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JP3974909B2 - 塗装品の製造方法および塗装品 - Google Patents

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Description

本発明は、凹凸面を有する金属製被塗装品、特にスプラインシャフト類に均一な厚みで塗膜を形成する方法、塗装品の製造方法および塗装装置に関する。
動力を伝達するための金属製スプラインシャフト類及び金属製ギヤ類には、耐摩耗性、クッション性、防音性又は消音性を付与するため、樹脂被膜が形成されている。この樹脂被膜を流動浸漬法で形成すると、被塗装品(ギヤ類など)の熱容量が大きいため塗膜の厚みが大きくなり、薄膜にしようとするとレベリング性が低下して均一な塗膜を精度よく形成できない。そのため、例えば、流動浸漬法により膜厚300μm以上(特に500〜600μm程度)にコーティングした後、機械加工により膜厚200±20μm程度の塗膜を形成している。しかし、この方法では、ギヤ類の各歯の山部及び谷部において、それぞれ機械加工する必要があるため、生産効率が低下するだけでなく、コストも上昇する。
一方、ギヤ類やスプラインシャフト類を静電粉体塗装して粉体層を形成し、加熱することにより塗膜を形成することも行われている。しかし、この方法では、ギヤ類やスプラインシャフト類のサイズが大きくなると加熱炉により物温を上げるのに時間がかかるとともに、加熱炉では粉体層の表面から昇温するため、急激に加熱すると、塗膜の脱落やピンホールが生成し、厚みが大きな塗膜を均一に形成することが困難である。
前記加熱炉による問題を解消するため、静電粉体塗装と高周波誘導加熱とを組み合わせて塗膜を形成することも行われている。例えば、特開平10−296182号公報には、金属素線、金属管、金属棒などの連続した金属体に、静電粉体塗装により樹脂粉体層(エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂粉体層)を形成し、誘導加熱により粉体層の内層を融着させ、かつ表層に半融着樹脂層を形成し、さらに加熱して完全に融着した樹脂塗膜を形成することが開示されている。特許第2725168号公報には、芯線の周囲に複数本の側線を撚り合わせた鋼撚り線を一時的に個々の線に緩解して芯線及び各側線に樹脂粉体を付着させ、芯線及び側線を撚り戻す過程で加熱して外周及び芯線と側線との間に不完全硬化した被覆層を形成し、撚り戻された鋼撚り線を加熱して完全硬化させる防食被覆した鋼撚り線の製造方法が開示されている。
さらに、特公昭56−34153号公報には、100〜250メッシュの粉体塗料を流動状態にし且つ帯電させた静電流動浸漬槽内に、表面が凹凸を有する被塗装物品を回転させながら粉体塗料を被塗装物品に付着させ、被塗装物品を回転させながらブラシ付き吸引手段により凸部の不要部分の粉体塗料を除去し、被塗装物品を約100〜200KHzの誘導加熱により被塗装物品を加熱して粉体塗料を溶融/固着させる絶縁被膜の形成方法が開示されている。この方法では、モーターのローターなどの凹部での電気絶縁性を確保するとともに、凸部では塗膜の形成を避けるため、100〜250メッシュの粉体塗料(エポキシ樹脂塗料)を用いる静電流動浸漬法により膜厚の大きな粉体層を形成するととともに、塗膜が不要な凸部の粉体層を除去することにより凹部に厚膜を形成している。
しかし、静電粉体塗装法や静電流動浸漬法では、帯電した粉体粒子を利用するため、必然的に、歯の山部(頂部)での膜厚が大きくなり、帯電粒子の電気的反発により谷部や側壁での膜厚が小さくなる。特に、被塗装物品を回転させながらブラシ付き吸引手段により凸部の粉体層を除去すると、凸部の粉体層が凹部に脱落する場合がある。そのため、誘導加熱を利用しても、凹凸部を有する被塗装品(ギヤ類やスプラインシャフト類の歯部など)を均一な塗膜で被覆できない。
特開平10−296182号公報 特公昭56−34153号公報
本発明の目的は、消音性および耐摩耗性が高い塗装品(スプラインシャフト)の製造方法および塗装を提洪することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、前記のように、ギヤ類の静電粉体塗装では、歯の谷部及び側壁に比べて歯先部の塗膜の厚みが大きくなることを逆に利用して、本発明を完成した。
すなわち、本発明の塗装品の製造方法では、動力を伝達するための凹凸部を有するスプラインシャフトの被塗装部品の表面にアンダーコートを形成し、このアンダーコートを形成した上記被塗装部品に粉体を静電付着させてから、上記被塗装部品を誘導加熱することによって、上記粉体を溶融させて上記被塗装部品にコーティング膜を付着させ、
上記コーティング膜は、
上記凹凸部の凸部の先端部に付着させる第1の部分の厚さが、上記凸部の先端部以外の部分に付着させる第2の部分の厚さよりも厚く、
上記コーティング膜を、上記スプラインシャフトの外面とすることを特徴としている。
