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JP3898311B2 - 水車またはポンプ水車 - Google Patents

水車またはポンプ水車 Download PDF

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    • Y02E10/20Hydro energy

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  • Hydraulic Turbines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水力発電所等に設置され水力エネルギーを電気エネルギーに変換する水力機械(水車またはポンプ水車)に係り、とりわけエネルギー変換効率を向上させるとともに機械の小形化、低振動化および低騒音化により運転保守の向上および運転範囲の拡大を図ることができる水力機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
図13は従来のフランシス形ランナを有する水力機械を示す図である。図13に示すように、従来のフランシス形ランナを有する水力機械は、回転軸1と、回転軸1の下端に固着されたフランシス形ランナ2とを備えている。このうちフランシス形ランナ2は、クラウン2a、バンド2bおよび複数枚の羽根2cからなっている。
【0003】
また、フランシス形ランナ2の外周には複数枚のガイドべーン3が円周方向に等間隔で配置され(図14参照)、ガイドベーン3の外周にはケーシング4が設けられている。さらに、フランシス形ランナ2の下方には吸出し管5が設けられ、フランシス形ランナ2から流出した流れの運動エネルギーを圧力エネルギーとして回収できるようになっている(ディフューザ機能)。なお、各ガイドべーン3は流量を調整するために回転可動可能な構造となっている。
【0004】
図13および図14に示す水力機械においては、水車運転時に、ケーシング4から流入した流れが全周にわたって滑らかにフランシス形ランナ2に流入し(図14の符号G参照)、これによりフランシス形ランナ2はT方向に回転する。これに対しポンプ運転時には、フランシス形ランナ2は水車運転時とは反対方向に回転し、これにより吸出し管5からケーシング4へ向かって揚水がなされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のフランシス形ランナを有する水力機械では、水車運転時に落差または流量が変化して部分負荷運転または過負荷運転になると、エネルギー変換効率が著しく低下するとともに、吸出し管5の水圧脈動の増大等により機器の振動および騒音が増大して運転保守の悪化および運転範囲の制限を招くという問題がある。
【0006】
このような問題点を解消するための従来の方法としては例えば、吸出し管の上部にランナからの旋回流れを抑制するための付帯部品を設けたり(特開昭57−108468号公報および実開昭57−78777号公報参照)、吸出し管の上部に給気するもの(特開昭58−72676号公報参照)等があり、これにより吸出し管の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図っている。
【0007】
しかしながら、このような従来の方法はいずれも対症療法的なものであり、上述した問題点を根本的に解消するものではない。すなわち、従来の方法はいずれも、最高効率点から外れた運転状態においてランナから流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーを吸出し管の上部にて減殺または抑制し、これにより吸出し管の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図るものに過ぎず、原因となる旋回速度成分自体を除去するものではない。このため、個々の条件および状況等によりその効果が異なり、またエネルギー変換効率を向上させることも難しい。
【0008】
なお、部分負荷運転時における部分負荷特性が良好な水力機械としては従来から、図15に示すような、可動羽根6cからなるプロペラ形ランナ6を有する水力機械(カプラン水車)が知られている。図15に示すように、従来のカプラン水車は、複数枚の可動羽根6cからなるプロペラ形ランナ6を備え、負荷に応じて各可動羽根6cの角度を変えることができるので、羽根が固定されたフランシス形ランナを有する水力機械よりも部分負荷運転時における部分負荷特性を向上させることが可能である。なお図15に示すカプラン水車については、図13および図14と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0009】
しかしながら、従来のカプラン水車では、羽根が動くことから強度が劣り、また羽根可動機構の構造上の問題から羽根の可動範囲が制約されるので、適用落差範囲に制限があり、このためフランシス形ランナを有する水力機械のように高落差の運転には使用することができないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、水力機械のランナから流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーを回転軸トルクとして回収することにより、エネルギー変換効率を向上させるとともに、吸出し管の水圧脈動の原因を除去することで機器の振動および騒音を低減して運転保守の向上および運転範囲の拡大を図ることができる、経済的で信頼性の高い水力機械を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、部分負荷特性が良好なカプラン水車を改良して高落差の運転でも使用できるようにした水力機械を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴は、水車またはポンプ水車であって、回転軸と、前記回転軸に連結されたランナと、前記回転軸に連結され、水車運転時に前記ランナから流出した旋回流れの流体エネルギーを回収するエネルギー回収装置とを備える。
【0013】
ここで、前記ランナをフランシス形ランナとして、基準有効落差がH nor (m)、この基準有効落差H nor (m)での最大出力がP nor (kW)、回転速度がn(rpm)であるときに、
【数3】
Figure 0003898311
で定義される水車比速度n sp を、
