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JP3875001B2 - 石油系重質油の水素化分解方法 - Google Patents

石油系重質油の水素化分解方法 Download PDF

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JP3875001B2 JP2000214044A JP2000214044A JP3875001B2 JP 3875001 B2 JP3875001 B2 JP 3875001B2 JP 2000214044 A JP2000214044 A JP 2000214044A JP 2000214044 A JP2000214044 A JP 2000214044A JP 3875001 B2 JP3875001 B2 JP 3875001B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油系重質油の水素化分解方法に関する技術分野に属し、より詳細には、重金属を含有する石油系重質油の水素化分解方法に関し、特には、常圧蒸留残渣油や減圧蒸留残渣油の如く重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化された油を得る方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
原油の重質化と需要の軽質化が同時に進行するという需要の急激な変化を背景に、不足する軽質製品を余剰の重質油から製造する重質油分解技術が注目されており、有限な石油埋蔵量の減少が不可避の情勢にあってその重要度がますます増大してきている。
【0003】
これまでに、重質油の熱分解、水素化分解について多くの方法が提案されているが、これらの方法は減圧蒸留残渣油等のような重質油の軽質化に対しては、なんらかの問題点を有する。この詳細を以下説明する。
【0004】
減圧蒸留残渣油等のような重質油は、かなり大量の窒素化合物及び硫黄化合物を含む傾向にあり、更に、重質油分解を触媒存在下で行わせる場合に極めて有害となりがちな多量の有機金属性不純物を含有している。かかる金属性不純物としては、ニッケル(Ni)及びバナジウム(V)を含むものが最も多いが、他の金属を含むものも多い。これらの金属性不純物は、重質油中のアスファルテン等の比較的高分子の有機化合物と化学的に結合しており、これらが存在すると、窒素、硫黄及び酸素含有化合物の分解除去並びに重質有機物の水素化分解反応に対する触媒活性がかなり阻害される。
【0005】
触媒を用いずに減圧蒸留残渣油等の如き重質油を分解処理する方法としては、熱分解方法であるところの、いわゆるコーカー法が知られているが、この方法においては、多量に副生するコークスの処理の問題に加えて、過分解によるガス生成量の増加のため、得られる留出油の収率低下が免れない上、得られる留出油は芳香族分、オレフィン成分が多く、品質の悪いものになるという欠点がある。
【0006】
粒状の触媒を反応器内に充填して行う固定床方式の水素化分解方法では、高度に軽質化を行うと、前記の如き重質油中のアスファルテンやV、Ni等の重金属の影響を受け、副生するコーク(Coke)や重金属が次第に触媒層に沈積し、この結果、触媒の活性低下や触媒層の閉塞をもたらし、長期連続運転をし得なくなるという問題点がある。
【0007】
Co-Mo 系等の押出成形粒子触媒を使用して沸騰床方式の反応器で水素化分解を行わせる方法においては、沸騰床反応器内の激しい混合状態により、コーク等の蓄積による圧力損失の増加の問題はなく、又、運転中に触媒の抜き出しと補給とが可能であることから、触媒の活性を一定に保ったまま、長期に連続運転でき、固定床方式の水素化分解方法に比べて利点を有している。しかしながら、触媒を循環させて運転するため、ポンプ等のメカニカルな問題があり、固定床方式の水素化分解方法の場合に比べて運転の難しさがある。また、触媒が高価であり、反応圧力は一般的に150 〜200kg/cm2 と高く、反応生成物の脱硫、脱窒素が不充分であるという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、前記従来の方法の有する問題点を克服し、減圧蒸留残渣油等の如く重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、コーク等の蓄積を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、経済的に且つ高収率で、高度に軽質化され且つ脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができる石油系重質油の水素化分解方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法は請求項1〜11記載の石油系重質油の水素化分解方法としており、それは次のような構成としたものである。
【0010】
即ち、請求項1記載の石油系重質油の水素化分解方法は、重金属を含有する石油系重質油の水素化分解方法であって、下記工程(a) 〜(h) を有することを特徴とする石油系重質油の水素化分解方法である(第1発明)。
(a) 重金属を含有する石油系重質油と触媒として添加されたリモナイト鉄鉱石と助触媒として添加された硫黄とを含む原料スラリーと、水素ガスとを、懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2(2.94〜15.69MPa) 、反応温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解する第一反応工程。
(b) 前記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物を、気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分と、液体状反応生成物及び前記触媒並びに前記重金属を含む液相分とに分離する第一気液分離工程。
(c) 前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた気相分を、Ni-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する第二反応工程。
(d) 前記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を、未反応水素を含む気相分と、液相反応生成物とに分離する第二気液分離工程。
(e) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を、蒸留して所定の留分に分離する蒸留工程。
(f) 前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた液相分から減圧過程で液相分中の軽質反応生成物を気相側にフラッシュ分離するフラッシュ分離工程。
(g) 前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む液相分の一部と、固液分離用溶剤とを、沈降式固液分離装置に供給し、該装置にて、前記重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む常温で固体である成分と、前記中質反応生成物及び前記中重質反応生成物並びに前記重質反応生成物を含む液体成分とに分離する固液分離工程。
(h) 前記固液分離工程(g) で分離されて得られた液体成分と、前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む液相分であって前記沈降式固液分離装置へ供給された液相分以外の残部の液相分とを、前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程。
【0011】
請求項2記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第一反応工程(a) の懸濁床反応器での反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、反応温度:440 〜450 ℃、反応時間:60〜120 分である請求項1記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第2発明)。
【0012】
請求項3記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第一反応工程(a) での触媒のリモナイト鉄鉱石の添加量が石油系重質油の量に対して鉄成分として0.3 〜2質量%であり、かつ、助触媒の硫黄の添加量がリモナイト鉄鉱石中の鉄含有量に対して原子比で1〜3倍である請求項1又は2記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第3発明)。
【0013】
請求項4記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第一反応工程(a) でのリモナイト鉄鉱石として、石油系溶剤中で機械的に粉砕された平均粒子径2μm 以下の微粉状のリモナイト鉄鉱石を用いる請求項1、2又は3記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第4発明)。請求項5記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第一反応工程(a) でのリモナイト鉄鉱石として、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石を用いる請求項1、2、3又は4記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第5発明)。
【0014】
