JP3936665B2 - 光導波路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスを主成分とする光導波路に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板上にコア層とクラッド層とを形成した光導波路は半導体プロセスと同様の薄膜技術や微細加工技術で製造され、高速な光ファイバネットワークの主要部品として注目を集めている。ガラスを主成分とする光導波路は低損失な特性を有しており作製も容易なことから製品化されている光導波路デバイスの多くを占めている。
【0003】
光導波路の入力端には光ファイバが接続される。光ファイバからの入力光の偏波状態は不定であるため、光導波路の特性は入力光の偏波状態で変動しないことが望まれる。光導波路の偏波依存性は複屈折により生じる。複屈折はコア層及びクラッド層に蓄積される内部応力で生じ、特に各層の線膨張係数の相違に起因する熱応力が大きく影響する。一般的に石英導波路製造プロセスでは、光導波路の挿入損失低減等の目的で成膜後に熱処理が行われる。当該熱処理後の温度低下の過程において、コア層、クラッド層及び基板のそれぞれの線膨張係数が異なると熱応力が生じる。光導波路近傍で基板面内方向とそれに垂直な方向とで熱応力差が生じると光弾性効果により光導波路内に複屈折が生じる。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−169406号公報
【特許文献2】
特開平11−174246号公報
【特許文献3】
特開平5−257021号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この問題を解決するために、例えばコア層とクラッド層との界面の線膨張係数を等しくする方法(特許文献1参照)や、上部クラッド層と基板との線膨張係数を等しくする方法(特許文献2参照)、あるいはクラッド層とコア層との線膨張係数が等しくなるようにドーパント量を最適化する方法(特許文献3参照)等が知られている。しかしながら、これら公知技術のように層界面の線膨張係数を等しくする方法を用いても、十分な偏波無依存性を備えた光導波路を得ることができないという問題が生じている。
【0006】
本発明の目的は、偏波依存性の小さい光導波路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、基板上に形成された下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に形成されたコア層と、前記コア層を埋め込む上部クラッド層とを有する光導波路であって、少なくとも前記コア層と前記上部クラッド層はガラスを主成分とする材料で形成され、前記コア層の線膨張係数をαcoreとし、前記コア層の軟化点温度Tcoreと実際の使用温度T0との差をΔTcoreとし、前記上部クラッド層の線膨張係数をαcladとし、前記上部クラッド層の軟化点温度Tcladと前記使用温度T0との差をΔTcladとし、前記基板と前記下部クラッド層の実効的な線膨張係数をαsubsとすると、
【数3】
の関係式を満足することを特徴とする光導波路によって達成される。
【0008】
また、本発明の光導波路において、ΔTcore>ΔTcladであることを特徴とする。
また、本発明の光導波路において、
【数4】
であることを特徴とする。
【0009】
上記目的は、基板上に形成された下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に形成されたコア層と、前記コア層を埋め込む上部クラッド層とを有する光導波路であって、少なくとも前記コア層と前記上部クラッド層はガラスを主成分とする材料で形成され、前記コア層の線膨張係数をαcoreとし、前記上部クラッド層の線膨張係数をαcladとし、前記基板と前記下部クラッド層の実効的な線膨張係数をαsubsとすると、αcore≠αclad≠αsubsであり、且つ前記コア層の屈折率と上部クラッド層の屈折率との差Δnの基板面に平行な方向の屈折率差をΔnxとし、基板面に垂直な方向の屈折率差をΔnyとすると、Δnx=Δnyであることを特徴とする光導波路によって達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態による光導波路について説明する。