また、一参考例では、凹凸部を有する被塗装品(ギヤ類など)に静電粉体塗装を施して一次粉体層を形成し、凸部(歯先部など)の粉体層を所定の厚みで除去した後、全面に亘り静電粉体塗装を施して二次粉体層を形成し、誘導加熱により加熱することにより塗膜を形成する。このような方法では、被塗装品の凹凸部に均一な厚みの塗膜が形成された塗装品(被覆ギヤ類など)を得ることができる。そのため本参考例の方法は、被塗装品(ギヤ類など)の凹凸(特に歯部)に均一な厚みの塗膜を形成する方法としても有用である。
前記凹凸面を有する被塗装品としては、種々のギヤ類やスプラインシャフト類などが例示できる。前記静電粉体塗装では、平均粒子径10〜70μmの粉体塗料(例えば、ナイロン系樹脂などの熱可塑性樹脂ベースの粉体塗料)が使用できる。凸部(歯先部)の粉体層の除去手段としては、粉体層を掻き取るスクレーパー手段が利用でき、このスクレーパー手段は、被塗装品の軸方向に移動可能であってもよい。このスクレーパー手段により掻き取られた粉体が凹部の底部や側壁(歯の谷部や側壁)に脱落して付着するのを防止するため、スクレーパー手段は、通常、掻き取られた粉体を吸引除去するための吸引手段を備えている。
電磁誘導加熱により形成される塗膜の厚みは、被塗装品の種類に応じて選択でき、ギヤ類やスプラインシャフト類の塗装では、150〜200μm程度の塗膜を形成してもよい。なお、前記のように、凹部や凹部側壁に比べて凸部での粉体塗料の付着量が大きい。そのため、均一な厚みの塗膜を形成するためには、粉体層の総付着量(g/m)を100としたとき、一次粉体層の付着量(g/m)と二次粉体層の付着量(g/m)との割合は、通常、前者/後者=20/80〜80/20程度である。
一参考例の塗装装置は、凹凸面を有する被塗装品(ギヤ類など)に静電粉体塗装を施し、被塗装品の全面(ギヤ類の歯部など)に一次粉体層を形成するための塗装手段と、前記被塗装品の凸部(ギヤ類の歯先部など)の粉体層を除去するためのスクレーパー手段と、このスクレーパー手段により凸部(歯先部など)の粉体層が除去された被塗装品(ギヤ類など)を静電粉体塗装し、被塗装品(ギヤ類の歯部など)の全面に二次粉体層を形成するための塗装手段と、一次粉体層及び二次粉体層を加熱するための誘導加熱手段とを備えている。粉体塗装において、被塗装品がギヤ類である場合には、中心軸に沿って回転させながらギヤ類やスプラインシャフト類を一次及び二次塗装することができる。
また、一参考例の塗装品の製造方法は、粉体を、凹凸部を有する被塗装部品に静電付着させてから、上記被塗装部品を誘導加熱することによって、上記粉体を溶融させて上記被塗装品にコーティング膜を付着させる。
この一参考例では、凹凸部を有する被塗装部品に、粉体を静電付着させた状態で、上記被塗装部品を誘導加熱することで、粉体を溶融させるから、粉体層をその内側の被塗装部品で加熱することとなる。このため、内側で溶融した粉体から外側へ気泡を逃し易くなり、コーティング膜中に気泡が混入することを防止できる。
また、一参考例の塗装品の製造方法では、上記被塗装品に付着させる粉体の厚さに大小が有り、その厚さに応じて、塗装品の寸法が所望の外径寸法になるように、上記被塗装部品の寸法が予め設定されている。
この参考例では、塗装品の寸法が所望の外径寸法になるように、上記被塗装部品の寸法が、上記被塗装品に付着させる粉体の厚さの大小に応じて予め設定されているので、二次的な仕上げ加工(例えばブローチ加工)が不必要となり、加工コストを低減できる。
また、一実施形態の塗装品の製造方法では、上記コーティング膜の膜厚を、100μm乃至250μmにした。
この実施形態では、上記コーティング膜の膜厚を、100μm乃至250μmにした。これにより、この塗装品による作動音(打音)を所定値以下に低減でき、かつ、摩耗量を少なくすることができる。なお、上記膜厚が100μmを下回ると作動音(打音)が所定値を上回る。一方、上記膜厚が250μmを越えても作動音があまり低下しない上に、摩耗量は増加する。
また、一実施形態の塗装品は、所定の外径寸法であって、被塗装部品に所定膜厚のコーティング膜が付着されていて、上記コーティング膜の中に気泡が無いことを特徴としている。なお、この実施形態において、被塗装部品に付着されている所定膜厚のコーティング膜は、被塗装部品の表面に部分的に形成されている場合と全面に形成されている場合とを含む。
この実施形態では、塗装部品に所定膜厚のコーティング膜が付着されていて、上記コーティング膜の中に気泡が無いから、塗装品質が向上する。
また、一実施形態の塗装品では、上記コーティング膜は粉体を溶融してなる。
この実施形態では、上記コーティング膜の中に気泡が無く、コーティング膜は粉体を溶融してなるから、薄くてかつ耐久性に優れたコーティング膜となる。
また、一参考例の塗装品では、上記コーティング膜の厚さに大小が有り、その厚さに応じて、上記被塗装部品の寸法が設定されている。
この参考例では、上記コーティング膜の厚さの大小に応じて、上記被塗装部品の寸法が設定されているから、二次的な仕上げ加工(例えばブローチ加工)が不必要となり、加工コストを低減できる。
また、一実施形態の塗装品では、上記コーティング膜の膜厚が、100μm乃至250μmである。
この実施形態では、上記コーティング膜の膜厚が、100μm乃至250μmであるから、この塗装品による作動音(打音)を所定値以下に低減でき、かつ、摩耗量を少なくすることができる。なお、上記膜厚が100μmを下回ると作動音(打音)が所定値を上回る。一方、上記膜厚が250μmを越えても作動音があまり低下しない上に、摩耗量は増加する。
