JP3879251B2 - 強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法 - Google Patents
強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
本発明は、表面硬化部品の製造方法に関し、より詳しくは、強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来、自動車用や産業機械用などの各種機械構造部品、特に歯車を代表とする表面硬化部品は、肌焼鋼を素材として、これを熱間鍛造や冷間鍛造した後に切削加工して所望の形状に成形加工し、次いで、耐摩耗性や疲労強度を向上させる目的で部品表面に浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理を施してから使用に供されている。
【0003】
表面硬化部品の素材鋼となる機械構造用肌焼鋼としては、従来、JIS G 4106に規格された機械構造用マンガン鋼(SMn鋼)及びマンガンクロム鋼(SMnC鋼)、JIS G 4105に規格されたクロムモリブデン鋼(SCM鋼)、JIS G 4104に規格されたクロム鋼(SCr鋼)、JIS G 4103に規格されたニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM鋼)、JIS G 4102に規格されたニッケルクロム鋼(SNC鋼)などが用いられてきた。
【0004】
しかし、前記のJIS規格鋼を母材として所定の部品形状に加工された鋼材の場合には、浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理時に900〜950℃の温度に加熱されると結晶粒の粗大化や異常粒成長(以下、結晶粒の粗大化と異常粒成長をまとめて「粗粒化」という。また、「 JIS G 0551 の表1に示されるオーステナイト結晶粒度番号5以上の整細粒」組織を呈することを「粗粒化を生じていない」という。)が生じ易い。このため、焼入れ時の歪発生や強度や靱性など材料特性の低下が生ずるという問題がある。
【0005】
このため、従来のJIS規格鋼に代わって、Nbを添加した鋼、例えば、特開昭60−21359号公報に記載のNb添加鋼などが浸炭部品の母材となる肌焼鋼として重用されてきた。こうした鋼は、Nbの添加によって析出した微細なNbCのピン止め効果を利用することで、浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理における加熱時のオーステナイト粒の粗粒化を防止しようとするものである。既に述べたように、従来の浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理は900〜950℃程度の温度で行われていたために、NbCのピン止め効果によって粗粒化を防止することが可能であった。しかしながら、単にNbを添加しただけの鋼の場合には鋼塊(ここでいう「鋼塊」にはJIS G 0203に規定されているように連鋳鋼片(鋳片)を含む)の表面性状が悪いという問題がある。したがって、鋼片や各種の鋼材に加工した後に疵が生じるので、疵の手入れをしなければならず、この疵手入れのために歩留まりが低下するとともにコストが嵩んでいた。
【0006】
更に近年、表面硬化処理の能率を大幅に向上させるために、所謂「プラズマ浸炭処理」など高温での表面硬化処理が採用されるようになってきた。この「プラズマ浸炭処理」は、1050℃もの高温で浸炭処理を行うものであり、こうした高温に加熱される場合には、前記の単にNbを添加しただけの鋼では粗粒化を防止することは不可能であった。すなわち、1050℃でのプラズマ浸炭処理時には、従来の900〜950℃程度の処理の場合には粗粒化防止に有効であったNbCが凝集・粗大化してしまい、ピン止め効果を充分に発揮することができないからである。
【0007】
そこで、例えば特開平4−176816号公報に記載されているような、Nbと、Ti及び/又はVとを複合添加した浸炭用鋼が提案されている。しかし、前記公報に記載されているような単に、Nbと、Ti及び/又はVとを複合添加しただけの浸炭用鋼の場合には、浸炭時に粗粒化が生じてしまう場合もあった。
【0008】
又、近年、機械構造部品の高強度化に伴って、熱間鍛造や冷間鍛造した後に所望の形状に成形するための切削加工のコストが嵩むという問題が生じている。このため、切削加工を容易にし、低コスト化を図るために被削性に優れた快削肌焼鋼に対する要求がますます大きくなっている。
【0009】
従来、被削性を高めるために、鋼にPb、Te、Bi、Ca及びSなどの快削元素を単独あるいは複合添加することが行われてきた。しかし、JIS規格鋼である機械構造用鋼や、前記した特開昭60−21359号公報に記載のNb添加鋼や、特開平4−176816号公報に記載されているような、Nbと、Ti及び/又はVとを複合添加した浸炭用鋼などに、単に上記の快削元素を添加しただけの場合には、所望の機械的性質、なかでも靱性を確保できないことが多い。
【0010】
鉄と鋼(vol.57(1971年)S484)には、脱酸調整快削鋼にTiを添加すれば被削性が高まる場合のあることが報告されている。しかし、Tiの多量の添加はTiNが多量に生成することもあって工具摩耗を増大させ、被削性の点からは好ましくないことも述べられている。例えば、C:0.45%、Si:0.29%、Mn:0.78%、P:0.017%、S:0.041%、Al:0.006%、N:0.0087%、Ti:0.228%、O:0.004%及びCa:0.001%を含有する鋼では却ってドリル寿命が低下して被削性が劣っている。このように、鋼に単にTiを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
