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JP3975318B2 - 組織癒着防止剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、血清アルブミンを有効成分とする溶液状または固形の組織癒着防止剤に関する。さらに詳細には、生理食塩液、電解質液または点眼液にヒト血清アルブミンを既に溶解した溶液状製剤または用時に溶解可能な固形製剤あるいは単剤、または賦形剤に保持された粉末状の固形製剤であって、体内に投与することにより、外科手術後の体内での組織癒着により生じる腹部消化管癒着を防止する製剤を包含する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト体内での組織癒着は、消化器科、循環器科、整形外科、婦人科、眼科など各科領域の外科手術の後に生じ、予後に大きな影響を与える。例えば、開腹手術後、特に消化管手術に際して生じる腸管の癒着は、手術手技及び機器の向上に伴い少なくなる傾向にあるが、しかしながら、手術後、数年から十数年経過後にイレウス症状などを発症し、外科手術後の合併症の中でも最も重大な障害の1つとなっている。開腹手術における腸壁や腸管の癒着はイレウス(腸閉塞)の原因ともなるため、再手術となったり、術後患者の予後を悪化させる症例も散見される(Menzies D. et al.; Intenstinal obstruction from adhesions - How big is the problem, 72: 60-63, 1990)。組織癒着は消化管の他に、卵管、眼結膜、腱鞘、胸腔、頭蓋内、神経周囲組織等でも問題となることが多い。例えば、婦人科領域においても術後癒着は卵管閉塞による不妊、時には腸閉塞を併発することもある。
【0003】
そこで、一般的には、外科手術に際して、術後の組織癒着を防止するためには、出血を抑え、創面の乾燥および擦過を避け、手術中および手術後の感染、炎症を極力防止する等の努力が行われているが、十分な効果を引き出せるに至っていない。その他、癒着を予防するために様々な試みがなされている(Menzies D.; Peripheral adhesions: Incidence, cause and prevention, Sur.Annu.,24:27-45,1992)。しかし、現状では、手術後の組織癒着を完全に防止できないため、外科医を悩ませる大きな問題となっている(Ellis H, et al.; Adhesion after abdominal and pelvic surgery: a retrospective cohort study, Lancet, 353(9163): 1476-1480, 1999)。このため、これらの処置努力のみでは癒着は極めて防止しにくく、効果の確実な癒着防止剤の開発が切望されている。
【0004】
術後に発症する組織癒着を防止する薬剤としては、主に、高分子物質を中心とした創面被覆作用を有するもの、例えば、アルギン酸ナトリウム(特開昭57-167919号公報)、コンドロイチン硫酸ナトリウム(特許2953702号公報)、高分子デキストラン(立崎達夫著「最新医学」、44巻、645頁、1989年、および五味淵秀人著「産科と婦人科」、11巻;2225; Clin. Orthop. Rel. Res.; 146:269, 1980,後藤幸子ら:応用薬理、35巻、359頁、1988年、Urman B. et al.; Fertil. Steril, 56, 563, 1991, 特開平8-157378号公報)、およびキトサン(特開平10-502663号公報)等の高分子多糖体に有効性が見い出されている。また、ヒアルロン酸ナトリウムもまた組織癒着防止剤として公知である(特開平8-157378号公報)。しかし、いずれも粘性が高く操作性が悪い。すなわち、粘度が高いために薬液注入チューブおよびカテーテル内での薬液の移動は非常に遅いために、強制的に注入しなければならない、あるいは十分には腹腔内に注入できないなどの不利な点を有する。その他、ステロイド剤などが試され、一部臨床で使用されている。しかし、プレドニゾロン(Suzuki T. et al;Biol. Pharm. Bull., 22; 816-821, 1999)をはじめとするステロイドは、創傷部の治癒が障害されることがあるため、原則禁忌となっている。また、ステロイド剤の投与は宿主の免疫系を抑制するため、予後不良となりやすく、投与には慎重になるざるを得ない。
