JP3864665B2 - Saw共振子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性表面波を利用して構成されるSAW共振子において、素子サイズの小型化に役立つ技術を提供するSAW共振子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のSAW共振子としては、電気的交流電圧を加えて弾性表面波に変換するすだれ状電極(以降、省略してIDT(Interdigital Transduser)と略記する)を1つと、その両側に一対の反射器からなる構成をもつSAW共振子が一般的である(特開平3−261210号公報)。前記SAW共振子の動作原理については、本発明の詳細な説明において詳しく説明するが、いわゆるエネルギ閉じ込め型SAW共振子(参考文献:エネルギー閉じ込め弾性表面波共振子,信学技法US87−36,pp9−16(1987.9.))と呼ばれるものであり、弾性表面波の伝播方向とこれに直交する幅方向に関しても、振動エネルギの閉じ込め状態が良く比較的共振先鋭度(Q値)が高いため、VHF,UHF帯周波数を利用するSAW発振器に広く使用されるに至っている。
【0003】
この構成を用いて周波数温度特性が優れた、約30度から45度の回転Y板である水晶STカットX伝搬基板にてSAW共振子を構成すると、素子の平面サイズが(x×y)=2mm×2.8mmで、200MHzにおいて20Ω程度の直列等価抵抗R1の特性をもつものが得られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし近年小型・低コスト化要求が著しい民生装置に対して、従来の半分以下の幅寸法を有する素子サイズ1mm×2.8mmにおいて、前述の200MHz程度の周波数のSAW共振子を従来と同一R1性能水準を維持して製造することが困難であった。この原因を究明してみると、主たる原因として、周波数に依存して決まる弾性表面波の波長λを基準として幅方向の波長数nが約半分に減少し、SAW共振子における幅方向のエネルギ閉じ込めが不十分となって(図12参照)、素子の幅端部においてエネルギの散逸が発生してQ値の低下が起こり、結果としてR1が増大するためとわかった。図12において、1200はSAW共振子の幅方向Yに関する振動変位V(Y)示し、1201は電極導体パターン、1202は振動変位の端部変位ε、1203はSAW共振子の素子チツプの外形形状(圧電体平板)である。
そこで本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的は、水晶STカットのような周波数温度特性が優れ、かつ材料のQ値が優れた基板を用いて、従来に無く小型化をはかりかつ、SAW共振子のQ値が高く、結果として周波数安定度に優れかつC/Nが良いSAW共振子を市場に提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のSAW共振子は、圧電体平板上に、少なくとも1個のすだれ状電極と、前記すだれ状電極が発生する弾性表面波をその両側において反射するための1対の反射器を前記弾性表面波の伝搬方向(縦方向X)に配置し、前記反射器とすだれ状電極は、前記圧電体平板上に金属の平行導体を周期的に配置して形成し、前記反射器と前記すだれ状電極間の最も近接した平行導体間の距離は、すだれ状電極の1周期長が有するラインLTとスペースSTのうちスペースSTからなり、前記すだれ状電極の平行導体の配列周期長PTを、前記反射器の配列周期長PRより小さい設定となし、前記すだれ状電極の全体が有するトータル反射係数Гを10>Γ>0.8とした周波数上昇エネルギー閉込型であるSAW共振子において、前記弾性表面波の伝搬方向Xに直交する幅方向Yに関して、前記反射器とすだれ状電極を構成する平行導体のX方向幅寸法L(Y)が、幅方向Yの中央位置において細く(寸法LC)、かつ両側において広い寸法LSをとることを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記寸法L(Y)が幅方向Yの中央位置に対して対称的に変化する階段状関数にて与えられ、前記反射器及びすだれ状電極がそれぞれnを整数としてn個(n>2)の線幅を持つ平行導体から構成されていることを特徴とする
(3)前記(2)において、前記寸法L(Y)がLc<Lsの関係を持ち、3個の線幅を持つ平行導体から構成されていることを特徴とする。
