以下、本発明に係る光ディスクドライブ装置100について、図面を参照しながら具体的に説明する。
[光ディスクドライブ装置100全体の構成(参考例)]
図1は、光ディスクドライブ装置100全体の構成を示すブロック図である。
この光ディスクドライブ装置100は、大きく分けて、機構及び光学系部品1〜13、信号処理部40、光ヘッド制御部20及びドライブコントローラ14から構成される。
機構及び光学系部品は、光ディスク1、光ヘッド7(アクチュエータ2、対物レンズ3、再生信号検出器4、光検出器5、板バネ6、光ヘッド7、半導体レーザ8)、光ヘッド支持部材9、粗動モータ10、シーク制御部11、スピンドルモータ12及び回転制御部13からなる。
信号処理部40は、光ディスク1への書込み信号や光ディスク1からの読み出し信号の処理を行う回路であり、レーザパワー駆動部41、変調部42、加算増幅器43、加算増幅器44、差分増幅器45、加算増幅器46及び復調部47から構成される。
光ヘッド制御部20は、信号処理部40からの各種制御信号を用いて光ヘッド7のトラッキングサーボとフォーカスサーボの制御を行う回路であり、フォーカス駆動部21、トラッキング駆動部22、トラッキング制御部23、加算部24、外乱信号発生部25、フォーカス制御部26及びフォーカス位置調整部30から構成される。
光ディスク1は書換え可能な情報記録媒体であり、スピンドルモータ12上に装着されている。回転制御部13はドライブコントローラ14による制御の下でスピンドルモータ12を駆動制御する。光ヘッド支持部材9は光ヘッド7を支持する部材であり、粗動モータ10によって光ディスク1の半径方向にスライド移動する。シーク制御部11は、ドライブコントローラ14による制御の下で粗動モータ10を駆動制御することによって、光ヘッド7のシーク動作を制御する。
変調部42は、ドライブコントローラ14から送られてくる信号パターンに対して一定の変換を行い、得られた信号を後にレーザパワー駆動部41に出力する。レーザパワー駆動部41は、変調部42からの信号に基づいて半導体レーザ8の出力パワーを変調する。これによって、ドライブコントローラ14からの信号パターンが光ディスク1に記録される。
光ヘッド7は、半導体レーザ8、対物レンズ3、光検出器5、再生信号検出器4、アクチュエータ2及び板バネ等の支持部材6の集合である。半導体レーザ8から出射された光ビームは光ヘッド7内の光学系を通過後、対物レンズ3で集光されて光ディスク1上に照射される。光ディスク1で反射した光ビームは対物レンズ3及び光ヘッド7内の光学系を通過後、光検出器5及び再生信号検出器4等に入射される。
光検出器5は光ディスク上に照射された光ビームのフォーカス位置を示す4分割フォトダイオードである。加算増幅器43、44それぞれは、光検出器5からの4つの光信号の2つを加算して増幅することによって、フォーカス信号VFS1、VFS2を出力する。これらフォーカス信号VFS1、VFS2は、光ビームの所定収束状態からのずれを示すフォーカスエラー信号FESを生成するために用いられる。つまり、ここでは、非点収差法に基づくフォーカスエラー検出方式が採用されている。
再生信号検出器4は、光ディスク1からの反射光量を検出し、2つの反射光量信号を出力する広帯域の2分割フォトダイオードである。光ディスク1には情報(信号パターン)が反射率の変化で記録されているので、これら2つの反射光量信号により光ディスク1に記録された情報を読み出すことができる。
差分増幅器45は、再生信号検出器4からの2つの反射光量信号の差分を算出し、広帯域トラッキングエラー信号RFTEとしてトラッキング制御部23及びフォーカス位置調整部30に出力する。この広帯域トラッキングエラー信号RFTEは、光ディスク1上に凹凸ピットで形成されたアドレス部の再生信号(以下「アドレス信号」という)を含む信号である。光ディスク1上に形成されたアドレスピットは、グルーブトラックの中心とランドトラックの中心とからそれぞれ1/4トラックピッチずらした位置に形成されており、これらピットの状態を示す広帯域トラッキングエラー信号RFTEは、光ディスク1のアドレス領域の検出、ランドトラック及びグルーブトラックの検出、トラッキングサーボ等に用いられる。
加算増幅器46は、再生信号検出器4からの2つの光量信号を加算し、再生信号RFとして復調部47に出力する。この再生信号RFは、光ディスク1に記録された全ての情報を示す広帯域の信号である。復調部47は、加算増幅器46からの再生信号RFを所定のしきい値によって2値化し、変調部42での変換に対応する逆変換を施すことによって、光ディスク1に記録されていた情報を示すRFパルス信号PRFを生成し、フォーカス位置調整部30やドライブコントローラ14に送る。
フォーカス位置調整部30は、2つのフォーカス信号VFS1、VFS2からフォーカスエラー信号FESを生成することを基本的な機能とするが、このときに、各種制御信号RFTE、RF、PRFを用いることによって、光ビームスポットの位置(光ディスク1のランドトラック及びグルーブトラックのいずれに位置するか)に依存する最適なフォーカス位置の探査を実行し、その結果をフォーカスエラー信号FESに反映させる。また、広帯域トラッキングエラー信号RFTEに基づいて、現在の光ビームスポットがランドトラックに位置するかグルーブトラックに位置するかを示すランド(L)/グルーブ(G)切替え信号LGSと、光ビームスポットがアドレス領域に位置するタイミングを示すゲート信号IDGATEとを生成する。
なお、このフォーカス位置調整部30によるフォーカス位置探査には、大きく分けて2種類のモード、即ち、光ディスク1が一定回転数に達した後に実施される粗い探査と、その粗い探査を終えた直後に実施される精密探査とがある。そして、精密探査においては、更に精度を向上させるための2つの機能(オプション機能)、つまり、フォーカスエラー信号FESから面振れ成分を除外したり、特定のデータ領域だけを対象として探査させたりする機能を動作させることができる。これら2つの探査モードや2つのオプション機能はドライブコントローラ14による制御の下で選択されたり追加されたりする。
フォーカス駆動部21及びトラッキング駆動部22は、それぞれ、加算部24及びトラッキング制御部23からの信号に基づいて対物レンズ3の位置を変化させるための駆動電流をアクチュエータ2へ供給する。アクチュエータ2は、マグネットやコイル等からなり、板バネ6の反動力に抗して対物レンズ3を動かすことにより、光ディスク1に照射される光ビームの収束状態(光ビームと光ディスク1の面との相対的な位置ずれ)や、光ビームスポットのトラックからの位置ずれ)を変化させる。
トラッキング制御部23は、トラッキング・サーボのための制御を行う回路であり、差分増幅器45からの広帯域トラッキングエラー信号RFTEに基づいて、光ビームが光ディスク1上のトラックを追従するようにフィードバック制御する。また、このトラッキング制御部23は、ドライブコントローラ14からの指示により、フォーカス位置調整部30から送られてくるL/G切替え信号LGSに基づいて、光ビームが常にランドトラック又はグルーブトラックだけを追従するような制御、即ち、光ディスク1の1回転毎に光ビームを光ディスク1の内周側へジャンプバック(スチルジャンプ)させるための制御も行う。
フォーカス制御部26は、位相補償のためのループフィルタ等からなり、フォーカス位置調整部30からのフォーカスエラー信号FESに基づいて、その信号FESが示すフォーカス位置とフォーカスサーボの制御目標位置との誤差をゼロとするような信号を生成し加算部24に出力する。
なお、これらフォーカス制御部26及びトラッキング制御部23は、フォーカス位置調整部30から送られてくるゲート信号IDGATEに基づいて、光ディスク1上に収束照射された光ビームがアドレス領域に位置する時間だけ、その領域に入る直前における出力信号をホールドする。これは、上述したように、光ディスク1上に形成されたアドレスピットは、グルーブトラックの中心とランドトラックの中心とからそれぞれ1/4トラックピッチだけずれた位置に形成されているので、このような不要な領域をフォーカスサーボ及びトラッキングサーボの対象から外すためである。
外乱信号発生部25は、フォーカス位置調整部30がフォーカス位置の精密探査を行うために必要な信号、具体的には、フォーカス位置が±0.4μm変化するような1kHzの正弦波信号等を加算部24へ出力する。加算部24は、ドライブコントローラ14からの制御(粗い探査か精密探査かの指示)の下で、フォーカス制御部26からの信号と外乱信号発生部25からの信号とを加算してフォーカス駆動部21に出力するか、又は、フォーカス制御部26からの信号をそのまま通過させてフォーカス駆動部21に出力する。
ドライブコントローラ14は、マイクロプロセッサ、制御プログラムを記録したROM及び作業域としてRAM等からなり、回転制御部13、シーク制御部11、信号処理部40及び光ヘッド制御部20を統括して制御する。例えば、一定条件を検出した場合に、フォーカス位置調整部30等に対して、特定種類のフォーカス位置探査のための諸条件を設定し、その探査を実行させたりする。
図2(a)及び図2(b)は光ディスク1の物理的な構造を示す図であり、図2(a)は光ディスク1を上面から見たときの概略図、図2(b)はL/G切替え点付近の拡大図である。この光ディスク1はSS−L/GFMTの光ディスクである。つまり、スパイラル状に形成されたトラックのグルーブ(G)とランド(L)は共に記録再生可能であり、さらに光ディスク1の1周毎にランドとグルーブとが交互に形成されている。これによって、内周から外周までランドとグルーブとを連続して再生又は記録に用いることができる。
図2(a)に示されるように、この光ディスク1では、ランドトラック(図中白線で表示)とグルーブトラック(図中黒実線で表示)が1回転毎につながっており、1本のスパイラルを構成している。
図2(b)に示されるように、この光ディスク1は、データ領域とデータ領域の間にセクターを識別するための凹凸のピット構造からなるアドレス領域を有しいる。また、L/G切替え点は光ディスクの1周毎に存在し、ちょうどアドレス領域でランドとグルーブが切り替わるよう構成されている。アドレス領域は、光ディスク1の内周側において1周につき17個存在し、そのうちの一つはL/G切替え点である。そして、アドレス領域とデータ領域の1組でデータセクタを構成している。したがって、例えばディスク内周側の1周(=1トラック)は17セクタに分割されている。
また、図2(b)に示されるように、光ディスク1のアドレス領域はセクタ先頭にトラック中心から光ディスク1の半径方向に1/2トラックピッチずらした位置に相補的に配置されたピット(以下「CAPA(Complementary Allocated Pit Address)」という。)で構成されている。より詳細には、L/G切替え点を含む第1データセクタ以外のデータ領域終端においては、グルーブトラックに対して光ディスク1の外周側へ1/2トラックピッチずらした位置に第1のアドレスが配置され、第1のアドレスの後に内周側へ1/2トラックピッチずらした位置に第2のアドレスが配置されている。一方、L/G切替え点を含む第1のデータセクタにおいては、第1データセクタの前に位置するデータセクの終端において、グルーブトラックに対して光ディスク1の内周側へ1/2トラックピッチずらした位置に第1のアドレスが配置され、第1のアドレスの後に外周側へ1/2トラックピッチずらした位置に第2のアドレスが配置されている。
図2(c)は、SS−L/GFMTの光ディスク1のランドに光ビームが照射されている場合における光ディスク1及び対物レンズ3の断面図、図2(d)は、SS−L/GFMTの光ディスク1のグルーブに光ビームが照射されている場合における光ディスク1及び対物レンズ3の断面図である。これらの図2(c)、Dから分かるように、光ディスク1のランドとグルーブとでは形状が異なるので、光ディスク1からの反射光が対物レンズ3を通過し光ヘッド7において回折されると、その回折光の分布はランドトラックとグルーブトラックとで異なる。その結果、ランドトラックとグルーブトラックとでは、フォーカスエラー信号のゼロレベル(フォーカス位置についての制御目標位置)と現実のフォーカス位置との関係が異なったものになる。そのために、本光ディスクドライブ装置100は、光ビームがランドトラックに位置するかグルーブトラックに位置するかによって異なるフォーカス位置の調整を行う。つまり、光ビームがランドトラックに位置するときの制御目標位置とグルーブトラックに位置するときの制御目標位置は独立している。
[フォーカス位置調整部30の構成(参考例)]
図3は、図1に示されたフォーカス位置調整部30の詳細な構成を示すブロック図である。このフォーカス位置調整部30は、大きく分けて、フォーカス位置の粗い探査のための構成要素(エラーレイト計測部33、フォーカス位置粗探査部50)と、精密探査のための構成要素(リードゲート検出部32、面振れ成分除去部35、切替え器39、フォーカス位置精密探査部60)と、それらに共通する構成要素(アドレス信号検出部31、ランドグルーブ検出部34、2つの切替え器37、38、フォーカスエラー検出部36)とから構成される。
ランドグルーブ検出部34は、信号処理部40の差分増幅器45から出力された広帯域トラッキングエラー信号RFTEに基づいて、光ビームスポットの現在位置がグルーブ上に位置するのかランド上に位置するのかを示すL/G切替え信号LGSを生成する。具体的には、ランドグルーブ検出部34は、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのピークエンベロープを2値化した信号(以下「ピークエンベロープ信号PEPS」という。)と広帯域トラッキングエラー信号RFTEのボトムエンベロープを2値化した信号(以下「ボトムエンベロープ信号BEPS」という。)を生成し、光ビームが光ディスク1上のトラックを追従してアドレス領域を通過したときにピークエンベロープ信号PEPSの論理レベルが変化した後にボトムエンベロープ信号BEPSの論理レベルが変化したらグルーブと判定し、逆に、ボトムエンベロープ信号BEPSの論理レベルが変化した後にピークエンベロープ信号PEPSが変化したらランドと判定し、それら判定結果を示す信号をL/G切替え信号LGSとして出力する。このL/G切替え信号LGSは、フォーカス位置の探査においてランドとグルーブを区別するために用いられたり、トラッキング制御部23にスチルジャンプをさせるために用いられたりする。
図4(a)〜(c)は、ランドグルーブ検出部34の入出力信号RFTE、LGSのタイミングを示す図である。図4(a)は光ディスク1上のトラック構成の概略と光ビームスポットがグルーブトラックからL/G切り替わり点を通過してランドトラックへ移動する軌跡を示し、図4(b)は光ビームスポットが図4(a)に示される軌跡のようにトラックを追従した場合における広帯域トラッキングエラー信号RFTEの波形を示し、図4(c)はL/G切替え信号LGSの波形である。
図4(a)に示されるように、光ディスク1のアドレス領域はセクタ先頭にトラック中心から光ディスク1半径方向に1/2トラックピッチずらした位置に相補的に配置されたピット(CAPA)で構成されている。なお、このようなCAPAの形成により、光ビームがアドレス領域を通過したときの広帯域のトラッキングエラー信号RFTEにより、ピットで形成されたアドレス情報を再生することができる。
いま、光ビームスポットがグルーブトラックに追従しながら図4(a)に示されるアドレス領域を通過したとする。すると、図4(b)のタイミングチャートの左側に示されるように、広帯域トラッキングエラー信号RFTEは、ゼロレベルに対して先ず正側にアドレス信号が現れ、次に負側に現れるような波形となる。続いて、光ビームスポットがL/G切替え点を通過すると、図4(b)のタイミングチャートの右側に示されるように、広帯域トラッキングエラー信号RFTEは、ゼロレベルに対して先ず負側にアドレス信号が現れ、次に正側に現れるような波形となる。ランドグルーブ検出部34は、図4(b)に示されるような極性反転の順序からL/G切替え点を検出するので、図4(c)に示されるようなL/G切替え信号LGS(光ビームスポットがグルーブに位置するときに“Hi”レベルとなり、ランドに位置するときに“Low”レベルとなる信号)を出力する。
アドレス信号検出部31は、信号処理部40の差分増幅器45からの広帯域トラッキングエラー信号RFTEを受け取り、その信号RFTEを所定のしきい値によって2値化したアドレスパルス信号PADRを出力すると共に、光ビームスポットがアドレス領域に位置するタイミングを示すゲート信号IDGATE(データ領域で“Low”となり、アドレス領域で“Hi”となるゲート信号)を出力する。具体的には、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのピークエンベロープを2値化した信号と、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのボトムエンベロープを2値化した信号を反転した信号を生成し、この2信号の論理和によりゲート信号IDGATEを生成する。
