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JP3941363B2 - 延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の外装材、厨房器具、化学プラント、貯水槽、自動車用耐熱部材等の使途に好適なフェライト系ステンレス鋼板に係り、とくに、延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板、およびその製造方法に関する。なお、本発明でいう鋼板は、鋼板、鋼帯を含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板は、表面が美麗で耐食性が優れているため、建築物の外装材、厨房器具、化学プラント、貯水槽などの使途に幅広く使用されている。とくに、オーステナイト系ステンレス鋼板は、延性に優れ、リジングの発生もなくプレス成形性に優れていることから、上記した用途に幅広く用いられてきた。
【0003】
一方、フェライト系ステンレス鋼板は、鋼の高純度化技術の進歩により、成形性が改善され、最近では、SUS 304 、SUS 316 などのオーステナイト系ステンレス鋼板に代わり上記した用途への適用が検討されている。これは、フェライト系ステンレス鋼が有する特徴、例えば、熱膨張係数が小さく、応力腐食割れ感受性が小さく、しかも高価なNiを含まないため安価であるといった長所が、広く知られるようになってきたからである。
【0004】
しかし、成形加工品への適用を考えた場合、このフェライト系ステンレス鋼板は、オーステナイト系ステンレス鋼板に比べて延性に乏しく、また、リジングと呼ばれる加工品表面での凹凸が生じて、成形加工品の美観を損ね、表面研磨の負荷を増大させるという問題があった。このため、フェライト系ステンレス鋼板の一層の用途拡大のために、延性、加工性の向上と耐リジング性の改善が要求されていた。
【0005】
このような要求に対し、例えば、特開昭52-24913号公報には、重量%で、C:0.03〜0.08%、N:0.01%以下、Al:2×N%以上0.2 %以下を含有させた加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼が提案されている。特開昭52-24913号公報に記載された技術では、C、N含有量を低減し、さらにAlをN含有量の2倍以上添加することにより、固溶N量が低減し、さらに結晶粒の微細化が図れ、延性、耐リジング性、二次加工性が向上するとしている。
【0006】
また、特開昭54-112319 号公報には、重量%で、(C+N):0.02〜0.06%、Zr:0.2 〜0.6 %を含有し、Zr:10(C+N)±0.15%とし、延性、r値を向上させたプレス成形性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼が提案されている。また、特開昭57-70223号公報には、重量%で、sol Al:0.08〜0.5 %、およびB、Ti、Nb、V、Zrの1種または2種以上を含有するフェライト系ステンレス鋼スラブを熱間圧延したのち、冷間圧延し、ついで最終焼鈍する加工性に優れたフェライト系ステンレス薄鋼板の製造方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特開昭52-24913号公報、特開昭54-112319 号公報、特開昭57-70223号公報に記載された技術では、加工性には大きな改善が認められるものの、耐リジング性の点では十分でないため、プレス成形などの加工を施す場合には、美観向上のための研磨を必要とし、研摩負荷が増大しコストが上昇することなどの問題があった。
【0008】
一方、耐リジング性の改善については、例えば、特開昭51-123720 号公報には、熱間圧延後、450 〜700 ℃の温度域で15%以上の圧下率で圧延を施しさらに焼鈍、冷間圧延および最終焼鈍を施すリジング発生の少ないフェライト系ステンレス鋼板の製造法が開示されている。
また、特開昭53-40625号公報には、重量%で、Al:0.01%以上でかつAl/N:2以上となるようにAlを含有せしめた熱間圧延後のステンレス鋼板に900 ℃以上の温度で連続焼鈍を施すリジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
【0009】
また、特開平1-111816 号公報には、仕上げ温度850 ℃以上で熱間圧延し、圧延終了後直ちに10℃/s 以上で急冷し、550 ℃以下の温度で巻き取り、ついで、累積圧下率50%以上の冷間圧延を施したのち焼鈍する耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法が開示されている。
しかしながら、特開昭51-123720 号公報、特開昭53-40625号公報、特開平1-111816 号公報に記載された技術では、耐リジング性の改善は見られるものの、延性、加工性をともに十分改善するまでに至っていない。そこで、延性、加工性と耐リジング性を両立させようとする試みとしては、以下のようなものがある。
【0010】
特開平2-170923号公報には、クロムを13.0〜20.0wt%含有するクロム系ステンレス鋼片を熱間圧延して得た熱延板に圧下率2〜30%の予備的な冷間圧延を施し、その後連続焼鈍と、脱スケール、冷間圧延、および仕上げ焼鈍を施す耐リジング性およびプレス加工性に優れたクロム系ステンレス鋼冷延板の製造方法が開示されている。特開平2-170923号公報に記載された技術では、焼鈍前に冷間圧延による圧下を加え、焼鈍時の再結晶挙動を促進させ、連続焼鈍を可能にし、加工性および耐リジング性を改善するとしている。
【0011】
また、特開平9-111354号公報には、重量%で、C:0.02〜0.05%、N:0.02〜0.05%、Cr:15〜18%、Al:0.10〜0.30%を含む鋼片に、最終パス出側温度:950 ℃以上の熱間圧延を施し、ついで冷却速度:20〜80℃/s で500 〜650 ℃まで冷却し、フェライト+マルテンサイトの複合組織を有する熱延板とし、ついで、850 〜980 ℃の温度範囲で180 〜300 sの焼鈍を行い、ついで15℃/s 以上の冷却速度で急冷し、ついで冷間圧延そして仕上げ焼鈍を施す、耐リジング性、プレス成形性に優れ、表面性状の良好なフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。
【0012】
また、特開平10-53817号公報には、重量%、Cr:11〜25%、C:0.005 %以下、N:0.008 〜0.03%を含有し、Tiを、Ti/48が(C/12+N/14)〜5(C/12+N/14)の範囲となるように含有するフェライト系ステンレス鋼スラブを、1100〜950 ℃の温度域での1パスあるいは2パス以上の合計圧下率が50%以上、かつ終了温度:950 ℃以上とする粗圧延を行い、粗圧延後10s以上後に、最終2パスの合計圧下率:40%以上、仕上げ温度:850 ℃以上の仕上げ圧延を行い、圧延直後から5s間の平均冷却速度を25℃/s 以下とする耐ローピング性、耐リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法が開示されている。特開平10-53817号公報に記載された技術では、熱間圧延における強圧下が耐リジング性改善に効果があるとしている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2-170923 号公報、特開平9-111354 号公報、特開平10-53817号公報に記載された技術にも、更なる改善の余地が残されていた。特開平2-170923 号公報に記載された技術では、良好な耐リジング性と、高いr値をともに具備するまでの改善となっていないという問題を残していた。
【0014】
また、特開平9-111354 号公報に記載された技術では、Alを多量添加する必要があり、鋼中介在物量が増加し、これに起因した表面欠陥の発生が避けられないという問題に加えて、延性、耐リジング性の改善がまだ不十分であるという問題が残されていた。
