JP3891238B2 - 防菌・防黴性無機質複合化木材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材に防菌・防黴性を付与した無機質複合化木材を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
木材を利用するにあたって、その特徴である「燃える」、「腐る」、「寸法が狂う」といった性質が欠点となり、そのために利用が制限されることが多い。特にここでは「腐る」性質に対する改良に関して、防菌・防黴性、防腐性付与に関する従来技術について述べる。
【0003】
現在使用されている防腐(防菌・防黴性)処理の中で、古くから用いられているものの一つにクレオソート油がある。その主成分は芳香族炭化水素であり、無数の化合物を含む混合物である。クレオソート油防腐処理木材の用途は枕木や電柱などであり、木材防腐剤としては安価で浸透性がよく、防腐効力に優れているなどの長所を有する反面、悪臭や眼、皮膚への刺激などの問題がある。また、溶脱して周辺の土壌などを汚染したり、河川等への流出による魚類などへの魚毒性の問題など、環境に与える負荷は避け難い。
【0004】
また、現在最も多く使用されているエクステリアウッドは、CCA加圧注入処理木材であり、CCAは基剤として銅(Cu)、クロム(Cr)、ヒ素(As)を含む水溶性の薬剤で、処理木材の性能は大変優れており、世界中で広く使用されている。しかしながら、クロム、ヒ素といった元素が含まれているため、処理剤の安全性について懸念され、既に使用を制限している国もある。また、CCA処理木材が公園や校庭の遊具に多く使用され、皮膚接触による生体への影響も危惧されている。更に経口毒性に関しては、乳幼児用の屋外遊具としての使用を考えると、十分にその毒性を考慮する必要がある。一方、近年酸性雨が世界的な環境破壊の原因として問題となっているが、CCA処理木材の成分が酸性雨によって溶出することが予想される。更に、CCA処理木材が廃棄で焼却される際には、CCA成分からヒ素化合物が三酸化二ヒ素として昇華し、大気中に放出されると同時に、微粒子として銅やクロムの酸化物が放出される。従って、安全上の立場からEPA(米国環境保護庁)は廃棄した処理材を焚火や暖炉に用いてはならないとし、また英国では処理材を野外裸火する場合には、人家より100m以上離れることが要求されている。
【0005】
このようにクレオソート油とCCAは環境への負荷が大きく、地球環境の諸問題がクローズアップされてきた昨今、これらの使用には十分な配慮が必要である。そこで、注入用保存薬剤として急激にそのシェアを伸ばしているのがDDAC(ジデシルジメチルアンモニウムクロリド)である。これは金属塩を含んだもので、CCAにおいて懸念されている廃棄の問題がクリアされることで、その需要が増大しているものとみられる。しかしながら、その効力の持続性には問題があり、半永久的な木材中への固定は実現していない。このほか、表面処理用防腐剤としてのナフテン酸金属塩は加圧注入用薬剤として多く用いられており、安全性の高い薬品として知られているが、ここでも効力の持続性に問題があり、主に土台処理用として使用されている(木材科学講座5,環境,海青社,1995)。一方、昨夏の病原性大腸菌O−157による集団食中毒の発生でみられるように、防菌・防黴性、殺菌性などに対する社会的要求は著しく高く、その半永久的な効果の持続と安全性を保持した材料や処理剤の開発が急務である。
【0006】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、環境汚染性、薬剤溶剤性などの欠点を改良し、高機能性を有し、防菌・防黴性能を長期にわたり安定して発揮する無機質複合化木材の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、木材のもつ本来の風合いを損なうことなく、新しい防菌・防黴性木材を容易かつ確実に製造し得る全く新しい技術として、下記平均組成式(1)のシロキサンオリゴマー溶液を木材に処理し、加熱することにより、オリゴマー中のアルコキシドやシラノールは加水分解と自己重縮合により金属酸化物のゾルとなり、更に反応が進んでゲルとなり、この反応により木材の金属酸化物による無機質複合化が実現することを見出した。更にこの無機質複合化木材の製造方法は、用いるシロキサンオリゴマーの蒸気圧が低いことから、安全作業環境に配慮することなく、水の作用によるケイ素酸化物の溶出が防止され、防菌・防黴性能を長期にわたり、安定して発揮し得ることを知見した。
【0008】
即ち、木材に、下記平均組成式(1)
(R1 aR2SiO(3-a)/2)i(R3 bR4SiO(3-b)/2)j(R5 cR6SiO(3-c)/2)k(SiO4/2)m …(1)
〔式中、R1,R3,R5は水素原子又は炭素数1〜10のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。R2は炭素数1〜18のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18のアミノ基含有一価有機基であり、R6は下記一般式(2)