sp ≧4164/H nor 0.625
の範囲とすることができる。
【0014】
また、前記ランナをフランシス形ランナとし、基準有効落差がH nor (m)であるとき に、水力機械中心位置での前記ランナの入口径D 1 と出口径D e との比を
1 /D e ≦0.38+0.0216×H nor 0.625
の範囲とすることができる。
【0015】
さらに、前記ランナをフランシス形ランナとし、最高揚程がH(m)、この最高揚程H(m)での最大揚水量がQ(m 3 /s)、回転速度がn(rpm)であるときに、
【数4】
Figure 0003898311
で定義されるポンプ比速度n sq の係数k=nQ 1/2
k≧3600
の範囲にすることができる。
【0016】
本発明の第の特徴は、水車またはポンプ水車において、回転軸と、前記回転軸に連結された第1の羽根車と、前記回転軸にトルク伝達装置を介して連結されるとともに前記第1の羽根車から流出した流れが流入する第2の羽根車とを備え、前記トルク伝達装置は、前記第2の羽根車で発生したトルクが前記第1の羽根車で発生したトルクと同一方向である場合には前記第2の羽根車で発生したトルクを前記回転軸に伝達し、前記第2の羽根車で発生したトルクが前記第1の羽根車で発生したトルクと反対方向である場合には前記第2の羽根車で発生したトルクを前記回転軸に伝達しないことを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の特徴によれば、ランナの出口側に、回転軸に連結されたエネルギー回収装置を設けることにより、水車連転時に吸出し管へ流出する流れの旋回速度成分を略ゼロとすることができるので、落差および流量が変化した場合でも常に最高効率点に近い状態を保つことができるとともに、旋回流れに起因した吸出し管の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができ、このため水力機械の運転保守の向上および運転範囲の拡大を図ることができる。
【0018】
本発明の第の特徴によれば、第1の羽根車の出口側に第2の羽根車を設けるとともに、トルク伝達装置により、第2の羽根車で発生したトルクが第1の羽根車で発生したトルクと反対方向である場合に第2の羽根車で発生したトルクを回転軸に伝達しないようにするので、過負荷流量での運転時においても第1の羽根車単独の場合と同様のエネルギー変換効率を達成することができ、また部分負荷流量での運転時には第2の羽根車により第1の羽根車では回収できなかった旋回流れの流体エネルギーを回収するため、第1の羽根車単独の場合に比べてエネルギー変換効率が向上するとともに、旋回流れに起因した吸出し管の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0019】
なお本発明は、水力機械の内部損失についての次のような理解に基づいてなされたものである。以下、説明を簡単にするため、フランシス形ランナを有する水力機械についてその水車運転時における特性について述べる。
【0020】
まず、フランシス形ランナの特性は運動量理論に基づいて次式(1)により定義される。
g・ηh ・H=u1 ・vu1−u2 ・vu2 … (1)
ここで、gは重力加速度、ηh は水車効率、Hは有効落差、uはランナの周速度、vu は流れの絶対速度の周方向成分(旋回速度成分)であり、添字1,2はランナの入口および出口を意味している。
【0021】
上式(1)において、u1 およびu2 はそれぞれ、ランナの羽根の入口半径R1 、およびランナから流出した流れの代表流線の位置半径R2 から算出される。すなわち、ランナの回転速度をn(rpm)とすると、
1 =2π・R1 ・n/60 … (2)
2 =2π・R2 ・n/60 … (3)
となる。
【0022】
ここでまず、エネルギー変換効率に関連する特性について説明する。内部損失の総和と有効落差との比h/Hは次式(4)により定義される。
h/H=1−ηh … (4)
【0023】
また、上式(4)のh/Hは水力機械の各流路ごとの損失に分けると次式(5)のように表される。
h/H=(h/H)C +(h/H)G +(h/H)R +(h/H)D … (5)
【0024】
上式(5)において、添字C,G,R,Dはそれぞれケーシング、カイドベーン、ランナおよび吸出し管を意味している。なお、これら各流路ごとの損失のうち運転条件によって大幅に変化する損失は(h/H)R であり、これ以外の損失(h/H)C ,(h/H)G ,(h/H)D の変化は少ない。従って、エネルギー変換効率を向上させるためにはランナでの損失(h/H)R をいかに適切に制御するかにかかっている。
【0025】
次に、水圧脈動に関連する特性について説明する。水圧脈動についてはランナの出口側での流れが重要であり、この点について図16(a)(b)により説明する。
【0026】
図16(a)は水車特性と吸出し管に発生する渦心との関係を示す図であり、縦軸は単位有効落差当りの流量Q、横軸はランナの単位有効落差当りの回転速度nを示している。また、図16(b)はランナの出口側の流れと吸出し管に発生する渦心との関係を説明するための図である。
【0027】
ここで、図16(a)に示す「渦心なし」(後述する[0064]段落における「流れの旋回速度成分が略ゼロ(無拘束状態)」と同じ意味)の領域は図16(b)に示す絶対速度v2 の場合に対応しており、吸出し管において水がほぼ真下に流れるとともに流れの旋回速度成分が略ゼロ(上式(1)においてほぼvu2=0)であることを意味している。この状態はn/H1/2 =一定の下で水車効率ηh を最も高くできるので、「渦心なし」の領域ではランナの損失(h/H)R が最小となる。
【0028】
一方、このような「渦心なし」の状態から流量が減少した場合には、流れの相対速度w2 が減少して図16(b)に示すv2 ″の流れとなり、その結果、流れの旋回速度成分vu2はvu2=v2 ″cosα″となって周方向の値を有し、この旋回速度成分の増加につれて吸出し管の中心部に渦心が形成され、ωの角速度で触れ回る現象が起こる。渦心の直径Dωとランナの出口径De との比Dω/De についての幾つかの特性曲線を図16(a)に示すが、この比Dω/De の値が60%近くになると吸出し管に竜巻状の渦が発生していわゆるサージング状態となり、水圧脈動の急増により機器の振動および騒音が増大して運転不能に陥る危険性がある。
【0029】
また、「渦心なし」の状態から流量が増加した場合には、ランナの出口側の流れからランナの回転と反対方向の旋回流れが発生し、比Dω/De が40%近くになると吸出し管の中心部にコアー状の渦が発生し、機器の振動および騒音が増大する。