(4)前記(3)において、前記寸法L(Y)がLc<Lsの関係式に従っており、SAW共振子の横モードである基本波対称モードS0に対して、基本波斜対称モードA0のもつ共振周波数が小さいこと(f(S0)>f(A0))を特徴とする。
(5)前記(4)において、前記寸法LCとLSの関係式がLC/LS=0.6から0.85の範囲であり、すだれ状電極の電極指交差幅の全長WCに対するLCを有する部分の長さWCcの比がWCc/WC=1/3であることを特徴とする。
(6)前記(1)において、前記圧電体平板が水晶であって、30〜45度回転Y板のSTカットであり、かつ前記すだれ状電極の電極指交差幅WCが、弾性表面波の波長をλとして、10λから40λの範囲としたことを特徴とする。
(7)前記(1)において、前記1個のSAW共振子が有するすだれ状電極の対数Mと片側反射器の導体本数Nの和M+Nが150から200の範囲内であることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に関して、具体的な実施例を説明する前に理論的な解説を行ない、本発明の理解を助けることにする。
水晶、タンタル酸リチウム、PZT、四ほう酸リチウム等の圧電体材料から平板を切り出して、その表面を鏡面研磨した後、レイリー型、SH型、リーキー型、BGS波等の弾性表面波の位相伝搬方向に対して直交して、例えば金属アルミニウムからなる多数の平行導体の電極指を周期的に配置したIDT(すだれ状電極)を形成し、さらには、その両側に一対の反射器を多数の導体ストリップを平行にかつ周期的に配置して構成し、1ポート型のSAW共振子を形成する。
【0007】
前記のSAW共振子において、前記IDTを構成する際の要点として、正電極と負電極を1対としてM対としたときに、IDTの電極指全体でのトータル反射係数Гを次式(1)の通り定義した上で、10>Г>0.8とすれば、振動エネルギーが共振子の中央に集中した、いわゆるエネルギー閉込型SAW共振子(参考文献:エネルギー閉じ込め弾性表面波共振子,信学技法US87−36,pp9−16(1987.9.))を実現できることが知られている。
【0008】
【数1】
但し、ここでMは前記IDTの対数、bは電極1本当たりの弾性表面波の反射係数、Hは前記導体の膜厚、λは弾性表面波の波長である。
【0009】
例えば、STカット水晶板で前記アルミニウム導体で形成されたIDTであれば、b=0.255、H/λ=0.03としてM=80対、1個の反射器の導体本数をN=100本とすれば、従来の1ポートSAW共振子を構成できる。このときΓ=2.448程度となる。この構成条件を周波数200MHzの場合に当てはめてみると、前記STカットの弾性表面波速度Vsが3150m/sであるから、λ=3150/200=15.75μm/sとなり、SAW共振子の全長は、λ(M+N)=2835μmとなって、素子サイズの全長が2.8mmの妥当性を説明している。
【0010】
また、前記の200MHzの周波数においてWCが40波長とした場合に、素子の幅サイズyが2mmのとき、R1=20Ω程度、y=1mmではR1が30から60Ωの範囲でばらつく結果となっている。本発明はこの原因を解明し、従来水準のR1値を得る対策を検討する過程で得られたものであるが、解析の手法として、以下に述べる独自の理論的な手段を用いた。
【0011】
これはSAW共振子の幅方向Yに関していわゆる横モードとよばれるモードの振動変位とその共振周波数を算出し、SAW共振子の設計を行ったもので、この内容を順に説明する。前記横モードは、SAW共振子の幅方向(弾性表面波の伝搬方向Xに対してに直交するY軸方向のこと)の長さに依存して存在する固有振動モードであり、前記幅方向の長さとはIDTのもつ電極指交差幅WCを指すことが一般的である。この電極指交差幅WCとは、正極性と負極性の電極指が相互に重なる配置となる幅方向の寸法である。
【0012】
次に、前記のSAW共振子の幅方向(Y軸とする)について、SAW共振子の振動変位を簡便に計算するための方法として、発明者等はすでにこれら横モードを支配する微分方程式を導いて公開している(高木,桃崎,他:”常温に動的及び静的零温度係数をもつKカット水晶SAW共振子”,電気学会 電子回路技術委員会 第25回EMシンポジウム,pp79−80,(1996))。あらためて、この方程式を記述すると式(2)となる。
【0013】
【数2】