コア層、上部クラッド層及び基板のそれぞれの軟化点温度が異なっていても線膨張係数が等しければ、熱処理等の温度の昇降で内部応力が光導波路近傍に蓄積されることはない。本発明者らは、コア層等の屈折率自体よりもコア層とクラッド層との屈折率の差に偏波依存性が影響を受ける光導波路では、光導波路近傍に生じる内部応力が等方性であれば偏波依存性は生じないということを見出した。光導波路近傍での内部応力を等方化するためには、コア層、上部クラッド層及び基板のそれぞれの線膨張係数の関係を最適化すればよい。
【0011】
ガラスを主成分とする材料の熱膨張による熱歪みに関しては、温度上昇に伴う材料の軟化を考慮する必要がある。ガラスの粘性率は温度によって著しく変化するためガラスの状態はいくつかの特性温度で区分されている。特性温度の1つである軟化を開始する軟化点温度Tsでは粘性率は107.6poiseとなりガラス中に粘性流動が生じる。この場合、ガラス中に熱歪みは蓄積されず軟化点温度Ts以上では熱応力は極めて小さくなる。光導波路のコア層やクラッド層にはガラスを主成分とした材料が用いられているので軟化点温度Ts以上でコア層やクラッド層に生じる熱応力は極めて小さくなる。しかしながら、光導波路の製造時の熱処理工程における冷却プロファイルの影響を受けて、軟化点温度Tsから実使用温度に近づくにつれてコア層やクラッド層に生じる熱応力は徐々に増大し、最終的にコア層やクラッド層には軟化点温度Ts以下で発生した熱応力が残存する。
【0012】
例えば一般的に上部クラッド層には、コア層を埋め込むためにコア層より軟化点温度Tsの低い材料を使用する。光導波路近傍に蓄積される内部応力のうち、基板面に平行な方向の成分は基板とコア層との間に生じる熱応力に依存し、基板面に垂直な方向の成分はクラッド層とコア層との間に生じる熱応力に依存する。熱処理工程の温度が下降する過程で、基板とコア層との間に生じる熱応力は基板とコア層のそれぞれの軟化点温度のうち低い方の軟化点温度以下で蓄積される。クラッド層とコア層との間に生じる熱応力はクラッド層とコア層のそれぞれの軟化点温度のうち低い方の軟化点温度以下で蓄積される。従って、軟化点温度が異なる場合には、コア層と基板との線膨張係数の差がコア層とクラッド層との線膨張係数との差と同じであっても熱応力はもはや等方でなくなる。
【0013】
石英系ガラスの軟化特性は線膨張係数や屈折率を制御するために使用するドーパント量に依存して変化する。従って、光導波路中に複屈折が生じないように基板面内方向とそれに垂直な方向との熱応力差を小さくするには、線膨張係数の他に、コア層やクラッド層の軟化特性や軟化特性に影響を与えるドーパントの種類及びドーパント量についても考慮する必要がある。
【0014】
図1(a)は、本実施の形態による光導波路1を基板面及び光導波方向に垂直に切断した断面を示している。光導波路1は石英ガラス等の基板5上に下部クラッド層4が成膜されており、下部クラッド層4上に断面がほぼ長方形のコア層2が形成されている。さらに光導波路1にはコア層2及び下部クラッド層4上に上部クラッド層3が堆積されている。コア層2、上部クラッド層3及び下部クラッド層4はガラスを主成分とする材料で形成されている。これ以降、下部クラッド層4と基板5を総称して複合基板6と言う。なお図1において、複合基板6の基板面内であって紙面左右方向をx方向とし、同様に紙面に垂直な方向をz方向とし、複合基板6の基板面法線方向をy方向とする。
【0015】
式(1−1)〜(1−4)は、それぞれコア層2及び上部クラッド層3各部で生じる熱応力を示している。式(1−1)は、コア層2の線膨張係数αcoreと複合基板6の線膨張係数αsubsとの差(線膨張係数差)に基づいて、温度変化がΔTcoreだけ生じた場合にコア層2でx方向に生じる熱応力σx _ coreの大きさを表している。ここで、温度変化ΔTcoreは、コア層2の軟化点温度Tcoreと光導波路の実際の使用温度T0との差である。また、温度変化ΔTはコア層2及び複合基板6のいずれか低い方の軟化点温度を用いる。一般にコア層2の軟化点温度Tcoreは複合基板6の軟化点温度Tsubsより低いため、式(1−1)では温度変化ΔTcoreを用いている。式中のEはヤング率であり、νはポアソン比である。なお、複合基板6の線膨張係数αsubsは、下部クラッド層4と基板5からなる複合体の熱膨張の大きさ、複合体を構成する基板と積層膜の厚さの比や、ヤング率・ポアソン比の関係から見積もられる実効的な値である。