この発明では、凹凸部を有する被塗装部品に、粉体を静電付着させた状態で、上記被塗装部品を電磁誘導加熱することで、粉体を溶融させるから、粉体層をその内側の被塗装部品で加熱することとなる。このため、内側で溶融した粉体から外側へ気泡を逃し易くなり、コーティング膜中に気泡が混入することを防止できる。
また、一参考例の塗装品の製造方法は、一次粉体層を形成した後、凸部の粉体層を除去し、二次粉体層を形成して誘導加熱により塗膜を形成するので、厚膜であっても凹凸部が均一な厚みの塗膜で被覆できる。また、ナイロン系樹脂ベースの粉体塗料を用いると、消音性および耐摩耗性が高く、凹凸部での膜厚分布が均一な塗装品(ギヤ類など)を得ることができる。
また、一参考例の塗装品の製造方法では、塗装品の寸法が所望の外径寸法になるように、上記被塗装部品の寸法が、上記被塗装品に付着させる粉体の厚さの大小に応じて予め設定されているので、二次的な仕上げ加工(例えばブローチ加工)が不必要となり、加工コストを低減できる。
また、一実施形態の塗装品の製造方法では、上記コーティング膜の膜厚を、100μm乃至250μmにした。これにより、この塗装品による作動音(打音)を所定値以下に低減でき、かつ、摩耗量を少なくすることができる。なお、上記膜厚が100μmを下回ると作動音(打音)が所定値を上回る。一方、上記膜厚が250μmを越えても作動音があまり低下しない上に、摩耗量は増加する。
また、一実施形態の塗装品は、塗装部品に所定膜厚のコーティング膜が付着されていて、上記コーティング膜の中に気泡が無いから、塗装品質が向上する。
また、一実施形態の塗装品では、上記コーティング膜は粉体を溶融してなるから、薄くてかつ耐久性に優れたコーティング膜となる。
また、一参考例の塗装品では、上記コーティング膜の厚さに大小が有り、その厚さに応じて、上記被塗装部品の寸法が設定されているから、二次的な仕上げ加工(例えばブローチ加工)が不必要となり、加工コストを低減できる。
また、一実施形態の塗装品では、上記コーティング膜の膜厚が、100μm乃至250μmであるから、この塗装品による作動音(打音)を所定値以下に低減でき、かつ、摩耗量を少なくすることができる。なお、上記膜厚が100μmを下回ると作動音(打音)が所定値を上回る。一方、上記膜厚が250μmを越えても作動音があまり低下しない上に、摩耗量は増加する。
以下に、添付図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
参考例
図1はスプラインシャフトの歯部の塗装工程の一例を示す工程図であり、図2はスクレーパー手段による掻き取り状態を示す概略斜視図、図3はスプラインシャフトを示す概略側面図である。
なお、本明細書において、「ギヤ類」及び「スプラインシャフト類」を単に「ギヤ類」と総称する場合がある。
[一次粉体層の形成工程]
一次粉体層を形成する工程(I)では、静電粉体塗装を施して、被塗装品の表面に一次粉体層を形成する。この例では、先ず、スプラインシャフト1を前処理及びプライマー処理し、スプラインシャフト1の軸芯を中心軸として回転させながら、塗装手段としての静電スプレーガンを用いて静電粉体塗装することにより、スプラインシャフト1の歯部(又はキー溝部)2の全面、すなわち歯部2の歯先部2a、側部2bおよび底部2cに、ナイロン系樹脂ベースの粉体塗料で構成された一次粉体層3aを形成している。
なお、金属製被塗装品の前処理としては、脱脂処理、酸洗処理、電解処理、陽極酸化処理、化成処理などの表面処理の他、研掃(ショットブラストなど)などの表面加工処理が含まれる。プライマー処理は、慣用の方法、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ゴムなどの樹脂やオリゴマーを含む有機プライマー、マグネシウム、マンガン、シリコンなどの金属成分を含む無機プライマー、これらの混合プライマーを被塗装品に適用することにより行うことができる。さらに、必要であれば、被塗装品の非塗装部位をマスキングして静電粉体塗装に供してもよい。
粉体塗料は、静電粉体塗料として使用可能な種々の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂をベースとする粉体粒子が使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン単独又は共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸又はその塩(アイオノマーなど)などのエチレン系共重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などのプロピレン系共重合体など)、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル系樹脂などが例示できる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリエステル系樹脂、熱硬化性アクリル系樹脂などが例示できる。熱硬化性ポリエステル系樹脂や熱硬化性アクリル系樹脂においては、架橋剤又は硬化剤[アミノ樹脂(メラミン樹脂など)など]と組み合わせて熱硬化系を形成してもよい。