〔−(CH2)3NR7(CH3)2〕+X- …(2)
(R7は炭素数11〜22の一価炭化水素基、Xはハロゲン原子を示す。)
で示される一価有機基である。a,b,cは0又は1であり、i,j,mは0又は正数、kは正数であるが、iとmとが同時に0となることはない。〕
で示され、末端が水酸基及び/又は炭素数1〜4のアルコキシ基であるシロキサンオリゴマー溶液を処理し、次いで加水分解もしくは加熱分解させ、更に重縮合、硬化させることによって、防菌・防黴性有機ケイ素化合物、好ましくは更に撥水性有機ケイ素化合物を含むシリコーンレジンが該木材中に付与され、防菌・防黴性を有する無機質複合化木材が得られることを見出した。この場合、撥水性有機ケイ素化合物によって付与した撥水性能により、防菌・防黴性能がより一層向上することが認められ、更に好ましくは、アミノ基含有有機ケイ素化合物を利用することにより、溶剤に対するシロキサンオリゴマーの溶解性を向上させることができ、水に対する溶解性が増すことから、本オリゴマーを水溶液としても使用できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、木材に上記平均組成式(1)で示されるオリゴマーを処理、硬化させることを特徴とする防菌・防黴性無機質複合化木材の製造方法を提供する。
【0010】
本発明においては、上記シリコーンレジンのもつ撥水性のために防菌・防黴性が向上し、また木材を上記式(1)のオリゴマーで処理するため、安全性も高く、実用的な無機質複合化木材の製造方法を提供し得るものである。なお、本発明において、「防菌・防黴性」とはこれを広い意味に解釈するものとし、防腐性、殺菌性をも含むものとする。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の防菌・防黴性無機質複合化木材の製造方法は、木材に、特定のシロキサンオリゴマーを処理、硬化させるものである。
【0012】
この発明で用いられる原料木材としては特に限定されず、例えば原木丸太、製材品、スライス単板、合板などが挙げられ、それらの樹種などについても限定されない。
【0013】
また、本発明で用いるシロキサンオリゴマーは、下記平均組成式(1)
(R1 aR2SiO(3-a)/2)i(R3 bR4SiO(3-b)/2)j(R5 cR6SiO(3-c)/2)k(SiO4/2)m …(1)
〔式中、R1,R3,R5は水素原子又は炭素数1〜10のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。R2は炭素数1〜18のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18のアミノ基含有一価有機基であり、R6は下記一般式(2)
〔−(CH2)3NR7(CH3)2〕+X- …(2)
(R7は炭素数11〜22の一価炭化水素基、Xはハロゲン原子を示す。)
で示される一価有機基である。a,b,cは0又は1、好ましくは0であり、i,j,mは0又は正数、kは正数であるが、iとmとが同時に0となることはない。〕
で示され、末端が水酸基及び/又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0014】
ここで、R1,R3,R5の一価炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル等のアルキル基、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル等のアルケニル基、フェニル、トリル等のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基などや、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−(ヘプタフルオロブチル)エチル基、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エチル基等のフッ素置換アルキル基、フッ素置換ポリエーテル基、及びシアノ基で置換したシアノエチル基等が例示される。
【0015】
R2としては、上記R1,R3,R5で例示したものと同様のものを挙げることができるほか、ラウリル、ミリスチル、ステアリル等の長鎖アルキル基やその水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換したものが挙げられる。特にR2は、これらの中で炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したハロゲン置換アルキル基が好ましく、特にフッ素置換アルキル基が好ましい。
【0016】
R4としては、特に下記式で示されるものが好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
更に、R6は下記式(2)
〔−(CH2)3NR7(CH3)2〕+X- …(2)
