JP3644275B2 - 被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材及びその製造方法 - Google Patents
被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主たる組織がマルテンサイトとベイナイトの混合組織からなる被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材およびその製造法に関する。更に詳しくは、熱間での加工後に焼入れ焼戻しの所謂「調質処理」を施さなくとも、機械構造部品の素材として好適な、高い強度、大きな降伏比及び優れた靭性を有するマルテンサイト・ベイナイト型の被削性に優れた非調質鋼材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械構造部品、なかでも自動車、産業機械、土木建設機械などのエンジン部品としてのクランクシャフトやコンロッド、あるいはフォ−フリクトの爪などは、従来、機械構造用の炭素鋼(S45C、S50Cなど)や合金鋼(SCM440など)を用いて、熱間加工で所定の形状に粗加工し、次いで、切削加工によって所望の形状に仕上げた後、焼入れ焼戻しの調質処理を施して所望の形状と性能を確保していた。
【0003】
しかし、前記の調質処理を行うには多大の熱エネルギーを要するので製造コストが嵩む。そのため、省エネルギー及びコスト低減の観点から熱間加工のままで、熱間加工後に調質処理を施した場合と同等程度の特性を確保できる非調質鋼の開発が行われ、この非調質鋼を母材として各種の機械構造部品が製造されてきた。
【0004】
特開平4−176842号公報には、ベイナイトあるいはベイナイト・フェライトの組織を有するベイナイト型の「熱間鍛造用非調質鋼」が開示されている。しかし、この公報で提案された非調質鋼を母材とする熱間鍛造部品の場合、その実施例の記載からも明らかなように、高々87kgf/mm2 (853MPa)の引張強度と高々65kgf/mm2 (637MPa)の降伏強度しか得られない。したがって、更に高い強度が要求される部品に対しては適用し難いものである。
【0005】
特開平4−210449号公報には、組織が主としてフェライト及びベイナイトで一部パーライトが共存する「高靭性熱間鍛造用非調質鋼」が開示されている。しかし、この公報で提案された非調質鋼を母材とする熱間鍛造部品の場合も、その実施例の図1から明らかなように、高々75kgf/mm2 (735MPa)の引張強度と高々55kgf/mm2 (539MPa)の降伏強度しか得られない。したがって、更に高い強度が要求される部品に対しては適用し難いものである。
【0006】
このため、調質処理を行わずとも各種の機械構造部品に高い強度、例えば700MPa以上の降伏強度と1000MPa以上の引張強度を確保でき、しかも良好な靭性と大きな降伏比を確保させる技術の開発が熱望されている。
【0007】
又、近年、機械構造部品の高強度化に伴って、熱間加工後に所望の形状に成形するための切削加工のコストが嵩むという問題が生じている。このため、切削加工を容易にし、低コスト化を図るために被削性に優れた非調質鋼に対する要求がますます大きくなっている。
【0008】
従来、被削性を高めるために、鋼にPb、Te、Bi、Ca及びSなどの快削元素を単独あるいは複合添加することが行われてきた。しかし、JIS規格鋼である機械構造用鋼や、前記した特開平4−176842号公報や特開平4−210449号公報に記載されているような鋼に、単に上記の快削元素を添加しただけの場合には、所望の機械的性質、なかでも耐疲労特性を確保できないことが多い。
【0009】
鉄と鋼(vol.57(1971年)S484)には、脱酸調整快削鋼にTiを添加すれば被削性が高まる場合のあることが報告されている。しかし、Tiの多量の添加はTiNが多量に生成することもあって工具摩耗を増大させ、被削性の点からは好ましくないことも述べられている。例えば、C:0.45%、Si:0.29%、Mn:0.78%、P:0.017%、S:0.041%、Al:0.006%、N:0.0087%、Ti:0.228%、O:0.004%及びCa:0.001%を含有する鋼では却ってドリル寿命が低下して被削性が劣っている。このように、鋼に単にTiを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
【0010】
又、硫黄快削鋼の硫化物形態制御の目的でZrが添加されることがあるが、例えば、鉄と鋼(vol.62(1976年)p.885)に記されているように、Zrは被削性に対してはほとんど影響を及ぼさない。つまり、鋼に単にZrを添加するだけでは被削性は向上するものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種機械構造部品の素材として好適な、降伏強度が700MPa以上、引張強度が1000MPa以上で、0.65以上の降伏比(降伏強度/引張強度)と60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値を確保することができ、しかも被削性に優れた非調質鋼材を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)に示すマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材及び(2)に示すその製造方法にある。
【0013】