図5は、アドレス信号検出部31の詳細な構成を示すブロック図である。このアドレス信号検出部31は、大きく分けて、ゲート信号IDGATEを生成するための構成要素3101〜3106と、アドレスパルス信号PADRを生成するための構成要素3107からなる。
ピークエンベロープ検出部3101は、再生信号検出器4からの広帯域トラッキングエラー信号RFTE)のピーク側エンベロープを検出する。ボトムエンベロープ検出部3102は、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのボトム側エンベロープを検出する。2値化回路3103は、ピークエンベロープ検出部3101からの信号(広帯域トラッキングエラー信号RFTEのピークエンベロープを示す信号)を所定のしきい値で2値化する。2値化回路3104は、ボトムエンベロープ検出部3102からの信号(広帯域トラッキングエラー信号RFTEのボトムエンベロープを示す信号)を所定のしきい値で2値化する。NOT回路3105は、2値化回路3104からの出力信号を反転して出力する。OR回路3106は、2値化回路3103からの出力信号とNOT回路3105からの出力信号とを論理和して得られるゲート信号IDGATEを出力する。2値化回路3107は、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのゼロレベルに対して正側に現れるアドレス再生信号に対してはその振幅中心になるような正のしきい値で、負側に現れるアドレス再生信号に対してはその振幅中心となるような負のしきい値で、それぞれ2値化して得られるアドレスパルス信号PADRを出力する。
図6(a)〜(d)は、アドレス信号検出部31においてゲート信号IDGATEが生成される過程を示すためのタイミングチャートであり、図6(a)はアドレス信号検出部31に入力される広帯域トラッキングエラー信号RFTE、図6(b)は2値化回路3103の出力信号、図6(c)は2値化回路3104の出力信号、図6(d)はアドレス信号検出部31から出力されるゲート信号IDGATEを示す。
図6(a)に示されるような広帯域トラッキングエラー信号RFTEがアドレス信号検出部31に入力されると、2値化回路3103の出力は、図6(b)に示されるように、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのゼロレベルに対して、正側にアドレス信号が現れたときに“Hi”となり、それ以外のときに“Low”となるような波形になる。一方、2値化回路3104の出力は、図6(c)に示されるように、広帯域トラッキングエラー信号RFTEのゼロレベルに対して、負側にアドレス信号が現れたときに“Low”となり、それ以外のときに“Hi”となるような波形になる。したがって、OR回路3106の出力、すなわちゲート信号IDGATEは、図6(d)に示されるように、広帯域トラッキングエラー信号RFTEにアドレス信号が現れているときに“Hi”となり、それ以外のときに“Low”となるような波形になる。
エラーレイト計測部33は、フォーカス位置の粗い探索に用いられる評価情報、即ち、光ディスク1のアドレス領域に記録された情報のエラー発生率又はデータ領域に記録された情報のエラー発生率を示す信号(ビットエラーレイトBER)を生成する。具体的には、エラーレイト計測部33は、アドレス信号検出部31からゲート信号IDGATEに基づいて、復調部47からのRFパルス信号PRFのエラーレイト(例えば、単位時間当たりのRFパルス信号PRFのパリティービットエラー数)、及び、アドレス信号検出部31からのアドレスパルス信号PADRのエラーレイト(例えば、単位時間あたりのアドレスパルス信号PADRのパリティービットエラー数)のいずれかを選択して計測し、その結果をビットエラーレイトBERとしてフォーカス位置粗探査部50に出力する。
図7は、エラーレイト計測部33の詳細な構成を示すブロック図である。選択回路3301は、2入力1出力のセレクタであり、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEが“Hi”のときには復調部47からのRFパルス信号PRFを選択して出力し、ゲート信号IDGATEが“Low”のときはアドレス信号検出部31からのアドレスパルス信号PADRを選択して出力する。
パリティーエラー検出器3302は、選択回路3301から出力されたRFパルス信号PRF又はアドレスパルス信号PADRにおける1シンボルデータ毎のパリティエラーの発生を検出し、エラーを検出する度に“Hi”レベルとする1個のパルス信号(パリティーエラー信号PE)を出力する。なお、光ディスク1に記録されているデータには、1つのシンボルデータ毎にパリティービットが付加されているので、パリティーエラー検出器3302は、1シンボルデータ毎に、そこに含まれるデータビットとパリティービットとからパリティーエラーを検出する。
周期カウンタ3303は、一定周期のクロック信号をビットエラー検出部3304に出力する。ビットエラー検出部3304は、周期カウンタ3303からのクロック信号の1周期の間に入力されたパリティーエラー信号PEの個数をカウントし、その結果をビットエラーレイトBERとして出力する。
フォーカスエラー検出部36は、光検出器5から加算増幅器43、44を経て入力された2つのフォーカス信号VFS1、VFS2に対して、以下の式1で表されるように、それらの差分に相当する情報を算出し、フォーカスエラー信号FESとしてフォーカス制御部26、面振れ成分除去部35及び切替え器39に出力する。
FES=k1×VFS1−k2×VFS2+OFFSET …(式1)
つまり、各フォーカス信号VFS1、VFS2それぞれに対して一定の重みづけをした後にそれらの差分を算出し、一定のオフセット値を加算した値をフォーカスエラー信号FESとして出力する。このとき、切替え器37から入力されるバランス制御信号FBALに従って上記重み付け(k1とk2)の比(フォーカスバランス)を決定し、切替え器38から入力されるオフセット制御信号FOFFに従って上記オフセット値OFFSET(フォーカスオフセット)を決定する。このフォーカスエラー信号FESがフォーカス制御部26に入力されていることから分かるように、このフォーカスエラー検出部36は、2つの制御信号FBAL、FOFFに従ってフォーカスバランスとフォーカスオフセットを変更することにより、フォーカスエラー(VFS1とVFS2との差)のゼロレベル、即ち、フォーカスサーボの制御目標位置を変更(設定)している。
図8は、フォーカスエラー検出部36の詳細な構成を示すブロック図である。このフォーカスエラー検出部36の前段部は、差動増幅器3613とフィードバック抵抗器3612とフォーカスバランス回路3611とD/A変換器3618とからなる差動増幅回路である。フォーカスバランス回路3611は、電圧制御の可変抵抗部品(2つのトランジスタが相補的に接続されもの)等からなる。この差動増幅回路は、切替え器37から送られてくるバランス制御信号FBAL(のアナログ値)に従って、2つの入力信号VFS1、VFS2の差分を算出する際のゲイン比(フォーカスバランス)を変更している。後段部は、3つの抵抗器3614〜3616と差動増幅器3617とD/A変換器3619とからなるオフセット調整回路である。前段部からの差分信号に対して、切替え器38から送られてくるオフセット制御信号FOFF(アナログ値)に基づく一定のオフセット値(フォーカスオフセット)を加算している。
切替え器37、38は、それぞれ、ドライブコントローラ14によって制御される2入力1出力のセレクタであり、ドライブコントローラ14からフォーカス位置の粗い探査を行っている旨の指示を受けた際には、フォーカス位置粗探査部50からの制御信号FBAL1、FOFF1を選択して出力し、精密探査を行っている旨の指示を受けた際には、フォーカス位置精密探査部60からの制御信号FBAL2、FOFF2を選択して出力する。
フォーカス位置粗探査部50は、フォーカス引き込みの初期におけるフォーカス位置の探査、即ち、粗い探査を行う制御回路であり、アドレス信号検出部31からのビットエラーレイトBERが一定値以下となるようにフォーカス位置を一定距離だけ強制的に動かすべく、2つの制御信号FBAL1、FOFF1を切替え器37、38に出力する。このとき、フォーカス位置粗探査部50は、予めプログラムされた手順に従って、ランドグルーブ検出部34からのL/G切替え信号LGSを参照しながら、光ビームスポットがランドトラック上に位置する場合とグルーブトラック上に位置する場合とで異なる制御を行う。これは、ランドトラックとグルーブトラックのどちらか一方のトラックのみを対象として再生状態が最適となるようにフォーカス位置を調整しても必ずしも他方のトラックにおいて最適な再生状態になるとは限らない、ことを考慮したためである。つまり、ランドトラックとグルーブトラックそれぞれを区別してフォーカス制御の目標値を探査することで、総合的に(ランドトラックとグルーブトラックの両方に対して)良好な再生特性を得るためである。
図9は、フォーカス位置粗探査部50の詳細な構成を示すブロック図である。第1の記憶部52は、複数のフォーカスバランス値(バランス制御信号FBAL1の大きさに相当する数値)を記録するための領域を有する書換え可能な不揮発性メモリであり、本光ディスクドライブ装置100を組み立て調整した際に得られた光ディスク1のグルーブトラックにおけるフォーカス位置の調整値を示す1個のフォーカスバランス値を予め記憶している。第2の記憶部53は、同様に、複数のフォーカスオフセット値(オフセット制御信号FOFF1の大きさに相当する数値)を記録するための領域を有する書換え可能な不揮発性メモリであり、本光ディスクドライブ装置100を組み立て調整する際に得られた光ディスク1のランドトラックにおけるフォーカス位置の調整値を示す1個のフォーカスオフセット値を予め記憶している。
DSP51は、内部に制御プログラムを有するデジタルシグナルプロセッサであり、フォーカス位置探査をソフト処理する。具体的には、光ビームスポットが光ディスク1上のグルーブトラックに位置するときに、第1の記憶部52に格納されたフォーカスバランス値を参照しながら、バランス制御信号FBAL1を出力することで、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERが一定値以下となる最適なフォーカスバランス値を探査する。続いて、そのバランス制御信号FBAL1の出力を維持したまま、光ビームスポットが光ディスク1上のランドトラックに位置するときに、第2の記憶部53に格納されたフォーカスオフセット値を参照しながらオフセット制御信号FOFF1を出力することで、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERが一定値以下となる最適なフォーカスオフセット値を探査する。
そして、DSP51は、このような探査によって、より最適なフォーカスバランス値及びフォーカスオフセット値が得られた場合には、それらをランドトラック用とブルーブトラック用で区別して第1及び第2の記憶部52、53に格納すると共に、その探査後におけるフォーカス位置の新たな制御基準位置としてランドトラックとグルーブトラックとを区別しながら、それらフォーカスバランス値及びフォーカスオフセット値に相当する制御信号FBAl1、FOFF1を切替え器37、38に出力する。
リードゲート検出部32は、精密なフォーカス位置探査を行う場合において、さらに精度を向上させるときにオプション的に用いられる回路であり、光ディスク1上のアドレス領域及び予めドライブコントローラ14によって指定されたデータ領域において“Hi”となるようなゲート信号RDGTをフォーカス位置精密探査部60へ出力する。
具体的には、ドライブコントローラ14は、予め、フォーカスエラー信号FESを取り込んでA/D変換することで光ディスク1の回転時に生じる面振れ(交流信号)を検出し、その交流信号の変化分が小さい位置に相当するデータ領域においてゲート信号RDGTが“Hi”となるようにそれらデータ領域のセクタをリードゲート検出部32に通知しておく。そして、リードゲート検出部32は、信号処理部40からの広帯域トラッキングエラー信号RFTEからアドレス領域とデータ領域(セクタ)を判別し、アドレス領域及び予めドライブコントローラ14によって指定されたデータ領域(セクタ)において“Hi”となるようにゲート信号RDGTを生成する。このゲート信号RDGTは、精密なフォーカス位置探査において面振れの影響によってフォーカス制御の精度が劣化してしまう不具合を除去するために用いられる。
図10は、リードゲート検出部32の入力信号RFTE、アドレス領域を示すゲート信号IDGATE及びリードゲート検出部32からの出力信号RDGTのタイミングチャートである。ゲート信号RDGTは、アドレス領域及び予め指定されたデータセクタ(リードデータセクタ)を示している。なお、精密なフォーカス位置探査において、高い精度が要求されない場合は、ドライブコントローラ14は、リードゲート検出部32に指示することで、機能を停止させることができる。このときには、リードゲート検出部32はゲート信号RDGTを常時“Hi”とする。
面振れ成分除去部35は、精密なフォーカス位置探査を行う場合にオプション的に用いられる回路であり、フォーカスエラー検出部36からのフォーカスエラー信号FESに含まれる光ディスク1の面振れ成分を除去し、それ以外の周波数成分(外乱信号発生部25から印加した1kHz信号等)を通過させるフィルタであり、通過させた信号を切替え器39を介してフォーカス位置精密探査部60に出力する。これは、リードゲート検出部32の役割と同様であり、精密なフォーカス位置探査における面振れの影響を排除することで、さらに高精度のフォーカス位置制御を行うためである。
切替え器39は、ドライブコントローラ14によって制御される2入力1出力のセレクタであり、ドライブコントローラ14から指示に基づいて面振れ成分除去部35の入出力をバイパスする。具体的には、フォーカス位置の粗い探査を行う場合において、ドライブコントローラ14からの指示に基づいて、面振れ成分除去部35からの出力信号及びフォーカスエラー検出部36からの出力信号FESのいずれかを選択し、選択後フォーカスエラー信号FESSとしてフォーカス位置精密探査部60に出力する。この切替え器39は、フォーカス位置の精密探査において面振れ成分除去部35を機能させるか否か、即ち、フォーカス位置の精密探査をより高精度に行うか否かを決定する機能を持つ。
フォーカス位置精密探査部60は、フォーカス位置粗探査部50による粗いフォーカス位置探査が終了した後に続いて行う細密なフォーカス位置探査のための制御を行う回路である。具体的には、切替え器39から送られてくるフォーカスエラー信号FESSに含まれる外乱信号成分(外乱信号発生部25から出力された外乱信号)と信号処理部40から送られてくる再生信号RFに基づいて、その再生信号RFのエンベロープが大きくなり、かつ、その再生信号RFのジッタが小さくなるような最適なフォーカス位置を探査し、そのようなフォーカス位置がフォーカス制御部26によるフォーカスサーボによって維持されるように2つの制御信号FBAL2、FOFF2を切替え器37、38に出力する。これは、再生信号RFのエンベロープとジッタの両方を考慮したフォーカス制御をすることで、総合的に良好な再生状態を得るためである。
また、フォーカス位置精密探査部60は、フォーカス位置粗探査部50と同様に、ランドグルーブ検出部34からのL/G切替え信号LGSによって、光ビームスポットがランドトラック上に位置する場合とグルーブトラック上に位置する場合とで異なる制御を行う。これは、ランドトラックとグルーブトラックそれぞれを区別してフォーカス制御の目標値を探査することで、総合的に(ランドトラックとグルーブトラックの両方に対して)良好な再生特性を得るためである。
[粗いフォーカス位置探査(参考例)]
次に、以上のように構成された本光ディスクドライブ装置100が記録・再生時において粗いフォーカス位置探査を行う場合の動作について説明する。
まず、図1及び図3を用いて本光ディスクドライブ装置100の全体的な動作を説明する。なお、この粗いフォーカス位置探査においては、ドライブコントローラ14からの指示により、切替え器37、38はフォーカス位置粗探査部50からの制御信号FBAL1、FOFF1を選択して通過させ、加算部24はフォーカス制御部26からの信号だけを通過させるので、精密なフォーカス探査にのみ用いられる構成要素(外乱信号発生部25、リードゲート検出部32、面振れ成分除去部35、フォーカス位置精密探査部60)は動作しない(直接には関連しない)。
まず、ドライブコントローラ14は、回転制御部13に指示を出すことでスピンドルモータ12を一定の回転数で回転させた後に、シーク制御部11に指示を出すことで粗動モータ10による粗いシーク動作をさせる。続いて、変調部42やレーザパワー駆動部41を制御することで、半導体レーザ8から光ディスク1に向けて光ビームを照射させる。
光検出器5は、光ディスク1上の光ビームスポットで反射された光ビームを4分割されたレンズで検出した後に電気信号に変換し、加算増幅器43、44は、それら4つの信号の2つを加算することで、フォーカスエラー信号FESの生成に用いられる2つのフォーカス信号VFS1、VFS2を生成する。
