JP3871165B2 - エレクトロクロミック素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトロクロミック素子の製造方法に関するものであり、詳しくは、電解質注入口の封止方法に特徴を有するエレクトロクロミック素子の製造方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エレクトロクトミック素子は、少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔をもって対向させてその周縁部を一部を除いてシールし、シールを省いた部分を電解質注入口としたセルを組み立て、このセルの注入口から真空注入法にて電解質又はその前駆体を注入してセルの空隙部分に電解質又はその前駆体を充満させた後、注入口に光硬化型又は熱硬化型のアクリル樹脂系接着剤又はエポキシ樹脂系接着剤を充填し、これを硬化させて注入口を封止する方法で製造されている。
しかし、上記の如き注入口封止方法では、接着剤の充填に先立って注入口に付着した電解質を取り除かなければならず、その除去が不充分である場合には、接着剤にて注入口を完全に封鎖できない。加えて、上記の封止方法では、接着剤と電解質とが接触するため、接着剤の硬化が不充分となり、満足な接着強度を得ることができない虞もある。
【0003】
このような問題点の解決方法の一つとして、特開平2−114237号公報や特開平6−250230号公報には2段封止法が提案されている。
特開平2−114237号公報が教える方法は、対向する2枚の基板の周縁部の任意の箇所に開口部を設けた構成のセルを用意し、このセルの開口部を電解質注入口としてこれに電解質を注入した後、基板に垂直な外圧を加えた状態で注入口にエポキシ系接着剤等を塗布し、次いで、上記の外圧を解除することで、塗布した接着剤を注入口内に嵌入させて硬化せしめ(一次シール)、しかる後、当該一次シール部分を含めて基板の周縁部にエポキシ系接着剤を塗布し、これを硬化させる(二次シール)ことからなる。
この方法は、比較的寸法の小さいエレクロトクロミック素子の製造には、それなりの適性が認められるが、一次シールを行うに際してセル全体に外圧を加える必要があることから、比較的大型のエレクロトクロミック素子の製造には、必ずしも適しているとは言えない。そればかりでなく、上記の2段封止法は、セルを構成する2枚の基板の端面に略垂直に設けた電解質注入口に専ら適用されるものであるため、封止自体がたとえ成功裏に完遂できたとしも、大型のエレクロトクロミック素子にあっては、これを移動するに際して封止部分に応力が掛かり、剥離が生ずる心配がある。
また、特開平6−250230号公報には、電解質注入口をまず放射線硬化型接着剤で封止し、次いで当該部分に重ねてエポキシ系接着剤で封止する方法が提案されているが、この方法も上記した2段封止法と同様、セルを構成する2枚の基板の端面に略垂直に設けた電解質注入口を対象としているので、上と同様な心配を払拭できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、セルを構成する2枚の対向基板の端面に設けられる電解質注入通路を変形を伴って押し込み可能な部材で形成すると共に、その通路の向きを工夫することにより、大型のエレクロトクロミック素子にあっても、その移動に際して応力が掛かった場合でも、電解質注入通路の封止部分に剥離が生ずることのないエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的の一つは、電解質注入通路の封止材料としてある種の接着剤を使用するものの、その接着剤と電解質との接触を完全に絶つことができ、従って、電解質の混入によって接着剤の硬化反応が損なわれる虞のないエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明が提案するエレクトロクロミック素子の製造方法は、
(a) 少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔をもって対向させ、その内側周縁部をシールすると共に、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込む可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を備えた開口部を設けた中空のエレクトロクロミック素子用セルを作成する工程と、
(b) 前記開口部から真空注入法を利用して電解質又はその前駆体を空隙部分に電解質又はその前駆体を注入する工程と、
(c) 電解質又はその前駆体の注入完了後、前記開口部を形成する上記の部材を押し込んで当該開口部を封鎖する工程と、
(d) 封鎖された開口部を接着剤にて封止する工程
からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、導電基板とは文字通り導電性を有し、電極としての機能を果たす基板を意味し、これにはそれ自体導電性を有する基板が使用できるほか、非導電性の基板であっても、その一方の表面(電解質層と接する側)に電極層を設けたものもが使用可能である。
導電性基板としては、鉄、銅、銀、アルミニウム、錫、鉛、金、亜鉛等の金属の単体、またはこれら金属の各種合金を挙げることができる。また、電極層を表面に設けて導電基板を作成する場合の非導電性基板には、表面が平滑であれば任意の基板が使用可能であって、その具体例としては、プラスチック(合成樹脂)製、ガラス製、木材製、石材製の各基板が例示できる。
本発明で使用する2枚の導電基板の少なくとも一方は透明であることが必要であるが、その透明な導電基板は、通常、透明基板の表面に電極層を積層させることで作成され、この場合の透明基板としては、無色あるいは有色ガラスが使用できる外、無色あるいは有色のプラスチック(合成樹脂)が使用できる。そして、この目的で使用可能なプラスチックの具体例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等がある。
なお、本発明における透明とは、可視光領域において10〜100%の透過率を有することを意味する。また、本発明における基板は、導電性基板も非導電性基板も共に常温においてその表面が平滑であれば、基板自体は平板状であっても、湾曲板状であっても差し支えなく、応力によって変形するものであっても差し支えない。
【0007】
非導電性の基板に積層させる電極層は透明であること好ましく、少なくとも透明基板に積層させる電極層は透明でなければならない。電極層には、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン等の金属薄膜や金属酸化物の薄膜が使用でき、その金属酸化物としては、例えば、ITO(In2 O3-SnO2 )、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛、酸化バナジウム等が挙げられる。
電極層の膜厚は、通常10〜1000nm、好ましくは50〜300nmの範囲で選択できる。また、電極層の表面抵抗(抵抗率)は、適宜選択可能であるが、通常は0. 5〜500Ω/sq.,好ましくは1〜50Ω/sq.の範囲で選ばれる。
電極層の形成は、電極を構成する金属及び/又は金属酸化物の種類により適宜選択できるが、通常は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、ゾルゲル法等が採用される。何れの場合も、基板温度を100〜350℃の範囲内に維持して電極層を形成するのが通例である。
非導電性基板上に形成される電極層には、酸化還元能の付与、電気二重層容量の増大等の目的で、不透明な電極活物質を部分的に付加することができる。この際、電極層を透明に維持する必要がある場合は、電極面全体の可視光透過率が10〜100%の範囲に保持される。
不透明な電極活物質としては、例えば、銅、銀、金、白金、鉄、タングステン、チタン、リチウム等の金属、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、フタロシアニンなどの酸化還元能を有する有機物、活性炭、グラファイト等の炭素材、V2 O5 、WO3 、MnO2 、NiO、Ir2 O3 などの金属酸化物またはこれらの混合物等を用いることができる。また、電極活性物質を電極層に結着させるために、バインダー樹脂を用いることもできる。
電極活性物質を電極層に付加する方法としては、例えば、活性炭繊維、グラファイト、アクリル樹脂等からなる組成物を用いて、ITO透明電極層上に、例えば、ストライプ模様を施したり、あるいはV2 O5 、アセチレンブラック、ブチルゴム等からなる組成物を用いて、金(Au)薄膜上にメッシュ模様を施す方法が例示できる。
【0008】
エレクトロクロミック素子用セルは、少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔を保って対向させてその内側周縁部をシールすることで作成され、電極層を積層させた導電基板を使用する場合には、電極層はセルの内側に配される。対向する導電基板の間隔は、通常30〜1000μm、好ましくは200〜500μmの範囲にある。本発明の素子用セルには、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込み可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を有する開口部が設けられる。
エレクトロクロミック素子にとって不可欠のエレクトロクロミック物質は、後述する電解質層に混在させることもできれば、電解質層とは独立したエレクトロクロミック層に含有させることもでき。エレクトロクロミック層はセルの任意の部位に配することが可能であるが、一般的には、セルの組み立て前に、少なくとも一方の導電基板の電極層上に設けることを可とする。また、電解質層にエレクトロクロミック性物質を混在させ、電解質層にエレクトロクロミック層としての機能を兼備させることもできるが、この場合には電解質又はその前駆体にエレクトロクロミック性物質を混合し、この混合物をセル内に注入する方法が採用できる。
エレクトロクロミック性物質とは、電気化学的な酸化反応あるいは還元反応等によって着色、消色、色変化などを示す物質を意味し、その具体例を例示すれば、Mo2 O3 、Ir2 O3 、NiO、V2 O5 、WO3 、ビオロゲン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、金属フタロシアニン、フェロセンなどが列挙できるが、これらに限定されることはない。
前記のエレクトロクロミック層は、エレクトロクロミック性物質のみで構成されてよく、また、エレクトロクロミック性物質とマトリックス成分とで構成されてもよいが、エレクトロクロミック性物質のみから構成されることがより好ましい。エレクトロクロミック層の厚さは、通常、10nm〜1μm、好ましくは50〜800nmの範囲にある。
エレクトロクロミック層の形成には任意の方法が採用可能であるが、通常は蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、電解重合法、ディップコート法、スピンコート法等が適宜採用される。
【0009】
対向する導電基板の間隙周縁部をシールする際のシール材は、素子内部を密封し、これを外部と隔絶して、素子の性能に影響を与える成分、例えば、水分、酸素、一酸化炭素の如き活性ガスの素子内部への浸透を阻止できるものであれば、その種類に特別な限定はない。従って、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸セルロース、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド等で例示される合成樹脂、さらには、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム等で例示される合成ゴムが、シール材として使用できる。
また、シール材として硬化性樹脂などを用いることもできる。用いる硬化性樹脂は特に限定されることはなく、その硬化方法についても熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などの種々の硬化型のものが利用可能である。利用できる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミドなどがあげられ、これらは単体で用いても、また、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなどして、種々の改良を加えたものであっても良い。これらの中でも特にエポキシ樹脂、アクリル変成したエポキシ樹脂(この場合は、含有するエポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.01〜0.3 モルのもの、さらに好ましくはエポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.05〜0.2 モル含むようにアクリル変成したエポキシ樹脂)が望ましい。