(1)重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.10%以下(0を含まない)、S:0.002〜0.10%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.2%以下(0を含む)、V:0.50%以下(0を含む)、Nb:0.05%以下(0を含む)、Ti:1.0%以下(0を含む)、Zr:1.0%以下(0を含む)で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、B:0.0005〜0.010%、N:0.008%以下(0を含まない)、Al:0.10%以下(0を含む)、Pb:0.30%以下(0を含む)、Te:0.10%以下(0を含む)、Ca:0.010%以下(0を含む)を含み、下記(1)式で表されるfn1の値が0%以上、下記(2)式で表されるfn2の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和が清浄度で0.05%以上で、且つ、全組織中に占めるマルテンサイトの割合が面積率で20〜95%で、マルテンサイト以外の組織中に占めるベイナイトの割合が面積率で70%以上であることを特徴とする被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材。
【0014】
fn1=Ti(%)+0.5Zr(%)−3.4N(%)・・・・(1) 、
fn2=Ti(%)+Zr(%)−1.2S(%)・・・・(2) 。
【0015】
(2)重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.10%以下(0を含まない)、S:0.002〜0.10%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.2%以下(0を含む)、V:0.50%以下(0を含む)、Nb:0.05%以下(0を含む)、Ti:1.0%以下(0を含む)、Zr:1.0%以下(0を含む)で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、B:0.0005〜0.010%、N:0.008%以下(0を含まない)、Al:0.10%以下(0を含む)、Pb:0.30%以下(0を含む)、Te:0.10%以下(0を含む)、Ca:0.010%以下(0を含む)を含み、前記(1)式で表されるfn1の値が0%以上、前記(2)式で表されるfn2が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和が清浄度で0.05%以上である鋼を、1100℃以上の温度に加熱して熱間加工し、熱間加工を900℃以上の温度で終了した後30〜300℃/分の冷却速度で冷却する被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材の製造方法。
【0016】
なお、本発明でいう「Ti炭硫化物」には単なるTi硫化物を、又、「Zr炭硫化物」には単なるZr硫化物をそれぞれ含むものとする。又、「(Ti及びZrの炭硫化物の)最大直径」とは「個々のTi及びZrの炭硫化物における最も長い径」のことを指す。Ti炭硫化物の清浄度やZr炭硫化物の清浄度は、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」によって60視野測定した値をいう。
【0017】
「組織」は鋼材の中心部における組織を指す。
【0018】
鋼の加熱温度は鋼表面における温度をいい、熱間加工の終了温度も熱間加工した鋼材の表面における温度をいう。冷却速度とは、鋼材の表面における900〜400℃の平均冷却速度を指す。
【0019】
マルテンサイト以外の組織部分において、ベイナイト以外の組織はフェライト、パーライトやオーステナイトが変態せずに残った所謂「残留オーステナイト」などである。
【0020】
本発明者らは、調質処理を行うことなく各種の機械構造部品に、高い強度、良好な靭性と大きな降伏比を確保させるために、熱間加工した後のミクロ組織及びその母材鋼となる鋼の化学組成について種々検討した。その結果、下記の知見を得た。
【0021】
(a)面積率で一定以上のマルテンサイトを含む組織であれば、熱間鍛造を初めとする熱間加工のままでも高い強度が得られる。
【0022】
(b)上記(a)のマルテンサイトを含む組織において、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上であれば、高い強度と良好な靭性とを兼備できる。
【0023】
(c)適正量のMnとCuとを複合添加した鋼を非調質の機械構造部品の母材鋼に用いれば、高い降伏強度が得られ、降伏比も大きくなる。更に、靭性も良好になる。
【0024】
(d)鋼に適正量のTiやZrを添加し、鋼中の介在物制御として硫化物をTi炭硫化物やZr炭硫化物に変え、更にTi炭硫化物やZr炭硫化物を鋼材に微細に分散させれば、鋼材の被削性が飛躍的に向上する。
【0025】
そこで、更に検討を続けた結果、下記の事項を見いだした。
【0026】
(e)Sとのバランスを考慮して鋼にTiとZrのいずれかを積極的に添加すると、鋼中にTi炭硫化物あるいはZr炭硫化物が形成され、Ti及びZrを添加すると、鋼中にはTi炭硫化物とZr炭硫化物とが形成される。
【0027】
(f)鋼中に上記したTi炭硫化物やZr炭硫化物が生成すると、MnSの生成量が減少する。
【0028】