【0011】
又、硫黄快削鋼の硫化物形態制御の目的でZrが添加されることがあるが、例えば、鉄と鋼(vol.62(1976年)p.885)に記されているように、Zrは被削性に対してはほとんど影響を及ぼさない。つまり、鋼に単にZrを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記現状に鑑みなされたもので、充分な強度−靱性バランスを有して、過酷な環境下での使用に充分耐え得る表面硬化部品の製造方法を提供することを目的とする。なかでも、本発明は、鋼材表面の温度が1050℃にも到るようなプラズマ浸炭処理を始めとする高い温度での表面硬化処理を受ける場合にも粗粒化を生ずることがなく、熱処理歪の小さい高強度・高靱性の表面硬化部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨は、下記(1)及び(2)に示す強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法にある。
【0014】
(1)重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.002〜0.2%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%及びAl:0〜0.10%を含み、下記(1) 式で表されるfn1の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、更に、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和がJIS G 0555 に規定される清浄度で0.05%以上である鋼材を、1150℃以上に加熱してから熱間鍛造し、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却した後、表面硬化処理することを特徴とする強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法。
fn1=Ti(%)+Zr(%)−1.2S(%)・・・・(1) 。
【0015】
(2)重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.002〜0.2%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%及びAl:0〜0.10%を含み、下記 (1) 式で表されるfn1の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、更に、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和が JIS G 0555 に規定される清浄度で0.05%以上である鋼材を、鍛造した後、1150℃以上に加熱して熱処理を行い、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却した後、表面硬化処理することを特徴とする強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法。
fn1=Ti(%)+Zr(%) - 1.2S(%)・・・・ (1) 。
【0017】
以下、上記(1)及び(2)の強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法に係る発明を、それぞれ、「(1)の発明」及び「(2)の発明」という。また、総称して「本発明」ということがある。
【0018】
なお、本発明でいう「Ti炭硫化物」には単なるTi硫化物を、又、「Zr炭硫化物」には単なるZr硫化物をそれぞれ含むものとする。又、「(Ti及びZrの炭硫化物の)最大直径」とは「個々のTi及びZrの炭硫化物における最も長い径」のことを指す。Ti炭硫化物の清浄度やZr炭硫化物の清浄度は、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」によって60視野測定した値をいう。
【0019】
(2)の発明における鍛造は、熱間、温間、冷間のいずれかで行われるもの、又は、これらを組み合わせたものを指す。
【0020】
本発明者らは、プラズマ浸炭処理を始めとする高い温度での表面硬化処理時にも粗粒化を防止することができるように、1050℃でも成長・凝集せず微細に分散している析出物について調査・研究を行った。
【0021】
その結果、NbとTiやZrとを複合添加した鋼において、NbとTiの複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕やNbとZrの複合炭窒化物〔NbZr(CN)〕が1050℃でも成長・凝集せず、微細に分散している場合があることがわかった。
【0022】
そこで本発明者らは更に詳細な研究を続け、その結果、次の知見を得るに到った。
【0023】
(a)NbとTiやZrとを複合添加した鋼において凝固時に析出する炭窒化物はNbC、TiCやZrC、NbN、TiNやZrN、Nb(CN)及びTi(CN)やZr(CN)といった単独元素の炭化物、窒化物や炭窒化物ではなく、NbとTiやZrの複合炭窒化物である〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕である。しかし、凝固時に析出した〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕は粗大であるので、粗粒化防止のためのピン止め作用を有しない。
【0024】