対向する導電基板の周縁部をシールするに際しては、対向する基板の間隙幅を調節する目的でスペーサー材料を使用することができる。そのスペーサー材料は非導電性であることが必要であるが、その形状はシート状、球状、繊維状、棒状等の任意の形状であって差し支えない。
導電基板のシールには任意の方法が採用可能である。例えば、
(1) 導電基板の形状に併せてシール材を予め加工、成形した材料を作製した後、
これを基板間に挟み込む方法、
(2) 前記硬化性樹脂のペーストを基板表面に公知の印刷方法を用いて所望の形状
に塗布する方法、
(3) 基板表面に随時塗布していく方法、
(4) シール材をノズルから吐出させならが掃引し、基板上に任意のパターンを形成する方法、
等が使用可能であり、この中では特に(4) の方法が好ましい。
基板へのシール材の塗布は1対の基板のうちの片方のみでも、また両方に行っても良い。
硬化性樹脂を塗布した場合には、基板を貼りあわせ硬化させるが、硬化方法は用いる硬化性樹脂により異なることは言うまでもない。
熱硬化の場合では、室温で硬化可能なものも用いることができるが、通常加熱が必要な場合は、室温〜150℃の間で,好ましくは室温〜100℃の間で硬化できればよい。また、硬化に要する時間は、エレクトロクロミック特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは24時間以内、さらに好ましくは1時間以内である。
光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均一露光することで、全面同時硬化しても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料を利用することによって集光したスポット光を走査して逐次硬化しても良い。また、2回以上繰り返すことによって硬化させても良い。
【0010】
本発明で使用される素子用セルには、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込み可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を備えた開口部が設けられる。
この開口部を形成する部材は特に限定されなく、一般に前記シール材との整合性や密着性に問題が生じない材料や前記シール材の中でも変形を伴って押し込み可能な材料が使用でき、特に後者が好ましい。
開口部を形成する典型的な材料としては、いわゆるゴムを総称されるものが挙げられ、具体的には、天然ゴムや、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム等が含まれる。
開口部を形成する方法は特に限定されなく、例えば、開口部に用いる部材が前記シール材と同様な場合、シール部分の形成と同時に所望の形状に開口部を形成することできる。また、開口部に用いる部材が前記シール材と異なる場合は、当該開口部の形成は、シール部分を形成する際でも、形成後でもよい。
また、この開口部は電解質又はその前駆体をセル内に注入した後に、セルの外部から開口部の一部を押し込むで注入口を塞ぐことにより、封止部材としての役割を併せ持つ。通常、当該開口部の封止は、ゴムを押し込むことにより1次封止が行われ、さらに、当該部分をさらに封止する2次封止を行うのが一般的である。2次封止材としては、特に限定されないが、光硬化型、熱硬化型、常温硬化型、電子線硬化型等の各種封止材を使用することができ、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤は勿論のこと、他種の接着剤も適宜使用できる。例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリル及びメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド等が使用可能で、これらは単品で用いても混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えたりしもものであっても差し支えない。
耐溶剤性の点から特にエポキシ樹脂が優れている。また、アクリル変成したエポキシ樹脂で光硬化型のものも特に優れている。この場合のアクリル変成エポキシ樹脂としては、エポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モル含有するアクリル変成エポキシ樹脂が適している。
封止用接着剤の熱硬化は、各種のオーブン、赤外線ヒーター、電熱ヒーター、面状発熱体等が利用でき、硬化温度は室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃の範囲が選ばれる。硬化時間は素子のエレクトロクロミック特性を損なわない限り限定されるないが、通常は24時間以内、好ましくは1時間以内である。
光硬化には、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光等が利用できる。露光に際しては、素子全面を均一露光しても差し支えなく、また、光源を移動させたり、光ファイバー等の導光材料もしくはミラー等を用いて集光したスポット光を走査させる逐次露光を採用してもよい。実用上好ましいのは、100〜1KWの超高圧水銀ランプあるいはキセノン−水銀ランプを用いる方法で、なかでも、200〜500Wのキセノン−水銀ランプを光源とし、光ファイバーを用いて導光する方法である。
次に開口部の形態について説明する。
図1は本発明の素子用セルを透明基板側から見た部分平面図であって、(a)には電解質注入前の開口部の形態が、(b)には電解質注入後の開口部の形態がそれぞれ示されている。
図示の例では、対向する2枚の導電基板の周縁部が、ブチルゴム1で一次シールされ、その外周が熱硬化型エポキシ系接着剤2で二次シールされている。電解質又はその前駆体の注入に利用するセルの開口部は、図1(a)に示すとおり、基板の端面に対して垂直でない通路3を備え、この通路を含め開口部は変形を伴って押し込み可能な部材で形成されるいる。尚、図示の具体例では、通路3が全体として鉤の手状に形成されているが、この通路は基板の端面に対して傾斜させて形成させても差し支えない。
本発明の素子用セルには、基板の端面に垂直でない通路を持つ開口部から、真空注入法によって電解質又はその前駆体が注入されるが、次にこの電解質又はその前駆体について説明する。
【0011】
本発明のエレクトロクロミック素子用セルに用いられる電解質は、エレクトロクロミック性物質を着色、消色、色変化等をさせることができるものである限り特に限定されないが、通常は室温で1×10-7S/cm以上のイオン伝導度を示す物質であることが好ましい。電解質としては、液系電解質、ゲル化液系電解質あるいは固体系電解質等を用いることができる。本発明においては、特に固体系電解質が望ましい。
液系電解質としては、溶媒に塩類、酸類、アルカリ類等の支持電解質を溶解したもの等を用いることができる。この場合の溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性をするものが好ましい。具体的には水の外、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどの有機極性溶媒が挙げられ、好ましくは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどの有機極性溶媒が好ましい。これらは単独もしくは混合物として使用できる。
支持電解質としての塩類も特に限定されず、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげられ、具体的にはLiClO4 、LiSCN、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3 、LiPF6 、LiI、NaI,NaSCN,NaClO4 、NaBF4 、NaAsF6 、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CH3 )4 NBF4 、(C2 H5 )4 NBF4 、(n−C4 H9 )4 NBF4 、(C2 H5 )4 NBr、(C2 H5 )4 NClO4 、(n−C4 H9 )4 NClO4 等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等、もしくはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
支持電解質としての酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、これには硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類など包含される。支持電解質としてのアルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸 化カリウム、水酸化リチウムなどが使用できる。
【0012】
ゲル化液系電解質としては、前記液系電解質に、さらにポリマーを含有させたり、ゲル化剤を含有させたりして粘稠液としたもの若しくはゲル状としたもの等が使用できる。この場合に使用されるポリマーは特には限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオンなどが使用できる。
ゲル化剤も特には限定されず、例えば、オキシエチレンメタクリレート、オ キシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド、寒天な どが使用できる。
なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体モノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合してこれをセル内に注入した後、重合又はゲル化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。
【0013】
固体系電解質は、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン、ポリスチレンスルホン酸、Li3 N、Na- β- Al2 O3 、In(HPO4 )2 ・H2 Oなどが挙げることができ、特にオキシアルキレンメタクリレート系化合物、オキシアルキレンアクリレート系化合物またはウレタンアクリレート系化合物を前駆体の主成分とし、当該前駆体を重合することによって得られる高分子化合物等を用いた高分子固体電解質が好ましい。
前記高分子固体電解質の第1の例は、下記一般式(1)で示されるウレタンアクリレートと有機極性溶媒と支持電解質を含む組成物(以下組成物Aと略す)を前駆体とし、当該前駆体を固化することにより得られる高分子固体電解質である。
【化1】
(式中R1 およびR2 は同一または異なる基であって、一般式(2)〜(4)から選ばれる基を示し、R3 およびR4 は同一または異なる基であって、炭素数1〜20、好ましくは2〜12の2価炭化水素残基を示す。Yはポリエーテル単位、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位又はこれらの混合単位を示す。またnは1〜100の範囲の整数を示す。)
【化2】
【化3】
【化4】
一般式(2)〜(4)において、R5 〜R7 は同一または異なる基であって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。またR8 は炭素数1〜20、好ましくは2〜8の2〜4価有機残基を示す。そして、この有機残基の具体例としては、アルキルトリル基、アルキルテトラリル基及び下記一般式(5)で示されるアルキレン基等が挙げられる。
【化5】
一般式(5)のR9 は炭素数1〜3のアルキル基または水素を示し、p は0〜6の整数を示す。pが2以上の場合R9 は同一でも異なっても良い。
前記炭化水素残基は、水素原子の一部が炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基などの含酸素炭化水素基により置換されている基でもよい。一般式(4)のR8 としては好ましい具体例を例示するれば、次のとおりである。