(g)鋼中のS含有量が同じ場合には、Ti炭硫化物やZr炭硫化物はMnSよりも大きな被削性改善効果を有する。これは、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の融点がMnSのそれよりも低いため、切削加工時に工具のすくい面での潤滑作用が大きくなることに基づく。
【0029】
(h)Ti炭硫化物やZr炭硫化物の効果を充分発揮させるためには、N含有量を低く制限することが重要である。これは、N含有量が多いとTiNやZrNとしてTiやZrが固定されてしまい、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の生成が抑制されてしまうためである。
【0030】
(i)製鋼時に生成したTi炭硫化物やZr炭硫化物は、通常の熱間加工のための加熱温度では基地に固溶しないし、凝集もしない。したがって、オーステナイト領域において所謂「ピン止め作用」が発揮されるので、オーステナイト粒の粗大化防止に有効である。
【0031】
(j)Ti炭硫化物やZr炭硫化物によって被削性を高めるとともに大きな強度、特に、大きな疲労強度を確保するためには、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと、その清浄度で表される量(以下、単に「清浄度」という)を適正化しておくことが重要である。
【0032】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重量%」を意味する。
【0034】
(A)鋼の化学組成
C:
Cは、SとともにTiやZrと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。Cは、強度を確保するのにも有効な元素である。しかし、その含有量が0.15%未満では所望の1000MPa以上の引張強度が得られない。一方、0.35%を超えて含有すると、靭性が低下して60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値が得られ難くなるし、被削性が劣化するようになって切削コストが嵩んでしまう。したがって、Cの含有量を0.15〜0.35%とした。
【0035】
Si:
Siは、脱酸を促進するとともに、静的強度と疲労強度を高める作用がある。前記の効果を充分発揮させるためには、Siの含有量を0.1%以上とすることが必要である。一方、Siを1.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Siの含有量を0.1〜1.0%とした。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度を所定の値とするためには、TiやZrの酸化物が過剰に生成することを防ぐことが必要であるので、Siの含有量は0.20%以上とすることが好ましく、特に、Alを添加しない場合のSi含有量は0.40%以上とすることが好ましい。
【0036】
Mn:
Mnは、脱酸作用や強度を高める作用がある。更に、Cuと複合添加すると降伏強度、降伏比及び靭性を高める作用も有する。こうした効果を充分発揮させるためには、1.5%以上の含有量を必要とする。しかし、Mnを3.0%を超えて含有させるとその効果は飽和してコストが嵩むだけでなく、むしろ焼入れ性が高くなりすぎてマルテンサイトの単相組織となり易く、降伏比が低下してしまう。更に、被削性が低下するので切削コストが嵩んでしまう。したがって、Mnの含有量を1.5〜3.0%とした。
【0037】
P:
Pは、鋼中に不純物として含有されるものであり、必須成分として添加しなくても良い。添加すれば降伏強度を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Pは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.10%を超えると靭性の著しい低下を招く。したがって、Pの含有量を0.10%以下(0を含まない)とした。
【0038】
S:
Sは、CとともにTiやZrと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.002%未満では所望の効果が得られない。
【0039】
従来、快削鋼にSを添加する目的は、MnSを形成させて被削性を改善させることにあった。しかし、本発明者らの検討によると、上記のMnSの被削性向上作用は、切削時の切り屑と工具表面との潤滑性を高める機能に基づくことが判明した。しかもMnSは巨大化し、鋼材本体の地疵を大きくし、欠陥となる場合がある。本発明におけるSの被削性改善作用は、適正量のCとTi、Zrとの複合添加によってTiやZrの炭硫化物を形成させることで初めて得られる。このためには、上記したように0.002%以上のSの含有量が必要である。一方、Sを0.10%を超えて含有させても被削性に与える効果に変化はないが、鋼中に粗大なMnSが再び生じるようになって、地疵等の問題が生じる場合がある。更に、熱間での加工性が劣化して熱間加工が困難になることもある。したがって、Sの含有量を0.002〜0.10%とした。
【0040】
Cu:
Cuは、Mnと複合添加すると降伏強度、降伏比及び靭性を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.01%未満では添加効果に乏しい。一方、Mnと複合添加した場合にはCuを0.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和して経済性が損なわれるだけでなく、靭性の著しい低下をもたらす。したがって、Cuの含有量を0.01〜0.5%とした。