また、特開平10-53817号公報に記載された技術では、リジングの評点がいちばんよいランク1のものでも、最大で20μm のものまで含んでいるため、耐リジング性の改善がまだ不十分である、という問題が残されていた。さらに、極低炭素化し、TiをC、Nを固定するに十分な量添加する必要があり、製造コストが増加するという問題に加えて、Tiの多量添加に伴う表面欠陥の発生が避けられないという問題があった。
【0015】
また、リジングの発生は、フェライト系ステンレス鋼の本質的な問題であり、その根本的な解決が要望されていた。このような要望に対し、特開平9-263900 号公報、特開平10-330887 号公報には、結晶粒の方位コロニーを制御して耐リジング性を改善する技術が提案されている。特開平9−263900号公報に記載された技術では、冷間圧延用原板となる熱延鋼板の熱間圧延時の圧延温度、摩擦係数、圧下率、圧延速度、圧延パス間時間を調整することにより、{111}方位コロニーに板幅方向分布を制御して、リジング特性の改善を図っている。
【0016】
また、特開平10−330887号公報には、鋼の溶製段階における塩基度を調整するとともに、熱間圧延工程におけるスラブ抽出から粗圧延工程終了までの時間、粗圧延工程における圧延温度、摩擦係数、圧下率を調整することにより、圧延方向に平行な板厚断面における方位コロニーの厚さを板厚の30%以下とすることでリジング特性を改善する技術が提案されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−263900号公報、特開平10−330887号公報に記載された技術では、方位コロニーの生成を抑制してもリジングの発生を完全には防止することができず、リジング発生のないSUS 304 鋼に比較して成形後の表面品質が劣るという問題が残されていた。
【0018】
さらに、フェライト系ステンレス鋼板を用いてプレス成形等で深絞り加工を行う場合には、素材鋼板のr値の面内異方性が問題となる。たとえ素材鋼板の各方向の平均値である平均r値が高くても、最小r値が低すぎると十分な深絞り加工が行えない。上記した従来技術で製造された鋼板は、いずれも平均のr値は改善されているが、最小r値が低く、r値の面内異方性が大きいという問題もあった。
【0019】
このように、上記した従来技術では、加工性に大きな改善が認められるものの、耐リジング性の改善が不十分であるため、プレス成形等の加工を施す用途においては、成形品の表面美観を向上させるために、製造工程における研摩負荷が大きくなる。また、平均r値の改善は認められるものの、r値の面内異方性が大きいため、実際のプレス成形等において十分な加工性が得られないという問題があり、延性、加工性および耐リジング性をいずれも十分なレベルで兼ね備えた鋼板を低コストで製造することは非常に困難であった。
【0020】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、良好な延性、加工性と、優れた耐リジング性を併せ具備し、とくにSUS 304 鋼並みの耐リジング性を有し、成形後の優れた表面品質を有し、さらにr値の面内異方性が小さいフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、良好な延性、加工性と、優れた耐リジング性を併せ具備し、さらにr値の面内異方性が小さいフェライト系ステンレス冷延鋼板が製造可能なフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板およびその製造方法を提供することも目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するべく種々検討を重ねた結果、化学成分を調整し、熱間圧延後に熱延板焼鈍に先立ち、比較的低い圧下率の温間圧延または冷間圧延による予備圧延を付与し、さらにその後の熱延板焼鈍を長時間保持、徐冷の箱焼鈍とすることにより、延性、加工性および耐リジング性がともに向上することを見いだした。また、さらに熱間圧延の仕上げ温度FDTを850 ℃以下の低温とすることにより、最小r値rmin が高くなりr値の面内異方性が改善されることを見いだした。
【0022】
また、本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼板の本質的な問題であるリジングの発生に関し、その根本的な解決策を得るべく、鋼板の結晶粒組織に着目し検討した。その結果、熱延焼鈍後の結晶粒の伸展度を板厚全域にわたって小さくすることにより耐リジング性が格段に改善されることを見いだした。なお、ここでいう結晶粒の伸展度とは、結晶粒の圧延方向の長さと結晶粒の板厚方向の長さの比を意味する。
【0023】
また、冷延焼鈍後に鋼板中に存在する粗大粒コロニーの生成を抑制することにより、リジングの発生が著しく抑えられ、良好な延性、加工性と優れた耐リジング性を併せ具備し、とくにSUS 304 鋼並みの耐リジング性を得ることができることを見いだした。なお、ここでいう粗大粒コロニーとは平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する粗大結晶粒が圧延方向に連続して並んだ集合体を意味する。
【0024】
まず、本発明者らが行った、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
まず、本発明者らは、熱間圧延後で熱延板焼鈍に先立つ、圧延歪付加の影響について調査した。
0.063mass %C−0.033 mass%N−0.27mass%Si−0.60mass%Mn−16.3mass%Cr−0.33mass%Ni−0.001 mass%Al−0.061 mass%Vを含有する組成のフェライト系ステンレス熱延鋼板(熱間圧延仕上げ温度FDT:950 ℃)に、0〜20%の圧下率の冷間圧延を施したのち、860 ℃で8h保持しその後600 ℃までの平均冷却速度が7.2 ℃/hとなるように徐冷する熱延板焼鈍を施し、さらに熱間圧延後の熱延板への累積圧下率が75%となるように冷間圧延を施したのち、830 ℃で30s保持する仕上げ焼鈍を行いフェライト系ステンレス冷延鋼板とした。これらフェライト系ステンレス冷延鋼板について、平均伸びElmean、平均r値(ランクフォード値)rmean、およびリジンググレードの変化を調査した。その結果を図1に示す。
【0025】
図1から、熱延板焼鈍前に、圧下率2〜15%の冷間圧延を施すことにより、伸びElmean:32%以上、r値rmean:1.3 以上、リジンググレード:A(うねり高さ5μm 以下)と、伸びEl、r値、および耐リジング性がともに向上することがわかる。本発明者らが行った他の実験により、このような顕著な特性の改善は、熱延板焼鈍前の予備圧延による歪付加に加えて、化学成分のうち、Alを0.03mass%以下に調整すること、および熱延板焼鈍で焼鈍温度に1h以上保持し、さらに保持後徐冷することが複合した結果であるという知見を得ている。この特性改善の機構については現在のところ明らかとはなっていないが、Alを低減することで固溶Nが増加し、さらに予備圧延による圧延歪を付与することにより熱延板焼鈍の加熱過程で転位上への炭窒化物の析出が促進され、再結晶が起き易くなったことに関連するものと考えられる。なお、熱延板焼鈍の焼鈍温度を、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満とすることにより、上記した効果が顕著となることを見いだした。ここで、A1 変態点は、
1 変態点(℃)=35(Cr+1.72Mo+2.09Si+4.86Nb+8.29V+1.77Ti+21.4Al+40B-7 .14C-8.0N-3.28Ni-1.89Mn-0.51Cu)+310 ……(2)
(ここで、Cr、Mo、Si、Nb、V、Ti、Al、B、C、N、Ni、Mn、Cu:各合金元素の含有量(mass%))
で定義される。なお、(2)式の計算に際しては、鋼板中に含まれない成分(合金元素)は0として計算するものとする。
【0026】
つぎに、本発明者らは、更なる加工性の向上のために、熱間圧延における仕上げ温度のr値への影響について調査した。
