JP3986723B2 - 量子回路装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、量子回路装置に監視、特に3次元閉じ込めした量子ドット(量子箱)を用いた量子回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
3次元全てで閉じ込め(量子化)を行なった量子ドットは離散的な量子準位しか有さない。たとえば、基底状態と第1次励起状態(以下単に励起状態と言う)の2単位を量子ビット(キュビットqubit)として用い、量子演算を行なうことが可能である。バレンコ(Barenco)は、隣接する2つの量子ドット内に外部からの電界によって双極子モーメントを励起し、双極子モーメント同士のクーロン相互作用により2キュビット演算を行なうことを提案している。
【0003】
ロス(Loss)とディビンセンゾ(Divincenzo)は、量子ドット中の電子スピンを演算の基底とし、隣接する2つの量子ドット間のバリアを上げ下げすることによりトンネリングを制御する演算を提案した。バリアを下げるとトンネリングが可能となり、2キュビット演算のスイッチがオンとなる。
【0004】
2準位系として量子準位を用いると、レーザパルスを用いて比較的容易に演算を行なうことができる。但し、準位間緩和によるデコヒーレンスが無視し難い。2準位系としてスピンを用いるとデコヒーレンスは小さくできる。但し、磁場を高速で切り換えて印加することが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
量子演算を実行する量子回路装置は、未だ解決すべき種々の課題を有する。
【0006】
本発明の目的は、比較的安定に動作させることのできる量子回路装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、新規な量子演算方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の1観点によれば、大きいサイズの第1の主量子ドットと第1の主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、前記第1の演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2の演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットとを有する量子回路装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、大きいサイズの第1の主量子ドットと主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、前記第1演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットとを有し、ほぼ主量子ドットに局在する基底状態と、主量子ドットにはほぼ存在しない励起状態とを有する量子回路を用い、電子のスピンを演算の基底として演算を行なう工程を含む量子演算方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の態様】
複数の量子ドットを相互にトンネリング可能な範囲内に配置すると共通の量子状態を実現することができる。すなわち、複数の量子ドットを含む系全体として基底状態、励起状態を持つ。系内の量子ドットのサイズが異なるものは非対称結合量子ドットと呼ばれる。
【0011】
図1(A)を参照して、2つの量子ドットが非対称結合量子ドットを形成する場合を説明する。
【0012】
図1(A)はエネルギダイアグラムであり、横軸が位置を表し、縦軸がエネルギを表す。非対称結合量子ドットQAはサイズの比較的大きい主量子ドットQA0とサイズの比較的小さい従量子ドットQA1を含む。これら2つの量子ドットQA0、QA1は十分近接して配置され共通の量子状態を実現する。基底状態は、主量子ドットQA0にほぼ局在した状態であり、励起状態は従量子ドットQA1にほぼ局在した状態である。
【0013】
ここで、「ほぼ局在」とは、量子演算を行なう時間スケールで局在していると見なせる状態を言う。基底状態にある場合、電子は主量子ドットQA0に存在すると考えることができ、励起状態にある時電子は従量子ドットQA1に存在すると考えることができる。基底状態と励起状態とのエネルギ差に等しいエネルギー差を有し、遷移を起こすのに十分な強度、パルス長を有するπパルスを印加すると、基底状態の電子は励起状態へ、励起状態の電子は基底状態へとほぼ100%遷移する。