請求項6記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記リサイクル工程(h) において前記第一反応工程(a) にリサイクルする液体成分及び液相分中の重質反応生成物と重質残渣との合計量が、前記第一反応工程(a) に供給される石油系重質油に対して10〜130 質量%である請求項1、2、3、4又は5記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第6発明)。
【0015】
請求項7記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記固液分離工程(g) での沈降式固液分離装置が温度:200 〜300 ℃、圧力:20〜40kg/cm の条件で操作される請求項1、2、3、4、5又は6記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第7発明)。
【0016】
請求項8記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第二反応工程(c) の固定床反応器での反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:330 〜360 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第8発明)。
【0017】
請求項9記載の石油系重質油の水素化分解方法は、下記工程(i) 〜(k) を含む請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第9発明)。
(i) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた気相分を、Ni-Mo 系触媒またはCo-Mo 系触媒を有する反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜420 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する第三反応工程。
(j) 前記第三反応工程(i) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を気相分と液相分とに分離する第三気液分離工程。
(k) 前記第三気液分離工程(j) で分離されて得られた液相分を蒸留する蒸留工程。
【0018】
請求項10記載の石油系重質油の水素化分解方法は、前記第三反応工程(i) の反応器における反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:340 〜390 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1である請求項9記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第10発明)。
【0019】
請求項11記載の石油系重質油の水素化分解方法は、下記工程(l) を含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の石油系重質油の水素化分解方法である(第11発明)。
(l) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は例えば次のようにして実施する。
減圧蒸留残渣油等のように重金属を含有する石油系重質油に触媒としてリモナイト鉄鉱石を添加すると共に助触媒として硫黄を添加して原料スラリーとなし、該原料スラリーを水素ガスと共に懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解する第一反応工程(a) 、前記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物▲1▼を、気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分▲2▼と、液体状反応生成物及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む液相分▲3▼とに分離する第一気液分離工程(b) 、前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた気相分▲2▼をNi-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で水素化処理する第二反応工程(c) 、前記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物▲4▼を、未反応水素を含む気相分▲5▼と、液相反応生成物▲6▼とに分離する第二気液分離工程(d) 、前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物▲6▼を蒸留して所定の留分に分離する蒸留工程(e) 、前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた液相分▲3▼から減圧過程で液相分中の軽質反応生成物を気相側にフラッシュ分離するフラッシュ分離工程(f) 、前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む液相分▲7▼の一部〔7A〕を固液分離用溶剤と共に沈降式固液分離装置に供給し、該装置にて、前記重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む常温で固体である成分▲8▼と、前記中質反応生成物及び前記中重質反応生成物並びに前記重質反応生成物を含む液体成分▲9▼とに分離する固液分離工程(g) 、前記固液分離工程(g) で分離されて得られた液体成分▲9▼と、前記液相分▲7▼の残部〔前記沈降式固液分離装置へ供給された液相分〔7A〕以外の液相分〔7B〕(〔7B〕=▲7▼の全部−〔7A〕)〕とを、前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程(h) を並行して実施する。
【0021】
このような形態で本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法が実施され、そして蒸留工程(e) から所定留分の製品(軽質な油)が連続的あるいは断続的に得られる。
【0022】
以下、本発明について主にその作用効果を説明する。
【0023】
本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法は、第一反応工程(a) においては懸濁床反応器にて触媒としてリモナイト鉄鉱石を用い、石油系重質油を水素化分解するようにしており、このリモナイト鉄鉱石は脱窒及び脱硫に対する触媒活性は低いが、水素化分解に対する触媒活性が非常に高く、しかも安価で使い捨て可能な触媒である。更に、前記第一反応工程(a) 及びそれ以降の工程(b) 〜(f) を経て得られた重質反応生成物等を含む液体成分▲9▼、及び、かかる重質反応生成物等の他に使用済み触媒も含む液相分▲7▼を、リサイクル工程(h) により前記第一反応工程(a) にリサイクルするようにしているので、この液体成分▲9▼及び液相分▲7▼中の重質反応生成物等は前記第一反応工程(a) において水素化分解され、又、液相分▲7▼中の使用済み触媒は依然として水素化分解に対する触媒活性を有しているので、前記第一反応工程(a) において有効な触媒として働く。故に、かかる第一反応工程(a) 及びリサイクル工程(h) に主に起因して、コークの蓄積を抑制し、高収率で軽質化された油を得ることができ、又、前記のように触媒が安価であり、しかもこれが前記第一反応工程(a) にリサイクルされて使用されるので、経済性に優れている。
【0024】
更に、第一気液分離工程(b) において、前記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物▲1▼を、気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分▲2▼と、液体状反応生成物及び触媒(前記第一反応工程(a) で使用された触媒)並びに重金属を含む液相分▲3▼とに分離した後、第二反応工程(c) において前記気相分▲2▼をNi-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器にて水素化処理するようにしている。この際、第二反応工程(c) に供給される気相分▲2▼中には、前記第一反応工程(a) からのアスファルテン成分は含まれず、重金属等と共にほぼ全量、第一気液分離工程(b) の液相分▲3▼中に存在している。このため、脱硫及び脱窒素等に対する触媒活性を低下させると共にコークを発生させて触媒の失活や触媒層の閉塞をもたらす重金属やアスファルテンが除かれて共存しない状態で、気相分▲2▼中の気体状反応生成物が固定床反応器にて水素化処理されることになり、それ故に、コークの蓄積や触媒被毒を抑制し得てNi-Mo 系触媒やCo-Mo 系触媒の寿命が長くなり、長期連続運転をし得、また、脱硫及び脱窒素並びに更なる軽質化が高度になされる。そして、前記第二反応工程(c) に続き、前述の如き第二気液分離工程(d) 、蒸留工程(e) 、フラッシュ分離工程(f) 、固液分離工程(g) 、リサイクル工程(h) が行われる。故に、かかる第一気液分離工程(b) 及び第二反応工程(c) に主に起因して、コークの蓄積等を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、高度に脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができる。
【0025】
従って、本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法によれば、減圧蒸留残渣油等の如く重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、コークの蓄積等を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、経済的に且つ高収率で、高度に軽質化され且つ脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができる(第1発明)。