mass%で、 0.063%C−0.033 %N−0.27%Si−0.60%Mn−16.3%Cr−0.33%Ni−0.001 %Al−0.061 %Vを含有する組成のフェライト系ステンレス鋼素材に、1000〜700 ℃の間の仕上げ温度(FDT)となるように熱間圧延して熱延板とし、その後、圧下率10%の冷間圧延を施したのち、860 ℃で8h保持しその後600 ℃までの平均冷却速度が7.2 ℃/hとなるように徐冷する熱延板焼鈍を施し、さらに熱間圧延後の熱延板への累積圧下率が75%となるように冷間圧延を施したのち、830 ℃で30s保持する仕上げ焼鈍を行いフェライト系ステンレス冷延鋼板とした。
【0027】
これらフェライト系ステンレス冷延鋼板について、圧延方向、圧延方向と45°方向、圧延方向と90°方向の各方向でr値を調査し、平均r値(rmean)、最小r値(rmin )を求めた。その結果を図2に示す。
図2から、FDTを850 ℃以下とすることにより、rmin 値が向上し、面内異方性が改善され、プレス成形性がさらに改善されるという知見を得た。
【0028】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、第1の本発明は、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、Al:0.03%以下を含有し、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下を含み、さらにP:0.05%以下、S:0.01%以下、V:0.15%以下、Ni:1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、圧延方向に平行な板厚断面で、次(1)式
e=L1/L2 ……(1)
(ここで、e:伸展度、L1:結晶粒の圧延方向長さ(μm )、L2:結晶粒の板厚方向長さ(μm ))
で定義される伸展度eの最大値が5以下である組織とを有することを特徴とするフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板である。
【0029】
また、第2の本発明は、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下を含有し、Si 1.0 %以下、 Mn 1.0 %以下を含み、さらにP: 0.05 %以下、S: 0.01 %以下、V: 0.15 %以下、 Ni 1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる鋼素材に、熱間圧延により熱延板とする熱延工程を施したのち、該熱延板に冷間または温間で圧下率:2〜15%の圧延を行う予備圧延工程を施し、ついで該予備圧延工程を施した熱延板を箱焼鈍する熱延板焼鈍工程を施すことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼冷延鋼板用原板の製造方法であり、また、第2の本発明では、前記箱焼鈍が、所定の焼鈍温度で1h以上の保持と、保持後600 ℃までの平均冷却速度で25℃/h以下の徐冷を施すことが好ましく、また、第2の本発明では、前記所定の焼鈍温度が、700 ℃以上、あるいは750 ℃以上1000℃未満、あるいは次(2)式
1 変態点(℃)=35(Cr+1.72Mo+2.09Si+4.86Nb+8.29V+1.77Ti+21.4Al+40B-7 .14C-8.0N-3.28Ni-1.89Mn-0.51Cu)+310 ……(2)
(ここで、Cr、Mo、Si、Nb、V、Ti、Al、B、C、N、Ni、Mn、Cu:各合金元素の含有量(mass%))
で定義されるA1 変態点を基準にして、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満とすることが好ましい。また、第2の本発明では、前記熱延工程における熱間圧延が、仕上げ温度を850 ℃以下とすることが好ましい。
【0030】
また、第3の本発明は、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、Al:0.03%以下を含有し、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下を含み、さらにP:0.05%以下、S:0.01%以下、V:0.15%以下、Ni:1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、圧延方向に平行な板厚断面で、平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する結晶粒が圧延方向に連続して並んだ集合体である粗大粒コロニーの、次(3)式
A=L3/L4 ……(3)
(ここで、A:粗大粒コロニーのアスペクト比、L3:粗大粒コロニーの圧延方向長さ(μm )、L4:粗大粒コロニーの板厚方向長さ(μm ))
で定義されるアスペクト比Aの最大値が5以下である組織とを有することを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板である。
【0031】
また、第4の本発明は、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下を含有し、Si 1.0 %以下、 Mn 1.0 %以下を含み、さらにP: 0.05 %以下、S: 0.01 %以下、V: 0.15 %以下、 Ni 1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により熱延板とする熱延工程と、該熱延板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、前記熱延板焼鈍工程を経た熱延板を冷延鋼板用原板として、該冷延鋼板用原板を冷間圧延し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程とを有するフェライト系ステンレス鋼板の製造方法において、前記熱延工程後で前記熱延板焼鈍工程前に、冷間または温間で圧下率:2〜15%の圧延を行う予備圧延工程を施し、さらに前記熱延板焼鈍工程の焼鈍を、所定の焼鈍温度で1h以上保持する箱焼鈍とすることを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法である。また、第4の本発明では、前記箱焼鈍が、所定の焼鈍温度で1h以上の保持と、保持後600 ℃までの平均冷却速度で25℃/h以下の徐冷を施す処理とするのが好ましく、また、第4の本発明では、前記所定の焼鈍温度が 700℃以上、あるいは 750℃以上1000℃未満となるのが好ましいが、とくに前記(2)式で定義されるA1 変態点を基準にして、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満とすることが好ましく、また、第4の本発明では、前記熱延工程における熱間圧延が、仕上げ温度を850 ℃以下とすることが、r値の面内異方性を小さくする点から好ましい。
【0032】
また第5の本発明では、前記した第1の本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板を用いて、該フェライト系ステンレス冷延鋼板用原板に、冷間圧延を施したのち、仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法であり、また第5の本発明では、前記冷間圧延の圧下率が30%以上、前記仕上げ焼鈍の焼鈍温度が700 ℃以上であることが好ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板の組成、組織限定理由について説明する。本発明でいう冷延鋼板用原板は、熱延焼鈍板を意味する。
本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板(熱延焼鈍板)は、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、Al:0.03%以下、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下を含み、さらにP:0.05%以下、S:0.01%以下、V:0.15%以下、Ni:1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる。以下、mass%は、単に%と記す。