【0014】
図1(A)に示すように、非対称結合量子ドットQAの近傍に、他の非対称結合量子ドットQBを配置する。この時、非対称結合量子ドットQBの従量子ドットQB1を非対称結合量子ドットQAの従量子ドットQA1からトンネル可能な距離に配置する。非対称結合量子ドットQBの主量子ドットQB0は、非対称結合量子ドットQAからより離れた側に配置する。
【0015】
励起状態で、電子が従量子ドットQA1、QB1に存在する時は、これらの従量子ドットはトンネル可能な距離にあるため、運動学的交換相互作用が可能である。基底状態で、電子が主量子ドットQA0、QB0に存在する時は、バリア高が高くなり、電子間の距離が大きくなるので、波動関数の重なりはほとんど無く、両電子は互いに干渉せずホールド、ないしスリープ状態となる。
【0016】
すなわち、主量子ドット相互間の距離は十分離れ、バリア高は高く、従量子ドット間の距離は短く、バリア高は低く、トンネル可能な状態になる。電子が主量子ドットにある時は互いに干渉が生ぜず、電子が従量子ドットに存在するときにのみ相互作用を生じさせ、演算を行なうことができる。この観点より、以下従量子ドットQA1、QB1を演算量子ドットと呼ぶ。
【0017】
図1(A)は、非対称結合量子ドットQA、QBが共にそれぞれ1個の電子を有し、共に基底状態にある場合を示す。主量子ドットQA0,QB0にある電子は互いに干渉しない。
【0018】
この状態で、非対称結合量子ドットQA、QBにπパルスを照射する。πパルスのレーザビームを吸収した電子は、100%励起状態に遷移する。
【0019】
図1(B)が電子が共に励起状態に遷移した非対称結合量子ドットQA、QBの状態を示す。励起状態の電子の波動関数は、演算量子ドットQA1,QB1にほぼ局在する。電子のスピンは、基底状態から励起状態への遷移によって変化せず、同一状態を維持する。
【0020】
励起状態では、演算量子ドットQA1、QB1がトンネリング可能な距離にあるため、演算量子ドットQA1、QB1の電子間で運動学的(スピンースピン)交換相互作用が生じ、スピンが回転する。このスピンの回転を、演算として利用することができる。
【0021】
電子スピンキュビットでは、たとえば電子のトンネリングにより発生する運動学的交換相互作用
Hs = J(S1・S2−1/4) = (J/2)(S2−2)
を演算に用いる。ここで、S=S1+S2である。この相互作用は、スカラ積で表される等方的な相互作用である。
【0022】
非等方的な相互作用として、ベクトル3重積や対称テンソルを挟んだ内積
He = d・(S1xS2)、
Ht = S1・Γ・S2、
を用いることもできる。ここで、dは空間に固定されたベクトル,Γは対称テンソルである。これらの相互作用はスピンー軌道相互作用の強い材料、たとえばバンドギャップの狭いInAsなどの半導体を用いることにより実現できるであろう。
【0023】
図1(B)の励起状態にある非対称結合量子ドットQA、QBにπパルスを照射する。πパルスを吸収した電子は、100%励起状態から基底状態へ遷移する。すなわち、図1(B)の状態から図1(A)の状態に遷移する。
【0024】
演算後、図1(A)に示す基底状態に遷移した電子は、相互間の影響(運動学的交換相互作用)が無くなり、同一状態を安定に保つことができる。
【0025】
図1(A)に示すような2組の非対称結合量子ドットを作成する方法を図2(A)、(B)を参照して説明する。
【0026】
図2(A)に示すように、半導体基板1の上にバリア層となる半導体層2を成長する。半導体層2の上に、形成する量子ドットに対応する位置に開口を有する酸化シリコン層等の絶縁層マスクM1を形成する。絶縁領域上には結晶成長せず、半導体表面上にのみ結晶成長する条件で、ウェル層となる半導体層を開口内に成長し、島状領域3a、3b、3c、3dを得る。その後、マスクMをエッチング除去する。なお、選択成長の代りにリソグラフィーを用いたエッチングを用いて島状領域を形成することも可能である。
【0027】
図2(B)に示すように、島状領域3a〜3dを覆って、半導体層2の上にバリア層となる半導体層4を成長する。
【0028】
ウェル層、バリア層はエネルギー準位を画定できるものであればよいが、良質な結晶を用いることが好ましく、この点から半導体結晶を用いることが望ましい。なお、ウェル層、バリア層となる半導体材料の組みあわせとしては、InAs−GaAs、InGaAs−GaAs、GaAs−AlGaAs等を用いることができる。これらの場合、基板はGaAs基板を用いることができる。