【0026】
上記本発明(第1発明)の作用効果等の詳細を、以下に説明する。
【0027】
第一反応工程(a) での水素化分解用の触媒としては、基本的に触媒として活性が高いこと(触媒として水素化分解効率を高める機能が高い事)、経済上の観点から安価で入手し易いこと等が必要である。安価であるという点では、硫化鉄、酸化鉄、赤泥等の鉄系触媒が知られているが、触媒としての活性(以下、触媒活性という)が充分でないという問題点がある。本発明者らは、鉄系触媒種の石油系重質油に対する水素化分解活性に及ぼす影響を鋭意検討してきた結果、リモナイト鉄鉱石(褐鉄鉱)が石油系重質油に対する触媒活性に優れていることを見出した。かかる知見に基づき、第一反応工程(a) での水素化分解用の触媒としてリモナイト鉄鉱石を用いるようにしている。そして、第一反応工程(a) においては、重金属を含有する石油系重質油に触媒としてリモナイト鉄鉱石を添加すると共に助触媒として硫黄を添加して原料スラリーとなし、該原料スラリーを水素ガスと共に懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解するようにしている。
【0028】
上記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物▲1▼は、第一気液分離工程(b) に供給され、気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分▲2▼と、液体状反応生成物及び前記触媒(上記第一反応工程(a) で使用された触媒)並びに重金属を含む液相分▲3▼とに分離される。
【0029】
上記第一気液分離工程(b) で液相分▲3▼と分離されて得られた気相分▲2▼は、第二反応工程(c) のNi-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器に供給され、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理される。このとき、上記気相分▲2▼中の気体状反応生成物は、硫化水素ガス(H2S)、炭化水素ガス(C1-C4)、軽質反応生成物(C5-171℃)、中質反応生成物(171-343 ℃)、中重質反応生成物(343-450 ℃)であり、第二反応工程(c) の触媒活性に影響を及ぼす重金属及びアスファルテンは殆ど含んでいない。これは、重質油中有機化合物と化学的に結合していた重金属成分は、第一反応工程(a) 内で分解し、触媒への吸着等により、有機化合物である重質油水素分解生成物(第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物)から分離除去されたものと考えられ、原料の石油系重質油中の重金属成分のほぼ全量は第一気液分離工程(b) の液相分▲3▼に触媒と共に含まれて下流の工程側に排出される。また、重質油中に多量に含まれていたアスファルテンは、第一反応工程(a) で分解され、その量が少なくなると共に、さらに第一反応工程(a) の反応器から流出したアスファルテン成分は第一気液分離工程(b) で、その沸点が非常に高いがために、気相側には移行せず、液相側にそのほぼ全量が上記重金属等と共に含まれる。このため、第二反応工程(c) においては、脱硫及び脱窒素等に対する触媒活性を低下させると共にコークを発生させて触媒の失活や触媒層の閉塞をもたらす重金属成分やアスファルテンが除かれて共存しない状態で、気相分▲2▼中の気体状反応生成物が固定床反応器にて水素化処理されることになる。
【0030】
また、第一反応工程(a) で脱アルキル化がおこり、アルカリ置換基による触媒活性点への立体障害が軽減されるので、第二反応工程(c) において触媒(Ni-Mo 系触媒、Co-Mo 系触媒)は、脱硫、脱窒素反応に対して優れた触媒活性を発揮する。
【0031】
故に、コークの蓄積や触媒被毒を抑制し得てNi-Mo 系触媒やCo-Mo 系触媒の寿命が長くなり、安定的に長期連続運転をし得、また、高度に脱硫及び脱窒素並びに軽質化されたされた水素化精製油、及び、炭化水素ガス、硫化水素ガス、アンモニアガス(水素化処理反応生成物)が生成される。
【0032】
上記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物▲4▼は、第二気液分離工程(d) に供給され、未反応水素を含む気相分▲5▼と、液相反応生成物▲6▼とに分離される。
【0033】
上記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物▲6▼は、蒸留工程(e) に供給され、蒸留されて所定の留分に分離される。例えば、ナフサ(軽質反応生成物、C5-171℃)、灯軽油(中質反応生成物、171-343 ℃)、減圧軽油(中重質反応生成物、343 ℃+)に分留される。
【0034】
上記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた液相分▲3▼は、フラッシュ分離工程(f) に供され、液相分▲3▼から減圧過程で液相分中の軽質反応生成物を気相側にフラッシュ分離する。
【0035】
前記第一反応工程(a) において触媒として添加されるリモナイト鉄鉱石は、安価で使い捨て可能な触媒であり、この触媒の添加量に見合う量だけ第一気液分離工程(b) の液相側ラインの下流に位置するフラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物を気相側に分離除去した後の液体留分(液相分▲7▼)から固液分離されて系外に排出され、又、これに伴って重質残渣及び重金属も系外に排出される〔固液分離工程(g) 〕。
【0036】
固液分離方法としては、一般的には蒸留法、遠心分離法、ろ過法等があるが、蒸留法では、固液混合物を蒸留塔ボトムから抜き出す方法が採られ、固体に同伴する液体量が多く、それらが系外に排出されることになるので、油分のロスが多くなるという欠点がある。又、大きくても数十μm 程度の固体が液体中に含まれる本発明での固液分離対象の流体に対して、遠心分離法やろ過法では、設備面や分離効率等の点から問題が多い。そこで、本発明においては、固液分離用溶剤を添加することによる沈降式固液分離法を採用し、これにより固液分離工程(g) を行う。この詳細を以下説明する。
【0037】
前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた液相分▲7▼には、中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣および触媒(前記第一反応工程(a) で用いられた触媒)並びに重金属(原料の石油系重質油中に含有されていた重金属)が含まれている。この液相分▲7▼を沈降式固液分離装置に供給し、沈降式固液分離を行うと、液相分▲7▼中の固体の粒径が小さくて沈降速度が遅いので装置規模が大きくなる。そこで、この液相分▲7▼と、この液相分▲7▼よりも沸点が低く、且つ、固液分離条件下で重質反応生成物と重質残渣とからなる物質の一部を溶解し、残部を不溶とするような溶剤とを沈降式固液分離装置に供給し、沈降式固液分離を行う。そうすると、この溶剤に不溶な物質の中、その一部は全くの固体としての性質を有するものではなく、固体と液体の中間的な性状を有するものであり、それが無機質の固体(触媒、触媒に吸着された重金属、コーク)間のバインダー的役割を果して凝集を促進し、結果として固体粒子が成長し短時間で沈降する。そして、沈降式固液分離装置の下部から沈降物をスラッジとして抜き出し、溶剤は回収して循環使用する。一方、沈降式固液分離装置の上部から上澄み液を採取する。この上澄み液は無機質の固体を殆ど含んでおらず、フラッシュ蒸留等により溶剤を回収し、残りは第一反応工程(a) にリサイクルする。この回収された溶剤は固液分離工程(g) で循環使用する。
【0038】
即ち、前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに重金属を含む液相分▲7▼の一部〔7A〕を固液分離用溶剤と共に沈降式固液分離装置に供給し、該装置にて、前記重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに重金属を含む常温で固体である成分▲8▼と、前記中質反応生成物及び前記中重質反応生成物並びに前記重質反応生成物を含む液体成分▲9▼とに分離する固液分離工程(g) を行う。
【0039】
そして、上記固液分離工程(g) で分離されて得られた液体成分▲9▼を第一反応工程(a) にリサイクルする。また、前記液相分▲7▼の残部〔前記沈降式固液分離装置へ供給された液相分〔7A〕以外の液相分〔7B〕(〔7B〕=▲7▼の全部−〔7A〕)〕を、第一反応工程(a) にリサイクルする〔リサイクル工程(h) 〕。
【0040】
上記の如く第一反応工程(a) にリサイクルされた液体成分▲9▼及び液相分▲7▼の残部はいずれも大部分が常圧で沸点が450-525 ℃の重質反応生成物等であり、重質な留分であるが、上記第一反応工程(a) において比較的容易に水素化分解されて軽質化される。また、上記液相分▲7▼の残部は、重質反応生成物等の他に使用済み触媒も含んでおり、この使用済み触媒は依然として水素化分解に対する触媒活性を有しているので、第一反応工程(a) において有効な触媒として働き、このため第一反応工程(a) への新たな触媒の添加の必要量を軽減することができる。
【0041】
故に、高収率で軽質化された油を得ることができ、又、前記のように触媒が安価であり、しかもこれが前記第一反応工程(a) にリサイクルされて使用されるので、経済性に優れている。
【0042】
従って、本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法によれば、減圧蒸留残渣油等の如く重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、コークの蓄積を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、経済的に且つ高収率で、高度に軽質化され且つ脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができる(第1発明)。