【0034】
C:0.01〜0.12%
本発明では、Cは、延性向上のために可能なかぎり低減するのが好ましい。しかし、C含有量を低減しすぎると耐リジング性が劣化し、プレス成形等の加工に際し加工部に凹凸を生じ、製品の美観が損なわれる。このため、C含有量の下限を0.01%とした。一方、0.12%を超えて過剰に含有すると、延性が低下するうえ、発錆の起点となる脱Cr層や、粗大な析出物、介在物が増加する。このため、C含有量の上限を0.12%とした。
【0035】
N:0.01〜0.12%
Nは、Cと同様に延性向上のため可能なかぎり低減するのが好ましい。しかし、N含有量を低減しすぎると耐リジング性が劣化し、プレス成形等の加工に際し加工部に凹凸を生じ、製品の美観が損なわれる。このため、N含有量の下限を0.01%とした。一方、0.12%を超えて過剰に含有すると、延性が低下するうえ、発錆の起点となる脱Cr層や、粗大な析出物、介在物が増加する。このため、N含有量の上限を0.12%とした。
【0036】
Cr:11〜18%
Crは、耐食性を向上させるうえで有効な元素であり、種々の腐食環境下で耐食性を有するためには少なくとも11%の含有が必要である。一方、18%を超えて含有すると、加工性が低下する。このため、Crは11〜18%の範囲に限定した。
Al:0.03%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であるが、本発明ではできるだけ低減する。Alを低減することにより固溶Nが増加し、予備圧延工程で導入された転位上への熱延板焼鈍加熱途中での炭窒化物の析出が促進される。一方、Alは、多量に含有すると酸化物系介在物が増加しへげ等の表面欠陥を多発する。このため、Alは0.03%以下に調整する。なお、好ましくは、Alは0.01%以下である。
【0037】
Si:1.0 %以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であるが、多量に含有すると延性、冷間加工性の低下を伴う。このため、Siは1.0 %以下とするのが好ましい。なお、より好ましくは、0.03〜0.50%である。
Mn:1.0 %以下
Mnは、Sと結合し、固溶Sを低減することによりSの粒界偏析を抑制し、熱間圧延時の割れを防止する有効な元素であるが、過剰の含有は冷間加工性、耐食性の低下を招く。このため、Mnは1.0 %以下に限定するのが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.8 %である。
【0038】
Ni:1.0 %以下
Niは、耐食性を向上させる元素であるが、多量の含有は冷間加工性を低下させるため、1.0 %以下に限定するのが好ましい。なお、加工性の観点から、より好ましくは0.7 %以下である。
V:0.15%以下
Vは、C、Nと結合し炭化物、窒化物を形成し結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する元素であるが、多量の含有は冷間加工性を低下させるため、0.15%以下に限定するのが好ましい。
【0039】
P:0.05%以下
Pは、熱間加工性を劣化させ、また食孔を発生させる元素であり、できるだけ低減するのが好ましい。0.05%までは、その悪影響が顕著とならないため、0.05%までは許容できる。
S:0.01%以下
Sは、硫化物を形成し鋼の清浄度を低下させるとともに、MnS として発錆の起点となり、さらに結晶粒界に偏析し粒界脆化を促進する元素であり、できるだけ低減するのが好ましい。0.01%までは、その悪影響が顕著とならず、許容できる。
【0040】
Mo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下
Mo、Cuは、いずれも耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ単独または複合して含有できる。とくに、高い耐食性が要求される場合には含有することが有効である。このような効果は合計で0.5 %以上の含有で顕著となる。しかし、過剰な含有は加工性を害する。このためMo、Cuのうちの1種または2種の含有量は合計で2.5 %以下に限定するのが好ましい。なお、好ましくは0.5 〜2.0 %である。
Ca:0.0005〜0.010 %、Mg:0.0002〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種
Ca、Mgは、いずれも加工性を向上させる作用を有し、必要に応じ選択し、単独または複合して含有できる。Caは、介在物の形態制御を通して加工性を向上させるが、0.0005%未満では効果が認められない。一方、0.010 %を超えて含有すると、酸化物起因の表面欠陥が多発し表面品質が低下する。このため、Caは0.0005〜0.010 %の範囲に限定するのが好ましい。また、Mgは、熱間加工性を向上させる作用を有するが、0.0002%以上の含有でその効果が認められる。一方、0.0050%を超えて含有すると、表面品質が低下する。このため、Mgは、0.0002〜0.0050%の範囲に限定するのが好ましい。
【0041】
残部Feおよび不可避的不純物
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、上記した不可避的不純物以外には、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、Co:0.5 %以下、W:0.01%以下、Zr:0.01%以下、Ta:0.01%以下が許容できる。 また、本発明の冷延鋼板用原板は、上記した組成に加え、圧延方向に平行な板厚断面で、次(1)式
e=L1/L2 ……(1)
(ここで、e:伸展度、L1:結晶粒の圧延方向長さ(μm )、L2:結晶粒の板厚方向長さ(μm ))
で定義される伸展度eの最大値が5以下である組織とを有する。
【0042】
フェライト系ステンレス冷延鋼板用原板である、熱延焼鈍板の圧延方向に平行な板厚断面における結晶粒組織は、通常、板中心部近傍の結晶粒が表面近傍の結晶粒に比べ圧延方向に長く伸展した粒、伸展粒が多くなっている。その一例を模式的に図4に示す。本発明では、圧延方向に平行な板厚断面における各々の結晶粒について、圧延方向の長さL1と、板厚方向の長さL2を測定し、前記(1)式で示されるように、その比、L1/L2をその結晶粒の伸展度eと定義する(図4(b))。
【0043】
本発明では、冷延鋼板用原板の圧延方向に平行な板厚断面における結晶粒組織を、上記した伸展度eの最大値が5以下である組織とする。
各種フェライト系ステンレス冷延鋼板用原板(熱延焼鈍板)について、圧延方向に平行な板厚断面における伸展度eの分布の一例を図5に示す。図5の各曲線にはリジンググレードを表示してあるが、このリジンググレードは、これら熱延焼鈍板に、通常の冷間圧延−仕上げ焼鈍を施し冷延焼鈍板としたのち測定したものである。冷延焼鈍後の鋼板のリジンググレードがD、Bである熱延焼鈍板では、中心部近傍で伸展度eの最大値が5を超える高い値となっている。リジンググレードAと、冷延焼鈍板の耐リジング性を高めるためには、熱延焼鈍板(冷延鋼板用原板)の結晶組織を、伸展度eの最大値が5以下である組織とする必要があることがわかる。
【0044】
熱延焼鈍板中に存在する伸展粒は、通常の冷延・仕上げ焼鈍により十分な再結晶を起こしほぼ等軸の粒となる。しかし、熱延焼鈍板中に存在する伸展度eが5を超える伸展粒は、冷延焼鈍板のリジング発生原因の一つである方位コロニー(結晶方位の類似した集合体)、あるいは粗大粒コロニー(圧延方向に連続して並ぶ粗大な結晶粒の集合体)の形成を助長し、それにより、冷延焼鈍板の耐リジング性を低下させる原因となっているものと考えられる。
【0045】