ここで、ωは角周波数、ω0(Y)は該当する領域の素子角周波数、aは幅方向の実効的せん断剛性定数(別名横異方性定数)、V(Y)は幅方向の弾性表面波変位の振幅、Yは弾性表面波の波長で規格化したY座標である。また、ω0(Y)は座標Yにおける弾性表面波の速度を角周波数に換算した量であり、周波数ポテンシャル関数と呼ぶことにする。この周波数ポテンシャル関数はSAW共振子の動作点近傍においては、弾性表面波の伝搬路に存在するアルミニウム金属導体膜の厚みH(Y)、あるいは線幅L(Y)、さらには前記導体の配列構造によっても変化する。特に金属導体のλ/2からなる周期的な配列構造においては、小範囲の近似的な解釈ではアルミニウム金属の質量m(Y)の関数で変化することが確認されている。従って、SAW共振子の主要部を構成するすだれ状電極部においては、すだれ状電極のもつ質量m(Y)によりω0(Y)はほぼ決定される。すなはち、ω0(m(Y))である。さらに質量m(Y)はρを金属導体の密度として、m(Y)=ρH(Y)L(Y)であるから、前記のω0(Y)は線幅L(Y)に対してほぼ比例して直線的に降下すると言える。 ここで計算を簡単にするために式(2)において、無限の幅寸法(WC=∞)を有するSAW共振子の周波数ω00を基準としてω002で割って、
【0014】
【数3】
ここで、Ω=ω/ω00は規格化周波数、P(L(Y))=ω0(Y)/ω00は規格化されたポテンシャル関数となる。さらにまた、前記P(Y)に代えて、次式の関数N(Y)を導入することにより、N(Y)=1においてP(Y)=1(即ちω0(Y)=ω00)に対応させ、N(Y)=0においてP(Y)=1/η(即ちω0(Y)=ω00η=ωf)に対応させることができる。ここでωfは電極が存在しない自由表面の周波数であり、η=ωf/ω00は周波数降下係数である。
【0015】
【数4】
変位振幅V(Y)求める方法は、たとえば、次の様に逐次積分にて計算することができる。
【0016】
【数5】
式(5)のV(Y,Ω)は規格化周波数Ωの関数であるが、現実に起きる変位振幅は、エネルギーの最小原理である次式により与えられるΩにおいて得られる。
【0017】
【数6】
以上の式(1)から(6)が本発明に用いた計算の基本式であり、これらを用いて、後述の具体的実施例になるSAW共振子の設計を行い、試作品を製作して測定してみたので、これらを順に説明する。
【0018】
(実施例1)
以下、本発明の実施の形態を図1から順を追って説明する。図1は本発明のSAW共振子の一種に使用される電極パターンを、平面図で表した実施例1である。図1中の各部位の名称は、100は圧電体平板、102はSAW共振子のすだれ状電極の全体、101と103は各々、SAW共振子の反射器1と反射器2である。104と107等は、前記反射器の導体ストリップであり、105と106等はすだれ状電極(IDT)の電極指である。前記104、107は導体ストリップの周期的配列がPR、105,106等は周期的配列PTで形成されており、それらは弾性表面波の伝播方向X軸(109)に直交して、幅方向であるY軸(110)に平行して配置されている。前記PTとPRの関係は、水晶STカットX軸伝播基板(水晶の機械軸Yに垂直なY板を電気軸X回りに、反時計方向に30度から46度回転したカット)を用いた場合には、PR>PTの関係に設定してIDT102から放射される弾性表面波の最大強度となる周波数fTと反射器における反射係数の最大周波数fRをほぼ一致させてSAW共振子の共振先鋭度を向上させることができる。また、前記のPTとPRはアルミニウム等の金属薄膜を膜の存在する領域であるL(ライン)と存在しない領域S(スペース)の和として形成する(PT=LT(ライン)+ST(スペース),PR=LR(ライン)+SR(スペース))。反射器101とIDT102および反射器107とIDT102の導体間距離は、前記STに設定する。さらにまた、反射器101、107とIDT102の正負電極指105と106等は、交差幅の中央部位において前記L=Lcが広く、両側においてL=Lsが細い関係(Lc(111)>Ls(112,113))をもって、全て同一の幅方向Yの長さA1をもって形成する(図1領域108WCc)。
【0019】
さらに説明を補足すると、100の圧電体平板は、水晶、タンタル酸リチウム、四ほう酸リチウム等の圧電性を有する単結晶およびZnO等の圧電性薄膜を形成した基板等からなる。前記の100上に形成された前記SAW共振子を構成するIDT102ならびに反射器101,107等は、アルミニウムおよび金等の導電性を有する金属膜を蒸着、スパッタ等の手段により薄膜形成した後、フォトリソグラフィ技術によりパターン形成して作られる。前記IDTと反射器の電極指群は、利用する弾性表面波(レーリー波及びSH波等)の位相進行方向(長手方向+X)に対して直交して、平行かつ周期的に多数配置される。