(b)複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕の固溶と加熱温度(T)の関係については以下のとおりである。
【0025】
(イ)T<1150℃の場合:上記の複合炭窒化物は鋼中で安定に存在する。
【0026】
(ロ)1150℃≦T≦1350℃の場合:上記の複合炭窒化物のNbだけが固溶し、炭窒化物中にTiやZrが濃化する。
【0027】
(ハ)1350℃<Tの場合:上記の複合炭窒化物は完全に固溶する(Ti、Zrも固溶する)。
【0028】
(c)表面硬化処理の前に素材鋼及び/又は表面硬化部品が1150℃以上の温度域に加熱されると、凝固時に析出した粗大な〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕が固溶するとともに、その後の冷却過程、あるいは冷却後に行われる処理の加熱過程で〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕が微細に再析出し、そのピン止め効果で表面硬化処理時の異常粒成長を防止することができる。なお、複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕が完全に固溶しなくても、複合炭窒化物中のNbが優先的に固溶しさえすれば、その後の冷却過程、あるいは冷却後に行われる処理の加熱過程で〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕が微細に再析出する。
【0029】
(d)表面硬化処理後、Hv300以上の芯部硬度と20J/cm2以上の衝撃値を有すれば、その表面硬化部品は自動車や産業機械が使用される過酷な環境においても充分な耐久性を示す。なお、上記の表面硬化部品の芯部とは、表面硬化処理を受けても硬化していない部分のことをいう。又、上記の衝撃値とは、JIS3号シャルピー衝撃試験片を用いて常温(室温)で衝撃試験した場合のものをいう。
【0030】
(e)鋼に適正量のTiやZrを添加し、鋼中の介在物制御として硫化物をTi炭硫化物やZr炭硫化物に変え、こうした炭硫化物を微細に分散させれば、鋼材の被削性が飛躍的に向上する。
【0031】
そこで、更に研究を続けた結果、下記の事項を見いだした。
【0032】
(f)Sとのバランスを考慮して鋼にTiとZrのいずれかを積極的に添加して行くと、鋼中にTi炭硫化物あるいはZr炭硫化物が形成され、Ti及びZrを添加すると、鋼中にはTi炭硫化物とZr炭硫化物とが形成される。
【0033】
(g)鋼中に上記したTi炭硫化物やZr炭硫化物が生成すると、MnSの生成量が減少する。
【0034】
(h)鋼中のS含有量が同じ場合には、Ti炭硫化物やZr炭硫化物はMnSよりも大きな被削性改善効果を有する。これは、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の融点がMnSのそれよりも低いため、切削加工時に工具のすくい面での潤滑作用が大きくなることに基づく。
【0035】
(i)Ti炭硫化物やZr炭硫化物の効果を充分発揮させるためには、N含有量を低くすることが重要である。これは、N含有量が多いとTiNやZrNとしてTiやZrが固定されてしまい、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の生成が抑制されてしまうためである。
【0036】
(j)製鋼時に生成したTi炭硫化物やZr炭硫化物は、通常の熱間加工のための加熱温度及びプラズマ浸炭処理を始めとする高温の表面硬化処理における1050℃程度の温度では基地に固溶しないし、凝集もしない。したがって、オーステナイト領域において所謂「ピン止め作用」が発揮されるので、オーステナイト粒の粗大化防止に有効である。
【0037】
(k)Ti炭硫化物やZr炭硫化物によって被削性を高めるとともに大きな強度、特に、大きな疲労強度を確保するためには、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと、その清浄度で表される量(以下、単に「清浄度」という)を適正化しておくことが重要である。
【0038】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【発明の実施の形態】
【0039】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重量%」を意味する。
【0040】
(A)素材鋼の化学組成
C:
Cは、SとともにTiやZrと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。更に、Cは鋼の強度を確保するとともに複合炭窒化物の〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を形成させるのにも有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では添加効果に乏しく、一方、0.3%を超えて含有させると鋼の靱性が低下することになるので、その含有量を0.1〜0.3%とした。
【0041】
Si:
Siは、鋼の脱酸及び焼入れ性を高める作用を有する。更に、強度の向上及び高温での表面酸化の防止にも有効な元素である。しかし、その含有量が0.01%未満では所望の静的強度が確保できないことに加えて高温での表面の耐酸化性が劣化し、0.5%を超えると靱性の劣化を招くこととなる。したがって、Siの含有量を0.01〜0.5%とした。
【0042】
Mn:
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともに熱間延性を向上させる効果を有する。しかし、その含有量が0.6%未満では充分な焼入れ性が得られず、2.0%を超えて含有させると偏析を生じ、却って熱間延性が低下するようになる。したがって、Mnの含有量を0.6〜2.0%とした。