伸展度eが5以下の結晶粒組織とするために、本発明では、後述するように、熱延板に冷間あるいは温間で、圧下率2〜15%の予備圧延を施すのが好ましい。この予備圧延により導入された歪が、熱延板焼鈍に際し再結晶・等軸化を促進、とくに板厚中央部近傍の結晶粒の伸展度を低下させる。なお、本発明では、熱延焼鈍板の結晶組織を伸展度eが5以下の組織とする方法は、上記した熱延板に予備圧延を施す方法に限定されるものではない。熱間圧延の圧延仕上げ温度を 450℃未満の低温とし熱延板焼鈍前に歪によるエネルギーを蓄積する方法、あるいは熱延板焼鈍前に焼入れ処理を行い変態に伴う歪を利用する方法なども条件を選定すれば有効であると考えられる。
【0046】
つぎに、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板について説明する。
本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板は、上記したフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板に冷間圧延とその後の仕上げ焼鈍を施して得られるものであり、冷延鋼板用原板と同じ組成、すなわち、mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、Al:0.03%以下、Si:1.0 %以下、Mn:1.0 %以下を含み、さらにP:0.05%以下、S:0.01%以下、V:0.15%以下、Ni:1.0 %以下に調整して含み、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる。
【0047】
さらに、本発明の冷延鋼板は、圧延方向に平行な板厚断面で、平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する結晶粒、すなわち粗大粒が圧延方向に連続して並んだ集合体である粗大粒コロニーの、次(3)式
A=L3/L4 ……(3)
(ここで、A:粗大粒コロニーのアスペクト比、L3:粗大粒コロニーの圧延方向長さ(μm )、L4:粗大粒コロニーの板厚方向長さ(μm ))
で定義されるアスペクト比Aの最大値が5以下である組織を有する。
【0048】
本発明では、圧延方向に平行な板厚断面で、平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する結晶粒を粗大粒という。ここで、平均結晶粒面積A0 は、圧延方向に平行な板厚断面における結晶粒の平均面積を意味する。また、本発明では、これら粗大粒が圧延方向に連続して並んだ集合体を粗大粒コロニーと呼ぶ。
冷延焼鈍鋼板の圧延方向に平行な板厚断面における、冷延焼鈍鋼板の結晶粒組織の一例を模式的に図6(a)に示す。図6(a)では、板厚中央部近傍に粗大粒コロニーが存在する。粗大粒コロニーは、平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する粗大粒が圧延方向に連続して並んだ粗大粒の集合体である(図6では6個の粗大粒が連続している)。また、図6では、一つの粗大粒コロニーのみを図示しているが、粗大粒コロニーは一つに限定されない。また、粗大粒コロニーの位置についても、板厚中央部近傍に限定されない。
【0049】
本発明では、圧延方向に平行な板厚断面で、この粗大粒コロニーの圧延方向の長さL3と、板厚方向の長さL4を測定し、前記(3)式で示されるように、その比、L3/L4をその粗大粒コロニーのアスペクト比Aと定義する。(図6(b))。圧延方向に平行な板厚断面で存在する粗大粒コロニーごとに、そのアスペクト比Aを測定し、その最大値を求める。本発明の冷延鋼板では、このような粗大粒コロニーのアスペクト比の最大値を5以下とする。アスペクト比が5を超えると、耐リジング性が低下し、SUS 304 並みの耐リジング性が確保できなくなる。
【0050】
粗大粒コロニーの存在によるリジング発生の詳細な機構については現在のところ明確とはなっていないが、つぎのように考えられる。フェライト系鋼では、変形に際し降伏現象が現れ、リューダース帯と呼ばれる不均一変形が起きるが、降伏応力は結晶粒径に依存し、粗大粒ほど低い応力で降伏するため、アスペクト比が5を超える粗大コロニーが存在すると、変形初期に粗大コロニー部での微細領域で降伏が生じ、これが周囲の変形に影響して、鋼板表面にリジングを発生させるもの考えられる。
【0051】
アスペクト比が5を超える粗大コロニーの形成を抑制し、均一な結晶粒組織とすることにより、耐リジング性が顕著に改善される。アスペクト比が5を超える粗大コロニーの形成を抑制するためには、上記したように、冷延鋼板用原板(熱延焼鈍板)における結晶粒組織を、伸展度eの最大値が5以下である組織とすることが好ましい。
【0052】
つぎに、上記した組織を有するフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板、およびフェライト系ステンレス冷延鋼板の好ましい製造方法について説明する。
まず、本発明で好適な鋼素材の化学成分について説明する。
本発明で好適な鋼素材は、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%を含み、かつAl:0.03%以下に調整し、Si 1.0 %以下、 Mn 1.0 %以下を含有し、さらに Ni 1.0 %以下、V: 0.15 %以下、P: 0.05 %以下、S: 0.01 %以下に制限して含有し、あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下、および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からな。なお、各成分の限定理由は、冷延鋼板用原板、あるいは冷延鋼板における限定理由と同様である。
【0053】
上記した組成の溶鋼を、転炉または電気炉等の通常公知の溶製炉で溶製したのち、さらに真空脱ガス(RH法)、VOD法、AOD法等の公知の精錬方法で精錬し、ついで連続鋳造法、あるいは造塊法でスラブ等に鋳造し、鋼素材とするのが好適である。
鋼素材は、ついで加熱され、熱間圧延により熱延板とする熱延工程と、熱延板に冷間または温間で圧延歪を付与する圧延を行う予備圧延工程と、予備圧延工程を経た熱延板を焼鈍する熱延板焼鈍工程とを順次施され、冷延鋼板用原板とされる。ついでこれら冷延鋼板用原板に、冷間圧延し冷延板とする冷延工程と、冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程とを順次施す。なお、必要に応じ熱延工程後で予備圧延工程の前、熱延板焼鈍工程後、あるいは仕上げ焼鈍後等に脱スケール処理を施してもよい。
【0054】
本発明の熱延工程では、所望の板厚の熱延板とすることができればよく、熱間圧延条件はとくに限定されない。なお、加工性の更なる改善、とくにr値の面内異方性を改善することが要求される場合には、熱間圧延の仕上げ温度FDTを850 ℃以下とするのが好ましい。熱間圧延の仕上げ温度が850 ℃を超えると、r値の面内異方性が大きくなる。
【0055】
得られた熱延板は、必要に応じ脱スケール処理を施され、ついで熱延板焼鈍を施される前に、予備圧延工程を施される。
予備圧延工程では、冷間または温間で圧下率:2〜15%の圧延を行う。この圧延により、圧延歪が導入され、その後の焼鈍との組合せにより、伸び、r値、耐リジング性がともに向上する。圧下率が2%未満では、伸び、r値、耐リジング性の向上が少なく、一方、15%を超えると伸び、r値、耐リジング性がともに劣化する。このため、予備圧延工程における圧下率は2〜15%の範囲に限定した。予備圧延工程における圧延は、冷間あるいは450 ℃未満の温間域で行う。圧延温度が450 ℃以上では圧延により導入された圧延歪が回復し、予備圧延の効果が減少する。
【0056】
なお、予備圧延は、熱延工程の終了後、熱延板焼鈍工程前までの間に行えばよく、例えば、熱間圧延後にコイルが450 ℃未満〜室温まで冷却される間に、コイルがまだ室温より高温のうちに圧延してもよい。
予備圧延された熱延板はついで、熱延板焼鈍工程で焼鈍を施される。熱延板焼鈍工程における焼鈍は、箱焼鈍とする。箱焼鈍では、所定の焼鈍温度までの加熱速度は特に限定しないが500 ℃以上所定温度までの平均で50℃/h以下とするのが好ましい。箱焼鈍は、所定の焼鈍温度に加熱したのちその温度で1h以上の保持を行い、保持後600 ℃までの平均冷却速度で25℃/h 以下の徐冷を行う、高温長時間保持・徐冷の焼鈍とするのが好ましい。本発明における所定の焼鈍温度は、700 ℃以上、好ましくは750 ℃以上1000℃未満の範囲の温度とするのが延性改善の観点から好ましい。
