JP3835169B2 - ホスホナイト化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
技術分野
ビフェニレンジホスホナイト化合物は、有機高分子材料の成型加工時の酸化劣化や着色を防止したり、耐候性を向上するなどの効果を有することから、有機高分子材料の高付加価値化に寄与し、その有用性が重要視されている。本発明は、有機高分子材料の安定剤として有用な一般式(I’):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。)により表されるホスフィノビフェニレン基(以下、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基ともいう)を有するホスホナイト化合物の製造方法および当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際の当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法に関する。
背景技術
従来、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を製造する方法として、(A)塩化アルミニウムとビフェニルと三塩化リンの反応物からオキシ塩化リンを錯形成剤として塩化アルミニウムと錯体を形成させ、この錯体を濾過・除去してハロゲン化ホスフィンを単離し、ひきつづき、トリエチルアミンの存在下に2,4−ジ第3級ブチルフェノールなどのフェノール化合物と反応する方法(特公昭50−35096号公報)、(B)塩化アルミニウムとビフェニルと三塩化リンの反応物より過剰の三塩化リンを留去し、得られたハロゲン化ホスフィンの塩化アルミニウム錯体をピリジンと前記したようなフェノール化合物の混合物に滴下して反応する方法(特開平2−270892号公報)、(C)4,4’−ジハロビフェニルとマグネシウムからグリニヤール化合物とし、亜リン酸−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステル−クロライドと反応する方法(特開平2−221290号公報)及び(D)塩化アルミニウムの存在下、ビフェニルと三塩化リンを反応させて得られる反応物に錯形成剤としてジエチルエーテル等のエーテル類を加え、次いで得られた混合物と2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール等を脱酸剤の存在下に反応させる方法(特開平8−253491号公報)などが知られている。
前記(A)の製造方法においては、ハロゲン化ホスフィンを単離するためにオキシ塩化リンを錯形成剤として使用し、生成するオキシ塩化リン−塩化アルミニウム錯体を濾過・分離する必要があるが、この錯体は吸湿性を有し、濾過性も良好とは言えない。また、この錯体からオキシ塩化リンの回収は困難であり、方法およびコスト両面に問題を抱えていて工業的に有利な製造方法とは言いがたい。さらに、ハロゲン化ホスフィンは労働安全衛生法で変異原性陽性の化合物として指定されており、人体に対する安全性を考える上でも単離操作を行うことには問題がある。
また、前記(B)の製造方法では、錯形成をしないで塩化アルミニウムの存在下に三塩化リンを留去することから、さらに反応が進行してポリ塩化ホスフィンを生成するという欠点を有する。この結果、留去条件によって目的とするホスホナイト化合物の組成が一定しないという問題が生じる。また、記載されている反応濃縮物は常温では非常に高粘度のガラス状化合物となり、加熱しなければ滴下するのに十分な流動性を得ることはできない。しかも、この方法では第1段階のピリジンと塩化アルミニウムの錯形成時の発熱と第2段階のピリジンによる脱酸反応の発熱が同時に起こることになり、大量に製造する場合には、この熱を取り除くための大型冷却装置などの設備を必要とし、操作性および設備コスト両面において有利な工業的製造とは言いがたい。さらに、錯体分離後に反応物中に残るピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を除去するために、−10℃で低温濾過することが記載されている。ピリジンと塩化アルミニウムとの錯体は吸湿性の粘稠な物質であり、これを工業的に濾過操作を行うことはきわめて困難である。そして、特開平5−230282号公報に記載されているように、塩化アルミニウムの除去が不十分であると、目的とする化合物は容易に加水分解するという致命的な欠点を有することになる。
また、前記(C)の製造方法においては、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む4,4’−ジハロビフェニルを出発原料として使用している点に大きな問題を抱えている。さらに、グリニヤール化合物の製造に大量のテトラヒドロフラン溶媒を必要とし、別途に亜リン酸−トリス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステルが生成しない条件で選択的に亜リン酸−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステル−クロライドを生成させなければならない欠点を有しており、満足できる方法とは言えない。
また、前記(D)の製造方法においては、錯形成剤のエーテル類と脱酸剤を回収する際、分離するのに手間がかかり、工業的に有利な方法とは言えない。
また、前記(A)〜(D)の製造方法のいずれにおいても、得られる製品中には、未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールや2,4−ジ第3級ブチルフェノール化合物などのフェノール化合物が比較的多く含まれ、これが、製品の経時着色や性能低下(安定化作用の低下)等の原因となる。未反応のフェノール化合物を最終的に蒸留によって除去することが考えられるが、未反応のフェノール化合物を蒸留により取り除こうとすると、減圧下、150℃以上に加熱しなければならず、蒸留中に目的のホスホナイト化合物の一部が分解してしまう。よって、目的のホスホナイト化合物を熱分解せず、しかも、未反応のフェノール化合物を不純物として含むことのない目的物を得る方法が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前記一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を、安全に、高品質かつ高収率に製造し得る方法および当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際の当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法を提供することを課題としている。
発明の開示
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、以下の▲1▼〜▲4▼の知見を得た。
すなわち、▲1▼塩化アルミニウムの存在下でビフェニルと過剰量の三塩化リンとを反応させて得た反応物にピリジン類を加えてピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を形成した後、加熱(例えば、60〜100℃に加熱)して過剰の三塩化リンを留去すると、ピリジン類の添加及び加熱による反応物の粘度低下(反応物の流動性向上)により、三塩化リンを効率よく留去でき、三塩化リンの残存量を極めて少なくすることができる。しかも、塩化アルミニウムは錯体形成により失活していることから、三塩化リンを留去する際に、さらに反応が進行して生成するポリ塩化ホスフィンの生成が抑制できること。
▲2▼上記三塩化リンを留去した反応物に、例えば、2,4−ジ第3級ブチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−6−メチルフェノール等のフェノール化合物等を添加し、次にピリジン等のアミンからなる塩基を脱酸剤として滴下して目的の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を合成することにより、前記ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体形成反応(発熱反応)と、目的の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物の生成反応(脱酸剤としての塩基を滴下して起こる発熱反応)とが分離され、発熱のコントロールも非常に容易になること。また、人体に対して刺激性の高いビフェニルクロロホスフィンを反応物から取り出す必要なく、一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を合成でき、作業者の安全性も確保できること。
▲3▼前記▲2▼の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物の合成後の反応物からピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩は分液操作で分離除去でき、また、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩が除去されたホスホナイト化合物を含む溶液を例えばアルカリ金属の水酸化物等のアルカリまたはその塩で処理することにより、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去でき、この後、溶媒を除去して得られるホスホナイト化合物(ガラス状固形物)の加水分解を防止できること。
▲4▼合成後のホスホナイト化合物を含む溶液に立体障害性アミンを添加することにより、ホスホナイト化合物の熱安定性が向上して、当該溶液の充分な加熱濃縮が可能となり、溶媒のみならず残存するフェノール化合物も効率良く除去できること。
