JP3855899B2 - 粉末冶金用鉄基混合粉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末冶金用鉄基混合粉に係り、とくにSによって焼結炉の発熱体、搬送ベルト等が汚染されるのを防止でき、かつ焼結体の切削性改善を可能とする粉末冶金用鉄基混合粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉末冶金技術の進歩により、高寸法精度の複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することが可能となっている。鉄系粉末冶金製品は、鉄基粉末に、銅粉、黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤とを混合した鉄基混合粉を金型に充填したのち、加圧成形し、ついで焼結処理を施され焼結体とされたのち、必要に応じ切削加工されて、製品とされる。
【0003】
このようにして製造された焼結体は、空孔の含有比率が高く、溶解法による金属材料にくらべ、切削抵抗が高い。そのため、従来から、焼結体の切削性を向上する目的で、Pb、Se、Te、MnS 、S等、種々の切削性改善用粉末が鉄基混合粉に添加、あるいは鉄粉に合金化して添加することが行われてきた。しかしながら、Pbは融点が330 ℃と低いため焼結過程で溶融し、しかも鉄中に固溶せず基地中に均一に分散させることが難しいという問題がある。また、Se、Teは焼結体を脆化させるため、焼結体の機械的特性の劣化が著しいという問題があった。これらの粉末以外にも、切削性改善用粉末として、種々の粉末を用いることが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、鉄または鉄基合金に、BaSO4 、BaS を単独、あるいは複合して添加した粉末冶金法で製造された快削性金属材料が開示されている。この技術ではBaSO4 、BaS を単独、あるいは複合して添加することにより切削などの機械加工性が向上するとしている。
また、特許文献2には、鉄系原料粉に硫化カルシウムCaS あるいは硫酸カルシウムCaSO4 を添加した混合粉を圧縮成形したのち、焼結する快削焼結鋼の製造方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、切削性改善用粉末として、SあるいはMnS,BaS,CaS 等のSを含む化合物を混合すると、焼結時に発生するH2S が焼結炉の耐火物、搬送用のメッシュベルト、発熱体等を汚染し、それら部品の寿命を短くするという問題があった。さらに加えて、焼結体の外観不良という問題もあり、Sを含む化合物粉を切削性改善用粉末として鉄基混合粉に混合することは敬遠されている。また、BaS 、CaS 等が焼結体中に残留すると、BaS 、CaS の吸湿性に起因して焼結体が錆びやすいという問題もある。
【0006】
このような問題に対し、例えば、特許文献3には、Ca:0.001 〜0.10%、O:0.05〜1.0 %含有する被削性の良好な焼結体を与える焼結用鋼粉末が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載された焼結用粉末で製造された焼結体では、Sを含まないため焼結炉の汚染という問題はないが、カルシウム酸化物が吸湿性を有するため、粉体の流動性が劣化し、成形が不安定になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献4には、鉄粉を主体とし、アノールサイト相および/またはゲーレナイト相を有する平均粒径50μm 以下のCaO-Al2O3-SiO2系複合酸化物の粉末/ 0.02〜0.3 重量%含有する粉末冶金用鉄系混合粉末が開示されている。しかしながら、不純物が少なく、かつ粒度を制限したCaO-Al2O3-SiO2系複合酸化物の粉末を使用しないと、粉体特性、焼結体特性が低下するという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特公昭46-39654号公報
【特許文献2】
特開昭52-16684号公報
【特許文献3】
特開昭57-198201 号公報
【特許文献4】
特開平9-279204号公報
【0009】
【発明を解決するための課題】
さらに最近では、焼結部品そのものの原価低減要求が強く、とくに原価に大きな割合を占める切削加工費も更なる低減が求められている。このようなことから、上記した従来技術よりさらに切削性が改善され、同時に焼結体の機械的特性の劣化を生じることのない焼結体を形成できる鉄基混合粉が熱望されている。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなくさらに切削性を向上できる鉄基混合粉を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる切削性改善用粉末について、鋭意研究した。その結果、本発明者らは、すでに、焼結体の機械的特性の劣化を生じることなく切削性を向上できる鉄基混合粉として、特願2001-259470 号明細書に、切削性改善用粉末として、リン酸カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトをCa換算で合計0.02〜0.39質量%含有させた鉄基混合粉を提案した。また、特願2002-24391号明細書には、切削性改善用粉末として、結晶子サイズが200 Å超えのヒドロキシアパタイト粉末をCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有させた鉄基混合粉を提案した。
【0012】