一般式(1)のR3 およびR4 で示される炭化水素残基としては、鎖状2価炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環炭化水素基などが挙げられる。鎖状2価炭化水素基としては、下記一般式(5)で示されるアルキレン基等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素基および脂環炭化水素基としては、下記一般式(6)〜(8)で示される炭化水素基が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
一般式(6)〜(8)中、R10およびR11は同一または異なる基であって、フェニレン基、置換フェニレン基(アルキル置換フェニレン基等)、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基(アルキル置換シクロアルキレン基等)を示す。R12〜R15は同一または異なる基であって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、qは1〜5の整数を示す。
一般式(1)に於けるR3 およびR4 の具体例は、下記の一般式(9)〜(15)で例示できる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
一般式(1)のYで示されるポリエーテル単位、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位およびこれらの混合単位は、それぞれ下記の一般式(a)〜(d)で示すことができる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
一般式(a)〜(d)に於いて、R16〜R21は同一または異なる基であって、炭素数1〜20、好ましくは2〜12の2価の炭化水素残基を示す。特にR19は、炭素数2〜6程度が好ましい。前記R16〜R21としては、直鎖または分岐のアルキレン基などが好ましく、具体的には、R18としてメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基等が好ましい。また、R16〜R17およびR19〜R21としてはエチレン基、プロピレン基などが好ましい。また、mは2〜300、好ましくは10〜200の整数を示し、rは1〜300、好ましくは2〜200の整数を、sは1〜200、好ましくは2〜100の整数を、tは1〜200、好ましくは2〜100の整数を、uは1〜300、好ましくは10〜200の整数をそれぞれ示す。また、一般式(a)〜(d)に於いて、各単位は同一でも、異なる単位の共重合でも良い。即ち、複数のR16〜R21が存在する場合、R16同志、R17同志、R18同志、R19同志、R20同志およびR21同志は同一でも異なっても良い。前記共重号体の例としてはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合単位などが特に好適な例として挙げられる。
一般式(1)のnは好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲の整数である。一般式(1)で示されるウレタンアクリレートの分子量は、2,500〜30,000、好ましくは3,000〜20,000の範囲にあり、1分子中の重合官能基数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4の範囲にある。
一般式(1)で示されるウレタンアクリレートは、公知の方法により容易に製造することができ、その製法は特に限定されるものではない。
【0014】
組成物Aを構成する有機極性溶媒としては、極性を有し支持電解質を溶解できるものであれば限定されないが、好適なものとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の単独または2種以上の混合物を挙げることができる。有機極性溶媒の添加量はウレタンアクリレート100重量部に対して通常100〜1200重量部、好ましくは200〜900重量部%の範囲で選ばれる。有機極性溶媒の添加量が少なすぎると、イオン伝導度も十分ではなく、多すぎると機械強度が低下してしまう場合がある。
組成物Aを構成する支持電解質は、最終的に得られる素子の用途などに応じて適宜選択され、通常は先に説明した液系電解質が好適に使用される。添加量は有機極性溶媒に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲で選ばれる。
上記した第1の高分子固体電解質は、前記ウレタンアクリレート、有機極性溶媒および支持電解質を基本成分とする組成物A(前駆体)を固化させることにより得られるが、この組成物Aには本発明の目的が損なわれない限り、任意成分を必要に応じて加えることができる。この種の任意成分としては、例えば、架橋剤、重合開始剤(光または熱)などが挙げられる。
第1の高分子固体電解質は、組成物Aを適宜公知の方法により、セルを構成する導電基板に設けた開口部からセル内に注入した後、固化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋性の成分が、重合(重縮合)や架橋の進行にともない硬化し、組成物全体として常温において実質的に流動しない状態となることをいう。なお、ウレタンアクリレートは、固化によってネットワーク状の基本構造をとる。
【0015】
高分子固体電解質の第2の例は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシド及び/又は多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、有機極性溶媒と、支持電解質を含む組成物(以下組成物Bと略す)を前駆体とし、当該前駆体を固化することにより得られる高分子固体電解質が挙げられる。
上記の単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドは下記一般式(16)で表すことができる。
【化20】
(式中、R22,R23,R24およびR25は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
一般式(16)に於いて、R22,R23,R24およびR25がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。R22〜R25は互いに同一でも異なってもよく、特にR22は水素、メチル基、R23は水素、メチル基、特にR24は水素、メチル基、R25は水素、メチル基、エチル基が好ましい。また、nで示される整数は、通常1≦n≦100、好ましくは2≦n≦50、さらに好ましくは2≦n≦30の範囲にある。
一般式(16)で示される単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドとして、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート,エトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリプロピレングリコールアクリレート等と、これらの混合物を挙げることができる。
また、一般式(16)のnが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、メトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート、エトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート、メトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート、エトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート等と、これらの混合物を挙げることができる。
【0016】
組成物Bに使用可能な多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドとしては、一般式(17)で示されるいわゆる2官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、一般式(18)で示される3官能以上の多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドを挙げることができる。
【化21】
(式中、R26,R27,R28およびR29は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、mは1以上の整数を示す。)
【化22】
(式中、R30,R31およびR32は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、pは1以上の整数を示し、qは2〜4の整数を示し、Lはq価の連結基を示す。)
一般式(17)のR26〜R29がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。特にR26は水素、メチル基、R27は水素、メチル基、特にR28は水素、メチル基、R29は水素、メチル基が好ましい。一般式(17)のmが示す整数は、通常1≦m≦100、好ましくは2≦m≦50、さらに好ましくは2≦m≦30の範囲にある。
一般式(17)で示される化合物の具体例には、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等とその混合物がある。
また、一般式(17)のmが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールジメタクリレート、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールジアクリレート等とその混合物が挙げられる。
一般式(18)のR30〜R32がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。特にR30,R31およびR32は水素、メチル基が好ましい。また、一般式(18)のpが示す整数は、通常1≦p≦100、好ましくは2≦p≦50、さらに好ましくは2≦p≦30の範囲にある。
一般式(17)の連結基Lは、通常、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の二価、三価または四価の炭化水素基である。二価炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具体的には
(Bzはベンゼン環を示す。以下同じ)
などが挙げられる。また、三価の炭化水素基としては、アルキルトリル基、アリールトリル基、アリールアルキルトリル基、アルキルアリールトリル基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具体的には
などが挙げられる。また、四価の炭化水素基としては、アルキルテトラリル基、アリールテトラリル基、アリールアルキルテトラリル基、アルキルアリールテトラリル基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具 体的には
等が挙げられる。
一般式(18)で示される化合物の具体例には、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つトリメチロールプロパントリ(ポリエチレングリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリエチレングリコールメタクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリプロピレングリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリエチレングリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリエチレングリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリプロピレングリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリイソプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリイソプロポキシ)フェニル]プロパン等とその混合物を挙げることができる。
