JP3843955B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リサイクルに適した無方向性電磁鋼板に関する。特に、本発明は比較的低温域での粒成長性が要求される磁性焼鈍に供される用途に好適な無方向性電磁鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では省エネルギー化が重要な課題となり、従来以上に高効率な電気機器が求められている。このため、従来以上に高い磁気特性を有した電磁鋼板が必要とされている。さらに、最近では、環境への配慮から、電気機器における鉄心材料のリサイクル化への対応も急務となっている。
【0003】
電気機器の高効率化や鉄心材料の小型化には、鉄心の素材となる電磁鋼板の磁気特性を改善することが有効である。従来の無方向性電磁鋼板の分野では、磁気特性のうち、特に鉄損を低減する手段として、比抵抗を増大させて渦電流損を低下させるために、SiやAl,Mn等の含有量を高める手法が一般に用いられてきた。中でもAlは比抵抗を増加させる効果が大きい割に硬さを上昇させにくいので、鋼板の打ち抜き性の改善(金型摩耗の抑制)に有効である。
【0004】
しかしながら、Al添加鋼はリサイクル性に問題を残していた。すなわち、鋼中にある程度以上のAlが含まれていると、鉄心材料をリサイクルしたり、需要家でスクラップ処理する場合に電気炉の電極を傷めるという問題があった。さらに、鉄心のリサイクル材を用いてモータのシャフトなどを鋳造する場合、0.1質量%以上のAlが含まれていると、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行して粘性が増大し、健全な鋳込みが阻害される問題もあった。
【0005】
このように、リサイクル性を考慮した場合、低Al化が有利である。したがって、低Al化としながらも、高い磁気特性を有した電磁鋼板及びその製造方法が望まれており、現在までに多数提案されてきた。
【0006】
例えば特許文献1では、Si:0.1〜1.0%、Mn≦1.5%、sol.Al:0.001〜0.005%とし、介在物中MnO濃度15%以下である鉄損の低い電磁鋼板が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、Si:0.1〜1.0%、Mn≦1.5%、sol.Al:0.0005〜0.001%で、介在物中MnO濃度15%以下、介在物中SiO2濃度75%以上である鉄損の低い電磁鋼板が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献3では、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.25〜0.5%、sol.Al≦0.004%、介在物中MnOとSiO2の重量比MnO/SiO2≦0.3である電磁鋼板が提案され、スケール性欠陥の少ない表面性状に優れた電磁鋼板が得られるとしている。
【0009】
これらの技術は鋼材成分に加え、介在物組成を適正に制御することで磁気特性を向上させるもので、介在物中のSiO2濃度、MnO濃度の適正範囲が示されている。
【0010】
しかしながら、さらに磁気特性を向上させるために、Si含有量を増加させて(例えば0.7質量%以上)比抵抗を高めようとすると、上記の酸化物系介在物のみならず、さまざまな窒化物が析出するため磁気特性が劣化してしまうといった問題点があった。そのため、これまでの技術ではこの様な要求に十分対応することができなかったのが実情であった。
【0011】
【特許文献1】
特開昭63−195217号公報
【特許文献2】
特開平1−152239号公報
【特許文献3】
特開平10−147849号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好なリサイクル性を有し、かつ磁気特性を向上させた無方向性電磁鋼板を提案するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以下、鋼中の各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0014】