【0005】
さらに、手術後の組織癒着と異なるケースとして、腹膜透析(CAPD)患者でも腹腔内の癒着が問題となることがある。このCAPD療法は腎不全患者に対する治療法であり、在宅医療の1つの柱として、その利点が認められている。しかし、合併症として腹腔内組織癒着、すなわち、腸管および腹壁との癒着が生じると、腸管の高度な通過障害を呈し、さらに透析効果も低下するため、CAPD療法を中止せざるを得ない(中里聰:硬化性腹膜炎の原因、診断、対策、「腎不全治療学」太田和夫監修、111頁、南江堂、東京、1997年)。従来から、CAPDとアルブミンに関しては種々検討がなされており、既に体外循環させる腹膜透析液中にアルブミンを添加して透析液を再生することが公知となっている(WO97/47337)が、腹腔内での癒着防止作用については着目されていなかった。また、透析患者へのタンパク補給のために、アルブミンを20〜25%もの高濃度で投与し、透析効果を引き出すことも公知である(Park MS et al; Artificial Organs, vol.19, No.4, p.307-314, 1995)が、高濃度でのアルブミン投与において、腹腔内での癒着防止作用については報告されていない。
この癒着に対する対処治療法としては、上述薬剤の投与に代えて、癒着剥離術、免疫抑制剤の投与などが実施されているが、その効果は弱いか、または一時的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記状況を考慮して、手術後の体内での組織癒着防止剤、またはCAPD療法(腹膜透析)により生じる腹部消化管の癒着防止剤であって、ステロイドなどの薬剤に比べて副作用のない優れた癒着防止剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは血清アルブミンの作用について種々研究する過程において、ヒト血清アルブミンが優れた組織癒着防止効果を有することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は血清アルブミンを有効成分とする組織癒着防止剤である。
【0009】
【発明の実施の態様】
本発明に使用する血清アルブミンは、その純度が全蛋白質の99%以上であればよく、血清由来の精製アルブミンあるいは該血清アルブミンをコードする遺伝子から遺伝子工学的に産生される組換えアルブミンなどがあるが、特にこれらに限定されない。しかし、抗原性の面からヒト血清アルブミンが特に好ましい。
【0010】
本発明において、ヒト血清アルブミンとは、20種類のアミノ酸585個からなるポリペプチドであり、分子量が約6.6万である。健康人のヒト血清中には約3.8〜5.3g/dLの濃度で含まれている。ヒト血清アルブミンは低毒性であることが知られており、臨床においても、古くから熱傷、ネフローゼ症候群および肝硬変などによる低アルブミン血症の治療、出血性ショックの治療などに広く使用されている。血清から精製されたヒト血清アルブミンの場合は、ウイルス不活性化のため、加熱処理されたものが好ましい。またアルブミンの安定性を高めるため、安定化剤として適当量のN−アセチルトリプトファンナトリウム、カプリル酸ナトリウムなどを添加することができる。
【0011】
本発明の有効成分である血清アルブミンを水溶液とする場合、濃度は通常、0.01〜10.0w/v%、好ましくは0.1〜1.0w/v%である。該アルブミン濃度が0.01w/v%未満では、有意な組織癒着防止効果は認められない。また、10w/v%を超えると水溶液の浸透圧が高くなり、その結果、組織癒着防止効果の減少または組織障害を生じる可能性がある。本発明のヒト血清アルブミン溶液は、pHが5.0〜8.0および浸透圧比(対生理食塩液)が0.5〜2.0である。