また、一般式(18)のpが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、トリメチロールプロパントリ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート)等とその混合物が挙げられる。
一般式(17)で示される2官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと一般式(18)で表される3官能以上の多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドは併用可能である。併用する場合、一般式(17)の化合物/一般式(18)の化合物の重量比は、通常0.01/99.9〜99.9/0.01、好ましくは1/99〜99/1、さらに好ましくは20/80〜80/20の範囲にある。また、一般式(16)で示される単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、一般式(17)〜(18)で示される多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドを併用する場合、前者/後者の重量比は、通常、1/0.001〜1/1、好ましくは1/0.05〜1/0.5の範囲である。
組成物Bの有機極性溶媒及び支持電解質には、組成物Aについて説明した有機極性溶媒及び支持電解質が使用可能であって、有機極性溶媒の配合割合は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常50〜800重量%、好ましくは100〜500重量%の範囲にある。
また、支持電解質の配合割合は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲にある。
組成物Bには、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて任意成分を配合することができ、そうした任意成分としては、光重合のための光重合開始剤や熱重合するための熱重合開始剤等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%の範囲にある。
上記した第2の高分子固体電解質は、組成物Bを適宜公知の方法により、セルを構成する導電基板に設けた開口部からセル内に注入した後、固化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋性の成分、例えば単官能または多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドなどが、重合(重縮合)や架橋の進行にともない硬化し、組成物全体として常温において実質的に流動しない状態となることをいう。なお、この場合、通常単官能または多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドはともににネットワーク状の基本構造をとる。
【0017】
本発明によれば、上記した液系電解質、ゲル化液系電解質、固体系電解質のいずれかをセル内に注入するのが通例であるが、これ以外の電解質をセル内に注入しても差し支えないことは勿論である。ゲル化液系電解質と固体系電解質は、それぞれ前駆体の状態でセル内に注入される。セルに注入する電解質又はその前駆体には、先に説明したとおり、必要に応じて、予めエレクトロクロミック性物質を含有させて置くことができる。そして、注入に際しては、導電基板同志の間隙に電解質又はその前駆体を満遍なく充満させることができる方法が適宜採用される。一般的には、セルの中空部分を排気して理想的に略真空とし、この状態を保持したまま、大気圧下にある液状の電解質又はその前駆体に、セルの注入口を沈めて、セル内外の圧力差を利用してセル内に液体を供給する真空注入法が利用される。
セルに電解質又はその前駆体を注入した後は、前駆体がゲル化又は固化する前に、セルの端面に位置する注入口を閉鎖する。注入口の閉鎖は図1(a)に示す通路3の外側周壁を適宜の手段で押し込み、これを内側周壁に当接させることで行われる(図1の(b)参照)。
注入口の封鎖後は、注入口付近に付着した電解質又はその前駆体を洗浄除去した後、当該部分を封止用接着剤で封止する。
【0018】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、電解質又はその前駆体のセル内への注入が完了した時点で、変形を伴って押し込み可能な部材で形成されている注入通路を一次封鎖することができるので、接着剤による二次封止に先立って、注入口近傍の洗浄を充分に行うことができ、その結果として、接着剤の接着性能が電解質又はその前駆体によって損なわれることがなく、封止部分の耐久性を向上させることができる。また、電解質又はその前駆体の注入通路を、基板端面に垂直でなく設けているので、注入操作の終了後に、当該通路を経由してセル内に気泡が混入するのを防止するともできる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
エレクトロクロミック素子用対向電極基板の作製
活性炭粉末(商品名:YR17 クラレ製)80g、グラファイト(商品名:USSP 日本黒鉛商事社製)40g、シリコンレジン(商品名:RZ7703日本ユニカー社製)343g及びブチルセロソルブ25gを混合し、活性炭ペーストと調製した。次いで表面抵抗10Ω/sq、厚さ2mm、50cm×50cmのITOガラス板(ガラス板上にIn2 O3:Snターゲットを用いてスパッタリング成膜した膜厚2500オングストロームの透明導電性ガラス)の上に、上記の活性炭ペーストをストライプパターン部材に用いてスクリーン印刷を行い、ストライプ幅500μm、高さ100μmのストライプパターンを等間隔で形成させた。印刷面積は全面積の20%であった。その後、180℃で90分熱硬化させ、対向電極基板を作製した。
エレクトロクロミック素子用発色電極基板の作製
表面抵抗10Ω/sq、厚さ2mm、50cm×50cmのITOガラス板上に、常温に於いて10〜30オングストローム/sの条件で、膜厚が5000オングストロームとなるように酸化タングステンを蒸着して発色電極基板を作製した。
上記の対向電極基板と発色電極基板を500μmの間隔で対向させ、その間隙の内側周縁部をシールし、その一部に開口部を設けることで中空のセルを作成した。周縁部のシールには、5mm幅のブチルゴムを1次シール材に使用し、2次シール材としては、熱硬化型エポキシ系接着剤を5mm幅で塗布し、90℃で1時間硬化させた。また、開口部はブチルゴムで形成し、これに図1(a)で示すような鉤の手状の注入通路を設けた。
次にγ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)を調製し、これを真空注入法により前記の中空セル内に注入した。注入完了後、セルを水平に保持し、セル内に注入通路から気泡が混入しないことを確認した。次いで、ブチルゴム製注入通路の外側周壁を押し込んで内側周壁に当接させ、通路を閉鎖した。次いで注入口に付着している電解液をエタノールにて洗浄除去した後、スリーボンド製光硬化性接着剤3025を注入口に塗布し、当該部分を高圧水銀灯にて4000mJ照射して接着剤を硬化させ、2次封止を完了した。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度変化を下記の着消色試験で測定したところ、素子の中心部で0.50であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、上記のエレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
次いでこの素子の4隅の下に5cm立方のアクリル製支持体をあてがい、素子が自重で変形できる状態に放置した。1ヶ月後に素子を観察した結果、封止部の剥離は認められなかった。
着消色試験
ビームエキスパンダーで直径約20mmに拡大されたHe−Neレーザーの633nmの光を、エレクトロクロミック素子の中央を通過するように照射し、その透過光をSiフォトダイオードで計測する。素子に消色電圧を印可して消色した時の透過光量TBleachを求め、しかる後、着色電圧をエレクトロクロミック素子に印可すると同時に5s間隔で透過光量を測定する。着色電圧印可後、t秒経過した時の透過光量をT(t)とし、この時の光学密度変化を下記の式で定義する。
光学密度変化=log [TBleach/T(t)] (log は常用対数である)
実施例2
γ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)に、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレートを20重量%添加し、光硬化触媒としてダロキュアー1173を0.02重量%添加して光硬化型電解液を調製した。
この電解液を用いた以外は実施例1と同様にしてセルへの電解液の注入並びに注入口の封止を行った。光硬化性接着剤による2次封止後、高圧水銀灯にてセル内の電解液を20Jの照度で硬化させた。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度を実施例1と同様の着消色試験で評価したところ、素子の中心部で0.48であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、当該エレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
実施例3
基板間の間隔を200μmに変更した以外は実施例1と同様にしてセルを作成し、このセルに実施例1と同様な電解液を真空注入法で注入した後、実施例1と同様にして注入通路の閉鎖と2次封止を施した。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度を実施例1と同様の着消色試験で評価したところ、素子の中心部で0.50であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、当該エレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
比較例1
基板の表面に開口部を設ける代わりに、対向する2枚の基板の周縁部に施すシールの一部を省略し、セルの端面にこれと垂直な10mm幅の開口部を設けた以外は実施例1と同一寸法のセルを作成した。
次いで、γ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)を、真空注入法を用いて上記のセル内に注入した。注入完了後、セルを水平に保持したところ、注入口から空気が混入した。混入空気を排除後、注入口をエタノールにて洗浄除去した後、スリーボンド製光硬化性接着剤3025を塗布し、当該部分を高圧水銀灯にて4000mJの照度で硬化させ、封止を行った。
得られたエレクトロクロミック素子用セルを温度65℃、湿度95%のオーブン内に放置した。400時間経過後、セルをオーブンから取り出して観察したところ、封止部に剥離が認められた。
比較例2
比較例1と全く同様にして得られたエレクトロクロミック素子の4隅の下に、5cm立方のアクリル製支持体をあてがい、セルが自重で変形できる状態に放置した。1週間後にセルを観察したところ、封止部の一部に剥離が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の素子用セルの透明基板側から見た部分平面図であって、(a)は電解液注入前の開口部の形状を、(b)は電解液注入後の開口部の形状をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1 一次シール材
2 二次シール材
3 電解液通路
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトロクロミック素子の製造方法に関するものであり、詳しくは、電解質注入口の封止方法に特徴を有するエレクトロクロミック素子の製造方法に係る。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エレクトロクトミック素子は、少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔をもって対向させてその周縁部を一部を除いてシールし、シールを省いた部分を電解質注入口としたセルを組み立て、このセルの注入口から真空注入法にて電解質又はその前駆体を注入してセルの空隙部分に電解質又はその前駆体を充満させた後、注入口に光硬化型又は熱硬化型のアクリル樹脂系接着剤又はエポキシ樹脂系接着剤を充填し、これを硬化させて注入口を封止する方法で製造されている。