フォーカスエラー検出部36は、2つのフォーカス信号VFS1、VFS2に対して、フォーカス位置粗探査部50から切替え器37、38を経て入力される2つの制御信号FBAL、FOFFに基づく上記式1の演算を施すことにより、フォーカスエラー信号FESを生成する。つまり、フォーカスエラーのゼロレベル、すなわちフォーカスサーボの制御目標位置を変更する。
フォーカス制御部26は、フォーカスエラー検出部36からのフォーカスエラー信号FESに基づき、加算部24、フォーカス駆動部21を介してアクチュエータ2を動かすことによって、フォーカスエラー信号FESとフォーカスサーボの制御目標位置との差がゼロになるようなフォーカスサーボを行う。
このようなフォーカスサーボが動作した状態で、次にトラッキングサーボを開始させる。つまり、差分増幅器45は、再生信号検出器4からの2つの信号の差分をとることで、光ディスク1上のトラック中心と光ビームスポットとの位置ずれを示す広帯域トラッキングエラー信号RFTEを生成する。トラッキング制御部23は、その広帯域トラッキングエラー信号RFTEに基づいて光ビームが光ディスク1上のトラックを追従するようにトラッキング駆動部22を介してアクチュエータ2を動かすことで、フィードバック制御を行う。
これらフォーカス制御及びトラッキング制御が動作した状態で、次に再生信号検出器4から加算増幅器46を経て得られる再生信号RFは、最大とならずともそこそこの振幅で一定振幅となる。これによって、安定で良好な再生が可能となる。
次に、フォーカス位置と再生特性の関係について説明する。図11は、フォーカス位置の変化に対するRFパルス信号PRFのビットエラーレイトBERを示す一般的なグラフである。横軸はフォーカス位置、縦軸はビットエラーレイトBERを示す。いま、フォーカス最適位置を0μmとすると、このフォーカス最適位置でのビットエラーレイトBERは1e−4程度になっている。フォーカス最適位置からフォーカス位置がずれるにしたがってビットエラーレイトBERは2次関数的に増加していく。フォーカス位置が最適位置から±0.6μm程ずれたところでビットエラーレイトBERは1e−3程度になっている。
フォーカス位置粗探査部50はフォーカスエラー検出部36でのフォーカスバランス又はフォーカスオフセットを変化させて光ディスク1上の光ビームの収束状態を意図的に変化させる。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、エラーレイト計測部33で計測されたRFパルス信号PRFのエラーレイトが所定値以下、例えばビットエラーレイトが5e−4以下、となるまで順次フォーカスバランス又はフォーカスオフセットを変化させることを繰り返すことによって、より最適なフォーカス位置を探査する。なお、図11から分かるように、ビットエラーレイトBERが5e−4以下となる再生状態をフォーカス位置のずれに換算すると、フォーカス最適位置に対して±0.3μmの範囲に相当する。つまり、フォーカス位置粗探査部50はビットエラーレイトに基づいてフォーカス最適位置からのずれが所定値以下となるように、フォーカスエラー検出部36への2つの制御信号FBAL1、FOFF1を修正する。
それでは、粗いフォーカス位置探査について更に詳しく説明する。図12はフォーカス位置粗探査部50の詳細な動作を示すフローチャートである。
なお、フォーカス位置粗探査部50は、図9に示されるように、制御プログラムを内蔵するDSP51等によりソフトウエア的に実現されている。また、このフォーカス位置の粗い探査は、ドライブコントローラ14がトラッキング制御部23に指示することによって、特定のランドトラック又はグルーブトラックに光ビームを追従させるトラッキング制御を動作させた状態で行われる。つまり、光ディスク1が1回転する毎に光ディスク1の内周側へジャンプバックするスチルジャンプをさせることで光ディスク1上の特定のランドトラック、又は特定のグルーブトラックを光ビームが追従した状態で以下の手順が実行される。
いま、再生誤りが一定値以上発生しているために、粗いフォーカス位置探査の必要が生じているとする。つまり、フォーカス位置粗探査部50のDSP51は第1の記憶部52及び第2の記憶部53に予め記憶されていたフォーカスバランス値及びフォーカスオフセット値を制御信号FBAL1、FOFF1としてフォーカスエラー検出部36に出力しているが、この状態では、エラーレイト計測部33で計測されるビットエラーレイトBERが一定値(5e−4)を越えているとする。
まず、フォーカス位置粗探査部50は、ランドグルーブ検出部34からのL/G切替え信号LGSの論理レベルによって、光ビームがランドトラックに位置しているかグルーブトラックに位置しているかの判断をする(ステップS10)。具体的には、L/G切替え信号LGSを観察し、一定時間以上、“Low”レベルであるか“Hi”レベルであるかによってこの判断をする。
その結果、グルーブトラックに位置していると判断した場合は、第1の記憶部52に記憶されているフォーカスバランス値(現在のFBAL値)を読み出し、その値をA(A=現在のFBAL値)とする(ステップS11)。次に、新たなフォーカスバランス値(更新FBAL値)を算出する(ステップS12)。具体的には、FBAL値の変更量をB(フォーカス位置に換算して、例えば0.6μmとなるようなフォーカスバランス値)、更新FBAL値をXとして式2に示す演算を行う。
X=A+B …(式2)
求めた更新FBAL値(X)をバランス制御信号FBAL1として切替え器37を介してフォーカスエラー検出部36に出力する(ステップS13)。これは、フォーカスエラー検出部36でのフォーカスバランスを変更前のフォーカス位置に対して+0.6μmだけフォーカス位置が変化するように変更したことを意味する。
このようにフォーカスバランスを変更した状態で、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERを受け取り(ステップS14)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であるかどうかを判断する(ステップS15)。その結果、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であれば、図11を用いて先に説明したように、フォーカスバランス変更後のフォーカス位置とフォーカス最適位置とのずれが0.3μm以内であると判断し、その更新FBAL値(X)を第1の記憶部52に格納した後にフォーカス位置探査を正常に終了する(ステップS28)。
一方、ビットエラーレイトBERが5e−4より大きい場合は、FBAL値の変更処理を何回行ったかを判断する(ステップS16)。その結果、その回数が1回目であるときは、2回目の更新FBAL値の算出を行う(ステップS17)。具体的には、式3に示す演算をする。
X=A−B …(式3)
そして、求めたFBAL値(X)をバランス制御信号FBAL1として切替え器37を介してフォーカスエラー検出部36に出力する。これは、フォーカスエラー検出部36でのフォーカスバランスを変更前のフォーカス位置に対して−0.6μmだけフォーカス位置が変化するように変更したことを意味する。
そして、このようにフォーカスバランスを変更した状態で、上記ステップS14、S15を繰り返す。つまり、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERを受け取り(ステップS14)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であるかどうかを判断し(ステップS15)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であれば、その更新FBAL値(X)を第1の記憶部52に格納した後にフォーカス位置探査を正常に終了する(ステップS28)。
一方、ビットエラーレイトBERが5e−4より大きい場合は、FBAL値の変更処理を何回行ったかを判断し(ステップS16)、その回数が2回目であるときは、フォーカス位置探査が正常終了できなかったものとみなしてフォーカス位置探査を終了する(ステップS29)。
上記ステップS10での判断において、フォーカス位置粗探査部50が光ビームがランドトラックに位置していると判断した場合は、第2の記憶部53に記憶されているフォーカスオフセット値(現在のFOFT値)を読み出し、その値をC(C=現在のFOFT値)とする(ステップS21)。次に、新たなフォーカスオフセット値(更新FOFT値)を算出する(ステップS22)。具体的には、FOFT値の変更量をD(フォーカス位置に換算して、例えば0.6μmとなるようなフォーカスオフセット値)、更新FOFT値をYとして式4に示す演算をする。
Y=C+D …(式4)
次に、求めたFOFT値(Y)をオフセット制御信号FOFF1として切替え器38を介してフォーカスエラー検出部36に出力する(ステップS23)。これは、フォーカスエラー検出部36でのフォーカスオフセットを変更前のフォーカス位置に対して+0.6μmだけフォーカス位置が変化するように変更したことを意味する。
このようにフォーカスオフセットを変更した状態で、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERを受け取り(ステップS24)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であるかどうかを判断する(ステップS25)。その結果、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であれば、フォーカスオフセット変更後のフォーカス位置とフォーカス最適位置とのずれが0.3μm以内であると判断して、そのFOFF値(Y)を第2の記憶部53に格納した後にフォーカス位置探査を正常に終了する(ステップS28)。
一方、ビットエラーレイトBERが5e−4より大きい場合は、FOFF値の変更処理を何回行ったかを判断する(ステップS26)。その結果、その回数が1回目であるときは、2回目の更新FOFF値の算出を行う(ステップS27)。具体的には、式5に示す演算をする。
Y=C−D …(式5)
そして、求めたFOFF値(Y)をバランス制御信号FOFF1として切替え器37を介してフォーカスエラー検出部36に出力する。これは、フォーカスエラー検出部36でのフォーカスオフセットを変更前のフォーカス位置に対して−0.6μmだけフォーカス位置が変化するように変更したことを意味する。
そして、このようにフォーカスオフセットを変更した状態で、上記ステップS24、S25を繰り返す。つまり、エラーレイト計測部33からのビットエラーレイトBERを受け取り(ステップS24)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であるかどうかを判断し(ステップS25)、ビットエラーレイトBERが5e−4以下であれば、そのFOFF値(Y)を第2の記憶部53に格納した後にフォーカス位置探査を正常に終了する(ステップS28)。
一方、ビットエラーレイトBERが5e−4より大きい場合は、FOFF値の変更処理を何回行ったかを判断し(ステップS26)、その回数が2回目であるときは、フォーカス位置探査が正常終了できなかったものとみなしてフォーカス位置探査を終了する(ステップS29)。
なお、上記ステップS15及びステップS25において、新たなフォーカスバランス値及び/又はフォーカスオフセット値が探査された場合には、フォーカス位置粗探査部50は、再び探査を実行するまでは、それら新たなフォーカスバランス値及び/又はフォーカスオフセット値を制御信号FBAL1、FOFF1としてフォーカスエラー検出部36に出力し続ける。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置するときは第1の記憶部52に格納された最新のフォーカスバランス値を用いてバランス制御信号FBAL1を出力し(オフセット制御信号FOFF1はゼロで出力する)、一方、光ビームスポットがランドトラックに位置するときは第1の記憶部52に格納された最新のフォーカスバランス値を用いてバランス制御信号FBAL1を出力すると共に、第2の記憶部53に格納された最新のフォーカスオフセット値を用いてオフセット制御信号FOFF1を出力する。これによって、フォーカス位置粗探査部50によるフォーカス位置探査は、それ以降の記録・再生におけるビットエラーレイトBERの減少として反映される。
なお、本実施例におけるフォーカス位置の変更量を0.6μmとしていることの理由は次の通りである。つまり、光ディスクドライブ装置の初期のフォーカス位置は、組み立て調整時に、アドレス又は光ディスク上のデータ領域に記録されている信号が良好に再生できるように調整されている。しかし、光ヘッドの温度特性や経時的な変化等によりフォーカスエラー信号の示すフォーカス位置が変化する、等により再生エラーが増加したり記録特性が悪化することがある。光ヘッドの温度特性については、光ヘッドの構成によっては0.0114μm/℃の変化特性を示す。すなわち、光ヘッド周辺温度が装置起動時の25℃から60℃まで上昇した場合、フォーカス位置が0.4μm相当変化することになる。この光ヘッドの温度特性に加えて更に光ヘッド特性の経時的な変化等があれば、アドレス又は光ディスク上のデータ領域に記録されている信号を再生できなくなることがある。
特に、アドレス領域においては、フォーカス位置が、アドレスパルス信号のビットエラーレイトBERが最小となるフォーカス位置から±0.6μm以上ずれると、アドレス読みが悪くなる。そこで、例えば、フォーカス位置が、+0.6μm〜+1.0μmの範囲でビットエラーレイトBERが最小となるフォーカス位置からずれた場合、フォーカス位置を強制的に−0.6μm動かせば、フォーカス位置は0μm〜+0.4μmの範囲に入るのでアドレスを正常に読むことができる。また、例えば、フォーカス位置が、−0.6μm〜−1.0μmの範囲でビットエラーレイトBERが最小となるフォーカス位置からずれた場合、フォーカス位置を強制的に+0.6μm動かせば、フォーカス位置は0μm〜−0.4μmの範囲に入るのでアドレスを正常に読むことができる。
以上の理由により、本実施例においては、フォーカス位置の変更量を0.6μmとして、ビットエラーレイトBERが5e−4以下となるフォーカス位置を探査しているのである。
以上のように、フォーカス位置粗探査部50は、グルーブトラックだけを対象としてビットエラーレイトBERが一定値以下となるようにフォーカスエラー検出部36でのフォーカスバランスを調整し、一方、ランドトラックだけを対象としてビットエラーレイトBERが一定値以下となるようにフォーカスエラー検出部36でのフォーカスオフセットを調整することによって、フォーカスエラーのゼロレベル、即ち、フォーカスサーボの制御目標を決定した。このように、本実施例でのフォーカス位置粗探査では、グルーブトラックとランドトラックの両方が用いられてフォーカス位置が探査されるので、いずれか一方のトラックだけを用いて探査される従来方式とは異なり、いずれか一方のトラックにおける再生特性が著しく悪いという不具合が回避される。つまり、両方のトラックについて良好な再生特性を得ることができるフォーカス制御、即ち、再生誤りを総合的に低く抑えたフォーカス制御が実現される。
なお、本実施例では、フォーカス位置粗探査部50は、グルーブトラックだけを対象としてフォーカスバランスを調整し、続いて、ランドトラックだけを対象としてフォーカスオフセットを調整することによって、両トラックにとって最適なフォーカス位置を探査したが、本発明はこのようなトラックの種類や手順に限定されない。
図13は、本実施例の粗いフォーカス位置探査の変形例を示す。本図には、合計8個の異なる探査方法No.1〜8が示されており、各探査方法ごとに用いられる制御パラメータ(フォーカス位置粗探査部50からフォーカスエラー検出部36に出力される制御信号FBAL1,FOFF1)が示されている。図中において、四角のワクで囲まれた制御パラメータは、図12に示された手順に基づく探査によって求められる対象であることを意味し、点線矢印は、そのようにして求められた制御パラメータがそのまま他方の制御パラメータとして用いられることを意味する。
なお、これら8個の方法は、いずれも、グルーブトラックとランドトラックの両方を考慮してフォーカス位置を別個に探査すること、及び、その探査手順は基本的に図12に示されたフローチャートと同様である(ビットエラーレイトBERが一定値以下になるかを判断する)点で共通する。
図13において、探査例No.1は、本実施例(図12に示された手順)のことである。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置する場合には第1の記憶部52に格納された最新のFBAL値に対応するバランス制御信号FBAL1のみを出力し、ランドトラックに位置する場合にはそのバランス制御信号FBAL1と共に第2の記憶部53に格納された最新のFOFF値に対応するオフセット制御信号FOFF1を出力する場合において、グルーブトラックを対象としてFBAL値を調整した後に、そのFBAL値を維持したまま、次にランドトラックを対象としてFOFF値を調整する。
探査例No.2は、本実施例(探査例No.1)におけるトラックの種類を入れ替えたものに相当する。
