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JP7640924B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

無方向性電磁鋼板 Download PDF

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JP7640924B2
JP7640924B2 JP2024531670A JP2024531670A JP7640924B2 JP 7640924 B2 JP7640924 B2 JP 7640924B2 JP 2024531670 A JP2024531670 A JP 2024531670A JP 2024531670 A JP2024531670 A JP 2024531670A JP 7640924 B2 JP7640924 B2 JP 7640924B2
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Description

本開示は、無方向性電磁鋼板に関する。
無方向性電磁鋼板は、例えばモータの鉄心に使用され、無方向性電磁鋼板には、その板面に平行な方向において優れた磁気特性、例えば低鉄損及び高磁束密度が要求される。
このためには、結晶の磁化容易軸(<100>方位)が板面内方向に一致するように鋼板の集合組織を制御することが有利である。このような集合組織制御に関しては、例えば特許文献1~5に記載の技術のように、{100}方位、{110}方位、{111}方位などを制御する技術が多く開示されている。
集合組織を制御する方法としては、様々な方法が考案されているが、その中に「歪誘起粒成長」を活用する技術がある。特定の条件での歪誘起粒成長においては、板面内方向に磁化容易軸を持たない{111}方位の集積を抑制することができるため、無方向性電磁鋼板では有効に活用されている。これらの技術については、特許文献6~10などに開示されている。
しかしながら、従来の方法では、{111}方位の集積を抑制することができるが、{110}<001>方位(以下、Goss方位)が成長してしまう。Goss方位は{111}よりも一方向は磁気特性に優れているが、全周平均では磁気特性がほとんど改善されない。そのため、従来の方法では全周平均で優れた磁気特性が得られないという問題点がある。
また、全周平均での優れた磁気特性を実現するため、γ→α相変態が起こる成分系で{100}結晶方位または{411}結晶法を発達させる技術が特許文献11~13に開示されている。これら技術では、γ→α相変態温度が低い鋼組成とし低温で変態させることで熱延板時点で細粒のα相組織を実現しており、変態温度を低下させるとともに回復再結晶を遅らせて歪の蓄積を促進する観点で、Mn、Cu、Ni等のγ安定化元素の添加が活用される。しかし、Mnは偏析元素として知られ、添加量が増加すると熱延板の板厚中心部に偏析し熱延板を冷延した際の割れの原因となる。
日本国特開2017-193754号公報 日本国特開2011-111658号公報 国際公開第2016/148010号 日本国特開2018-3049号公報 国際公開第2015/199211号 日本国特開平8-143960号公報 日本国特開2002-363713号公報 日本国特開2011-162821号公報 日本国特開2013-112853号公報 日本国特許第4029430号公報 国際公開第2021/095846号 国際公開第2021/095851号 国際公開第2021/095880号
本開示は、前述の問題点を鑑み、圧延性が問題とならないように、Mnを抑制するとともに、CuおよびNiなどの元素の含有量を適正化した化学組成を有する鋼板において、板面内異方性が小さく全周平均(全方向平均)が優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、歪誘起粒成長を活用して無方向性電磁鋼板にとって好ましい集合組織を形成するための技術について検討した。その中で、{411}<uvw>方位(以下、{411}方位)の結晶粒も{100}<uvw>方位(以下、{100}方位)と同じくらい歪の入りにくい結晶粒であることに着目した。つまり、歪誘起粒成長が起こる前の段階で、{100}方位の結晶粒よりも{411}方位の結晶粒を多くすることにより、歪誘起粒成長によって主として{411}方位の結晶粒が{111}方位の結晶粒を蚕食すると同時に{100}方位の結晶粒の発達を抑制し、{411}方位が主方位の無方向性電磁鋼板が製造される。このように、{100}方位の結晶粒の発達を十分に抑制した上で{411}方位を主方位とすれば全周平均(圧延方向、幅方向、圧延方向に対して45度の方向、及び圧延方向に対して135度の方向、の平均)の磁気特性が改善されることがわかった。
また、発明者らは、歪誘起粒成長が起こる前の段階で、{100}方位の結晶粒よりも{411}方位の結晶粒を多くする方法について検討を行った。その結果、Mn、Ni,またはCu等の含有量を低くした鋼種において特定の条件で熱間圧延を実施し、さらに冷延、焼鈍後、低めの圧下率で再冷延(スキンパス圧延)を行った後に最終焼鈍を行う方法を見出した。
本発明者らは、このような知見に基づいて更に鋭意検討を重ねた結果、以下に示す開示の諸態様に想到した。
(1)本開示の一態様に係る無方向性電磁鋼板は、
質量%で、
C :0.0100%以下、
Si:1.50%~4.00%、
sol.Al:0.0001%~1.0%、
S :0.0100%以下、
N :0.0100%以下、
Mn:0.10%以上、
Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
Mo:0.0%~2.5%未満、
Cr:0.0%~2.5%未満、
Ti:0.000%~0.005%、
Nb:0.000%~0.005%、
Sn:0.000%~0.400%、
Sb:0.000%~0.400%、
P :0.000%~0.400%、及び
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]
、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStra、{411}方位粒の平均KAM値をK411、前記テイラー因子Mが2.9超となる方位粒の平均KAM値をKtylとした場合に、以下の(
3)式及び(4)式~(7)式を満たす。
Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
411/S100>1.00 ・・・(3)
0.20≦Styl/Stot≦0.85 ・・・(4)
0.05≦S411/Stot≦0.80 ・・・(5)
411/Stra≧0.50 ・・・(6)
411/Ktyl≦0.990 ・・・(7)
ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
(2)本開示の一態様に係る無方向性電磁鋼板は、
質量%で、
C :0.0100%以下、
Si:1.50%~4.00%、
sol.Al:0.0001%~1.0%、
S :0.0100%以下、
N :0.0100%以下、
Mn:0.10%以上、
Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
Mo:0.0%~2.5%未満、
Cr:0.0%~2.5%未満、
Ti:0.000%~0.005%、
Nb:0.000%~0.005%、
Sn:0.000%~0.400%、
Sb:0.000%~0.400%、
P :0.000%~0.400%、及び
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStra、{411}方位粒の平均KAM値をK411、前記テイラー因子Mが2.9超となる方位粒の平均KAM値をKtylとした場合に、以下の(3)式及び(4)式~(7)式を満たす。
Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
411/S100>1.00 ・・・(3)
0.20≦Styl/Stot≦0.85 ・・・(4)
0.05≦S411/Stot≦0.80 ・・・(5)
411/Stra≧0.50 ・・・(6)
411/Ktyl≦0.990 ・・・(7)
ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
(3)本開示の一態様に係る無方向性電磁鋼板は、
質量%で、
C :0.0100%以下、
Si:1.50%~4.00%、
sol.Al:0.0001%~1.0%、
S :0.0100%以下、
N :0.0100%以下、
Mn:0.10%以上、
Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
Mo:0.0%~2.5%未満、
Cr:0.0%~2.5%未満、
Ti:0.000%~0.005%、
Nb:0.000%~0.005%、
Sn:0.000%~0.400%、
Sb:0.000%~0.400%、
P :0.000%~0.400%、及び
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStraとした場合に、以下の(8)式~(11)式を満たす。
Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
411/S100>2.00 ・・・(8)
tyl/Stot<0.55 ・・・(9)
411/Stot>0.30 ・・・(10)
411/Stra≧0.60 ・・・(11)
ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
(4)
質量%で、
C :0.0100%以下、
Si:1.50%~4.00%、
sol.Al:0.0001%~1.0%、
S :0.0100%以下、
N :0.0100%以下、
Mn:0.10%以上、
Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
Mo:0.0%~2.5%未満、
Cr:0.0%~2.5%未満、
Ti:0.000%~0.005%、
Nb:0.000%~0.005%、
Sn:0.000%~0.400%、