しかし、上記の如き注入口封止方法では、接着剤の充填に先立って注入口に付着した電解質を取り除かなければならず、その除去が不充分である場合には、接着剤にて注入口を完全に封鎖できない。加えて、上記の封止方法では、接着剤と電解質とが接触するため、接着剤の硬化が不充分となり、満足な接着強度を得ることができない虞もある。
【0003】
このような問題点の解決方法の一つとして、特開平2−114237号公報や特開平6−250230号公報には2段封止法が提案されている。
特開平2−114237号公報が教える方法は、対向する2枚の基板の周縁部の任意の箇所に開口部を設けた構成のセルを用意し、このセルの開口部を電解質注入口としてこれに電解質を注入した後、基板に垂直な外圧を加えた状態で注入口にエポキシ系接着剤等を塗布し、次いで、上記の外圧を解除することで、塗布した接着剤を注入口内に嵌入させて硬化せしめ(一次シール)、しかる後、当該一次シール部分を含めて基板の周縁部にエポキシ系接着剤を塗布し、これを硬化させる(二次シール)ことからなる。
この方法は、比較的寸法の小さいエレクロトクロミック素子の製造には、それなりの適性が認められるが、一次シールを行うに際してセル全体に外圧を加える必要があることから、比較的大型のエレクロトクロミック素子の製造には、必ずしも適しているとは言えない。そればかりでなく、上記の2段封止法は、セルを構成する2枚の基板の端面に略垂直に設けた電解質注入口に専ら適用されるものであるため、封止自体がたとえ成功裏に完遂できたとしも、大型のエレクロトクロミック素子にあっては、これを移動するに際して封止部分に応力が掛かり、剥離が生ずる心配がある。
また、特開平6−250230号公報には、電解質注入口をまず放射線硬化型接着剤で封止し、次いで当該部分に重ねてエポキシ系接着剤で封止する方法が提案されているが、この方法も上記した2段封止法と同様、セルを構成する2枚の基板の端面に略垂直に設けた電解質注入口を対象としているので、上と同様な心配を払拭できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、セルを構成する2枚の対向基板の端面に設けられる電解質注入通路を変形を伴って押し込み可能な部材で形成すると共に、その通路の向きを工夫することにより、大型のエレクロトクロミック素子にあっても、その移動に際して応力が掛かった場合でも、電解質注入通路の封止部分に剥離が生ずることのないエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的の一つは、電解質注入通路の封止材料としてある種の接着剤を使用するものの、その接着剤と電解質との接触を完全に絶つことができ、従って、電解質の混入によって接着剤の硬化反応が損なわれる虞のないエレクトロクロミック素子の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明が提案するエレクトロクロミック素子の製造方法は、
(a) 少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔をもって対向させ、その内側周縁部をシールすると共に、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込む可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を備えた開口部を設けた中空のエレクトロクロミック素子用セルを作成する工程と、
(b) 前記開口部から真空注入法を利用して電解質又はその前駆体を空隙部分に電解質又はその前駆体を注入する工程と、
(c) 電解質又はその前駆体の注入完了後、前記開口部を形成する上記の部材を押し込んで当該開口部を封鎖する工程と、
(d) 封鎖された開口部を接着剤にて封止する工程
からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、導電基板とは文字通り導電性を有し、電極としての機能を果たす基板を意味し、これにはそれ自体導電性を有する基板が使用できるほか、非導電性の基板であっても、その一方の表面(電解質層と接する側)に電極層を設けたものもが使用可能である。
導電性基板としては、鉄、銅、銀、アルミニウム、錫、鉛、金、亜鉛等の金属の単体、またはこれら金属の各種合金を挙げることができる。また、電極層を表面に設けて導電基板を作成する場合の非導電性基板には、表面が平滑であれば任意の基板が使用可能であって、その具体例としては、プラスチック(合成樹脂)製、ガラス製、木材製、石材製の各基板が例示できる。
本発明で使用する2枚の導電基板の少なくとも一方は透明であることが必要であるが、その透明な導電基板は、通常、透明基板の表面に電極層を積層させることで作成され、この場合の透明基板としては、無色あるいは有色ガラスが使用できる外、無色あるいは有色のプラスチック(合成樹脂)が使用できる。そして、この目的で使用可能なプラスチックの具体例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等がある。
なお、本発明における透明とは、可視光領域において10〜100%の透過率を有することを意味する。また、本発明における基板は、導電性基板も非導電性基板も共に常温においてその表面が平滑であれば、基板自体は平板状であっても、湾曲板状であっても差し支えなく、応力によって変形するものであっても差し支えない。
【0007】
非導電性の基板に積層させる電極層は透明であること好ましく、少なくとも透明基板に積層させる電極層は透明でなければならない。電極層には、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン等の金属薄膜や金属酸化物の薄膜が使用でき、その金属酸化物としては、例えば、ITO(In2 O3-SnO2 )、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛、酸化バナジウム等が挙げられる。
電極層の膜厚は、通常10〜1000nm、好ましくは50〜300nmの範囲で選択できる。また、電極層の表面抵抗(抵抗率)は、適宜選択可能であるが、通常は0. 5〜500Ω/sq.,好ましくは1〜50Ω/sq.の範囲で選ばれる。
電極層の形成は、電極を構成する金属及び/又は金属酸化物の種類により適宜選択できるが、通常は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、ゾルゲル法等が採用される。何れの場合も、基板温度を100〜350℃の範囲内に維持して電極層を形成するのが通例である。
非導電性基板上に形成される電極層には、酸化還元能の付与、電気二重層容量の増大等の目的で、不透明な電極活物質を部分的に付加することができる。この際、電極層を透明に維持する必要がある場合は、電極面全体の可視光透過率が10〜100%の範囲に保持される。
不透明な電極活物質としては、例えば、銅、銀、金、白金、鉄、タングステン、チタン、リチウム等の金属、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、フタロシアニンなどの酸化還元能を有する有機物、活性炭、グラファイト等の炭素材、V2 O5 、WO3 、MnO2 、NiO、Ir2 O3 などの金属酸化物またはこれらの混合物等を用いることができる。また、電極活性物質を電極層に結着させるために、バインダー樹脂を用いることもできる。
電極活性物質を電極層に付加する方法としては、例えば、活性炭繊維、グラファイト、アクリル樹脂等からなる組成物を用いて、ITO透明電極層上に、例えば、ストライプ模様を施したり、あるいはV2 O5 、アセチレンブラック、ブチルゴム等からなる組成物を用いて、金(Au)薄膜上にメッシュ模様を施す方法が例示できる。
【0008】
エレクトロクロミック素子用セルは、少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔を保って対向させてその内側周縁部をシールすることで作成され、電極層を積層させた導電基板を使用する場合には、電極層はセルの内側に配される。対向する導電基板の間隔は、通常30〜1000μm、好ましくは200〜500μmの範囲にある。本発明の素子用セルには、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込み可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を有する開口部が設けられる。
エレクトロクロミック素子にとって不可欠のエレクトロクロミック物質は、後述する電解質層に混在させることもできれば、電解質層とは独立したエレクトロクロミック層に含有させることもでき。エレクトロクロミック層はセルの任意の部位に配することが可能であるが、一般的には、セルの組み立て前に、少なくとも一方の導電基板の電極層上に設けることを可とする。また、電解質層にエレクトロクロミック性物質を混在させ、電解質層にエレクトロクロミック層としての機能を兼備させることもできるが、この場合には電解質又はその前駆体にエレクトロクロミック性物質を混合し、この混合物をセル内に注入する方法が採用できる。
エレクトロクロミック性物質とは、電気化学的な酸化反応あるいは還元反応等によって着色、消色、色変化などを示す物質を意味し、その具体例を例示すれば、Mo2 O3 、Ir2 O3 、NiO、V2 O5 、WO3 、ビオロゲン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、金属フタロシアニン、フェロセンなどが列挙できるが、これらに限定されることはない。
前記のエレクトロクロミック層は、エレクトロクロミック性物質のみで構成されてよく、また、エレクトロクロミック性物質とマトリックス成分とで構成されてもよいが、エレクトロクロミック性物質のみから構成されることがより好ましい。エレクトロクロミック層の厚さは、通常、10nm〜1μm、好ましくは50〜800nmの範囲にある。
エレクトロクロミック層の形成には任意の方法が採用可能であるが、通常は蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、電解重合法、ディップコート法、スピンコート法等が適宜採用される。
【0009】
対向する導電基板の間隙周縁部をシールする際のシール材は、素子内部を密封し、これを外部と隔絶して、素子の性能に影響を与える成分、例えば、水分、酸素、一酸化炭素の如き活性ガスの素子内部への浸透を阻止できるものであれば、その種類に特別な限定はない。従って、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン、ポリシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸セルロース、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド等で例示される合成樹脂、さらには、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム等で例示される合成ゴムが、シール材として使用できる。
また、シール材として硬化性樹脂などを用いることもできる。用いる硬化性樹脂は特に限定されることはなく、その硬化方法についても熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などの種々の硬化型のものが利用可能である。利用できる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニールアルコール、アクリルおよびメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミドなどがあげられ、これらは単体で用いても、また、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えるなどして、種々の改良を加えたものであっても良い。これらの中でも特にエポキシ樹脂、アクリル変成したエポキシ樹脂(この場合は、含有するエポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.01〜0.3 モルのもの、さらに好ましくはエポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.05〜0.2 モル含むようにアクリル変成したエポキシ樹脂)が望ましい。
対向する導電基板の周縁部をシールするに際しては、対向する基板の間隙幅を調節する目的でスペーサー材料を使用することができる。そのスペーサー材料は非導電性であることが必要であるが、その形状はシート状、球状、繊維状、棒状等の任意の形状であって差し支えない。