【0030】
なお、「渦心なし」の状態から流量が減少および増加した場合に発生する旋回流れの強さはvu2の大きさに比例するが、上式(1)に示されているように、旋回流れの強さはu2 とvu2との積で決定されるため、vu2が同じ大きさならu2 は可能な限り小さい方がよい。このため、ランナの出口側の代表流線の位置半径R2 も可能な限り小さい方が旋回流れの強さを弱くすることができる(上式(3)参照)。
【0031】
ここで、このような運転状態とランナの損失(h/H)R との関係については、ランナに乱流解析を適用して詳細に調べた本発明者らの研究(文献1(T.Nagafuji et al. :“A New Prediction Method on Performance of Hydraulic Turbines”, Proc. of International Conf. on Fluid Engineering, 1997/7, Vol.1, p.219 )参照)により、次のような点が明らかにされている。すなわち、ランナの損失(h/H)R は2つの成分に大別することができ、これらの成分と運転状態との関係が明らかにされている。
【0032】
ここで、(h/H)R は2つの成分Θi ,Θu の和として次式(6)のように表される。
(h/H)R =ΘR =Θi +Θu … (6)
【0033】
上式(6)において、Θi はランナの羽根まわりの損失率、Θu はランナの出口からの旋回流れによる損失率である。これら2つの損失率と吸出し管に発生する渦心との関係を図17に示す。図17に示すように、回転速度と反対方向の旋回流れが生じる領域(大流量側)ではΘi が急増し、回転速度と同一方向の旋回流れが生じる領域(小流量側)ではΘu が急増するがΘi の変化は少ないことが見出された。ここで、Θi はランナの内部で発生する損失であるので回収することば難しいが、Θu はランナによって回収されずに捨てられる損失であり、回収も比較的容易である。そして、このΘu を回収すれば、旋回流れを低減することができるので、機器の振動および騒音も低減することができる。
【0034】
以上から明らかなように、ランナの出口から流出した流れのランナの回転と同一方向の旋回速度成分による運動エネルギーを回収し、ランナの出口から流出した旋回流れを制御することにより、フランシス形ランナを有する水力機械における上述した問題点を根本的に解決することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図4は本発明による水力機械の第1の実施の形態を示す図である。
【0036】
図1に示すように、水力機械は、回転軸1と、回転軸1の下端に固着されたフランシス形ランナ2とを備えている。このうちフランシス形ランナ2は、クラウン2a、バンド2bおよび複数枚の羽根2cからなっている。
【0037】
また、フランシス形ランナ2の下端には回転軸1に連動してフランシス形ランナ2とともに回転する軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ(エネルギー回収装置)6が設けられている。なお、回転軸1の内部には可動羽根プロペラ形ランナ6の羽根6cの開度を調整するための羽根可動機構が内蔵されており、水車運転時にフランシス形ランナ2から流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーを回転軸トルクとして回収できるようになっている。
【0038】
さらに、フランシス形ランナ2の外周には複数枚のガイドべーン3が円周方向に等間隔で配置され、またガイドベーン3の外周にはケーシング4が設けられている。さらにまた、ランナ2の下方には吸出し管5が設けられ、フランシス形ランナ2から流出した流れの運動エネルギーを圧力エネルギーとして回収できるようになっている(ディフューザ機能)。なお、各ガイドべーン3は流量を調整するために回転可動可能な構造となっている。
【0039】
次に、このような構成からなる本発明の第1の実施の形態の作用について説明する。
【0040】
図1に示す水力機械においては、水車運転時には、ケーシング4から流入した流れが全周にわたって滑らかにフランシス形ランナ2に流入し、これによりフランシス形ランナ2が回転する。このとき可動羽根プロペラ形ランナ6は、フランシス形ランナ2から流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーを回収する。
【0041】
ここで水車運転時には、可動羽根プロペラ形ランナ6により、落差および流量が変化した場合でも吸出し管5の入口において水が常にほぼ真下に流れるよう制御することができるので、常に最高効率点に近い状態を保つことができるとともに、旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。なお、このような構成からなる水力機械の問題点としては、フランシス形ランナ2の回転と反対方向の旋回速度成分がある場合に流体エネルギーを回収することができず、かえって損失の増大を招くことが挙げられる。従って、本発明の第1の実施の形態においては、フランシス形ランナ2の設計および運転範囲の設定を適切に行って、吸出し管5の入口における流れがフランシス形ランナ2の回転と同一方向の旋回速度成分を有するようにする必要がある。
【0042】
以下、図2により、フランシス形ランナを有する水力機械を水車運転させる場合におけるフランシス形ランナ2の設計および運転範囲について説明する。なお図2において、縦軸は単位有効落差当りの流量Q、横軸はランナの単位有効落差当りの回転速度nを示している。
【0043】
図2に示すように、従来のフランシス形ランナを有する水力機械においては「渦心なし」の運転点(曲線a)の上側および下側(曲線aよりも、Q/√Hの値が大きい領域を上側とし、Q/√Hの値が小さい領域を下側とする)に運転範囲を設定している。ここで、領域Aは従来のフランシス形ランナを有する水力機械の運転範囲であり、曲線aはフランシス形ランナの出口側で渦心が発生しないような運転点を示している。これに対し、本発明の第1の実施の形態におけるフランシス形ランナにおいては、「渦心なし」の運転点(曲線b)の下側に運転範囲を設定している。ここで、領域Bは本発明の第1の実施の形態における水力機械の運転範囲であり、曲線bは本発明の第1の実施の形態におけるフランシス形ランナ2の出口側で渦心が発生しないような運転点を示している。