本発明において、血清アルブミンは低濃度で癒着防止作用を示したことから、局所への少量投与により癒着を防止する効果を有すると推察される。例えば、血清アルブミンは腹腔内手術時に腹腔内投与し、胸腔内手術時には胸腔内投与し、婦人科や眼科外科手術時は手術部位へ投与することにより癒着を防止することができる。これらから血清アルブミンは腹腔内の手術後、あるいはCAPD治療によって発症する腹腔内組織癒着に対する防止作用のみならず、その他の術後に生じる種々の癒着に対しても防止作用を有すると推察される。
【0012】
他方、本発明の有効性分である血清アルブミンは粉末として使用してもよく,この場合、血清アルブミンは単独にて、または適切な賦形剤に保持させて、術後に手術部位の組織に振りかける。投与量は、体部1部位あたり1回投与量は,0.5mg〜2.0g、好ましくは1mg〜1.0gである。
【0013】
本発明において用いる溶媒としては、生理食塩液をはじめとする電解質液、腹膜透析液または点眼液を用いることができる。
電解質液としては、電解質の一部あるいは全てを含む水溶液を挙げることができる。電解質としては、ナトリウムイオン(25〜150mEq)、カリウムイオン(0〜50mEq)、マグネシウムイオン(0〜20mEq)、カルシウムイオン(0〜20mEq)、クロルイオン(20〜150mEq)、重炭酸イオン(0〜40mEq)、リン酸イオン(0〜30mM/L)などが挙げられる。その濃度は、等張性を大きく崩さない範囲でよい。
腹膜透析液としては、糖類およびアミノ酸および電解質の一部あるいは全てを含む溶液が挙げられる。糖類としては、例えば、グルコース、マルトース、キシリトースおよびフルクトースなどが挙げられ、アミノ酸としては、L−バリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファンなどの必須アミノ酸、およびその他のアミノ酸として、L−トレオニン、L−セリン、L−プロリン、L−アラニン、L−リジン、L−ヒスチジン、L−アルギニンおよびグリシンなどが挙げられる。その濃度は糖類は0〜100g/L,アミノ酸は0〜50g/Lでよい.
点眼液としては、ナトリウムイオン(10〜150mEq)、ブドウ糖(0〜50g/L)、リン酸イオン(0〜30mM/L)、ホウ酸(0〜30mM/L)、重炭酸ナトリウム(0〜40mEq)、炭酸イオン(0〜3mEq)、カリウムイオン(0〜20mEq)、カルシウムイオン(0〜50mEq)、クロルイオン(5〜15mEq)、マグネシウムイオン(0〜20mEq)および硫酸亜鉛(0〜20mEq)の一部または2種以上を含む水溶液を挙げることができる。これらの濃度は、等張性を大きく崩さない範囲でよい。これらの溶液のpHは、ヒト体液を考慮して、5.0〜8.0、好ましくはpH6.0〜7.4である。これらの溶媒の中でも、特に上記した電解質液あるいは腹膜透析液が好ましい。
【0014】
本発明の固形製剤に用いる賦形剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリ乳酸、ポリ酪酸およびこれらの共重合体、ポリメタクリル酸およびその誘導体、ポリアクリル酸、並びにゼラチン等を挙げることができる。
【0015】
また、抗酸化剤として、亜硫酸水素ナトリウムなど、pH調節剤として、塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸またはそのアルカリ金属塩などを添加することができる。
本発明における組織癒着防止剤は、必要に応じ、上述アルブミンに加えて、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キサンタンガム、副腎皮質ホルモンおよびそれらの塩類、あるいは抗生物質などの薬効成分を加えることができる。
【0016】
本発明における血清アルブミンの使用時の形態は、溶媒に溶解した溶液または凍結乾燥した固形がある。水溶液として使用する場合の剤型の形態としては、例えば、全ての成分を溶媒に溶解した1水溶液剤型、固形アルブミン製剤と電解質液の2剤型などがある。容器としては、1〜2室からなるプラスチック製バッグ、または1〜2個からなるガラス容器、あるいはプラスチック製バッグとガラス容器の組み合わせがある。例えば、電解質液を1室に充填し、他室にはヒト血清アルブミンを粉末または錠剤として充填する。該製剤に用いるプラスチック製容器は、例えば、柔軟な袋状容器であって、帯状の剥離可能な程度に熱溶着されたシールにより上下の2室に隔離された容器であって、各室に薬剤注入口または排出口が設けられたものである。他方、前述溶媒をプラスチック製バッグに充填し、ヒト血清アルブミンを溶液としてプレフィルドシリンジに充填し、使用時に容易に混合できるキット製剤とすることもできる。