一般に、無方向性電磁鋼板において単にリサイクル性を改善するだけならば、Al含有量を0.1%未満に低減する低Al化を行えばよい。しかしながら、Al含有量が0.005〜0.1%では微細なAlNが析出して結晶粒成長を抑制するため磁気特性が著しく劣化するといった問題があった。この点から、Al含有量は0.005%未満とすることが好ましく、これによりAlN析出は比較的抑制される。
【0015】
一方、比抵抗を増大させて鉄損を減少させる観点からは、Si含有量を増加させることが好ましいが、Si含有量が0.7%以上となると種々の窒化物が析出するためやはり磁気特性が劣化する。その窒化物には、SiMn系窒化物、V、Crを含有する炭窒化物及びAl窒化物などが観察される。
【0016】
そこで、発明者らはこの点を改善すべく鋭意研究を行った結果、C、N、S含有量が低く、窒化物生成元素であるV、Cr、Al、Ti含有量も十分に低減し、かつMn含有量とCu含有量を適正範囲に複合添加し、さらに必要に応じて介在物として存在する微細な硫化物の組成を制御した場合は、Siを0.7〜1.5%含有する低Al材において良好な鉄損特性が得られることの知見を得、この知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0017】
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.004%以下、Si:0.7〜1.5%、Mn:0.1〜0.3%、sol.Al:0.0005%未満、P:0.2%以下、S:0.005%以下、N:0.003%、Cr:0.1%以下、V:0.005%以下、Ti:0.001%以下、Cu:0.016〜0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする無方向性電磁鋼板を提供する。
【0018】
本発明の電磁鋼板は、このようにAlの含有量が極めて低いことから、リサイクル性にすぐれており、かつSi含有量を上記範囲とした場合でも、MnおよびCuの含有量を所定の範囲とし、かつ窒化物生成元素であるV、Cr、Al、Ti含有量も十分に低減したものであるので、良好な磁気特性を有するものである。
【0019】
上記本発明においては、鋼中に介在物として存在する長径0.05〜0.1μmの硫化物中のCuモル分率(=%Cu/(%Cu+%Mn+%S)×100)が30%以上であることことが好ましい。このような組成の硫化物を介在物として有する電磁鋼板は、より良好な磁気特性を示すものであるからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
発明者らは、まず磁気特性に及ぼす鋼組成の影響を調べるため以下の様な実験を行った。
【0021】
質量%でC:0.002%、Si:0.8%、Mn:0.08〜0.5%、P:0.05%、S:0.0025〜0.0032%、Cr:0.05%、V:0.002%、Ti:0.0003%以下、sol.Al<0.0003%、N:0.002%を含有し、Cuの合計量を0.003〜0.13%の範囲内で変化させた鋼を実験室で溶解してインゴットとし、鍛造してスラブとした。
【0022】
このスラブより厚さ15mmの鋼片を切り出し、1100℃で1時間の加熱処理をした後、3パスの圧延を施し、850℃で熱間仕上げ圧延を終了して500℃より−20℃/hで徐冷し厚さ3mmの熱延鋼板を得た。これを両面研削して厚さ2.3mmとし、さらに冷間圧延して厚さ0.5mmの冷延鋼板とした。この冷延鋼板を750℃に急速加熱して20秒間保持する焼鈍を施して無方向性電磁鋼板とした。この鋼板から、長手方向が圧延方向と板幅方向となるように3cm×l0cmの試験片を打ち抜き、750℃、2時間の磁性焼鈍を行った。このようにして得たサンプルの磁気特性として鉄損W15 / 50(1.5T、50Hzでの鉄損)を測定した。結果を図1に示す。なお、鉄損W15 / 50は、単板磁気試験装置(横河電機(株)製)を用いて測定した。また、鉄損W15 / 50は、圧延方向と板幅方向の平均値とした。
【0023】
図1に示す結果より、MnおよびCuを所定の含有量とすることにより、特有の複合添加効果が得られ、極めて良好な磁気特性を示す領域があることが分かった。
【0024】
次に、磁気特性に及ぼす介在物の影響を調べるため以下の実験を行った。前述の実験においてMn、Cu含有量が上述した領域にあり、磁性焼鈍後の鉄損が良好であった鋼を用いて、熱延条件及び仕上げ焼鈍条件を種々変化させた無方向性電磁鋼板を作成し、仕上げ焼鈍した鋼板に分散している介在物と磁性焼鈍後の鉄損の関係を調べた。なお、用いた鋼の鋼成分は、質量%で、C:0.002%、Si:0.82%、Mn:0.21%、P:0.050%、S:0.0028%、Cr:0.05%、V:0.002%、Ti:0.0003%、sol.Al:0.0002%、N:0.0022%、Cu:0.021%であった。