好ましい樹脂は、耐摩耗性、耐衝撃性及び耐久性が高く、金属に対する密着性の高い熱可塑性樹脂(ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂など)、特にナイロン系樹脂である。ナイロン系樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、46−ナイロン、610−ナイロン、616−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、13−ナイロンなどの単独重合ナイロン、6/12−ナイロン、66/12ナイロンなどの共重合ナイロンなどが例示できる。好ましいナイロン系樹脂には、11−ナイロン及び12−ナイロンから選択された少なくとも1つのナイロン成分を含む単独又は共重合ナイロンが含まれる。
粉体塗料の平均粒子径は、通常、流動浸漬法及び静電流動浸漬法で使用される粉体塗料よりも小さく、例えば、平均粒子径5〜100μm(例えば、10〜70μm、特に10〜50μm)程度の範囲から選択できる。
このような粉体塗装では、帯電した粉体粒子の静電気的反発などにより、歯部2の歯先部2aでは、歯部2の側部2bおよび底部2cに比べて粉体の付着量が多くなるため、一次粉体層3aを誘導加熱により加熱しても、均一な厚みの塗膜を形成できない。特に、塗膜の膜厚が大きくなると、前記歯部2の歯先部2aでの粉体の付着量に比べて、歯部2の側部2bおよび底部2cでの粉体の付着量が大きく減少し、膜厚の均一性が大きく低下する。
[掻き取り工程]
そこで、本参考例では、掻き取り工程(II)において、前記歯部2の歯先部2aに付着した一次粉体層3aをスクレーパー手段(掻き取り手段)4で掻き取るとともに、粉体が歯部の側部や底部に脱落して付着するのを防止するため、粉体を掻き取りながら吸引し除去している。この例では、前記スクレーパー手段4は、スプラインシャフト1の歯先部(外周面)の湾曲度に対応して半円弧状に湾曲し、かつ粉体層3aを掻き取るためのドクター部を先端に備えた薄片状ベース4aと、前記ドクター部の先端部から所定距離おいて前記ベース4aに形成されたスリット部4bと、このスリット部に案内された粉体を後部から吸引するための吸引部4cとで構成されている。
また、スクレーパー手段4は、複数の歯先部2aの粉体層3aを効率よく除去するため、スプラインシャフトの軸方向に相対的に移動可能である。
なお、ブラシを用いて粉体層を掻き取ることも考えられる。しかし、ブラシを用いると、歯先部に付着した粉体層が歯部の谷部に脱落するとともに、谷部の粉体層をも掻き落とすため、歯部の表面を全体に亘り均一な膜厚の塗膜で被覆できなくなる。
[二次粉体層形成工程]
二次粉体層形成工程(III)では、歯先部2aの粉体層3aを所定の厚みで除去した後、塗装手段としての静電スプレーガンを用いて、被塗装品としてのスプラインシャフト1を中心軸に沿って回転させながら静電粉体塗装し、スプラインシャフト1の歯部2の全面に二次粉体層3bを形成する。すなわち、二次塗装により、歯部2の歯先部2aには主に二次粉体層3bを形成し、歯部2の谷部2c及び側部2bには、一次粉体層3a及び二次粉体層3bで構成された積層粉体層を形成するので、歯部2の表面を全体に亘り均一な厚みの粉体層で被覆できる。
より詳細には、同じ種類の粉体塗料を用いるならば、塗膜の厚みは、通常、粉体の付着量や粉体層の厚みに対応する。そのため、一次塗装による歯部の歯先部における粉体の付着量をX1、歯部の谷部及び側壁部における粉体の付着量をX2(X1>X2,△X=X1−X2)とし、二次塗装による歯部の歯先部における粉体の付着量をY1、歯部の谷部及び側壁部における粉体の付着量をY2(Y1>Y2,△Y=Y1−Y2)とすると、歯先部の一次粉体層が掻き落とされているので、関係式Y1=X2+Y2を充足するように、一次粉体層と二次粉体層とを形成すれば、均一な厚みの塗膜を歯部の凹凸面に形成できることになる。
なお、凹凸部の山部、谷部や側壁に対する粉体の付着量は、凹凸部の形状(山部の鋭角性、谷部の深さ、山部や谷部の間隔やピッチなど)により変動する。そのため、予め実験により前記付着量X,Yと塗膜の厚みとの関係を測定することにより、被塗装品の形状や種類に応じて、凹凸面に均一な厚みの塗膜を形成できる。
一次粉体層及び二次粉体層の付着量(g/m)は、被塗装品の凹凸部の形状やサイズに応じて、通常、粉体層の総付着量(g/m)を100としたとき、一次粉体層の付着量(g/m)と二次粉体層の付着量(g/m)との割合が、前者/後者=20/80〜80/20(好ましくは25/75〜75/25、さらに好ましくは30/70〜70/30)程度の範囲から選択できる。
なお、粉体の付着量が粉体層の厚みや塗膜の厚みに対応するため、上記付着量の関係は、一次粉体層の厚み及び二次粉体層の厚みとの関係のみならず、一次粉体層による一次塗膜の厚み及び二次粉体層による二次塗膜の厚みとの関係にも対応している。