本発明は上記▲1▼〜▲4▼の知見に基づき完成させたものであり、その特徴は以下の通りである。
(1)ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた式(II’):
により表される基を有するホスフィン化合物(以下、ホスフィン化合物(II’)ともいう)を含む反応物と一般式(III’):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。)により表されるフェノール化合物(以下、一般式(III’)のフェノール化合物ともいう。)を脱酸剤としての塩基の存在下に反応させた後、前記塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去することを特徴とする一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(以下、ホスホナイト化合物(I’)ともいう。)の製造方法。
(2)ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式(II):
ン化合物(以下、一般式(II)のホスフィン化合物ともいう。)を含む反応物と一般式(III):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)により表されるフェノール化合物(以下、一般式(III)のフェノール化合物ともいう。)を脱酸剤としての塩基の存在下に反応させた後、前記塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去することを特徴とする一般式(I):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、L1は水素原子、式:
(式中、Rは前記と同義。)、式:
(式中、Rは前記と同義)、または、式:
(式中、Rは前記と同義)を示す。)により表される少なくとも1種のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(以下、一般式(I)のホスホナイト化合物ともいう。)を製造する方法。
(3)一般式(I)のホスホナイト化合物が、一般式(Ia):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)により表される化合物(以下、一般式(Ia)の化合物ともいう。)を含み、かつ、
一般式(Ib):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、L2は水素原子、式:
(式中、Rは前記と同義)、または、式:
(式中、Rは前記と同義)を示す。)により表される化合物(以下、一般式(Ib)の化合物ともいう)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい上記(2)記載のホスホナイト化合物の製造方法。
(4)塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去後、得られた粗生成物をアルカリまたはその塩にて処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記粗生成物のアルカリまたはその塩による処理の後、未反応のフェノール化合物を除去する上記(4)記載の方法。
(6)塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去後、得られた粗生成物をアルカリまたはその塩にて処理し、ついで立体障害性アミンにて処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(7)前記粗生成物の立体障害性アミンによる処理の後、未反応のフェノール化合物を除去する上記(6)記載の方法。
(8)ホスホナイト化合物(I’)を含む溶液または一般式(I)のホスホナイト化合物を含む溶液を150℃以上で加熱する際、立体障害性アミンを存在させる該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法。
本発明は、まず、第1段階で前記式(II’)により表される基を有するホスフィン化合物(ホスフィン化合物(II’))を合成する。
塩化アルミニウムの存在下、ビフェニルと過剰の三塩化リンを1〜8時間程度反応させる。三塩化リンはビフェニル1モル当たり3〜8倍モル、好ましくは4〜6倍モル使用され、塩化アルミニウムは、ビフェニル1モル当たり1.6〜3.0倍モル、好ましくは1.8〜2.6倍モル使用される。塩化アルミニウムの仕込み割合と反応時間を操作することで、生成するホスフィン化合物を含む反応物の組成を調整することができる。本発明の目的とするホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(ホスホナイト化合物(I’))は、それらのうちでも一般式(I)のホスホナイト化合物が有機高分子材料の安定剤としての効果に優れ、また、当該一般式(I)のホスホナイト化合物のうちでも一般式(Ia)のホスホナイト化合物が特に良好な安定化作用を示す。よって、好ましくは一般式(II)のホスフィン化合物、特に、式中のXで示される置換基が−PCl2からなるものが多く生成するように反応を行う。かかる反応では、塩化水素ガスが生成するが、これは、例えば、アルカリ水溶液に吸着させる等の手段に付すことによって除去される。
ついで、上記反応後の反応物にピリジン類を錯形成剤として添加して、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を形成する。「ピリジン類」とは、ピリジンをはじめピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、ピリダジン、ピリミジン、シンノリン、ブテリジンなどのπ欠如芳香族N−複素環式化合物を含んでいる。該ピリジン類は次工程(第2段階)の当該ホスフィン化合物を含む反応物と一般式(III’)「例えば、一般式(III)」のフェノール化合物との反応工程で脱酸剤として用いる塩基と同じ化合物を用いるのが、作業性および回収して再利用する点で有利である。
該ピリジン類の使用比率は塩化アルミニウムに対して0.8〜1.5当量、好ましくは0.9〜1.1当量の範囲とする。また、錯形成は40℃から三塩化リンの沸点までの温度範囲で行うのが好ましい。錯形成後、過剰の三塩化リンを除去する。これは、通常、50〜100℃、好ましくは60〜90℃の常圧または減圧下で留去することにより行う。
かくしてホスフィン化合物(II’)を含む反応物が得られる。当該反応物は一般式(Ia)の化合物、または、さらに一般式(Ib)の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよいものである。
第2段階では、かようにして得られたホスフィン化合物(II’)を含む反応物に、一般式(III’)のフェノール化合物を適当な溶媒に溶解した溶液として加え、塩基を脱酸剤として、冷却下または室温から用いる溶媒の沸点までの温度で30分から24時間反応させることにより、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物が合成される。
一般式(III’)のフェノール化合物における式中R1、R2で示される炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、第3級ブチル基等が挙げられ、好ましくは第3級ブチル基である。すなわち、特に良好な安定化作用を示す一般式(Ia)のホスホナイト化合物を得る観点から、2,4−ジ第3級ブチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−6−メチルフェノール等(一般式(III)の化合物)が好適に使用される。かかるフェノール化合物を溶解する溶媒としては、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロトルエン、ヘキサン、ヘプタン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等が好適であり、特に好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンである。脱酸剤に用いる塩基としては、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタリンおよび1,8−ジアザビシクロ〔5,4.0〕ウンデカ−7−エンなどのアミンが好適であり、なかでもピリジンが好ましい。
フェノール化合物はビフェニル1モル当たり通常3〜5倍モル、好ましくは3.5〜4.5倍モル使用され、脱酸剤としての塩基はフェノール化合物1モル当たり、通常0.5〜2倍モル、好ましくは0.8〜1.5倍モル使用される。また、冷却下とは概ね20℃以下であり、通常5℃〜15℃の範囲である。
なお、一般式(I)のホスホナイト化合物を合成する場合(すなわち、一般式(II)のホスフィン化合物と一般式(III)のフェノール化合物とから目的のホスホナイト化合物を合成する場合)、一般式(Ia)のホスホナイト化合物に加えて一般式(Ib)のホスホナイト化合物が少量生成するが、一般式(Ib)のホスホナイト化合物の有機高分子材料の安定剤としての効果は一般式(Ia)のホスホナイト化合物よりは若干劣るものの良好であり、これらの混合物は優れた安定化作用を示す。
目的のホスホナイト化合物が生成した後の反応物中に含まれる塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体は分液操作により除去される。分液操作は、例えば次のようにして行われる。即ち、混合物を、70〜110℃に加熱すると、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩は溶液状態になって、これとホスホナイト化合物を含む有機層(溶媒層)とが二層に分離し、分液操作によってこの二液を分離する。