【0043】
P:
Pは、鋼の靱性を劣化させるとともに、冷間及び熱間での鍛造性を低下させてしまう。特に、その含有量が0.03%を超えると靱性及び冷間・熱間鍛造性の劣化が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下とした。
【0044】
S:
Sは、CとともにTiやZrと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.002%未満では所望の効果が得られない。
【0045】
従来、快削鋼にSを添加する目的は、MnSを形成させて被削性を改善させることにあった。しかし、本発明者らの検討によると、上記のMnSの被削性向上作用は、切削時の切り屑と工具表面との潤滑性を高める機能に基づくことが判明した。しかもMnSは巨大化し、鋼材本体の地疵を大きくし、欠陥となる場合がある。本発明におけるSの被削性改善作用は、適正量のCとTiやZrとの複合添加によってTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成させることで初めて得られる。このためには、上記したように0.002%以上のSの含有量が必要である。一方、Sを0.2%を超えて含有させても被削性に与える効果に変化はないが、鋼中に粗大なMnSが再び生じるようになり、地疵等の問題が生じる。更に、熱間での加工性が著しく劣化し熱間加工が困難になるし、靱性が低下することもある。したがって、Sの含有量を0.002〜0.2%とした。なお、Sの好ましい含有量は0.005〜0.1%である。
【0046】
Nb:
Nbは、TiやZrとともに複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を形成し、鋼の結晶粒を微細にして靱性を高めるとともに、表面硬化処理のための加熱時の粗粒化を防止するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.005%未満では添加効果に乏しく、一方、0.10%を超えて含有させても結晶粒微細化の効果が飽和して経済性を損なうばかりであるし、変形抵抗が上昇して冷間鍛造性や熱間鍛造性が劣化するようにもなる。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.10%とした。
【0047】
Ti、Zr:
Ti、Zrは本発明において介在物を制御するための重要な合金元素であって、それぞれC及びSと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。
【0048】
上記の効果は、TiとZrの含有量に関し、Ti(%)+Zr(%)の値が0.04%以上の場合に確実に得られる。しかし、Ti(%)+Zr(%)の値で1.0%を超えるTiとZrを含有させても被削性向上効果は飽和するのでコストが嵩んでしまう。なお、Ti(%)+Zr(%)の値が0.04〜1.0%でありさえすれば良いので、必ずしもTiとZrを複合して含有させる必要はない。Zrを添加しない、つまりTiを単独で添加する場合に、Tiを1.0%を超えて含有させるとTi炭硫化物による被削性向上効果が飽和してコストが嵩むばかりか、Ti炭硫化物が粗大化して却って靱性の低下を招いてしまう。逆に、Tiを添加しない、つまりZrを単独で添加する場合に、Zrを1.0%を超えて含有させるとZr炭硫化物による被削性向上効果が飽和してコストが嵩むばかりか、Zr炭硫化物が粗大化して却って靱性の低下を招いてしまう。したがって、TiとZrの含有量をいずれも0〜1.0%で、且つ、Ti(%)+Zr(%)の値を0.04〜1.0%とした。なお、良好な被削性と靱性を安定して得るためには、TiとZrの含有量の上限はそれぞれ0.8%とすることが好ましい。
【0049】
N:
Nは、Nb、Ti、Zr及びCと結合して複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を形成し、鋼の結晶粒を微細化して靱性を向上させるとともに、表面硬化処理のための加熱時の粗粒化を防止するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.002%未満では添加効果に乏しい。一方、NはTiやZrとの親和力が大きいために容易にTiやZrと結合してTiNやZrNを形成し、TiやZrを固定してしまうので、Nを多量に含有する場合には前記したTi炭硫化物やZr炭硫化物の被削性向上効果が充分に発揮できないこととなる。特に、TiやZrの含有量が低めの場合には、N含有量の影響が顕著となる。更に、粗大なTiNやZrNは靱性及び被削性を低下させてしまう。特に、N含有量が0.008%を超えると靱性及び被削性の低下が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.002〜0.008%とした。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の効果を高めるために、N含有量の上限は0.006%とすることが好ましい。
【0050】
Cr:
Crは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を向上させるとともに、浸炭処理などの表面硬化処理時にCと結合して複合炭化物を形成するので耐摩耗性を向上させる効果がある。この効果を確実に得るには、Crは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が2.0%を超えると靱性が劣化する。したがって、Cr含有量を0〜2.0%とした。
【0051】
Mo:
Moは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を向上させるとともに、表面硬化処理後の芯部硬度を上げる作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えると、Ti炭硫化物やZr炭硫化物を微細に分散させた場合においても被削性が大幅に劣化するようになる。したがって、Mo含有量を0〜1.0%とした。
【0052】
W:
Wは添加しなくても良い。添加すれば鋼の焼入れ性を向上させるとともに、表面硬化処理後の芯部硬度を上げる作用がある。この効果を確実に得るには、Wは0.10%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、その含有量が1.0%を超えると、Ti炭硫化物やZr炭硫化物を微細に分散させた場合においても被削性が大幅に劣化するようになる。したがって、Wの含有量を0〜1.0%とした。
【0053】
Al:
Alは添加しなくてもよい。添加すれば鋼の脱酸の安定化及び均質化を図る作用がある。この効果を確実に得るには、Alは0.005%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、その含有量が0.10%を超えると前記効果が飽和することに加えて靱性が劣化するようになる。したがって、Alの含有量を0〜0.10%とした。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度を所定の値とするためにはTiやZrの酸化物が過剰に生成することを防ぐことが重要であるので、Si含有量が0.05%未満の場合には、少なくとも0.005%のAlを含有させることとするのが良い。
【0054】
fn1:
N含有量の上限を0.008%とし、前述の(1) 式で表されるfn1が0%を超える値(fn1=Ti(%)+Zr(%)−1.2×S(%)>0%)の場合に前記したTi炭硫化物やZr炭硫化物の被削性向上効果が確保できる。fn1が0%以下の値(fn1≦0%)の場合には、S量が過剰となるため、その分MnSが過剰生成してTi炭硫化物やZr炭硫化物による被削性向上効果が低下してしまう。したがって、(1) 式で表されるfn1に関して0%を超える値(fn1>0%)と規定した。このfn1の値の上限は特に規定されるものではなく、Ti(%)+Zr(%)の値が1.0%でSが0.002%の場合の値であっても良い。
【0055】
上記の化学組成を有する素材鋼から本発明に係る表面硬化部品を製造するには、例えば熱間で分塊を行って鋼片とし、次いで熱間で圧延した後、熱間あるいは冷間で鍛造し、必要に応じて焼準を施し、更に切削加工を施して所定の表面硬化部品の形状に加工を行い、最終的に表面硬化処理を施すこととなる。
【0056】
(B)Ti炭硫化物及びZr炭硫化物のサイズと清浄度
上記の化学組成を有する鋼材の被削性をTi炭硫化物やZr炭硫化物によって高めるとともに本発明に係る表面硬化部品に、大きな強度と良好な靱性を確保させるためには、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度(TiとZrを複合添加する場合にはTi炭硫化物とZr炭硫化物の清浄度の和)で表される量を適正化しておくことが重要である。
【0057】
鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μmを超えると疲労強度や靱性が低下してしまう。なお、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径はいずれも7μm以下とすることが好ましい。Ti炭硫化物とZr炭硫化物は、それらの最大直径が小さすぎると被削性向上効果が小さくなってしまう。したがって、Ti炭硫化物とZr炭硫化物の最大直径の下限値は0.5μm程度とすることが好ましい。
【0058】
最大直径が10μm以下のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の量の和が清浄度で0.05%未満の場合には、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物による被削性向上効果が発揮できない。したがって、本発明においては、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つその量の和を清浄度で0.05%以上の鋼材を本発明に係る表面硬化 部品の素材として用いることとした。なお、前記の清浄度の和は0.08%以上とすることが好ましい。上記のTi炭硫化物とZr炭硫化物の清浄度の和の値が大きすぎると疲労強度が低下する場合があるので、上記の清浄度の和の上限値は2.0%程度とすることが好ましい。
【0059】
上記したようなTi炭硫化物とZr炭硫化物の形態は基本的にはTi、Zr、S及びNの含有量で決定される。しかし、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度(清浄度の和)を上述の値とするためには、TiやZrの酸化物が過剰に生成することを防ぐことが重要である。このためには、鋼が前記(A)項で述べた化学組成を有しているだけでは充分でない場合があるので、例えば、Si及びAlで充分脱酸し、最後にTiやZrを添加する製鋼法を採れば良い。
【0060】
なお、Ti炭硫化物とZr炭硫化物は、鋼材から採取した試験片を鏡面研磨し、その研磨面を被検面として倍率400倍以上で光学顕微鏡観察すれば、色と形状から容易に他の介在物と識別できる。すなわち、前記の条件で光学顕微鏡観察すれば、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の「色」は極めて薄い灰色で、「形状」はJISのB系介在物やC系介在物に相当する粒状(球状)として認められる。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の詳細判定は、前記の被検面をEDX(エネルギー分散型X線分析装置)などの分析機能を備えた電子顕微鏡で観察することによって行うこともできる。