上記粉体層の付着量は、粉体塗料の噴霧量(吐出量)、噴霧時間などにより容易にコントロールできる。例えば、最終塗膜の厚みに応じて、一次粉体層の形成工程では、粉体塗料をスプレーガンから5〜60秒(例えば、10〜40秒)間程度噴霧して静電塗装して一次粉体層を形成し、二次粉体層形成工程では、粉体塗料をスプレーガンから5〜180秒(例えば、10〜120秒)間程度噴霧して静電塗装して二次粉体層を形成することができる。
[誘導加熱工程]
そして、誘導加熱工程(IV)において、誘導加熱手段(誘導加熱炉など)により電磁誘導加熱し、放冷などにより冷却し、必要により非塗装部位のマスキングを除去することにより、スプラインシャフト1の歯部2に、ナイロン系樹脂ベースの厚膜の塗膜5が均一な厚みで形成している。この塗膜5は前記一次粉体層3aに対応する一次塗膜5aと二次粉体層3bに対応する二次塗膜5bとで構成されている。このようにして得られたスプラインシャフト1では、歯部2をボス内に軸方向に移動可能に装着することにより、歯部2とボスとの噛み合いによる騒音の発生を防止できるとともに耐摩耗性や耐食性を向上でき、消音しつつ確実に動力を伝達できる。
前記誘導加熱を利用することにより、粉体層の内部から加熱して一次粉体層3a及び二次粉体層3bを融着させ、歯部の表面に均一な厚みの塗膜5を短時間内に効率よく形成できる。すなわち、ナイロン系樹脂ベースの粉体塗料は、エポキシ樹脂などの樹脂に比べて融点又は軟化点が高いだけでなく、誘電率が高く電気絶縁性および帯電量が小さい。そのため、粉体層の厚みが大きくなると静電気による付着力が大きく低下する。そして、このような粉体層を加熱炉により加熱すると、粉体層の表面は溶融するものの内部は粉体の状態であるため、過度の加熱を必要とし、均一な厚みの塗膜を形成できない。
これに対して、誘導加熱を利用すると、粉体層の内部から加熱して溶融でき、粉体層の厚みが大きくても、均一な厚みの塗膜を効率よく形成できる。スプラインシャフト類及びギヤ類に適用すると、例えば、塗膜の厚みが大きくても、静電粉体塗装により歯部の表面に均一な厚みの塗膜を形成できる。特に、ギヤ類やスプラインシャフト類の歯先部、底部及び側部における塗膜の厚み(平均値)が100〜300μm(特に150〜200μm)程度であり、かつ歯先部の塗膜と、底部及び側部の塗膜との厚みの差が平均値として0〜40μm(好ましくは0〜30μm、特に0〜20μm)である被覆ギヤ類やスプラインシャフト類を容易に得ることができる。
なお、電気絶縁性および帯電量が高く、融点又は軟化点の低い樹脂ベースの粉体塗料を用いると、厚みの大きな粉体層を形成できるものの、誘導加熱すると、融点が低いため粉体層の内部が溶融して流れ出し、厚みの大きな塗膜を形成することが困難な場合がある。このような場合でも、誘導加熱手段(誘導加熱炉など)による加熱条件を調整することにより、粉体塗料の特性に応じて厚膜の塗膜を形成できる。
誘導加熱は、慣用の高周波誘導加熱装置を用いて行うことができ、誘導加熱の周波数は、例えば、約0.5〜200kHz(例えば、0.5〜100kHz、好ましくは1〜80kHz、さらに好ましくは5〜70kHz、特に10〜50kHz)程度であってもよい。
なお、前記一次粉体層及び/又は二次粉体層の形成工程において、中心軸を有する被塗装品(ギヤ類など)では、塗装効率を高めるため、軸芯を中心軸として回転させながら被塗装品を静電粉体塗装するのが有利であるが、必ずしも回転させながら静電塗装する必要はない。例えば、凹部又は溝などを有する板状の被塗装品では、長手方向に沿って上下方向又は左右方向に移動させながら静電塗装してもよい。また、一次粉体層及び/又は二次粉体層は、被塗装品の凹凸部の表面全体に亘り粉体層を形成すればよい。なお、一次塗装および二次塗装では、同じ粉体塗料を用いてもよく、異なる粉体塗料を用いてもよい。
凸部の粉体を除去するための掻き取り工程(又は選択的な除去工程)では、被塗装品の種類や形状に応じて、種々の除去手段、例えば、スクレーパーが使用でき、凸部(歯部など)の延設方向に対して交差又は直交する方向に粉体層を掻き落としてもよいが、凸部(歯部など)に沿って掻き落とすのが効率的である。また、スクレーパーのドクター部は、例えば、紙やプラスチック、ゴム、金属などで形成でき、帯電粒子の付着を防止するためには、非帯電性基材(又は導電性基材)で形成するのが有利である。
例えば、スクレーパーは、軸方向に延びる溝を有する円筒状ロッド(被塗装品)の凸部に形成された粉体層を軸方向に移動させながら掻き取る場合、被塗装品の外周の曲率に適合して湾曲した中空筒状のドクター部を有するスクレーパー、半円弧状や1/4円弧状などの湾曲したドクター部を有するスクレーパーなどが使用でき、軸方向に溝を有する角柱状ロッド(被塗装品)の凸部に形成された粉体層を軸方向に移動させながら掻き取る場合、L字状や板状のドクター部を有するスクレーパーなどが使用できる。さらに、溝を有する板状体の凸部に形成された粉体層を掻き取る場合、平板状ドクター部を有するスクレーパーを用いてもよい。
なお、掻き取り工程では、凸部の粉体層を完全に除去する必要はなく、所定の厚みで除去してもよく、膜厚に大きな影響を及ぼさない限り、或る程度大まかに除去してもよい。
除去工程において凸部の粉体層が凹部に脱落するのを防止するため、掻き取られた粉体を吸引手段により除去するのが好ましい。この吸引手段は、通常、スリットから掻き取られた粉体を吸引するためのモータ及びファンと、吸引された粉体の通過を規制するフィルターを備えている。