【0020】
(実施例2)
次に図2は、本発明のSAW共振子に関する他の一実施例について図1のIDT部位102に限定して図示した電極パターン図である。反射器等の構成は幅方向Yの形状を図2と同一として図1のSAW共振子の構成をとる。図中の各部位の名称は、201と202は給電導体、203と204はIDTの電極指等である。205は弾性表面波の位相伝播方向であるX軸、206は前記X軸に直交して203,204等に平行に位置するY軸である。203,204等の電極指群は幅方向Yに関して3つの領域B21、A22=WCc,B23=B21において、異なる線幅Lをとっている。領域A22においてL=Lc,領域B21,B23においてL=Lsであり、Lc<Lsの関係をとっている例である。
【0021】
(実施例3)
また次に図3は、本発明のSAW共振子に関するさらに他の一実施例について図1のIDT部位102に限定して図示した電極パターン図である。反射器等の構成は幅方向Yの形状を図1と同一として、図1のSAW共振子の構成をとる。図3を見ればわかる通り、nを整数としてn個の線幅 Ln(n=5)を図示したものである。図中の各部位の名称は、301
と302は給電導体、303と304はIDTの電極指等である。305は弾性表面波の位相伝播方向であるX軸、306は前記X軸に直交して303,304等に平行に位置するY軸、307は電極指の配列周期長Ptである。303,304等の電極指群は幅方向Yに関して5つの領域 C1,C2,C3,C4,C5において、各々異なる線幅Li(i=1〜5)をとっている。ただし、C1とC5,C2とC4は同一の線幅を有する。また図3の例は、幅方向Yの中央線幅が広く両側が細い例であるが、逆に中央部位が細く両側が広い場合もあることは容易に考えられる。
【0022】
(実施例4)
また次に図4は、本発明のSAW共振子に関するさらに他の一実施例について図1のIDT部位102の1対の電極指に限定して図示した電極パターン図である。反射器等の構成は幅方向Yの形状を図2と同一として図1のSAW共振子の構成をとる。図4を見ればわかる通り、連続的にかわる線幅 L(Y)の場合を図示したものである。図中の各部位の名称は、401と402は給電導体、403と404はIDTの電極指等である。405は弾性表面波の位相伝播方向であるX軸、406は前記X軸に直交して403,404等の中心軸(408,409)に平行に位置するY軸である。403,404等の電極指群は幅方向Yに関して、中心軸Xに関して対称関数からなる線幅L(Y)をもつ。407は電極指の中心軸(408,409)間の長さを示し、電極指の周期長Ptを表す。また図4の例は、幅方向Yの中央線幅が広く両側が細い例であるが、逆に中央部位が細く両側が広い場合もあることは容易に考えられる。
【0023】
次に本発明の実施例である図1、図2の特性につき前述の理論計算結果である図5、図6、図7、図8を用いて、実測結果である図9、図10の関係を説明する。
【0024】
まず、図5から説明する。図5は従来の一様な線幅 L(Y)=cnst.をもつSAW共振子において実現する固有モードの変位V(Y)を図示したものである。上から順に501がS0モード、A0(502)モード、S1(503)モード、A1モード(504)、S2(505)モードである。前記固有モードの周波数は、従来の構成であれば前記のS0、A0…の順に増加する。つぎに図6は前記線幅L(Y)が特定の条件を取る場合について、規格化ポテンシャル関数N(Y)の形(611,612,613)と、横モードの変位V(Y)(601,612,613)と、IDTにおける電極指(612,622,623)を図示したものである。
【0025】
まず、601,611,612で表わされる場合は、線幅L(Y)が中央部において細く、両側において広い場合である。この場合の前記関数N(Y)は、前記L(Y)が小さければ自由表面であるN(Y)=0に近く、L(Y)が大きければN(Y)は大きくなる。601の変位V(Y)は、N(Y)の大きな領域により多くの振動エネルギが蓄積されるため端部において振幅が増大する形となる。つぎに中央に配置した602,612,622の条件では、電極指622の線幅L(Y)=一定であり、幅方向変位V(Y)(602)は一様に端部に向かって減少する。またつぎに、変位603,N(Y)が613,623の電極指の条件の場合には、線幅L(Y)は中央部において広く両端部において細い場合である。この条件下では、幅方向変位V(Y)は、前述の602の場合より一層中央部に集中していることがわかる。変位601の例が図2の実施例に相当し、変位603の例が図1の実施例に相当する。変位602の例は従来の構成条件である。
