアニール処理は、2000/(4π)×103 A/mの磁場中において、5時間に亘り、280℃の温度下で行うことが好ましい。これによって、被固定層20の磁化方向が固定される。
【0051】
第1の磁場におけるアニール処理を施したのち、さらに、第1の磁場よりも低い第2の磁場のアニール処理を行う。この場合、縦方向、すなわち積層方向へ第2の磁場を印加する。この第2の磁場におけるアニール処理は、50/(4π)×103 A/mの磁場中において、30分間に亘り、290℃の温度で行うことが好ましい。これよって、フリー層16の磁化方向が初期状態に戻る。以上により、磁気再生ヘッドの要部構成が完成する。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドおよびその製造方法では、SV構造体32とシード層12との間に磁気抵抗効果を増加させる材料を用いた緩衝層14を構成するようにしたので、磁気再生ヘッド全体の厚みをより薄くしつつ、バイアス・ポイントを容易に制御し、高いGMR比を保ち、良好な軟質磁性を得ることができる。
【0053】
すなわち、上記「発明が解決しようとする課題」の項において説明したように、従来の磁気再生ヘッドでは、磁気再生ヘッドの磁性層の厚みを薄くすると、バイアス・ポイントの制御が困難になり、GMR比(Dr/r)が低下し、十分な軟質磁性を得ることができなかった。これに対して、本実施の形態では、後述する実施例からも明らかなように、磁気再生ヘッドの構造は、フリー層16に隣接して緩衝層14を設けているので、緩衝層14とフリー層16との境界で伝導電子が全反射する。伝導電子が全反射すると、緩衝層14とフリー層16との境界で伝導電子のスピン依存散乱が起こり、この結果、GMR効果による磁気抵抗変化率Dr/rが増大する。したがって、フリー層16を薄くしても従来のように磁気抵抗変化率Dr/rが低下しない。このため、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドは、記録媒体からの磁気信号が高記録密度化によって従来よりもさらに弱くなっても検出することが可能である。特に、表1に示したルテニウムよりなる0.3nm以上2.5nm以下の厚みの緩衝層14およびCoFe合金よりなる1.0nm以上6.0nm以下の厚みのフリー層16では、上記の利点がより効果的に現れる。
【0054】
また、フリー層16の下に、緩衝層14が形成されていることにより、フリー層16の熱に対する安定性が高まり、非常に好ましい磁気的性質、特に軟質磁性および磁化の一方向性が得られる。よって、バイアス・ポイントの制御が容易になり、磁気信号に対する感度がさらに向上する。
【0055】
さらに、本実施の形態の被固定層20は第1の磁場におけるアニール処理を施すことによって磁化方向が一旦決定されると、強磁性結合構造となり、その磁化方向は実質的に一定方向のまま保持される。特に、後述する実施例からも明らかなように、「CoFe合金/NiCr合金/CoFe合金」という組み合わせで形成された被固定層20は、磁化方向の安定性という点において信頼性が非常に高い。
【0056】
さらに、磁気再生ヘッドに含まれる層の数は従来の構造体より少なく、したがって、ヘッドの厚み全体が従来の構造体よりも薄くなるので、超高密度で記録された磁気データの読み取りに有用で、磁気再生ヘッドの読み取り能力が向上する。また、磁気再生ヘッドの構造が単純なので、形成工程がさらに簡素化され、効率的にそして経済的に形成することができる。
【0057】
【実施例】
本実施の形態の磁気再生ヘッドにおける具体的な実施例について詳細に説明する。
【0058】
まず、緩衝層14を導入した本実施の形態の磁気再生ヘッドにおけるフリー層16の磁気的特性を調べた。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2は、フリー層16の磁気的特性を明らかにするための実験結果であり、「Bs(nWb)」はフリー層16の磁気モーメントを、「Hc(A/m)」はフリー層16の保磁力を、「Hk(A/m)」は異方性磁場を、「Rs(Ω/□)」はシート抵抗を、「Dr/r(%)」はGMR比をそれぞれ示す。さらに、「Hha(A/m)」は、フリー層16における磁化方向を困難軸(hard axis )に向けるために必要な磁場の大きさを示すものであり、この値が小さいほど理想的である。なお、表2には、本実施例の磁気的特性を評価するために、比較例も併記している。