Sb:0.000%~0.400%、
P :0.000%~0.400%、及び
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStraとした場合に、以下の(8)式~(11)式を満たす。
Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
411/S100>2.00 ・・・(8)
tyl/Stot<0.55 ・・・(9)
411/Stot>0.30 ・・・(10)
411/Stra≧0.60 ・・・(11)
ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
本開示の上記態様によれば、圧延性が問題とならないように、Mnの添加を抑制するとともに、CuおよびNiなどの元素の含有量を適正化した化学組成を有する鋼板において、板面内異方性が小さく全周平均(全方向平均)が優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を提供することができる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、後述する化学組成を有する鋼材に対して、熱間圧延工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程、スキンパス圧延工程を施して製造される。
また、本開示の別の実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、後述する化学組成を有する鋼材に対して、冷間圧延工程、中間焼鈍工程、スキンパス圧延工程、最終焼鈍工程を施して製造される。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、Mnの添加量を低限し圧延性を確保し、更に成分調整を行った上で、熱間圧延条件を最適化し熱延板の段階で適切なα加工粒組織を形成することによって、その後の冷延、中間焼鈍で{411}方位粒が発達する。歪誘起粒成長が起こる前の段階で、{100}方位粒よりも{411}方位粒を多くすることにより、歪誘起粒成長によって主として{411}方位粒が{111}方位粒を蚕食すると同時に{100}方位粒の発達を抑制し、{411}方位が主方位の無方向性電磁鋼板が製造される。
スキンパス圧延後の最終焼鈍により、鋼板は歪誘起粒成長及び/または正常粒成長をする。
そして、{100}方位の発達を十分に抑制した上で、{411}方位粒を富化させることが、磁気特性の板面内異方性の低減および全周平均(全方向平均)の改善に有効である。
なお、スキンパス圧延後の鋼板は、歪誘起粒成長及び正常粒成長後の鋼板の原板という関係にある。以下、最終焼鈍前後を問わず、スキンパス圧延後の鋼板、歪誘起粒成長及び正常粒成長後の鋼板は、いずれも無方向性電磁鋼板として説明する。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、スキンパス圧延前の鋼板の金属組織において、{100}方位粒よりも{411}方位を中心とした結晶粒(以下、{411}方位粒)を多くすることで、その後のスキンパス圧延および最終焼鈍で{411}方位粒をより増やし、全周の磁気特性を向上させる。上記記載のプロセス以外でスキンパス圧延前に{411}方位粒を増やしても良い。
まず、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板及びその製造方法で用いられる素材である方向性電磁鋼板の化学組成について説明する。圧延や熱処理で化学組成は変化しないので、素材となる方向性電磁鋼板の化学組成と、各工程を経て得られる無方向性鋼板の化学組成は同じである。以下の説明において、無方向性電磁鋼板又は鋼材に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
なお、本明細書中において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、以下の実施形態の各要素は、それぞれの組み合わせが可能であることは自明である。
また、本開示の実施形態において「無方向性電磁鋼板」とは、コイル状または切板状の鋼板はもちろん、モータコアなどの製品(部材)の素材として特定形状に加工された鋼板、さらに加工後に積層されモータコアを構成している鋼板も含む。
まず、本開示の実施形態に係る無方向性電磁鋼板及びその製造方法で用いられる鋼材の化学組成について説明する。以下の説明において、無方向性電磁鋼板又は鋼材に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。また、無方向性電磁鋼板の化学組成は、皮膜等を除いた母材を100%とした場合の含有量を示す。
また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、フェライト-オーステナイト変態(以下、α-γ変態)が生じ得る化学組成であって、
質量%で、
C :0.0100%以下、
Si:1.50%~4.00%、
sol.Al:0.0001%~1.0%、
S :0.0100%以下、
N :0.0100%以下、
Mn:0.10%以上、
Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
Mo:0.0%~2.5%未満
Cr:0.0%~2.5%未満
Ti:0.000%~0.005%
Nb:0.000%~0.005%
Sn:0.000%~0.400%、
Sb:0.000%~0.400%、
P :0.000%~0.400%、及び
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、さらに、C、Si、P、sol.Al、Mn、Mo、Cu、CrおよびNiの含有量が後述する所定の条件を満たし、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板において、Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種は、総計で2.50%未満含有することが好ましい。
不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
(C:0.0100%以下)
Cは、鉄損を高めたり、磁気時効を引き起こしたりする。従って、C含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、C含有量が0.0100%超で顕著である。このため、C含有量は0.0100%以下とする。C含有量の低減は、板面内の全方向における磁気特性の均一な向上にも寄与する。なお、C含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱炭処理のコストを踏まえ、0.0005%以上とすることが好ましい。
(Si:1.50%~4.00%)
Siは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減したり、降伏比を増大させて、鉄心への打ち抜き加工性を向上したりする。Si含有量が1.50%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Si含有量は1.50%以上とする。一方、Si含有量が4.00%超では、磁束密度が低下したり、硬度の過度な上昇により打ち抜き加工性が低下したり、冷間圧延が困難になったりする。従って、Si含有量は4.00%以下とする。
(sol.Al:0.0001%~1.0%)
sol.Alは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減する。sol.Alは、飽和磁束密度に対する磁束密度B50の相対的な大きさの向上にも寄与する。sol.Al含有量が0.0001%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。また、Alには製鋼での脱硫促進効果もある。従って、sol.Al含有量は0.0001%以上とする。一方、sol.Al含有量が1.0%超では、磁束密度が低下したり、降伏比を低下させて、打ち抜き加工性を低下させたりする。従って、sol.Al含有量は1.0%以下とする。
なお、sol.Alとは、Al等の酸化物になっておらず、酸に可溶する酸可溶Alを意味する。
ここで、磁束密度B50とは、5000A/mの磁場における磁束密度である。
(S:0.0100%以下)
Sは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。Sは、微細なMnSの析出により、焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害する。従って、S含有量は低ければ低いほどよい。このような再結晶及び結晶粒成長の阻害による鉄損の増加および磁束密度の低下は、S含有量が0.0100%超で顕著である。このため、S含有量は0.0100%以下とする。なお、S含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱硫処理のコストを踏まえ、0.0003%以上とすることが好ましい。
(N:0.0100%以下)
NはCと同様に、磁気特性を劣化させるので、N含有量は低ければ低いほどよい。したがって、N含有量は0.0100%以下とする。なお、N含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱窒処理のコストを踏まえ、0.0010%以上とすることが好ましい。
(Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満)
Mn、Ni、及びCuが総計で2.5%以上含有すると磁気特性の異方性が大きくなることから、Mn、Ni、及びCuの総計は2.5%未満とする。異方性が大きくなる要因は明確ではないが、フェライト域での滑り変形に影響を及ぼし、{100}方位の形成、再結晶を促すためと考えられる。また、合金元素の含有量の増加は、この観点から2.3%以下とすることが好ましい。Mn、Ni、及びCuの総計の下限値は特に制限されないが、例えば0.10%以上としてもよく、0.50%以上、もしくは、1.00%以上、さらに、2.00%以上としてもよい。
(Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満)
上述のMn、Ni、及びCuに加えて、Co、Pt、Pb、及びAuも磁気特性の異方性を大きくすることから、本実施形態ではこれらの元素の含有量を総計で2.50%未満にとどめることが好ましい。また、これらの元素は磁束密度を低下させるため、総計で2.00%未満とすることが好ましい。Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuの総計の下限値は特に制限されないが、例えば0.10%以上としてもよく、0.50%以上、もしくは、1.00%以上、さらに、2.00%以上としてもよい。特にCo、Pt、Pb、及びAuは合金コストが高いことから、積極的な添加は回避すべきである。また、本実施形態の特徴の一つであるAr変態点の制御を考慮しても、Mn、Ni、及びCuの含有によりAr変態点を制御することが好ましい。このため、Co、Pt、Pb、及びAuの総計は0.5%未満、さらに好ましくは0.1%以下、さらには不可避元素の範囲内での混入に留め、積極的な添加をあえて実施する必要はない(0%としてもよい。)。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板及び鋼材は、α-γ変態が生じ得る条件として、さらに以下の条件を満たしているものとする。つまり、質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であることを満たすものとする。
Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
前述の(1)式を満たさない場合には、α-γ変態が生じたとしても変態点が適切な温度範囲にないため、後述の製造方法を適用しても、十分な磁束密度が得られない。Ar変態点が750℃未満となると熱間圧延の温度が低温化するために変形抵抗が高くなり圧延機への負荷が大きくなりすぎるとともに、元素の添加量が高くなるために熱延板および冷延板の靭性低下にもつながることからこの値を下限とする。一方、Ar変態点が1050℃超となると熱間圧延温度が高くなりすぎるために極めて高温加熱が必要となり加熱炉への負荷が高くなる、またはγ→α変態が起こらない成分系になってくるためこの値を上限とする。
(Mn:0.10%以上)
Mnは、Ar変態点を低下させ、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の成分系において、相変態による熱延板の結晶粒の微細化を可能とする。Mnは鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減する元素である。そのため、Mnは0.1%以上含有させる。この観点からはMnは0.5%以上含有させることが好ましい。更に好ましくは1.0%以上である。一方、Mnは偏析しやすい元素であり、含有量が増えると、偏析起因の冷間加工割れを起こすだけでなく、飽和磁束密度を低下させ鋼板の磁束密度の上昇を妨げる。また、MnSが過剰に生成して、冷間加工性が低下する。そのため、Mn含有量の上限は2.5%未満とする。Mn含有量の上限は、2.3質量%以下が好ましく、2.0質量%がより好ましい。
(Cu:上記各元素との総計で2.5%未満)
CuはMnと同様に鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減する元素であり、Ar変態点を低下させて本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成において、相変態による熱延板粒径の微細化を可能とする元素である。しかしながら、Cu含有量が高くとなると再結晶温度の上昇などにより冷延以降の焼鈍における集合組織形成に悪影響をおよぼすとともに熱間での脆化の原因となるだけでなく、飽和磁束密度を低下させ鋼板の磁束密度の上昇を妨げることから注意を要する。なお、Cu含有量の半量以上のNiを複合添加とすることでCuに起因する熱間での脆化を軽減できる。Cu含有量の上限は限定されないが、2.5%未満とする。また、Cu含有量の上限は1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。Cu含有量の下限は特に制限されないが、例えば0.01%以上とすればよい。
(Ni:上記各元素との総計で2.5%未満)
NiはMnと同様に鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。Niはさらに、A3変態点を低下させて本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成において、相変態による結晶粒の微細化を可能とする。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、Niは高価であるため製品コストが高くなるだけでなく、飽和磁束密度を低下させ鋼板の磁束密度の上昇を妨げるため、含有量の設計においてはこれらを考慮することが好ましい。Ni含有量の上限は限定されないが、2.5%未満とする。また、Ni含有量の上限は、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。Ni含有量の下限は特に制限されないが、例えば0.01%以上としてもよい。
(Mo:0.0%~2.5%未満)
MoはAr変態点を低下させ本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成において、相変態による熱延板粒径の微細化を可能とする元素である。したがって、Moは必要に応じて含有させてもよく0.1%以上含有することが好ましい。一方で、Moを2.5%以上含有することは冷間加工性を著しく低下させることから、Mo含有量は2.5%未満とする。
(Cr:0.0%~2.5%未満)
CrはAr変態点を低下させ本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成において、相変態による熱延板粒径の微細化を可能とする元素であると共に、強度調整や耐食性の他、特に高周波特性を向上させる効果がある。したがって、Crは必要に応じて含有させてもよく、0.1%以上含有することが好ましい。一方で、Crの過剰な含有は効果が飽和し原料コストを増加させるだけでなく、飽和磁束密度を低下させ鋼板の磁束密度の上昇を妨げる。このため、Cr含有量は、2.5%未満とする。
(Ti:0.000%~0.005%)
Tiは固溶、またはTiNとして存在することで再結晶が抑制されオーステナイト粒径の微細化に寄与する。したがって、Tiは必要に応じて含有させてもよく、0.001%以上含有することが好ましい。一方、Ti含有量が0.005%を超えると、TiN、TiS,およびTiCなど様々な析出物を生成し、鉄損特性を劣化させることから、0.005%以下とする。
(Nb:0.000%~0.005%)
Nbは固溶、またはNbNとして存在することで再結晶が抑制されオーステナイト粒径の微細化に寄与する。したがって、Nbは必要に応じて含有させてもよく、0.001%以上含有することが好ましい。一方、Nb含有量が0.005%を超えると、NbNおよびNbCなど様々な析出物を生成し、鉄損特性を劣化させることから、0.005%以下とする。
(Sn:0.000%~0.400%、Sb:0.000%~0.400%、P:0.000%~0.400%)
SnやSbは冷間圧延、再結晶後の集合組織を改善して、その磁束密度を向上させる。そのため、これらの元素を必要に応じて含有させてもよいが、過剰に含まれると鋼を脆化させる。したがって、Sn含有量、Sb含有量はいずれも0.400%以下とする。また、Pは再結晶後の鋼板の硬度を確保するために含有させてもよいが、過剰に含まれると鋼の脆化を招く。したがって、P含有量は0.400%以下とする。
磁気特性等のさらなる効果を付与する場合には、0.020%~0.400%のSn、0.020%~0.400%のSb、及び0.020%~0.400%のPからなる群から選ばれる1種又は複数種を含有することが好ましい。
(Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%)
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdは、溶鋼の鋳造時に溶鋼中のSと反応して硫化物若しくは酸硫化物又はこれらの両方の析出物を生成する。以下、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdを総称して「粗大析出物生成元素」ということがある。粗大析出物生成元素の析出物の粒径は1μm~2μm程度であり、MnS、TiN、AlN、TiC、NbC等の微細析出物の粒径(100nm程度)よりはるかに大きい。このため、これら微細析出物は粗大析出物生成元素の析出物に付着し、中間焼鈍などの焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害しにくくなる。これらの作用効果を十分に得るためには、粗大析出物生成元素の総計が0.0005%以上であることが好ましい。但し、これらの元素の総計が0.0100%を超えると、硫化物若しくは酸硫化物又はこれらの両方の総量が過剰となり、中間焼鈍などの焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長が阻害される。従って、粗大析出物生成元素の含有量は総計で0.0100%以下とする。
本実施形態において、上記以外の化学組成の残部はFe及び不純物であってもよい。不純物とは、鋼原料および/又は製鋼過程で混入する元素を意味する。
化学組成については、以下の方法で求める。
化学組成については、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、化学組成はICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、鋼板から採取した試験片を予め作成した検量線に基づいた条件で所定の測定装置にて測定することにより、化学組成が特定される。CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用いて測定し、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。Oは不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法で測定すればよい。