【0025】
鋼板に分散している介在物には主にMn−Cu系硫化物が観察された。その内、磁性焼鈍時の粒成長に悪影響を及ぼす微細な硫化物10個を、EDS(エネルギー分散型X線分光法、energy dispersive X-ray spectroscopy)で組成分析し、Cuモル分率(=%Cu/(%Cu+%Mn+%S)×100))の平均値を求めた。ここで対象としている微細な硫化物は、抽出レプリカをTEM(透過型電子顕微鏡)観察した時、長径が0.05〜0.1μmであるものとした。なお、長径が0.05μm未満の硫化物も存在したが、定量分析精度が十分得られないので分析対象から外した。
【0026】
分析で得られた介在物であるMn−Cu系硫化物中のCuモル濃度と磁性焼鈍後の鉄損との関係を図2に示す。図2に示すように、硫化物中のCuモル濃度が増加すると共に鉄損W15 / 50は低下し、Cuモル濃度が30%以上となると、鉄損W15 / 50として良好な値となることが判明した。これは、MnS単独硫化物よりもCu含有硫化物の方が結晶粒界との相互作用が小さく粒界ピン止め効果が小さくなるためと推察される。
【0027】
また、Cuモル分率が30%未満の領域では、Cuモル分率の増加に伴って急峻に鉄損W15 / 50は低下するが、Cuモル分率が30%以上の領域では、Cuモル分率の増加に伴う鉄損W15 / 50の低下率はそれほど大きなものとはならないことが分かった。
【0028】
このように、MnおよびCuを所定の含有量とすること、さらに好ましくは、鋼板に分散する介在物であるMn−Cu系硫化物中のCuモル分率を所定の値以上とすることが本発明の特徴であるが、その効果を有効に引き出し、また電磁鋼板として必要な他の特性を満足させるためには、以下のように成分を限定する必要がある。
【0029】
(鋼組成)
C:Cは炭化物として析出し、磁気特性を低下させるため、その含有量は低いほどよい。特に、C含有量が0.004%を超えて高くなると磁気時効が生じるため、0.004%以下とする。なお、磁気特性にとって好ましくない(111)結晶方位粒の成長を抑制するため、その含有量の下限値は0.0003%とするのが望ましい。
【0030】
Si:Siは鋼の比抵抗を高めるため、その含有量が高いほど鉄損は小さくなる。その効果を十分得るには、Si含有量を0.7%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が0.7%以上となるとN活量が増大し種々の窒化物を形成し、これにより磁気特性が劣化する。本発明ではこのような磁気特性劣化を防止するため、窒化物生成元素の含有量を十分低下させた上で、MnおよびCuを適正範囲に複合添加する点に特徴を有する。一方、Si含有量が1.5%を超えると鋼板の硬さが上昇し、その結果打ち抜き金型の摩耗が速くなり、モータ鉄心製造コストが増加する。従って、Si含有量は0.7〜1.5%とする。
【0031】
Mn:Mnも鋼の比抵抗を高める効果があるため、Mn含有量は高い方が良い。Mn含有量が0.1%未満となると、MnSが微細に分散し磁気特性が劣化する。一方、Mn含有量が0.3%を超えて高くなると、SiMn系窒化物が析出し磁気特性が劣化する。従って、Mn含有量は0.1〜0.3%とする。さらに、磁気特性を安定させて製造するには、Mn含有量は0.15〜0.25%が望ましい。
【0032】
sol.Al:sol.Al(酸可溶性Al)は脱酸に有効な元素であるが、0.7%以上のSi含有鋼においては窒化物を形成しやすいため、その含有量は低い程良い。また、磁気特性のばらつきの原因となるため、0.0005%未満とする。
【0033】
P:PはSi同様に鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効であるが、0.2%を超えて高くなると鋼板の硬さが上昇するので打ち抜き金型の摩耗が速くなりモータ鉄心製造コストが増加する。したがって、P含有量は0.2%以下とする。
【0034】
S:Sは0.005%を超えて高くなると、MnSを核にSiMn窒化物が析出しやすくなり磁気特性が著しく劣化する。従って、S含有量は0.005%以下とする。望ましくは、S含有量は0.004%以下、さらにMnSによる磁気特性劣化や特性バラツキを抑制するには、0.003%以下が好ましい。