【0061】
前記のTi炭硫化物やZr炭硫化物の清浄度は、既に述べたように、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」によって60視野測定した値をいう。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査すれば良い。
【0062】
(C)加熱温度と冷却速度
本発明に係る表面硬化部品は、1050℃にも到る高温での表面硬化処理の加熱時に、複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を微細に析出させておき、そのピン止め効果により表面硬化処理時の粗粒化の発生を抑制しようとするものである。そして、表面硬化処理の加熱時に、複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を微細に析出させておくためには、溶製後の凝固時に粗大に析出した複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を、表面硬化処理の前段階で一旦鋼中に固溶させ、微細な〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕析出の素地を作っておく必要がある。このためには、表面硬化処理の前工程で、一旦高温に加熱しておけばよい。
【0063】
既に述べたように、(1)NbとTiやZrとを複合添加した鋼において凝固時に析出する炭窒化物は、NbとTiやZrの粗大な複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕である。(2)複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕の固溶と加熱温度(T)の関係については以下のとおりである。
【0064】
(イ)T<1150℃の場合:上記の複合炭窒化物は鋼中で安定に存在する。
【0065】
(ロ)1150℃≦T≦1350℃の場合:上記の複合炭窒化物のNbだけが固溶し、炭窒化物中にTiやZrが濃化する。
【0066】
(ハ)1350℃<Tの場合:上記の複合炭窒化物は完全に固溶する(Ti、Zrも固溶する)。
【0067】
したがって、本発明においては、微細に再析出した〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕のピン止め作用を利用して粗粒化の発生を防止するために、表面硬化処理の前の工程で一旦1150℃以上に加熱する。
【0068】
そこで、表面硬化部品への加工工程に熱間鍛造が含まれる場合には、少なくともこの熱間鍛造における加熱温度を1150℃以上としてNbを固溶させれば良いことになる。
【0069】
あるいは、既に述べた表面硬化処理の前工程のうち、熱間鍛造以外で「加熱」処理を伴うものは分塊、圧延及び所謂「熱処理」であるため、これら分塊、圧延及び熱処理の少なくとも1つの工程において加熱温度を1150℃以上とすれば良いことになる。
【0070】
したがって、(1)の発明においては、前記(A)項に記載の化学組成を満たし、前記(B)項に記載のTi炭硫化物及びZr炭硫化物のサイズと清浄度を有する鋼材を、1150℃以上に加熱してから熱間鍛造し、冷却してから表面硬化処理することとした。
【0071】
また、(2)の発明においては、前記(A)項及び(B)項で述べた条件を満たす鋼材を、鍛造した後、1150℃以上に加熱して熱処理を行い、冷却してから表面硬化処理することとした。
【0073】
なお、本発明に係る表面硬化部品においては、微細に再析出した〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕のピン止め作用を利用することに加えて、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のピン止め作用も利用して表面硬化処理時の異常粒成長の防止を図る。このTi炭硫化物やZr炭硫化物は1350℃以下の温度では基地に固溶し難い。このため、上記した(1)の発明における熱間鍛造の加熱温度の上限及び(2)の発明における熱処理の加熱温度の上限は、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のピン止め作用を確保するために1350℃とするのが良い。上記した各加熱温度の上限を1350℃とすれば、加熱時の表面酸化を低減することもできる。
【0074】
なお、プラズマ浸炭処理を始めとする高い温度での表面硬化処理のための加熱時に、NbとTiやZrとの複合炭窒化物〔NbTi(CN)〕や〔NbZr(CN)〕を微細に析出させておくためには、上記の各加熱後の冷却速度は0.2℃/s以上とする必要がある。
【0075】
したがって、(1)の発明においては、前記の熱間鍛造後に、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却することとした。
【0076】
また、(2)の発明においては、前記の熱処理後に、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却することとした。
【0077】
(D)表面硬化処理