なお、一次粉体層の形成工程と掻き取り工程と二次粉体層の形成工程と誘導加熱工程は、個別に行ってもよいが、生産性を高めるためには、連続工程で行い自動化するのが有利である。例えば、(1)一次粉体層を形成した後、被塗装品を移送して掻き取り工程で凸部の粉体層を掻き取り、二次粉体層の形成工程に移送して静電塗装して二次粉体層を形成し、誘導加熱工程に移送して誘導加熱により塗膜を形成してもよく、(2)静電塗装により被塗装品に一次粉体層を形成した後、移送することなくその場所で、凸部の粉体層を掻き取るとともに、静電塗装して二次粉体層を形成し、次いで、誘導加熱工程に移送して誘導加熱により塗膜を形成してもよい。後者(2)の場合、被塗装品の移送工程を低減できるとともに、塗装ラインの大幅な変更や改造を伴うことなく、静電塗装により塗膜を形成できる。
前記誘導加熱工程では、粉体塗料の種類に応じた温度に加熱すればよく、粉体塗料が熱硬化性樹脂をペースとする粉体塗料である場合、必要により、誘導加熱により又は誘導加熱に後続する加熱工程により塗膜を架橋又は硬化させてもよい。また、被塗装品を事前に加熱し、静電粉体塗装を実施してもよい。
なお、この参考例では、一次,二次の2回にわたって、歯部2に一次粉体層3aと二次粉体層3bを形成したが、歯の谷底と先端部との段差が大きい場合には、3回の粉体形成工程を実行し、各工程で膜厚を調整することで、膜厚の均一化を図れる。さらには、歯の各部分に応じて膜厚を所望の値に設定することも可能となる。たとえば、歯の先端部で膜厚を薄く設定し、谷底部で膜厚を厚く設定することもできる。
参考例は、静電粉体塗装により金属製被塗装品の凹凸面に均一な厚みの塗膜(特に厚膜の塗膜)を形成する方法として有効である。凹凸部を有する被塗装品の種類は、凹凸部を有する限り特に制限されず、板状、棒状、円筒状、円盤状、傘状などの種々の形状を有していてもよい。本参考例は、規則的に凹凸部を有する被塗装品、特にギヤ類の被膜形成に適している。
凹凸部での塗膜の厚みは、被塗装品の種類に応じて選択でき、例えば、100〜200μm、好ましくは150〜200μm程度である。また、凹凸部における塗膜の厚みのばらつきは、通常、±20μm(特に±15μm)程度である。
ギヤ類には、互いに噛み合って動力を伝達可能な広義のギヤ、例えば歯車類(平歯車,内ば歯車、はすば歯車、やまば歯車、ラックとピニオン、すぐばかそ歯車、ねじ歯車、食い違い歯車、ウォームとウォーム歯車など)などが含まれ、スプラインシャフト類には、スプラインシャフト(溝付き軸)、スプライン歯の断面が山形であるセレーション軸なども含まれる。なお、スプラインシャフト類では少なくとも歯部に塗膜を形成すればよい。ギヤ類やスプラインシャフトの歯部の歯形は特に制限されず、インボリュート歯形サイクロイド歯形であってもよい。歯先部(歯の山部)の断面形状は、鋭角な突起状や鋭角な湾曲状であってもよいが、通常、軸方向に延びる溝が円周方向に間隔をおいて形成された軸付き軸のように、歯先円に沿った曲率の湾曲頂部を有する形状をしていてもよい。また、スプラインシャフト類において、溝の数は特に制限されず、例えば、通常、4〜50条(例えば、10〜20条)程度であってもよい。
以下に、実験例に基づいて本参考例をより詳細に説明するが、本参考例はこれらの、実験例によって限定されるものではない。
実験例1
スプラインシャフトを回転させながらスプラインシャフトの歯部(キー溝部、歯元径46mmφ、長さ80mm、キー溝数20条)に、静電スプレーガンを用いて12−ナイロンベースの粉体塗料(平均粒子径32μm)を20秒間静電粉体塗装し、一次粉体層を形成した。歯部の曲率に対応させて湾曲させたシートを、スプラインシャフトの軸に沿って上方へ移動させながら歯先部の一次粉体層を掻き取るとともに、吸引しながら除去した。次いで、上記静電スプレーガン及び粉体塗料を用い、スプラインシャフトの歯部に、20秒間静電粉体塗装し、二次粉体層を形成した後、誘導加熱炉(周波数27kHz)で加熱し、塗膜を形成した。得られたスプラインシャフトの歯部を中心軸に対した直交する方向に切断し、歯先部、左右側部及び底部の各測定部位のそれぞれ3箇所で測定し、平均値として膜厚を評価した。なお、膜厚は、周方向に90°ずつずれた切断片の4箇所で測定した。
比較例1
スプラインシャフトを回転させながら、スプラインシャフトの歯部(キー溝部、歯元径46mmφ、長さ80mm、キー溝数20条)に、静電スプレーガンを用いて12−ナイロンベースの粉体塗料(平均粒子径32μm)を40秒間静電粉体塗装した後、誘電加熱炉(周波数27kHz)で加熱し、塗膜を形成した。そして、実施例1と同様にして、膜厚を測定した。
結果を表1に示す。
表1
Figure 0003974909
表1から明らかなように、比較例に比べ、実験例では、歯先部、底部及び側部に均一な厚みの塗膜を形成できる。
〔実施の形態〕
次に、図5(A),(B),(C)を順に参照して、この発明の塗装品の製造方法の実施形態を説明する。
まず、図5(A)に示すように、被塗装部品としてのスプラインシャフト51の歯部54の破線で示す先端部53を所定寸法だけカットする。このカット寸法は、次の静電付着工程における粉体の付着厚さが、先端部53以外の谷部59や歯側面57に比べて、先端部53が厚くなる分を補正できるような寸法に設定する。例えば、このカット寸法は、歯高を塗膜の厚さの20%を低下させるような寸法であるが、歯の形状によっては、歯高を塗膜の厚さの10%〜60%を低下させるような寸法の範囲で設定される。