表面に絶縁被膜を有している場合には、ミニターなどにより機械的に除去したのちに分析に供すればよい。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の厚さについて説明する。本実施形態に係る
無方向性電磁鋼板の板厚は特に限定されない。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい板厚は、0.10~0.50mmである。通常、板厚が薄くなれば、鉄損は低くなるものの、磁束密度が低くなる。この点を踏まえると、板厚が0.10mm以上であれば、鉄損がより低く、かつ、磁束密度がより高くなる。また、板厚が0.50mm以下であれば、低い鉄損を維持できる。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の金属組織について説明する。以下、スキンパス圧延後の金属組織、最終焼鈍後の金属組織により各実施形態の無方向性電磁鋼板を特定する。
まず、特定する金属組織およびその特定方法について説明する。本実施形態で特定する金属組織は、鋼板の板面に平行な断面で特定されるもので、以下の手順によって特定する。
まず、板厚1/8厚位置が表出するように、試料を7/8の厚みまで研磨し、その研磨面(鋼板の板面側から1/8研磨した研磨面)を、SEMを用いて加速電圧25kV、倍率1000倍で、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)にて観察を行う。観察視野は、スキンパス圧延後の試料は500μm×500μm、歪取焼鈍後の試料は2000μm×2000μmとする。観察は、いくつかの小区画に分けた数カ所で行っても良い。測定時のstep間隔は、スキンパス圧延後の試料では0.3μm、歪取焼鈍後の試料では2.0μmとする。EBSDの観察データから一般的な方法により、以下の種類の面積、KAM(Kernel Average Misorientation)値を得る。
各方位の面積はEBSDの観察視野からIPF(Inverse Pole Figure)を計算することにより求めることができる。KAM値はOIM Analysis等のソフトウェアを用いて測定点同士の方位差を計算することにより求めることが出来る。本開示ではOIM Analysis7.3を用いて、KAM値へ参入する限度(tolerance)を隣接ピクセルとの方位差5°以下とし、最隣接(1st neighbor)の測定点間の方位差を計算した値の平均値をKAM値として用いる。なお、「Set zero point kernel to maximum misorientations」の設定はデフォルトのまま、チェックを入れる。
tot:全面積(観察面積)
tyl:以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の合計面積
tra:以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積
411:{411}方位粒の合計面積
100:{100}方位粒の合計面積
tyl:以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の平均KAM値
411:{411}方位粒の平均KAM値
ここで、結晶面方位の方位裕度に関しては10°とする。また、以降、特定の結晶面方位を記述する際も、方位裕度は10°とする。つまり、本開示で説明する特定の面方位から±10°以内の面方位を有する結晶粒は、その特定の結晶方位を有する結晶粒として処理する。
ここで、テイラー因子Mは、以下の(2)式に従うものとする。
M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
φ:応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角
λ:応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角
上記のテイラー因子Mは、結晶のすべり変形がすべり面{110}、または{112}、すべり方向<111>で起きると仮定し、板幅方向の変形は生じず板厚方向への圧縮変形と圧延方向への展伸変形が起こる場合のテイラー因子である。
ここで、SEM-EBSDデータを用いてOIM Analysis7.3で解析することにより、テイラー因子を求める方法について説明する。OIM Analysis7.3のChart作成を行う機能にて、対象(Type)としてTaylor Factorを選択する。テイラー因子を求めるための詳細条件は以下のとおりである。
すべり系のPhaseとしてIron(Alpha)を選択し、すべり系としては以下の2つを入力する。
すべり面:101、すべり方向:11-1、CRSS:0.2
すべり面:112、すべり方向:11-1、CRSS:0.2
なお、すべり面とすべり方向は内積が0になる組み合わせを選べば、数字の順番、符号は違っていても同一の結果が得られる。CRSS(Critical Resolved Shear Stress:臨界分解剪断応力)は二つのすべり系で同一の値を入力する。
Deformation Gradientとしては以下の圧延変形のテンソルを入力する。
RD、TD、ND
RD 1 0 0
TD 0 0 0
ND 0 0 -1
このような条件下での全測定点のテイラー因子をヒストグラムとして計算し、その結果からテイラー因子が2.9以上および2.9未満となる方位粒の面積率などに換算することが可能となる。
次に、以下の実施形態1~2において、上記の面積、KAM値により特徴を規定する。
(実施形態1)
まず、スキンパス圧延後の無方向性電磁鋼板の金属組織について説明する。この金属組織は、歪誘起粒成長を起こすのに十分な歪を蓄積しており、歪誘起粒成長が起こる前の初期段階の状態と位置付けることができる。スキンパス圧延後の鋼板の金属組織の特徴は、大まかには、目的とする方位の結晶粒が発達するための方位と、歪誘起粒成長を起こすため十分に蓄積された歪に関する条件とで規定される。
実施形態1に係る無方向性電磁鋼板は各方位粒の面積が、以下の(3)式及び(4)式~(6)式を満たす。
411/S100>1.00 ・・・(3)
0.20≦Styl/Stot≦0.85 ・・・(4)
0.05≦S411/Stot≦0.80 ・・・(5)
411/Stra≧0.50 ・・・(6)
優先的に成長させるべき方位粒として{411}方位粒を中心として説明したが、{411}方位粒と同様にテイラー因子が比較的小さく加工による歪が蓄積しにくい方位であって、歪誘起粒成長において優先的に成長しうる方位粒は他にも多く存在する。その中で無方向性電磁鋼板に存在しやすい方位として、{100}方位がある。この方位粒は、優先的に成長させるべき{411}方位粒とは競合する。一方でこの方位粒は、鋼板面内の方位をランダムに制御することが難しく、歪誘起粒成長で{100}方位が発達してしまうと特性の鋼板面内異方性が大きくなってしまい不都合である。このため、実施形態1においては、テイラー因子が比較的小さく加工による歪が蓄積しにくい方位の中での{411}方位粒の存在比が確保されるよう規定する。面積比S411/S100は1.00超えである。つまり、{411}方位粒を{100}方位粒よりも多く存させる。{100}方位粒の発達を十分に抑制した上で{411}方位粒子を主方位とすると、全周平均(圧延方向、幅方向、圧延方向に対して45度の方向、及び圧延方向に対して135度の方向、の平均)の磁気特性が改善される。
好ましくは面積比S411/S100が2.0以上、より好ましくは面積比S411/S100が3.0以上である。
面積比S411/S100の上限は、特に限定する必要はない。本開示の目的においては、
{100}方位粒の存在がゼロで面積比S411/S100の値が無限大となっていても全く問題はない。しかしながら、実質{100}方位粒をゼロにすることは製造上多大な負荷をもたらすことから面積比S411/S100が20以下、より好ましくは面積比S411/S100が10以下である。
また、Stylは、テイラー因子が比較的大きい方位の存在量である。歪誘起粒成長工程では、テイラー因子が小さく加工による歪が蓄積しにくい方位が、テイラー因子が大きく加工による歪が蓄積した方位を蚕食しながら優先的に成長する。このため、歪誘起粒成長により特殊な方位を発達させるには、Stylはある程度の量が存在する必要がある。実施
形態1においては、全面積に対する面積比Styl/Stotとして規定し、面積比Styl/Stotを0.20以上とする。面積比Styl/Stotが0.20未満では、歪誘起粒成長によって目的とする結晶方位が十分に発達しなくなる。好ましくは面積比Styl/Stotが0.30以上、より好ましくは0.50以上である。
面積比Styl/Stotの上限は、以下で説明する歪誘起粒成長工程で発達させるべき結晶方位粒の存在量と関連するが、その条件は単純に優先成長する方位と蚕食される方位の比率のみで決定されるものではない。まず、後述するように、歪誘起粒成長で発達させるべき{411}方位粒の面積比S411/Stotが0.05以上であることから、必然的に面積比Styl/Stotは0.95以下となる。しかし、面積比Styl/Stotの存在量が過多となると、後述する歪との関連で、{411}方位粒の優先成長が起きなくなる。歪量との関連は後で詳述するが、実施形態1においては、面積比Styl/Stotは0.85以下となる。好ましくは面積比Styl/Stotが0.75以下、より好ましくは0.70以下である。
以下で説明する歪誘起粒成長工程では、{411}方位粒を優先的に成長させる。{411}方位はテイラー因子が比較的小さく加工による歪が蓄積しにくい方位の1つであり、歪誘起粒成長工程において優先的に成長しうる方位である。実施形態1では、{411}方位粒の存在は必須であり、実施形態1では、{411}方位粒の面積比S411/Stotを0.05以上とする。{411}方位粒の面積比S411/Stotが0.05未満では、その後の歪誘起粒成長によって{411}方位粒が十分に発達しなくなる。好ましくは面積比S411/Stotが0.10以上、より好ましくは0.20以上である。