【0044】
なお、このように運転領域(領域B)を設定しても、本発明の第1の実施の形態における水力機械では、フランシス形ランナ2の出口側に設けられた可動羽根プロペラ形ランナ6により、フランシス形ランナ2から流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーが回収されるので、従来の水力機械のように部分負荷運転によって機器の振動および騒音が発生したり、エネルギー効率が低下したりすることはない。
【0045】
ここで、本発明の第1の実施の形態における水力機械においては、従来の水力機械に比べて「渦心なし」の運転点を大流量側に移行させ、高回転速度領域にて運転を行うことが好ましい。このような設計変更を行った場合には通常、水力機械のキャビテーション特性が悪化するが、本発明の第1の実施の形態における水力機械では、フランシス形ランナ2の出口側に設けられた可動羽根プロペラ形ランナ6によりフランシス形ランナ2の出口側の圧力を高めることができるので、従来の水力機械と同程度のキャビテーション特性を保つことができる。
【0046】
図2において、Hmax およびHmin は、回転速度が一定であるので落差が変化する範囲の最高有効落差および最低有効落差の運転状態を示している。また縦軸は、それぞれの落差における最大出力を得るための流量の範囲を示している。ここで、機器の最高効率を達成しうる基準有効落差をHnor (m)、この基準有効落差がHnor (m)での最大出力をPnor (kW)、回転速度をn(rpm)とすると、
【数5】
Figure 0003898311
で定義される水車比速度nspが従来の水力機械よりもかなり大きな値となるので、機器を小形化および高速化する必要が生じる。このような機器の小形化および高速化に伴ってフランシス形ランナの振動強度が低下するという問題が生じるが、この点については既に本発明者らにより解決されている(特公昭62−19589号公報参照)。なお、フランシス形ランナの適切な羽根形状を得るためには、「渦心なし」の運転点を上側に移行させるときに流量および回転速度の両方を連動させて変更することが必要となる。従来の水力機械と同程度の運転範囲を確保するには、少なくとも流量は1.2倍、回転速度は1.1倍にする必要がある。nsp=n×Qであるから、水車比速度nspは1.1×1.2= . 32倍まで上げることになる。従来の水力機械における落差に対する比速度の実績は文献2(F. de Siervo and F. de Leva :“Modern Trends in Selection and Designing Francis Turbines ”, Water Power & Dam Construction, 1976/8, Vol.28, No.8, p.28)に記載されており、
sp=3470/Hnor 0.625 … (7)
であるから、上式(7)の1.2倍に相当する式として、
sp=4164/Hnor 0.625 … (8)
が得られる。従って、上式(8)で求められる値を下限とした水車比速度nspのフランシス形ランナを利用することにより、従来の水力機械よりも小形化および高速化を図ることができる。
【0047】
また、このようにして求められる水車比速度nspと、図1に示す水車中心位置でのフランシス形ランナ2の入口径D1 とランナ出口径De との比D1 /De とは密接な関係にある。このような実績は上記文献2に記載されており、
1 /De =0.4+94.5/nsp … (9)
となる。
【0048】
本発明の第1の実施の形態におけるフランシス形ランナ2はその出口側に可動羽根プロペラ形ランナ6の回転軸および羽根可動機構があり、出口の断面積が狭められるので、必要断面積を確保するために、またフランシス形ランナ2の形状を高比速度に適したものとするために、この比D1 /De を従来の水力機械よりも小さくすることが必要である。図1に示す可動羽根プロペラ形ランナ6の内径Di とフランシス形ランナ2の出口径De との比Di /De は羽根可動機構を設けるためには最低でも0.3が必要となる。これによる断面積の縮小は約10%であるので、従来の水力機械と同程度の断面積を確保するにはDe を約5%増大させる必要がある。従って、D1 /De を従来の実績の0.95倍とし、上式(8)を上式(9)に代入することにより、
1 /De =0.95×(0.4+94.5/(4164/Hnor 0.625 ))
=0.38+0.0216×Hnor 0.625 … (10)
が得られる。従って、上式(10)で求められる値を上限とした寸法を採用することにより、従来の水力機械よりも小形化および高速化を図ることができる。
【0049】
なお、以上においては図1に示す水力機械を水車運転させる場合について説明してきたが、図1に示す水力機械を可逆式ポンプ水車としてポンプ運転させる場合等においても同様に適用することができる。このような可逆式ポンプ水車においては水車運転とポンプ運転とでフランシス形ランナ2の回転方向が反対となるが、このような可逆式ポンプ水車においては同一の回転速度nで水車運転およびポンプ運転のそれぞれの最高効率点での落差または揚程にずれが生じる。
【0050】
図3にこのような可逆式ポンプ水車の特性を示す。図3に示すように、可逆式ポンプ水車は、水車運転時におけるフランシス形ランナ2の出口側の旋回流れが常にフランシス形ランナ2の回転と同一方向の旋回速度成分を有するような領域で使用される。従って、上述した説明から明らかなように、可動羽根プロペラ形ランナ6がフランシス形ランナ2から流出した流れの旋回速度成分による運動エネルギーをより有効に回収する。
【0051】
一方、フランシス形ランナ2を水車運転時とは反対方向に回転させて吸出し管5からケーシング4へ揚水を行うポンプ運転時には、可動羽根プロペラ形ランナ6をポンプとして利用することにより、フランシス形ランナ2へ流入する吸込み流れを制御することができるので、キャビテーション特性を改善するとともに、軸入力を調整することができる。なお、最近開発されて利用されつつある可変速ポンプ水車によっても上述した効果を達成することはできるが、本発明の第1の実施の形態における水力機械では、一定速度機によって上述した効果を達成することができる。
【0052】
また、キャビテーション特性を改善することができるので、上述した水車運転の場合と同様に機器の小形化および高速化を図ることができる。なお、従来の水力機械においては、ポンプの最高揚程がH(m)、この最高揚程H(m)での最大揚水量がQ(m3 /s)、回転速度がn(rpm)であるときに、