他方、血清アルブミンを固形として使用する場合、無菌の血清アルブミンの単体または適切なる無菌の賦形剤に保持させた無菌の血清アルブミンをバイアル瓶に無菌的に充填する。
【0017】
本発明における血清アルブミンを水溶液剤とする場合、滅菌は必要である。該滅菌は、血清アルブミンが水溶液剤の場合、通常の高圧蒸気滅菌法、低温加熱滅菌法、濾過滅菌法などを単独または組み合わせて用いることができる。水溶液剤の場合の臨床投与量は、投与可能な範囲とする。例えば、血清アルブミン濃度が0.1W/V%であるとき、原則的には、成人当たり0.05〜2000mLを手術直後、あるいはCAPD療法により生じる腹腔内癒着が発症する直前に1〜数回投与する。本発明における血清アルブミンを粉末等の固形剤とする場合、臨床で用いられている通常使用量以下とする。例えば、血清アルブミン単剤を体部1部位当たり、1回0.1g〜10gを投与する。
以上の投与容積および投与重量は、投与すべき患者の病態、栄養状態、年齢体重等を考慮して適宜、その量および回数を増減すればよい。
【0018】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
製造例1
下記アルブミン水溶液を調製した。
ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ社製) 3g
1.0M水酸化ナトリウム 適量
注射用生理食塩液 1000mL(全量)
上記アルブミンを注射用生理食塩液に溶解し、該溶液を1000mLフラスコに注入した後、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.0〜7.0に調整し、全量1000mLとした。次いで500mLガラス瓶に、この液500mLを充填し、ゴム栓をして、60℃で、10時間、加熱滅菌した。滅菌後、この液はアルブミン濃度0.3w/v%、pH6.0〜7.0、浸透圧比(対生理食塩液)0.8〜1.1であった。
【0019】
製造例2
下記電解質液Aおよびヒト血清アルブミンを混合して、アルブミン含有電解質溶液を調製した。
A剤 電解質液(下記成分の混合物)
塩化ナトリウム 5.67g
乳酸ナトリウム 3.92g
塩化カルシウム 0.257g
塩化マグネシウム 6水和物 0.152g
ブドウ糖 13.6g
1.0M水酸化ナトリウム 適量
注射用蒸留水 500mL(全量)
B剤
滅菌ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ社製) 3.6g
注射用蒸留水 600mL(全量)
【0020】
具体的には、上記電解質を注射用蒸留水に溶解した後、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4に調整して、電解質液A剤500mLを得た。容量が上室500mLおよび下室500mLであるプラスチック製ダブルバッグの上室に、該電解質液A剤500mLを充填し、通常の条件(温度121℃、20分間)で高圧蒸気滅菌した。その後、ヒト血清アルブミンを注射用蒸留水に溶解し(B剤)、濾過滅菌後、その500mLを下室に無菌的に充填した。上下室の収容部を押圧して、隔離部を剥離し、滅菌ヒト血清アルブミン液B剤と電解質溶液A剤を混合した液は、アルブミン濃度0.3w/v%、pH6.0〜7.0、浸透圧比(対生理食塩液)0.8〜1.1であった。
【0021】
製造例3
下記組成を有するヒト血清アルブミン含有電解質液を調製した。
A剤 電解質液(特開平7-10186号公報より引用、下記成分の混合物)
塩化ナトリウム 5.61g
乳酸ナトリウム 4.931g
塩化カリウム 0.298g
塩化カルシウム 0.011g
塩化マグネシウム 6水和物 0.102g
ブドウ糖 5.0g
1.0M水酸化ナトリウム 適量
注射用蒸留水 996mL(全量)
B剤
ヒト血清アルブミン水溶液(HSA、バクスター社製)
(25w/v%)4.0mL