更なる切削性向上のために、本発明者らは、鉄基混合粉に添加する切削性改善用粉末として、リン酸カルシウム化合物に着目し、リン酸カルシウム化合物の種類と切削性改善の関係について鋭意検討した。その結果、リン酸カルシウム化合物のうち、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7 )が、焼結体の切削性をさらに向上させることを見出した。なかでも、結晶が板状に成長しやすく劈開性を示す可能性があるβ−ピロリン酸カルシウム(β−Ca2P2O7 )の含有量が多いほど切削性が顕著に向上することを見出した。
【0013】
まず、本発明者らが行った基礎的実験結果を説明する。
鉄基粉末として還元鉄粉に、合金用粉末として平均粒径45μm 以下を70%程度を含む水アトマイズ銅粉と、平均粒径5μm の黒鉛粉末とを、切削性改善用粉末として、β−ピロリン酸カルシウムを5〜80質量%含有する平均粒径20μm のピロリン酸カルシウム粉末(残部はα−ピロリン酸カルシウム)を、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を、混合機に装入し均一となるように混合し、鉄基混合粉とした。なお、合金用粉末としての水アトマイズ銅粉は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し1.5 質量%配合し、また合金用粉末としての黒鉛粉末は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対し0.6 質量%配合した。また、切削性改善用粉末としてのピロリン酸カルシウム粉末は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量に対しCa換算で0〜0.6 質量%配合した。また、潤滑剤は、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し、0.75重量部配合した。
【0014】
得られたこれら鉄基混合粉を金型に挿入し、圧粉密度が6.8 Mg/m3 になるように圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧環強さ試験用リング状試験片、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片とした。ついで、これら試験片をRXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し、1130℃×20min の条件で焼結した。
【0015】
得られた焼結体試験片について、JIS Z 2507の規定に準拠した圧環強さ試験、および回転数1000rpm 、送り:0.012mm/rev の条件でドリル穿孔試験を、それぞれ実施し、圧環強さおよび穿孔数を求めた。なお、穿孔数は、ドリル(ハイス製1.2mm φ)が折損するまでに開いた孔の数(個)とした。これらの結果を、図1、図2に示す。また、ピロリン酸カルシウムを0.10質量%(Ca換算)含有する鉄基混合粉について、穿孔数に及ぼすピロリン酸カルシウム粉末中のβ−ピロリン酸カルシウムの含有量の影響を図3に示す。
【0016】
なお、ピロリン酸カルシウム粉末中のβ−ピロリン酸カルシウムの含有量は、粉末X線回折により測定した、β−ピロリン酸カルシウムの(008)面とα−ピロリン酸カルシウムの(031)面との強度比(I(β−ピロリン酸カルシウム)/(I(α−ピロリン酸カルシウム)+I(β−ピロリン酸カルシウム))から算出した。なお、測定条件は、加速電圧:48KV、加速電流:200mA として発生したCoK α線を使用し、scan speedを0.5 °/min とした。
【0017】
図1から、鉄基混合粉中のピロリン酸カルシウム粉末の含有量の増加に従い、穿孔数は増加し、ピロリン酸カルシウム粉末の含有量(Ca換算)が0.02質量%以上で飽和することがわかる。また図2から、鉄基混合粉中のピロリン酸カルシウム粉末の含有量(Ca換算)が0.4 質量%を超えると、急激に圧環強さが低下する。これらのことから、鉄基混合粉中のピロリン酸カルシウム粉末の含有量を0.02〜0.4 質量%の範囲とすることにより、優れた切削性と高い圧環強さを併せ有することができることになるという知見を得た。
【0018】
また、図3から、ピロリン酸カルシウム粉末中のβ−ピロリン酸カルシウム量が増加するに従い、穿孔数は増加することがわかる。とくに、切削性改善用粉末として、粉末中にβ−ピロリン酸カルシウムを15質量%以上含有するピロリン酸カルシウム粉末を適用した場合に、焼結体の切削性向上が顕著となることを知見した。
【0019】
また、本発明者らは、ピロリン酸カルシウムに加えて、ヒドロキシアパタイト、フッ化カルシウムを混合粉中に添加しても、焼結体の機械的特性を劣化させることなく、切削性を向上させることができるという知見を得た。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
【0020】
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉であって、前記切削性改善用粉末をピロリン酸カルシウムとし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末治金用鉄基混合粉。
(2)(1)において、前記ピロリン酸カルシウムが、β−ピロリン酸カルシウムをピロリン酸カルシウム全量に対し15質量%以上含まれることを特徴とする粉末治金用鉄基混合粉。