本発明に係る表面硬化部品が対象とする表面硬化処理は、処理の能率を大幅に高めることができる「プラズマ浸炭処理」を始めとする高温での表面硬化処理である。この表面硬化処理は、所定の表面硬化部品の表面を硬化させ、製品として必要な耐摩耗性や疲労強度を確保するのに必要不可欠の処理である。この処理方法は特に規定されるものではなく、通常の方法で行えば良い。なお、当然のことながら、本発明は、表面硬化処理が900〜950℃の温度に加熱される従来の浸炭処理や浸炭窒化処理などの場合にも適用できる。
【0078】
(E)表面硬化処理後の表面硬化部品の芯部硬度と靱性
表面硬化部品が、自動車や産業機械が使用される過酷な環境においても充分な耐久性を発揮するためには、表面硬化処理後、Hv300以上の芯部硬度と20J/cm2以上の衝撃値を有することが必要である。これらの一方及び/又は両方から外れる場合は表面硬化部品の実環境での耐久性は極めて劣化したものとなってしまう。
【0079】
なお、既に述べたように、表面硬化部品の芯部とは表面硬化処理を受けても硬化していない部分を、又、衝撃値はJIS3号シャルピー衝撃試験片を用いて常温(室温)で衝撃試験した場合のものを指す。
【0080】
(F)焼戻し
低温で焼戻しを行うと表面硬度の大きな低下を伴うことなく靱性を改善できるので、本発明に係る表面硬化部品は、表面硬化処理の後に必要に応じて焼戻しを実施したものであっても良い。焼戻しをする場合は、表面硬度を確保するためにその温度を150〜200℃とするのが望ましい。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
表1、表2に示す化学組成の鋼を通常の方法によって試験炉を用いて溶製した。なお、鋼Gと鋼Hを除いて、Ti酸化物及びZr酸化物の生成を防ぐために、Si及びAlで充分脱酸し種々の元素を添加した最後にTiとZrを添加して、Ti炭硫化物とZr炭硫化物のサイズと清浄度(清浄度の和)を調整するようにした。鋼Gと鋼HについてはSi及びAlで脱酸する際に同時にTiとZrを添加した。
【0082】
表1における鋼A〜Hは化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例に係る鋼、表2における鋼J〜N及び鋼P〜Sは成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例に係る鋼である。比較例に係る鋼のうち鋼Q、鋼R及び鋼SはそれぞれJISのSMn420鋼、SCr420鋼及びSCM420鋼に相当する鋼である。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
次いで、これらの鋼を1140℃に加熱した後に通常の方法によって鋼片とし、更に1100℃に加熱して、1100〜1000℃の温度で直径30mmの丸棒に熱間鍛造した。なお、鋼片に加工した後、一部のものについては表面の手入れを行った。この表面の手入れの有無を表1、表2に併せて示す。
【0086】
こうして得られた熱間鍛造後の丸棒からJIS G 0555の図1に則って試験片を採取し、鏡面研磨した幅が15mmで高さが20mmの被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物を他の介在物と区分しながらその清浄度(清浄度の和)を測定した。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0087】
又、上記の熱間鍛造後の丸棒から8mm直径×12mm長さの粗粒化測定試験片を切り出し、この試験片を用いて下記の4条件の加工熱処理試験を行い、粗粒化の発生率を倍率100倍の光学顕微鏡で10視野観察して調査した。
【0088】
(条件1)真空中で、試験片を1100℃、1175℃及び1250℃の温度でそれぞれ15分間加熱した後、圧縮加工により30%の変形量を与えて常温(室温)まで1.0℃/sの冷却速度で冷却した。この後、1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入した。
【0089】
(条件2)真空中で、試験片を1100℃で15分間加熱し、続いて圧縮加工により30%の変形量を与え、一旦常温まで2.0℃/sの冷却速度で冷却した。この後、更に、1100℃、1175℃及び1250℃の温度で15分間加熱した後、常温まで1.0℃/sの冷却速度で冷却した。次いで、1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入した。
【0090】
(条件3)大気中で、試験片に常温で圧縮加工により30%の変形量を与えた。次いで、真空中で、1100℃、1175℃及び1250℃の温度でそれぞれ15分間加熱した後、常温まで1.0℃/sの冷却速度で冷却した。この後、1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入した。
【0091】
(条件4)真空中で、試験片を1100℃、1175℃及び1250℃の温度でそれぞれ15分間加熱した後、一旦常温まで1.0℃/sの冷却速度で冷却した。次いで、真空中で1100℃で15分間加熱し、更に、圧縮加工により30%の変形量を与え、常温まで2.0℃/sの冷却速度で冷却した。この後、1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入した。
【0092】
表3に、熱間鍛造後の丸棒におけるTi炭硫化物及びZr炭硫化物の清浄度及び最大直径の調査結果、並びに条件1〜4の加工熱処理試験を行った場合の粗粒化発生率の調査結果を示す。なお、表の「Ti、Zr炭硫化物」とした欄において、TiとZrとを複合添加した場合には「最大直径」はいずれか大きい方の炭硫化物の値であり、清浄度は清浄度の和を意味する。又、粗粒化の発生率は100倍の倍率で10視野検鏡した場合の面積割合で表示したものである。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から、化学組成及び最大直径が10μm以下の「Ti、Zr炭硫化物」の清浄度が本発明で規定する範囲内にある鋼材を用いた場合と、比較例に係る鋼のうち鋼L及び鋼Nを素材とする鋼材を用いた場合だけが本発明で規定した条件で処理すれば異常粒成長しないことが明らかである。