【0022】
具体的には、上記電解質液A剤を注射用蒸留水に溶解した後、該溶液を1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4に調整し、全量996mLとした。その後、容量が1000mLの1室からなるプラスチック製バッグに、該溶液を充填した。ヒト血清アルブミン水溶液B剤4.0mLはプレフィルドシリンジに充填し、60℃で、10時間、加熱滅菌した。このプレフィルドシリンジに充填したアルブミン液は、室温で遮光して保存した。使用時に、ヒト血清アルブミン液をプレフィルドシリンジから上記プラスチック製バッグに注入し、該バッグ内で電解質液Aおよびヒト血清アルブミン水溶液B剤を混合した。混合液は、アルブミン濃度0.1w/v%、pH6.0〜7.0、浸透圧比(対生理食塩液)0.8〜1.1であった。
【0023】
製造例4
下記アルブミン含有電解質液を調製した。
塩化ナトリウム 6.0 g
乳酸ナトリウム 3.1 g
塩化カリウム 0.3 g
塩化カルシウム 0.02 g
凍結乾燥ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ社製) 3.0 g
1.0M水酸化ナトリウム 適量 注射用蒸留水
注射用蒸留水 1000 mL(全量)
【0024】
具体的にはヒト血清アルブミンを含む上記成分を注射用蒸留水に溶解した後、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4に調整し、全量を1000mLとした。次いで、容量が500mLであるバイアルビンに充填し、60℃で、10時間、加熱滅菌した。この溶液を室温で遮光して保存した。混合液は、アルブミン濃度0.3w/v%、pH6.0〜7.0、浸透圧比(対生理食塩液)0.8〜1.1であった。
【0025】
試験例1
製造例1に準じて、ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ社製)を注射用生理食塩液に溶解し、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4にして、表1に示す所定濃度(0.001、0.01、0.1.1.0w/v%)のアルブミン液を調製した。次いで、500mL点滴瓶にそれぞれの溶液500mLを充填し、点滴瓶の上部にゴム栓をして、60℃で、10時間、加熱滅菌した。
比較のために、溶媒群は上記水溶液に代えて生理食塩液のみを使用した。また、陽性対照薬としてのプレドニゾロンは溶媒(生理食塩液)に懸濁し、120℃、20分間の加熱処理により、またヒアルロン酸ナトリウムは溶媒(生理食塩液)に溶解して、105℃、10分間加熱処置により滅菌したものを使用した。
【0026】
腹腔内組織癒着モデル動物は10〜13週齢SD系雄性ラットを用いて作製した。すなわち、ペントバルビタール麻酔下に剣状突起より下方約3cmの部分から正中線に沿って下部へ約4cm開腹し、左右の精巣上体脂肪を除去した後、乾燥ガーゼで回盲部から口側へ10cmまでの回腸部を9回摩擦した(溢血が認められる程度)。その後、上記被験薬(25mL/kg)を腹腔内に適用し、二層縫合によって閉腹した。1週間の通常飼育後、開腹し、腸管癒着の状態を評価した。
癒着の評価は処置部回腸間で、あるいは処置部回腸への他の腸管(空腸、盲腸、大腸など)の癒着した長さ(癒着長)を測定することにより行った。その結果を表1および2に示した。
【0027】
【表1】
Figure 0003975318
*(p<0.05)、**(p<0.01):溶媒群と比較して有意差あり。
【0028】
【表2】
Figure 0003975318
【0029】
表1および表2から明らかなように、本発明では、濃度0.001w/v%のHSAを使用すると、有意な癒着防止効果はみられなかったが、濃度0.01w/v%以上のHSAでは、対照群(溶媒のみ)と比較して有意な癒着抑制効果がみられた。一方、従来のヒアルロン酸ナトリウム(表1)は1.0w/v%濃度で抑制率は34.0%と有意な癒着防止効果を示したが、同じ濃度のHSAではさらに高い抑制率を示した。癒着防止効果の知られているプレドニゾロン(表2)は0.25mg/kgで抑止率は21.6%を示したが、本発明に比べて有意なものではなかった。