【0041】
Ni:
Niは添加しなくても良い。添加すれば靭性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Niは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Niを0.2%を超えて含有させても前記の効果は飽和して経済性を損なうし、被削性が低下する。したがって、Niの含有量を0.2%以下(0を含む)とした。
【0042】
Cr:
Crは、強度を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Crは0.5%以上の含有量とする必要がある。しかし、1.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和しコストが嵩むばかりである。したがって、Crの含有量を0.5〜1.5%とした。
【0043】
Mo:
Moは添加しなくても良い。添加すればNiと同様に靭性を向上させる作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.2%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量を0.2%以下(0を含む)とした。
【0044】
V:
Vは添加しなくてもよい。添加すれば強度を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Vは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.50%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、経済性を損なうばかりである。したがって、Vの含有量を0.50%以下(0を含む)とした。
【0045】
Nb:
Nbは添加しなくてもよい。添加すれば強度を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Nbは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.05%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbの含有量を0.05%以下(0を含む)とした。
【0046】
Ti、Zr:
Ti、Zrは本発明において重要な元素であって、それぞれC及びSと結合してTi炭硫化物やZr炭硫化物を形成し、被削性を高める作用を有する。上記の効果は、TiとZrの含有量に関し、Ti(%)+Zr(%)の値が0.04%以上の場合に確実に得られる。しかし、Ti(%)+Zr(%)の値で1.0%を超えるTiとZrを含有させても被削性向上効果は飽和するのでコストが嵩んでしまう。なお、Ti(%)+Zr(%)の値が0.04〜1.0%でありさえすれば良いので、必ずしもTiとZrを複合して含有させる必要はない。Zrを添加しない、つまり、Tiを単独添加する場合に、Tiを1.0%を超えて含有させるとTi炭硫化物による被削性向上効果が飽和してコストが嵩むばかりか、Ti炭硫化物が粗大化して却って靭性の低下を招いてしまう。逆に、Tiを添加しない、つまりZrを単独で添加する場合に、Zrを1.0%を超えて含有させるとZr炭硫化物による被削性向上効果が飽和してコストが嵩むばかりか、Zr炭硫化物が粗大化して却って靭性の低下を招いてしまう。したがって、TiとZrの含有量をいずれも1.0%以下(0を含む)で、且つ、Ti(%)+Zr(%)の値を0.04〜1.0%とした。なお、良好な被削性と靭性を安定して得るためには、TiとZrの含有量の上限はそれぞれ0.8%とすることが好ましい。
【0047】
B:
Bは、鋼の焼入れ性を高めるとともに、靭性を向上させる作用がある。しかし、その含有量が0.0005%未満では添加効果に乏しい。一方、0.010%を超えて含有させてもその効果は飽和するばかりか、熱間加工性の低下を招くようになる。したがって、Bの含有量を0.0005〜0.010%とした。
【0048】
N:
本発明においてはNの含有量を低く制御することが極めて重要である。すなわち、NはTiやZrとの親和力が大きいために容易にTiやZrと結合してTiNやZrNを生成し、TiやZrを固定してしまうので、Nを多量に含有する場合には前記したTi炭硫化物やZr炭硫化物の被削性向上効果が充分に発揮できないこととなる。特に、TiやZrの含有量が低めの場合には、N含有量の影響が顕著となる。更に、粗大なTiNやZrNは靭性を低下させてしまう。したがって、N含有量を0.008%以下(0を含まない)とした。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の効果を高めるために、N含有量の上限は0.006%とすることが好ましい。
【0049】
Al:
Alは添加しなくてもよい。添加すれば鋼を脱酸する作用を有する。更に、結晶粒を微細化し、強度及び靭性を高める作用を有する。こうした効果を確実に得るには、Alは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.10%を超えて含有させると被削性や熱間加工性の低下を招く。したがって、Alの含有量を0.10%以下(0を含む)とした。ここで、Al含有量とは所謂「sol.Al(酸可溶性Al)量」のことをいう。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度を所定の値とするためには、TiやZrの酸化物が過剰に生成することを防ぐことが必要であるので、0.01%以上のAlを含有させることとするのが良い。