面積比S411/Stotの上限は、歪誘起粒成長で蚕食されるべき結晶方位粒の存在量に応じて決定される。実施形態1では歪誘起粒成長で蚕食されるべきテイラー因子が2.9超となる方位の面積比Styl/Stotが0.20以上であることから、面積比S411/Stotは0.80以下となる。ただし、歪誘起粒成長前の{411}方位粒の存在量が低い方が、粒成長の優位性が顕著となり、より{411}方位粒を発達させることが可能にもなる。これを考慮すれば、好ましくは面積比S411/Stotは0.60以下、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.40以下である。
優先的に成長させるべき方位粒として{411}方位粒を中心として説明したが、{411}方位粒と同様にテイラー因子が比較的小さく加工による歪が蓄積しにくい方位であって、歪誘起粒成長において優先的に成長しうる方位粒は他にも多く存在する。これらの方位粒は、優先的に成長させるべき{411}方位粒とは競合する。一方でこれらの方位粒は、鋼板面内の磁化容易軸方向(<100>方向)が{411}方位粒ほどは多くなかったり、鋼板面内での方位選択性をランダムにすることが困難なため、歪誘起粒成長でこれら方位が発達してしまうと磁気特性が劣化したり、鋼板面内異方性が増大して不都合となる。このため、実施形態1においては、テイラー因子が十分に小さく加工による歪が蓄積しにくい方位の中での{411}方位粒の存在比が確保されるよう規定する。
歪誘起粒成長において{411}方位粒と競合すると考えられる方位粒を含む、テイラー因子が2.9以下となる方位粒の面積をStraとする。そして、(6)式に示すように、面積比S411/Straを0.50以上とし、{411}方位粒の成長の優位性を確保する。この面積比S411/Straが0.50未満では、歪誘起粒成長によって{411}方位粒が十分に発達しなくなる。好ましくは面積比S411/Straが0.80以上、より好ましくは0.90以上である。一方、面積比S411/Straの上限は特に限定する必要がなく、テイラー因子が2.9以下となる方位粒がすべて{411}方位粒(S411/Stra=1.00)であっても構わない。
実施形態1は、上述の結晶方位に加えて、以下に説明する歪を組み合わせることで確実に{411}方位粒を成長させ、より優れた磁気特性を得ることができる。実施形態1において、歪に関する規定として、以下の(7)式を満たす必要がある。
411/Ktyl≦0.990 ・・・(7)
歪に関する要件は(7)式によって規定される。(7)式は{411}方位粒に蓄積される歪(平均KAM値)とテイラー因子が2.9超となる方位粒に蓄積される歪(平均KAM値)との比である。ここで、KAM値は同一粒内で隣接する測定点との方位差であり、歪の多い箇所ではKAM値は高くなる。結晶学的な観点において、例えば板厚方向と圧延方向に平行な面内での平面歪状態で板厚方向への圧縮変形を行う場合、つまり鋼板を単純に圧延する場合は、一般的にはこのK411とKtylとの比K411/Ktylは1よりも小さくなる。しかし現実的には隣接する結晶粒による拘束、結晶粒内に存在する析出物、さらには変形時の工具(圧延ロールなど)との接触を含めたマクロ的な変形変動などの影響のため、ミクロ的に観察される結晶方位に応じた歪は多様な形態となる。このため、テイラー因子による純粋に幾何学的な方位の影響が現れにくくなる。また、例えば、同じ方位の粒であっても、粒径、粒の形態、隣接粒の方位や粒径、析出物の状態、板厚方向での位置などにより非常に大きな変動が形成される。さらに、一つの結晶粒でさえ、粒界近傍と粒内、変形帯などの形成により歪分布は大きく変動する。
このような変動を考慮した上で、実施形態1において優れた磁気特性を得るためには、K411/Ktylを0.990以下とする。K411/Ktylが0.990超になると、蚕食されるべき領域の特殊性が失われるため、歪誘起粒成長が起きにくくなる。好ましくはK411/Ktylが0.970以下、より好ましくは0.950以下である。
実施形態1のスキンパス圧延後の状態での無方向性電磁鋼板の金属組織においては、結晶粒径については特に限定しない。これは、その後の最終焼鈍により適切な歪誘起粒成長が起きる状態において、結晶粒径との関係はそれほど強くないためである。つまり、目的とする適切な歪誘起粒成長が起きるかどうかは、鋼板の化学組成に加え、結晶方位毎の存在量(面積)の関係と、それぞれの方位毎の歪量の関係により、ほぼ決定できる。
ただし、結晶粒径があまりに粗大となると、歪により誘起されているものの実用的な温度域での十分な粒成長は生じにくくなる。また結晶粒径があまりに粗大になると磁気特性の劣化も回避し難くなる。このため実用的な平均結晶粒径は300μm以下とすることが好ましい。より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。結晶粒径が細かいほど、結晶方位および歪の分布が適切に制御された際の歪誘起粒成長による目的とする結晶方位の発達は認識されやすい。ただしあまりに微細となると、上述のように歪を付与する加工において隣接粒との拘束のため、結晶方位毎の歪量の差異を形成しにくくなる。この観点からは平均結晶粒径は3μm以上であることが好ましく、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
(実施形態2)
上述の実施形態1では、鋼板の歪をKAM値で特定することで鋼板としての特徴を規定した。これに対し、実施形態2では、実施形態1に記載の鋼板を十分に長時間焼鈍し、さらに粒成長させた鋼板について規定する。このような鋼板は、歪誘起粒成長がほぼ完了し、その結果、歪がほぼ完全に解放されるため、特性としては非常に好ましいものとなる。つまり、歪誘起粒成長で{411}方位粒を成長させ、さらに歪がほぼ完全に解放されるまで最終焼鈍で正常粒成長させた鋼板は、{411}方位への集積がより強い鋼板となる。実施形態2では、実施形態1に記載の鋼板を素材として、熱処理を行って得られる鋼板(すなわち、スキンパス圧延後の無方向性電磁鋼板に対し、最終焼鈍を行った無方向性電磁鋼板)の結晶方位、および結晶粒径について説明する。
最終焼鈍を行って得られる鋼板の結晶方位は、以下の(8)式~(11)式を満たす。
(8)式は、前述のスキンパス圧延後の無方向性電磁鋼板に関する(3)式と比較して数値範囲が異なっている。最終焼鈍中に生じる歪誘起粒成長により、{411}方位粒がさらに成長してその面積が増加することによって、全周平均(圧延方向、幅方向、圧延方向に対して45度の方向、及び圧延方向に対して135度の方向、の平均)の磁気特性が改善される。
(9)式~(11)式の規定は、前述のスキンパス圧延後の無方向性電磁鋼板に関する(4)式~(6)式と比較して数値範囲が異なっている。最終焼鈍中に生じる歪誘起粒成
長により、{411}方位粒がさらに成長してその面積が増加するとともに、テイラー因子が2.9超となる方位粒が主として{411}方位粒に蚕食され、その面積がさらに減少しているからである。
411/S100>2.00 ・・・(8)
tyl/Stot<0.55 ・・・(9)
411/Stot>0.30 ・・・(10)
411/Stra≧0.60 ・・・(11)
実施形態2では面積比Styl/Stotを0.55未満とする。合計面積Stylはゼロであっても構わない。面積比Styl/Stotの上限は{411}方位粒の成長の進行の程度を示すパラメータの一つとして決定される。面積比Styl/Stotが0.55以上であることは、歪誘起粒成長の段階で蚕食されるべきテイラー因子が2.9超となる方位粒が十分に蚕食されていないことを示している。この場合、磁気特性が十分に向上しない。好ましくは面積比Styl/Stotが0.40以下、より好ましくは0.30以下である。面積比Styl/Stotは少ない方が好ましいので、下限は規定されず、0.00であってもよい。
また、実施形態2では面積比S411/Stotを0.30超とする。面積比S411/Stotが0.30以下では、磁気特性が十分に向上しない。好ましくは面積比S411/Stotが0.40以上、より好ましくは0.50以上である。面積比S411/Stotが1.00である状況とは、結晶組織のすべてが{411}方位粒であり、その他の方位粒が存在しない状況であるが、実施形態2はこの状況も対象とするものである。
実施形態2でも、実施形態1と同様、歪誘起粒成長において{411}方位粒と競合していたと考えられる方位粒と{411}方位粒との関係も重要である。面積比S411/Straが十分に大きい場合には、歪誘起粒成長後の正常粒成長の状況においても{411}方位粒の成長の優位性が確保されており、磁気特性が良好となる。この面積比S411/Straが0.60未満では、歪誘起粒成長によって{411}方位粒が十分に発達せず、歪誘起粒成長後の正常粒成長の状況において{411}方位粒以外のテイラー因子が小さな方位粒が相当程度に成長したことになり、磁気特性の面内異方性も大きくなる。したがって、実施形態2では面積比S411/Straを0.60以上とする。好ましくは面積比S411/Straが0.70以上、より好ましくは0.80以上である。一方、面積比S411/Straの上限は特に限定する必要がなく、テイラー因子が2.9以下である方位粒がすべて{411}方位粒であっても構わない。
また、平均結晶粒径の範囲については特に限定はしないが、平均結晶粒径があまりに粗大になると磁気特性の劣化も回避し難くなる。このため、実施形態1と同様、実施形態2において相対的に粗大な粒である{411}方位粒の実用的な平均結晶粒径は、500μm以下とすることが好ましい。より好ましくは{411}方位粒の平均結晶粒径が400μm以下、さらに好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。一方、{411}方位粒の平均結晶粒径の下限は、{411}方位の十分な優先成長を確保している状態を想定すれば、{411}方位粒の平均結晶粒径が40μm以上であることが好ましく、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。