で示されるものであるが、R7としては、長鎖アルキル基や長鎖アルケニル基等が挙げられる。
【0019】
ここで、R1 aR2SiO(3-a)/2、R3 bR4SiO(3-b)/2、R5 cR6SiO(3-c)/2で表される各構成単位は、それぞれ構造の異なる2種以上であってもよい。
【0020】
特に、R1 aR2SiO(3-a)/2単位は、木材に撥水性を付与するものであり、CH3SiO3/2単位とR’SiO3/2単位(R’は炭素数5〜18のアルキル基)、又はCH3SiO3/2単位とR”SiO3/2単位(R”は炭素数1〜18のフッ素置換アルキル基)からなることが好ましい。この場合、R1 aR2SiO(3-a)/2単位中におけるCH3SiO3/2単位の割合は、5〜100モル%であることが好ましい。
【0021】
i,j,k,mは上記の意味を示すが、i+j+k+m=1とした場合、iは0≦i≦0.9999、特に0.1≦i≦0.9であることが好ましい。jは0≦j≦0.800であることが好ましい。なお、このjが関係するR3 bR4SiO(3-b)/2単位は、シロキサンオリゴマーに水溶性を付与する場合に導入する単位である。kは正数であり、0.0001≦k≦0.5、特に0.001≦k≦0.2であることが好ましい。mは0≦m≦0.9999である。但し、iとmは同時に0とはならず、iが0の場合、mは正数、mが0の場合、iは正数である。
【0022】
なお、上記式(1)のシロキサンオリゴマーの平均重合度は2〜20が好ましい。平均重合度が20を超えると含浸に時間がかかることがある。
【0023】
上記式(1)のシロキサンオリゴマーは、防菌・防黴性有機ケイ素化合物と撥水性有機ケイ素化合物及び/又はテトラメトキシシランやテトラエトキシシランなどの4官能ケイ素アルコキシドと、更に好ましくはアミノ基含有有機ケイ素化合物とを共加水分解するという常法によって得ることができる。またこれらのケイ素アルコキシドや有機ケイ素化合物を予め、それぞれを部分加水分解してから混合、共加水分解してもよい。
【0024】
ここで、4官能ケイ素アルコキシドとしては、下記一般式(3)
Si(OR8)4 …(3)
(R8は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で示されるものを使用することができる。
【0025】
一方、防菌・防黴性有機ケイ素化合物としては、下記一般式(4)で示されるものを用いることができる。
R5 cR6Si(OR9)3-c …(4)
(R5,R6,cは上記と同じ意味を示し、R9は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0026】
この化合物は第四級アンモニウム塩基を有し、末端に加水分解性アルコキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物で、防菌・防黴性能を有する。また、有毒な重金属原子を含んでいないので土壌や河川等を汚染することがなく、かつ人体に対する毒性が極めて小さく刺激性や臭気が少ない。一般式(4)で示される有機ケイ素化合物は、ケイ素原子に直結した3−ハロゲノプロピル基及びアルコキシ基を有する、例えば3−クロロプロピルトリメトキシシランと式R7N(CH3)2(式中、R7は炭素数11〜22の一価炭化水素基を示す。)で示されるアミン化合物、例えばC16H33N(CH3)2、C18H37N(CH3)2などをジメチルホルムアミドのような溶媒中で加熱反応させる方法により、第四級アンモニウム塩型化合物として容易に得ることができる。
【0027】
撥水性有機ケイ素化合物としては、下記一般式(5)で示されるものを用いることができる。
R1 aR2Si(OR10)3-a …(5)
(R1,R2,aは上記と同じ意味を示し、R10は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0028】
上記式(5)の化合物として具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2−(ヘプタフルオロブチル)エチルトリメトキシシラン、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジエトキシシランなどが例示される。
【0029】
アミノ基含有有機ケイ素化合物としては、下記一般式(6)で示される化合物を用いることができる。
R3 bR4Si(OR11)3-b …(6)
(R3,R4,bは上記と同じ意味を示し、R11は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0030】
上記式(6)の化合物として具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが例示される。
【0031】
なお、上記式(3)〜(6)のアルコキシシランは、i,j,k,mが上記モル比となるように反応させることができる。
【0032】
また、加水分解工程では酸性触媒、アルカリ性触媒、フッ素塩化合物触媒、遷移金属化合物触媒などを用いることもできる。
【0033】