探査例No.3は、グルーブトラックとランドトラックそれぞれに対して異なるFBAL値(第1及び第2FBAL値)を用いる方法であり、フォーカスオフセットについての調整は行わない方法である。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置する場合には第1の記憶部52に格納された最新の第1FBAL値に対応するバランス制御信号FBAL1のみを出力し、ランドトラックに位置する場合には第1の記憶部52に格納された最新の第2FBAL値に対応するバランス制御信号FBAL1のみを出力する場合において、グルーブトラックを対象として第1FBAL値を調整した後に、次にランドトラックを対象として第2FBAL値を調整する。
このように、ランドトラックとグルーブトラック共にフォーカスバランスによりフォーカス制御目標位置を変更するように構成することで、フォーカス制御部の目標値にオフセットを与えずにフォーカス位置を設定できる。従って、オフセットによりフォーカス制御系のダイナミックレンジが狭まるという不具合が回避される。例えば、記録再生動作中において装置に外乱振動が印加された場合には、オフセットによりフォーカス位置を調整した場合の不具合(フォーカス制御系が飽和しやすくなり、フォーカス制御目標位置への追従性能が劣化する等)が発生するが、この方法によれば、その不具合を回避して装置のプレイアビリティーを向上することができる。
探査例No.4は、グルーブトラックとランドトラックそれぞれに対して異なるFOFF値(第1及び第2FOFF値)を用いる方法であり、フォーカスバランスの調整は行われない。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置する場合には第2の記憶部53に格納された最新の第1FOFF値に対応するオフセット制御信号FOFF1のみを出力し、ランドトラックに位置する場合には第2の記憶部53に格納された最新の第2FOFF値に対応するオフセット制御信号FOFF1のみを出力する場合において、グルーブトラックを対象として第1FOFF値を調整した後に、次にランドトラックを対象として第2FOFF値を調整する。
一般に、フォーカスオフセットの調整回路はフォーカスバランスの調整回路よりも簡単な構成で実現でき、さらに、フォーカスバランスの変更によるフォーカスサーボの応答はフォーカスオフセットの変更による場合に比べて応答性が悪いことから、この探査例によれば、簡単で高速なフォーカスサーボの制御回路が実現される。
探査例No.5は、基本的な制御方式は上記探査例No.1と同様である。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置する場合には第1の記憶部52に格納された最新のFBAL値に対応するバランス制御信号FBAL1のみを出力し、ランドトラックに位置する場合にはそのバランス制御信号FBAL1と共に第2の記憶部53に格納された最新のFOFF値に対応するオフセット制御信号FOFF1を出力する。
しかし、この探査例No.5では、まず、フォーカス位置粗探査部50は、上記探査例No.1の手順などを実行することによって、グルーブトラックに対する最適なフォーカス位置とランドトラックに対する最適なフォーカス位置との差に相当するFOFF値、つまり、グルーブトラック及びランドトラック両方に対して略々同様の(最適でなくてもよい)フォーカス状態が得られるようなFOFF値を求め、それを第2の記憶部53に予め格納しておく。そして、フォーカス位置粗探査部50は、グルーブトラックだけを対象としてFBAL値を調整する。
探査例No.6は、上記探査例No.5におけるトラックの種類を入れ替えたものに相当する。これら探査例No.5及び6によって、一方のトラックだけを対象としてフォーカスバランスの調整を行ったにも拘わらず、他方のトラックに対しても自動的に最適なフォーカス位置を得ることが可能となる。つまり、グルーブトラックとランドトラックとのどちらか一方のトラックにおけるフォーカス位置探査で他方のトラックのフォーカス位置も最適化され、フォーカス位置調整時間が短縮される。
探査例No.7は、グルーブトラックとランドトラックそれぞれに対して異なるFBAL値(第1及び第2FBAL値)及び共通のFOFF値を用いる方法であり、フォーカスバランスの調整は行われない。つまり、フォーカス位置粗探査部50は、光ビームスポットがグルーブトラックに位置する場合には2つの記憶部52、53それぞれに格納された最新の第1FBAL値及びFOFF値に対応する制御信号FBAL1、FOFF1を出力し、ランドトラックに位置する場合にはそのオフセット制御信号FOFF1と共に第1の記憶部52に格納された最新の第2FBAL値に対応するバランス制御信号FBAL1を出力する場合において、フォーカス位置粗探査部50は、まず、上記探査例No.3の手順などを実行することによって、グルーブトラック及びランドトラック両方に対して略々同様の(最適でなくてもよい)フォーカス状態が得られるような第1FBAL値及び第2FBAL値を求め、それらを第1の記憶部52に予め格納しておく。そして、フォーカス位置粗探査部50は、グルーブトラックだけを対象としてFOFF値を調整する。
探査例No.8は、上記探査例No.7におけるトラックの種類を入れ替えたものに相当する。これら探査例No.7及び8においても、グルーブトラックとランドトラックとのどちらか一方のトラックにおけるフォーカス位置探査をすれば他方のトラックのフォーカス位置も最適化されるので、フォーカス位置調整時間が短縮される。
なお、本実施例において、再生時と記録時とで光ヘッド出力パワーが異なることにより再生時のフォーカス位置が最適化されていても記録時のフォーカス位置がフォーカス最適位置からずれることがある。この場合において、グルーブトラックとランドトラック共に再生時のフォーカス位置に対して記録時のフォーカス位置を同一のフォーカスオフセットで補正するようことにより、再生時と記録時とのフォーカス位置の差を補正する処理を簡単にすることができる。
また、本実施例においては、エラーレイト計測部33はパリティーエラーを検出したが、これ以外に、例えば、CRCC(Cyclic Redundancy Check Code)と呼ばれる誤り訂正符号を用いて再生エラーを検出する方法等を採用してもよい。CRCCを求めるには、光ディスク1に記録するデータをブロックに区切り、データビットを多項式で表現して、この式を生成多項式と呼ぶ定められた値で除算する。その除算した結果を検査ビットとしてデータビットの後ろに付加し、記録する。再生時に誤りの検出を行うには、データビットと検査ビットを含めたデータを生成多項式でもう一度除算する。このとき符号誤りがなければ割り切れて除算した結果はゼロになり、符号誤りが存在するときには割り切れず除算した結果はゼロにならないことから、誤りの有無が判定できる。したがって、本実施例のパリティーエラー検出器3302の代わりにCRCCによるエラー検出器を用いてエラーレイト計測部33を構成することもできる。
また、本実施例では、図12に示されるように、フォーカス位置粗探査部50は、予め内部に記憶された調整値に対して+0.6μmと−0.6μmだけずらした2箇所だけについてフォーカス位置探査を試みたが、フォーカス位置の変更量を0.6μmより細かくして(例えば、変更量=0.1μmとして)フォーカス位置の探査をしてもよい。これによって、ビットエラーレイトBERが最小となるフォーカス位置をより高精度に探査することができる。
また、本実施例のフォーカス位置粗探査部50は、RFパルス信号PRFに基づいてフォーカス位置探査する場合にはRFパルス信号PRFのエラーレイトが所定値以下となるようにフォーカス位置を探査し、アドレスパルス信号PADRに基づいてフォーカス位置探査する場合にはアドレスパルス信号PADRのエラーレイトが所定値以下となるフォーカス位置を探査したが、アドレス領域とデータ領域とでそれぞれの位置に応じて、再生信号が最大となるフォーカス位置、又は、再生信号のジッタが最小となるフォーカス位置、又は、再生信号の振幅最大となるフォーカス位置と再生信号のジッタが最小となるフォーカス位置との中間のフォーカス位置、又は再生信号のエラーレイトが最小となるフォーカス位置を探査してもよい。
例えば、エラーレイト計測部33のパリティーエラー検出器3302にアドレスパルス信号PADRだけを直接入力させることによって、エラーレイト計測部33から出力されるビットエラーレイトBERは、光ディスク1のアドレス領域だけで発生するビットエラーレイトを示すこととなる。これによって、アドレス領域だけでのエラーレイトに基づくフォーカス位置探査が可能となり、例えば、フォーマット直後における書換え可能な光ディスクの如く、データ領域は未記録であるがアドレス領域には情報が記録されているような光ディスクに対してもフォーカス位置探査を行うことができる光ディスクドライブ装置が実現される。
[精密なフォーカス位置探査(参考例)]
次に、本光ディスクドライブ装置100が記録・再生時において精密なフォーカス位置探査を行う場合について、関連する構成要素をさらに詳細に説明する。なお、説明の便宜のため、まず、リードゲート検出部32及び面振れ成分除去部35を動作させない場合を説明する。
精密なフォーカス位置探査のために、ドライブコントローラ14は、まず、光ディスク1上のドライブテスト領域へフォーカス位置探査用テスト信号を記録するために、その記録位置、記録の開始又は記録の停止を制御するテスト記録制御信号TWCNTを変調部42に出力する。そして、その記録を終えた後に、フォーカス位置の精密探査の開始又は停止を制御するためのフォーカス位置精密探査制御信号FPSONをフォーカス位置精密探査部60へ出力する。
また、ドライブコントローラ14は、アドレス信号検出部31からの2値化されたアドレスパルス信号PADRを受け取り、光ヘッド7から光ディスク1上のトラックに収束照射された光ビームの現在位置を認識することができ、また、そのアドレスパルス信号PADRに基づいて、トラッキング制御部23に指示することで、光ビームを光ディスク1上の任意のトラックに移動させることができる。
なお、フォーカス位置の精密探査の開始に先立って、予めフォーカス位置探査用テスト信号を光ディスク1に記録しておく理由は、次の通りである。つまり、本実施例の光ディスク1は記録可能なディスクであり、未記録時には、予めアドレス信号が記録されているアドレス領域等のプリフォーマット領域以外のデータ領域には全くデータが記録されていない。このような光ディスク1が本光ディスクドライブ装置100に装着された場合には、データ領域の再生信号RFに基づいてフォーカス位置の精密探査をするフォーカス位置精密探査部60は、フォーカス探査を開始することができない。そのために、フォーカス位置探査に先立ち、未記録の光ディスク1のドライブテスト領域に予めフォーカス位置探査用テスト信号を記録しておくのである。
つまり、ドライブコントローラ14は、フォーカス位置探査に先立ち、本光ディスクドライブ装置100に装着された光ディスク1が未記録であるか否か判断し、未記録であると判断した場合には、ドライブテスト領域に予めフォーカス位置探査用テスト信号を記録しておき、後の再利用のために、そのドライブテスト領域(のトラック)を特定する情報を記憶しておく。なお、装着された光ディスク1が記録済みであると判断した場合には、その記録箇所(トラック)に光ヘッド7をシーク移動させてフォーカス位置探査を開始する。
図14は、光ディスク1のドライブテスト領域について説明するための図であり、SS−L/GFMTの光ディスク1の情報領域レイアウトを示す。本図に示されるように、光ディスク1の物理的なアドレスを示すセクタ番号が光ディスク1の位置に応じて割り当てられており、ディスク内周のリードイン領域(セクタ番号27AB0hex〜30FFFhex)は、エンボスデータ領域(セクタ番号27AB0hex〜2FFFhex)、ミラー領域(アドレスの割り当てはなくエンボスデータ領域とリライタブルデータ領域の中間の領域)、及びリライタブルデータ領域(セクタ番号30000hex〜30FFFhex)とから構成されており、リライタブルデータ領域の中にドライブテスト領域がある。また、ディスク外周のリードアウト領域(セクタ番号16B480hex〜17966Fhex)はリライタブルデータ領域であり、この中にドライブテスト領域がある。光ディスク1のリードイン領域及びリードアウト領域にはテスト領域としてディスクテスト領域とドライブテスト領域とがあり、フォーカス位置探査で使用するのはドライブテスト領域(以下、ドライブテスト領域のことを単に「テスト領域」という。)である。このように、SS−L/GFMTタイプのこの光ディスク1には、ディスク内周のリードイン領域とディスク外周のリードアウト領域にそれぞれテスト領域が設けられている。
なお、ドライブコントローラ14は、フォーカス位置精密探査を動作させる前、特に本光ディスクドライブ装置100を起動する度に、フォーカス位置探査用テスト信号をテスト領域に記録するよう変調部42に指示する。また、常に同じアドレスのトラックのみに記録を繰り返せば、該トラックの記録再生特性の劣化が著しくなるので、記録するトラックはテスト領域内で学習の度毎にランダムに変更する。また、フォーカス位置精密探査に必要な光ディスク1からの再生信号RFは、光ディスク1上のランドトラックとグルーブトラックにそれぞれ連続して1回転以上記録されていることが必要なので、ドライブコントローラ14は、ディスク内周のテスト領域とディスク外周のテスト領域とからグルーブトラックをランダムに決定して、決定したグルーブトラックの先頭アドレスから連続して1トラック(=1回転)記録し、そのままランドトラックを連続して1トラック(=1回転)記録するように変調部42に指示する。
ドライブコントローラ14によるテスト領域の具体的な決定手順は、次の通りである。いま、リードイン領域のテスト領域先頭トラックアドレスをTNih、リードイン領域のテスト領域最後尾トラックアドレスをTNie、リードアウト領域のテスト領域先頭トラックアドレスをTNoh、リードアウト領域のテスト領域最後尾トラックアドレスをTNoeというとすると、テスト領域への記録は、グルーブトラックの先頭から次のランドトラックの最後尾までの2トラック(=2回転)に対して行う。つまり、記録対称トラックはTNihからTNie−1及びTNohからTNoe−1のトラックとなる。これを実際のセクタ番号でいえば、TNih=30600h、TNie−1=30CDDh、TNoh=16BE80h、TNoe−1=16C52Fhとなる。セクタ番号30600h〜30CDDh及び16BE80h〜16C5Fhに含まれるゼロセクタのセクタ番号についてはランダムに決定する。
次に、本光ディスクドライブ装置100が精密なフォーカス位置探査を行う場合の全体的な動作について図1及び図3を用いて説明する。
ドライブコントローラ14による制御の下で、光ディスク1が所定の回転数で回転された後に、半導体レーザ8からの光ビームが光ディスク1に照射される。フォーカスエラー検出部36は、光ディスク1から反射された光ビームに基づく2つのフォーカス信号VFS1、VFS2から、フォーカスエラー信号FESを生成し出力する。このとき、フォーカスエラー検出部36は、フォーカス位置精密探査部60からの制御信号FBAL2、FOFF2に基づいてフォーカスバランスとフォーカスオフセットを変更することにより、フォーカスエラーのゼロレベル、すなわちフォーカスサーボの制御目標位置を変更する。
フォーカス制御部26は、フォーカスエラー検出部36からフォーカスエラー信号FESに基づき、加算部24及びフォーカス駆動部21を介してアクチュエータ2を動かすことにより、フォーカスエラー検出部36からのフォーカスエラー信号FESに対応するフォーカス位置とフォーカス制御の目標位置との差がゼロになるようなフォーカスサーボを行う。なお、加算部24は、ドライブコントローラ14からの指示により、フォーカス位置の精密探査を実施している場合にのみ、外乱信号発生部25からの外乱信号とフォーカス制御部26からの信号を加算し、その加算信号をフォーカス駆動部21に出力するが、フォーカス位置の精密探査を実施していない場合には、フォーカス制御部26からの信号をそのままフォーカス駆動部21に出力する。
フォーカス制御部26によるフォーカスサーボを動作させた状態では、再生信号検出器4及び差分増幅器45により、光ディスク1上のトラック中心と光ビームとの位置ずれを示す広帯域トラッキングエラー信号RFTEが得られる。トラッキング制御部23は、広帯域トラッキングエラー信号RFTEトに基づいて光ビームが光ディスク1上のトラックを追従するようにフィードバック制御する。フォーカス制御及びトラッキング制御が動作した状態になると、再生信号検出器4から最大とならずともそこそこの振幅で一定振幅となった再生信号が得られる。
ドライブコントローラ14は、このようにフォーカス制御及びトラッキング制御が動作している状態で、光ビームが現在位置する光ディスク1上のアドレスを復調部47を介して読み取ることができる。そして、ドライブコントローラ14は、光ディスク1上のテスト領域のグルーブトラックをランダムに検索する。なお、ドライブコントローラ14がテスト領域内の目的のグルーブトラックを検索する場合は、好ましくは、目的のグルーブトラックより1トラック内周側のトラックを検索し、光ビームが目的とするグルーブトラックの先頭セクタ(=セクタゼロ)に到達したら記録信号を発生するためのコマンド(以下「テスト記録コマンド」という。)とフォーカス位置精密探査用のテスト信号を変調部42へ送る。