【0029】
演算のスイッチのためにはレーザーパルスの照射のみが必要であり、極めて容易に行なうことができる。レーザ光は、直径約1μm程度のビームに絞れるため、特定のセル間の演算のみをスイッチすることもできる。又、レーザースポット内に複数の演算セルを作成し、その共鳴エネルギーをずらしておけば、照射するレーザビームの波長を選択することにより、複数の演算セルの特定のもののみを選択することも可能である。
【0030】
量子回路が万能であるためには、2キュビット演算以外に1キュビットの任意ユニタリ変換が必要である。電子スピンキュビットではスピンの向きの任意回転がこれに対応する。スピンは磁気モーメントを伴う。従って、一様磁場中で歳差運動を行なう。磁場中に電子を配置することにより、ユニタリ変換である1キュビット演算を行なうことができる。このためには、図1、2で説明した演算量子ドットの他に、主量子ドットと非対称結合量子ドットを形成する補助ドットを設けることが好ましい。
【0031】
図3は、本発明の他の実施例による量子回路装置の構成を概略的に示す斜視図である。図中横方向にy軸が配置され、縦方向にZ軸が配置されている。x軸はy軸およびz軸に直交である。演算セルSが、xy平面内で正方格子状に配置されている。各演算セルSは、その位置によりS(0,0)、S(0、1)のように表される。各演算セルSは、その中央に主量子ドットQ0が配置され、x軸方向に近接して演算量子ドットQ6、Q8が配置され、y軸方向に近接して演算量子ドットQ7、Q9が配置されている。また、主量子ドットQ0の下方に近接して、ユニタリ変換を行なうための補助量子ドットQ3が配置され、上方に近接してユニタリ変換を行なうための量子ドットQ2が配置されている。
【0032】
任意の回転を実現するには、2つ以上の回転軸が必要である。補助ドットQ2、Q3は、異なる方向に向いた磁場中に配置され、合わせて任意の回転を実現する。
【0033】
さらに、補助量子ドットQ2の上方に、読み出し用の量子ドットQ5が配置されている。読み出し用量子ドットQ5は、ユニタリ変換用補助量子ドットQ2よりもサイズが大きく、励起状態で補助ドットQ2に存在する電子にπパルスを照射することにより、電子を読み出し用量子ドットQ5に遷移させることができる。読み出し用量子ドットを他方の予備ドットの近傍に配置してもよい。
【0034】
読み出し用補助ドットQ5は、容量結合により単電子トランジスタSETに結合されている。すなわち、読み出し用補助ドットQ5に電子が存在する時は、その電荷を単電子トランジスタSETにより検出することができる。
【0035】
図3の構成によれば、任意の隣接する演算セルS間で演算を行ない、演算結果を単電子トランジスタSETにより読み出すことができる。
【0036】
図4(A)は、XY平面上の量子ドットの分布を概略的に示す平面図である。同一平面上に正方格子状に主量子ドットQ0が配置され、各主量子ドットQ0の近傍に、x軸方向に演算量子ドットQ6、Q8が配置され、y軸方向に演算量子ドットQ7、Q9が配置されている。
【0037】
図4(B)は、図4(A)のIVB−IVB線に沿う断面を示す。半導体基板1の上に、バリア層11、島状ウェル領域12、バリア層13、島状ウェル領域14、バリア層15、島状ウェル領域16、バリア層17、島状ウェル領域18、バリア層19が積層されている。なお、ウェル層、バリア層としては、図2の説明で述べたような材料を用いることができる。
【0038】
図7(A)〜(F)は、図4(B)に示す構成の製造方法を説明する断面図である。
【0039】
図7(A)に示すように、バリア層11の上に、量子ドットを形成する領域に開口を有するマスクM11をSiO2層等の絶縁層を用いて形成する。絶縁マスクM11の開口部に露出された半導体表面上に、CVDなどにより選択成長を行い、島状ウェル領域12を成長する。その後マスクM11はエッチングなどにより除去する。
【0040】
図7(B)に示すように、島状ウェル領域12を覆うように、バリア層11の上に他のバリア層13を成長する。
【0041】
図7(C)に示すように、バリア層13の上に量子ドットを形成する領域に開口を有するマスクM12を、SiO2等の絶縁層を用いて作成する。マスクM12の開口に露出した半導体表面に、CVDなどにより選択的に島状ウェル領域14を成長させる。その後マスクM12は除去する。