[特性]
最終焼鈍後の無方向性電磁鋼板は、上記の通り化学組成、金属組織を制御しているので、圧延方向、幅方向の平均だけでなく、全周平均(圧延方向、幅方向、圧延方向に対して45度の方向、圧延方向に対して135度の方向、の平均)で優れた磁気特性(低い鉄損)を得ることができる。
ここで言う圧延方向、幅方向は、得られる無方向性電磁鋼板の圧延方向、幅方向である。
実施形態2の無方向性電磁鋼板は、圧延方向となす角度が0°、45°、90°となる3つの方向において、45°方向の磁気特性が最も優れる。実施形態2において45°方向の磁気特性は、圧延方向と+45°と-45°をなす2つの方向についての磁気特性の平均値である。
実施形態2の無方向性電磁鋼板の磁束密度を測定したとき、圧延方向に対して45°方向の磁束密度B50は1.75T以上が好ましい。なお、実施形態2に係る無方向性電磁鋼板では、圧延方向に対して45°方向の磁束密度が高く、板面内異方性が小さくかつ全周平均(全方向平均)でも高い磁束密度が得られる。
実施形態2の無方向性電磁鋼板では、圧延方向における磁束密度B50の値をB50L、圧延方向に対して45°方向の磁束密度B50の値をB50D、圧延方向に対して90°方向の磁束密度B50の値をB50Cとすると、B50Dが相対的に高く、B50L及びB50Cが相対的に低いという磁束密度の異方性がみられる。
実施形態2の無方向性電磁鋼板では、B50Dと、B50LとB50Cの平均値とを用いて、以下の(A)式を満たすことがより好ましい。
|B50D-(B50L+B50C)/2|≦0.2 ・・・(A)
上記(A)式の左辺の値の下限は、特に制限はなく、ゼロであることが好ましい。
磁束密度の測定は、圧延方向に対して45°、0°方向等から55mm角の試料を切り出し,単板磁気測定装置を用いて行うことができる。
磁気測定はJIS C 2550-1(2011)及びJIS C 2550-3(2019)に記載の測定方法で行ってもよいし、JIS C 2556(2015)に記載の測定方法で行っても良い。また、試料が微小であり、上記JISに記載の測定が出来ない場合、電磁回路はJIS C 2556(2015)に準じた55mm角の試験片や更に微小な試験片を測定できる装置を用いて測定しても良い。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、熱間圧延工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程、スキンパス圧延工程、最終焼鈍工程)を含む製造方法によって得られる。
以下、各工程の好ましい条件について説明する。
以下、本実施形態において、Ar温度は、上記(1)式で定めた変態温度Ar(℃)である。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、上述の化学組成を満たす鋼材に対して熱間圧延を実施して熱間圧延鋼板を製造する。熱間圧延工程は、加熱過程と、圧延過程とを備える。
鋼材は、例えば通常の連続鋳造によって製造されるスラブであり、上述した組成の鋼材は周知の方法で製造される。たとえば、転炉又は電気炉等で溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して脱ガス設備等で二次精錬して、上記化学組成を有する溶鋼とする(その後の工程では化学組成は実質的に変化しない)。溶鋼を用いて連続鋳造法又は造塊法によりスラブを鋳造する。鋳造されたスラブを分塊圧延してもよい。
加熱過程では、上述の化学組成を有する鋼材を1000~1200℃に加熱することが好ましい。具体的には、鋼材を加熱炉又は均熱炉に装入して、炉内にて加熱する。加熱炉又は均熱炉での上記加熱温度での保持時間は特に限定されないが、例えば30~200時間である。
圧延過程では、加熱過程により加熱された鋼材に対して、複数回パスの圧延を実施して、熱間圧延鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。熱間圧延はたとえば、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよいし、一対のワークロールを有するリバース圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数回の圧延パスを実施するのが好ましい。
圧延過程(粗圧延および仕上げ圧延)での圧延は、上述した鋼材を加熱し、熱間圧延を施す。鋼材は、例えば通常の連続鋳造によって製造されるスラブである。スラブの加熱はAr温度以上とし鋼組織がγ相となる温度域とする。熱間圧延は鋼組織がγ相となる温度域(以降、この温度域をγ域と記述することがある)で開始され、仕上げ圧延の最終パスを含む必要な数パスを除いてγ域で実施し、最終パスを含む必要な数パスを鋼組織にα相が存在する温度域(以降、この温度域をα域と記述することがある)で実施して完了させる。一般的には、粗圧延及び仕上げ圧延の前段~中段をγ域で行い、仕上圧延の後段をα域で行うこととなる。本実施形態では、最終的なα域での圧延の直前のAr温度以上Ar+20℃以下の温度域での圧下率を10%以上とする。さらに、仕上げ圧延温度FT以上Ar温度未満の温度域での圧下率は複数パスで圧延する場合も考慮して合計で15%以上とする。
なお、仕上げ圧延温度FTとは、仕上げ圧延直後の熱間圧延鋼板の表面温度を指す。
仕上げ圧延温度FTの下限は特に制限はないが、例えば、Ar温度-100℃以上とする。
最終的なα域での圧延の直前でのAr+20℃超の温度域での圧延は相変態前の加工γ粒の粒径への影響がほどんとなく、変態後に粗大な加工α粒が形成され、最終製品での{411}結晶方位への集積とは無関係となる。
最終的なα域での圧延の直前のAr温度以上Ar+20℃以下の温度域での圧延率が10%未満となると相変態前の加工γ粒への歪の蓄積が不足し、粗大な加工α粒が形成され、最終製品での{411}結晶方位への集積が起こりづらくなる。Ar温度以上Ar+20℃以下の温度域での圧延率は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上とする。圧下率の合計の上限は規定しないが、40%超えとすることは圧延機の負荷が高くなりすぎることから、40%を上限とすることが好ましい。
最終的なα域での仕上げ圧延温度FT以上Ar温度未満の温度域での圧下率の合計が15%未満となると加工γ粒から相変態した後の加工α粒にα域での加工歪を十分に蓄積することができず、最終製品での{411}結晶方位への集積が起こりづらくなる。仕上げ圧延温度FT以上Ar温度未満の温度域での圧下率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上とする。圧下率の合計の上限は規定しないが、40%超えとすることは圧延機の負荷が高くなりすぎることから、40%を上限とすることが好ましい。
本実施形態では、熱間圧延における圧下率RR0は、次のとおり定義される。
圧下率RR0(%)=(1-熱間圧延での該当温度域での圧延後の板厚/熱間圧延での該当温度域での圧延前の板厚)×100
上記のα域での圧延の下限温度については特に限定するものではないが、圧延温度が低下すると圧延機の負荷が高くなることから、600℃以上とすることが好ましい。
なお、上記の圧延温度は、ロール接触および冷却潤滑剤による温度低下と加工による温度上昇が競合し、圧延パスの加工途中で規定の判定温度(Ar温度、またはAr+20℃)の上下で変動することが考えられる。本実施形態ではこのような状況を次のように処理する。
圧延パスにおいて、入側の温度をTPI(℃)、入側の板厚をTCI(mm)、出側の温度をTPO(℃)、出側の板厚をTCO(mm)とし、さらに圧延パス中の板厚変化と温度変化は単純に直線的な関係を有したまま変化すると仮定する。つまり、圧延パス中の特定時点での板厚をTCa(mm)、温度をTPa(℃)とすると、圧延パス中は以下の式が常に成り立つものと仮定する。
(TCa-TCO)/(TCI-TCO)=(TPa-TPO)/(TPI-TPO)
これにより、本製造法における規定の判定温度(Ar温度、またはAr+20℃)に圧延パス中に到達した場合でも、その時点での板厚を決定することが可能となる。
すなわち圧延パス途中に特定の温度TPa(℃)に到達した時点での板厚TCa(mm)は、
TCa=TCO+(TCI-TCO)×(TPa-TPO)/(TPI-TPO)
により得ることができる。
ここで、注意すべきは、上記仮定は圧延パスの出側温度が入側温度よりも高くなることも想定したものとしていることである。すなわち当該パスの入側温度TPIがAr温度未満であった鋼板が当該パス内での加工発熱により温度上昇してAr温度以上の出側温度TPOで排出される状況においても、当該パス内の後半で本開示に必要なγ域(Ar温度以上Ar+20℃以下の温度域)での圧延が施されたと判断する。
また、Ar温度を挟んだ温度の変動が複数パスに亘って生じることも考えられる。このような場合、本実施形態においては、α域の圧延条件については、「α域での最終の圧延加工」を対象とする。また、γ域の圧延条件については、「上記『α域での最終の圧延加工』」の直前のγ域での圧延加工」を対象とする。つまり、γ域で熱間圧延を開始した後の圧延温度が、γ域(熱延開始)⇒α域1⇒γ域1⇒α域2⇒γ域2⇒α域3(熱延終了)のように変動した場合、α域3とγ域2が本実施形態の条件に合致すれば、本開示鋼板を得ることが可能である。
各パスでの圧延温度は、例えば対象パスの圧下を行う圧延スタンドの入側または出側に設置された測温計により、測温可能である。また、温度域が本開示範囲内となる圧延スタンドの入側および出側のすべてに測温計を設置する必要はなく、その前後に適宜設置された測温計の実績温度から計算により途中の圧延スタンドでの圧延温度を計算しても良い。むしろ、現状の熱間圧延では、このような計算による温度を用いた制御が行われることが通常である。
なお、仕上げ圧延温度FTは、Ar温度未満とすることが好ましい。
その後、熱間圧延板焼鈍は行わずに、熱間圧延鋼板を巻き取る。巻き取り時の温度は、450℃超650℃以下であることが好ましい。熱間圧延後の熱間圧延鋼板を450℃超650℃以下で巻き取ることで、α域熱延によって導入されたひずみが適度に緩和されることで冷延前の結晶組織を微細化することができ、中間焼鈍時の再結晶挙動に影響を及ぼし、中間焼鈍板段階で{100}結晶方位よりも{411}結晶方位の発達が促進される。バルジングの際に磁気特性の優れた{411}結晶方位を富化出来るという効果が得られる。巻き取り時の温度は、500℃~600℃がより好ましく、520℃~580℃であることがさらに好ましい。