【0061】
表2に示した一連の磁気再生ヘッドS11〜S14において、S11〜S13が比較例に対応し、S14が本実施の形態(図1参照)の実施例に対応する。なお、以下に列挙する構成は、磁気再生ヘッドのうち、主に、シード層からSV構造体の被固定層までの積層体の構成である。このうち、S11の積層体のみ、アニール処理を行わずに上記特性を調べた。S12〜S14の積層体については、2000/(4π)×103 (≒1.6×105 )A/mの大きさの横方向の磁場中において、280℃の温度下で5時間のアニール処理を施すことによって被固定層の磁化方向を固定したのち、上記特性を測定した。
【0062】
S11は、「タンタル層(7.5nm厚)/CoFe合金層(2.0nm厚)/銅層(3.0nm厚)/タンタル層(5.0nm厚)」という構成である。ここでは、タンタル層がシード層に対応し、CoFe合金層がフリー層に対応する。S12は、S11の積層体を上記条件でアニール処理したものである。S13は、「NiCr合金層(5.5nm厚)/CoFe合金層(2.0nm厚)/銅層(2.2nm厚)/NiCr合金層(5.0nm厚)」という構成である。NiCr合金層がシード層に対応し、CoFe合金層がフリー層に対応する。S14は、「NiCr合金層(5.5nm厚)/ルテニウム層(0.5nm厚)/CoFe合金層(2.0nm厚)/銅層(2.0nm厚)/NiCr合金層(5.0nm厚)」という構成である。ここでは、NiCr合金層がシード層12に、ルテニウム層が緩衝層14に、CoFe合金層がフリー層16にそれぞれ対応する。
【0063】
表2によれば、S11の磁気モーメントBsは0.25nWbであるが、S12の磁気モーメントは0.14nWbを示した。この磁気モーメントの減少は、上述のアニール処理の結果、タンタル層とCoFe合金層との間に内部拡散が生じたためである。
【0064】
S13の磁気異方性は弱く、実際には等方性とみなすことができる。また、フリー層の磁化方向を困難軸に向けるために必要な磁場Hhaは、1591.55A/mを超える大きな数値となった。
【0065】
S14では、保持力Hcが350.14A/mであり、かつ、異方性磁場Hkが732.11A/mとなり、保持力Hcおよび異方性磁場Hkが共に低い数値をであるので、磁気異方性は僅かである。磁場Hhaについては318.31A/mであり、S13の磁場Hhaよりもはるかに少ない。したがって、僅かな磁場に対してもフリー層の磁化方向は変化することができる。
【0066】
以上のように、本実施例S14は、緩衝層のない比較例S11〜S13と比較して、磁気特性、特にフリー層の異方性に優れ、磁気再生ヘッドとしてより好適な感度を有することが確認された。
【0067】
続いて、本実施の形態の磁気再生ヘッドにおいて、主に、被固定層の有する磁気特性に関する調査をおこなった。表3にその実験結果を示す。
【0068】
【表3】
【0069】
「Bs(nWb)」は磁気モーメント、「Hc(A/m)」は保磁力、「He(A/m)」は層間結合磁場、「Hk(A/m)」は異方性磁場、「Rs(Ω/□)」はシート抵抗、「Dr/r(%)」は磁気抵抗変化率(GMR比)、「Dr(Ω/□)」はGMR効果に基づく抵抗変化(すなわち、出力強度)、「回転角(°)」は被固定層の磁気モーメントの回転角を示す。この回転角の測定は、次のように行う。すなわち、被固定層の磁化方向を固定するための高磁場におけるアニール処理をした後に、磁気再生ヘッド全体に対する被固定層における磁気モーメントの相対的な方向について調べる。次いで、低磁場におけるアニール処理によってフリー層の磁化方向を元に戻した後、被固定層の磁気モーメントの方向を再度測定し、回転角の値を得るのである。この回転角が小さい場合、磁気再生ヘッドの信頼性、特に被固定層の信頼性が高いと言える。なお、表3には、本実施の形態の磁気再生ヘッドにおける被固定層の磁気的特性を明らかにするため、比較例の磁気的特性も併記している。