【0043】
本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法において、第一反応工程(a) の懸濁床反応器での反応条件を、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分としている理由について、以下説明する。
【0044】
反応圧力を30〜160kg/cm2 としているのは、30kg/cm2〔9.80665 ×104Pa/(kg/cm2)×30kg/cm2=2.94×106Pa =2.94MPa 〕未満とすると、水素分圧が小さいために、コーク生成量の増大が起こり、160kg/cm2 超とすると、増圧による反応促進の寄与度は顕著でなく、結果的にコスト高となるからである。反応温度を430 〜455 ℃としているのは、430 ℃未満とすると、水素化分解反応が促進せず、軽質化した油を高収率で製造するのは困難であり、455 ℃超とすると、熱分解が激しくなり、重縮合反応の速度が大きくなってコーク生成量が急激に増加するからである。反応時間を30〜180 分としているのは、30分未満とすると、高収率の油製造が困難であり、180 分超とすると、水素化分解反応が進みすぎて、炭化水素ガスの生成量が多くなり、軽質化された油の製造量が低下するばかりでなく、水素消費量も必要以上に多くなり、結果的にコスト高となるからである。
【0045】
上記懸濁床反応器での反応条件について、これを反応圧力:50〜100kg/cm2 、反応温度:440 〜450 ℃、反応時間:60〜120 分とすることが望ましい(第2発明)。これは、本反応条件下で、コーク生成量がより低く抑えられ、より高い収率で軽質化された油がより経済的に製造し得るからである。
【0046】
前記第二反応工程(c) の固定床反応器での反応条件を、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1としている理由について、以下説明する。
【0047】
反応圧力を30〜160kg/cm2 としているのは、経済的観点から第一気液分離工程(b) の気相分の昇圧を行なわず、第一反応工程(a) と同一の圧力範囲に設定し、この反応圧力条件下でコーク蓄積が抑制され、長期連続運転が可能であるからである。処理運転開始時の反応温度を310 〜380 ℃としているのは、310 ℃未満とすると、固定床触媒による脱硫、脱窒素、並びに水素化分解反応速度が遅く、充分な反応が行なわれず、380 ℃超とすると、過度な水素化分解により炭化水素ガス収率が増加して、油分収率の減少が大きくなるからである。液空間速度を0.3 〜2hr-1としているのは、0.3 hr-1未満とすると、液空間速度低下による脱硫、脱窒素率等の反応性向上効果が顕著でなく、結果的にコスト高となり、2hr-1超とすると、脱硫、脱窒素率等の反応成績が充分でないからである。
【0048】
上記固定床反応器での反応条件について、これを反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:330 〜360 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1とすることが望ましい(第8発明)。これは、この条件下で長期連続運転と経済性との観点から最も効率的に反応させ得て、高度に脱硫、脱窒素、並びに軽質化された製品油が製造できるからである。
【0049】
前記第一反応工程(a) での触媒のリモナイト鉄鉱石の添加量を、石油系重質油の量に対して鉄成分として0.3 〜2質量%とすることが望ましい(第3発明)。これは、リモナイト鉄鉱石の添加量を0.3 質量%未満とすると、特にアスファルテン成分及びコークの収率が増大する傾向があり、2質量%超とすると、450 ℃以下の油収率増大効果が顕著ではなくなるからである。また、助触媒の硫黄の添加量については、触媒のリモナイト鉄鉱石から触媒活性を発現するピロータイトに転換させるためにリモナイト鉄鉱石中の鉄含有量に対して原子比で1倍以上添加することが望ましいが、それ以上の添加量については経済的観点から例えばリモナイト鉄鉱石中の鉄含有量に対して原子比で3倍以下の添加量とすることが望ましい(第3発明)。
【0050】
前記第一反応工程(a) での触媒のリモナイト鉄鉱石として、平均粒子径2μm 以下の微粉状のリモナイト鉄鉱石を用いることが望ましい(第4発明)。触媒の平均粒子径が大きい場合、触媒の実効表面積が小さいために触媒と原料の石油系重質油との接触効率が低く、触媒活性が低いが、触媒の平均粒子径が平均粒子径2μm 以下と小さくなると、触媒の実効表面積が増大して触媒活性が高くなるからである。このような点から触媒の平均粒子径は小さいほど良く、さらに平均粒子径1μm 以下とすることが望ましい。
【0051】
かかる平均粒子径2μm 以下の微粉状のリモナイト鉄鉱石は、リモナイト鉄鉱石を機械的に粉砕することにより得られるが、この粉砕は乾式ではなく、石油系溶剤中で行われることが望ましい(第4発明)。気流式粉砕機等を用いて乾式粉砕されて得られた触媒は、重質油及び触媒を含む原料スラリー中において著しく凝集し、触媒の分散性が悪くなるのに対し、石油系溶剤中で機械的に粉砕されて得られた触媒は、上記の如き原料スラリー中での凝集が起こり難く、触媒の分散性に優れており、触媒活性が高められるからである。
【0052】
リモナイト鉄鉱石は、粉末X線回折分析でα−オキシ水酸化鉄とα−酸化鉄が成分として認められるが、産出地、鉱区等により、それらの成分比が異なっており、更に、かかる成分比が触媒特性に及ぼす影響を検討した結果、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石が最も触媒活性が高いことを見出した。従って、触媒活性をより高めるために、前記第一反応工程(a) でのリモナイト鉄鉱石として、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石を用いることが望ましい(第5発明)。
【0053】
上記の如く、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石が最も触媒活性が高い理由について、以下説明する。
【0054】
鉄系化合物は一般に硫黄や硫黄化合物により硫化され、ピロータイト(Pyrrh-otite, Fe1-xS )と称される硫化鉄が触媒活性を発現する活性種となる。このピロータイトに転換する温度が低い程、水素化分解の対象原料が分解し始める前に活性種が存在することになり、この対象原料から発生した熱分解ラジカルに対して充分な水素供与が行われるため、熱分解ラジカル同士の重合化が抑制されて軽質化がよく進行する。即ち、触媒活性が高いことになる。
【0055】
α−オキシ水酸化鉄はα−酸化鉄に比べてピロータイトへの転換温度が低く、従って、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石が最も触媒活性が高くなるのである。因みに、ピロータイトへの転換温度は、α−オキシ水酸化鉄の場合で200 ℃、α−酸化鉄の場合で350 ℃であり、他の鉄系触媒の一例として天然パイライト(FeS2)の場合は350 ℃であり、これらのこと等からα−オキシ水酸化鉄が極めて低い温度でピロータイトに転換することがわかる。ここで、上記実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石とは、粉末X線回折分析で分析されるα−酸化鉄の量が10重量(質量)%以下であるリモナイト鉄鉱石をいう。
【0056】
前記リサイクル工程(h) において第一反応工程(a) にリサイクルする液体成分及び液相分中の重質反応生成物と重質残渣との合計量(以下、BTM 循環量ともいう)を、前記第一反応工程(a) に原料として供給される石油系重質油に対して10〜130 質量%とすることが望ましい(第6発明)。BTM 循環量を10質量%未満にすると、第一反応工程(a) にリサイクルされ、水素化分解されて軽質化される重質反応生成物及び重質残渣の量が少ないため、収率が低下し、BTM 循環量を130 質量%超とすると、液体成分及び液相分が供給されたスラリー状混合体の流動性が低下し、特に、原料スラリーの調整槽に液体成分及び液相分が供給される場合には、該調整槽で得られるスラリーの流動性が低下し、ハンドリングが難しくなるという傾向があるからである。
【0057】
前記固液分離工程(g) での沈降式固液分離装置を温度:200 〜300 ℃、圧力:20〜40kg/cm の条件で操作することが望ましい(第7発明)。これは、重質反応生成物と重質残渣からなる物質の一部が溶解し、なおかつ不溶解成分(有機成分、無機成分)の沈降速度が速く、効率的に固液分離できる温度域であるからであり、圧力条件については、固液分離用溶剤の気相移行を抑え、安定的なスラリーハンドリングができる圧力域であるからである。
【0058】
本発明において、原料として用いられる重金属を含有する石油系重質油としては、特には限定されず、常圧蒸留残渣油や減圧蒸留残渣油の如く重金属を含有する石油系重質油を用いることができる。また、天然に存在するビチューメン(タールサンド、オイルサンド等)のような重金属を含有する超重質油に対しても適応可能である。上記重金属は、Ni-Mo 系やCo-Mo 系等の触媒の被毒原因となる金属類のことであり、特には限定されず、例えばNiやVを挙げることができる。
【0059】
本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法は、より具体的には例えば図1に示す装置及びプロセスフローにより行われる。その詳細を以下説明する。
【0060】