分液操作後の目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に残存するピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体は、アルカリまたはその塩で処理することにより確実に除去することができる。例えば、目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に、アルカリまたはその塩をホスホナイト化合物に対して5.1〜50重量%、好ましくは10〜50重量%添加し、温度0℃〜50℃の範囲で30分〜5時間攪拌した後、かかる攪拌後の溶液からアルカリ層と目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層とを分液することで、残存するピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体が除去される。アルカリまたはその塩としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩、または、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはカルボン酸塩が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムが挙げられ、アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムなどが挙げられ、アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、アルカリ金属のカルボン酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられ、アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属のカルボン酸塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物を用いるのが好ましく、特に水酸化ナトリウムを使用するのが工業的にも有利である。これらのアルカリまたはその塩は特に20〜50重量%の水溶液として使用するのが操作性の点で有利である。
かくして、塩基の塩酸塩、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体が除去された一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を含む溶媒層から、溶媒および未反応のフェノール化合物を除去することにより、目的のホスホナイト化合物がガラス状固形物として取得される。通常、溶媒および未反応のフェノール化合物の除去は減圧下に溶媒および未反応のフェノール化合物を留去することにより行われる。
なお、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去した後の目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に立体障害性アミンを添加してから、溶媒および未反応のフェノール化合物を留去し、目的のホスホナイト化合物を取得するのが好ましい。
立体障害性アミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル環または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル環をを有する化合物が好ましく、当該化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1−アクリロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、ポリ{(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸縮合物、塩化シアヌル/第3級オクチルアミン/1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン縮合物などが挙げられる。これらのうち、特に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ{〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}等が好ましい。立体障害性アミンの添加量は、ガラス状固形物中の目的のホスホナイト化合物に対する立体障害性アミンの量が0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%となるようにするのがよい。
本発明方法によれば、最終的に目的のホスホナイト化合物を高純度のガラス状固形物として取得することができる。すなわち、例えば、一般式(I)のホスホナイト化合物を得る場合、一般式(I)のホスホナイト化合物の含量(一般式(Ia)の化合物の含量、または、一般式(Ia)の化合物と一般式(Ib)の化合物の総含量)が85%以上、好ましくは90%以上の高純度のガラス状固形物が得られる。ガラス状固形物はさらに再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等の常法によって分離精製することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例、実験例および比較例により詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム69.3gおよび三塩化リン109gを1リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス9.9g(理論値の67.8%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン41.1gを滴下したのち、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール176.4gをトルエン327gに溶解した液を加え、続いてピリジン63.3gを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置したのち、生成したピリジンの塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層476.8gを得た。この溶液を減圧下に溶媒を留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物201.2gを得た。収率92%。融点96〜101℃。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー Shimadzu LC−5A/TSKgel(以下、GPCと略す)により測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの純度は90%であった。
比較例1
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム69.3gおよび三塩化リン105gを1リットルのフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で3.5時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス10.2g(理論値の68%)が発生した。ついで過剰の三塩化リンを55℃で減圧下に留去して赤褐色油状物146.3gを得た。1リットルフラスコにトルエン419g、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチル−フェノール176.7gおよびピリジン125.7gを仕込み、これに赤褐色油状物146.3gを1時間で滴下した。ついで80℃で4時間加熱還流したのち、80℃で塩化アルミニウム層を分離した。上層のトルエン層を−10℃まで冷却して濾過した。濾過液を濃縮して黄色ガラス状固形物189.9gを得た。収率78%。融点58〜65℃。GPCにより測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの純度は66%であった。
実施例2
ビフェニル92.5g、塩化アルミニウム152gおよび三塩化リン494.3gを5リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4.5時間加熱還流を行った。このとき、塩化水素ガス29.1g(理論値の70.1%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン99.2gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール475.8gをトルエン982.5gに溶解した液を注加し続いてピリジン161.8gを約30分で滴下した後、温度100℃で3時間加熱した。この反応液は80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリシンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層1431gを得た。このようにして得たトルエン層1431gのうち358gに35%水酸化ナトリウム水90gを加えて室温で1時間激しく撹拌した後、分液することによってアルカリ層とトルエン層を分離した。ついでトルエン層を濾過して溶媒を減圧下に留去し、黄色ガラス状固形物141gを得た。収率86%。融点78〜82℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにて分析したとろ、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量78%)、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ビス(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ホスフィン、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級プチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを含有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は95%であった。