【0026】
つぎに図7は前述の図5の各横モードが、図6の611で示されるN(Y)の状態を取った場合に示す共振周波数変化である。図6のY軸は5λ分割の目盛りがとられているから、線幅L(Y)が細い領域WCcは、40λの電極指交差幅WCの1/3であり、広い部分は片側40λの1/3である。図7の横軸は前記線幅L(Y)が細い領域のポテンシャルN(Y)が0.6から1.0の範囲で変化した場合である。縦軸は周波数変化率Δf/fを10-6(ppm)単位で表示した。図中の700はS0モードでこれがSAW共振子の主共振の直列共振周波数frに相当する。701はA0モード、702はSAW共振子の反共振周波数faである。703はS1モード、704はA1モード、705はS2モードである。図7から分かるとおりN=0.85にある点PにおいてS0モードとA0モードは交差しており、0.6から0.85の範囲あるいは線幅の関係としてLC/LS=0.6から0.85でにおいては、A0モード周波数f(A0)はS0モード周波数f(S0)より小さくなることがわかる。
【0027】
つぎに図8について説明する。図8は前述の図5の各横モードが、図6の611で示されるN(Y)の状態を取った場合に示す共振周波数変化である。Y軸は5λ分割の目盛りがとられているから、線幅L(Y)が細い領域は、40λの電極指交差幅WCの1/3であり、広い部分は片側40λの1/3である。図8の横軸は前記線幅L(Y)が広い領域のポテンシャルN(Y)が1.0から1.2の範囲あるいは線幅の関係としてLC/LS=1.0から1.2で変化した場合である。縦軸は周波数変化率Δf/fを10-6(ppm)単位で表示した。図中の800はS0モードでこれがSAW共振子の主共振の直列共振周波数frに相当する。801はA0モード、804はSAW共振子の反共振周波数faである。802はS1モード、803はA1モードである。図8から分かるとおり1.04付近にある点Qにおいて804の反共振周波数faとA0モードの周波数f(A0)は交差していることがわかる。
【0028】
つぎに、図7のP点と図8のQ点で製作したSAW共振子の共振特性を図9と図10に示す。図9は図8のQ点に対応するものであり、図10は図7のP点に対応している。
【0029】
まず図9から説明すると、900がS0モードの共振周波数fr(903)であり、901はA0モードの共振である。また、902はS1モードの共振である。904はS0モードの反共振周波数faである。901のA0モードは、反共振周波数faより十分にはなれた約1300ppm上に存在していることがわかる。従って、903のfrと904のfa間には、スプリアスとなる共振が存在しないため、良好な変動のない発振周波数が維持できる。ちなみに本発明のSAW共振子を用いて発振回路を構成した場合の発振周波数について図11を用いて解説する。図11中の1100の破線で囲まれた中はSAW共振子の等価回路であり、等価直列インダクタンスL1、等価直列キャパシタンスC1、等価直列抵抗R1、並列容量C0からなっている。1101で表される破線内は発振回路の増幅側の部分であって、CLは負荷容量、−Rは増幅回路がつくる負性抵抗である。この場合において得られる発振周波数foscは、次式となる。
【0030】
【数7】
式(7)に従えば、発振周波数foscは、CL=∞点であるfrと、 CL=0点であるfaの間においてのみ使用できることになる。
【0031】
つぎに図10は、1000がS0モードの共振周波数fr(1003)であり、1001はA0モードの共振である。また、1002はS1モードの共振である。1004はS0モードの反共振周波数faである。1001のA0モードは、共振振周波数frより下側に約200ppmはなれたて存在していることがわかる。従って、1003のfrと1004のfa間には、スプリアスとなる共振が存在しないため、良好な変動のない発振周波数が維持できる。この関係は、図7のP点以下の規格化ポテンシャル値N(0.85以下0.6の範囲)であれば成り立つことが容易にわかる。
【0032】