変調部42は、ドライブコントローラ14からのテスト記録コマンドに基づいて、フォーカス位置精密探査用のテスト信号をレーザパワー駆動部41へと出力する。レーザパワー駆動部41は、変調部42からのテスト信号を受け取り、そのテスト信号でレーザーパワーを変調する。
ドライブコントローラ14は、ランダムに決定したグルーブトラックから連続して2トラック、すなわち光ディスク1の内周側からグルーブトラック、ランドトラックの順に2トラック連続でテスト信号を記録して記録動作を終了する。
次に、ドライブコントローラ14は前記のように記録したテスト領域内のグルーブトラックへ光ヘッド7を移動させる。この場合も、好ましくは、目的のクルーブトラックの1トラック内周側へ移動して、目的のグルーブトラックに光ビームが位置したときに、光ビームが常に該グルーブトラックに追従するためのスチルジャンプのコマンドをトラッキング制御部23に送る。トラッキング制御部23は、光ディスク1の1回転毎にスチルジャンプを行い、光ビームがランダムに検索したテスト領域の一つのグルーブトラックのみを常に追従するようにトラッキング駆動部22を制御する。
このようにフォーカス制御及びトラッキング制御を動作させ、光ディスク1の1回転ごとにスチルジャンプが行われ、光ビームが常にテスト領域内のグルーブトラックを追従する状態になった後に、ドライブコントローラ14は、外乱信号発生部25から外乱信号を発生させ、フォーカス制御系に外乱を印加させる。この印加によってフォーカス位置は強制的に変化することになり、フォーカスエラー信号FESに外乱信号の周波数成分(外乱成分)が含まれることになる。そして、フォーカス位置精密探査部60は、切替え器39から送られてくるフォーカスエラー信号FESSに含まれる外乱成分と信号処理部40から送られてくる再生信号RFのエンベロープ及びジッタとから光ディスク1に対する光ビームの位置のずれを示す情報、すなわちフォーカス位置情報FPISを求め、求めたフォーカス位置情報FPISに基づいて再生信号RFの振幅とジッタ両方にとって最適なフォーカス位置、すなわちフォーカス最適位置を探査する。また、フォーカス位置精密探査部60は、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATE及びリードゲート検出部32からのゲート信号RDGTに基づき、データ領域、又は、ドライブコントローラ14によって指定された特定のデータ領域だけを対象として、フォーカス位置情報FPISを求めることにより、より精度の高いフォーカス最適位置の探査を行う。
図15は、フォーカス位置の精密な探査におけるフォーカス最適位置を説明するための図であり、フォーカス位置に対する再生信号RFのエンベロープRFENV及び再生ジッタの大きさを示す。本図に示されるようにフォーカス位置(横軸)に対して、エンベロープは、あるフォーカス位置(本図では、−0.50μm)で最大を示すような凸型の曲線になっており、ジッタは、エンベロープが最大となる位置とは異なるフォーカス位置(本図では、0μm)で最小となる凹型の曲線になっている。つまり、再生信号RFのエンベロープが最大となるフォーカス位置(エンベロープ最大位置)と再生信号RFのジッタが最小となるフォーカス位置(ジッタ最小位置)とはずれている。本実施例では再生信号のエンベロープと再生ジッタにそれぞれ係数を乗じた後に加算して得られる値(フォーカス位置情報FPIS)に基づいて、フォーカス最適位置を探査する。具体的には、フォーカス位置精密探査部60は、エンベロープに乗じる係数とジッタに乗じる係数それぞれを調整することで、フォーカス最適位置をエンベロープ最大位置とジッタ最小位置の間に位置する所定位置(例えば、−0.25μm)に調整している。
図16は、フォーカス位置精密探査部60の詳細な構成を示すブロック図である。エンベロープ検出部61は、信号処理部40からの再生信号RFのエンベロープを検出する。第1の高域通過フィルタ63は、エンベロープ検出部61から出力される再生信号エンベロープの光ディスク1の回転周波数(例えば、39.78Hz)以下の周波数成分を遮断し、所定周波数以上の周波数、即ち、外乱信号発生部25が出力する外乱信号の周波数(1kHz)以上の信号成分を通過させるフィルタである。第1のゲイン調整部66は、第1の高域通過フィルタ63出力信号のゲインを所定の値に調整する。
ジッタ検出部62は、再生信号RFを所定のしきい値で2値化してRFパルス信号PRFを生成し、RFパルス信号PRFと内部で生成する基準クロック信号とからジッタを検出する。第2の高域通過フィルタ64は、第1の高域通過フィルタ63と同様の特性を有し、ジッタ検出部62で検出した再生信号の外乱信号の周波数(1kHz)成分を通過させて光ディスク1の回転周波数(例えば、39.78Hz)以下の成分を遮断する。第2のゲイン調整部67は、第2の高域通過フィルタ64の出力信号のゲインを所定の値に調整する。
減算器69は、第1のゲイン調整部66の出力信号から第2のゲイン調整部67の出力信号を減算する。このように減算するのは、フォーカス位置がフォーカス最適位置からずれるとエンベロープ検出部61から出力されるエンベロープ信号は小さくなり、ジッタ検出部62から出力されるジッタ信号は大きくなるという、エンベロープ信号及びジッタ信号それぞれの変化の極性の違いを考慮したからである。
第3の高域通過フィルタ65は、第1の高域通過フィルタ63と同様の特性を有し、切替え器39から出力されるフォーカスエラー信号FESSのうち外乱信号の周波数(1kHz)成分を通過させて光ディスク1の回転周波数(例えば、39.78Hz)以下の成分を遮断する。第3のゲイン調整部68は、第3の高域通過フィルタ65の出力信号のゲインを所定の値に調整する。乗算器70は、減算器69からの出力信号と第3のゲイン調整部68からの出力信号とを乗算し、その結果をフォーカス位置情報FPISとして平均化処理部71に出力する。
第3の記憶部72は、フォーカス位置の精密探査においてグルーブトラックを対象として求めた最新のフォーカスバランス値を記憶するための書換え可能な不揮発メモリである。第4の記憶部73は、フォーカス位置の精密探査においてランドトラックを対象として求めた最新のフォーカスオフセット値を記憶するための書換え可能な不揮発メモリである。
平均化処理部71は、アドレス信号検出部31から送られてくるゲート信号IDGATE及びリードゲート検出部32から送られてくるゲート信号RDGTによって指定される期間だけを対象として、乗算器70からのフォーカス位置情報FPISを平均化し、得られた平均値を記憶すると共にその平均値に対応する制御信号FBAL2、FOFF2を切替え器37、38を介してフォーカスエラー検出部36に出力する。このとき、上述した粗い探査の場合と同様に、ランドグルーブ検出部34からのL/G切替え信号LGSに基づいて、グルーブトラックとランドトラックとを区別して制御信号FBAL2、FOFF2を変化させる。具体的には、L/G切替え信号LGSがグルーブトラックを示す場合には、平均化処理部71は、得られた平均値に基づき、より最適なフォーカス位置とするための制御信号(フォーカスバランス値)を決定し第3の記憶部72に格納すると共に、そのフォーカスバランス値を制御信号FBAL2として出力し、一方、L/G切替え信号LGSがランドトラックを示す場合には、平均化処理部71はその制御信号FBAL2の出力を維持したまま、得られた平均値に基づき、より最適なフォーカス位置とするための制御信号(フォーカスオフセット値)を決定し第4の記憶部73に格納すると共に、そのフォーカスオフセット値を制御信号FOFF2として出力する。
図17は、平均化処理部71の詳細な構成を示すブロック図である。時間計測器7101は、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEの立ち上がりエッジから所定のウエイト時間(200μs)後に時間計測を開始し、外乱1周期分の時間(1ms)を計測し、その計測中の時間を示すタイマ信号TMSをAND回路7109に出力する。AND回路7109は、時間計測器7101からのタイマ信号TMSとリードゲート検出部32からのゲート信号RDGTとの論理積をとり、その結果をデータ取得タイミング信号DGTSとして第1の平均化回路7102及び第3の平均化回路7104に出力する。つまり、ゲート信号RDGTが”Hi”で、かつ、時間計測器7101からのタイマ信号TMSが”Hi”のときにのみ、第1の平均化回路7102及び第3の平均化回路7104での平均化を許可する。
第1の選択回路7106は、L/G切替え信号LGSが“Hi”(グルーブトラック)のときに乗算器70からのフォーカス位置情報FPISを第1の平均化回路7102に出力し、“Low”(ランドトラック)のときに第3の平均化回路7104に出力するセレクタである。
第1の平均化回路7102は、AND回路7109からのタイミング信号DGTSが“Hi”となる期間だけ、第1の選択回路7106からのフォーカス位置情報FPISを平均化処理する。これは、リードゲート検出部32が動作していない場合であれば(ゲート信号RDGTが常に“Hi”となっている場合)、外乱信号の1周期でのフォーカス位置情報FPISの平均値を算出することになる。第2の平均化回路7103は、制御プログラムを内蔵するDSP等からなり、第1の平均化回路7102で得られた平均値を所定回数分(例えば、外乱信号の24周期分)さらに平均化処理を行い、その平均値に対応して定まるグルーブトラックについての新たなフォーカス目標位置Ml1(フォーカスバランス値)を出力する。なお、ここでのフォーカス位置情報と新たなフォーカス目標位置との関係(精密探査の具体的手順)は後述する。
第3の平均化回路7104及び第4の平均化回路7105は、それぞれ第1の平均化回路7102及び第2の平均化回路7103と同じ機能を有するが、これらはL/G切替え信号LGSが“Low”で(ランドトラック)のときに機能する点だけ異なる。従って、第4の平均化回路7105は、ランドトラックについてのフォーカス目標位置Ml2(フォーカスオフセット値)を出力する。
第2の選択回路7107は、L/G切替え信号LGSが“Hi”(グルーブトラック)のときに第2の平均化回路7103を選択し、“Low”(ランドトラック)のときに第4の平均化回路7105を選択し、それぞれの出力信号を第3の選択回路7108に出力するセレクタである。
第3の選択回路7108は、L/G切替え信号LGSが“Hi”のときにグルーブトラックにおけるフォーカス目標位置Ml1(フォーカスバランス値)を第3の記憶部72へ出力し、L/G切替え信号LGSLGSが“Low”のときにランドトラックにおけるフォーカ目標位置Ml2(フォーカスオフセット値)を第4の記憶部73へ出力する。さらに、この第3の選択回路7108は、グルーブトラックからの信号を再生するときには、第3の記憶部72に記憶された最新のフォーカス目標位置Ml1(フォーカスバランス値)を読みだし、ランドトラックからの信号を再生するときには、第4の記憶部73に記憶された最新のランドトラックにおけるフォカス目標位置Ml2(フォーカスオフセット値)を読み出して、切替え器37、38を介してフォーカスエラー検出部36に出力する。
図18は、リードゲート検出部32が動作していない場合における、外乱信号、ゲート信号IDGATE及びタイマ信号TMSのタイミングチャートである。ここでは、リードゲート検出部32が動作していない(ゲート信号RDGTが常に“Hi”)ので、タイマ信号TMSはタイミング信号DGTSに等しくなる。本図には、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEの立ち下がりエッジから所定のウエイト時間(200μs)後に、時間計測器7101は計測を開始し、外乱信号の1周期分の時間経過したときに停止する様子が示されている。このようにして、データ領域において外乱1周期分のフォーカス位置情報FPISを平均化処理するためのデータ取得タイミング信号DGTSが得られる。
図19(a)及び(b)は、リードゲート検出部32が動作していない場合における、フォーカス位置精密探査時のグルーブ及びランドにおけるゲート信号IDGATE、データ取得タイミング信号DGTS、及びL/G切替え信号LGSのタイミングチャートであり、図19(a)はグルーブにおけるタイミング図で、図19(b)はランドにおけるタイミング図である。
なお、ドライブコントローラ14は、フォーカス位置精密探査時においては、トラッキング制御部23を制御することにより、光ディスク1の1回転毎にスチルジャンプを行わせ、光ディスク1上の光ビームが常にグルーブトラック又はランドトラックに追従するように制御している。したがって、光ディスク1上の光ビームがグルーブトラックに追従しているときは、L/G切替え信号LGSは、図19(a)に示されるようにL/G切り替わり点でグルーブを示す“Hi”レベルからランドを示す“Low”レベルに変化し、データセクタ1でスチルジャンプすることで再度グルーブを示す“Hi”レベルに変化する波形となる。すなわち、光ディスク1上の光ビームがグルーブトラックに追従している状態からランドトラックに追従している状態になった後、データセクタ1でスチルジャンプして先に追従していたグルーブトラックに戻る。
このL/G切替え点ではデータ取得タイミング信号DGTSは、図19(a)に示されるように、ゲート信号IDGATEが“Hi”レベルの期間とその前後及びデータセクタ0とデータセクタで1“Low”レベルを示す波形となる。データ取得タイミング信号DGTSが“Low”レベルを示すときは、第1の平均化回路7102は第1の選択回路7106からのフォーカス位置情報FPISを取得しない(平均化を中断する)。
一方、光ディスク1上の光ビームがランドトラックに追従しているときは、L/G切替え信号LGS信号は、図19(b)に示されるようにL/G切り替わり点でランドを示す“Low”レベルからグルーブを示す“Hi”レベルに変化し、データセクタ1でスチルジャンプすることで再度ランドを示す“Low”レベルに変化する波形となる。すなわち、光ディスク1上の光ビームがランドトラックに追従している状態からグルーブトラックに追従している状態になった後、データセクタ1でスチルジャンプして先に追従していたランドトラックに戻る。
このL/G切替え点ではデータ取得タイミング信号DGTSは、図19(b)に示されるように、ゲート信号IDGATEが“Hi”レベルの期間とその前後及びデータセクタ0とデータセクタ1で“Low”レベルを示す波形となる。データ取得タイミング信号DGTSが“Low”レベルを示すときは、第3の平均化回路7104は第1の選択回路7106からのフォーカス位置情報FPISを取得しない(平均化を中断する)。
これらタイミングチャートから分かるように、平均化処理部71は、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEに基づいてアドレス領域のフォーカス位置情報FPISを破棄しながらグルーブトラックとランドトラックとを区別してフォーカス位置情報FPISを平均化する。つまり、グルーブトラックにおけるデータ領域でのみ取得したフォーカス位置情報FPISと、ランドトラックにおけるデータ領域でのみ取得したフォーカス位置情報FPISとをそれぞれ独立に平均化処理する。
次に、図16を用いてフォーカス位置精密探査部60によるフォーカス位置精密探査の収束動作について説明する。
フォーカス位置精密探査部60は、乗算器70からのフォーカス位置情報FPISを平均化処理部71で平均化処理して求めたフォーカス制御の目標位置に相当する制御信号FBAL2、FOFF2をフォーカスエラー検出部36に出力する。このとき、理想的には、1回のフォーカス位置精密探査で求めた再生状態が最適となるようフォーカス位置情報FPISによりフォーカス制御の目標位置を変更すれば必ず最適なフォーカス位置が得られる、という探査が好ましい。これを数式で表現すれば、式6のようになる。
フォーカス位置情報FPIS×K=目標位置変更量 …(式6)
ここで、Kは、フォーカス最適位置からのずれ量と制御目標位置の変更量とを関係づける定数(以下「補正ゲイン定数」という。)である。式6に基づいてフォーカス制御の目標位置を変更すれば、補正ゲイン定数K=1のとき理想的には1回の変更でフォーカス位置が最適となるフォーカス制御の目標位置に設定することができる。
しかし、フォーカス位置精密探査時に、外乱信号発生部25からの外乱信号に応答して変化するエンベロープ信号やジッタ信号の検出感度がばらつくので、本実施例では、フォーカス位置情報FPISとフォーカス制御の目標値とを関係づける補正ゲイン定数Kは1より小さく設定して、フォーカス位置の探査とフォーカス制御の目標値の更新を所定の回数繰り返すことでフォーカス位置が最適となるフォーカス制御の目標位置に収束動作するようにしている。ここで、本実施例でフォーカス位置精密探査を収束動作させる場合の補正ゲイン定数Kの値を、好ましくは0.7に設定して、フォーカス位置精密探査を4回で収束するようにすれば、例えば初期のフォーカス最適位置からのずれが1μmであった場合でも±0.05μm以下の精度でフォーカス最適位置を探査することができる。