【0070】
表3中に示した一連の磁気再生ヘッドS21〜S24では、S21〜S23が比較例に対応し、S24が本実施の形態(図1参照)の実施例に対応する。なお、以下に列挙する構成は、磁気再生ヘッドのうち、主に、シード層から保護層までの構成である。フリー層についてはS21〜S24の全てに同じ材料(CoFe合金)を用い、かつ、同じ厚み(2.0nm厚)とした。S21〜S24の磁気再生ヘッドについては、まず、高磁場でのアニール処理(2000/(4π)×103 A/m,280℃,5時間)を行うことによって被固定層の磁化方向を固定し、続いて低磁場でのアニール処理(50/(4π)×103 A/m,290℃,30分間)を行うことによってフリー層の磁化方向を元の方向に回復させた。
【0071】
S21は、「Ta(7.5nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/Cu(3.0nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/MnPt(20nm厚)/Ta(5.0nm厚)」という構成であり、S22は、「NiCr(5.5nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/Cu(2.2nm厚)/CoFe(1.5nm厚)/MnPt(15nm厚)/NiCr(5.0nm厚)」という構成を有している。S21およびS22は共に、CoFeからなるフリー層の下に緩衝層を含まない構成となっている。S23は、「NiCr(5.5nm厚)/Ru(0.5nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/Cu(1.8nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/MnPt(20nm厚)/NiCr(2.0nm厚)」という構成を有している。さらに、S24は、図1に対応して、シード層12から保護層30まで順に「NiCr(5.5nm厚)/Ru(0.5nm厚)/CoFe(2.0nm厚)/Cu(1.8nm厚)/CoFe(1.1nm厚)/NiCr(3.5nm厚)/CoFe(0.5nm厚)/MnPt(20nm厚)/NiCr(2.0nm厚)」という構成となっている。このように、S23およびS24は共にフリー層の下にルテニウム(Ru)からなる緩衝層を備えている。さらに、S24は、「CoFe(1.1nm厚)/NiCr(3.5nm厚)/CoFe(0.5nm厚)」の3層構造からなる被固定層20を備えている点がS23と異なる。
【0072】
表3の結果から、アニール処理をしていないS21は、S22〜S24と比較して極めて低いGMR比(Dr/r)を示す一方で、ルテニウムの緩衝層を備えたS23およびS24は、高いGMR比と優れた異方性とを併せ持っていることがわかった。
【0073】
2.0nm厚のCoFe合金からなるフリー層の下に、S21ではタンタル(Ta)層を設け、S22ではNiCr合金層を設け、さらに、S23ではNiCr合金層/ルテニウム(Ru)層を設けた。このような構造において出力強度Drは、表3に示したように、S21が0.96、S22が2.44、S23が2.91となった。このことから、タンタル層上にフリー層を備えた構造では出力強度(Dr)が小さすぎ、超高記録密度に対応した再生ヘッドには適用できないことがわかった。さらに、緩衝層を備えた磁気再生ヘッドのほうが、より高い出力強度を発揮できることが確認できた。したがって、緩衝層を設けることにより磁気センサとしての感度の向上が見込まれる。
【0074】
回転角については、S21〜S23ではいずれも高い値を示し、被固定層における磁化方向の回転が大きいことがわかった。これにより、磁化方向の回転が無い場合と比べ、出力強度Drがおよそ10%減少すると見積もられる。一方、フリー層の下にルテニウムの緩衝層14が配設されると共に3層の積層構造からなる被固定層20を備えた本実施例S24では、回転角が1.5°未満と極めて小さい値である。よって、出力強度Drが低下せず、被固定層の信頼性が高いことがわかった。
【0075】