図1に示す如く、スラリー調製槽(1) に、石油系重質油とリモナイト鉄鉱石触媒と助触媒である硫黄とを添加して原料スラリーとなした後、該原料スラリーに水素ガスを添加し、両者を予熱器(2) に送給して予熱してから第一反応工程(a) の懸濁床反応器(3) に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解する〔第一反応工程(a) 〕。このとき、懸濁床反応器(3) としては、例えば気泡塔型反応器が用いられる。
【0061】
上記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物▲1▼を、第一気液分離器(4) に導入し、高温高圧の状態で気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分▲2▼と、液体状反応生成物及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む液相分▲3▼とに分離する〔第一気液分離工程(b) 〕。
【0062】
上記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた気相分▲2▼をNi-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器(5) に送給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で水素化処理する〔第二反応工程(c) 〕。このとき、固定床反応器(5) としては、例えば流通式管型反応器が用いられる。
【0063】
上記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物▲4▼を、第二気液分離器(6) に導入し、未反応水素を含む気相分▲5▼と、液相反応生成物▲6▼とに分離する〔第二気液分離工程(d) 〕。
【0064】
上記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物▲6▼を、蒸留塔(7) に送給し、蒸留して所定の留分に分留する〔蒸留工程(e) 〕。例えば、ナフサ(C5-171℃)、灯軽油(171-343 ℃)、減圧軽油(343-525 ℃)に分留する。尚、上記第二反応工程(c) で得られた気相分▲5▼は、例えばガス精製工程(8) を経て、一部は燃料ガスとして利用し得、残部はリサイクルガスとして前記第一反応工程(a) や第二反応工程(c) の冷却用ガスとして利用し得る。
【0065】
前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた液相分▲3▼を、減圧気液分離器等の如きフラッシュ分離器(9) に送給し、減圧過程で液相分中の軽質反応生成物を気相側にフラッシュ分離する〔フラッシュ分離工程(f) 〕。
【0066】
上記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた重質反応生成物等の反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む液相分▲7▼について、その一部〔7A〕を固液分離用溶剤と共に沈降式固液分離装置(10)に供給し、該装置(10)にて、前記重質残渣及び前記第一反応工程(a) で使用された触媒並びに前記重金属を含む常温で固体である成分▲8▼と、前記中質反応生成物及び前記中重質反応生成物並びに前記重質反応生成物を含む液体成分▲9▼とに分離する〔固液分離工程(g) 〕。
【0067】
上記固液分離工程(g) で分離されて得られた液体成分▲9▼と、前記液相分▲7▼の残部〔前記沈降式固液分離装置へ供給された液相分〔7A〕以外の液相分〔7B〕(=▲7▼の全部−〔7A〕)〕とを、前記第一反応工程(a) のスラリー調製槽(1) 又は懸濁床反応器(3) に送給しリサイクルする〔リサイクル工程(h) 〕。
【0068】
本発明において、前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程(l) を有するようにすることが望ましい(第11発明)。これは、前記液相反応生成物は、高度に水素化されたものであり、水素化能力の高い成分(溶剤)であるので、これを前記第一反応工程(a) にリサイクルすることによって、よりコーク収率が抑制され、低沸点の油分収率がさらに向上するようになるからである。
【0069】
本発明において、原料として用いられる重金属を含有する石油系重質油が、キノリン類、インドール類、ベンゾチオフェン類等の脱窒、脱硫され難い物質や、脱窒、脱硫を阻害する物質を多く含んでいる場合には、第一反応工程(a) の水素化分解、第二反応工程(c) の水素化処理によっては充分な脱硫、脱窒ができず、このため高度に脱硫、脱窒された油を得ることは困難となる。このような場合、下記工程(i) 〜(k) を有するようにし、これを行うようにすることが望ましい(第9発明)。そうすると、上記のような場合でも、高度に脱硫、脱窒された良質な油を得ることができるようになる。
【0070】
(i) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた気相分を、Ni-Mo 系触媒またはCo-Mo 系触媒を有する反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜420 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する第三反応工程。
(j) 前記第三反応工程(i) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を気相分と液相分とに分離する第三気液分離工程。
(k) 前記第三気液分離工程(j) で分離されて得られた液相分を蒸留する蒸留工程。
【0071】
上記工程(i) 〜(k) を有するようにすると、前記の如く、原料の石油系重質油がキノリン類、インドール類、ベンゾチオフェン類等の脱窒、脱硫され難い物質や、脱窒、脱硫を阻害する物質を多く含んでいる場合でも、高度に脱硫、脱窒された良質な油を得ることができようになる。この詳細を以下説明する。
【0072】
キノリン類、インドール類、ベンゾチオフェン類等の物質(以下、不具合物質ともいう)は、比較的沸点が高いため、前記第二気液分離工程(d) において気相成分と液相成分とを分離するに際して上記不具合物質を含む高沸点留分を液相成分として分離することができる。そうすると、同時に前記第二気液分離工程(d) において比較的低沸点の気相成分が分離して得られるが、この気相成分には上記不具合物質は含まれていない。
【0073】
前記第三反応工程(i) においては、このような不具合物質を含まない気相成分がNi-Mo 系触媒またはCo-Mo 系触媒を有する反応器に供給され、水素化処理されることになる。このため、この水素化処理の際に充分な脱硫、脱窒がなされる。そして、これにより得られた反応器流出物は第三気液分離工程において気相分と液相分とに分離され、この液相分が蒸留工程(k) において蒸留される。従って、高度に脱硫、脱窒された良質な油を得ることができるようになる。
【0074】
上記第三反応工程(i) での反応条件を反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜420 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1としている理由について、以下説明する。反応圧力を30〜160kg/cm2 としているのは、この反応圧力条件下でコーク蓄積が抑制され、長期連続運転が可能であるからである。処理運転開始時の反応温度を310 〜420 ℃としているのは、310 ℃未満とすると充分な反応が行なわれず、420 ℃超とすると過度な水素化分解により炭化水素ガス収率が増加して油分収率の減少が大きくなるからである。液空間速度を0.3 〜2hr-1としているのは、0.3 hr-1未満とすると、反応性向上効果が顕著でなく、結果的にコスト高となり、2hr-1超とすると、反応が充分でないからである。
【0075】
上記第三反応工程(i) での反応条件を反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:340 〜390 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1とすることが望ましい(第10発明)。これは、この条件下で長期連続運転と経済性とのとの観点から最も効率的に反応させ得て、高度に脱硫、脱窒素され、且つ、軽質化された製品油が製造できるからである。上記反応圧力については80〜100kg/cm2 とすることが更に好ましい。
【0076】
上記工程(i) 〜(k) を有する場合も、前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を前記第一反応工程(a) にリサイクルするようにすることが望ましい(第11発明)。
【0077】
上記工程(i) 〜(k) を有する場合の具体的な例を図2に示し、これを以下説明する。スラリー調製槽(1) での原料スラリー調製、予熱器(2) での予熱、懸濁床反応器(3) での水素化分解〔第一反応工程(a) 〕、第一気液分離器(4) での気液分離〔第一気液分離工程(b) 〕、固定床反応器(5) での水素化処理〔第二反応工程(c) 〕は、図1の場合と同様に行う。また、フラッシュ分離器(9) でのフラッシュ分離〔フラッシュ分離工程(f) 〕、沈降式固液分離装置(10)での固液分離〔固液分離工程(g) 〕、リサイクル工程(h) も、図1の場合と同様に行う。
【0078】
上記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物▲4▼を、第二気液分離器(6) に導入し、前記不具合物質を含む高沸点留分を液相成分として分離すると共に低沸点の気相成分を分離する〔第二気液分離工程(d) 〕。
【0079】