比較例2
実施例2により得られたトルエン層1431gのうち90gを−10℃まで冷却後、濾過し、ついで減圧下に溶媒を留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物34.8gを得た。収率83%。融点75〜80℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにて分析したところ、実施例2と同様の結果であった。
実験例1(加水分解に対する安定性試験)
実施例2および比較例2で得られたテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物と蒸留水をガラス瓶に入れ、密栓して100℃に加熱し、1時間および3時間後のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの含有量をGPCにより測定し、残存率を求めた。その結果は第1表の通りである。
(テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの初期含有量を100とした。)
この結果、水酸化ナトリウムにて処理すると経時的に安定なホスホナイト化合物が得られることが明らかになった。
実施例3
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム56.0gおよび三塩化リン164.8gを1リットルフラスコに仕込み、撹拝しながら74〜75℃で10時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス13.0g(理論値の89%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン31.6gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチルフェノール165.1gをトルエン327gに溶解した液を注加した。続いてピリジン60.1gを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層484gを得た。このトルエン層に35%水酸化ナトリウム水120gを加えて、室温で1時間激しく撹拌した後、アルカリ層とトルエン層を分離、濾過し減圧下に溶媒を留去し、黄色ガラス状固形物186.6gを得た。収率90%、融点95〜100℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにより分析したところ、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量75%)、(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ビス(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ホスフィン、(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを含有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は95%であった。
実験例2
実施例2で得られたテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(HALSとも表示する)を重量%で0.2%、0.4%および0.6%添加した試料ならびに未添加の試料を窒素雰囲気下160℃に加熱し、3時間および10時間後のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの含有量をGPCによって測定し、残存率を求めた。その結果は第2表の通りである。
(テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの初期含有量を100とした。)
上記の結果より、HALSを添加することにより、160℃においても分解が抑制されることが示されており、熱安定化効果を確認した。
実施例4
ビフェニル3.86kg、塩化アルミニウム6.30kgおよび三塩化リン22.65kgを100リットル反応器に仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス1.25kg(理論値の68.5%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン3.94kgを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール19.85kgをトルエン40.95kgに溶解した液を注加し、続いてピリジン6.93kgを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層30.9kgを得た。これに35%水酸化ナトリウム水15.0kgを加えて室温で2時間激しく撹拌した後、アルカリ層とトルエン層を分離し濾過してトルエン溶液59.11kgを得た。この溶液にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート50.0gを加え、減圧下に溶媒および未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物22kgを得た。収率80%、融点104〜112℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにより測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量75%)、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は96%であった。
実験例3
ビフェニル92.5g、塩化アルミニウム152gおよび三塩化リン494.3gを5リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4.5時間加熱還流を行った。このとき、塩化水素ガス31.1g(理論値の74.8%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン90.2gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール475.8gをトルエン982.5gに溶解した液を注加し続いてピリジン161.8gを約30分で滴下した後、温度100℃で3時間加熱した。この反応液は80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリシンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層1445gを得た。
このようにして得たトルエン層1445gに35%水酸化ナトリウム水360gを加えて室温で1時間激しく撹拌した後、分液することによってアルカリ層とトルエン層を分離した。ついでトルエン層を濾過してテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とするトルエン溶液1418gを得た。
実施例5
実験例3で得たトルエン溶液355gを0.5リットルフラスコに仕込み、これにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート0.33gを加え、窒素雰囲気中40〜130℃の温度で減圧下に残存のトルエンを留去した。続いて窒素雰囲気中160〜170℃の温度で減圧下に残存のトルエン及び未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去した。なお、濃縮途中1時間目、3時間目、5時間目のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよび2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの含有量をGPCによって測定した。
比較例3
実験例3で得たトルエン溶液355gを0.5リットルフラスコに仕込み、窒素雰囲気中40〜130℃の温度で減圧下に残存のトルエンを留去した。続いて窒素雰囲気中160〜170℃の温度で減圧下に残存のトルエン及び未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去した。なお、濃縮途中1時間目、3時間目、5時間目のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよび2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの含有量をGPCによって測定した。
上記実施例5と比較例3の結果が下記第3表である。
A:テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト
B:2,4−第3級ブチル−5−メチルフェノール
第3表から、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを添加したものは、濃縮時のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの熱分解を抑制し得るとともに、残存する2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの量も十分減少し得ることが分かる。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、前記一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を、安全に、高品質かつ高収率に製造することができる。また、当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際に当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止することができる。
本出願は、日本で出願された平成11年特許願第1505号を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
ビフェニレンジホスホナイト化合物は、有機高分子材料の成型加工時の酸化劣化や着色を防止したり、耐候性を向上するなどの効果を有することから、有機高分子材料の高付加価値化に寄与し、その有用性が重要視されている。本発明は、有機高分子材料の安定剤として有用な一般式(I’):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。)により表されるホスフィノビフェニレン基(以下、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基ともいう)を有するホスホナイト化合物の製造方法および当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際の当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法に関する。
背景技術
従来、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を製造する方法として、(A)塩化アルミニウムとビフェニルと三塩化リンの反応物からオキシ塩化リンを錯形成剤として塩化アルミニウムと錯体を形成させ、この錯体を濾過・除去してハロゲン化ホスフィンを単離し、ひきつづき、トリエチルアミンの存在下に2,4−ジ第3級ブチルフェノールなどのフェノール化合物と反応する方法(特公昭50−35096号公報)、(B)塩化アルミニウムとビフェニルと三塩化リンの反応物より過剰の三塩化リンを留去し、得られたハロゲン化ホスフィンの塩化アルミニウム錯体をピリジンと前記したようなフェノール化合物の混合物に滴下して反応する方法(特開平2−270892号公報)、(C)4,4’−ジハロビフェニルとマグネシウムからグリニヤール化合物とし、亜リン酸−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステル−クロライドと反応する方法(特開平2−221290号公報)及び(D)塩化アルミニウムの存在下、ビフェニルと三塩化リンを反応させて得られる反応物に錯形成剤としてジエチルエーテル等のエーテル類を加え、次いで得られた混合物と2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール等を脱酸剤の存在下に反応させる方法(特開平8−253491号公報)などが知られている。
前記(A)の製造方法においては、ハロゲン化ホスフィンを単離するためにオキシ塩化リンを錯形成剤として使用し、生成するオキシ塩化リン−塩化アルミニウム錯体を濾過・分離する必要があるが、この錯体は吸湿性を有し、濾過性も良好とは言えない。また、この錯体からオキシ塩化リンの回収は困難であり、方法およびコスト両面に問題を抱えていて工業的に有利な製造方法とは言いがたい。さらに、ハロゲン化ホスフィンは労働安全衛生法で変異原性陽性の化合物として指定されており、人体に対する安全性を考える上でも単離操作を行うことには問題がある。
また、前記(B)の製造方法では、錯形成をしないで塩化アルミニウムの存在下に三塩化リンを留去することから、さらに反応が進行してポリ塩化ホスフィンを生成するという欠点を有する。この結果、留去条件によって目的とするホスホナイト化合物の組成が一定しないという問題が生じる。また、記載されている反応濃縮物は常温では非常に高粘度のガラス状化合物となり、加熱しなければ滴下するのに十分な流動性を得ることはできない。しかも、この方法では第1段階のピリジンと塩化アルミニウムの錯形成時の発熱と第2段階のピリジンによる脱酸反応の発熱が同時に起こることになり、大量に製造する場合には、この熱を取り除くための大型冷却装置などの設備を必要とし、操作性および設備コスト両面において有利な工業的製造とは言いがたい。さらに、錯体分離後に反応物中に残るピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を除去するために、−10℃で低温濾過することが記載されている。ピリジンと塩化アルミニウムとの錯体は吸湿性の粘稠な物質であり、これを工業的に濾過操作を行うことはきわめて困難である。そして、特開平5−230282号公報に記載されているように、塩化アルミニウムの除去が不十分であると、目的とする化合物は容易に加水分解するという致命的な欠点を有することになる。
また、前記(C)の製造方法においては、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む4,4’−ジハロビフェニルを出発原料として使用している点に大きな問題を抱えている。さらに、グリニヤール化合物の製造に大量のテトラヒドロフラン溶媒を必要とし、別途に亜リン酸−トリス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステルが生成しない条件で選択的に亜リン酸−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)エステル−クロライドを生成させなければならない欠点を有しており、満足できる方法とは言えない。
また、前記(D)の製造方法においては、錯形成剤のエーテル類と脱酸剤を回収する際、分離するのに手間がかかり、工業的に有利な方法とは言えない。
また、前記(A)〜(D)の製造方法のいずれにおいても、得られる製品中には、未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールや2,4−ジ第3級ブチルフェノール化合物などのフェノール化合物が比較的多く含まれ、これが、製品の経時着色や性能低下(安定化作用の低下)等の原因となる。未反応のフェノール化合物を最終的に蒸留によって除去することが考えられるが、未反応のフェノール化合物を蒸留により取り除こうとすると、減圧下、150℃以上に加熱しなければならず、蒸留中に目的のホスホナイト化合物の一部が分解してしまう。よって、目的のホスホナイト化合物を熱分解せず、しかも、未反応のフェノール化合物を不純物として含むことのない目的物を得る方法が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前記一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を、安全に、高品質かつ高収率に製造し得る方法および当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際の当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法を提供することを課題としている。
発明の開示
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、以下の▲1▼〜▲4▼の知見を得た。
すなわち、▲1▼塩化アルミニウムの存在下でビフェニルと過剰量の三塩化リンとを反応させて得た反応物にピリジン類を加えてピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を形成した後、加熱(例えば、60〜100℃に加熱)して過剰の三塩化リンを留去すると、ピリジン類の添加及び加熱による反応物の粘度低下(反応物の流動性向上)により、三塩化リンを効率よく留去でき、三塩化リンの残存量を極めて少なくすることができる。しかも、塩化アルミニウムは錯体形成により失活していることから、三塩化リンを留去する際に、さらに反応が進行して生成するポリ塩化ホスフィンの生成が抑制できること。
▲2▼上記三塩化リンを留去した反応物に、例えば、2,4−ジ第3級ブチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−6−メチルフェノール等のフェノール化合物等を添加し、次にピリジン等のアミンからなる塩基を脱酸剤として滴下して目的の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を合成することにより、前記ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体形成反応(発熱反応)と、目的の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物の生成反応(脱酸剤としての塩基を滴下して起こる発熱反応)とが分離され、発熱のコントロールも非常に容易になること。また、人体に対して刺激性の高いビフェニルクロロホスフィンを反応物から取り出す必要なく、一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を合成でき、作業者の安全性も確保できること。