【0030】
試験例2
製造例2に準じて、ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ製)を電解質液A剤に溶解し、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4に調整して、表3に示した所定濃度(0.001、0.01、0.1、1.0w/v%)のヒト血清アルブミン液を調製した。次いで、500mL点滴ビンに上部から該アルブミン液500mLを充填し、上部にゴム栓をして、60℃で、10時間、加熱滅菌した。比較のために、製造例2に使用した電解質液A剤(pH6.6〜7.4)単独を溶解し、滅菌処置したものを使用した。
組織癒着モデルは、10〜13週齢SD系雄性ラットを用い、試験例1と同様にして作製した。癒着防止効果の判定は試験例1と同様にして行った。
【0031】
【表3】
Figure 0003975318
*(p<0.05),**(p<0.01):溶媒群と比較して有意差あり。
【0032】
表3から明らかなように、HSAは濃度0.001w/v%で有意な効果を示さなかったが、濃度0.01w/v%以上では対照群と比較して有意な癒着防止効果が見られた。
【0033】
試験例3
製造例4に準じて、ヒト血清アルブミン(HSA、シグマ製)に代えてウシ血清アルブミンを使用し、各組成物を注射用蒸留水に溶解し、1.0M水酸化ナトリウム液でpH6.6〜7.4に調整して、表4に示した所定濃度(0.001、0.01、0.1、1.0w/v%)のウシ血清アルブミン含有電解質液を調製した。次いで、500mL点滴ビンの上部から、この液500mLを該点滴ビンに充填し、上部にゴム栓をして、60℃で、10時間、加熱滅菌した。比較のために、アルブミンを除いた電解質液(乳酸リンゲル液、pH6.6〜7.4)単独を溶解し、滅菌処置したものを使用した。
癒着モデルは、10〜13週齢SD系雄性ラットを用い、試験例1と同様にして作製した。癒着防止効果の判定は試験例1と同様にした。
【0034】
【表4】
Figure 0003975318
(p<0.05)、**(p<0.01):溶媒群と比較して有意差あり。
【0035】
表4から明らかなように、BSAは濃度0.001w/v%では有意な効果を示さなかったが、濃度0.01w/v%以上では対照群と比較して有意な癒着防止効果がみられた。
以上の結果から、本発明の血清アルブミン製剤は術後に併発する組織癒着を抑制する効果を有することが明らかとなった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の血清アルブミンを主薬効成分とする癒着防止剤は、創傷部を包囲するように投与することにより、組織癒着の発生を防止することができる。すなわち、本発明の癒着防止剤は手術後に、あるいはCAPD療法時に生じる組織表面における癒着を防止する優れた効果を有する。

Claims (8)

  1. 血清アルブミンを有効成分とする外科手術後の組織癒着防止剤。
  2. 前記血清アルブミンはヒト血清アルブミンであり、かつ、溶媒に溶解した溶液である請求項1記載の組織癒着防止剤。
  3. 前記溶媒は、生理食塩液、電解質液または点眼液である請求項2記載の組織癒着防止剤。
  4. 前記ヒト血清アルブミン溶液は、ヒト血清アルブミン濃度が0.01〜1.0w/v%である請求項2記載の組織癒着防止剤。
  5. 前記ヒト血清アルブミン溶液は、ヒト血清アルブミン濃度が0.1〜1.0w/v%である請求項2記載の組織癒着防止剤。
  6. 前記ヒト血清アルブミン溶液は、pHが5.0〜8.0および浸透圧比(対生理食塩液)が0.5〜2.0である請求項2記載の組織癒着防止剤。
  7. 前記血清アルブミンはヒト血清アルブミンであり、かつ、固形剤である請求項1記載の組織癒着防止剤。
  8. 前記固形剤は、単剤であるか、または賦形剤に保持された複合剤である請求項7記載の組織癒着防止剤。
JP2000198480A 2000-06-30 2000-06-30 組織癒着防止剤 Expired - Fee Related JP3975318B2 (ja)

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