【0042】
図7(D)に示すように、島状ウェル領域14を覆って、バリア層13の上に他のバリア層15を成長する。
【0043】
図7(E)に示すように、絶縁マスク形成、選択成長、絶縁マスク除去、埋め込みバリア層成長の工程を繰り返すことにより、バリア層15の上に島状ウェル領域16、埋め込みバリア層17、島状ウェル領域18、埋め込みバリア層19を成長する。このようにして、図3に示すような量子ドットを含む構造を作成することができる。
【0044】
図7(F)に示すように、バリア層19の上に電極20を金属などの導電層堆積、マスクを用いたエッチングなどにより作成する。
【0045】
島状ウェル領域12、16は、ユニタリ変換用補助量子ドットQ3、Q2を構成する領域である。これらの補助量子ドット12,16の近傍には、永久磁石が配置される。
【0046】
図5は、永久磁石の配置を示す平面図である。図5(A)は、各セルの量子ドットの配置と、永久磁石24、25の配置を主量子ドットを含む一平面上に射影して示す平面図である。
【0047】
図5(B)は、補助量子ドットQ3を含むxy平面における永久磁石24の配置を示す。永久磁石24は、x軸、y軸に対しほぼ45度の角度で配置され、補助量子ドットQ3を挟んでS極とN極が対向する。
【0048】
図5(C)は、補助量子ドットQ2を含むxy平面における永久磁石25の配置を示す。補助量子ドットQ2を挟んで、S極とN極が対向している。なお、補助量子ドットQ2に印加される磁場の方向と、補助量子ドットQ3に印加される磁場の方向はほぼ直交する向きである。すなわち、図5(A)において、磁場は(方向と(方向に印加される。
【0049】
このような微細な磁石パターンは、例えば以下のようにして作成することができる。バリア層11の上に、島状ウェル領域12で構成された量子ドットQ3と(方向に細長く延在する磁性体パターン24を作成する。量子ドッドQ3と磁性体パターン24の作成順序はいずれが先であってもよい。
【0050】
主量子ドット、埋め込みバリア層15を形成した後、埋込バリア層15の上に島状ウェル領域16で形成される量子ドットQ2と(方向に細長く延在する磁性帯パターン25を作成する。量子ドットQ2と磁性体パターン25との作成順序はいずれが先であってもよい。なお、磁性体パターン25は、磁性体膜を形成した後リソグラフィーおよびエッチングを用いてパターニングしてもよく、選択成長技術を用いてもよい。
【0051】
2層に分布した磁性体パターン24、25を作成した後、y方向に磁場を印加し、磁性体パターンを磁化する。細長い磁性体パターンの場合、長軸方向に沿って磁化が生じる性質を有する。このため、y方向の磁場印加に対し、磁性体パターン24は(方向に、磁性体パターン25は(方向に磁化を生じる。
【0052】
磁場が印加される補助量子ドットは、磁場の局在をより有効に働かせるためには、有効磁気回転比(g)の大きな材料で形成することが好ましい。g値が大きな材料としては、例えばGaxMn1-xAs等の希薄磁性半導体が上げられる。
【0053】
演算系列の途中、あるいは演算系列の最後に各キュビットの状態を観測するには以下のようにすればよい。スピンキュビットの場合、スピンの上向き、下向きを測定する。このためには、1キュビット演算用の補助量子ドットと、観測用の量子ドットを用いる。
【0054】
まず、単色スペクトルのπパルスでx軸に対し上向きスピンの成分のみを補助量子ドットQ2に遷移させる。次に、第2のπパルスでこの成分を観測量子ドットQ5に遷移させる。観測量子ドットQ5は、補助量子ドットQ2よりも大きく、一旦観測量子ドットQ5と主量子ドットQ0に分配された波動関数は、外部環境との相互作用によってもその存在確率は余り変化を受けない。この状態で、観測ドットの分極電荷を単一電子トランジスタSETで検出する。
【0055】
演算は、補助量子ドットに電子を遷移させて行なう。補助ドットに存在する電子は、励起状態にあり、幾分なりとも緩和を受ける可能性がある。緩和により乱れた波動関数は、量子計算のノイズとなる。これを防ぐためには、ホールド状態で一定時間以上演算セルを放置すればよい。
【0056】
図6(A)〜(E)は、ノイズを除去する方法を示す。図6(A)は、主量子ドットに存在する電子にπパルスを照射し、励起状態に遷移させる工程を示す。
【0057】
図6(B)は、励起状態に遷移した状態を示す。電子は、演算量子ドットQ1にほぼ100%存在する。しかしながら、この状態で緩和を受けると、演算量子ドッドQ1からある成分が主量子ドットQ0に戻る。