【0050】
Pb:
Pbは添加しなくても良い。添加すれば被削性を大きく高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Pbは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.30%を超えると疲労強度が著しく低下して耐疲労特性の劣化を招く。したがって、Pbの含有量を0.30%以下(0を含む)とした。
【0051】
Te:
Teは添加しなくてもよい。添加すれば被削性を一層高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Teは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.10%を超えると熱間加工性が著しく低下し、生産性を損なう。したがって、Teの含有量を0.10%以下(0を含む)とした。
【0052】
Ca:
Caも添加しなくてもよい。添加すればPbやTeと同様に被削性を一層高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Caは0.001%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.010%を超えると熱間加工性が低下して生産性を損なうようになる。したがって、Caの含有量を0.010%以下(0を含む)とした。
【0053】
fn1:
前述の(1)式で表されるfn1の値が0%以上の場合に前記したBの焼入れ性向上効果が確保でき、所望の高強度と良好な靭性が得られる。したがって、本発明では(1)式で表されるfn1の値を0%以上と規定する。このfn1の値の上限は特に規定されるものではなく、1.0であっても良い。
【0054】
fn2:
Nの含有量が0.008%以下(0を含まない)で、前述の(2)式で表されるfn2の値が0%を超える場合に前記したTi炭硫化物とZr炭硫化物の被削性向上効果が確保できる。fn2の値が0%以下の場合には、S量が過剰となるため、その分MnSが過剰生成してTi炭硫化物とZr炭硫化物による被削性向上効果が低下してしまう。したがって、(2)式で表されるfn2に関して0%を超える値と規定した。このfn2の値の上限は特に規定されるものではなく、Ti(%)+Zr(%)の値が1.0%でSが0.002%の場合の値であっても良い。
【0055】
(B)Ti炭硫化物、Zr炭硫化物のサイズと量
上記の化学組成を有する非調質鋼材の被削性をTi炭硫化物やZr炭硫化物によって高めるとともに、所望の強度と靭性を確保するためには、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度(TiとZrを複合添加する場合にはTi炭硫化物とZr炭硫化物の清浄度の和)で表される量を適正化しておくことが重要である。
【0056】
鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μmを超えると疲労強度や靭性が低下してしまう。なお、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径はいずれも7μm以下とすることが好ましい。Ti炭硫化物とZr炭硫化物は、それらの最大直径が小さすぎると被削性向上効果が小さくなってしまう。したがって、Ti炭硫化物とZr炭硫化物の最大直径の下限値は0.5μm程度とすることが好ましい。
【0057】
最大直径が10μm以下のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の量の和が清浄度で0.05%未満の場合には、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物による被削性向上効果が発揮できない。したがって、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つその量の和を清浄度で0.05%以上とした。なお、前記の清浄度の和は0.08%以上とすることが好ましい。上記のTi炭硫化物とZr炭硫化物の清浄度の和の値が大きすぎると疲労強度が低下する場合があるので、上記の清浄度の和の上限値は2.0%程度とすることが好ましい。
【0058】
上記したようなTi炭硫化物とZr炭硫化物の形態は基本的にはTi、Zr、S及びNの含有量で決定される。しかし、Ti炭硫化物やZr炭硫化物のサイズと清浄度(清浄度の和)を上述の値とするためには、TiやZrの酸化物が過剰に生成することを防ぐことが重要である。このためには、鋼が前記(A)項で述べた化学組成を有しているだけでは充分でない場合があるので、例えば、Si及びAlで充分脱酸し、最後にTiやZrを添加する製鋼法を採れば良い。
【0059】
なお、Ti炭硫化物とZr炭硫化物は、鋼材から採取した試験片を鏡面研磨し、その研磨面を被検面として倍率400倍以上で光学顕微鏡観察すれば、色と形状から容易に他の介在物と識別できる。すなわち、前記の条件で光学顕微鏡観察すれば、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の「色」は極めて薄い灰色で、「形状」はJISのB系介在物やC系介在物に相当する粒状(球状)として認められる。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の詳細判定は、前記の被検面をEDX(エネルギー分散型X線分析装置)などの分析機能を備えた電子顕微鏡で観察することによって行うこともできる。