(3)(1)または(2)において、前記切削性改善用粉末が、ピロリン酸カルシウムに加えてさらに、フッ化カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトを含み、該切削性改善用粉末を鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記鉄基粉末の一部または全部が、表面に合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により固着してなることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記合金用粉末の含有量が、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対し5質量%以下であることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記潤滑剤の含有量が、前記鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100 重量部に対し0.2 〜1.5 重量部であることを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の鉄基混合粉は、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉であり、切削性改善用粉末をピロリン酸カルシウム粉末とし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合金量に対しCa換算で0.02〜0.40質量%含有する。
【0022】
本発明の鉄基混合粉は、切削性改善用粉末としてピロリン酸カルシウム粉末を用いることに特徴がある。切削性改善用粉末としてピロリン酸カルシウム粉末を用いることにより、機械的特性の劣化が少なくて切削性の顕著な改善が得られる。
鉄基混合粉中のピロリン酸カルシウムの含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合金量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%とする。ピロリン酸カルシウムの含有量がCa換算で合計0.02質量%未満では、切削性の向上が顕著に認められない。一方、Ca換算で合計0.40質量%を超えて含有すると、寸法変化が大きくなり、圧環強さの低下等機械的特性が低下する。このため、鉄基混合粉中のピロリン酸カルシウムの含有量はCa換算で合計0.02〜0.40質量%とした。
【0023】
また、本発明では、切削性改善用粉末の最大粒径は、63μm 以下とすることが好ましい。粗大粒子は焼結体の脱落・欠けの原因となり、外観不良率が高くなるため、粒子の最大粒径はできるだけ低減することが好ましいが、経済性を考慮して63μm 以下とした。なお、本発明では、粒径はレーザーを用いたマイクロトラック法で測定した値を用いるものとする。
【0024】
なお、本発明では、切削性改善用粉末としてのピロリン酸カルシウム粉末には、α−ピロリン酸カルシウムのみでもよいが、β−ピロリン酸カルシウムを15質量%以上含むことが好ましい。この場合、ピロリン酸カルシウム粉末のβ−ピロリン酸カルシウム以外の残部は実質的にα−ピロリン酸カルシウムである。
ピロリン酸カルシウム粉末中のβ−ピロリン酸カルシウム含有量が15重量%未満では、切削性の向上代が小さい。β−ピロリン酸カルシウムが劈開性を示すため、β−ピロリン酸カルシウムの含有によりα−ピロリン酸カルシウムのみの場合に比べて切削性の改善度合いが大きくなると考えられる。β−ピロリン酸カルシウム含有量の上限はピロリン酸カルシウム全量に対し100 質量%であるが、熱処理温度の観点から、β−ピロリン酸カルシウム100 %とすることは原料費が高騰し経済的に問題となるため、90%程度以下とすることが好ましい。
【0025】
なお、ピロリン酸カルシウム粉末は、上記したα−ピロリン酸カルシウム、β−ピロリン酸カルシウム以外の残部は不可避的不純物である。不可避的不純物として、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2 )が5質量%以下混在していても何ら問題はない。
本発明では、切削性改善用粉末として、上記したピロリン酸カルシウムに加えて、さらにヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2 )および/またはフッ化カルシウムCaF2を含有してもよい。この場合、切削性改善用粉の含有量は、すなわち、ピロリン酸カルシウム、およびヒドロキシアパタイトおよび/またはフッ化カルシウムの合計含有量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%とすることが好ましい。フッ化カルシウムを、ヒドロキシアパタイトと複合することにより、フッ化カルシウム単独で含有する時よりも加工性が向上する。また、ピロリン酸カルシウムと、ヒドロキシアパタイトおよび/またはフッ化カルシウムを複合して使用しても、ピロリン酸カルシウム単独使用と同様、またはそれ以上の効果を有する。
【0026】
なお、結晶子サイズが200 Å超え、好ましくは結晶子サイズが600 Åを超えるヒドロキシアパタイト粉末を用いることが切削性向上の観点から好ましい。ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズは市販の粉末に過熱処理を施して調整することができる。大きな結晶サイズとするには、加熱処理の温度を高くし、小さな結晶子サイズとする場合には、 加熱処理の加熱温度を低くする。
【0027】
なお、本発明でいうヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズの測定は、X線回折を利用して行なう。粉末にX線を照射して、ヒドロキシアパタイト(002 )面の回折ピークを求め半価巾Bを測定し、次(1)式
B=0.9 λ/(tcos θ) ………(1)
ここで、B:半価巾、λ:入射X線の波長(1.5417Å)、t:結晶子サイズ(Å)、2θ:25.8(deg.)