【0058】
図6(C)は、緩和を受けた結果の波動関数を示す。演算量子ドットQ1には、90%の波動関数が存在するが、残りの10%は、主量子ドットの基底状態に移る。
【0059】
この状態でπパルスを照射すると、基底状態の成分は励起状態に遷移し、励起状態の成分は基底状態に遷移する。
【0060】
図6(D)が、遷移後の状態を示す。主量子ドットQ0の基底状態に90%の成分が存在し、演算量子ドットQ1の励起状態に10%の成分が存在する。この状態で一定時間以上放置する。
【0061】
図6(E)は、一定時間経過後の状態を示す。緩和機構が働くと、演算量子ドッドQ1の励起状態の成分が主量子ドットQ0の基底状態に遷移し、100%の成分が主量子ドットQ0の基底状態に遷移する。このようにして、緩和によるノイズを除去することができる。
【0062】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安定な量子演算を行なうことのできる量子回路装置が提供される。
【0064】
また、本発明によれば、新規な量子演算の方法が提供される。
【0065】
【付記】本発明は,下記の項の態様を含む。
【0066】
(1) 大きいサイズの第1の主量子ドットと第1の主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、
前記第1の演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2の演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットと
を有する量子回路装置。
【0067】
(2) さらに、
前記第1および第2の非対称結合量子ドットにπパルスを照射することのできるπパルス光源
を有する項1記載の量子回路装置。
【0068】
(3) さらに、
前記第1の主量子ドットより小さいサイズを有し、第1の主量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する第1の予備量子ドット
を有する項1または2記載の量子回路装置。
【0069】
(4) さらに、
前記第1の予備量子ドットの近傍に配置された永久磁石
を有する項3記載の量子回路装置。
【0070】
(5) さらに、
前記第1の主量子ドットに対して、前記第1の予備量子ドットと異なる方向に配置され、第1の主量子ドットより小さいサイズを有し、第1の主量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する第2の予備量子ドット
を有する項3または4記載の量子回路装置。
【0071】
(6) さらに、
前記第1の予備量子ドットよりもサイズが大きく、第1の予備量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する観測量子ドット
を有する項3記載の量子回路装置。
【0072】
(7) さらに、
前記観測量子ドットの近傍に配置された単電子トランジスタ
を有する項6記載の量子回路装置。
【0073】
(8) 前記非対称結合量子ドットは、ほぼ主量子ドットに局在する基底状態と、主量子ドットにはほぼ存在しない励起状態とを有する項1〜7のいずれか1項記載の量子回路装置。
【0074】
(9) 大きいサイズの第1の主量子ドットと主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、前記第1演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットとを有し、ほぼ主量子ドットに局在する基底状態と、主量子ドットにはほぼ存在しない励起状態とを有する量子回路を用い、
電子のスピンを演算の基底として演算を行なうステップを含む量子演算方法。
【0075】
(10) 前記演算を行なうステップは、前記第1および第2の非対称結合量子ドットにそれぞれ1個の電子を閉じ込め、励起状態で電子間に運動学的な交換相互作用を行なわせて演算を行う項9記載の量子演算方法。
【0076】
(11) さらに、演算後、前記第1および第2の非対称結合量子ドットを基底状態に設定し、一定時間以上放置することにより、リセットを行なうステップを含む項10記載の量子演算方法。
【0077】