以上、本発明のSAW共振子の構成および特性につき説明した。構成例は水晶STカットで示したが、他のカットである16度回転Y板であるLSTカットとか、9.6度回転Y板であるKカットでもよく、さらにまた水晶以外の圧電気材料であっても適合できることをつけくわえる。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、例えば水晶基板を用いてSAW共振子の小型化をはかるに際して、前記SAW共振子のIDTを構成する電極指の線幅L(Y)に幅方向Yに対して変化する形状とすることにより、幅方向に対する振動エネルギの閉じ込め状態を変化させることにより所望の特性を得たものである。例えば、中央部の線幅LCを両側の線幅LSの関係をLC>LSとすれば、従来品よりエネルギ閉じ込め状態が良好なSAW共振子が得られ、逆に LC<LSとすれば、A0モードスプリアスを直列共振周波数より低下させることができ、スプリアスによって周波数変動が起きないSAW発振器が構成できる。その結果として、小型で良好な水晶SAW発振器を高速通信装置市場に提供でき、今後多大の利点が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のSAW共振子の一実施例が有する導体パターンを示す平面図。
【図2】 本発明の他のSAW共振子の一実施例が示すIDTの導体パターン図。
【図3】 本発明の他のSAW共振子のIDTの一実施例が示す導体パターン図。
【図4】 本発明のさらに他のSAW共振子のIDTの一実施例が示す導体パターン図。
【図5】 本発明のSAW共振子が有する固有振動モード図。
【図6】 本発明の図1と図2が示す固有振動モード図。
【図7】 本発明の図2が示す特性図。
【図8】 本発明の図1が示す特性図。
【図9】 本発明の図1が示す共振特性図。
【図10】 本発明の図2が示す共振特性図。
【図11】 SAW発振回路の等価回路図。
【図12】 従来のSAW共振子が示す幅方向振動変位図。
【符号の説明】
100 圧電体平板
101 反射器1
102 IDT
103 反射器2
104 導体ストリップ
105,106 電極指
Claims (7)
- 圧電体平板上に、少なくとも1個のすだれ状電極と、前記すだれ状電極が発生する弾性表面波をその両側において反射するための1対の反射器を前記弾性表面波の伝搬方向(縦方向X)に配置し、前記反射器とすだれ状電極は、前記圧電体平板上に金属の平行導体を周期的に配置して形成し、前記反射器と前記すだれ状電極間の最も近接した平行導体間の距離は、すだれ状電極の1周期長が有するラインLTとスペースSTのうちスペースSTからなり、前記すだれ状電極の平行導体の配列周期長PTを、前記反射器の配列周期長PRより小さい設定となし、前記すだれ状電極の全体が有するトータル反射係数Гを10>Γ>0.8とした周波数上昇エネルギー閉込型であるSAW共振子において、
前記弾性表面波の伝搬方向Xに直交する幅方向Yに関して、前記反射器とすだれ状電極を構成する平行導体のX方向幅寸法L(Y)が、幅方向Yの中央位置において細く(寸法LC)、かつ両側において広い寸法Lsをとることを特徴とするSAW共振子。 - 前記寸法L(Y)が幅方向Yの中央位置に対して対称的に変化する階段状関数にて与えられ、前記反射器及びすだれ状電極がそれぞれnを整数としてn個(n>2)の線幅を持つ平行導体から構成されていることを特徴とする請求項1記載のSAW共振子。
- 前記寸法L(Y)がLc<Lsの関係を持ち、3個の線幅を持つ平行導体から構成されていることを特徴とする請求項2記載のSAW共振子。
- 前記寸法L(Y)がLc<Lsの関係式に従っており、SAW共振子の横モードである基本波対称モードS0に対して、基本波斜対称モードA0のもつ共振周波数が小さいこと(f(S0)>f(A0))を特徴とする請求項3記載のSAW共振子。
- 前記寸法LCとLSの関係式がLC/LS=0.6から0.85の範囲であり、すだれ状電極の電極指交差幅の全長WCに対するLCを有する部分の長さWCcの比がWCc/WC=1/3であることを特徴とする請求項4記載のSAW共振子。
- 前記圧電体平板が水晶であって、30〜45度回転Y板のSTカットであり、かつ前記すだれ状電極の電極指交差幅WCが、弾性表面波の波長をλとして、10λから40λの範囲としたことを特徴とする請求項1記載のSAW共振子。
- 前記1個のSAW共振子が有するすだれ状電極の対数Mと片側反射器の導体本数Nの和M+Nが150から200の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のSAW共振子。
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