を用いて算出した値tを結晶子サイズ(Å)とする。
【0028】
また、鉄基混合粉に含有される合金用粉末としては、黒鉛粉、銅粉等を、所望の製品特性に要求される特性に応じ選定し含有する。
本発明では、鉄基粉末としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉等の純鉄粉、あるいは純鉄粉に代えて合金元素を予め合金した鋼粉(予合金鋼粉)、あるいは合金元素が部分合金化された鋼粉(部分合金化鋼粉)がいずれも好適に用いることができる。また、これらを混合して使用してもよいことはいうまでもない。
【0029】
鉄基混合粉に含有される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、あるいはワックスが好ましい。
なお、潤滑剤の配合量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量100 重量部に対し0.2 〜1.5 重量部とするのが好ましい。潤滑剤の配合量が0.2 重量部未満では、金型との摩擦が著しく増加し抜出力が増大するため金型寿命が低下する。一方、1.5 重量部を超えると、成形体密度の低下が著しくなり、焼結体密度が低下する。
【0030】
本発明の鉄基混合粉は、上記した鉄基粉末に、上記した切削性改善用粉末、合金用粉末、さらに潤滑剤を添加して、Vブレンダ、ダブルコーンブレンダ等の通常公知の混合機を用いる方法で、一度に混合し、あるいは2回以上に分けて混合し鉄基混合粉とするか、あるいは合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により鉄基粉末の表面に固着する偏析防止処理を施した鉄基混合粉としてもよい。このような鉄基粉末を用いることにより、より偏析が少なく、流動性に優れた鉄基混合粉とすることができる。
【0031】
偏析防止処理としては、例えば、特許第3004800 号公報に示されるように、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末を、結合材の作用を有する特定の有機化合物とともに混合し、ついで少なくとも該特定の有機化合物のうちの最低融点+10℃以上に加熱して、該有機化合物のうちの1種を溶融させたのち冷却固化して、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を鉄基粉末の表面に固着させる方法が好ましい。特定の有機化合物としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ワックスが好ましい。高級脂肪酸もしくは高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドの溶融混合物、等が例示できる。
【0032】
【実施例】
(実施例1)
鉄基粉末としてミルケース還元鉄粉(商品名:川崎製鉄製KIP 255M)を用い該鉄基粉末100 kgに、合金用粉末として黒鉛粉末0.9 kg(平均粒径:5μm )、水アトマイズ銅粉(粒径45μm 以下を70質量%以上含む)1.5 kgと、さらに切削性改善用粉末として、表1に示す種類、配合量(質量%)の粉末と、さらに潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm )を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し表1に示す量(重量部)と、をVブレンダに装入し、均一混合して、鉄基混合粉とした。なお、切削性改善用粒子としては、表1に示す量のβ−ピロリン酸カルシウムを含むβ−ピロリン酸カルシウム、フッ化カルシウム粉末、表1に示す結晶子サイズのヒドロキシアパタイト粉末の単独、あるいはそれらの複合とした。なお、ヒドロキシアパタイト粉末の結晶子サイズは、粉末にX線を照射して得られたヒドロキシアパタイト(002 )面の回折ピークの半価巾Bから(1)式を用いて算出した。測定条件は、加速電圧:48KV、加速電流:200mA として発生したCoK α線を使用して、発散スリット:1.0 °、散乱スリット:1.0 °、受光スリット:0.15mmとし、scan speedを0.5 °/min とした。
【0033】
これら鉄基混合粉を金型に挿入し、成形体の密度が6.8Mg/m3になるように面圧を624 〜655MPaの範囲内で調整して圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧環試験片用成形体および外径寸法変化率測定用のリング状試験片用成形体、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片用成形体、10×10×55mmの直方体の成形体とした。なお、密度は、直方体の成形体を用いて、アルキメデス法により測定した。アルキメデス法とは、被測定物である成形体を水中に浸漬して体積を測定することにより密度を測定する方法である。
【0034】
ついで、これら試験片成形体を、RXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し1130℃×20min の条件で焼結し、焼結体とした。
これら焼結体(試験片)について、圧環強さ試験、外径寸法変化率測定試験、およびドリル穿孔試験を、それぞれ実施し、圧環強さ、外径寸法変化率および穿孔数(個)を求めた。
【0035】
なお、圧環強さは、JIS Z 2507の規定に準拠して求めた。
外径寸法変化率は、リング状試験片を用いて、金型の外径を基準として焼結後のリング状試験片外径を測定し、金型外径に対する変化率(=((焼結後のリング状試験片の平均外径−金型外径)/(金型外径))×100 %)を求め、外径寸法変化率とした。