(12) 前記量子回路が、さらに前記第1の主量子ドットより小さいサイズを有し、第1の主量子ドットに対し、異なる方向に近接配置され、第1の主量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する第1および第2の予備量子ドットと第1および第2の予備ドットの近傍に配置され、異なる方向の磁場を発生する磁石とを有し、さらに、電子を前記第1または第2の予備ドットに遷移させ、1ビット演算を行なうステップを含む項9〜11のいずれか1項記載の量子演算方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による量子回路装置の演算を説明するエネルギダイアグラムである。
【図2】 図1に示す量子回路装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】 本発明の他の実施例による量子演算装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】 図3の量子回路装置の一部の平面図および断面図である。
【図5】 図3の量子回路装置の磁石の配置を示す平面図である。
【図6】 本発明の他の実施例による緩和によるノイズの除去方法を説明するエネルギダイアグラムである。
【図7】 図3の実施例の製造方法の主要工程を示す断面図である。
【符号の説明】
Q 量子ドット
QA0、QB0 主量子ドット
QA1、QB1 演算量子ドット
Q0 主量子ドット
Q2、Q3 補助量子ドット
Q6〜Q9 演算量子ドット
Q5 読み出し量子ドット
SET 単電子トランジスタ
1 基板
2 バリア層
3 ウェル層
4 バリア層
11、13、15、17、19 バリア層
12,14,16,18 ウェル層
20 電極
Claims (5)
- 大きいサイズの第1の主量子ドットと第1の主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、
前記第1の演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2の演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットと
を有する量子回路装置。 - さらに、
前記第1の主量子ドットより小さいサイズを有し、第1の主量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する第1の予備量子ドットと、
前記第1の予備量子ドットの近傍に配置された永久磁石と
を有する請求項1記載の量子回路装置。 - さらに、
前記第1の予備量子ドットよりもサイズが大きく、第1の予備量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する観測量子ドット
を有する請求項2記載の量子回路装置。 - 大きいサイズの第1の主量子ドットと主量子ドットより小さいサイズの第1の演算量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第1の非対称結合量子ドットと、前記第1演算量子ドットからトンネリング可能な距離に配置された小さいサイズの第2演算量子ドットと、前記第1の主量子ドットから実質的にトンネリング不可能な距離離れて配置され、第2の演算量子ドットより大きいサイズの第2の主量子ドットとを有し、共通の量子状態を実現する第2の非対称結合量子ドットとを有し、ほぼ主量子ドットに局在する基底状態と、主量子ドットにはほぼ存在しない励起状態とを有する量子回路を用い、
電子のスピンを演算の基底として演算を行なうステップを含む量子演算方法。 - 前記量子回路が、さらに前記第1の主量子ドットより小さいサイズを有し、第1の主量子ドットに対し、異なる方向に近接配置され、第1の主量子ドットと非対称結合量子ドットを構成する第1および第2の予備量子ドットと第1および第2の予備ドットの近傍に配置され、異なる方向の磁場を発生する磁石とを有し、さらに、電子を前記第1または第2の予備ドットに遷移させ、1ビット演算を行なうステップを含む請求項4記載の量子演算方法。
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JP2003092398A (ja) * | 2001-09-18 | 2003-03-28 | Fujitsu Ltd | 量子回路装置 |
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