▲3▼前記▲2▼の一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物の合成後の反応物からピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩は分液操作で分離除去でき、また、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩が除去されたホスホナイト化合物を含む溶液を例えばアルカリ金属の水酸化物等のアルカリまたはその塩で処理することにより、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去でき、この後、溶媒を除去して得られるホスホナイト化合物(ガラス状固形物)の加水分解を防止できること。
▲4▼合成後のホスホナイト化合物を含む溶液に立体障害性アミンを添加することにより、ホスホナイト化合物の熱安定性が向上して、当該溶液の充分な加熱濃縮が可能となり、溶媒のみならず残存するフェノール化合物も効率良く除去できること。
本発明は上記▲1▼〜▲4▼の知見に基づき完成させたものであり、その特徴は以下の通りである。
(1)ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた式(II’):
により表される基を有するホスフィン化合物(以下、ホスフィン化合物(II’)ともいう)を含む反応物と一般式(III’):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。)により表されるフェノール化合物(以下、一般式(III’)のフェノール化合物ともいう。)を脱酸剤としての塩基の存在下に反応させた後、前記塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去することを特徴とする一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(以下、ホスホナイト化合物(I’)ともいう。)の製造方法。
(2)ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式(II):
ン化合物(以下、一般式(II)のホスフィン化合物ともいう。)を含む反応物と一般式(III):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)により表されるフェノール化合物(以下、一般式(III)のフェノール化合物ともいう。)を脱酸剤としての塩基の存在下に反応させた後、前記塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去することを特徴とする一般式(I):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、L1は水素原子、式:
(式中、Rは前記と同義。)、式:
(式中、Rは前記と同義)、または、式:
(式中、Rは前記と同義)を示す。)により表される少なくとも1種のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(以下、一般式(I)のホスホナイト化合物ともいう。)を製造する方法。
(3)一般式(I)のホスホナイト化合物が、一般式(Ia):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)により表される化合物(以下、一般式(Ia)の化合物ともいう。)を含み、かつ、
一般式(Ib):
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、L2は水素原子、式:
(式中、Rは前記と同義)、または、式:
(式中、Rは前記と同義)を示す。)により表される化合物(以下、一般式(Ib)の化合物ともいう)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい上記(2)記載のホスホナイト化合物の製造方法。
(4)塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去後、得られた粗生成物をアルカリまたはその塩にて処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記粗生成物のアルカリまたはその塩による処理の後、未反応のフェノール化合物を除去する上記(4)記載の方法。
(6)塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去後、得られた粗生成物をアルカリまたはその塩にて処理し、ついで立体障害性アミンにて処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(7)前記粗生成物の立体障害性アミンによる処理の後、未反応のフェノール化合物を除去する上記(6)記載の方法。
(8)ホスホナイト化合物(I’)を含む溶液または一般式(I)のホスホナイト化合物を含む溶液を150℃以上で加熱する際、立体障害性アミンを存在させる該ホスホナイト化合物の熱分解を防止する方法。
本発明は、まず、第1段階で前記式(II’)により表される基を有するホスフィン化合物(ホスフィン化合物(II’))を合成する。
塩化アルミニウムの存在下、ビフェニルと過剰の三塩化リンを1〜8時間程度反応させる。三塩化リンはビフェニル1モル当たり3〜8倍モル、好ましくは4〜6倍モル使用され、塩化アルミニウムは、ビフェニル1モル当たり1.6〜3.0倍モル、好ましくは1.8〜2.6倍モル使用される。塩化アルミニウムの仕込み割合と反応時間を操作することで、生成するホスフィン化合物を含む反応物の組成を調整することができる。本発明の目的とするホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物(ホスホナイト化合物(I’))は、それらのうちでも一般式(I)のホスホナイト化合物が有機高分子材料の安定剤としての効果に優れ、また、当該一般式(I)のホスホナイト化合物のうちでも一般式(Ia)のホスホナイト化合物が特に良好な安定化作用を示す。よって、好ましくは一般式(II)のホスフィン化合物、特に、式中のXで示される置換基が−PCl2からなるものが多く生成するように反応を行う。かかる反応では、塩化水素ガスが生成するが、これは、例えば、アルカリ水溶液に吸着させる等の手段に付すことによって除去される。
ついで、上記反応後の反応物にピリジン類を錯形成剤として添加して、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を形成する。「ピリジン類」とは、ピリジンをはじめピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、ピリダジン、ピリミジン、シンノリン、ブテリジンなどのπ欠如芳香族N−複素環式化合物を含んでいる。該ピリジン類は次工程(第2段階)の当該ホスフィン化合物を含む反応物と一般式(III’)「例えば、一般式(III)」のフェノール化合物との反応工程で脱酸剤として用いる塩基と同じ化合物を用いるのが、作業性および回収して再利用する点で有利である。
該ピリジン類の使用比率は塩化アルミニウムに対して0.8〜1.5当量、好ましくは0.9〜1.1当量の範囲とする。また、錯形成は40℃から三塩化リンの沸点までの温度範囲で行うのが好ましい。錯形成後、過剰の三塩化リンを除去する。これは、通常、50〜100℃、好ましくは60〜90℃の常圧または減圧下で留去することにより行う。
かくしてホスフィン化合物(II’)を含む反応物が得られる。当該反応物は一般式(Ia)の化合物、または、さらに一般式(Ib)の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよいものである。
第2段階では、かようにして得られたホスフィン化合物(II’)を含む反応物に、一般式(III’)のフェノール化合物を適当な溶媒に溶解した溶液として加え、塩基を脱酸剤として、冷却下または室温から用いる溶媒の沸点までの温度で30分から24時間反応させることにより、一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物が合成される。
一般式(III’)のフェノール化合物における式中R1、R2で示される炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、第3級ブチル基等が挙げられ、好ましくは第3級ブチル基である。すなわち、特に良好な安定化作用を示す一般式(Ia)のホスホナイト化合物を得る観点から、2,4−ジ第3級ブチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ第3級ブチル−6−メチルフェノール等(一般式(III)の化合物)が好適に使用される。かかるフェノール化合物を溶解する溶媒としては、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロトルエン、ヘキサン、ヘプタン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等が好適であり、特に好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンである。脱酸剤に用いる塩基としては、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタリンおよび1,8−ジアザビシクロ〔5,4.0〕ウンデカ−7−エンなどのアミンが好適であり、なかでもピリジンが好ましい。