【数6】
Figure 0003898311
で定義されるポンプ比速度nsqの係数k=nQ1/2 の下限がk=3000である(特公昭62−44099号公報参照)。従って、上述した水車運転の場合と同様の理由により上式(11)の1.2倍に相当するk=3600以上のフランシス形ランナを利用することにより、機器の小型化および高速化を図って経済性をさらに高めることができる。
【0053】
このように本発明の第1の実施の形態によれば、フランシス形ランナ2の出口側に、回転軸1に連結された可動羽根プロペラ形ランナ6を設けることにより、水車連転時に吸出し管5へ流出する流れの旋回速度成分を略ゼロとすることができるので、落差および流量が変化した場合でも常に最高効率点に近い状態を保つことができるとともに、旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0054】
また、ポンプ運転時においても可動羽根プロペラ形ランナ6をポンプとして利用することにより、フランシス形ランナ2へ流入する吸込み流れを制御することができるので、キャビテーション特性を改善するとともに、軸入力を調整することができる。
【0055】
さらに、フランシス形ランナ2の比速度を従来の水力機械のものよりも大幅に高めることにより、機器の小形化および高速化を図ることができ、このため機器全体として可動羽根プロペラ形ランナ6の付加的費用を相殺し得るだけのコストダウンを図ることができる。
【0056】
さらにまた、水圧脈動の減少、機器の振動および騒音の低減、およびキャビテーション特性の向上等を図ることができるので、運転保守の向上および運転範囲の拡大を図ることができる。
【0057】
なお、上述した第1の実施の形態においては、エネルギー回収装置として軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ6を用いているが、図4に示すように、エネルギー回収装置として斜流形の可動羽根ランナ7を用いるようにしてもよい。なお、これらの軸流形および斜流形のランナは、落差によって使い分けるようにするとよく、例えば高落差の運転では斜流形を用い、低落差の運転では軸流形を用いるようにするとよい。
【0058】
また上述した第1の実施の形態においては、高圧側の羽根車としてフランシス形ランナを用いているが、これ以外にも、例えば斜流形または軸流形の固定羽根ランナを用いることができる。この場合でも、羽根が固定されていれば、設計流量から離れた運転状態においてはフランシス形ランナの場合と同様な旋回流れが発生するので、上述した本発明の第1の実施の形態を同様にして適用することができる。
【0059】
また、エネルギー回収装置である軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ6または斜流形の可動羽根ランナ7は定期的に交換または修理する必要がある。一般に、ランナの交換または修理は回転軸1の上部空間を開放してランナを外部に持ち出すことにより行うが、この方法では工事期間および費用がかなりかかる。上述した第1の実施の形態においては、ランナは半永久的に使用可能であるが、エネルギー回収装置である軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ6または斜流形の可動羽根ランナ7はキャビテーションにより材料の劣化等が発生しやすい。従って、上述した第1の実施の形態における水力機械においては、吸出し管5の上部に搬出口を設けるとともに、軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ6または斜流形の可動羽根ランナ7の羽根を容易に分解できる構造にするとよい。
【0060】
第2の実施の形態
次に、図5乃至図7により、本発明による水力機械の第2の実施の形態について説明する。本発明による第2の実施の形態は、エネルギー回収装置として軸流形の固定羽根プロペラ形ランナを用いる点を除いて、他は図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。本発明の第2の実施の形態において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図5に示すように、第1の羽根車であるフランシス形ランナ2の下端には回転軸1に連動してフランシス形ランナ2とともに回転する第2の羽根車である軸流形の固定羽根プロペラ形ランナ(エネルギー回収装置)8が設けられている。ここで固定羽根プロペラ形ランナ8は、複数枚の固定羽根8cを有している。
【0062】
次に、このような構成からなる本発明の第2の実施の形態の作用について説明する。なお図5において、点線Sは代表流線面の断面を示し、フランシス形ランナ2の出口における代表流線面Sの位置半径をR2 、固定羽根プロペラ形ランナ8の出口における代表流線面Sの位置半径をR2dとする。
【0063】
まず、図5に示す水力機械の設計流量での運転時における作用について説明する。図6は図5に示す水力機械の設計流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図である。図6において、符号2c,8cはそれぞれ図5に示す代表流線面Sに沿って平面に展開したフランシス形ランナ2の羽根および固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根の断面を示している。また図6において、符号w2 は各ランナ2,8の出口における流れの相対速度(ここでは羽根2c,8cに沿って水が流出している)を示し、符号u2 は各ランナ2,8の代表流線面における周速度を示し、符号v2 は各ランナ2,8の出口における流れの絶対速度を示している。また、符号v1 ,w1 ,u1 はそれぞれフランシス形ランナ2の入口における流れの絶対速度、流れの相対速度およびフランシス形ランナ2の周速度を示している。
【0064】
図6に示すような設計流量での運転状態においては、各ランナ2,8から流出した流れの旋回速度成分が略ゼロ(無拘束状態)になるように各ランナ2,8の羽根2c,8cの角度が設計されるので、図6に示す各羽根2c,8cから流出した流れの絶対速度v2 の旋回速度成分vu2は略ゼロになり、すなわち流れの絶対速度v2 は中心を向いている。このため、固定羽根プロペラ形ランナ8においては、羽根8cに流入する流れも羽根8cから流出する流れも角運動量が略ゼロの流れであり、また羽根8cの前後で流れの角運動量が変化しないので、角運動量保存の法則から、羽根8cはトルクを発生しないことになる。従って、設計流量での運転時には固定羽根プロペラ形ランナ8は仕事をしていないことになる。なお、水力機械全体の効率は、固定羽根プロペラ形ランナ8の流動損失分だけ低下することになるが、固定羽根プロペラ形ランナ8の流動損失は実用上無視できる程度であるので、水力機械全体の効率はフランシス形ランナ2単独の場合と略同一になる。