このように、フォーカス位置精密探査部60は、ランドトラックとグルーブトラックと別々にアドレス領域のフォーカス位置情報FPISを破棄したデータ領域のみのフォーカス位置情報FPISを取得し、ランドトラックとグルーブトラックそれぞれのトラック位置に応じたフォーカス位置が最適となるフォーカス目標位置を求めている。
次に、図20、図21、図22を用いてジッタ検出部62について説明する。図20は、ジッタ検出部62の詳細な構成を示すブロック図である。2値化回路6201は、信号処理部40からの再生信号RFを受け取り、所定のしきい値で2値化したRFパルス信号PRFを出力する。位相比較回路6202は、RFパルス信号PRFとVCO(電圧制御発振器)6205から出力されるクロック信号CLKとの位相ずれを検出する。具体的には、RFパルス信号PRFの位相がクロック信号CLKの位相に対して進んでいるか、遅れているかに応じて出力端子UP及びDNから位相ずれに対応するパルス幅をもったパルスを出力する。差動回路6203は、位相比較回路6202から出力されたパルス信号UP及びDNの差を計算し、積分回路6204に出力する。積分回路6204は、差動回路6203の出力信号を積分し、VCO6205に出力する。VCO6205は、積分回路6204の出力に応じた周波数をもつクロック信号CLKを位相比較回路6202に出力する。加算回路6206は、位相比較回路6202から出力されたパルス信号UP及びDNの和を計算し、後述のLPF(ローパスフィルタ)6207に出力する。LPF6207は、加算回路6206からの出力信号のうち低い周波数成分をパルス幅変動信号PDとして出力する。このようにして生成したパルス幅変動信号PDがRFパルス信号PRFとクロック信号CLKとのジッタを表わすことになる。
図21は、このジッタ検出部62におけるRFパルス信号PRF、クロック信号CLK、位相比較回路出力のパルス信号UP及びDNのタイミングを示す図である。VCO6205から出力されるクロック信号CLKとRFパルス信号PRFの関係は、例えばEFM(eight to fourteen modulation)等の場合、実際には最も短いパルス幅のRFパルス信号PRFのパルスに、VCO6205から出力されるクロック信号CLKのパルスが3つ入るような関係になるのが一般的である。本図では、簡単のためRFパルス信号PRFとクロック信号CLKのパルス幅が等しいと仮定している。
位相比較回路6202、差動回路6203、積分回路6204、VCO6205は、PLL(phase locked loop)を構成する。まず、位相比較回路6202は,RFパルス信号PRFとクロック信号CLKとの間の位相差に対応するパルス信号UP及びDNを図21に示されるように出力する。すなわち、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジにおいて、RFパルス信号PRFがクロック信号CLKよりも進んでいる場合、その進みに対応する幅をもつパルス信号UPを出力する(図21中のA参照)。一方、遅れている場合、その遅れに対応する幅をもつパルス信号DNが出力される(図21中のB参照)。位相の進み遅れは差動回路6203によって正負のパルス信号となり、さらに積分回路6204によって累積加算された信号となる。VCO6205は、この加算された信号の電圧に応じた周波数のクロック信号CLKを発生し、位相比較回路6202へとフィードバックする。その結果、クロック信号CLKは、RFパルス信号PRFに対して、位相差の平均がゼロになるように制御される。
もしパルス幅の変動がなければ、フィードバックの結果、パルス信号UP及びDNは、位相差に対するパルスをもたない(すなわち、ゼロレベルのままである)。ここで、RFパルス信号PRFがクロック信号CLKよりもパルス幅が狭いとする(図21中のC参照)。このとき、クロック信号CLKの立ち上がりエッジにおいてパルス信号DNが発生し、RFパルス信号PRFの立ち下がりエッジにおいてパルス信号UPが発生する。反対に、RFパルス信号PRFがクロック信号CLKよりもパルス幅が広いとする(図21中のD参照)。このとき、RFパルス信号PRFの立ち上がりエッジにおいてパルス信号UPが発生し、クロック信号CLKの立ち下がりエッジにおいてパルス信号DNが発生する。
前述のように、PLLによって位相比較回路6202の入力U及びVの位相差の平均がゼロになるように、クロック信号CLKの周波数及び位相が制御される。よって、RFパルス信号PRFのパルス幅が変動した場合、パルス信号UP及びDNとして、それぞれ同じ幅のパルスが出力される。その結果、加算回路6206は、パルス幅の変動成分のみを出力する。LPF6207は、このパルス幅の変動成分を平滑化することによって、直流電圧化された信号をパルス幅変動信号PDとして出力する。このようにして、ジッタ検出部62は、パルス幅変動検出信号PDをデータ領域の再生信号RFのジッタとして出力する。
図22は、図20に示された位相比較回路6202の詳細な構成を示すブロック図である。本図に示されるように、RFパルス信号PRFの立ち上がりエッジは、モノマルチ6202Aで検出される。RFパルス信号PRFの立ち下がりエッジは、反転回路6202Cによって立ち上がりエッジとなり、その立ち上がりエッジは、モノマルチ6202Bで検出される。それぞれのモノマルチ6202A、6202Bの出力は、OR回路6202Dに入力され、OR回路6202Dは、その出力をフリップフロップ6202EのCK入力へ送る。フリップフロップ6202FのCK入力には、VCO6205からのクロック信号CLKが入力されている。フリップフロップ6202Eからのパルス信号UPとフリップフロップ6202Fからのパルス信号DNはNAND回路6202Gへ入力されており、NAND回路6202Gの出力信号は、フリップフロップ6202Eのリセット(R)端子とフリップフロップ6202Fのリセット(R)端子に入力されている。フリップフロップ6202EのD入力とフリップフロップ6202FのD入力は、電源電圧Vcc(例えば、+5V)に接続されている。このように構成された位相比較回路6202は、OR回路6202Dからのエッジ信号とクロック信号CLKのエッジとのうち、早い方の信号エッジでフリッププロップをセットし、遅い方でリセットするように動作する。
なお、位相比較回路6202の構成は、本図に示した構成の他に、結果的にパルス信号UP及びDNの差動出力及び加算出力を有する回路、つまり、(UP−DN)及び(UP+DN)を出力端子として備えている回路であってもよい。(UP+DN)だけならば、例えば、排他的論理和(エクスクルーシブOR)で直接実現することができる。しかし、比較的簡易な構成で(UP−DN)及び(UP+DN)を得るためには、パルス信号UP及びDNを独立に出力できる回路のほうが好ましい。また、位相比較回路6202の内部構成は、上述の機能があればよく、他の回路構成によって実現することもできる。
このように構成されたフォーカス位置精密探査部60は、加算部24を介して外乱信号発生部25からの外乱信号をフォーカス制御系に印加したときの、再生信号RFのジッタとエンベロープ及びフォーカスエラー信号FESから、フォーカス目標位置を求める。求めたフォーカス目標位置に基づいてフォーカスサーボの制御目標位置を変更するための制御信号FBAL2、FOFF2をフォーカスエラー検出部36へ出力する。フォーカスエラー検出部36は、フォーカス位置精密探査部60からの制御信号FBAL2、FOFF2に基づいてフォーカスバランスとフォーカスオフセットを変化させることでフォーカスエラー信号FESを生成することにより、信号処理部40から出力されたフォーカス信号VFS1、VFS2に基づくフォーカスエラーのゼロレベル、すなわちフォーカスサーボの制御目標位置を設定する。
制御目標位置の設定に関して、既にフォーカス位置精密探査の収束動作の説明のところで説明したように、フォーカス最適位置からのずれ量と制御目標位置の変更量とを関係づける補正ゲイン定数は、1回の補正動作でフォーカス最適位置からのずれを完全に補正するゲインを1とすれば、外乱信号発生部25からの外乱信号に応答して変化する再生信号のエンベロープ信号やジッタ信号の検出感度バラツキを考慮して、1よりも小さな値(0.7)に設定している。そして、外乱信号の24周期分でフォーカス位置情報FPISを平均化処理して得られる平均値に対応する制御信号FBAL2、FOFF2に基づくフォーカス位置の補正を1回とすれば、好ましくは4回程この補正動作を繰り返すことで再生信号の振幅又はジッタが最適となるようなフォーカス位置、すなわちフォーカス最適位置からのずれを所定値(例えば、フォーカス位置に換算して±0.05μm)以下にすることができる。すなわち、4回の補正動作により収束誤差±0.05μm以下の精度でフォーカス最適位置へ収束することができる。
次に、フォーカス位置精密探査部60とフォーカス制御部26がアドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEに基づいた処理を行っていることの意義について説明する。
SS−L/GFMTの光ディスク1は、データセクタとデータセクタの間にアドレス領域が存在する(図4(a)参照)。また、同図に示されるように、光ディスク1の1周毎にアドレス領域の後にランドとグルーブの切り替わり点が存在する。そして、同図に示されるように、データ領域の物理的な構造とアドレス領域の物理的な構造が異なる。その結果、フォーカスエラー信号FESや広帯域トラッキングエラー信号RFTEを検出する検出器4、5に入射される光ディスク1から反射された光ビームの状態がデータ領域とアドレス領域で異なり、データ領域とアドレス領域とではフォーカスエラー信号FES、広帯域トラッキングエラー信号RFTEともにオフセットを生じる。つまり、アドレス領域ではフォーカスエラー信号FES、広帯域トラッキングエラー信号RFTE共に検出したフォーカス位置、トラッキング位置に誤差を含むことになる。
したがって、光ディスク1上に照射された光ビームが常に所定の収束状態となるように制御するフォーカスサーボと光ビームが光ディスク1上のトラックに追従するように制御するトラッキングサーボとが動作した状態で、光ビームスポットがデータ領域からアドレス領域へ突入するとフォーカスサーボ、トラッキングサーボ共に乱れを生じる。この乱れを生じないようにするためには、光ビームがアドレス領域通過時にフォーカスサーボとトラッキングサーボが追従しないようにしなければならない。そこで、各サーボ共に(アドレス信号検出部31で検出した図6(d)に示すような)ゲート信号IDGATEに基づいてアドレス領域でサーボをホールドしている。
上述したように、SS−L/GFMTの光ディスク1では、光ディスク1の1回転毎に追従するトラックをランドトラックからグルーブトラックへ、又はグルーブトラックからランドトラックへと交互に切り替えながらシングルスパイラルの記録再生動作が実現されている。ランドトラックとグルーブトラックではトラッキング極性が逆になっているので極性を切り替える必要がある。トラッキング極性を切り替えてトラックに追従するために用いる信号は、図4(c)に示されるようなL/G切替え信号LGSである。
本実施例におけるフォーカス位置精密探査は、フォーカス制御及びトラッキング制御が動作し、光ディスク1の1回転毎にスチルジャンプが行われ、光ビームスポットが常にグルーブトラックに追従している状態でグルーブトラックのフォーカス位置精密探査を行い、グルーブトラックのフォーカス位置精密探査の終了後に次のランドトラックへ移動し、光ビームスポットが常にランドトラックに追従している状態でランドトラックのフォーカス位置精密探査をすることとしている。また、現在のフォーカス位置のフォーカス最適位置からのずれを算出するためのフォーカス位置情報FPISとしては再生信号のエンベロープとジッタを用いるので、フォーカス位置精密探査部60によるフォーカス位置の探査は光ディスク1の記録済みの領域で行う必要がある。
次に、フォーカスエラー信号FESにフォーカスサーボの残差として現れる面振れ成分、外乱信号発生部25からの外乱信号及びデータセクタとの関係について図23(a)〜(c)を用いて説明する。図23(a)は、フォーカスエラー信号FESにフォーカスサーボの残差として現れる面振れ成分のディスク1回転あたりの波形図である。図23(b)は、外乱信号発生部25から出力される外乱信号の波形である。図23(c)は、ディスク1回転、すなわち1トラックのデータセクタの概略図(例えば、光ディスク1内周側)である。
図23(a)に示されるように、面振れ成分は光ディスク1の回転と同期してフォーカスサーボの残差として、ここでは光ディスク1回転で2周期変化する正弦波状の信号として、フォーカスエラー信号FESに現れる。そして、図23(c)に示されるように、光ディスク1回転、すなわち1トラック内のセクター数は、例えば最内周でデータセクタ0(DS0)からデータセクタ16(DS16)の17セクターである。ここで、光ディスク1の回転周波数は、光ディスク1最内周で39.78Hzであり、光ディスク1回転にデータセクタが17個存在することから、アドレス領域を含む1データセクタの周波数は676Hzである。
本実施例のフォーカス位置精密探査では、アドレス領域のフォーカス位置情報FPISをアドレス領域のゲート信号(ゲート信号IDGATE)に基づいて破棄して、データ領域のみでフォーカス位置情報FPISを取得する。データ領域のみでフォーカス位置情報FPISを取得すれば、フォーカス位置情報FPISを間欠的に取得することになる。したがって、フォーカス位置精密探査部60によるフォーカス位置精密探査を行う時に、外乱信号発生部25からフォーカス制御系に印加する外乱信号としては、好ましくは1データセクタのデータ領域内に1周期以上含まれることが必要となる。つまり、1データセクタのデータ領域に外乱信号が必ず1周期含まれるようにすることで、外乱に対応したフォーカス位置情報FPISを1データセクタ単位で取得できることになる。したがって、光ディスク1の回転数、1回転あたりのデータセクタ数及び外乱信号が1データセクタのデータ領域に1周期以上含まれること、等の条件を考慮して、本実施例では、フォーカス位置精密探査時にフォーカス制御系に印加する外乱信号の周波数を1kHzとしているのである。
次に図24、図25、図26、及び図27を用いてフォーカス最適位置の探査原理について説明する。図24はフォーカス位置とエンベロープ検出部61で検出される再生信号RFのエンベロープとの関係、及び各フォーカス位置における外乱信号と再生信号RFのエンベロープとの関係を示す図である。
フォーカス制御を動作させた状態で、A点を基準に外乱信号発生部25からフォーカス制御系に外乱信号を印加すると、対物レンズ3が光ディスク1に近づく方向を正方向、対物レンズ3が光ディスク1から離れる方向を負方向とすれば、フォーカス位置を正の方向に変化させると再生信号RFのエンベロープは小さくなり、フォーカス位置を負の方向に変化させると再生信号RFのエンベロープは大きくなる。一方、B点を基準に外乱信号を印加して、フォーカス位置を正の方向に変化させると再生信号RFのエンベロープは大きくなり、フォーカス位置を負の方向に変化させると再生信号RFのエンベロープは小さくなる。さらに、C点、すなわち再生信号RFのエンベロープ最大点を基準に外乱信号を印加した場合は、フォカス位置を正負どちらに変化させても再生信号RFのエンベロープは外乱信号に応じて小さくなるように変化する。
このように、フォーカス制御系に外乱信号発生部25からの外乱信号を印加すると、フォーカスサーボは印加した外乱信号に応答してフォーカス位置が変化するので、再生信号RFのエンベロープも変化する。そこで、加算部24を介して外乱信号発生部25からの外乱信号をフォーカス制御系に印加したときのフォーカスエラー信号FESの外乱成分と再生信号RFのエンベロープとを乗算するとフォーカス位置に対するデフォーカスの量と極性、すなわちフォーカス位置とフォーカス最適位置とのずれを示すフォーカス位置情報FPISを得ることができる。
ここで、フォーカスエラー信号の外乱成分と再生信号RFのエンベロープとからフォーカス最適位置からのずれが得られる原理について図24、図25(a)〜(c)を用いて説明する。図25(a)〜(c)は、それぞれ、外乱信号、図24のA点、B点、C点ぞれぞれにおける再生信号RFのエンベロープ、及び、外乱信号と図24のA点、B点、C点ぞれぞれにおける再生信号RFのエンベロープとを乗算した波形を示す。なお、説明の便宜のため、外乱信号及び再生信号RFのエンベロープと外乱信号の乗算した波形は連続して得られると仮定する。図24のA点において、図25(a)に示されるような連続した正弦波状の外乱信号をフォーカス制御系に印加すると、再生信号RFのエンベロープ波形は、図25(b)のA点波形に示されるように外乱信号と位相が180度ずれた正弦波状の波形になる。そして、再生信号RFのエンベロープと外乱信号とを乗算した波形は、図25(c)のA点波形に示されるようにゼロレベルよりも負側で変化する波形になる。すなわち、再生信号RFのエンベロープと外乱信号とを乗算して得られたフォーカス位置情報FPIS(以下「エンベロープによるフォーカス位置情報FPIS」という。)は、外乱信号に対して常に負側に変化する波形となる。この図25(c)に示されるA点波形を低域通過フィルタ等で平滑処理すれば、図24のA点におけるフォーカス最適位置からのずれ量と極性とを得ることができる。