【0060】
前記のTi炭硫化物やZr炭硫化物の清浄度は、既に述べたように、光学顕微鏡の倍率を400倍として、JIS G 0555に規定された「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」によって60視野測定した値をいう。なお、Ti炭硫化物やZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査すれば良い。
【0061】
(C)組織
非調質鋼材である熱間加工したままの鋼材の全組織中に占めるマルテンサイトの割合が面積率で20%未満の場合には、所望の1000MPa以上の引張強度が安定して得られない。一方、マルテンサイトの面積率が95%を超えると靭性の著しい低下を招く。
【0062】
全組織中のマルテンサイトの面積率が20〜95%の場合であっても、マルテンサイト以外の組織中に占めるベイナイトの割合が面積率で70%未満の場合には、1000MPa以上の引張強度と60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値とを安定して同時に確保することが困難となる。したがって、非調質鋼材の組織を、全組織中のマルテンサイトが面積率で20〜95%で、更に、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上であるものと規定した。
【0063】
なお、全組織中にマルテンサイトが占める割合は、面積率で40〜60%であることが好ましい。
【0064】
又、全組織中のマルテンサイトの面積率が20〜95%の場合であれば、マルテンサイト以外の組織においてベイナイトの占める割合が面積率で100%、つまり、組織がマルテンサイトとベイナイトとの完全な混合組織であっても良い。
【0065】
(A)項に記載の化学組成を有する鋼は、(B)項に記載したTi炭硫化物、Zr炭硫化物のサイズと量を確保するために、例えば、Si及びAlで充分脱酸し、最後にTiやZrを添加して溶製され、その後、熱間での加工(圧延や鍛造)を受け、(C)項に記載した組織に調整され、更に、切削加工されて所定形状の機械構造部品に仕上げられる。
【0066】
(D)鋼の加熱温度
熱間加工のための鋼の加熱温度が1100℃未満では、炭化物などがオーステナイト中に充分固溶せずに焼入れ性が低下したり、変形抵抗が大きくなって熱間での加工が困難になる場合がある。したがって、鋼の加熱温度を1100℃以上とした。なお、この加熱温度の上限は1300℃程度とすることが好ましい。
【0067】
(E)熱間加工終了温度
熱間加工終了温度が900℃未満では、変形抵抗が大きくなるばかりか、炭化物や窒化物が凝集粗大化し、その結果、結晶粒が著しく粗大化して靭性の低下を招く場合がある。したがって、熱間加工終了温度を900℃以上とした。なお、この熱間加工の終了温度は1050℃程度を上限とすることが好ましい。
【0068】
(F)冷却速度
熱間加工後の冷却速度が30℃/分未満の場合には、所望の組織、つまり全組織中のマルテンサイトが面積率で20〜95%で、更に、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上である組織を、安定して鋼材に付与することが困難となる。一方、300℃/分を超える場合には後述の実施例で示すように全組織中のマルテンサイトの面積率が95%を超えてしまい靭性の著しい低下を招く。したがって、熱間加工後の冷却速度を30〜300℃/分とした。
【0069】
【実施例】
(実施例1)
表1、表2に示す化学組成の鋼を通常の方法によって試験炉を用いて150kg真空溶製した。なお、Ti酸化物及びZr酸化物の生成を防ぐために、SiやAlで充分脱酸し種々の元素を添加した最後にTiとZrを添加して、Ti炭硫化物とZr炭硫化物のサイズと清浄度(清浄度の和)を調整するようにした。
【0070】
表1における鋼1〜15は化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼であり、表2における鋼16〜25及び鋼27〜30はその成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
次いで、通常の方法によって前記鋼番号の鋼塊を1200℃に加熱した後、1000℃の仕上げ温度で厚さ35mm×幅90mm幅×長さ1000mmの鋼板に熱間鍛造し、その後鋼組成に応じて30〜45℃/分の冷却速度で冷却した。
【0074】
こうして得られた鋼板の中心部から、JIS4号引張試験片とJIS3号シャルピー衝撃試験片(2mmUノッチシャルピー衝撃試験片)を切り出し、常温で試験を行った。鋼板の中心部からは組織観察用の試験片も切り出し、光学顕微鏡による中心部の組織観察を行った。なお、全組織中のマルテンサイトの面積率及びマルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合(面積率)は、いずれも通常の方法で画像処理して判定した。
【0075】
上記の熱間鍛造した鋼板から、JIS G 0555の図6に準じて試験片を採取し、鏡面研磨した300mm2 の被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物を他の介在物と区分しながらその清浄度(清浄度の和)も測定した。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0076】