次に、上記スプラインシャフト51の表面全体にアンダーコート52を形成する。このアンダーコート材は、有機プライマーあるいは無機プライマーからなる。この有機プライマーとしては、エポキシ,フェノール,ポリビニルアセタール樹脂やゴムなどがあり、オリゴマーを含むものであってもよい。また、上記無機プライマーとしては、マグネシウム,マンガン,シリコンなどを含むものがある。このアンダーコート52は、金属からなる被塗装部品としてのスプラインシャフト51に樹脂からなる粉体55を付着し易くする役目を果す。
次に、図5(B)に示すように、樹脂材料からなる粉体55を、静電塗装でもって、上記アンダーコート52上に付着させる。このとき、歯部54の先端部53には、それ以外の部分に比べて、粉体55が所定寸法だけ厚く付着する。
この粉体55を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂材料や熱硬化性樹脂材料を採用できる。より具体的には、上記熱可塑性樹脂材料としては、ナイロン系材料,オレフィン系材料,フッ素系材料,その他(PBT(ポリブチレンテレフタレート),PET(ポリエチレンテレフタレート),PPS(ポリフェニレンサルファイド)など)がある。上記ナイロン系材料としては、PA6,PA66,PA46,PA11,PA12,PPA(ポリフタルアミド)を代表とする芳香族ポリアミドなどの単独重合材料や、PA(ポリアミド)系樹脂に固体潤滑剤(PE(ポリエチレン),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),MoSなど)、または、充填材(炭酸カルシウム,タルクなど)のどちらか一方もしくは両方を、添加した材料を採用できる。また、上記オレフィン系材料としては、PE(HDPE(高密度ポリエチレン),UHDPE(超高密度ポリエチレン)など含む),PP(ポリプロピレン)などを採用できる。また、上記フッ素系材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PFA(p−フルオロフェニルアラニン),FEP(フッ化エチレンプロピレン),ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などを採用できる。また、上記熱硬化性樹脂材料としては、エポキシ,フェノールなどの硬化樹脂や、架橋剤または硬化剤を用いる熱硬化性ポリエステル系もしくはアクリル系樹脂を採用できる。
次に、スプラインシャフト51を電磁誘導加熱することによって、図5(C)に示すように、上記粉体55を溶融させて、スプラインシャフト51にコーティング膜56を付着させる。この実施形態では、このコーティング膜56の膜厚を、100μm乃至150μmの範囲内に設定した。このようなコーティング膜56の膜厚設定によれば、図6の特性図に示すように、コーティング膜厚がゼロの場合に比べて、作動音(打音)を20%以上低下させることができた。図6では、コーティング無しの場合の作動音を100とした相対値を示す。また、上記コーティング膜56の膜厚設定によれば、図7の特性図に示すように、コーティング膜厚が300μmの場合に比べて、摩耗量を最大46%だけ減少できた。なお、図6および図7の特性図を参照すれば分かるように、上記コーティング膜厚が100〜250μmの範囲内に設定すれば、作動音の低減効果と摩耗量の抑制効果とが得られる。
また、この実施形態によれば、凹凸部を有する被塗装部品としてのスプラインシャフト51に、粉体55を静電付着させた状態で、スプラインシャフト51を誘導加熱することで、粉体55を溶融させる。このため、粉体55の層をその内側のスプラインシャフト51で加熱することとなるため、内側で溶融した粉体55から外側へ気泡を逃し易くなり、コーティング膜56中に気泡が混入することを防止でき、コーティング膜56の品質を向上できる。
すなわち、図4(A)に模式的に例示するように、誘導加熱の場合には、アンダーコート22が施された被塗装部品21に粉体23を電着させてから、被塗装部品21を誘導加熱することによって、このアンダーコート22近傍の内方の粉体23が最初に溶融し始める。このことによって、粉体23間の気泡が外側に出され易くなって、図4(B)に示すように、気泡が実質的に無いコーティング膜25を形成できる。この効果は、被塗装品を事前に加熱した後、静電粉体塗装を実施しても得られる。
これに対し、オーブン加熱の場合には、図4(C)に示すように、被塗装部品101のアンダーコート102の表面に付着された粉体103の外側から加熱することとなるので、粉体103は最外側から溶け始める。このため、図4(D)に示すように、粉体103間の気泡106がコーティング膜105内に閉じ込められ易くなる。
また、この実施形態では、塗装後のスプラインシャフト51の寸法が所望の外径寸法になるように、上記塗装前のスプラインシャフト51の歯部54の先端部53を所定寸法だけカットしたから、二次的な仕上げ加工(例えばブローチ加工)が不必要となり、加工コストを低減できる。