導電基板のシールには任意の方法が採用可能である。例えば、
(1) 導電基板の形状に併せてシール材を予め加工、成形した材料を作製した後、
これを基板間に挟み込む方法、
(2) 前記硬化性樹脂のペーストを基板表面に公知の印刷方法を用いて所望の形状
に塗布する方法、
(3) 基板表面に随時塗布していく方法、
(4) シール材をノズルから吐出させならが掃引し、基板上に任意のパターンを形成する方法、
等が使用可能であり、この中では特に(4) の方法が好ましい。
基板へのシール材の塗布は1対の基板のうちの片方のみでも、また両方に行っても良い。
硬化性樹脂を塗布した場合には、基板を貼りあわせ硬化させるが、硬化方法は用いる硬化性樹脂により異なることは言うまでもない。
熱硬化の場合では、室温で硬化可能なものも用いることができるが、通常加熱が必要な場合は、室温〜150℃の間で,好ましくは室温〜100℃の間で硬化できればよい。また、硬化に要する時間は、エレクトロクロミック特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは24時間以内、さらに好ましくは1時間以内である。
光硬化の場合では、開始剤の吸収波長に適合したランプであれば、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光などが利用できる。硬化の際には素子全面を均一露光することで、全面同時硬化しても良いし、ランプや光源を移動させたり、光ファイバーなどの導光性材料を利用することによって集光したスポット光を走査して逐次硬化しても良い。また、2回以上繰り返すことによって硬化させても良い。
【0010】
本発明で使用される素子用セルには、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込み可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を備えた開口部が設けられる。
この開口部を形成する部材は特に限定されなく、一般に前記シール材との整合性や密着性に問題が生じない材料や前記シール材の中でも変形を伴って押し込み可能な材料が使用でき、特に後者が好ましい。
開口部を形成する典型的な材料としては、いわゆるゴムを総称されるものが挙げられ、具体的には、天然ゴムや、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、水素化ニトリルゴム等が含まれる。
開口部を形成する方法は特に限定されなく、例えば、開口部に用いる部材が前記シール材と同様な場合、シール部分の形成と同時に所望の形状に開口部を形成することできる。また、開口部に用いる部材が前記シール材と異なる場合は、当該開口部の形成は、シール部分を形成する際でも、形成後でもよい。
また、この開口部は電解質又はその前駆体をセル内に注入した後に、セルの外部から開口部の一部を押し込むで注入口を塞ぐことにより、封止部材としての役割を併せ持つ。通常、当該開口部の封止は、ゴムを押し込むことにより1次封止が行われ、さらに、当該部分をさらに封止する2次封止を行うのが一般的である。2次封止材としては、特に限定されないが、光硬化型、熱硬化型、常温硬化型、電子線硬化型等の各種封止材を使用することができ、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤は勿論のこと、他種の接着剤も適宜使用できる。例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリル及びメタクリル酸エステル、シアノアクリル酸エステル、ポリアミド等が使用可能で、これらは単品で用いても混合して用いてもよい。また、これらを変成したり、フィラーを加えたりしもものであっても差し支えない。
耐溶剤性の点から特にエポキシ樹脂が優れている。また、アクリル変成したエポキシ樹脂で光硬化型のものも特に優れている。この場合のアクリル変成エポキシ樹脂としては、エポキシ残基1モルに対してアクリル残基が0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モル含有するアクリル変成エポキシ樹脂が適している。
封止用接着剤の熱硬化は、各種のオーブン、赤外線ヒーター、電熱ヒーター、面状発熱体等が利用でき、硬化温度は室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃の範囲が選ばれる。硬化時間は素子のエレクトロクロミック特性を損なわない限り限定されるないが、通常は24時間以内、好ましくは1時間以内である。
光硬化には、低圧、高圧、超高圧の各水銀ランプ、キセノンランプ、白熱ランプ、レーザー光等が利用できる。露光に際しては、素子全面を均一露光しても差し支えなく、また、光源を移動させたり、光ファイバー等の導光材料もしくはミラー等を用いて集光したスポット光を走査させる逐次露光を採用してもよい。実用上好ましいのは、100〜1KWの超高圧水銀ランプあるいはキセノン−水銀ランプを用いる方法で、なかでも、200〜500Wのキセノン−水銀ランプを光源とし、光ファイバーを用いて導光する方法である。
次に開口部の形態について説明する。
図1は本発明の素子用セルを透明基板側から見た部分平面図であって、(a)には電解質注入前の開口部の形態が、(b)には電解質注入後の開口部の形態がそれぞれ示されている。
図示の例では、対向する2枚の導電基板の周縁部が、ブチルゴム1で一次シールされ、その外周が熱硬化型エポキシ系接着剤2で二次シールされている。電解質又はその前駆体の注入に利用するセルの開口部は、図1(a)に示すとおり、基板の端面に対して垂直でない通路3を備え、この通路を含め開口部は変形を伴って押し込み可能な部材で形成されるいる。尚、図示の具体例では、通路3が全体として鉤の手状に形成されているが、この通路は基板の端面に対して傾斜させて形成させても差し支えない。
本発明の素子用セルには、基板の端面に垂直でない通路を持つ開口部から、真空注入法によって電解質又はその前駆体が注入されるが、次にこの電解質又はその前駆体について説明する。
【0011】
本発明のエレクトロクロミック素子用セルに用いられる電解質は、エレクトロクロミック性物質を着色、消色、色変化等をさせることができるものである限り特に限定されないが、通常は室温で1×10-7S/cm以上のイオン伝導度を示す物質であることが好ましい。電解質としては、液系電解質、ゲル化液系電解質あるいは固体系電解質等を用いることができる。本発明においては、特に固体系電解質が望ましい。
液系電解質としては、溶媒に塩類、酸類、アルカリ類等の支持電解質を溶解したもの等を用いることができる。この場合の溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性をするものが好ましい。具体的には水の外、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどの有機極性溶媒が挙げられ、好ましくは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1、3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどの有機極性溶媒が好ましい。これらは単独もしくは混合物として使用できる。
支持電解質としての塩類も特に限定されず、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげられ、具体的にはLiClO4 、LiSCN、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3 、LiPF6 、LiI、NaI,NaSCN,NaClO4 、NaBF4 、NaAsF6 、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CH3 )4 NBF4 、(C2 H5 )4 NBF4 、(n−C4 H9 )4 NBF4 、(C2 H5 )4 NBr、(C2 H5 )4 NClO4 、(n−C4 H9 )4 NClO4 等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等、もしくはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
支持電解質としての酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、これには硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類など包含される。支持電解質としてのアルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸 化カリウム、水酸化リチウムなどが使用できる。
【0012】
ゲル化液系電解質としては、前記液系電解質に、さらにポリマーを含有させたり、ゲル化剤を含有させたりして粘稠液としたもの若しくはゲル状としたもの等が使用できる。この場合に使用されるポリマーは特には限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオンなどが使用できる。
ゲル化剤も特には限定されず、例えば、オキシエチレンメタクリレート、オ キシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド、寒天な どが使用できる。
なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体モノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合してこれをセル内に注入した後、重合又はゲル化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。
【0013】
固体系電解質は、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン、ポリスチレンスルホン酸、Li3 N、Na- β- Al2 O3 、In(HPO4 )2 ・H2 Oなどが挙げることができ、特にオキシアルキレンメタクリレート系化合物、オキシアルキレンアクリレート系化合物またはウレタンアクリレート系化合物を前駆体の主成分とし、当該前駆体を重合することによって得られる高分子化合物等を用いた高分子固体電解質が好ましい。
前記高分子固体電解質の第1の例は、下記一般式(1)で示されるウレタンアクリレートと有機極性溶媒と支持電解質を含む組成物(以下組成物Aと略す)を前駆体とし、当該前駆体を固化することにより得られる高分子固体電解質である。
【化1】
(式中R1 およびR2 は同一または異なる基であって、一般式(2)〜(4)から選ばれる基を示し、R3 およびR4 は同一または異なる基であって、炭素数1〜20、好ましくは2〜12の2価炭化水素残基を示す。Yはポリエーテル単位、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位又はこれらの混合単位を示す。またnは1〜100の範囲の整数を示す。)
【化2】
【化3】
【化4】
一般式(2)〜(4)において、R5 〜R7 は同一または異なる基であって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。またR8 は炭素数1〜20、好ましくは2〜8の2〜4価有機残基を示す。そして、この有機残基の具体例としては、アルキルトリル基、アルキルテトラリル基及び下記一般式(5)で示されるアルキレン基等が挙げられる。
【化5】
一般式(5)のR9 は炭素数1〜3のアルキル基または水素を示し、p は0〜6の整数を示す。pが2以上の場合R9 は同一でも異なっても良い。
前記炭化水素残基は、水素原子の一部が炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基などの含酸素炭化水素基により置換されている基でもよい。一般式(4)のR8 としては好ましい具体例を例示するれば、次のとおりである。
一般式(1)のR3 およびR4 で示される炭化水素残基としては、鎖状2価炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環炭化水素基などが挙げられる。鎖状2価炭化水素基としては、下記一般式(5)で示されるアルキレン基等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素基および脂環炭化水素基としては、下記一般式(6)〜(8)で示される炭化水素基が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