【0016】
式(1−2)は、コア層2の線膨張係数αcoreと上部クラッド層3の線膨張係数αcladとの線膨張係数差に基づいて、温度変化がΔTcladだけ生じた場合にコア層2でy方向に生じる熱応力σy _ coreの大きさを表している。ここで、上部クラッド層3の軟化点温度Tcladはコア層2の軟化点温度Tcoreより低いため、式(1−2)では温度変化ΔTcladを用いている。
【0017】
同様にして、式(1−3)は、上部クラッド層3の線膨張係数αcladと複合基板6の線膨張係数αsubsとの線膨張係数差に基づいて、温度変化がΔTcladだけ生じた場合に上部クラッド層3でx方向に生じる熱応力σx _ cladの大きさを表している。ここで、上部クラッド層3の軟化点温度Tcladは複合基板6の軟化点温度Tsubsより低いため、式(1−3)では温度変化ΔTcladを用いている。
【0018】
また同様にして、式(1−4)は、上部クラッド層3の線膨張係数αcladとコア層2の線膨張係数αcoreとの線膨張係数差に基づいて、温度変化がΔTcladだけ生じた場合に上部クラッド層3でy方向に生じる熱応力σy _ cladの大きさを表している。
なお、式(1−1)〜(1−4)以外にも、例えば、上部クラッド層3の線膨張係数αcladとコア層2の線膨張係数αcoreとの線膨張係数差に基づいて、温度変化がΔTcladだけ生じた場合に上部クラッド層3でx方向に生じる熱応力σx _ cladも存在するが、本実施形態の以後の説明では不要なため式の記載は省略する。
【0019】
【数5】
【0020】
ここで、特に図示しないが、コアとそれを取り囲むクラッドからなる一般的な導波路構造を考える。光導波路の伝搬特性は伝搬モードの実効屈折率neffで特徴付けられる。実効屈折率neffはコアの屈折率ncoreやクラッドの屈折率ncladを用いて固有値方程式を解くことで得られるが、規格化屈折率bを示す式(2−1)を用いて式(2−2)のように表せる。式(2−1)及び式(2−2)において、屈折率差Δnはコアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladとの差(Δn=ncore−nclad)である。
【0021】
【数6】
【0022】
実効屈折率neffを示す式(2−2)の右辺第1項は屈折率差Δnを含むが、右辺第2項は屈折率差Δnを含んでいない。つまり、実効屈折率neffを示す式(2−2)の右辺第1項は、伝搬特性のうち主として光導波路内部への光の閉じ込めに関係し、右辺第2項は光学的距離に関係する。
【0023】
マッハツェンダ構成やアレイ導波路構成など干渉系を含む光導波路デバイスの特性は、干渉系を構成する複数の光路の光路長差を如何に精度よく設定できるかに依存する。従って、干渉系を含む光導波路デバイスで偏波依存性を低減させるには、式(2−2)第2項に示すクラッドの屈折率nclad(あるいはコアの屈折率ncore)自体に複屈折が生じないようにする必要がある。
【0024】
一方、方向性結合器やパワースプリッタ等の干渉系を含まない光導波路の特性は光路長差の変化による影響は小さく、光の閉じ込め状態に大きく影響される。
光の閉じ込め状態は、コアの屈折率ncoreとクラッドの屈折率ncladとの差であるΔnに依存して変化するため、干渉系を含まない光導波路の偏波依存性の低減はコア及びクラッドの各々の屈折率ではなく、コアとクラッドとの屈折率差Δnを考慮すればよい。さらに、干渉系を含まない光導波路回路での偏波依存性は、図1(b)に示すような複数のコア層2,2’ が隣接した個所を含む光導波路にて生じる場合が多い。このような場合は、コア上下部の閉じ込めの変化よりもコア側方部の閉じ込め変化の影響の方が顕著になるので、本例では上下クラッド層3、4の屈折率を上部クラッド層3の屈折率ncladで代表させている。