フェノール化合物はビフェニル1モル当たり通常3〜5倍モル、好ましくは3.5〜4.5倍モル使用され、脱酸剤としての塩基はフェノール化合物1モル当たり、通常0.5〜2倍モル、好ましくは0.8〜1.5倍モル使用される。また、冷却下とは概ね20℃以下であり、通常5℃〜15℃の範囲である。
なお、一般式(I)のホスホナイト化合物を合成する場合(すなわち、一般式(II)のホスフィン化合物と一般式(III)のフェノール化合物とから目的のホスホナイト化合物を合成する場合)、一般式(Ia)のホスホナイト化合物に加えて一般式(Ib)のホスホナイト化合物が少量生成するが、一般式(Ib)のホスホナイト化合物の有機高分子材料の安定剤としての効果は一般式(Ia)のホスホナイト化合物よりは若干劣るものの良好であり、これらの混合物は優れた安定化作用を示す。
目的のホスホナイト化合物が生成した後の反応物中に含まれる塩基の塩酸塩およびピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体は分液操作により除去される。分液操作は、例えば次のようにして行われる。即ち、混合物を、70〜110℃に加熱すると、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体および塩基の塩酸塩は溶液状態になって、これとホスホナイト化合物を含む有機層(溶媒層)とが二層に分離し、分液操作によってこの二液を分離する。
分液操作後の目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に残存するピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体は、アルカリまたはその塩で処理することにより確実に除去することができる。例えば、目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に、アルカリまたはその塩をホスホナイト化合物に対して5.1〜50重量%、好ましくは10〜50重量%添加し、温度0℃〜50℃の範囲で30分〜5時間攪拌した後、かかる攪拌後の溶液からアルカリ層と目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層とを分液することで、残存するピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体が除去される。アルカリまたはその塩としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩、または、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはカルボン酸塩が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムが挙げられ、アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムなどが挙げられ、アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、アルカリ金属のカルボン酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられ、アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属のカルボン酸塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物を用いるのが好ましく、特に水酸化ナトリウムを使用するのが工業的にも有利である。これらのアルカリまたはその塩は特に20〜50重量%の水溶液として使用するのが操作性の点で有利である。
かくして、塩基の塩酸塩、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体が除去された一般式(I’)のホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を含む溶媒層から、溶媒および未反応のフェノール化合物を除去することにより、目的のホスホナイト化合物がガラス状固形物として取得される。通常、溶媒および未反応のフェノール化合物の除去は減圧下に溶媒および未反応のフェノール化合物を留去することにより行われる。
なお、ピリジン類と塩化アルミニウムとの錯体を除去した後の目的のホスホナイト化合物を含む溶媒層に立体障害性アミンを添加してから、溶媒および未反応のフェノール化合物を留去し、目的のホスホナイト化合物を取得するのが好ましい。
立体障害性アミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル環または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル環をを有する化合物が好ましく、当該化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1−アクリロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、ポリ{(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸縮合物、塩化シアヌル/第3級オクチルアミン/1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン縮合物などが挙げられる。これらのうち、特に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ{〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}等が好ましい。立体障害性アミンの添加量は、ガラス状固形物中の目的のホスホナイト化合物に対する立体障害性アミンの量が0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%となるようにするのがよい。
本発明方法によれば、最終的に目的のホスホナイト化合物を高純度のガラス状固形物として取得することができる。すなわち、例えば、一般式(I)のホスホナイト化合物を得る場合、一般式(I)のホスホナイト化合物の含量(一般式(Ia)の化合物の含量、または、一般式(Ia)の化合物と一般式(Ib)の化合物の総含量)が85%以上、好ましくは90%以上の高純度のガラス状固形物が得られる。ガラス状固形物はさらに再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等の常法によって分離精製することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例、実験例および比較例により詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム69.3gおよび三塩化リン109gを1リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス9.9g(理論値の67.8%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン41.1gを滴下したのち、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール176.4gをトルエン327gに溶解した液を加え、続いてピリジン63.3gを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置したのち、生成したピリジンの塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層476.8gを得た。この溶液を減圧下に溶媒を留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物201.2gを得た。収率92%。融点96〜101℃。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー Shimadzu LC−5A/TSKgel(以下、GPCと略す)により測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの純度は90%であった。
比較例1
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム69.3gおよび三塩化リン105gを1リットルのフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で3.5時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス10.2g(理論値の68%)が発生した。ついで過剰の三塩化リンを55℃で減圧下に留去して赤褐色油状物146.3gを得た。1リットルフラスコにトルエン419g、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチル−フェノール176.7gおよびピリジン125.7gを仕込み、これに赤褐色油状物146.3gを1時間で滴下した。ついで80℃で4時間加熱還流したのち、80℃で塩化アルミニウム層を分離した。上層のトルエン層を−10℃まで冷却して濾過した。濾過液を濃縮して黄色ガラス状固形物189.9gを得た。収率78%。融点58〜65℃。GPCにより測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの純度は66%であった。
実施例2