図24のB点において、同様に正弦波状の外乱信号をフォーカス制御系に印加すると、再生信号RFのエンベロープ波形は、図25(b)のB点波形に示されるように外乱信号と同位相の正弦波状の波形になる。そして、再生信号RFのエンベロープと外乱信号とを乗算した波形は、図25(c)に示されるB点波形のようにゼロレベルよりも正側で変化する波形になる。すなわち、エンベロープによるフォーカス位置情報FPISは、外乱信号に対して常に正側に変化するような波形となる。この図25(c)に示されるB点波形を低域通過フィルタ等で平滑処理すれば、図24のB点におけるフォーカス最適位置からのずれ量と極性とを得ることができる。
図24のC点において、同様に正弦波状の外乱信号をフォーカス制御系に印加すると、再生信号RFのエンベロープ波形は、図25(b)のC点波形に示されるようにゼロレベルに対して負側に折り返すような波形となる。そして、再生信号RFのエンベロープと外乱信号とを乗算した波形は、図25(c)に示されるC点波形のように外乱信号と位相が180度ずれた正弦波状の波形になる。すなわち、エンベロープによるフォーカス位置情報FPISは、外乱信号に対して正負反転したような波形となる。この図25(c)に示されるC点波形を低域通過フィルタ等で平滑処理すれば、図24のC点におけるフォーカス最適位置からのずれ量と極性とを得ることができる。
次に、フォーカス位置と再生信号RFのジッタとの関係について図26を用いて説明する。図26はフォーカス位置とジッタ検出部62からの再生信号RFのジッタとの関係、及び各フォーカス位置における外乱信号と再生信号RFのジッタとの関係を示す図である。フォーカス制御を動作させた状態で、A点基準に外乱信号発生部25からフォーカス制御系に外乱信号を印加すると、対物レンズ3が光ディスク1に近づく方向を正方向、対物レンズ3が光ディスク1から離れる方向を負方向とすれば、フォーカス位置を正の方向に変化させると再生信号RFのジッタは大きくなり、フォーカス位置を負の方向に変化させると再生信号RFのジッタは小さくなる。B点基準に外乱信号を印加してフォーカス位置を正の方向に変化させると再生信号RFのジッタは小さくなり、フォーカス位置を負の方向に変化させると再生信号RFのジッタは大きくなる。C点、すなわち再生信号RFのジッタ最小点を基準に外乱信号を印加した場合は、フォカス位置を正負どちらに変化させても再生信号RFのジッタは大きくなるように変化する。
このように、フォーカス制御系に外乱信号発生部25からの外乱信号を印加すると、フォーカスサーボは印加した外乱信号に応答してフォーカス位置が変化するので、再生信号RFのジッタも変化する。そこで、加算部24を介して外乱信号発生部25からの外乱信号をフォーカス制御系に印加したときのフォーカスエラー信号FESの外乱成分と再生信号RFのジッタを乗算するとフォーカス位置に対するデフォーカスの量と極性、すなわちフォーカス位置とフォーカス最適位置とのずれを示すフォーカス位置情報FPISを得ることができる。
但し、外乱信号に対するエンベロープ検出部61からの再生信号RFのエンベロープ応答特性とジッタ検出部62からの再生信号RFのジッタ応答特性とは、図24に示されるエンベロープ波形と図26に示されるジッタ波形からも明らかなように応答特性が逆になっている。したがって、エンベロープ検出部61からの再生信号RFのエンベロープによるフォーカス位置情報FPISとジッタ検出部62からの再生信号RFのジッタによるフォーカス位置情報FPISとに基づいてフォーカス位置精密探査をする場合は、例えば、エンベロープの極性にジッタ極性を合わせる等のエンベロープとジッタの極性を合わせる必要がある。本実施例では図16に示されるように、減算器69で、第1のゲイン調整部66からのエンベロープ信号から第2のゲイン調整部67からのジッタ信号を差演算することで極性合わせをしている。なお、フォーカスエラー信号の外乱成分と再生信号RFのジッタとからフォーカス最適位置からのずれを算出する手順は、エンベロープによるフォーカス最適位置からのずれ検出の原理と同様の原理で求められるので、ジッタによるフォーカス最適位置とのずれ検出原理の説明は省略する。
次に、フォーカス位置精密探査部60で得られるフォーカス最適位置からのずれ検出特性について図27を用いて説明する。図27はフォーカス位置とフォーカス最適位置からのずれ検出値との関係を示す図である。
フォーカス位置精密探査部60でフォーカス位置を探査する場合に、例えば、第2のゲイン調整部67のゲインをゼロとし、第1のゲイン調整部66を適当に調整して再生信号RFのエンベロープのみに基づいてフォーカス最適位置からのずれを検出すれば、図27に示される曲線7120のように、フォーカス最適位置からのずれがゼロとなるのは再生信号RFのエンベロープが最大となるフォーカス位置(例えば、−0.50μm)となる。そして、エンベロープが最大となるフォーカス位置を中心にフォーカス位置が正の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは正の方向に増加し、フォーカス位置が負の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは負の方向に増加するような特性になる。
一方、第1のゲイン調整部66のゲインをゼロとし、第2ゲイン調整部67を適当に調整して再生信号RFのジッタのみに基づいてフォーカス最適位置とのずれを検出すれば、図27に示される曲線7122のように、フォーカス最適位置からのずれがゼロとなるのはジッタが最小となるフォーカス位置(例えば、0μm)となる。そして、ジッタが最小となるフォーカス位置中心にフォーカス位置が正の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは正の方向に増加し、フォーカス位置が負の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは負の方向に増加するような特性になる。
さらに、第1のゲイン調整部66のゲインを適当な係数、例えばαとし、第2のゲイン調整部67のゲインを適当な係数、例えばβとして、エンベロープによるフォーカス最適位置からのずれ検出感度とジッタによるフォーカス最適位置からのずれ検出感度とが等しくなるように調整すれば、フォーカス最適位置からのずれ検出特性は、図27に示される曲線7121のように、フォーカス最適位置からのずれがゼロとなるのはエンベロープが最大となるフォーカス位置とジッタが最小となるフォーカス最適位置との中間の位置(例えば、0.25μm)となる。そして、この場合のフォーカス最適位置からのずれ検出特性は、エンベロープによるフォーカス最適位置からのずれ検出特性とジッタによるフォーカス最適位置からのずれ検出特性の中間の特性となる。すなわち、エンベロープが最大となるフォーカス位置とジッタが最小となるフォーカス位置の中間位置を中心にフォーカス位置が正の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは正の方向に増加し、フォーカス位置が負の方向にずれるとフォーカス最適位置からのずれは負の方向に増加するような特性になる。
このような理由から、本実施例では、再生信号RFのエンベロープとジッタの両方を考慮した曲線7121を採用している。具体的には、フォーカス位置精密探査部60の平均化処理部71は、平均化によって得られたフォーカス位置情報に対応するずれ量を図27に示された曲線7121から求め、そのずれ量に上記式6による補正を施して得られる量だけ、現在のフォーカス位置(Ml1、Ml2)をずらすことで、新たなフォーカス目標位置Ml1、Ml2を得ている。
次に、フォーカス位置精密探査部60によりフォーカス最適位置を探査する場合の収束位置誤差とアドレス領域の影響との関係について説明する。本実施例におけるSS−L/GFMTの光ディスク1ではセクタ間にアドレス領域が存在する。フォーカス位置精密探査はフォーカス制御とトラッキング制御を動作させた状態で行うが、上述したように、アドレス領域では正しいフォーカスエラー信号FES及び広帯域トラッキングエラー信号RFTEが得られない。したがって、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ共に、光ビームスポットがアドレス領域を通過するときは、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEに基づいて、フォーカス制御部26及びトラッキング制御部23は、光ディスク1上に収束照射された光ビームがアドレス領域に入る直前におけるそれぞれの出力信号をホールドしている。そして、光ディスク1上に収束照射された光ビームがアドレス領域を通過してデータ領域に入ったら、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEの基づいてホールドを解除し、フォーカスサーボとトラッキングサーボの動作を再開する。
フォーカス位置探査においてもアドレス領域で取得した再生信号RFのエンベロープやジッタを含んだフォーカス位置情報FPISでフォーカス最適位置の探査を行うと、探査結果に最適位置との誤差を含むことになる。つまり、アドレス領域の影響によりフォーカス最適位置への収束誤差が増えることになる。したがって、本実施例では1つのデータセクタのデータ領域内に外乱1周期以上含まれるような周波数の外乱信号をフォーカス制御系に印加して、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEに基づいてアドレス領域を除外したデータ領域のみでフォーカス位置情報FPISを検出するようにしている。これによって、フォーカス位置情報FPISに検出誤差を生じさせるようなアドレス領域を有する光ディスク1に対しても、アドレス領域の影響を受けることのない高精度なフォーカス最適位置探査が実現される。
以上のように、実施例のフォーカス位置精密探査部60はフォーカス位置最適位置を再生信号RFのエンベロープ最大と再生信号RFのジッタ最小の中間に制御するので、フォーカス位置の調整後にフォーカスサーボの光ディスク1面振れへの追従残差等によりフォーカス位置が変化した場合であってもデフォーカスに対するマージンが最適化され良好な再生特性を得ることができる。いいかえれば、図15に示されるように、ジッタ最小位置にフォーカス位置を調整した場合は、フォーカス位置が正方向にずれるとデフォーカスに対するジッタマージンが少なくなる。再生信号RFのエンベロープ最大位置にフォーカス位置を調整した場合は、フォーカス位置が負方向にずれるとデフォーカスに対して再生信号RFのエンベロープが極端に小さくなるような特性になり、その結果、ジッタも悪くなる。そこで、再生信号RFの振幅最大となるフォーカス位置とジッタ最小となるフォーカス位置の中間点にフォーカス最適位置を調整することにしているので、再生信号RFのエンベロープ最大となるフォーカス位置と再生信号RFのジッタ最小となるフォーカス位置とが異なる場合において、フォーカスサーボのディスク面振れへの追従残差等によりフォーカス位置が変化した場合であっても良好な再生特性が得られる。
なお、本実施例のフォーカス位置精密探査部60は、再生信号RFの振幅が最大となるフォーカス位置と再生信号RFのジッタが最小となるフォーカス位置との中間のフォーカス位置を探査したが、再生信号RFのエラーレイトが所定値以下となるフォーカス位置、又は再生信号RFの振幅が最大となるフォーカス位置、又は、再生信号RFのジッタが最小となるフォーカス位置、又は再生信号RFのエラーレイトが最小となるフォーカス位置を探査してもよい。
また、本実施例のフォーカス位置精密探査においては、まずグルーブトラックに光ビームスポットが追従するようスチルジャンプさせた状態でフォーカス位置の精密探査した後に、次に1トラック外周のランドトラックに移動させてスチルジャンプさせた状態でフォーカス位置の精密探査が行われたが、フォーカス位置の精密探査の手順としてはこれに限定されるものではなく、粗い探査における変形例と同様に、これらの順序を逆にしてもい。
つまり、本実施例のフォーカス位置の精密探査におけるフォーカス制御目標位置(フォーカスバランス値及びフォーカスオフセット値)の変更についても、粗いフォーカス位置探査における変形例(図13に示される8種類の探査方法)を採用することができる。
[精密なフォーカス位置探査におけるオプション機能(参考例)]
次に、フォーカス位置の精密探査における2つのオプション機能について説明する。まず、光ディスク1の特定のデータ領域だけに着目してフォーカス位置の精密探査を実施する第1のオプション機能、即ち、リードゲート検出部32の機能について説明する。
リードゲート検出部32は、上述したように、光ディスク1上のアドレス領域及び予めドライブコントローラ14によって指定されたデータセクタ(リードデータセクタ)において“Hi”となるようなゲート信号RDGTをフォーカス位置精密探査部60へ出力する。本実施例では、ドライブコントローラ14は、予め、フォーカスエラー信号FESを取り込んでA/D変換することで光ディスク1の回転時に生じる面振れ(交流信号)を検出し、その交流信号の変化分が小さい位置に相当するデータ領域においてゲート信号RDGTが“Hi”となるようにそれらデータセクタをリードデータセクタとして指定している。
そして、フォーカス位置精密探査部60は、このようなゲート信号RDGTに基づき、予め指定されたデータ領域のみに対して、フォーカス位置情報FPISを取得し、フォーカス位置の精密探査を実施する。このような、第1のオプション機能を動作させる意義は次の通りである。
フォーカス位置精密探査を行う場合、フォーカス制御部26は、フォーカスエラー検出部36からの信号に基づいて、加算部24及びフォーカス駆動部21を介してアクチュエータ2を駆動することにより、光ディスク1上に照射された光ビームが常に所定の収束状態となるよう制御している。しかし、光ディスク1の面振れが大きくなると、フォーカスエラー信号FESに光ディスク1の面振れ成分の制御残差が現れる。従って、光ディスク1の面振れが大きい場合には、フォーカス位置情報FPISの検出を連続的に行うことで面振れの影響を平均化する等の処理を行わなければ、フォーカス位置検出の誤差が増えることになる。ところが、SS−L/GFMTの光ディスク1では、データ領域が不連続であるのでフォーカス位置情報FPISも不連続に検出されることになり、面振れ成分の影響を受けやすい。そのために、この第1のオプション機能では、光ディスク1の面振れによる影響を低減させた状態でフォーカス位置情報FPISを検出することにより、フォーカス位置探査の精度をさらに向上させている。
図28(a)〜(e)は、リードゲート検出部32の機能を説明するためのタイミングチャートであり、図28(a)は光ディスク1の面振れ成分の波形、図28(b)はリードゲート検出部32に設定されているリードデータセクタ(ハッチングされたデータセクタ)、図28(c)はリードゲート検出部32から出力されるゲート信号RDGT、図28(d)は平均化処理部71の時間計測器7101から出力されるタイマ信号TMS、図28(e)は平均化処理部71のAND回路7109から出力されるデータ取得タイミング信号DGTSを示す。なお、ここでは、説明の便宜のため、外乱信号発生部25からの外乱信号は、1個のデータセクタのデータ領域につき1サイクルの交流信号が同期して印加されているとする。
フォーカス位置情報FPISの検出において光ディスク1の面振れ成分の影響を一番受けやすいのは、図28(a)に示されるt(0)、t(1)、t(2)、t(3)、t(4)、即ち、面振れ成分の制御残差の変化が最大となる近傍である。そして、リードゲート検出部32は、図28(b)に示されるように、面振れ成分の変化分が小さい位置、即ち、面振れ成分の極性が反転するタイミングに位置するデータセクタを除くデータセクタだけがリードデータセクタとして指定されている。このような指定においては、リードゲート検出部32は、ドライブコントローラ14からの指示に基づいて、図28(c)に示されるようなゲート信号RDGT、即ち、アドレス領域とリードデータセクタでのみ“Hi”となる信号を出力する。
このような信号RDGTは、フォーカス位置精密探査部60の平均化処理部71、より詳細には、図17に示されるAND回路7109に入力される。AND回路7109の他方の入力端子には時間計測器7101からのタイマ信号TMSが入力されている。この時間計測器7101は、図18に示されるように、アドレス信号検出部31からのゲート信号IDGATEの立ち上がりエッジから所定のウエイト時間(200μs)後に時間計測を開始し、外乱1周期分の時間(ここでは、1個のデータセクタに相当する時間)を計測し、その計測中の時間を示すタイマ信号TMSを出力する。このようなタイマ信号TMSは、図28(d)に示される通りである。