上記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた気相成分を、Ni-Mo 系触媒またはCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器(11)に送給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜420 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する〔第三反応工程(i) 〕。この第三反応工程(i) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を第三気液分離器(12)に導入し、気相分と液相分とに分離する〔第三気液分離工程(j) 〕。この第三気液分離工程(j) で分離されて得られた液相分を、蒸留塔(7) に送給し、蒸留して所定の留分に分留する〔蒸留工程(k) 〕。
【0080】
尚、上記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相成分は、一部が蒸留塔(7) に送給され、残部が第一反応工程(a) にリサイクルされる〔リサイクル工程(l) 〕。また、上記第三気液分離工程(j) で分離されて得られた気相分は、パージガスとなる他、温度制御などの目的で第一反応工程(a) や第二反応工程(c) もしくは第三反応工程(i) にリサイクルされ利用される。
【0081】
【実施例】
本発明の実施例を以下説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0082】
〔実施例1〕
第一反応工程(a) を下記のようにして行った。
重金属を含有する石油系重質油として中東系減圧蒸留残渣(以下、VRという)を用い、該VRに対し、触媒として粉砕したリモナイト鉄鉱石を鉄で該VR量の0.6 質量%となるように添加し、更に、助触媒として硫黄を鉄の1.2 倍量(リモナイト鉄鉱石中の鉄量に対して原子比で1.2 倍の量)となるように添加し、これにより原料スラリーを得た。尚、上記VRの留分構成は表1に示す通りである。
【0083】
上記原料スラリーを内容積5リットル(以下、L)の攪拌式オートクレーブに入れ、また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス供給圧力(反応圧力):10MPa (102kg/cm2 )、反応温度:450 ℃、反応時間:60分の反応条件下で、前記VR(蒸留残渣即ち重質油)を水素化分解する反応を行わせた。
【0084】
上記反応後、生成ガスの収率及び生成液の留分の収率を求め、更に、この生成液について元素分析し、炭素、水素、窒素、硫黄の量を調べた。この結果を表2〜4に示す。尚、表2において、生成ガス、留分、コーク等(以下、留分等ともいう)の収率は、得られた留分等の量のVR供給量に対するwt%(質量%)での割合(wt% on feed VR)である。以降の表5、6、8等における収率も、上記表2の場合と同様の意味の収率である。
【0085】
表1及び表2からわかるように、沸点450 ℃以下の留分が原料のVR中で4.4 wt%(質量%)であったが、水素化分解反応により、沸点450 ℃以下の留分(減圧蒸留留出液)が55.6wt%〔=8.4wt%(留分-1)+28.7wt%(留分-2)+18.5%(留分-3)〕に増加しており、それにもかかわらずコーク収率は1.5 wt%に抑えられている。尚、以下においては、wt%(質量%)は単に%とも表現する。
【0086】
また、表3からわかる如く、H/C比については原料のVRで1.4 であったが、留分-1(沸点171 ℃以下の留分)ではH/C比:2、留分-2(沸点171-343 ℃の留分)ではH/C比:1.7 に増加した。硫黄含有量については、留分-1、留分-2、留分-3でそれぞれ0.2 %、1.9 %、2.8 %であり、ある程度の脱硫がなされている。しかし、脱窒素はほとんどなされなかった。
【0087】
表4に示すように、VR中の金属元素は留出留分中には検出されず、THFI成分中に存在することから、懸濁触媒に吸着除去されたことがわかる。尚、表4においてTHFIは THF不溶分(テトラヒドロフランに対して不溶な成分)を示すものである。
【0088】
〔実施例2〕
実施例1で得られた重質成分(ボトム成分、即ち沸点450 ℃以上の蒸留残渣成分)を原料VR量に対して80%となるように原料VRと共に仕込み、実施例1と同一の反応条件下で第一反応工程(a) の水素化分解反応を行わせた。尚、粉砕したリモナイト鉄鉱石触媒の添加量は鉄で上記原料VR量の0.6 質量%とし、助触媒の硫黄の添加量は実施例1の場合と同様に鉄の1.2 倍量とした。
【0089】
上記反応後、生成ガス及び生成液の留分の収率を求めた。この結果を表5に示す。表2及び表5からわかる如く、減圧蒸留残渣となる成分(+450℃、即ち、沸点450 ℃以上の成分)は、実施例1の場合(ボトム循環を行わない場合)には40%程度(=27.4% +9.7%+1.5%)残ったが、実施例2の場合(ボトム循環を行った場合)には5%程度(=1.6%+0.7%+2.4%)であり、ボトム循環を行うことにより+450℃成分の量が大幅に低減され得ることがわかる。
【0090】
また、ボトム循環を行うことにより、留出油成分(沸点450 ℃以下の留分)の収率が55%程度から90%程度まで増加することができ、原料VRの大部分が軽質な蒸留可能成分に転換されることがわかった。
【0091】
このように高い転化率で軽質化されたにもかかわらず、コーク収率は2%程度に抑制されている。
【0092】
尚、留出油の性状(C量、H量、N量、S量、H/C比、金属元素量)は、実施例1の場合と同様であった。
【0093】
〔実施例3〕
実施例1や実施例2の第一反応工程(a) にて得られた留出油成分(沸点450 ℃以下の留分)は、本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法においては第一反応工程(a) 下流の第一気液分離工程(b) で分離されて得られた気相分の成分に相当する。
【0094】
かかる留出油成分の中、実施例2の第一反応工程(a) にて得られた留出油成分をNi-Mo /Al2O3 触媒(Ni-Mo 触媒をAl2O3 に担持させたもの)を充填した固定床反応塔に供給して通し、処理開始時の反応温度:350 ℃、反応圧力:10MPa 、液空間速度(LHSV):1hr-1の反応条件下で、水素化処理する工程〔第二反応工程(c) 〕を実施した。そして、この反応後、生成ガス及び生成液の留分の収率を求め、更に、この生成液について元素分析し、C、H、N、Sの量を調べた。この結果を表6〜7に示す。
【0095】
前述の如く、実施例2の場合、沸点450 ℃以上の減圧蒸留ボトムの循環を行うことによって沸点450 ℃以下の留分の収率を90%程度まで増加することができたが、実施例3の場合、この留分は固定床触媒反応による第二反応工程(c) で高度な水素化分解がなされるため、表6に示す如く、最終製造油としては沸点343 ℃以上の減圧軽油留分の収率が4%程度に低減され、沸点343 ℃以下の軽質油収率が80%程度に達した。
【0096】
更に、この沸点343 ℃以下の軽質油留分は、表7に示す如く、N含量が10ppm 未満と低く、又、S含量がナフサ、灯油、軽油留分でそれぞれ60ppm 、30ppm 、90ppm と低く、高度に脱窒素及び脱硫することができた。これは、第一反応工程(a) において450 ℃という高温で水素化分解したことによる脱アルカリ反応の効果により、難脱硫成分及び難脱窒素成分の立体障害性が排除されたことによるものと考えられる。
【0097】
〔実施例4及び比較例1〕
VRに各種鉄系触媒を添加し、更に助触媒として硫黄を鉄(即ち鉄系触媒の鉄)の1.2 倍量添加してなる原料スラリーについて、懸濁床反応器にて430 〜450 ℃、10MPa の水素ガス雰囲気下、反応時間:60分の反応条件下で、水素化分解反応を行わせた。そして、この反応後のものを分析してコーク収率(トルエン不溶分の生成収率)を求めることにより、鉄系触媒種及び反応温度とコーク収率との関係を調べた。この結果を表8に示す。
【0098】
減圧蒸留残渣油等の重質油の分解は、従来はコーカー法を経て留出油を固定床触媒反応や流動触媒反応(FCC )に供して行われていたが、コーカー法でのコーク収率は高く、20〜50%であり、重質油の有効利用は困難であった。
【0099】
これに対して、前記の如く懸濁床反応器にて水素化分解反応を行わせた場合、表8からわかる如く、コーク収率が低い。
【0100】
この場合、表8に示す如く鉄系触媒種及び反応温度によってコーク収率が相違し、天然パイライトが鉄としてVRに対し1%となるように添加された場合には、コーク収率が5.2 %或いは7.4 %であったが、これに対し、本発明法に係る第一反応工程(a) で触媒として用いられるリモナイト鉄鉱石が鉄としてVRに対し0.6 %となるように添加された場合には、コーク収率がさらに低く、反応温度:430 ℃の場合でコーク収率が1%、反応温度:450 ℃の場合でコーク収率が1.5 %である。更に、このように触媒としてリモナイト鉄鉱石が用いられた場合には、ボトム循環を加えて行った場合でも、コーク収率を2.4 %に抑え得ることがわかった。
【0101】
本発明法に係る第一反応工程(a) において触媒として用いられるリモナイト鉄鉱石は、安価であるだけでなく、上記の如くコーク生成量を低く抑えることができる。これは、リモナイト鉄鉱石は、適量の硫黄と混合して水素雰囲気下で加熱することにより、250 ℃程度の低温域からピロータイトに転換して、水素化触媒活性を発現するためである。即ち、重質油の熱分解の初期反応域から触媒の介在による水素化反応が促されるので、熱分解ラジカルの重縮合によるコーク生成を抑制し得る効果が発揮されるからである。
【0102】
〔実施例5〕
図1に示す装置及びプロセスフローによる本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法の例の詳細は、前記した通りである。実施例5は、かかる図1に示す装置及びプロセスフローによって、重金属を含有する石油系重質油の水素化分解方法を実施した。
【0103】