【0025】
【数7】
【0026】
一般に、物体に生じる応力σと歪みεとの関係は式(3−1)〜(3−3)のように表わされる。式(3−1)〜式(3−3)において、(εx、εy、εz)は(x、y、z)方向の歪みであり、(σx、σy、σz)は(x、y、z)方向の応力である。なお本例では、基板面内方向でのx方向及びz方向の応力σx、σzはσx=σzであるものとしている。
【0027】
【数8】
【0028】
また一般に、熱応力による光弾性効果に基づく屈折率変化δnは光弾性定数pij、屈折率n及び歪みεを用いて式(4−1)及び(4−2)のように表わされる。式(4−1)及び式(4−2)において、(δnx、δny)は、光弾性効果による(x、y)方向の屈折率変化を表している。
【0029】
さらに、式(4−1)及び式(4−2)に式(3−1)〜式(3−3)を代入すると、δnx、δnyは、それぞれ式(5−1)及び式(5−2)のように表される。
【0030】
【数9】
【0031】
なお、uxx、uxy、uyx及びuyyは以下に示す通りである。
【数10】
【0032】
式(5−1)及び式(5−2)は、光弾性効果に基づく屈折率変化δnと熱応力σとの関係を示している。式(5−1)及び式(5−2)にそれぞれ式(1−1)〜式(1−4)を代入すると、コア層2と上部クラッド層3との屈折率差Δnを求めることができる。x方向の屈折率差ΔnをΔnx、y方向の屈折率差ΔnをΔnyとし、定数θを式(6−3)のように定義することにより、屈折率差Δnxは式(6−1)で表され、屈折率差Δnyは式(6−2)で表される。
【0033】
【数11】
【0034】
但し、式(6−1)及び式(6−2)において、δnx _ coreとδny _ coreはコア層2のx方向とy方向の光弾性効果による屈折率変化を示し、δnx _ cladとδny _ cladは上部クラッド層3のx方向とy方向の光弾性効果による屈折率変化を示している。
また、式(5−3)〜式(5−6)より、式(7−1)及び式(7−2)が求まる。
【0035】
【数12】
【0036】
式(6−1)、式(6−2)、式(7−1)及び式(7−2)よりx方向の屈折率差Δnxとy方向の屈折率差Δnyとの差は式(8−1)のように表わされる。
【0037】
【数13】
【0038】
光導波路に偏波依存性がなくなるには、x方向の屈折率差Δnxとy方向の屈折率差Δnyが等しくなればよいので、式(8−1)の右辺を0として式を整理すると式(9−1)のようになる。
【0039】
【数14】
【0040】
式(9−1)は、コア層2、上部クラッド層3、及び複合基板6のそれぞれの線膨張係数の関係を、コア層2と上部クラッド層3の軟化点温度Tcore、Tcladを考慮して表したものである。式(9−1)を満たすようにコア層2や上部クラッド層3等の組成を調整することで、偏波依存性のない光導波路が作製できる。
なお、式(9−1)において、ΔTcore=ΔTcladとおいて式を整理すれば、αcore=αcladとなる。これは、コア層2と上部クラッド層3の軟化点温度Tcore、Tcladを考慮せずにコア層2と上部クラッド層3の線膨張係数のみを等しくして偏波依存性を低減しようとする参考文献1や参考文献3等の技術を表している。
【0041】
〔実施例〕
以下、具体的に実施例を用いて説明する。まず、常温と軟化点温度との温度差ΔTを求めるため、プラズマCVD法を用いてシリコン基板上に石英ガラス膜を形成した。形成した石英ガラス膜は2種類であり、第1はゲルマニウム添加の石英ガラス膜(GSG)、第2は燐とボロンを添加した石英ガラス膜(BPSG)である。2種類のガラス膜に共通の石英成分として、テトラエトキシオルソシリケート(TEOS)液体原料を使用した。GSGのドーパント材料はテトラメトキシゲルマニウム(TMG)を使用し、BPSGのドーパント材料はテトラメトキシボロン(TMB)とテトラメトキシフォスファ(TMP)を使用した。各ガラス膜は5μmの膜厚に成膜され、成膜後1100℃で24時間の熱処理を行った。
【0042】