なお、上記実施形態では、被塗装部品としてドライブシャフトに使用するスプラインシャフト51を採用したが、このスプラインシャフト51は雌型でも雄型でもよい。また、上記被塗装部品は、ハンドルジョイントに用いるインタミシャフトであってもよい。さらには、上記被塗装部品は、動力伝達(減速機構)部品としてのハイポイドギヤや圧力発生(ギヤポンプ)部品としてのピニオンギヤであってもよい。また、上記被塗装部品の材質としては、鉄鋼材料や非鉄材料(アルミニウム合金,マグネシウム合金など)が採用できる。
また、上記実施形態において、被塗装部品に付着されている所定膜厚のコーティング膜は、被塗装部品の表面に部分的に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
図1はスプラインシャフトの歯部の塗装工程の一例を示す工程図である。 図2はスクレーパー手段による掻き取り状態を示す概略斜視図である。 図3はスプラインシャフトを示す概略側面図である。 図4(A),(B)は、電磁誘導加熱の場合に粉体が溶融する状態を示す模式図であり、図4(C),(D)は、オーブン加熱の場合に粉体が溶融する状態を示す模式図である。 図5(A)は、この発明の実施形態において前処理として歯部の先端部をカットする工程を示す断面図であり、図5(B)はこの実施形態においてスプラインシャフトに粉体を静電付着させる様子を示す断面図であり、図5(C)はこの実施形態においてスプランシャフトを電磁誘導加熱して上記粉体を溶融させた様子を示す断面図である。 記実施形態において、コーティング膜の膜厚と作動音との関係を示す特性図である。 記実施形態において、コーティング膜の膜厚と摩耗量との関係を示す特性図である。
符号の説明
1…スプラインシャフト、2…歯部、2a…歯先部、2b…側部、
2c…底部、3a…一次粉体層、3b…二次粉体層、
4…スクレーパー手段、5…塗膜、5a…一次塗膜、
5b…二次塗膜、
21…被塗装部品、23…粉体、51…スプラインシャフト、
52,22…アンダーコート、53…先端部、54…歯部、55…粉体、
56…谷部、57…側面。

Claims (11)

  1. 動力を伝達するための凹凸部を有するスプラインシャフトの被塗装部品の表面にアンダーコートを形成し、このアンダーコートを形成した上記被塗装部品に粉体を静電付着させてから、上記被塗装部品を誘導加熱することによって、上記粉体を溶融させて上記被塗装部品にコーティング膜を付着させ、
    上記コーティング膜は、
    上記凹凸部の凸部の先端部に付着させる第1の部分の厚さが、上記凸部の先端部以外の部分に付着させる第2の部分の厚さよりも厚く、
    上記コーティング膜を、上記スプラインシャフトの外面とすることを特徴とする塗装品の製造方法。
  2. 請求項1に記載の塗装品の製造方法において、
    上記アンダーコートを形成する前に、上記被塗装部品の凹凸部の凸部の先端部をカットすることを特徴とする塗装品の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の塗装品の製造方法において、
    上記塗装品の凹凸部の凸部の先端部に付着させる上記コーティング膜の第1の部分の厚さが、上記塗装品の凹凸部の凹部の底部および上記塗装品の凹凸部の側壁に付着させる上記コーティング膜の第2の部分の厚さよりも大きいことを特徴とする塗装品の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の塗装品の製造方法において、
    上記コーティング膜の膜厚を、100μm乃至250μmにしたことを特徴とする塗装品の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の塗装品の製造方法において、
    上記粉体を構成する樹脂が、ナイロン系材料の粉体であることを特徴とする塗装品の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1つに記載の塗装品の製造方法において、
    上記コーティング膜には気泡がないことを特徴とする塗装品の製造方法。
  7. 力を伝達するための凹凸部を有するスプラインシャフトの被塗装部品にコーティング膜が付着されていて、
    上記コーティング膜は、上記凹凸部の凸部の先端部に付着させた第1の部分の厚さが、上記凸部の先端部以外の部分に付着させた第2の部分の厚さよりも厚いことを特徴とする塗装品。
  8. 請求項に記載の塗装品において、
    上記コーティング膜は粉体を溶融してなることを特徴とする塗装品。
  9. 請求項7または8に記載の塗装品において、
    上記コーティング膜の膜厚が、100μm乃至250μmであることを特徴とする塗装品。
  10. 請求項7乃至のいずれか1つに記載の塗装品において、
    上記粉体を構成する樹脂が、ナイロン系材料の粉体であることを特徴とする塗装品。
  11. 請求項7乃至10のいずれか1つに記載の塗装品において、
    上記コーティング膜には気泡がないことを特徴とする塗装品。
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