このように、本実施の形態の磁気再生ヘッドによれば、フリー層の異方性が優れていると共に被固定層の信頼性が高いので、信号磁場に対する高い感度を示し、磁気記録媒体の高密度化に対応できることがわかった。
【0076】
続いて、さらに被固定層の信頼性を実証するために次の2つの実験を行った。
【0077】
まず、表3のS21、S23、およびS24に示したスピンバルブ構造に磁場を印加し、GMR比(%)の磁場依存性を調べた。磁場の走査方法については次のようにした。まず、被固定層の磁化方向に磁場が6000/(4π)×103 (≒4.8×105 )A/mになるまで印加したのち、磁場をゼロに戻す。次いで、被固定層の磁化方向とは反対の方向に向かって6000/(4π)×103 (≒4.8×105 )A/mの磁場を印加し、再び、被固定層の磁化方向に向かって6000/(4π)×103 (≒4.8×105 )A/mの磁場を印加する。これらの結果を図2〜図4にヒステリシス曲線として示す。図2はS21に対応し、図3はS23に対応し、図4はS24に対応する。図2〜図4では、横軸が印加した磁場(×105 A/m)を表し、縦軸がGMR比(Dr/r(%))を表す。
【0078】
フリー層の下にタンタル層を用いたS21では、図2に示したように、ピンニング磁場が1100/(4π)×103 (≒0.88×105 )A/m、Hcが400/(4π)×103 (≒0.32×105 )A/mであった。さらにGMR比(Dr/r)が5.6%、出力強度(Dr)が0.96Ω/□であった。なお、「ピンニング磁場」とは、GMR比(Dr/r)がその最大値の半値になるときの2つの正磁場の値の平均値を意味し、「Hc」は、2つの正磁場の値の差の半値である。
【0079】
同様に、ルテニウムの緩衝層と、単層の被固定層とを備えたS23では、図3に示したように、ピンニング磁場が950/(4π)×103 (≒0.76×105 )A/m、Hcが400/(4π)×103 (≒0.32×105 A/mであった。さらにGMR比(Dr/r)が13.0%、出力強度(Dr)が2.90Ω/□であった。
【0080】
本実施の形態の構成に対応した実施例S24では、図4に示したように、ピンニング磁場が1100/(4π)×103 (≒0.88×105 )A/m、Hcが100/(4π)×103 (≒0.08×105 )A/m未満となった。さらにGMR比Dr/rが10.7%、出力強度Drが2.55Ω/□であった。
【0081】
以上のように図2〜図4を比較すると、本実施例S24では、被固定層のHcが非常に小さく、またヒステリシス曲線における開きがほとんど見られないことがわかった。この実験によって本実施の形態の構成を持つ被固定層の信頼性が高いことが確認された。
【0082】
続いて、表3のS21、S23、およびS24に示したスピンバルブ構造と同様の構造を有するS31、S33、およびS34を用意し、以下の実験を行った。まず、7000/(4π)×103 (≒5.6×105 )A/mの外部磁場を印加することで被固定層の磁化方向を所定の方向に一旦決めた後、反対の方向へ、新たに7000/(4π)×103 (≒5.6×105 )A/mの磁場を印加した。ここでGMR比(Dr/r)を測定し、磁化方向が変化するかどうかについて調べた。この結果を図5に示す。図5の縦軸はDr/r(%)を表し、横軸は印加した磁場(×105 A/m)を表す。ここで、Dr/rの低下は、被固定層の磁化方向の回転を意味する。フリー層の下にタンタル層を設けたS31では、磁場の増加に伴い、Dr/rは非常に緩やかに減少していくことがわかった。ルテニウムからなる緩衝層と、単層の被固定層とを備えたS33では、被固定層の磁化の回転は1000/(4π)×103 (≒0.80×105 )A/m付近から顕著に現れ、その後、回転は加速することがわかった。一方、本実施の形態の構成に対応するS34では、外部磁場の影響を受けずにDr/rはほとんど変化せず(すなわち、磁化方向が回転せず)、良好な信頼性を示すことが確認された。
【0083】