温度変化(温度差)ΔTは基板の反り量から見積もられる内部応力から計算した。内部応力と複屈折率との関係は式(5−1)及び式(5−2)から求めることができる。石英ガラス膜はシリコン基板全面に形成しているためσy=0である。従って、複屈折率は式(5−1)及び式(5−2)においてσy=0として変形することにより式(10−1)のように表される。
【0043】
【数15】
【0044】
内部応力から求められる複屈折率との照合・整合性を確認するために作製した各サンプルの屈折率を測定した。複屈折率は、波長1.55μmのプリズムカプラで膜面に平行な方向(TEモード)と膜面に垂直な方向(TMモード)の両偏波について測定し、TEモードでの屈折率nTEとTMモードでの屈折率nTMとの差から求めた。各サンプルの測定結果を表2に示す。
【0045】
また、膜の内部応力は基板の反り量を測定し反り量と表1の値を式(11−1)に代入して求めた。式(11−1)において、Rは曲率半径、tは膜厚、dはシリコン基板厚、Eは基板に成膜した膜のヤング率、νは基板に成膜した膜のポアソン比である。なお、表1に示す各石英ガラス膜の線膨張係数は図2に示す文献データと他の実験で測定したドーパント濃度より見積もった。
【0046】
【数16】
【0047】
【表1】
【0048】
実使用温度(常温)と軟化点温度との差ΔTは式(12−1)から求められる。但し、式(12−1)において、αfは基板に成膜した膜の線膨張係数、ヤング率E、ポアソン比νは膜のものを示している。また、各サンプルの測定結果及び計算結果を表2に示す。
【0049】
【数17】
【0050】
【表2】
【0051】
光導波路製造プロセスでは、光導波路の挿入損失低減等の目的で成膜後に熱処理が行われる。熱処理温度が軟化点温度より高い場合には、降温時に軟化点温度以下の温度範囲で熱応力が蓄積される。
軟化点温度を考慮しないならば、GSGのΔTとBPSGのΔTはともに熱処理温度にほぼ等しい1000℃程度と考えられる。表1に示す各線膨張係数の値とΔT=1000℃を式(12−1)にそれぞれ代入すると、GSGの膜応力は250MPa、BPSGの膜応力は278MPaとなる。GSGの膜応力は表2に示す実測値とほぼ一致するが、BPSGの膜応力は表2に示す実測値と大きく異なる。一方、表2に示す膜応力の実測値とΔT=1000℃を式(12−1)にそれぞれ代入しGSGとBPSGのそれぞれの線膨張係数を求めると、GSGの線膨張係数は13×10-7、BPSGの線膨張係数は24×10-7となる。GSGの線膨張係数は誤差範囲内であるが、BPSGの線膨張係数は表1の値と大きく異なる。
【0052】
軟化点温度を考慮すると、GSGとBPSGの軟化点温度は異なるため、両者のΔTは等しくなる必要はない。従って、表2に示す膜応力と表1に示す線膨張係数を式(12−1)にそれぞれ代入して求められるΔTがGSGとBPSGとで異なっていたとしても問題はない。表2に示すようにGSGのΔTは900℃、BPSGのΔTは300℃と計算される。ところで、一般的なガラスのドーパント濃度と軟化点温度との関係から、GSGの軟化点温度は800〜1100℃、BPSGの軟化点温度は300〜600℃と試算される。実測値に基づいて計算された表2に示すΔTは一般的なガラスのドーパント濃度と軟化点温度との関係から試算された軟化点温度にほぼ一致する。従って、表2に示すΔTは実使用温度と軟化点温度との差であると考えられる。
【0053】
光導波路の実デバイスでは、式(1−1)〜式(1−4)に示すように、コア層のΔT(=ΔTcore)と上部クラッド層のΔT(=ΔTclad)が熱応力を生じさせる。また、式(6−1)及び式(6−2)に示すように、ΔTcoreとΔTcladが複屈折を生じさせる。表1に示す線膨張係数と上記得られたGSGのΔTcore=900℃及びBPSGのΔTclad=300℃を式(8−1)にそれぞれ代入すると、Δnx−Δnyは1.0×10-4となり、干渉系を持たない光導波路であっても偏波依存性を持つことが予想される。
【0054】