【0065】
次に、図5に示す水力機械の部分負荷流量での運転時における作用について説明する。図7は図5に示す水力機械の部分負荷流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図である。なお図7においては、図6と同一部分および同一量には同一符号を付している。
【0066】
図7に示すような部分負荷流量での運転状態においては、フランシス形ランナ2の羽根2cから流出した流れはフランシス形ランナ2の回転と同一方向の旋回速度成分を有する流れになる。すなわち、流量の減少により流れの絶対速度v1 ,v2 のメリディアン方向成分(周速度と直交する方向の成分)が減少する一方で、フランシス形ランナ2の周速度u1 ,u2 は変化しないので、特にフランシス形ランナ2の羽根2cの出口においては流れの絶対速度v2 はフランシス形ランナ2の回転と同一方向の旋回速度成分vu2を有するようになる。
【0067】
一方、固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根8cの出口においても流量の減少により流れの旋回速度成分vu2が発生するが、図5に示すように、固定羽根プロペラ形ランナ8の代表流線面Sの位置半径R2dがフランシス形ランナ2の代表流線面Sの位置半径R2 より小さいので、上式(1)により流れの強さu2 ・vu2は小さくなる。このことは、固定羽根プロペラ形ランナ8において流れの角運動量が減少したことを意味し、角運動量保存の法則から、羽根8cはトルクを発生することになる。従って、水力機械全体としてはフランシス形ランナ2単独の場合よりもトルクが大きくなる。ここで、トルクが大きくなるということは、水車効率が向上することを意味し、また流れの旋回速度成分が低減するので、フランシス形ランナの部分負荷運転時に問題になっていた旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0068】
このように本発明の第2の実施の形態によれば、フランシス形ランナ2の出口側に、固定羽根プロペラ形ランナ8を設けた場合でも、上述した条件を満たすように固定羽根プロペラ形ランナ8を設計することにより、設計流量の運転時にはフランシス形ランナ2単独の場合と同様のエネルギー変換効率を達成することができ、また部分負荷流量での運転時には固定羽根プロペラ形ランナ8がフランシス形ランナ2では回収できなかった旋回流れの流体エネルギーを回収するため、フランシス形ランナ2単独の場合に比べてエネルギー変換効率が向上するとともに、旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0069】
なお上述した第2の実施の形態においては、設計流量での運転時における固定羽根プロペラ形ランナ8の無拘束状態での流動損失(損失水頭)を小さくするために、固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根8c面の摩擦損失を低減するよう羽根8cの枚数はフランシス形ランナ2の羽根2cの枚数以下とすることが好ましい。また、部分負荷流量での運転時におけるフランシス形ランナ2から流出した旋回流れの流体エネルギーを回収するため、固定羽根プロペラ形ランナ8の出口における代表流線面Sの位置半径R2dはフランシス形ランナ2の出口における代表流線面Sの位置半径R2 よりも小さくすることが好ましい。これは、フランシス形ランナ2および固定羽根プロペラ形ランナ8の回転速度nが同一であるため、上式(1)の周速度u2 を小さくするためには、固定羽根プロペラ形ランナ8の出口における代表流線面Sの位置半径R2dを小さくするしかないためである(上式(3)参照)。このため、固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根8cの最大径はフランシス形ランナ2の羽根2cの最大径よりも小さくすることが好ましい。
【0070】
また上述した第2の実施の形態においては、第1の羽根車としてフランシス形ランナを用いているが、これ以外にも、例えば斜流形または軸流形の固定羽根ランナを用いることができる。この場合でも、羽根が固定されていれば、設計流量から離れた運転状態においてはフランシス形ランナの場合と同様な旋回流れが発生するので、上述した本発明の第2の実施の形態を同様にして適用することができる。
【0071】
第3の実施の形態
次に、図8および図9により、本発明による水力機械の第3の実施の形態について説明する。本発明による第3の実施の形態は、エネルギー回収装置である軸流形の固定羽根プロペラ形ランナをトルク伝達装置を介して回転軸に連結する点を除いて、他は図5乃至図7に示す第2の実施の形態と略同一である。本発明の第3の実施の形態において、図5乃至図7に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
図8に示すように、第1の羽根車であるフランシス形ランナ2の下端には回転軸1に連動してフランシス形ランナ2とともに回転する第2の羽根車である軸流形の固定羽根プロペラ形ランナ(エネルギー回収装置)8が設けられている。ここで、固定羽根プロペラ形ランナ8はトルク伝達装置9を介して回転軸1に連結され、トルク伝達装置9は、固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクが発電運転中のフランシス形ランナ2で発生したトルクと同一方向である場合には固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクを回転軸1に伝達し、固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクが発電運転中のフランシス形ランナ2で発生したトルクと反対方向である場合には固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクを回転軸1に伝達しないようになっている。
【0073】