【0035】
Cr:Crは不可避不純物である。0.1%を超えて含有するとCr系窒化物が析出し磁気特性が劣化する。従って、Cr含有量は0.1%以下とする。さらに、V、Nbとの複合析出物を抑制し磁気特性を改善するには、Cr含有量を0.05%以下にすることが好ましい。
【0036】
V:Vは不可避不純物である。0.005%を超えて含有するとV炭窒化物が析出し磁気特性が著しく劣化する。したがって、V含有量は0.005%以下とする。さらに、Cr、Nbとの複合析出物を抑制し磁気特性を改善するには、V含有量を0.003%以下にすることが好ましい。
【0037】
Ti:Tiは不可避不純物である。0.001%を超えて含有すると微細なTi炭窒化物が析出し磁気特性が著しく劣化する。従って、Ti含有量は0.001%以下とする。
【0038】
N:NはSi、Mn、V、Cr、Al等と窒化物を形成し、磁気焼鈍時の粒成長を妨げるため、0.003%以下とする。さらに好ましいN量は0.002%以下である。
【0039】
Cu:Cuは硫化物や窒化物の析出に影響を及ぼし、磁性焼鈍後の粒成長性と集合組織を改善することにより磁気特性を向上させる。その効果を得るには、Mn量を適正範囲に制御すると同時に0.016%以上添加することが必要である。
【0040】
このようなMnとCuの複合効果の原因については明らかではないが、次のように発明者らは推測している。すなわち、Mnの役割は前述した通りであるが、Cuを複合添加することにより、MnSが(Mn、Cu)Sに一部形態変化し硫化物の分散密度が低下する。さらに、MnS単独硫化物よりもCu含有硫化物の方が結晶粒界との相互作用が小さく粒界ピン止め効果が小さくなる。このような硫化物の制御により、磁性焼鈍時の粒成長性や集合組織が改善される。その結果、磁気特性が向上するのである。
【0041】
一方、0.05%を超えて含有させた場合、磁性焼鈍後の鉄損改善効果が飽和する。また0.05%超の多量Cu添加は熱延鋼板の表面疵を誘発し、製品の歩留まりが低下する。したがって、Cu含有量は0.016〜0.05%とする。なお、特開平9−263909号公報にはCu硫化物の制御により磁性焼鈍時の磁気特性が向上するとしている。しかし、この技術では鋳造凝固時の冷却速度を高めるために冷却スプレーの能力を強化したり、鋳片の厚みを薄くする方法などを採用しなければならず、通常の製法よりコストが高くなる問題がある。
【0042】
その他成分:窒化物生成傾向の強いZr、B、Nbはなるべく低減しておくことが好ましい。但し、それぞれの成分は不可避的に混入する量を超えなければ特に問題とはならない。ここで言う不可避的に混入する量とは、Zrが0.002%以下、Bが0.001%以下、Nbが0.003%以下である。
【0043】
(介在物)
鋼中に分散する介在物としての硫化物は、磁性焼鈍時の粒成長を抑制し、磁気特性を劣化させるので、その組成を制御する必要がある。具体的には、0.05〜0.1μmの微細な硫化物中に含まれるCuモル分率が30%以上の場合に、磁性焼鈍時の鉄損がより良好となる。
【0044】
このような硫化物中のCuモル分率の制御は以下のようにして行うことができる。
【0045】
Cuはオーステナイト相よりもフェライト相中での固溶度が小さいので、硫化物中のCu濃度増加はフェライト相域で進行すると考えられる。したがって、この硫化物組成を制御するには、スラブ加熱温度をオーステナイト相域の低温として粗大なMnSを析出させ、熱延仕上げ温度を高温フェライト相域とし、さらに冷間圧延後の仕上げ焼鈍温度を高温フェライト相域で行うことが有利である。
【0046】
具体的には、スラブ鋳造条件は通常の製造方法でよいが、スラブ加熱温度を1130℃以下とし、さらに熱延仕上げ温度を850℃以上のフェライト相域とし、さらに冷問圧延後の仕上げ焼鈍を750〜900℃とすることが有効である。ただし、スラブ加熱温度を1000℃未満とすると、スキッド部での温度低下によるスラブ温度の不均一が大きくなり、板厚精度が劣化するので、スラブ加熱温度の下限は1000℃が望ましい。熱延鋼板の焼鈍は実施してもしなくてもよい。実施する場合は、700〜900℃のフェライト相域で1h以上焼鈍し、その後の冷却速度は100℃/h以下とする箱焼鈍が有効である。なお、熱間圧延及び焼鈍は、上記条件に限定されるものではない。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0049】