次に、図1に示す構造の光導波路を作製し偏波依存性の検証を行った。当該光導波路はコア層2の材料にGSGを用い、上部クラッド層3の材料にBPSGを用いている。さらに当該光導波路は下部クラッド層4の材料にドーパント添加なしの石英ガラス膜(NSG)を用いている。またさらに当該光導波路は基板5材料に石英ガラスを用いている。石英ガラス基板5上に3μmのNSG下部クラッド層4を成膜し、次いで7μmのGSGのコア層2を成膜した。導波路パターン形成のためエッチングマスク用のタングステンシリサイド膜を1μm成膜し、その後フォトレジストを塗布、露光、現像する通常のフォトリソグラフィ手法によりレジストの導波路パターンを作製し、反応性イオンエッチング(RIE)で所望の形状に導波路コア層2をパターニングした。1100℃で3時間の熱処理を行い、その後上部クラッド層3として30μmのBPSGを堆積し、1100℃で24時間の熱処理を行った。ウェハプロセス終了後切断してから表面を研磨し光導波路チップを作製した。
【0055】
方向性結合器と1×8分岐パワースプリッタの光導波路デバイスを用い、各光導波路デバイスのTEモードとTMモードでの特性差を評価した。光導波路を構成するコア層2、上部クラッド層3及び複合基板6の線膨張係数の関係は、上記得られたGSGのΔTcore=900℃及びBPSGのΔTclad=300℃を式(9−1)に代入して式(13−1)を求めた。
【0056】
【数18】
【0057】
式(13−1)は本実施例の光導波路の偏波依存性が0になる条件式である。
コア層2と上部クラッド層3及び複合基板6の組成が式(13−1)を満たすようにゲルマニウム、ボロン及び燐の濃度を最適化した光導波路と、濃度を最適化しない光導波路とを試作し偏波依存性の比較評価を行った。なお、両光導波路において組成以外のプロセス要素は全て同様である。この組成においてもΔTcoreとΔTcladの比は実施例1での結果と殆ど差はないことは別の実験で検証済みである。
【0058】
方向性結合器ではスルーポート出力とクロスポート出力との差(分岐比)で生じる偏波依存損失(PDL)を測定した。一方、1×8分岐スプリッタでは8ポートの出力におけるPDLを測定し平均値を求めた。光源は波長1.55μmの光を使用した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、本実施例の式(13−1)を用いてコア層2、上部クラッド層3及び複合基板6の組成を最適化した光導波路は偏波依存性を大幅に低減させることができた。
【0061】
さらに各部分の熱膨張率αを変えた構成について(9−1)式の右辺で与えられる値Uを計算し、測定された方向性結合器のPDLとの関係を調べた。図3は、値Uと方向性結合器のPDLの測定値との関係を示しており、横軸は値Uを表し縦軸はPDLの測定値(dB)を表している。図3に示すように、U値が大きくなるほどPDLが減少する傾向にあることが分かる。コア層2等の線膨張係数αが表1に示す値のときU=0.8であり、PDLの測定値は表3に示すように0.9dBであったが、U>1にするとPDL<0.6dBとなり、偏波依存性が低減できていることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、偏波依存性の小さい光導波路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による光導波路の断面図である。
【図2】石英ガラス膜の線膨張係数とドーパント濃度との関係を示す図である。
【図3】コア層2等の線膨張係数αを変化させて式(9−1)の右辺で求めた値Uと方向性結合器のPDLの測定値との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 光導波路
2 コア層
3 上部クラッド層
4 下部クラッド層
5 基板
6 複合基板
Claims (3)
- 請求項1記載の光導波路において、
ΔTcore>ΔTclad
であることを特徴とする光導波路。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003037893A JP3936665B2 (ja) | 2003-02-17 | 2003-02-17 | 光導波路 |
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