【0095】
(実施例2)
前記の実施例1で作製した鋼A〜H、鋼L及び鋼Nの鋼片を1180℃で真空中の熱処理を行い、一旦常温まで0.25℃/sの冷却速度で冷却した。その後、1100℃に加熱してから、1100〜1000℃の温度で30mm直径の丸棒に熱間鍛造した。
【0096】
こうして得られた熱間鍛造後の丸棒から実施例1の場合と同様に、JIS G 0555の図1に則って試験片を採取し、鏡面研磨した幅が15mmで高さが20mmの被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物を他の介在物と区分しながらその清浄度(清浄度の和)を測定した。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0097】
又、上記の熱間鍛造後の丸棒の中心部からJIS3号シャルピ−衝撃試験片を切り出し、表面硬化処理として1050℃×4hr(炭素ポテンシャル:0.8%)の浸炭処理を行った後油焼入れし、更に、170℃で焼戻しを行った。次いで、常温での衝撃試験とともに試験片中心部硬度すなわち芯部硬度の測定を行った。
【0098】
被削性評価のためのドリル穿孔試験も実施した。すなわち、前記した熱間鍛造後の30mm直径の丸棒を25mmの長さに輪切りにしたものを用いて、R/2部(Rは丸棒の半径)についてその長さ方向に貫通孔をあけ、刃先摩損により穿孔不能となったときの貫通孔の個数を数え、被削性の評価を行った。穿孔条件は、JIS高速度工具鋼SKH51のφ5mmストレ−トシャンクドリルを使用し、水溶性の潤滑剤を用いて、送り0.15mm/rev、回転数980rpmで行った。
【0099】
表4に各種試験の結果を示す。なお、この表についても、「Ti、Zr炭硫化物」とした欄において、TiとZrとを複合添加した場合には「最大直径」はいずれか大きい方の炭硫化物の値であり、清浄度は清浄度の和を意味する。
【0100】
【表4】
【0101】
表4から、化学組成及び最大直径が10μm以下の「Ti、Zr炭硫化物」の清浄度が本発明で規定する範囲内にある鋼材を用いた場合にHv300以上の芯部硬度と20J/cm2以上の衝撃値が得られることが明らかである。更に、被削性も良好なことがわかる。したがって、本発明に係る表面硬化部品は自動車や産業機械が使用される過酷な環境においても充分な耐久性を発揮できることになる。
【0102】
一方、前記実施例1において本発明で規定した条件で処理した場合に粗粒化が生じなかった比較例に係る鋼のうち鋼L及び鋼Nを素材とする鋼材を用いた場合は、芯部硬さと衝撃値のいずれかが低く、表面硬化部品の実環境での耐久性は極めて劣化したものとなってしまう。
【発明の効果】
【0103】
本発明に係る表面硬化部品は強度と靱性に優れ、粗粒化も生じないので、自動車や産業機械などの各種機械構造部品、特に歯車を代表とする表面硬化部品として利用することができる。上記の表面硬化部品は、本発明方法を適用することによって、比較的容易に製造することができる。
Claims (2)
- 重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.002〜0.2%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%及びAl:0〜0.10%を含み、下記(1)式で表されるfn1の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、更に、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和がJIS G 0555に規定される清浄度で0.05%以上である鋼材を、1150℃以上に加熱してから熱間鍛造し、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却した後、表面硬化処理することを特徴とする強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法。
fn1=Ti(%)+Zr(%)−1.2S(%)・・・・(1) - 重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.002〜0.2%、Nb:0.005〜0.10%、Ti:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、N:0.002〜0.008%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%及びAl:0〜0.10%を含み、下記(1)式で表されるfn1の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、更に、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和がJIS G 0555に規定される清浄度で0.05%以上である鋼材を、鍛造した後、1150℃以上に加熱して熱処理を行い、0.2℃/s以上の冷却速度で冷却した後、表面硬化処理することを特徴とする強度と靱性に優れた表面硬化部品の製造方法。
fn1=Ti(%)+Zr(%)-1.2S(%)・・・・(1)
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