被削性評価のためのドリル穿孔試験も実施した。すなわち、前記した熱間鍛造した厚さ35mmで幅が90mmの鋼板を用いて、その厚さ方向に貫通孔を開け、刃先摩損により穿孔不能となったときの貫通孔の個数を数え、被削性の評価を行った。貫通孔の個数が500個に達したものはその時点で穿孔試験を中止した。穿孔条件は、JIS高速度工具鋼SKH51のφ8mmストレ−トシャンクドリルを使用し、水溶性の潤滑剤を用いて、穴の中心間隔10mm、送り0.15mm/rev、回転数745rpmの条件で行った。
【0077】
表3に各種試験の結果を示す。なお、「Ti、Zr炭硫化物」とした欄において、TiとZrとを複合添加した場合には「最大直径」はいずれか大きい方の炭硫化物の値であり、清浄度は清浄度の和を意味する。
【0078】
【表3】
【0079】
表3から、化学組成及び最大直径が10μm以下のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の清浄度(清浄度の和)が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼1〜15を素材とするものについては、組織はいずれも全組織中のマルテンサイトが面積率で20〜95%で、更に、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上であり、所望の700MPa以上の降伏強度、1000MPa以上の引張強度、0.65以上の降伏比と60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値が得られている。
【0080】
これに対して、成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼は、以下に述べるように、降伏強度、引張強度、降伏比、2mmUノッチシャルピー衝撃値の少なくとも1つが所望の値に達していないか、被削性が低い。
【0081】
鋼16〜25、鋼27及び鋼30は、組織はいずれも全組織中のマルテンサイトが面積率で20〜95%で、更に、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上であるが、降伏強度、引張強度、降伏比と2mmUノッチシャルピー衝撃値のうち少なくとも1つが所望の値に達していない。
【0082】
すなわち、Cの含有量が低めに外れた鋼16、Siの含有量が低めに外れた鋼18及びCrの含有量が低めに外れた鋼24は引張強度又は、降伏強度と引張強度の双方が目標値に未達である。
【0083】
Cの含有量が高めに外れた鋼17、Pの含有量が高めに外れた鋼20、Sの含有量が高めに外れた鋼21、Cuの含有量が高めに外れた鋼23及びTiの含有量が高めに外れた鋼30は2mmUノッチシャルピー衝撃値が目標値に達していない。
【0084】
Mnの含有量が低めに外れた鋼19及びCuの含有量が低めに外れた鋼22は降伏比が目標値に達していない。鋼19はfn2が負の値であり、「Ti、Zr炭硫化物」欄における清浄度が規定の値を下回るため被削性も低い。
【0085】
Alの含有量が高めに外れた鋼25は被削性が低い。
【0086】
fn2が負の値で、「Ti、Zr炭硫化物」欄における清浄度が規定の値を下回る鋼27は被削性が低い。
【0087】
鋼28及び鋼29は本発明で規定する組織が得られておらず、強度(降伏強度と引張強度)及び2mmUノッチシャルピー衝撃値が目標値に達していない。すなわち、Mn、Cr及びBの含有量が低めに外れるために、組織がマルテンサイトを含まないものとなった鋼28、及びfn1の値が低めに外れるとともにMn及びCrの含有量が低めに外れるために、やはり組織がマルテンサイトを含まないものとなった鋼29は、降伏強度と引張強度及び2mmUノッチシャルピー衝撃値が目標値に達していない。鋼29はfn2も負の値であるため被削性も低い。
【0088】
(実施例2)
表4に示す鋼31及び鋼32を通常の方法によって試験炉を用いて150kg真空溶製した。鋼31、鋼32はいずれも化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼である。なお、Ti酸化物及びZr酸化物の生成を防ぐために、SiやAlで充分脱酸し種々の元素を添加した最後にTiとZrを添加して、Ti炭硫化物とZr炭硫化物のサイズと清浄度(清浄度の和)を調整するようにした。
【0089】
【表4】
【0090】
次いで、通常の方法によって前記鋼番号の鋼塊を1200℃に加熱した後、1000℃の仕上げ温度で厚さ35mm×幅90mm幅×長さ1000mmの鋼板に熱間鍛造した。鍛造後は鋼31を母材鋼とする鋼板は40℃/分及び500℃/分の冷却速度で、又、鋼32を母材鋼とする鋼板は40℃/分及び10℃/分の冷却速度で冷却した。
【0091】
こうして得られた鋼板の中心部から、JIS4号引張試験片とJIS3号シャルピー衝撃試験片(2mmUノッチシャルピー衝撃試験片)を切り出し、常温で試験を行った。鋼板の中心部からは組織観察用の試験片も切り出し、光学顕微鏡による中心部の組織観察を行った。なお、全組織中のマルテンサイトの面積率及びマルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合(面積率)は、いずれも通常の方法で画像処理して判定した。
【0092】