上記式(1)のシロキサンオリゴマーを木材に処理する場合、シロキサンオリゴマーをそのまま用いて処理してもよく、またメチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、その他の有機溶剤に希釈して処理してもよい。しかし、最近では有機溶剤の規制が厳しく、これらの有機溶剤の使用は環境破壊にもつながり、敬遠されている。本発明のシロキサンオリゴマーが上記式(1)においてj>0の場合、即ちアミノ基含有一価有機基を有するシロキサンユニットを含有する場合は、水に可溶であることから、水で希釈することが可能となり、希釈剤としては水が好ましい。
【0034】
また、上記シロキサンオリゴマーに、レジンに柔軟性を付与するために他の有機ケイ素化合物、例えばジメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシランなどを混合して加えてもよい。この場合、これらの有機ケイ素化合物は、上記シロキサンオリゴマーを得るに際し、テトラエトキシシランやその部分加水分解物に加えて共加水分解を行うようにしてもよい。更に、防蟻性を付与するためにホウ酸等の殺蟻成分を添加してもよい。この場合、殺蟻成分はシロキサンオリゴマー生成反応時に加えても、オリゴマーに後添加してもよい。
【0035】
上記シロキサンオリゴマー溶液を木材に処理する場合は、木材を予め調湿状態にしておくのが好ましいが、特に限定するものではない。
【0036】
処理方法としては、含浸法、スプレー法、ハケ塗り法、ディッピング法、減圧又は加圧注入法などを採用することができる。
【0037】
次に、上記シロキサンオリゴマーで処理した木材は、木材が熱分解しない範囲、好ましくは50〜110℃で乾燥する。この過程で溶剤が揮発し、オリゴマーは濃縮されることにより、加水分解、続いて重縮合して硬化することによって、防菌・防黴性を有するシリコーンレジンに変化する。
【0038】
なお、上記シロキサンオリゴマーは、他の応用例として、その防菌・防黴性能の点から、これで壁紙等の繊維セルロース紙などに上記と同様に処理することができ、これによって同様の防菌・防黴等の効果を与える。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0040】
なお、無機質複合化木材の物性評価は下記の方法で行った。
(1)重量増加率(WPG)
アセトン及び水により、それぞれ24時間ソックスレー抽出した未処理の木材試験片の絶乾重量(Wu)を求める。次に、この試験片を無機質複合化した後、105℃で24時間乾燥して、無機質複合化木材の絶乾重量(Wt)を求めて、以下の式から無機質複合化木材の重量増加率(WPG)を算出する。
WPG(%)=〔(Wt−Wu)/Wu〕×100
(2)白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による木材腐朽試験
防菌・防黴性能の評価のため、日本木材保存協会(JWPA)規格第3号−1992「木質材料の耐久性試験方法」に準拠して無機質複合化木材の腐朽試験を行った。60℃で48時間の乾燥、滅菌の後、ガラス瓶中の培養器で十分生育させた白色腐朽菌カワラタケ〔Coriolus versicolor(L.ex Fr.)Quel〕(IFO 30340)及び褐色腐朽菌オオウズラタケ〔Tyromyces palustris(Berk.et Curk.Murr.)〕(IFO 303390)の菌叢上に調製した試験片を置いた。8週間、室温26℃,相対湿度55−65%の恒湿室で培養後、試験片を取り出し、試験片表面についた菌を取り除き、試験片の絶乾重量を求めた。予め計っておいた処理前の絶乾重量から腐朽菌による重量減少率(%)を求めた。
(3)埋没試験による腐朽試験
アセトン及び水により、それぞれ24時間ソックスレー抽出した未処理の木材試験片及び無機質複合化木材について、無殺菌土壌中(地上より17cm)での9ケ月の埋没試験を行い、試験前の絶乾重量と試験後の絶乾重量から重量減少率を算出して、腐朽の度合いの進行を推定した。
【0041】
〔実施例1〕
テトラエトキシシラン(TEOS)208g(1.0モル)、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(HFOETMOS)2.8g(0.005モル)、3−(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(TMSAC)2.5g(0.005モル)、酢酸0.5g(0.008モル)、メタノール208gを1リットルフラスコに取り、脱イオン水36gを室温にて撹拌しながら滴下し、反応させた。50℃で1時間熟成後、更に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMOS)0.9g(0.005モル)を滴下、反応させ、50℃,1時間熟成した。得られた溶液にメタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔C8F17C2H4SiO3/2〕0.0049〔H2NC3H6SiO3/2〕0.0049〔Cl-〔(CH3)2(C18H37)NC3H6〕+SiO3/2〕0.0049〔SiO4/2〕0.9853