【0057】
より好ましい焼鈍温度は、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満である。なお、A1 変態点は、次(2)式
1 変態点(℃)=35(Cr+1.72Mo+2.09Si+4.86Nb+8.29V+1.77Ti+21.4Al+40B-7 .14C-8.0N-3.28Ni-1.89Mn-0.51Cu)+310 ……(2)
(ここで、Cr、Mo、Si、Nb、V、Ti、Al、B、C、N、Ni、Mn、Cu:各合金元素の含有量(mass%))
で定義される。なお、(2)式の計算に際しては、鋼板中に含まれない成分(合金元素)は0として計算するものとする。
【0058】
熱延板焼鈍の焼鈍温度を、とくに(A1 変態点+30℃)以上とすることにより、熱延板焼鈍途中で(α+γ)二相組織となり、炭窒化物の一部再固溶、フェライト粒の再結晶・等軸化、および変態に伴う結晶方位のランダム化等が起こり、その後の処理を経て冷延鋼板の延性や耐リジング性が顕著に改善されるものと考えられる。焼鈍温度を1000℃以上とすると、熱延板焼鈍後あるいは仕上げ焼鈍後の結晶粒が粗大化し、耐リジング性がかえって低下するとともに、肌荒れが顕著となり表面品質が劣化する。本発明では、この高温保持に加えて、析出処理としての徐冷が特性向上に有効である。なお、保持後の徐冷に代えて、徐冷途中で600 〜850 ℃の温度範囲で等温保持処理を付加してもよい。
【0059】
ここで、本発明における保持後600 ℃までの平均冷却速度とは、保持温度から600 ℃までの温度降下量△Tを、その温度降下に要した時間tで除した値をいう。
熱延板焼鈍後の冷却パターンは、図3に示すように、大別して(a)直線的パターン、(b)途中等温保持付パターン、(c)冷却速度が緩やかに減少するパターンがある。図2(b)に例示するパターンで考えれば、T=860 ℃、T’=700 ℃、ta =16h、tb =10h、tc =10hの場合には、保持後600 ℃までの平均冷却速度(CR)は7.2 ℃/hとなる。
【0060】
熱延板焼鈍工程を経た熱延板は、冷延鋼板用原板とされる。上記した工程で製造された冷延鋼板用原板は、上記した組成と上記した伸展度eの最大値が5以下の結晶組織を有する。
なお、本発明では、熱延焼鈍板の結晶組織を伸展度eが5以下の組織とする方法は、上記した熱延板に予備圧延を施す方法に限定されるものではない。熱間圧延の圧延仕上げ温度を 450℃未満の低温とし熱延板焼鈍前に歪によるエネルギーを蓄積する方法、あるいは熱延板焼鈍前に焼入れ処理を行い変態に伴う歪を利用する方法なども条件を選定すれば有効であると考えられる。
【0061】
このような冷延鋼板用原板は、ついで脱スケール処理を行ったのち冷延工程で冷間圧延により冷延板とされる。
冷延工程での冷間圧延では、圧下率を30%以上とするのが好ましい。なお、より好ましくは50〜95%である。圧下率が30%未満では、とくにr値、耐リジング性が不足する場合がある。
【0062】
冷延工程ののち、仕上げ焼鈍工程で、冷延板は仕上げ焼鈍を施される。
仕上げ焼鈍は、加工性向上のため、再結晶が生じる600 ℃以上の温度で行うのが好ましい。なお、仕上げ焼鈍のより好ましい温度範囲は700 〜900 ℃である。仕上げ焼鈍は、生産性を考慮して連続焼鈍とするのが好ましい。なお、上記した組成と上記した伸展度eの最大値が5以下の結晶組織を有する冷延鋼板用原板に、圧下率が30%以上の冷間圧延を施したのち、焼鈍温度が700 ℃以上の仕上げ焼鈍を行うことがより好ましい。
【0063】
また、本発明では、冷延工程と仕上げ焼鈍工程を2回以上繰り返してもよい。冷延工程と仕上げ焼鈍工程を繰り返すことにより、r値、延性、耐リジング性がより向上する。
また、冷延板の仕上げは、用途に応じ、2D仕上げ、2B仕上げ、BA仕上げ等の各種仕上げとすることができることはいうまでもない。
【0064】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を、転炉−2次精錬工程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを再加熱後、仕上げ圧延温度:950 〜1000℃とする熱間圧延を行う熱延工程により熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸洗後、予備圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、酸洗工程と、冷延工程と、仕上げ焼鈍工程を順次施し板厚0.8mm の冷延焼鈍板とした。予備圧延工程の圧延条件、熱延板焼鈍条件は表2に示す。冷延工程では、熱延板への累積圧下率が75%となるように冷延圧下率を調整した。また、仕上げ焼鈍工程における焼鈍は、連続焼鈍とし、830 ℃で30s保持とした。
【0065】
得られた冷延焼鈍板から試験片を採取し、引張試験を実施し、伸びEl、r値、リジンググレードを測定した。伸びEl、r値、リジンググレードの測定方法はつぎのとおりである。
(1)伸び
各冷延焼鈍板の各方向(圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し直角方向)からJIS 13号B試験片を採取し、引張試験を実施し、各方向の伸びEl(El0 、El45、El90)を測定した。各方向の伸びElから次式により平均伸びElmeanを求めた。
【0066】
Elmean=(El0 +2El45+El90)/4
(ここで、El0 は圧延方向の伸び、El45は圧延方向に対し45°方向の伸び、El90は圧延方向に対し90°(直角)方向の伸びである。)
(2)r値
各冷延焼鈍板の各方向(圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し直角方向)からJIS 13号B試験片を採取した。これら試験片(幅w0 、ゲージ長さl0 )を用いてJIS Z 2254に準拠して歪量15%におけるr値を求めた。すなわち、15%の単軸引張予歪を付与した後の各試験片の幅w、ゲージ長さlを求め、次式
r=ln(w0 /w)/ln(lw/l0 0
(ここで、w0 、l0 は引張試験前の試験片のそれぞれ、幅、ゲージ長さであり、w、lは引張試験片後のそれぞれ幅、ゲージ長さである。)
により各方向のr値を求め、次式
mean=(r0 +2r45+r90)/4
(ここで、r0 は圧延方向のr値、r45は圧延方向に対し45°方向のr値、r90は圧延方向に対し90°(直角)方向のr値である。)
により平均r値rmeanを求めた。
(3)リジンググレード
各冷延焼鈍板の圧延方向からJIS 5号試験片を採取し、この試験片の片面を#600 の研摩紙で仕上げ研摩を行った。ついで、これら試験片に20%の単軸引張予歪を付与したのち、試験片中央部で粗度計により、試験片に発生したうねりの高さ(リジング凹凸)を測定した。このうねりの高さから、リジングの程度を評価した。
【0067】
リジングの程度は、4段階評価とし、うねり高さが、5μm 以下をA、5μm 超〜10μm をB、10μm 超〜20μm をC、20μm 超をDとした。この評価基準でA、Bの場合には、プレス成形時の耐リジング性は良好である。
得られた結果を表3に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0003941363
【0069】
【表2】
Figure 0003941363
【0070】
【表3】
Figure 0003941363
【0071】
本発明例は、いずれもElmean:32%以上、rmean値:1.30以上、リジンググレード:Aと、延性、r値、耐リジング性ともに良好な特性を有している。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、延性、r値、耐リジング性のいずれかが低下していた。
(実施例2)