【0036】
また、穿孔数(個)は、円盤状試験片を用いて、回転数10000rpm、送り:0.012 mm/rev の条件でドリル穿孔を行い、ドリル(ハイス製1.2 mmφ)が折損するまでに開いた穴の数とした。
また、焼結体について、目視による外観検査を実施した。
得られた結果を、表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
本発明例はいずれも、焼結体の圧環強さも高く、また外径寸法変化率も小さいうえ、穿孔数も大きく切削性に優れた焼結体を形成でき、粉末冶金用鉄基混合粉として優れた特性を有している。なお、切削性改善用粒子の粒径が好適範囲を外れた本発明例(混合粉No.14)では一部欠けが生じ外観性状が低下していた。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれも圧環強さが低いか、外径寸法率が大きいか、あるいは切削性が低下していた。
(実施例2)
鉄基粉末として水アトマイズ鉄粉(商品名:川崎製鉄製KIP 301A)を用い、該鉄基粉末100 kgに、合金用粉末として天然黒鉛粉末(平均粒径5μm )2kg、あるいはさらに電解銅粉(平均粒径35μm )0.8kg を、さらに切削性改善用粉末として、表2に示す種類、配合量(質量%)の粉末を、さらに結合剤としてステアリン酸亜鉛(融点:120 ℃)を、鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し0.4 重量部添加して、一次混合したのち、120 ℃に加熱し結合材を加熱溶融しながら混合し冷却して、合金用粉末および/または切削性改善用粉末を鉄基粉末表面に固着させた偏析防止処理を施した粉末とした。ついで、このような偏析防止処理を施した粉末に、さらに潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛(平均粒径:20μm )を鉄基粉末と合金用粉末と切削性改善用粉末との合計量100 重量部に対し表2に示す量(重量部)を添加して均一混合して、鉄基混合物とした。
【0040】
これら鉄基混合粉を、実施例1と同様に、金型に挿入し、面圧:590MPaで圧縮成形し、外径35mm×内径14mm×高さ10mmの圧環強さ試験用成形体および外径寸法変化率測定用のリング状試験片成形体、および外径60mm×高さ10mmのドリル穿孔試験用円盤状試験片成形体、および10×10×55mmの直方体の成形体とした。なお、直方体の成形体を用い、アルキメデス法により密度を測定した。
【0041】
ついで、これら試験片成形体をRXガス雰囲気中でメッシュベルト炉を使用し1130℃×15min で焼結し、焼結体とした。
これら焼結体(試験片)について、実施例1と同様に、圧環強さ試験、外径寸法変化率測定試験、およびドリル穿孔試験を、それぞれ実施し、圧環強さ、外径寸法変化率および穿孔数(個)を求めた。
【0042】
得られた結果を、表2に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
本発明例は、いずれも、焼結体の圧環強さも高く、また外径寸法変化率も小さいうえ、穿孔数も大きく、切削性に優れた焼結体を形成でき、粉末冶金用鉄基混合粉として優れた特性を有している。
これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、圧環強さが低く、切削性が低下していた。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、焼結体の機械的特性劣化を生じることなく切削性を向上できる。さらに、本発明によれば、切削性改善用粉末をSを含有しない粉末とすることができ、Sによる焼結時の炉内汚染や焼結体への悪影響もなく、焼結製品の製造ができ、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドリル穿孔試験における穿孔数とピロリン酸カルシウム含有量との関係を示すグラフである。
【図2】圧環強さ試験における圧環強さとピロリン酸カルシウム含有量との関係を示すグラフである。
【図3】ドリル穿孔試験における穿孔数とピロリン酸カルシウム粉中のβ−ピロリン酸カルシウム含有量との関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉であって、前記切削性改善用粉末をピロリン酸カルシウムとし、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする粉末冶金用鉄基混合粉。
- 前記ピロリン酸カルシウムが、β−ピロリン酸カルシウムをピロリン酸カルシウム全量に対し15質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
- 前記切削性改善用粉末が、ピロリン酸カルシウムに加えてさらに、フッ化カルシウムおよび/またはヒドロキシアパタイトを含み、該切削性改善用粉末を鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対しCa換算で合計0.02〜0.40質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
- 前記鉄基粉末の一部または全部が、表面に合金用粉末および/または切削性改善用粉末を結合材により固着してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粉末冶金用鉄基混合粉。
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