次に、このような構成からなる本発明の第3の実施の形態の作用について説明する。なお、設計流量および部分負荷流量での運転時における作用は図5乃至図7に示す第2の実施の形態の場合と略同一であるので、以下、過負荷流量での運転時における作用について説明する。図9は図8に示す水力機械の過負荷流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図である。なお図9においては、図6と同一部分および同一量には同一符号を付している。
【0074】
図9に示すような過負荷流量での運転状態においては、フランシス形ランナ2の羽根2cから流出した流れはフランシス形ランナ2の回転と反対方向の旋回速度成分vu2を有する流れになる。一方、固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根8cから流出した流れは、旋回速度成分が略ゼロの流れになる。このことは、固定羽根プロペラ形ランナ8の羽根8cの前後において固定羽根プロペラ形ランナ8の回転と反対方向の角運動量が減少したことになり、その結果、固定羽根プロペラ形ランナ8は回転と反対方向のトルクを発生することとなる。このため、このような場合には、フランシス形ランナ2と固定羽根プロペラ形ランナ8とを直結している図5乃至図7に示す第2の実施の形態では、水力機械全体で発生するトルクが減少し、エネルギー変換効率が低下することになる。しかしながら、本発明の第3の実施の形態では、トルク伝達装置9により、固定羽根プロペラ形ランナ8の回転と反対方向のトルクが発生する場合にはフランシス形ランナ2と固定羽根プロペラ形ランナ8との連結を解除するので、固定羽根プロペラ形ランナ8は無拘束状態となり、フランシス形ランナ2よりも遅い回転速度で回る。
【0075】
このように本発明の第3の実施の形態によれば、フランシス形ランナ2の出口側に固定羽根プロペラ形ランナ8を設けた水力機械において、トルク伝達装置9により、固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクが発電運転中のフランシス形ランナ2で発生したトルクと反対方向である場合には固定羽根プロペラ形ランナ8で発生したトルクを回転軸1に伝達しないようにするので、過負荷流量の運転時においてもフランシス形ランナ2単独の場合と同様のエネルギー変換効率を達成することができる。また、部分負荷流量での運転時には固定羽根プロペラ形ランナ8によりフランシス形ランナ2では回収できなかった旋回流れの流体エネルギーを回収するので、フランシス形ランナ2単独の場合に比べてエネルギー変換効率が向上するとともに、旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0076】
なお上述した第3の実施の形態においては、第1の羽根車としてフランシス形ランナ2を用いているが、これ以外にも、例えば斜流形または軸流形の固定羽根ランナを用いることができる。この場合でも、羽根が固定されていれば、設計流量から離れた運転状態においてはフランシス形ランナ2の場合と同様な旋回流れ、すなわち過負荷流量での運転時にはランナの回転と反対方向の旋回流れ、部分負荷流量での運転時にはランナの回転と同一方向の流れが発生するので、上述した本発明の第3の実施の形態を同様にして適用することができる。
【0077】
参考例
次に、図10乃至図12により、本発明による水力機械の参考例について説明する。なお図10においては、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
図10に示すように、水力機械は、回転軸1と、回転軸1に連結された軸流形の固定羽根プロペラ形ランナ(第1の羽根車)10および同じく軸流形の可動羽根プロペラ形ランナ(第2の羽根車)6とを備えている。ここで可動羽根プロペラ形ランナ6は、負荷に応じて羽根6cの角度を変えることができる。なお、固定羽根プロペラ形ランナ10の羽根10cの枚数は可動羽根プロペラ形ランナの羽根6cの枚数以下となっている。
【0079】
次に、このような構成からなる本発明の参考例の作用について説明する。
【0080】
水力機械全体の有効落差をH(m)、回転速度をn(rpm)、最大流量をQmax (m3 /s)とすると、上流側にある固定羽根プロペラ形ランナ10が有効落差Hの一部である落差H1 を負担し、次いで可動羽根プロペラ形ランナ6が有効落差Hの一部である落差H2 を負担する。ここで、H1 +H2 =Hであるので、可動羽根プロペラ形ランナ6に作用する落差H2 は水力機械全体の有効落差Hと比較して低くなる。
【0081】
図11および図12はそれぞれ可動羽根プロペラ形ランナ6および固定羽根プロペラ形ランナ10の効率特性を示す図である。図11および図12において、縦軸は効率η(%)を、横軸は流量Q(m3 /s)を示している。
【0082】
図11に示すように、可動羽根プロペラ形ランナ6の効率特性は、可動羽根プロペラ形ランナ6単体により落差H2 で運転した場合の効率特性と略同一となる。一方、固定羽根プロペラ形ランナ10の効率特性は、図12に示すように、その最高効率点が水力機械の最大流量Qmax より大きいところにあり、最大流量Qmax 以下の流量においては部分負荷運転となる。このため、固定羽根プロペラ形ランナ10から流出した流れには常に固定羽根プロペラ形ランナ10の回転と同一方向の旋回流れが存在し、これが下流側の可動羽根プロペラ形ランナ6の入力エネルギーとなる。従って、固定羽根プロペラ形ランナ10の羽根10cの角度を調整し、Qmax 以下の流量で適切な旋回流れが固定羽根プロペラ形ランナ10から流出するよう設計しておけば、可動羽根プロペラ形ランナ6は可動羽根プロペラ形ランナ6単独の場合と同様の性能を発揮し、設計流量での運転時には水力機械の水吸出し管5に旋回速度成分が略ゼロの流れが流出する。また、水力機械全体の効率ηは各ランナ10,6の効率η1 ,η2 に落差H1 ,H2 をかけた荷重平均で求められる。すなわち、
η=(H1 ・η1 +H2 ・η2 )/H … (12)
となる。このため、流量の減少により固定羽根プロペラ水車10の効率が低下するので、水力機械全体の効率は可動羽根プロペラ形ランナ6単独の場合よりは低下するが、例えばフランシス形ランナを有する水力機械のような固定羽根の水車と比較すれば、部分負荷流量での運転時には効率の低下は少なく、また吸出し管5に流出する旋回流れも少ないので、旋回流れに起因した吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0083】