表4に示す組成の溶鋼を、転炉−2次精錬工程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを再加熱後、表5に示す仕上げ圧延温度の熱間圧延を施す熱延工程により、3.2 〜4.0 mm厚の熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸洗後、予備圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、酸洗工程と、冷延工程と、仕上げ焼鈍工程を順次施し板厚0.8mm の冷延焼鈍板とした。予備圧延の圧延条件、熱延板焼鈍条件を表5に示す。なお、熱延板焼鈍条件は、800 〜860 ℃×8hr保持の箱焼鈍とした。冷延工程では、冷延圧下率を調整し板厚0.8mm の冷延板とした。なお、熱延板の累積圧下率は75〜80%であった。また、仕上げ焼鈍工程における焼鈍は、連続焼鈍とし、830 ℃で30s保持とした。
【0072】
得られた冷延焼鈍板から試験片を採取し、引張試験を実施し、伸びEl、r値、リジンググレードを測定した。伸び、r値、リジンググレードの測定方法は実施例1と同様とした。なお、r0 、r45、r90のうちの最小値をrmin とした。なお、熱延板焼鈍工程を経た得られた熱延焼鈍板(冷延鋼板用原板)から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面を研摩し、王水にてエッチングしたのち、光学顕微鏡を用いて100 倍で板厚×2mmの範囲の組織を撮影した。得られた組織写真より、画像解析装置を用いた画像処理により、結晶粒の伸展度eを測定し、その最大値を求めた。また、冷延焼鈍板について、圧延方向に平行な板厚断面を研摩し、王水にてエッチングした後、光学顕微鏡を用いて 200倍にて板厚×1mmの範囲を撮影した。得られた組織写真により、画像解析装置を用いた画像処理により平均の結晶粒面積A0 、および2×A0 以上の結晶粒面積を有する粗大結晶粒が圧延方向に連続して集合した集合体である粗大コロニーのアスペクト比Aを測定し、その最大値を求めた。
【0073】
得られた結果を表6に示す。
【0074】
【表4】
Figure 0003941363
【0075】
【表5】
Figure 0003941363
【0076】
【表6】
Figure 0003941363
【0077】
本発明例は、いずれもElmean:32%以上、rmean値:1.30以上、リジンググレード:Aと、伸び、r値、耐リジング性ともに良好な特性を有している。しかも、r値の最小値rmin が1.00以上と高く、面内異方性が小さい。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、伸び、r値、耐リジング性のいずれかが低下し、rmin も低い。
(実施例3)
表7に示す組成の溶鋼を、転炉−2次精錬工程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを再加熱後、表8に示す仕上げ圧延温度の熱間圧延を施す熱延工程により、3.2 〜5.0 mm厚の熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸洗後、予備圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、酸洗工程と、冷延工程と、仕上げ焼鈍工程を順次施し板厚0.8mm の冷延焼鈍板とした。予備圧延の圧延条件、熱延板焼鈍条件を表9に示す。なお、熱延板焼鈍条件は、880 〜1000℃×2〜8hr保持の箱焼鈍とした。冷延工程では、冷延圧下率を調整し板厚0.8mm の冷延板とした。なお、熱延板の累積圧下率は75〜84%であった。また、仕上げ焼鈍工程における焼鈍は、連続焼鈍とし、830 ℃で30s保持とした。
【0078】
得られた冷延焼鈍板から試験片を採取し、引張試験を実施し、伸びEl、r値、リジンググレードを測定した。また、熱延焼鈍板について伸展度eの最大値を冷延焼鈍板について粗大コロニーのアスペクト比Aの最大値を求めた。伸び、r値、リジンググレード、伸展度e、アスペクト比Aの測定方法は実施例1と同様とした。
【0079】
得られた結果を表9に示す。
【0080】
【表7】
Figure 0003941363
【0081】
【表8】
Figure 0003941363
【0082】
【表9】
Figure 0003941363
【0083】
本発明例は、いずれもElmean:34%以上、rmean値:1.40以上、リジンググレード:Aと、伸び、r値、耐リジング性ともに良好な特性を有している。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、耐リジング性が低下した。
(実施例4)
表10に示す組成の溶鋼を、転炉−2次精錬工程で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを再加熱後、表11に示す仕上げ圧延温度の熱間圧延を施す熱延工程により、3.2 〜4.0 mm厚の熱延板とした。ついで、これら熱延板を酸洗後、予備圧延工程と、熱延板焼鈍工程と、酸洗工程と、冷延工程と、仕上げ焼鈍工程を順次施し板厚0.8mm の冷延焼鈍板とした。予備圧延の圧延条件、熱延板焼鈍条件を表11に示す。なお、熱延板焼鈍条件は、880 〜930 ℃×2〜8hr保持の箱焼鈍とした。冷延工程では、冷延圧下率を調整し板厚0.8mm の冷延板とした。なお、熱延板の累積圧下率は75〜80%であった。また、仕上げ焼鈍工程における焼鈍は、連続焼鈍とし、830 ℃で30s保持とした。
【0084】
得られた冷延焼鈍板から試験片を採取し、引張試験を実施し、伸びEl、r値、リジンググレードを測定した。また、熱延焼鈍板について伸展度eの最大値を、冷延焼鈍板について粗大コロニーのアスペクト比Aの最大値を求めた。伸び、r値、リジンググレード、伸展度e、アスペクト比Aの測定方法は実施例1と同様とした。
【0085】
得られた結果を表12に示す。
【0086】
【表10】
Figure 0003941363
【0087】
【表11】
Figure 0003941363
【0088】
【表12】
Figure 0003941363
【0089】
本発明例は、いずれも伸び、r値、耐リジング性ともに良好な特性を有している。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、伸び、r値、耐リジング性のいずれかが劣化していた。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、耐リジング性が低下した。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、延性、加工性、および耐リジング性がともに優れ、あるいはさらにr値の面内異方性も小さくプレス加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板を能率よくしかも安価に、提供でき、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】予備圧延圧下率と、平均伸びElmean(a)、平均r値rmean(b)、リジンググレード(c)との関係を示すグラフである。
【図2】rmean、rmin 値と熱間圧延仕上げ温度FDTとの関係を示すグラフである。
【図3】熱延板焼鈍時の徐冷パターンの例を示す模式図である。
【図4】(a)は熱延焼鈍板の圧延方向に平行な板厚断面の結晶粒組織の一例を示す模式図であり、(b)は結晶粒の伸展度eの定義を説明する模式図である。
【図5】熱延焼鈍板の結晶粒伸展度の分布の一例を示すグラフである。
【図6】(a)は冷延焼鈍板の圧延方向に平行な板厚断面の結晶粒組織の一例を示す模式図であり、(b)は粗大粒コロニーのアスペクト比Aの定義を説明する模式図である。

Claims (14)

  1. mass%で、
    C:0.01〜0.12%、 N:0.01〜0.12%、
    Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下、
    Si:1.0 %以下、 Mn:1.0 %以下