ただし、重金属を含有する石油系重質油としてはVRを用い、リモナイト鉄鉱石触媒の添加量は鉄でVR量の0.6 質量%とし、助触媒の硫黄の添加量は鉄の1.2 倍量とした。第一反応工程(a) の反応条件は、反応圧力:10MPa 、反応温度:450 ℃、反応時間:60分とした。第二反応工程(c) での触媒としてはNi-Mo 系触媒を用い、第二反応工程(c) の反応条件は、処理開始時の反応温度:350 ℃、反応圧力:10MPa 、液空間速度(LHSV):1hr-1とした。
【0104】
また、前述の液体成分▲9▼及び液相分▲7▼の残部を前記第一反応工程(a) のスラリー調製槽(1) に送給しリサイクルするリサイクル工程(h) を行った。
【0105】
そして、かかる第一反応工程(a) 〜リサイクル工程(h) を並行して、数カ月間継続して行った。
【0106】
この結果、コークの発生量が2%であり、触媒の活性低下や触媒層の閉塞等の支障を生じず、安定して長期連続運転をし得た。
【0107】
また、沸点343 ℃以上の減圧軽留分の収率が4%程度であり、沸点343 ℃以下の軽質油収率が約80%であり、高収率で高度に軽質化された軽質な油を得ることができた。更に、この沸点343 ℃以下の軽質油留分は、N含量が10ppm 未満と低く、又、S含量がナフサ、灯油、軽油留分でそれぞれ60ppm 、30ppm 、90ppm と低く、高度に脱窒素及び脱硫されていた。
【0108】
従って、本発明の実施例5に係る石油系重質油の水素化分解方法によれば、コーク等の蓄積を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、経済的に且つ高収率で、高度に軽質化され且つ脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができることが確認された。
【0109】
〔実施例6〕
第一反応工程(a) を下記のようにして行った。
重金属を含有する石油系重質油として南米系減圧蒸留残渣(以下VR-Bという)を用い、該VR-Bに対し、触媒として粉砕したリモナイト鉄鉱石を鉄で該VR-B量の1質量%となるように添加し、更に、助触媒として硫黄を鉄の1.2 倍量(リモナイト鉄鉱石中の鉄量に対して原子比で1.2 倍の量)となるように添加し、これにより原料スラリーを得た。尚、上記VR-Bの留分構成は表9に示す通りである。上記VR-Bは前記VRよりもキノリン類、インドール類、ベンゾチオフェン類を多く含有するものであった。
【0110】
上記原料スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス供給圧力(反応圧力):10MPa (102kg/cm2 )、反応温度:450 ℃、反応時間:60分の反応条件下で、前記VR-B(蒸留残渣即ち重質油)を水素化分解する反応を行わせた。
【0111】
上記反応後、生成ガスの収率及び生成液の留分の収率を求め、更に、この生成液について元素分析し、炭素、水素、窒素、硫黄の量を調べた。この結果を表10〜12に示す。尚、表10において、生成ガス、留分、コーク等の収率は、得られた留分等の量のVR-B供給量に対するwt%での割合(wt% on feed VR-B)である。表11、12等における収率も、上記表10の場合と同様の意味の収率である。
【0112】
表9及び表10からわかる如く、沸点450 ℃以下の留分が原料のVR-B中で7.00wt%であったが、水素化分解反応により、沸点450 ℃以下の留分が55.19wt%(10.97 +27.26 +16.96 )に増加しており、それにもかかわらずコーク収率は2.08wt%に抑えられている。
【0113】
また、表11からわかるように、H/C比については原料のVR-Bで1.40であったが、留分-1ではH/C比:1.97、留分-2ではH/C比:1.72に増加した。硫黄含有量については、留分-1、留分-2、留分-3でそれぞれ0.24%、0.48%、0.52%であり、ある程度の脱硫がなされている。しかし、脱窒素はほとんどなされなかった。
【0114】
表12に示す如く、VR-B中の金属元素は、生成液の留出留分中には検出されず、THFI成分中に存在することから、懸濁触媒に吸着除去されたことがわかる。
【0115】
〔実施例7〕
実施例6で得られた重質成分(ボトム成分、即ち沸点450 ℃以上の蒸留残さ成分)を原料VR-B量に対して74.84 %となるように原料VR-Bと共に仕込み、実施例5と同一の反応条件下で第一反応工程(a) の水素化分解反応を行わせた。尚、リモナイト鉄鉱石触媒の添加量は鉄で上記原料VR-B量の1wt%とし、助触媒の硫黄の添加量は鉄の1.2 倍量とした。
【0116】
上記反応後の収率を表13に示す。表10及び表13からわかる如く、沸点450 ℃以上の成分(蒸留残渣となる成分)は、実施例6の場合(ボトム循環を行わない場合)には41.93wt %(=30.87 +8.98+2.08)残ったが、実施例7の場合(ボトム循環を行った場合)には8.62wt%(=5.4 +1.3 +1.92)であり、ボトム循環を行うことにより+450℃成分量が大幅に低減された。
【0117】
また、ボトム循環を行うことにより、留出油成分(沸点450 ℃以下の留分)の収率が55.19wt %から85.25wt %(=14.85 +32.87 +37.53)まで増加することができ、原料VR-Bの大部分が軽質な蒸留可能成分に転換されることがわかった。このように高い転化率で軽質化されたにもかかわらず、コーク収率は2%以下に抑制されている。
【0118】
尚、留出油の性状(C量等)は、実施例5の場合と同様であった。
【0119】
〔実施例8〕
実施例7の第一反応工程(a) にて得られた反応器流出物を、沸点450 ℃以下の成分が気相に含まれるように、気液分離〔第一気液分離工程(b) 〕を行い、留出油成分を得た。この留出油成分を、Ni-Mo /Al2O3 触媒を充填した固定床反応塔に供給して通し、処理運転開始時の反応温度:350 ℃、反応圧力:102kg/cm2(10MPa)、液空間速度(LHSV):1hr-1の反応条件下で、水素化処理する工程〔第二反応工程(c) 〕を実施した。そして、この反応後、生成ガス及び生成液の留分の収率を求め、更に、この生成液について元素分析した。この結果を表14〜15に示す。
【0120】
第二反応工程(c) により、軽質化が進んだことが確認された。留分-3の収率は37.53 から34.34wt%に減少した。N濃度は留分-1で200ppm、留分-2で960ppm、留分-3で3000ppm であり、一方、S濃度は留分-1で60ppm 、留分-2で100ppm、留分-3で700ppmであり、原料VRを用いた実施例3の場合に比べ、各留分中のN及びS濃度が高かった。これは、原料の違いによるものであり、原料VR-Bには原料VRに比べ、脱窒、脱硫され難いキノリン類、インドール類、ベンゾチオフェン類が多く含まれているためであると考えられる。
【0121】
〔実施例9〕
実施例8の第二反応工程(c) にて得られた反応器流出物を、沸点343 ℃以下の成分が気相に含まれるように、気液分離〔第二気液分離工程(d) 〕を行い、留出油成分を得た。この留出油成分を、Ni-Mo /Al2O3 触媒を充填した固定床反応塔に供給して通し、温度:380 ℃、反応圧力:102kg/cm2(10MPa)、液空間速度:1hr-1の反応条件下で、水素化処理する工程〔第三反応工程(i) 〕を実施した。そして、この反応後、生成ガス及び生成液の留分の収率を求め、更に、この生成液について元素分析した。この結果を表16〜17に示す。
【0122】
171 ℃〜343 ℃の留分の収率が37.24wt%(表14)から31.45wt%に低減され、逆に171 ℃までの留分の収率が3.04wt% (表14)から18.63wt%に増加し、軽質化が進んでいることが確認された。
【0123】
343 ℃以下の軽質油留分は、表17に示す如く、N含有量が10ppm 未満と低く、また、S含有量が留分-1で30ppm 、留分-2で50ppm と低く、第三反応工程(i) により高度に脱窒素及び脱硫ができることが確認された。
【0124】
〔実施例10〕
第一反応工程(a) を下記のようにして行った。
重金属を含有する石油系重質油としてVR-Bを用い、該VR-Bに対し、触媒として粉砕したリモナイト鉄鉱石を鉄で該VR-B量の1質量%となるように添加し、更に助触媒として硫黄を鉄の1.2 倍量(リモナイト鉄鉱石中の鉄量に対して原子比で1.2 倍の量)となるように添加し、これにより原料スラリーを得た。
【0125】
上記原料スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス供給圧力(反応圧力):50もしくは30kg/cm2、反応温度:450 ℃、反応時間:60分の反応条件下で、前記VR-Bを水素化分解する反応を行わせた。
【0126】
上記反応後、生成ガスの収率及び生成液の留分の収率を求めた。この結果を表18に示す。表18に示す如く、反応圧力が50kg/cm2もしくは30kg/cm2と低くても、高い油分収率が得られることがわかった。但し、コーク収率は、反応圧力:102kg/cm2 の場合に比べ、若干増加した。尚、反応圧力が最も低い30kg/cm2の場合でも油分収率は66.77wt%(=11.12 +25.07 +30.58 )である。
【0127】
〔実施例11〕
第一反応工程(a) を下記のようにして行った。
重金属を含有する石油系重質油としてVR-Bを用い、該VR-Bに対し、触媒として粉砕リモナイト鉄鉱石を鉄で該VR-B量の1wt%となるように添加し、また、助触媒として硫黄を鉄の1.2 倍量(リモナイト鉄鉱石中の鉄量に対して原子比で1.2 倍の量)となるように添加し、更に、実施例9の第二気液分離工程(d) にて得られた液相成分(留出油成分)をVR-B量の20wt%となるように添加し、これにより原料スラリーを得た。
【0128】
上記原料スラリーを内容積5Lの攪拌式オートクレーブに入れ、また、該オートクレーブに水素ガスを供給し、水素ガス供給圧力(反応圧力):30kg/cm2、反応温度:450 ℃、反応時間:60分の反応条件下で、前記VR-Bを水素化分解する反応を行わせた。
【0129】