[従来の技術]の項に記したFontana Jr. 等による米国特許第5701223号等に示されている「CoFe合金/ルテニウム(Ru)/CoFe合金/MnPt合金」という構造の反強磁性結合被固定層(いわゆるシンセティック反強磁性被固定層)を備えるスピンバルブ構造は、その被固定層の信頼性が非常に高いことで知られている。一方、本実施の形態の被固定層20を備えた磁気再生ヘッドは、シンセティック反強磁性被固定層を備える磁気再生ヘッドと同程度の信頼性を有するだけでなく、上述したように多くの非常に有用な性質を有することもわかった。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドでは、基板10上にシード層12と、ルテニウム等の磁気抵抗効果を増加させる材料からなる緩衝層14と、CoFe合金等の強磁性材料からなり磁化方向が自由に回転するフリー層16と、銅等の非磁性材料からなる非磁性層18と、積層構造を有する被固定層20と、固定作用層28と、保護層30とを順に形成したのち、全体を第1の磁場においてアニール処理を施すことにより被固定層20の磁化方向を固定し、さらに、全体を第1の磁場よりも低い第2の磁場においてアニール処理を施すことによりフリー層16の磁化方向を初期状態に戻すようにしたので、磁気抵抗変化率が増加するとともに、フリー層16の熱に対する安定性が高まる。これによって、軟質磁性および磁化の一方向性が得られるため、バイアス・ポイントの制御が容易になると共に磁気信号に対する感度が向上し、高記録密度媒体から生じる従来よりも弱い磁気信号を検出できるようになる。
【0085】
さらに、被固定層20が積層構造であることによって、各層の層間結合磁場(He)が小さくなり、被固定層20によって生じる静磁場(経時変化しない磁場)は、センサ電流の磁場によって補償されるので、最適なバイアス・レベルを確保できることも確認できた。
【0086】
現在、35Gbits/inch2 (≒5.43Gbits/cm2 )を超えるような高密度磁気記録媒体からの情報読み取りを行うために、例えば上部シールドから下部シールドまでの長さが0.1μmのギャップをもつ磁気再生ヘッドおよび0.57μmの磁気再生トラック幅(MRW)の実現が試みられている。この微小なトラック幅に対する最高最低電圧の比率(Vpp/MRW)として測定されるセンサ感度が11mV/μmである磁気再生ヘッドを開発する必要がある。本実施の形態の磁気再生ヘッドは、このような高記録密度化にも十分対応することができるものである。
【0087】
以上、実施の形態およびいくつかの実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。すなわち、上記実施の形態および実施例において説明した磁気再生ヘッドの構成や材料、寸法、製造方法に関する詳細は必ずしもこれに限られるものではなく、薄いフリー層の下に緩衝層を構成すると共に、被固定層を積層構造にすることにより、バイアス・ポイントの制御が容易で、高GMR比(Dr/r)を保ち、十分な軟質磁性およびピンド層の信頼性を得ることが可能な限り、自由に変形可能である。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の磁気再生ヘッドの製造方法によれば、基板上に、ニッケルクロム合金を含むと共に4nm以上7nm以下の厚みをなすシード層と、ルテニウムを含んで0.3nm以上0.5nm以下の厚みをなす緩衝層と、コバルト鉄合金を含むと共に1.0nm以上6.0nm以下の厚みをなすフリー層と、銅を含むと共に1.8nm以上3.0nm以下の厚みをなす第1の非磁性スペーサ層と、コバルト鉄合金を含むと共に0.8nm以上2.0nm以下の厚みをなす第1の強磁性層と、ニッケルクロム合金を含むと共に0.8nm以上2.0nm以下の厚みをなす第2の非磁性スペーサ層と、コバルト鉄合金を含むと共に0.4nm以上1.0nm以下の厚みをなす第2の強磁性層と、マンガン白金合金を用いて10.0nm以上30.0nm以下の厚みをなす固定作用層と、保護層とを順に形成し、全体を第1の磁場においてアニール処理を施すことにより被固定層の磁化方向を固定したのち、全体を第1の磁場よりも低い第2の磁場においてアニール処理を施すことによりフリー層の磁化方向を初期状態に戻すようにしたので、緩衝層とフリー層との間で伝導電子が効果的に全反射し、優れたバイアスポイントの制御性、高いGMR比(Dr/r)および良好な軟質磁性を備えると共に、熱安定性および高出力性能を有し、超高密度記録に対応した磁気再生ヘッドを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気再生ヘッドの要部断面構成を説明するための断面図である。