(冷間圧延工程)
冷間圧延工程では、冷却工程後の熱間圧延鋼板に対して冷間圧延を行って冷間圧延鋼板を得る。具体的には、熱間圧延後、酸洗を経て、熱間圧延鋼板に対して冷間圧延を行う。冷間圧延では圧下率を80%~92%とすることが好ましい。なお、圧下率が高いほどその後のバルジングによって{411}結晶方位を有する結晶粒が成長しやすくなるが、板形状が劣化し、操業が困難になりやすくなる。
また、冷間圧延を行う際に、圧延形状比が5.0以下となるような圧延を1パス以上行うことが好ましい。圧延形状比を5.0以下とすることでせん断ひずみが付加され、冷間圧延中の{411}結晶方位の形成が促される。この観点からは4.5以下とすることが好ましく、4.0以下にすることが更に好ましい。圧延形状比の下限は特に定めるものではないが、1.0未満に制御することは困難なことから、これを下限とすることが好ましい。
なお、圧延形状比は、以下の(a)式により定義される。
Γ=ld/hm ・・・(a)
但し、上記(a)式中の各記号は、以下により定義される。
Γ:圧延形状比
ld:投影接触弧長
hm:平均板厚
また、上記ldおよびhmは、以下の(b)および(c)式から算出される。
ld=√(R×(H-h)) ・・・(b)
hm=(H+2h)/3 ・・・(c)
但し、上記(b)式及び(c)式中の各記号は、以下により定義される。
R:ロール半径
H:入側板厚(当該パスの圧延機に入る前の板厚)
h:出側板厚(当該パスの圧延機から出たときの板厚)
(中間焼鈍工程)
中間焼鈍工程では、冷間圧延鋼板に対して中間焼鈍を行う。本実施形態では、中間焼鈍の温度を900℃未満に制御する。中間焼鈍の温度は、800℃以下とすることが好ましく、750℃以下とすることがより好ましい。中間焼鈍の温度が900℃以上では、結晶粒の過度な粒成長に伴い、後述するスキンパス圧延および最終焼鈍を施しても{411}結晶方位への集積が進行しにくくなる。また、中間焼鈍の温度が低過ぎ十分な再結晶が生じないと、後述するスキンパス圧延および最終焼鈍を施しても{411}結晶方位を有する結晶粒の成長が阻害される。したがって、中間焼鈍の温度は600℃以上とすることが好ましく、700℃以上とすることがより好ましい。ここで説明する温度は連続焼鈍を前提としたものであり、中間焼鈍の時間は、5~120秒を好ましい範囲とする。この焼鈍温度域および焼鈍時間範囲は、冷間圧延工程までに少なからず生成している{411}結晶粒がバルジングにより適度に成長し、後述するスキンパス圧延および最終焼鈍を施すことで歪誘起粒成長を生じやすい状態にするために好適な条件になっていると考えられる。
(スキンパス圧延工程)
スキンパス圧延工程では、前記中間焼鈍工程後の鋼板に対してスキンパス圧延を行う。上述したようにバルジングによって{411}結晶方位が富化した状態でスキンパス圧延および焼鈍を行うと、{411}結晶方位を有する結晶粒がさらに成長する。これはスキンパス圧延により、{411}結晶方位を有する結晶粒には歪がたまりにくく、{111}<112>や{111}<110>などのγ-fiberと呼ばれる{111}面方位を有する方位群に属する結晶粒には歪がたまりやすい性質があり、その後の焼鈍で歪の少ない{411}結晶方位を有する結晶粒が歪の差を駆動力にこれらのγ-fiber方位粒を蚕食するためである。歪差を駆動力にして発生するこの蚕食現象は歪誘起粒界移動(以下、SIBM)と呼ばれる。スキンパス圧延の圧下率は5%~25%未満とすることが好ましい。圧下率が5%未満では歪量が少なすぎるため、この後の焼鈍で歪誘起粒界移動(以下、SIBM)が起きなくなり、{411}結晶方位を有する結晶粒は大きくならない。一方、圧下率が25%以上では歪量が多くなり過ぎ、γ-fiber方位を有する結晶粒の中から新しい結晶粒が生まれる再結晶核生成(以下Nucleation)が発生する。このNucleationではほとんどの生まれてくる粒がγ-fiber方位を有する結晶粒のため、磁気特性が悪くなる。板面内の平均磁束密度を高くかつ異方性を小さくするという観点からは、スキンパス圧延の圧下率は5%~15%とすることがより好ましい。
なお、無方向性電磁鋼板において、前述した歪の分布を有するようにする場合には、スキンパス圧延時の圧下率(%)をRR2とした場合に、5<RR2<25を満たすように冷間圧延およびスキンパス圧延の圧下率を調整することが好ましい。
ここで、冷間圧延における圧下率RR1(%)は、次のとおり定義される。
圧下率RR1(%)=(1-冷間圧延での最終パスの圧延後の板厚/冷間圧延での1パス目の圧延前の板厚)×100
また、スキンパス圧延における圧下率RR2(%)は、次のとおり定義される。
圧下率RR2(%)=(1-スキンパス圧延での最終パスの圧延後の板厚/スキンパス圧延での1パス目の圧延前の板厚)×100
(最終焼鈍工程)
最終焼鈍工程では、前記スキンパス圧延後の鋼板に対して最終焼鈍を行う。この最終焼鈍により、スキンパス圧延による結晶方位毎の歪差を駆動力にしたSIBMが生じ、本開示が目的とする{411}結晶方位を有する結晶粒が優先的に成長し、鋼板の{411}結晶方位集積度が上昇する。この焼鈍条件は当業者であればSIBMの発生を確認しつつ適宜設定することが可能であり、特に限定するものではないが、一例として、連続焼鈍であれば700~950℃で1~100秒、バッチ焼鈍であれば650~850℃で0.5~2時間の焼鈍を挙げることができる。
以上のように本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造することができる。ただし、この製造方法は、本実施形態の無方向性電磁鋼板を製造する方法の一例であり、製造方法を限定するものではない。
以上のように本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造することができる。
なお、最終焼鈍工程は、スキンパス圧延後に例えば鋼板製造メーカーにおいて鋼板コイルの状態で、または切板として実施することが可能である。または、スキンパス圧延後、最終焼鈍工程を行わずに出荷し、モータ製造メーカーで鋼板をモータコアとしての所定の形状に加工し、積層した後、コア形状で最終焼鈍を実施することも可能である。後者の場合は、一般的にモータ製造メーカーでモータコアに対して行われる「歪取焼鈍」を兼ねて実施できる。
なお、最終焼鈍は鋼板製造メーカーとモータ製造メーカーの両方で、2回以上の最終焼鈍として実施しても良い。スキンパス圧延後の最終焼鈍を調整することで、歪の残存量、結晶粒径と{411}方位の発達の程度を調整できる。歪の残量量が多い、または結晶粒径が比較的小さい状態の鋼板は強度が高く、特にロータコア用の無方向性電磁鋼板として使用することで、コアの回転に伴う遠心力による変形を抑制するためにも好適となる。一方で、十分に歪を解放し結晶粒径を粗大とした鋼板は、特にステータコア用の無方向性電磁鋼板として使用することで、鉄損を抑制するために好適となる。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板からなる鉄鋼部材は、例えば回転電機の鉄心(モータコア)に適用される。この場合、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板から個々の平板状薄板を切り出し、これらの平板状薄板を適宜積層することにより、回転電機に用いられる鉄心が作製される。この鉄心は、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板が適用されているために鉄損が低く抑えられており、優れたトルクを有する回転電機が実現する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板からなる鉄鋼部材は、回転電機の鉄心以外の製品、例えばリニアモータや静止機(リアクトルや変圧器)等の鉄心にも適用することができる。
次に、本開示の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、実施例を示しながら具体的に説明する。以下に示す実施例は、本開示の実施形態に係る無方向性電磁鋼板のあくまでも一例にすぎず、本開示に係る無方向性電磁鋼板が下記の例に限定されるものではない。
溶鋼を鋳造することにより、以下の表1に示す成分のインゴットを作製した。なお、表1の「Co等」は、Co、Pt、Pb、Auの各含有量を示す。その後、作製したインゴットに対して、表1に示す条件で、熱間圧延して熱間圧延板を得た。次に、表1に示す条件で、冷間圧延して冷間圧延板を得た。
上記冷間圧延板を、無酸化雰囲気中で表2に示す温度で中間焼鈍を30秒行い、次いで、表2に示す圧下率で2回目の冷間圧延(スキンパス圧延)を行った。
次に、集合組織を調査するため、鋼板の一部を切除し、その切除した試験片を7/8の厚みに減厚加工し、その加工面(鋼板を鋼板の板面側から1/8研磨した研磨面)について上述の要領でEBSD観察(Step間隔:0.3μm)を行った。EBSD観察により、表3に示す種類の方位粒の面積および平均KAM値を求めた。
また、鋼板に最終焼鈍として、800℃で2時間の焼鈍を行った。最終焼鈍後の鋼板から、測定試料として、55mm角の試料片を採取した。この際に、試料片の一辺が圧延方向と平行になる試料と、圧延方向に対し45度傾きを持つ試料を採取した。また、試料採取はせん断機を用いて実施した。
次に、集合組織を調査するため、鋼板の一部を切除し、その切除した試験片を7/8の厚みに減厚加工し、その加工面(鋼板を鋼板の板面側から1/8研磨した研磨面)について上述の要領でEBSD観察(Step間隔:2.0μm)を行った。EBSD観察により、表3に示す種類の方位粒の面積および平均KAM値を求めた。
そして、圧延方向における磁束密度B50L、圧延方向に対して45°方向の磁束密度B50D、圧延方向に対して90°方向の磁束密度B50CをJISC2556(2015)に準じて測定した。測定結果を表3に示す。なお、表3に示す「平均値」は、磁束密度B50の全周平均値(圧延方向、圧延方向に対して90°方向、圧延方向に対して45°(135°)の方向の磁束密度B50平均値)である。