また、図15に示すような従来のカプラン水車においては、可動羽根を動かすことから適用落差に限界があったが、本発明の参考例によれば、可動羽根プロペラ形ランナ6に作用する落差H2 は水力機械全体の落差Hより低いので、従来は固定羽根からなるフランシス水車に適用されていた50〜100mの落差範囲にも可動羽根のカプラン水車を適用できるようになり、部分負荷流量での運転時間の長い水力発電所等においては全体的な発電量を固定羽根のフランシス水車等を適用した場合に比べて大幅に増大することができる。
【0084】
このように本発明の参考例によれば、可動羽根プロペラ形ランナ6の上流側に固定羽根プロペラ形ランナ10を設け、固定羽根プロペラ形ランナ10の羽根10cの枚数を可動羽根プロペラ形ランナ6の羽根6cの枚数以下としているので、部分負荷特性の良好な可動羽根プロペラ形ランナ6の適用落差の範囲を拡大することができ、このため水力発電所等における全体的な発電量を増大させることができるとともに、部分負荷流量での運転時における旋回流れに起因すた吸出し管5の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができる。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、落差および流量が変化した場合でも常に最高効率点に近い状態を保つことができるとともに、旋回流れに起因した吸出し管の水圧脈動や機器の振動および騒音の低減を図ることができ、このため運転保守の向上および運転範囲の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による水力機械の第1の実施の形態を示す図。
【図2】 図1に示す水力機械の運転範囲を説明するための図。
【図3】 ポンプ水車の特性を説明するための図。
【図4】 図1に示す水力機械の変形例を示す図。
【図5】 本発明による水力機械の第2の実施の形態を示す図。
【図6】 図5に示す水力機械の設計流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図。
【図7】 図5に示す水力機械の部分負荷流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図。
【図8】 本発明による水力機械の第3の実施の形態を示す図。
【図9】 図8に示す水力機械の過負荷流量での運転時における代表流線面上の流れを示す図。
【図10】 本発明による水力機械の参考例を示す図。
【図11】 図10に示す水力機械の可動羽根プロペラ形ランナの効率特性を示す図。
【図12】 図10に示す水力機械の固定羽根プロペラ形ランナの効率特性を示す図。
【図13】 従来のフランシス形ランナを有する水力機械を示す図。
【図14】 図13に示す水力機械のフランシス形ランナの作用を説明するための図。
【図15】 従来の軸流形可動羽根からなる水力機械(カプラン水車)を示す図。
【図16】 従来の水力機械における吸出し管の渦心および水圧脈動の発生要因を説明するための図。
【図17】 従来の水力機械におけるランナ損失を説明するための図。
【符号の説明】
1 回転軸
2 フランシス形ランナ
3 カイドベーン
4 ケーシング
5 吸出し管
6 可動羽根プロペラ形ランナ
7 斜流形可動羽根ランナ
8 固定羽根プロペラ形ランナ
9 トルク伝達装置
10 固定羽根プロペラ形ランナ

Claims (6)

  1. 回転軸と、
    前記回転軸に連結されたランナと、
    前記回転軸に連結され、水車運転時に前記ランナから流出した旋回流れの流体エネルギーを回収するエネルギー回収装置とを備え
    前記ランナはフランシス形ランナであり、基準有効落差がHnor (m)、この基準有効落差Hnor (m)での最大出力がPnor (kW)、回転速度がn(rpm)であるときに、
    Figure 0003898311
    で定義される水車比速度nsp
    sp≧4164/Hnor 0.625
    の範囲にあることを特徴とする水車またはポンプ水車。
  2. 回転軸と、
    前記回転軸に連結されたランナと、
    前記回転軸に連結され、水車運転時に前記ランナから流出した旋回流れの流体エネルギーを回収するエネルギー回収装置とを備え
    前記ランナはフランシス形ランナであり、基準有効落差がHnor (m)であるときに、水力機械中心位置での前記ランナの入口径D1 と出口径De との比が
    1 /De ≦0.38+0.0216×Hnor 0.625
    の範囲にあることを特徴とする水車またはポンプ水車。
  3. 前記旋回流れは前記ランナの回転と同一方向の旋回速度成分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の水車またはポンプ水車。
  4. 回転軸と、
    前記回転軸に連結されたランナと、
    前記回転軸に連結され、水車運転時に前記ランナから流出した旋回流れの流体エネルギーを回収するとともに、ポンプ運転時に前記ランナへ流入する吸込み流れを制御するエネルギー回収装置とを備え
    前記ランナはフランシス形ランナであり、最高揚程がH(m)、この最高揚程H(m)での最大揚水量がQ(m3 /s)、回転速度がn(rpm)であるときに、
    Figure 0003898311
    で定義されるポンプ比速度nsqの係数k=nQ1/2
    k≧3600
    の範囲にあることを特徴とする水車またはポンプ水車。
  5. 前記エネルギー回収装置は前記回転軸に連動して前記ランナとともに回転する軸流形または斜流形の可動羽根からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水車 またはポンプ水車。
  6. 水車またはポンプ水車において、
    回転軸と、
    前記回転軸に連結された第1の羽根車と、
    前記回転軸にトルク伝達装置を介して連結されるとともに前記第1の羽根車から流出した流れが流入する第2の羽根車とを備え、
    前記トルク伝達装置は、前記第2の羽根車で発生したトルクが前記第1の羽根車で発生したトルクと同一方向である場合には前記第2の羽根車で発生したトルクを前記回転軸に伝達し、前記第2の羽根車で発生したトルクが前記第1の羽根車で発生したトルクと反対方向である場合には前記第2の羽根車で発生したトルクを前記回転軸に伝達しないことを特徴とするポンプまたはポンプ水車。
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