一般式(6)〜(8)中、R10およびR11は同一または異なる基であって、フェニレン基、置換フェニレン基(アルキル置換フェニレン基等)、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基(アルキル置換シクロアルキレン基等)を示す。R12〜R15は同一または異なる基であって、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。また、qは1〜5の整数を示す。
一般式(1)に於けるR3 およびR4 の具体例は、下記の一般式(9)〜(15)で例示できる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
一般式(1)のYで示されるポリエーテル単位、ポリエステル単位、ポリカーボネート単位およびこれらの混合単位は、それぞれ下記の一般式(a)〜(d)で示すことができる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
一般式(a)〜(d)に於いて、R16〜R21は同一または異なる基であって、炭素数1〜20、好ましくは2〜12の2価の炭化水素残基を示す。特にR19は、炭素数2〜6程度が好ましい。前記R16〜R21としては、直鎖または分岐のアルキレン基などが好ましく、具体的には、R18としてメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基等が好ましい。また、R16〜R17およびR19〜R21としてはエチレン基、プロピレン基などが好ましい。また、mは2〜300、好ましくは10〜200の整数を示し、rは1〜300、好ましくは2〜200の整数を、sは1〜200、好ましくは2〜100の整数を、tは1〜200、好ましくは2〜100の整数を、uは1〜300、好ましくは10〜200の整数をそれぞれ示す。また、一般式(a)〜(d)に於いて、各単位は同一でも、異なる単位の共重合でも良い。即ち、複数のR16〜R21が存在する場合、R16同志、R17同志、R18同志、R19同志、R20同志およびR21同志は同一でも異なっても良い。前記共重号体の例としてはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合単位などが特に好適な例として挙げられる。
一般式(1)のnは好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲の整数である。一般式(1)で示されるウレタンアクリレートの分子量は、2,500〜30,000、好ましくは3,000〜20,000の範囲にあり、1分子中の重合官能基数は、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4の範囲にある。
一般式(1)で示されるウレタンアクリレートは、公知の方法により容易に製造することができ、その製法は特に限定されるものではない。
【0014】
組成物Aを構成する有機極性溶媒としては、極性を有し支持電解質を溶解できるものであれば限定されないが、好適なものとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等の単独または2種以上の混合物を挙げることができる。有機極性溶媒の添加量はウレタンアクリレート100重量部に対して通常100〜1200重量部、好ましくは200〜900重量部%の範囲で選ばれる。有機極性溶媒の添加量が少なすぎると、イオン伝導度も十分ではなく、多すぎると機械強度が低下してしまう場合がある。
組成物Aを構成する支持電解質は、最終的に得られる素子の用途などに応じて適宜選択され、通常は先に説明した液系電解質が好適に使用される。添加量は有機極性溶媒に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲で選ばれる。
上記した第1の高分子固体電解質は、前記ウレタンアクリレート、有機極性溶媒および支持電解質を基本成分とする組成物A(前駆体)を固化させることにより得られるが、この組成物Aには本発明の目的が損なわれない限り、任意成分を必要に応じて加えることができる。この種の任意成分としては、例えば、架橋剤、重合開始剤(光または熱)などが挙げられる。
第1の高分子固体電解質は、組成物Aを適宜公知の方法により、セルを構成する導電基板に設けた開口部からセル内に注入した後、固化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋性の成分が、重合(重縮合)や架橋の進行にともない硬化し、組成物全体として常温において実質的に流動しない状態となることをいう。なお、ウレタンアクリレートは、固化によってネットワーク状の基本構造をとる。
【0015】
高分子固体電解質の第2の例は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシド及び/又は多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、有機極性溶媒と、支持電解質を含む組成物(以下組成物Bと略す)を前駆体とし、当該前駆体を固化することにより得られる高分子固体電解質が挙げられる。
上記の単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドは下記一般式(16)で表すことができる。
【化20】
(式中、R22,R23,R24およびR25は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
一般式(16)に於いて、R22,R23,R24およびR25がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。R22〜R25は互いに同一でも異なってもよく、特にR22は水素、メチル基、R23は水素、メチル基、特にR24は水素、メチル基、R25は水素、メチル基、エチル基が好ましい。また、nで示される整数は、通常1≦n≦100、好ましくは2≦n≦50、さらに好ましくは2≦n≦30の範囲にある。
一般式(16)で示される単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドとして、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート,エトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリプロピレングリコールアクリレート等と、これらの混合物を挙げることができる。
また、一般式(16)のnが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、メトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート、エトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート、メトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート、エトキシポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート等と、これらの混合物を挙げることができる。
【0016】
組成物Bに使用可能な多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドとしては、一般式(17)で示されるいわゆる2官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、一般式(18)で示される3官能以上の多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドを挙げることができる。
【化21】
(式中、R26,R27,R28およびR29は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、mは1以上の整数を示す。)
【化22】
(式中、R30,R31およびR32は、各々水素または1〜5の炭素原子を有するアルキル基を示し、pは1以上の整数を示し、qは2〜4の整数を示し、Lはq価の連結基を示す。)
一般式(17)のR26〜R29がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。特にR26は水素、メチル基、R27は水素、メチル基、特にR28は水素、メチル基、R29は水素、メチル基が好ましい。一般式(17)のmが示す整数は、通常1≦m≦100、好ましくは2≦m≦50、さらに好ましくは2≦m≦30の範囲にある。
一般式(17)で示される化合物の具体例には、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等とその混合物がある。
また、一般式(17)のmが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールジメタクリレート、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールジアクリレート等とその混合物が挙げられる。
一般式(18)のR30〜R32がアルキル基である場合、そのアルキル基としては、メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。特にR30,R31およびR32は水素、メチル基が好ましい。また、一般式(18)のpが示す整数は、通常1≦p≦100、好ましくは2≦p≦50、さらに好ましくは2≦p≦30の範囲にある。
一般式(17)の連結基Lは、通常、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の二価、三価または四価の炭化水素基である。二価炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具体的には
(Bzはベンゼン環を示す。以下同じ)
などが挙げられる。また、三価の炭化水素基としては、アルキルトリル基、アリールトリル基、アリールアルキルトリル基、アルキルアリールトリル基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具体的には
などが挙げられる。また、四価の炭化水素基としては、アルキルテトラリル基、アリールテトラリル基、アリールアルキルテトラリル基、アルキルアリールテトラリル基またはこれらを基本骨格として有する炭化水素基などが挙げられ、具 体的には
等が挙げられる。
一般式(18)で示される化合物の具体例には、オキシアルキレンユニットを1〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは1〜20の範囲で持つトリメチロールプロパントリ(ポリエチレングリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリエチレングリコールメタクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリプロピレングリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリエチレングリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリエチレングリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリプロピレングリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリイソプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリイソプロポキシ)フェニル]プロパン等とその混合物を挙げることができる。
また、一般式(18)のpが2以上の場合、オキシアルキレンユニットが互いに異なるいわゆる共重合オキシアルキレンユニットを持つものでもよく、例えば、オキシエチレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持ち、かつオキシプロピレンユニットを1〜50、好ましくは1〜20の範囲で持つところの、トリメチロールプロパントリ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールアクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(ポリ(エチレン・プロピレン)グリコールメタクリレート)等とその混合物が挙げられる。