又、上記の熱間鍛造した鋼板から、JIS G 0555の図6に準じて試験片を採取し、鏡面研磨した300mm2 の被検面を、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して、Ti炭硫化物及びZr炭硫化物を他の介在物と区分しながらその清浄度(清浄度の和)も測定した。Ti炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径も、倍率が400倍の光学顕微鏡で60視野観察して調査した。
【0093】
表5に各試験結果を示す。なお、表で「Ti、Zr炭硫化物」とした欄における「最大直径」はTiとZrのいずれか大きい方の炭硫化物の値であり、清浄度は清浄度の和を意味する。
【0094】
【表5】
【0095】
鋼31及び鋼32を熱間鍛造後、本発明で規定する範囲内の冷却速度の40℃/分で冷却した場合(試験番号1及び3)には、その組織はいずれも全組織中のマルテンサイトが面積率で20〜95%で、更に、マルテンサイト以外の組織中にベイナイトの占める割合が面積率で70%以上であり、所望の700MPa以上の降伏強度、1000MPa以上の引張強度、0.65以上の降伏比と60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値が得られている。
【0096】
これに対して、本発明鋼であっても熱間鍛造後の冷却速度が本発明で規定する上限を外れた500℃/分の場合(試験番号2)には、全組織中のマルテンサイトの面積率が95%を超えるので靭性が著しく低下し、2mmUノッチシャルピー衝撃値が目標値に達していない。
【0097】
又、本発明鋼であっても熱間鍛造後の冷却速度が本発明で規定する下限を外れた10℃/分の場合(試験番号4)には、全組織中のマルテンサイトの面積率が20%を下回るので引張強度と降伏強度とが目標値に達していない。
【0098】
【発明の効果】
本発明による被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材を用いれば、700MPa以上の降伏強度、1000MPa以上の引張強度、0.65以上の降伏比と60J/cm2 以上の2mmUノッチシャルピー衝撃値を有する機械構造部品を低コストで製造することができる。このマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材は、本発明の方法によって比較的容易に得られる。
Claims (2)
- 重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.10%以下(0を含まない)、S:0.002〜0.10%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.2%以下(0を含む)、V:0.50%以下(0を含む)、Nb:0.05%以下(0を含む)、Ti:1.0%以下(0を含む)、Zr:1.0%以下(0を含む)で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、B:0.0005〜0.010%、N:0.008%以下(0を含まない)、Al:0.10%以下(0を含む)、Pb:0.30%以下(0を含む)、Te:0.10%以下(0を含む)、Ca:0.010%以下(0を含む)を含み、下記(1)式で表されるfn1の値が0%以上、下記(2)式で表されるfn2の値が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和が清浄度で0.05%以上で、且つ、全組織中に占めるマルテンサイトの割合が面積率で20〜95%で、マルテンサイト以外の組織中に占めるベイナイトの割合が面積率で70%以上であることを特徴とする被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材。
fn1=Ti(%)+0.5Zr(%)−3.4N(%)・・・・(1)
fn2=Ti(%)+Zr(%)−1.2S(%)・・・・(2) - 重量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.1〜1.0%、Mn:1.5〜3.0%、P:0.10%以下(0を含まない)、S:0.002〜0.10%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.2%以下(0を含む)、V:0.50%以下(0を含む)、Nb:0.05%以下(0を含む)、Ti:1.0%以下(0を含む)、Zr:1.0%以下(0を含む)で、且つ、Ti(%)+Zr(%):0.04〜1.0%、B:0.0005〜0.010%、N:0.008%以下(0を含まない)、Al:0.10%以下(0を含む)、Pb:0.30%以下(0を含む)、Te:0.10%以下(0を含む)、Ca:0.010%以下(0を含む)を含み、前記(1)式で表されるfn1の値が0%以上、前記(2)式で表されるfn2が0%を超え、残部はFe及び不可避不純物の化学組成で、鋼中のTi炭硫化物及びZr炭硫化物の最大直径が10μm以下で、且つ、その量の和が清浄度で0.05%以上である鋼を、1100℃以上の温度に加熱して熱間加工し、熱間加工を900℃以上の温度で終了した後30〜300℃/分の冷却速度で冷却することを特徴とする被削性に優れたマルテンサイト・ベイナイト型非調質鋼材の製造方法。
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