であり、平均重合度は約6、末端基はメトキシ基と水酸基であった。
【0042】
次に、アセトン及び水により、それぞれ24時間ソックスレー抽出したヒノキ辺材50mm×100mm,厚さ1mmの単板を調湿して得られた含水率25%の試片に、上記オリゴマー溶液を減圧下で3日間室温にて含浸した。その後、試片を65℃で24時間、105℃で24時間処理し、ゲルの熟成を行って無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材のケイ素酸化物などによる重量増加率(WPG)は11.0%であった。この無機質複合化木材試片を白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による8週間の木材腐朽試験での重量減少率は、共に0%であった。また、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は2.5%であった。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1において、TMSACを5g(0.01モル)とし、APTMOSは使用しないということ以外は同様に反応を行った。得られた溶液に、メタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔C8F17C2H4SiO3/2〕0.0049〔Cl-〔(CH3)2(C18H37)NC3H6〕+SiO3/2〕0.0099〔SiO4/2〕0.9852
であり、平均重合度は約8、末端基はメトキシ基と水酸基であった。
【0044】
次に、このオリゴマー溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG10.5%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材の白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験での重量減少率は共に0%で、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は2.8%であった。
【0045】
〔比較例1〕
実施例1における同様の操作法及び条件で、無処理木材に対し白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験を行ったところ、重量減少率はそれぞれ11.0%及び8.9%であった。更に9ケ月の埋没試験後の重量減少率は22.8%であった。
【0046】
〔比較例2〕
実施例1において、TMSACを使用しないということ以外は同様に反応を行った。得られた溶液に、メタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔C8F17C2H4SiO3/2〕0.0050〔H2NC3H6SiO3/2〕0.0050〔SiO4/2〕0.9900
であり、平均重合度は約5、末端基はメトキシ基と水酸基であった。
【0047】
次に、このオリゴマー溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG9.3%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材の白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験での重量減少率はそれぞれ11.5%及び5.3%で、9ケ月の埋没試験後の重量減少率も18.9%であった。
【0048】
〔実施例3〕
実施例1において、TEOSを使用しないということ以外は同様に反応を行った。得られた溶液に、メタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔C8F17C2H4SiO3/2〕0.3333〔H2NC3H6SiO3/2〕0.3333〔Cl-〔(CH3)2(C18H37)NC3H6〕+SiO3/2〕0.3333
であり、平均重合度は約4、末端基はメトキシ基と水酸基であった。
【0049】
次に、このオリゴマー溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG0.5%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材の白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験での重量減少率はそれぞれ5.5%及び4.7%で、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は14.9%であった。
【0050】
〔実施例4〕