一般式(17)で示される2官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと一般式(18)で表される3官能以上の多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドは併用可能である。併用する場合、一般式(17)の化合物/一般式(18)の化合物の重量比は、通常0.01/99.9〜99.9/0.01、好ましくは1/99〜99/1、さらに好ましくは20/80〜80/20の範囲にある。また、一般式(16)で示される単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと、一般式(17)〜(18)で示される多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドを併用する場合、前者/後者の重量比は、通常、1/0.001〜1/1、好ましくは1/0.05〜1/0.5の範囲である。
組成物Bの有機極性溶媒及び支持電解質には、組成物Aについて説明した有機極性溶媒及び支持電解質が使用可能であって、有機極性溶媒の配合割合は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常50〜800重量%、好ましくは100〜500重量%の範囲にある。
また、支持電解質の配合割合は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲にある。
組成物Bには、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて任意成分を配合することができ、そうした任意成分としては、光重合のための光重合開始剤や熱重合するための熱重合開始剤等を挙げることができる。重合開始剤の使用量は、単官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドと多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドの重量和に対して、通常0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%の範囲にある。
上記した第2の高分子固体電解質は、組成物Bを適宜公知の方法により、セルを構成する導電基板に設けた開口部からセル内に注入した後、固化させることで対向する導電基板の間に挟持させることができる。ここでいう固化とは、重合性または架橋性の成分、例えば単官能または多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドなどが、重合(重縮合)や架橋の進行にともない硬化し、組成物全体として常温において実質的に流動しない状態となることをいう。なお、この場合、通常単官能または多官能アクリロイル変性ポリアルキレンオキシドはともににネットワーク状の基本構造をとる。
【0017】
本発明によれば、上記した液系電解質、ゲル化液系電解質、固体系電解質のいずれかをセル内に注入するのが通例であるが、これ以外の電解質をセル内に注入しても差し支えないことは勿論である。ゲル化液系電解質と固体系電解質は、それぞれ前駆体の状態でセル内に注入される。セルに注入する電解質又はその前駆体には、先に説明したとおり、必要に応じて、予めエレクトロクロミック性物質を含有させて置くことができる。そして、注入に際しては、導電基板同志の間隙に電解質又はその前駆体を満遍なく充満させることができる方法が適宜採用される。一般的には、セルの中空部分を排気して理想的に略真空とし、この状態を保持したまま、大気圧下にある液状の電解質又はその前駆体に、セルの注入口を沈めて、セル内外の圧力差を利用してセル内に液体を供給する真空注入法が利用される。
セルに電解質又はその前駆体を注入した後は、前駆体がゲル化又は固化する前に、セルの端面に位置する注入口を閉鎖する。注入口の閉鎖は図1(a)に示す通路3の外側周壁を適宜の手段で押し込み、これを内側周壁に当接させることで行われる(図1の(b)参照)。
注入口の封鎖後は、注入口付近に付着した電解質又はその前駆体を洗浄除去した後、当該部分を封止用接着剤で封止する。
【0018】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、電解質又はその前駆体のセル内への注入が完了した時点で、変形を伴って押し込み可能な部材で形成されている注入通路を一次封鎖することができるので、接着剤による二次封止に先立って、注入口近傍の洗浄を充分に行うことができ、その結果として、接着剤の接着性能が電解質又はその前駆体によって損なわれることがなく、封止部分の耐久性を向上させることができる。また、電解質又はその前駆体の注入通路を、基板端面に垂直でなく設けているので、注入操作の終了後に、当該通路を経由してセル内に気泡が混入するのを防止するともできる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
エレクトロクロミック素子用対向電極基板の作製
活性炭粉末(商品名:YR17 クラレ製)80g、グラファイト(商品名:USSP 日本黒鉛商事社製)40g、シリコンレジン(商品名:RZ7703日本ユニカー社製)343g及びブチルセロソルブ25gを混合し、活性炭ペーストと調製した。次いで表面抵抗10Ω/sq、厚さ2mm、50cm×50cmのITOガラス板(ガラス板上にIn2 O3:Snターゲットを用いてスパッタリング成膜した膜厚2500オングストロームの透明導電性ガラス)の上に、上記の活性炭ペーストをストライプパターン部材に用いてスクリーン印刷を行い、ストライプ幅500μm、高さ100μmのストライプパターンを等間隔で形成させた。印刷面積は全面積の20%であった。その後、180℃で90分熱硬化させ、対向電極基板を作製した。
エレクトロクロミック素子用発色電極基板の作製
表面抵抗10Ω/sq、厚さ2mm、50cm×50cmのITOガラス板上に、常温に於いて10〜30オングストローム/sの条件で、膜厚が5000オングストロームとなるように酸化タングステンを蒸着して発色電極基板を作製した。
上記の対向電極基板と発色電極基板を500μmの間隔で対向させ、その間隙の内側周縁部をシールし、その一部に開口部を設けることで中空のセルを作成した。周縁部のシールには、5mm幅のブチルゴムを1次シール材に使用し、2次シール材としては、熱硬化型エポキシ系接着剤を5mm幅で塗布し、90℃で1時間硬化させた。また、開口部はブチルゴムで形成し、これに図1(a)で示すような鉤の手状の注入通路を設けた。
次にγ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)を調製し、これを真空注入法により前記の中空セル内に注入した。注入完了後、セルを水平に保持し、セル内に注入通路から気泡が混入しないことを確認した。次いで、ブチルゴム製注入通路の外側周壁を押し込んで内側周壁に当接させ、通路を閉鎖した。次いで注入口に付着している電解液をエタノールにて洗浄除去した後、スリーボンド製光硬化性接着剤3025を注入口に塗布し、当該部分を高圧水銀灯にて4000mJ照射して接着剤を硬化させ、2次封止を完了した。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度変化を下記の着消色試験で測定したところ、素子の中心部で0.50であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、上記のエレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
次いでこの素子の4隅の下に5cm立方のアクリル製支持体をあてがい、素子が自重で変形できる状態に放置した。1ヶ月後に素子を観察した結果、封止部の剥離は認められなかった。
着消色試験
ビームエキスパンダーで直径約20mmに拡大されたHe−Neレーザーの633nmの光を、エレクトロクロミック素子の中央を通過するように照射し、その透過光をSiフォトダイオードで計測する。素子に消色電圧を印可して消色した時の透過光量TBleachを求め、しかる後、着色電圧をエレクトロクロミック素子に印可すると同時に5s間隔で透過光量を測定する。着色電圧印可後、t秒経過した時の透過光量をT(t)とし、この時の光学密度変化を下記の式で定義する。
光学密度変化=log [TBleach/T(t)] (log は常用対数である)
実施例2
γ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)に、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレートを20重量%添加し、光硬化触媒としてダロキュアー1173を0.02重量%添加して光硬化型電解液を調製した。
この電解液を用いた以外は実施例1と同様にしてセルへの電解液の注入並びに注入口の封止を行った。光硬化性接着剤による2次封止後、高圧水銀灯にてセル内の電解液を20Jの照度で硬化させた。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度を実施例1と同様の着消色試験で評価したところ、素子の中心部で0.48であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、当該エレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
実施例3
基板間の間隔を200μmに変更した以外は実施例1と同様にしてセルを作成し、このセルに実施例1と同様な電解液を真空注入法で注入した後、実施例1と同様にして注入通路の閉鎖と2次封止を施した。
得られたエレクトロクロミック素子の発色電極側が負極、対向電極側が正極になるように1.5Vを150秒間印可したところ、青色に均一に着色し、着色時の光学密度を実施例1と同様の着消色試験で評価したところ、素子の中心部で0.50であった。
続いて、エレクトロクロミック素子の発色電極側が正極、対向電極側が負極となるように1Vの電圧を60秒間印可したところ、着色は素子全面にわたり速やかに消色した。
また、当該エレクトロクロミック素子を温度65℃、湿度95%のオーブン内に1000時間放置した。素子をオーブンから取り出して観察したところ、封止部の剥離は認められなかった。
比較例1
基板の表面に開口部を設ける代わりに、対向する2枚の基板の周縁部に施すシールの一部を省略し、セルの端面にこれと垂直な10mm幅の開口部を設けた以外は実施例1と同一寸法のセルを作成した。
次いで、γ−ブチロラクトンを溶媒としたLiClO4 の支持電解質を含む電解液(濃度1mol/L)を、真空注入法を用いて上記のセル内に注入した。注入完了後、セルを水平に保持したところ、注入口から空気が混入した。混入空気を排除後、注入口をエタノールにて洗浄除去した後、スリーボンド製光硬化性接着剤3025を塗布し、当該部分を高圧水銀灯にて4000mJの照度で硬化させ、封止を行った。
得られたエレクトロクロミック素子用セルを温度65℃、湿度95%のオーブン内に放置した。400時間経過後、セルをオーブンから取り出して観察したところ、封止部に剥離が認められた。
比較例2
比較例1と全く同様にして得られたエレクトロクロミック素子の4隅の下に、5cm立方のアクリル製支持体をあてがい、セルが自重で変形できる状態に放置した。1週間後にセルを観察したところ、封止部の一部に剥離が認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の素子用セルの透明基板側から見た部分平面図であって、(a)は電解液注入前の開口部の形状を、(b)は電解液注入後の開口部の形状をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1 一次シール材
2 二次シール材
3 電解液通路
Claims (1)
- 少なくとも1枚が透明な2枚の導電基板を間隔をもって対向させ、その内側周縁部をシールすると共に、シールされた周縁部の少なくとも1箇所に、周囲が変形を伴って押し込み可能な部材で形成され、かつ導電基板の端面に垂直でない通路を備えた開口部を設けた中空のエレクトロクロミック素子用セルを作成する工程と、前記開口部から真空注入法を利用して電解質又はその前駆体を空隙部分に電解質又はその前駆体を注入する工程と、電解質又はその前駆体の注入完了後、前記開口部を形成する上記の部材を押し込んで当該開口部を封鎖する工程と、封鎖された開口部を接着剤にて封止する工程からなるエレクトロクロミック素子の製造方法。
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