(実施例1)
転炉で脱炭脱硫した溶鋼230tを取鍋内に出鋼し、取鍋をRH式真空脱ガス装置に移動した。RH式真空脱ガス装置で減圧脱炭を行い、鋼中C濃度を0.004%以下とした後に、Si、Mn、P、Cu、およびAlの成分を調整した。その添加原料には、Cr、Ti、V、Nb等の不純物含有量の少ないものを用いた。なお、溶鋼温度が低い場合は、酸素ガスを付与して昇温処理を行った。成分調整、温度調整後、RH処理を終了し、連続鋳造機にてスラブとした。
【0050】
スラブを加熱炉で1100℃まで加熱し、仕上げ温度850〜880℃,巻き取り温度500℃で熱間圧延し、厚さ2.3mmとした。ついで、熱延板焼鈍を行わずに脱スケール後に0.5mmまで冷間圧延し、780℃で仕上げ焼鈍した。仕上げ焼鈍後、鋼板表面に絶縁皮膜を塗布した。この鋼板から28cmエプスタイン試験片を採取し、磁性焼鈍(窒素雰囲気中、750℃で2時間保持)を施した。エプスタイン法(JIS−C−2550に規定の方法)により磁気特性を測定した。
【0051】
表1に鋼成分分析値及び磁性焼鈍後の鉄損を示す。本発明の実施例である鋼1から10は磁性焼鈍後の鉄損W15 / 50がいずれも3.90W/kg以下で良好である。それに対し、比較例の鋼11から22の鉄損はいずれも4.06〜5.38W/kgと劣る。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
鋼組成が本発明の範囲内にある鋼1スラブを用いて、熱間圧延や仕上げ焼鈍を種々の条件として厚さ0.5mmの無方向性電磁鋼板を製造した。具体的には、スラブ加熱温度を1100〜1250℃、熱延仕上げ温度を800〜880℃、熱延鋼板の厚さを2.3mm、そして冷間圧延後の仕上げ焼鈍温度を700〜900℃とした。その製造された鋼板に分散する硫化物を抽出レプリカによりTEM観察し、10個の微細硫化物(長径0.05〜0.1μm)の組成をEDS分析し、平均のCuモル分率を求めた。また、磁性焼鈍後の磁気特性をエプスタイン法により測定した。表2に製造条件、Cuモル分率、及び磁気特性を示す。図3に鉄損W15 / 50と製造条件、Cuモル分率の関係を示す。個々の製造条件と鉄損の間には明確な相関が認められないが、適正な製造条件の組み合わせで製造されたNo.1、8、9の鋼板はCuモル分率が30%以上となり、磁性焼鈍後の鉄損も3.70W/kg以下で良好である。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明の電磁鋼板は、このようにAlの含有量が極めて低いことから、リサイクル性にすぐれており、かつSiを0.7%以上含有させた場合でも、MnおよびCuの含有量を所定の範囲とし、かつ窒化物生成元素であるV、Cr、Al、Tiの含有量も十分に低減したものであるので、磁気特性に悪影響を与える窒化物を大幅に低減させることが可能となり、良好な磁気特性を有する電磁鋼板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中におけるCuおよびMnの含有量と鉄損W15 / 50との関係を示すグラフである。
【図2】鋼中に分散する介在物としての硫化物中のCuモル濃度と鉄損W15 / 50との関係を示すグラフである。
【図3】(a)〜(c)は鉄損W15 / 50と各種製造条件との関係を示すグラフであり、(d)は鋼中に分散する介在物としての硫化物中のCuモル分率と鉄損W15 / 50との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.004%以下、Si:0.7〜1.5%、Mn:0.1〜0.3%、sol.Al:0.0005%未満、P:0.2%以下、S:0.005%以下、N:0.003%以下、Cr:0.1%以下、V:0.005%以下、Ti:0.001%以下、Cu:0.016〜0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
- 鋼中に介在物として存在する長径0.05〜0.1μmの硫化物中のCuモル分率(=%Cu/(%Cu+%Mn+%S)×100)が30%以上であることを特徴とする請求項1記載の無方向性電磁鋼板。
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