実施例1において、HFOETMOSを使用しないということ以外は同様に反応を行った。得られた溶液に、メタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔H2NC3H6SiO3/2〕0.0050〔Cl-〔(CH3)2(C18H37)NC3H6〕+SiO3/2〕0.0050〔SiO4/2〕0.9900
であり、平均重合度は約4、末端基はメトキシ基と水酸基であった。
【0051】
次に、このオリゴマー溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG8.7%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材の白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験での重量減少率はそれぞれ1.5%及び2.5%で、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は7.9%であった。
【0052】
〔実施例5〕
メチルトリメトキシシラン(MTMOS)136g(1.0モル)、デシルトリメトキシシラン(DTMOS)2.6g(0.01モル)、TMSAC5g(0.01モル)、酢酸90g(1.5モル)、t−ブタノール500gを1リットルフラスコに取り、脱イオン水27g(1.5モル)を室温にて撹拌しながら滴下し、反応させた。50℃で1時間熟成後、更にAPTMOS179g(1.0モル)を滴下、反応させ、50℃,1時間熟成した。得られた溶液にt−ブタノールを加えて希釈し、オリゴマーの10%溶液を調製して実験に供した。このオリゴマーの平均組成は
〔C10H21SiO3/2〕0.0050〔H2NC3H6SiO3/2〕0.4950〔Cl-〔(CH3)2(C18H37)NC3H6〕+SiO3/2〕0.0050〔(CH3)SiO3/2〕0.4950であり、平均重合度は約5、末端基はメトキシ基と水酸基とt−ブトキシ基であった。
【0053】
次に、このオリゴマー溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG9.5%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材試片を白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による8週間の木材腐朽試験での重量減少率は、共に0%であった。また、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は2.8%であった。
【0054】
〔実施例6〕
実施例5において、得られた反応溶液にt−ブタノールの代わりに脱イオン水を加えて希釈し、5%のオリゴマーの水溶液を調製して実験に供した。次に、このオリゴマー水溶液を使用し、実施例1と同様にしてWPG7.6%の無機質複合化木材を得た。この無機質複合化木材の白色腐朽菌及び褐色腐朽菌による腐朽試験での重量減少率は共に0%で、9ケ月の埋没試験後の重量減少率は3.6%であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、安全なシロキサンオリゴマーを用いて木材を処理し得る上、防菌・防黴成分が木材に付与され、水に対しても安定であり、雨水や結露にさらされても長期にわたり防菌・防黴性を維持すると共に、撥水性付与により防菌・防黴効果が一段と向上した無機質複合化木材を得ることができる。これにより、これまでなし得なかった防菌・防黴成分が抽出又は溶脱されず、加工時の接着性能や塗布性能を阻害することもなく、耐腐朽(防菌・防黴)性能を付与することができる。また、本発明に係わる無機質複合化木材の製造方法を実施することによって、新建築基準法に適合した開口部の部材として、あるいは建築内装材や特に外装材として使用し得る防菌・防黴性木材を大量生産することができる等の特徴を有するものである。
Claims (1)
- 木材に、下記平均組成式(1)
(R1 aR2SiO(3-a)/2)i(R3 bR4SiO(3-b)/2)j(R5 cR6SiO(3-c)/2)k(SiO4/2)m …(1)
〔式中、R1,R3,R5は水素原子又は炭素数1〜10のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。R2は炭素数1〜18のハロゲン置換,シアノ置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R4は炭素数1〜18のアミノ基含有一価有機基であり、R6は下記一般式(2)
〔−(CH2)3NR7(CH3)2〕+X- …(2)
(R7は炭素数11〜22の一価炭化水素基、Xはハロゲン原子を示す。)
で示される一価有機基である。a,b,cは0又は1であり、i,j,mは0又は正数、kは正数であるが、iとmとが同時に0となることはない。〕
で示され、末端が水酸基及び/又は炭素数1〜4のアルコキシ基であるシロキサンオリゴマーを処理、硬化させることを特徴とする防菌・防黴性無機質複合化木材の製造方法。
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