【図2】比較例S21におけるDr/rの磁場依存性を示す図である。
【図3】比較例S23におけるDr/rの磁場依存性を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る実施例S24におけるDr/rの磁場依存性を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る実施例S34および比較例S31,S33における被固定層の信頼性を示す図である。
【符号の説明】
10…基板、12…シード層、14…緩衝層、16…フリー層、18…第1の非磁性スペーサ層、20…被固定層、22…第1の強磁性層、24…第2の非磁性スペーサ層、26…第2の強磁性層、28…固定作用層、30…保護層、32…トップスピンバルブ構造体。
Claims (5)
- 超高記録密度に対応したスピンバルブ型構造を有する磁気再生ヘッドの製造方法であって、
基板上に、ニッケルクロム(NiCr)合金を用いて4.0nm以上7.0nm以下の厚みとなるようにシード層を形成する第1の工程と、
このシード層上に、ルテニウム(Ru)を用いて、0.3nm以上0.5nm以下の厚みとなるように緩衝層を形成する第2の工程と、
この緩衝層上に、コバルト鉄(CoFe)合金を用いて1.0nm以上6.0nm以下の厚みとなるように磁化方向が自由に回転するフリー層を形成する第3の工程と、
このフリー層上に、銅(Cu)を用いて、1.8nm以上3.0nm以下の厚みとなるように第1の非磁性スペーサ層を形成する第4の工程と、
この第1の非磁性スペーサ層上に、コバルト鉄(CoFe)合金を含むと共に0.8nm以上2.0nm以下の厚みをなす第1の強磁性層と、ニッケルクロム(NiCr)合金を含むと共に0.2nm以上0.5nm以下の厚みをなす第2の非磁性スペーサ層と、コバルト鉄(CoFe)合金を含むと共に0.4nm以上1.0nm以下の厚みをなす第2の強磁性層とをこの順に積層することにより、強磁性結合構造を有する被固定層を形成する第5の工程と、
この被固定層上に、マンガン白金(MnPt)合金を用いて10.0nm以上30.0nm以下の厚みとなるように固定作用層を形成する第6の工程と、
この固定作用層上に、保護層を形成する第7の工程と、
全体を第1の磁場においてアニール処理を施すことにより、前記被固定層の磁化方向を固定する第8の工程と、
全体を前記第1の磁場よりも低い第2の磁場においてアニール処理を施すことにより、前記フリー層の磁化方向を初期状態に戻す第9の工程と
を含む
ことを特徴とする磁気再生ヘッドの製造方法。 - 厚みの比率が2:1となるように前記第1および第2の強磁性層を形成することを特徴とする請求項1に記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
- 前記第7の工程において、ニッケルクロム(NiCr)合金を用いて2.0nm以上5.0nm以下の厚みとなるように前記保護層を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気再生ヘッドの製造方法。 - 前記第8の工程において、2000/(4π)×103 A/mの横方向の磁場中において、5時間に亘り、280℃の温度でアニール処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気再生ヘッドの製造方法。 - 前記第9の工程において、50/(4π)×103 A/mの縦方向の磁場中において、30分間に亘り、290℃の温度でアニール処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
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