また、圧延性について、次の通り評価した。冷延板コイルの最外周長手方向先端トップ部)から長手方向に10m位置、コイルの最外周長手方向先端からコイル長手方向全長に対して1/2長さ位置(ミドル部)、コイルの最内周長手方向先端(ボトム部)から長手方向に10m位置を中心とする、長手方向長さ1mの領域において、コイルの板幅方向両端面において長さ1cm以上の割れが合計2ヶ所以上生じている場合は「N」、それ以外を「Y」とした。
なお、本実施例では冷延板コイルを圧延性の評価対象としたが、冷延板コイルから切り出された鋼板を評価する場合は、鋼板長手方向(圧延方向)における3か所以上の異なる位置において、上記と同様に板幅方向両側端面を観察してもよい。例えば、鋼板の長手方向長さに対して約1/10、1/2、9/10位置を中心とする、鋼板の長手方向全長の約1/10の範囲で観察すればよく、鋼板の長手方向全長は1m以上とすればよい。
なお、No.12の鋼板については、試験片を1/2の厚みに減厚加工し、その加工面について上述の要領でEBSD観察を行って、表4に示す種類の方位粒の面積および平均KAM値を求めた。その結果を、磁気特性及び圧延性と共に表4に示す。
本開示によれば、板面内異方性が小さく全周平均(全方向平均)で優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を提供できるため、産業上極めて有用である。
なお、日本国特許出願第2023-001935号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.0100%以下、
    Si:1.50%~4.00%、
    sol.Al:0.0001%~1.0%、
    S :0.0100%以下、
    N :0.0100%以下、
    Mn:0.10%以上、
    Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
    Mo:0.0%~2.5%未満、
    Cr:0.0%~2.5%未満、
    Ti:0.000%~0.005%、
    Nb:0.000%~0.005%、
    Sn:0.000%~0.400%、
    Sb:0.000%~0.400%、
    P :0.000%~0.400%、及び
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
    質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStra、{411}方位粒の平均KAM値をK411、前記テイラー因子Mが2.9超となる方位粒の平均KAM値をKtylとした場合に、以下の(3)式及び(4)式~(7)式を満たし、
    前記平均KAM値は、KAM値へ参入する限度を隣接ピクセルとの方位差5°以下とし、最隣接の測定点間の方位差を計算した値の平均値とする無方向性電磁鋼板。
    Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
    M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
    411/S100>1.00 ・・・(3)
    0.20≦Styl/Stot≦0.85 ・・・(4)
    0.05≦S411/Stot≦0.80 ・・・(5)
    411/Stra≧0.50 ・・・(6)
    411/Ktyl≦0.990 ・・・(7)
    ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
  2. 質量%で、
    C :0.0100%以下、
    Si:1.50%~4.00%、
    sol.Al:0.0001%~1.0%、
    S :0.0100%以下、
    N :0.0100%以下、
    Mn:0.10%以上、
    Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
    Mo:0.0%~2.5%未満、
    Cr:0.0%~2.5%未満、
    Ti:0.000%~0.005%、
    Nb:0.000%~0.005%、
    Sn:0.000%~0.400%、
    Sb:0.000%~0.400%、
    P :0.000%~0.400%、及び
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
    質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStra、{411}方位粒の平均KAM値をK411、前記テイラー因子Mが2.9超となる方位粒の平均KAM値をKtylとした場合に、以下の(3)式及び(4)式~(7)式を満たし
    前記平均KAM値は、KAM値へ参入する限度を隣接ピクセルとの方位差5°以下とし、最隣接の測定点間の方位差を計算した値の平均値とする無方向性電磁鋼板。
    Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
    M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
    411/S100>1.00 ・・・(3)
    0.20≦Styl/Stot≦0.85 ・・・(4)
    0.05≦S411/Stot≦0.80 ・・・(5)
    411/Stra≧0.50 ・・・(6)
    411/Ktyl≦0.990 ・・・(7)
    ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
  3. 質量%で、
    C :0.0100%以下、
    Si:1.50%~4.00%、
    sol.Al:0.0001%~1.0%、
    S :0.0100%以下、
    N :0.0100%以下、
    Mn:0.10%以上、
    Mn、Ni、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
    Mo:0.0%~2.5%未満、
    Cr:0.0%~2.5%未満、
    Ti:0.000%~0.005%、
    Nb:0.000%~0.005%、
    Sn:0.000%~0.400%、
    Sb:0.000%~0.400%、
    P :0.000%~0.400%、及び
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
    質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStraとした場合に、以下の(8)式~(11)式を満たす無方向性電磁鋼板。
    Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×[sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
    M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
    411/S100>2.00 ・・・(8)
    tyl/Stot<0.55 ・・・(9)
    411/Stot>0.30 ・・・(10)
    411/Stra≧0.60 ・・・(11)
    ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
  4. 質量%で、
    C :0.0100%以下、
    Si:1.50%~4.00%、
    sol.Al:0.0001%~1.0%、
    S :0.0100%以下、
    N :0.0100%以下、
    Mn:0.10%以上、
    Mn、Ni、Co、Pt、Pb、Au、及びCuから選ばれる1種又は複数種:総計で2.50%未満、
    Mo:0.0%~2.5%未満、
    Cr:0.0%~2.5%未満、
    Ti:0.000%~0.005%、
    Nb:0.000%~0.005%、
    Sn:0.000%~0.400%、
    Sb:0.000%~0.400%、
    P :0.000%~0.400%、及び
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種又は複数種:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、
    質量%での、C含有量を[C]、Mo含有量を[Mo]、Cr含有量を[Cr]、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式で定めた変態温度Ar(℃)が750~1050℃であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    さらに、鋼板表面に平行な面でEBSDにより観察したときにおいて、全面積をStot、{411}方位粒の面積をS411、{100}方位粒の面積をS100、以下の(2)式に従うテイラー因子Mが2.9超となる方位粒の面積をStyl、前記テイラー因子Mが2.9以下となる方位粒の合計面積をStraとした場合に、以下の(8)式~(11)式を満たす無方向性電磁鋼板。
    Ar(℃)=1020-325×[C]+33×[Si]+287×[P]+80×
    [sol.Al]-120×([Mn]+[Mo]+[Cu])-46×([Cr]+[Ni]) ・・・(1)
    M=(cosφ×cosλ)-1 ・・・(2)
    411/S100>2.00 ・・・(8)
    tyl/Stot<0.55 ・・・(9)
    411/Stot>0.30 ・・・(10)
    411/Stra≧0.60 ・・・(11)
    ここで、(2)式中のφは応力ベクトルと結晶のすべり方向ベクトルのなす角を表し、λは応力ベクトルと結晶のすべり面の法線ベクトルのなす角を表す。
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