    を含み、さらに
    P:0.05%以下、 S:0.01%以下、
    V:0.15%以下、 Ni:1.0 %以下
    に調整して含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、圧延方向に平行な板厚断面で、下記(1)式で定義される伸展度eの最大値が5以下である組織とを有することを特徴とするフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板。

    e=L1/L2 ……(1)
    ここで、e:伸展度
    L1:結晶粒の圧延方向長さ(μm )
    L2:結晶粒の板厚方向長さ(μm )
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo、Cuのうちの1種または2種を合計で 2.5%以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板。
  3. mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下を含有し、Si 1.0 %以下、 Mn 1.0 %以下を含み、さらにP: 0.05 %以下、S: 0.01 %以下、V: 0.15 %以下、 Ni 1.0 %以下に調整して含み、
    あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる鋼素材に、熱間圧延により熱延板とする熱延工程を施したのち、該熱延板に冷間または温間で圧下率:2〜15%の圧延を行う予備圧延工程を施し、ついで該予備圧延工程を施した熱延板を箱焼鈍する熱延板焼鈍工程を施すことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼冷延鋼板用原板の製造方法。
  4. 前記箱焼鈍が、所定の焼鈍温度で1h以上の保持と、保持後600 ℃までの平均冷却速度で25℃/h以下の徐冷を施すことを特徴とする請求項3に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板の製造方法。
  5. 前記所定の焼鈍温度が、下記(2)式で定義されるA1 変態点を基準にして、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満とすることを特徴とする請求項4に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板の製造方法。

    1 変態点(℃)=35(Cr+1.72Mo+2.09Si+4.86Nb+8.29V+1.77Ti+21.4Al+40B-7 .14C-8.0N-3.28Ni-1.89Mn-0.51Cu)+310 ……(2)
    ここで、Cr、Mo、Si、Nb、V、Ti、Al、B、C、N、Ni、Mn、Cu:各合金元素の含有量(mass%)
  6. 前記熱延工程における熱間圧延が、仕上げ温度を850 ℃以下とすることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板の製造方法。
  7. mass%で、
    C:0.01〜0.12%、 N:0.01〜0.12%、
    Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下、
    Si:1.0 %以下、 Mn:1.0 %以下
    を含み、さらに
    P:0.05%以下、 S:0.01%以下、
    V:0.15%以下、 Ni:1.0 %以下
    に調整して含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、圧延方向に平行な板厚断面で、平均結晶粒面積A0 の2倍以上の結晶粒面積を有する結晶粒が圧延方向に連続した集合体である粗大粒コロニーの、下記(3)式で定義されるアスペクト比Aの最大値が5以下である組織とを有することを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板。

    A=L3/L4 ……(3)
    ここで、A:粗大粒コロニーのアスペクト比
    L3:粗大粒コロニーの圧延方向長さ(μm )
    L2:粗大粒コロニーの板厚方向長さ(μm )
  8. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo、Cuのうちの1種または2種を合計で 2.5%以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項7記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板。
  9. mass%で、C:0.01〜0.12%、N:0.01〜0.12%、Cr:11〜18%、 Al:0.03%以下を含有し、Si 1.0 %以下、 Mn 1.0 %以下を含み、さらにP: 0.05 %以下、S: 0.01 %以下、V: 0.15 %以下、 Ni 1.0 %以下に調整して含み、
    あるいはさらにMo、Cuのうちの1種または2種を合計で2.5 %以下および/また Mg:0.0002〜0.0050%を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる鋼素材を、熱間圧延により熱延板とする熱延工程と、該熱延板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、前記熱延板焼鈍工程を経た熱延板を冷延鋼板用原板として、該冷延鋼板用原板を冷間圧延し冷延板とする冷延工程と、該冷延板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程とを有するフェライト系ステンレス鋼板の製造方法において、前記熱延工程後で前記熱延板焼鈍工程前に、冷間または温間で圧下率:2〜15%の圧延を行う予備圧延工程を施し、さらに前記熱延板焼鈍工程の焼鈍を、所定の焼鈍温度で1h以上保持する箱焼鈍とすることを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
  10. 前記箱焼鈍が、所定の焼鈍温度で1h以上の保持と、保持後600 ℃までの平均冷却速度で25℃/h以下の徐冷を施すことを特徴とする請求項9に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
  11. 前記所定の焼鈍温度が、下記(2)式で定義されるA1 変態点を基準にして、(A1 変態点+30℃)以上1000℃未満とすることを特徴とする請求項10に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。

    1 変態点(℃)=35(Cr+1.72Mo+2.09Si+4.86Nb+8.29V+1.77Ti+21.4Al+40B-7 .14C-8.0N-3.28Ni-1.89Mn-0.51Cu)+310 ……(2)
    ここで、Cr、Mo、Si、Nb、V、Ti、Al、B、C、N、Ni、Mn、Cu:各合金元素の含有量(mass%)
  12. 前記熱延工程における熱間圧延が、仕上げ温度を850 ℃以下とすることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
  13. 請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板用原板を用いて、該フェライト系ステンレス冷延鋼板用原板に、冷間圧延を施したのち、仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
  14. 前記冷間圧延の圧下率が30%以上、前記仕上げ焼鈍の焼鈍温度が700 ℃以上であることを特徴とする請求項13に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
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