そして、これらゲート信号RDGTとタイマ信号TMSとは、AND回路7109において論理積がとられ、その結果がデータ取得タイミング信号DGTSとして第1の平均化回路7102及び第3の平均化回路7104に出力される。このデータ取得タイミング信号DGTSは、図28(e)に示されるように、面振れ成分の変化分が小さいタイミングにおけるデータ領域に対してのみ、外乱信号の1周期分だけ“Hi”となるパルス列となる。第1の平均化回路7102及び第3の平均化回路7104は、このようなデータ取得タイミング信号DGTSが”Hi”の期間において、乗算器70からのフォーカス位置情報FPISを平均化する。これによって、アドレス領域以外であり、かつ、リードデータセクタとして指定された領域においてのみ、即ち、フォーカス位置情報FPISに誤差を生じさせるアドレス領域及び面振れ成分の変化分が大きい領域を除く安定したデータ領域だけを対象として、フォーカス位置情報FPISが取得されて平均化され、フォーカス位置の精密探査に用いられることになる。
このようにして、第1のオプション機能により、面振れ成分による制御の乱れを回避した高精度なフォーカス位置の精密探査が実現される。
次に、フォーカスエラー信号FESから直接に面振れ成分を除去して得られるフォーカスエラー信号FESSに基づいてフォーカス位置の精密探査を実施する第2のオプション機能、即ち、面振れ成分除去部35の機能について説明する。
面振れ成分除去部35は、上述したように、フォーカスエラー検出部36からのフォーカスエラー信号FESに含まれる光ディスク1の面振れ成分を除去し、それ以外の周波数成分(外乱信号発生部25から印加した1kHz信号等)を通過させるフィルタであり、通過させた信号を切替え器39に出力する。
図29は、面振れ成分除去部35の詳細な構成を示すブロック図である。面振れ成分除去部35は、予め知られた面振れ成分の周波数帯域だけを通過させる帯域通過フィルタ3501と減算器3502で構成されている。減算器3502のプラス端子にはフォーカスエラー信号FESが入力され、マイナス端子には帯域通過フィルタ3501を通過した面振れ成分信号が入力されている。従って、減算器3502からの出力信号は、フォーカスエラー信号FESから面振れ成分だけが除かれた信号となる。
なお、この第2のオプション機能を動作させる場合には、ドライブコントローラ14からの指示によって、切替え器39は、面振れ成分除去部35からの信号がフォーカス位置精密探査部60に入力されるよう切り替える。従って、フォーカス位置精密探査部60は、面振れ成分除去部35から出力された信号に基づいて、フォーカス位置の精密探査を行う。
これによって、光ディスク1の面振れ等の不要外乱に起因するフォーカス位置情報FPISの検出誤差の発生が軽減される。つまり、フォーカス位置精密探査部60においては、面振れ成分除去部35によりフォーカスエラー信号FESから光ディスク1の面振れ成分が除去されたフォーカスエラー信号FESSと再生信号RFのエンベロープとから、及び、そのようなフォーカスエラー信号FESSと再生信号RFのジッタとから、フォーカス位置情報FPISが求められ、そのようなフォーカス位置情報FPISに基づくフォーカス位置の精密探査が行われるので、高精度なフォーカス位置の精密探査が実現される。
なお、本実施例にける面振れ成分除去部35は、回転する光ディスク1に生じる面振れ成分を除去するフィルタであったが、例えば、電源周波数等の不要な低周波の信号成分をも除去するような特性であってもよい。
[フォーカス位置の再探査(請求項1の発明の実施の形態)]
次に、本光ディスクドライブ装置100がフォーカス位置の探査(粗い探査及び精密な探査)を再び開始するタイミングについて記録時と再生時に分けて説明する。つまり、本光ディスクドライブ装置100のでは、標準的には、起動時、即ち、光ディスク1の回転が開始され一定回転数に達した後に、フォーカス位置の粗い探査とそれに続く精密な探査が実行される。しかし、これらの探査はそのような場合だけには限られない。つまり、ドライブコントローラ14は、内蔵された制御プログラムに従って、記録時及び再生時において、以下に述べる一定条件が満たされた状態を検出した場合にも、フォーカス位置粗探査部50及びフォーカス位置精密探査部60によるフォーカス位置探査(粗い探査及び精密探査)を開始させる。ここでは、その条件及び動作について説明する。
まず、記録時におけるフォーカス位置の再探査の開始条件について説明する。
ドライブコントローラ14は、光ディスク1へ情報を記録する場合は、光ディスク1へ記録しようとしている信号パターンに応じてレーザパワーを変調して光ディスク1上に情報を記録するようレーザパワー駆動部41等を制御する。そして記録後には、所望の記録がなされているかを検証するベリファイ動作を行う。ベリファイ動作とは、光ディスク1上に情報を記録した後、すぐそれを再生し、正しく記録できたかどうかの判定をすることである。ベリファイ動作の結果、所望の記録特性(ビットエラーレイトBER等)が得られていないと判明した場合には、記録パワーを上昇して再度記録とベリファイ動作を行う。このように、ドライブコントローラ14は、所望の記録特性が得られるまで記録パワーを上昇するように制御する。ところが、記録パワーを上昇しても再生特性の改善が見られないような記録パワーの上限値が存在する。この記録パワーの上限値は、記録パワーを上昇し過ぎても次に消去する場合に完全に消去できなくなる、すなわち記録と消去におけるパワーマージン、及び半導体レーザの性能等から決定される値である。
このような理由から、レーザパワー駆動部41には記録パワーの上限が設定されている。また、記録パワーを上昇していっても所望の記録特性が得られない場合は、記録パワー以外の要因による場合が考えられる。そこで、記録時においてフォーカス位置の再探査を開始させる条件として、記録パワーが上記上限値に到達した場合としている。これにより、上述のように記録パワーを上げてもビットエラーレイトBERが改善されなかった場合でも、フォーカス位置の再探査を行うことでビットエラーレイトBERが所定値以下になるような記録特性を得ることができる。
図30は、このような記録時おけるフォーカス位置の再探査の具体的な手順を示すフローチャートである。光ディスク1に情報を記録する場合、ドライブコントローラ14は記録するためのパワー設定値と記録信号パターンを変調部42へ送る(ステップS40)。
変調部42はドライブコントローラ14からの記録パワー設定値と記録信号パターンを受け取り、レーザパワーを変調するための信号をレーザパワー駆動部41へ送り、レーザパワー駆動部41は、変調部42からの信号に基づいてレーザパワーを変調して光ディスク1に情報を記録する(ステップS41)。なお、通常の記録パワー設定値としては、装置組み立て時に求めた記録パワー(以下「記録パワーの工程値」という。)を用いる。記録パワーの範囲は11mW〜14mWで、通常の記録パワーは12mW程である。従って、ここでは、光ディスク1へ情報を記録する時、ドライブコントローラ14は、記録パワーの工程値を設定することで光ディスク1へ情報を記録させる。
記録動作終了後は、ドライブコントローラ14は、記録が正しく行われたか検証するベリファイを行う(ステップS42)。ドライブコントローラ14は、ベリファイが正しく終了したか否か判断し(ステップS43)、正しく終了していない場合は記録パワーを所定の単位(例えば、0.5mW単位)で上昇して再度、記録を行う(ステップS44)。但し、記録を行う前に記録パワーの上限値と更新した記録パワーを比較し(ステップS45)、記録パワーが記録パワー上限値を越えていなければ記録動作を行い(ステップS41)、ベリファイを行う(ステップS42)。
ベリファイが正しく終了しない場合は(ステップS43)、以上の動作(ステップS44、S45、S41〜S43)を繰り返す。このように、記録(ステップS41)、ベリファイ(ステップS42)及び記録パワーの上昇(ステップS44、S45)を繰り返し、その結果、記録パワーが上限値を越えたら(ステップS45)、ドライブコントローラ14は、フォーカス位置粗探査部50及びフォーカス位置精密探査部60に指示することでフォーカス位置の再探査を実施させる(ステップS46、S47)。その再探査を終了したら、ドライブコントローラ14は、再び記録パワーの工程値を設定し(ステップS40)、上述の記録動作とベイリファイを行う(ステップS41、S42)。そして、ベリファイが正しく終了したら(ステップS43)、記録動作を正常に終了する(ステップS49)。一方、ベリファイが正しく終了しなかった場合は(ステップS43)、記録パワーの上昇(ステップS44、S45)、記録(ステップS41)及びベリファイ(ステップS42)を繰り返す。
もし、記録パワーが上限値を越え(ステップS45)、そして、連続して2回以上記録パワーが上限値を越えた場合は(ステップS46)、記録動作が正常に終了しなかった場合の処理を行う(ステップS48)。記録動作が正常に終了しなかった場合の処理としては、装置を再起動する等の処理を行う。
尚、ドライブコントローラ14は、起動時においてフォーカス位置を探査するために使用したテスト領域のアドレスを記憶しておき、再探査するときには、そのアドレスを参照することで、起動時に使用したテスト領域(のトラック)と同一のトラックを用いてフォーカス位置の再探査を行う。
次に、再生時におけるフォーカス位置の再探査の開始条件について説明する。
既に光ディスク1に記録されている情報を再生中にビットエラーレイトBERが増加したために、光ディスク1に記録されている情報を再生できない場合がある。これは、一度はフォーカス位置の探査をしたにも拘わらず光ヘッドの温度特性等によりフォーカス位置がずれた場合に起こる。ビットエラーレイトBERが増加すると、光ディスク1再生装置は所望の記録情報を再生するために再生のリトライを行う。この再生のリトライは、所定回数を限度として、正しく再生できるまで連続して繰り返す。ところが、ビットエラーレイトBERが大きく増加した場合には、その所定回数だけ再生のリトライを繰り返しても正しく再生できない場合がある。
そこで、再生時においてフォーカス位置の再探査を開始させるもう一つの条件として、再生リトライが連続して所定回数以上発生したときとしている。これにより、所定回数だけ再生リトライを繰り返しても再生させないことが起こった場合であっても、フォーカス位置の再探査を行うことで、次の再生時において所定回数内で再生が可能となり得る。
図31は、このような再生時おけるフォーカス位置の再探査の具体的な手順を示すフローチャートである。光ディスク1からの信号を再生する場合、ドライブコントローラ14は、復調部47からRFパルス信号PRFを受け取り(ステップS60)、16セクター毎に再生エラーチェックを行う(ステップS61)。再生エラーチェックの結果、正常に終了しなかった場合(ステップS62)、再生動作のリトライを繰り返す(ステップS63、S60〜S62)。そして、再生動作のリトライが50回を越えたら(ステップS63)、フォーカス位置粗探査部50及びフォーカス位置精密探査部60に指示することでフォーカス位置の再探査を実施させる(ステップS64、S65)。
その再探査を終了したら、ドライブコントローラ14は、上述の再生動作を行う(ステップS60、S61)。もし、再生エラーチェックが正しく終了したら(ステップS62)、再生動作を正常に終了する(ステップS67)。一方、再生エラーチェックが正しく終了しなかった場合は(ステップS62)、再生リトライを繰り返す(ステップS63、S60〜62)。
もし、リトライ回数が50回を越え(ステップS63)、そして、連続して2回以上再生リトライが50回を越えた場合は(ステップS64)、再生動作が正常に終了しなかった場合の処理を行う(ステップS66)。再生動作が正常に終了しなかった場合の処理としては、装置を再起動する等の処理を行う。
また、ドライブコントローラ14は、起動時にフォーカス位置を探査する時に使用したテスト領域のアドレスを記憶しておき、起動時に使用したテスト領域のアドレスに移動してフォーカス位置の再探査を行う。
このようなフォーカス位置の再探査により、起動時にフォーカス位置の探査を一度行ったにも関わらず光ディスクドライブ装置が動作している間にフォーカス位置が最適位置からずれて記録動作又は再生動作が正常に終了しない状態になった場合であっても、再び正常な記録動作や再生動作を行うことができる状態に復帰する。
以上、本発明に係る光ディスクドライブ装置100について、実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限られないことは勿論である。
すなわち、本実施例の光ディスクドライブ装置100は、フォーカス位置の探査方法として、2種類のモード(粗い探査と精密な探査)を有し、さらに、精密探査については、2種類のオプション機能(リードゲート検出部32と面振れ成分除去部35)を有したが、本発明は、これら全てのモードとオプション機能を有していなくてもよい。
例えば、フォーカス位置の精密探査を行う機能を有しない簡易な光ディスクドライブ装置、即ち、フォーカス位置の粗い探査だけを実行する光ディスクドライブ装置とすることもできる。図32は、フォーカス位置の粗い探査だけを実行する光ディスクドライブ装置110のフォーカス位置探査に関連する構成要素だけを示すブロック図である。本図から分かるように、この光ディスクドライブ装置110は、粗いフォーカス位置の探査を実行するための構成要素50等を有するが、精密なフォーカス位置の探査を実行するための構成要素60等を有しない。
また、フォーカス位置の粗い探査を行う機能を有しない簡易な光ディスクドライブ装置、即ち、フォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置とすることもできる。図33は、フォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置120のフォーカス位置探査に関連する構成要素だけを示すブロック図である。本図から分かるように、この光ディスクドライブ装置120は、精密なフォーカス位置の探査を実行するための構成要素25、600等を有するが、粗いフォーカス位置の探査を実行するための構成要素50等や、オプション機能に関する構成要素32、35等を有しない。図34は、図33に示された光ディスクドライブ装置120のフォーカス位置精密探査部600の詳細な構成を示すブロック図であり、図16に示されたフォーカス位置精密探査部60と比較して分かるように、平均化処理部710にはゲート信号RDGTが入力されていない。図35は、図34に示された平均化処理部710の詳細な構成を示すブロック図であり、図17に示された平均化処理部71と比較して分かるように、ゲート信号RDGTに関連する構成要素(図17のAND回路7109)がない。
また、上述の第1のオプション機能(リードゲート検出部32)を備えるフォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置とすることもできる。図36は、第1のオプション機能(リードゲート検出部32)を備えるフォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置130のフォーカス位置探査に関連する構成要素だけを示すブロック図である。本図から分かるように、この光ディスクドライブ装置130は、精密なフォーカス位置の探査を実行するための構成要素25、60等及びリードゲート検出部32を有するが、粗いフォーカス位置の探査を実行するための構成要素50等や第2のオプション機能に関する構成要素35等を有しない。
さらに、上述の第2のオプション機能(面振れ成分除去部35)を備えるフォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置とすることもできる。図37は、第2のオプション機能(面振れ成分除去部35)を備えるフォーカス位置の精密探査だけを実行する光ディスクドライブ装置140のフォーカス位置探査に関連する構成要素だけを示すブロック図である。本図から分かるように、この光ディスクドライブ装置140は、精密なフォーカス位置の探査を実行するための構成要素25、60等及び面振れ成分除去部35を有するが、粗いフォーカス位置の探査を実行するための構成要素50等や第1のオプション機能に関する構成要素32等を有しない。
また、本実施例におけるフォーカス位置の粗探査及び精密探査では、フォーカス制御及びトラッキング制御が動作し、光ディスク1の1回転毎にスチルジャンプを行わせることで、光ビームスポットを常にグルーブトラック(又はランドトラック)に追従させた状態でグルーブトラック(又はランドトラック)に対するフォーカス位置の粗探査及び精密探査を行ったが、本発明は、このようなスチルジャンプを用いる方法に限定されるものではない。例えば、スチルジャンプさせることなく、光ビームスポットを単にスパイラルに沿って連続的にトラックに追従させた状態で、フォーカス位置粗探査部50(又はフォーカス位置精密探査部60)は、L/G切替え信号LGSに基づいてランドトラックとグルーブトラックとを1回転毎に交互に切替えながら各トラックでのビットエラーレイトBER(又はフォーカス位置情報FPIS)を連続的に計測し、各トラックに対するフォーカス制御目標位置(フォーカスバランス値及びフォーカスオフセット値)を常時更新してもよい。これによって、スチルジャンプの如く複雑なトラッキング制御を行うことなくフォーカス位置の粗探査(又は精密探査)を連続的に繰り返すことが可能となる。