上記反応後、生成ガスの収率及び生成液の留分の収率を求めた。この結果を、実施例10の反応圧力:30kg/cm2の場合の結果と共に、表19に示す。表19に示す如く、反応圧力が30kg/cm2と低い場合においても、第二気液分離工程(d) にて得られた液相成分を第一反応工程(a) にリサイクルすることにより、水素化分解能が向上し、油分収率が66.77wt%(=11.12 +25.07 +30.58 )から71.39wt%(=13.13 +26.12 +32.14 )に増加すると共に、コーク収率が4.98wt% から1.74wt% に低下し、低沸点の油の収率が増加することが確認された。
【0130】
【表1】
Figure 0003875001
【0131】
【表2】
Figure 0003875001
【0132】
【表3】
Figure 0003875001
【0133】
【表4】
Figure 0003875001
【0134】
【表5】
Figure 0003875001
【0135】
【表6】
Figure 0003875001
【0136】
【表7】
Figure 0003875001
【0137】
【表8】
Figure 0003875001
【0138】
【表9】
Figure 0003875001
【0139】
【表10】
Figure 0003875001
【0140】
【表11】
Figure 0003875001
【0141】
【表12】
Figure 0003875001
【0142】
【表13】
Figure 0003875001
【0143】
【表14】
Figure 0003875001
【0144】
【表15】
Figure 0003875001
【0145】
【表16】
Figure 0003875001
【0146】
【表17】
Figure 0003875001
【0147】
【表18】
Figure 0003875001
【0148】
【表19】
Figure 0003875001
【0149】
【発明の効果】
本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法によれば、減圧蒸留残渣油等のように重金属を含有する石油系重質油を水素化分解して軽質化するに際し、コーク等の蓄積を抑制し得て長期連続運転をし得ると共に、経済的に且つ高収率で、高度に軽質化され且つ脱硫及び脱窒素された軽質な油を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法の例の概要を示す図である。
【図2】 本発明に係る石油系重質油の水素化分解方法であって第三反応工程も有する場合の例の概要を示す図である。
【符号の説明】
(1) --スラリー調製槽、(2) --予熱器、(3) --懸濁床反応器、(4) --第一気液分離器、(5) --固定床反応器、(6) --第二気液分離器、(7) --蒸留塔、(8) --ガス精製工程、(9) --フラッシュ分離器、(10) -- 沈降式固液分離装置、
(11) -- 固定床反応器、(12) -- 第三気液分離器。

Claims (11)

  1. 重金属を含有する石油系重質油の水素化分解方法であって、下記工程(a) 〜(h) を有することを特徴とする石油系重質油の水素化分解方法。 (a) 重金属を含有する石油系重質油と触媒として添加されたリモナイト鉄鉱石と助触媒として添加された硫黄とを含む原料スラリーと、水素ガスとを、懸濁床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、反応温度:430 〜455 ℃、反応時間:30〜180 分の反応条件下で、前記重質油を水素化分解する第一反応工程。
    (b) 前記第一反応工程(a) で得られた水素化反応生成物を含む反応器流出物を、気体状反応生成物及び未反応水素を含む気相分と、液体状反応生成物及び前記触媒並びに前記重金属を含む液相分とに分離する第一気液分離工程。
    (c) 前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた気相分を、Ni-Mo 系触媒又はCo-Mo 系触媒を充填した固定床反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜380 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する第二反応工程。
    (d) 前記第二反応工程(c) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を、未反応水素を含む気相分と、液相反応生成物とに分離する第二気液分離工程。
    (e) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を、蒸留して所定の留分に分離する蒸留工程。
    (f) 前記第一気液分離工程(b) で分離されて得られた液相分から減圧過程で液相分中の軽質反応生成物を気相側にフラッシュ分離するフラッシュ分離工程。
    (g) 前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む液相分の一部と、固液分離用溶剤とを、沈降式固液分離装置に供給し、該装置にて、前記重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む常温で固体である成分と、前記中質反応生成物及び前記中重質反応生成物並びに前記重質反応生成物を含む液体成分とに分離する固液分離工程。
    (h) 前記固液分離工程(g) で分離されて得られた液体成分と、前記フラッシュ分離工程(f) で軽質反応生成物と分離されて得られた中質反応生成物、中重質反応生成物、重質反応生成物、重質残渣及び前記第一反応工程(a) で用いられた触媒並びに前記重金属を含む液相分であって前記沈降式固液分離装置へ供給された液相分以外の残部の液相分とを、前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程。
  2. 前記第一反応工程(a) の懸濁床反応器での反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、反応温度:440 〜450 ℃、反応時間:60〜120 分である請求項1記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  3. 前記第一反応工程(a) での触媒のリモナイト鉄鉱石の添加量が石油系重質油の量に対して鉄成分として0.3 〜2質量%であり、かつ、助触媒の硫黄の添加量がリモナイト鉄鉱石中の鉄含有量に対して原子比で1〜3倍である請求項1又は2記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  4. 前記第一反応工程(a) でのリモナイト鉄鉱石として、石油系溶剤中で機械的に粉砕された平均粒子径2μm 以下の微粉状のリモナイト鉄鉱石を用いる請求項1、2又は3記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  5. 前記第一反応工程(a) でのリモナイト鉄鉱石として、実質的に酸化鉄を含まないリモナイト鉄鉱石を用いる請求項1、2、3又は4記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  6. 前記リサイクル工程(h) において前記第一反応工程(a) にリサイクルする液体成分及び液相分中の重質反応生成物と重質残渣との合計量が、前記第一反応工程(a) に供給される石油系重質油に対して10〜130 質量%である請求項1、2、3、4又は5記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  7. 前記固液分離工程(g) での沈降式固液分離装置が温度:200 〜300 ℃、圧力:20〜40kg/cm の条件で操作される請求項1、2、3、4、5又は6記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  8. 前記第二反応工程(c) の固定床反応器での反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:330 〜360 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  9. 下記工程(i) 〜(k) を含む請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の石油系重質油の水素化分解方法。
    (i) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた気相分を、Ni-Mo 系触媒またはCo-Mo 系触媒を有する反応器に供給し、反応圧力:30〜160kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:310 〜420 ℃、液空間速度:0.3 〜2hr-1の反応条件下で、水素化処理する第三反応工程。
    (j) 前記第三反応工程(i) で得られた水素化処理反応生成物を含む反応器流出物を気相分と液相分とに分離する第三気液分離工程。
    (k) 前記第三気液分離工程(j) で分離されて得られた液相分を蒸留する蒸留工程。
  10. 前記第三反応工程(i) の反応器における反応条件が、反応圧力:50〜100kg/cm2 、処理運転開始時の反応温度:340 〜390 ℃、液空間速度:0.5 〜1hr-1である請求項9記載の石油系重質油の水素化分解方法。
  11. 下記工程(l) を含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の石油系重質油の水素化分解方法。
    (l) 前記第二気液分離工程(d) で分離されて得られた液相反応生成物を前記第一反応工程(a) にリサイクルするリサイクル工程。
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