ビフェニル92.5g、塩化アルミニウム152gおよび三塩化リン494.3gを5リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4.5時間加熱還流を行った。このとき、塩化水素ガス29.1g(理論値の70.1%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン99.2gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール475.8gをトルエン982.5gに溶解した液を注加し続いてピリジン161.8gを約30分で滴下した後、温度100℃で3時間加熱した。この反応液は80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリシンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層1431gを得た。このようにして得たトルエン層1431gのうち358gに35%水酸化ナトリウム水90gを加えて室温で1時間激しく撹拌した後、分液することによってアルカリ層とトルエン層を分離した。ついでトルエン層を濾過して溶媒を減圧下に留去し、黄色ガラス状固形物141gを得た。収率86%。融点78〜82℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにて分析したとろ、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量78%)、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ビス(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ホスフィン、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級プチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを含有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は95%であった。
比較例2
実施例2により得られたトルエン層1431gのうち90gを−10℃まで冷却後、濾過し、ついで減圧下に溶媒を留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物34.8gを得た。収率83%。融点75〜80℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにて分析したところ、実施例2と同様の結果であった。
実験例1(加水分解に対する安定性試験)
実施例2および比較例2で得られたテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物と蒸留水をガラス瓶に入れ、密栓して100℃に加熱し、1時間および3時間後のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの含有量をGPCにより測定し、残存率を求めた。その結果は第1表の通りである。
(テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの初期含有量を100とした。)
この結果、水酸化ナトリウムにて処理すると経時的に安定なホスホナイト化合物が得られることが明らかになった。
実施例3
ビフェニル30.8g、塩化アルミニウム56.0gおよび三塩化リン164.8gを1リットルフラスコに仕込み、撹拝しながら74〜75℃で10時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス13.0g(理論値の89%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン31.6gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチルフェノール165.1gをトルエン327gに溶解した液を注加した。続いてピリジン60.1gを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層484gを得た。このトルエン層に35%水酸化ナトリウム水120gを加えて、室温で1時間激しく撹拌した後、アルカリ層とトルエン層を分離、濾過し減圧下に溶媒を留去し、黄色ガラス状固形物186.6gを得た。収率90%、融点95〜100℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにより分析したところ、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量75%)、(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ビス(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ホスフィン、(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを含有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は95%であった。
実験例2
実施例2で得られたテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(HALSとも表示する)を重量%で0.2%、0.4%および0.6%添加した試料ならびに未添加の試料を窒素雰囲気下160℃に加熱し、3時間および10時間後のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの含有量をGPCによって測定し、残存率を求めた。その結果は第2表の通りである。
(テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの初期含有量を100とした。)
上記の結果より、HALSを添加することにより、160℃においても分解が抑制されることが示されており、熱安定化効果を確認した。
実施例4
ビフェニル3.86kg、塩化アルミニウム6.30kgおよび三塩化リン22.65kgを100リットル反応器に仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4時間加熱還流を行った。このとき塩化水素ガス1.25kg(理論値の68.5%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン3.94kgを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで、2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール19.85kgをトルエン40.95kgに溶解した液を注加し、続いてピリジン6.93kgを滴下した後、温度100℃で3時間加熱撹拌した。この反応液を80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリジンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層30.9kgを得た。これに35%水酸化ナトリウム水15.0kgを加えて室温で2時間激しく撹拌した後、アルカリ層とトルエン層を分離し濾過してトルエン溶液59.11kgを得た。この溶液にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート50.0gを加え、減圧下に溶媒および未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去して、テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とする黄色ガラス状固形物22kgを得た。収率80%、融点104〜112℃。この黄色ガラス状固形物をGPCにより測定したところテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(含量75%)、(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)(4’−(ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ)ビフェニル−4−イル)ビフェニル−4−イル−ホスフィン、及び4−ビス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノビフェニルを有する組成物であり、一般式(I)の化合物の総含量は96%であった。
実験例3
ビフェニル92.5g、塩化アルミニウム152gおよび三塩化リン494.3gを5リットルフラスコに仕込み、撹拌しながら74〜75℃で4.5時間加熱還流を行った。このとき、塩化水素ガス31.1g(理論値の74.8%)が発生した。放冷後、60〜70℃でピリジン90.2gを滴下した後、温度60〜80℃で反応物から減圧下に過剰の三塩化リンを留去した。ついで2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノール475.8gをトルエン982.5gに溶解した液を注加し続いてピリジン161.8gを約30分で滴下した後、温度100℃で3時間加熱した。この反応液は80℃で静置した後、生成したピリジン塩酸塩およびピリシンと塩化アルミニウムとの錯体を分離してトルエン層1445gを得た。
このようにして得たトルエン層1445gに35%水酸化ナトリウム水360gを加えて室温で1時間激しく撹拌した後、分液することによってアルカリ層とトルエン層を分離した。ついでトルエン層を濾過してテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とするトルエン溶液1418gを得た。
実施例5
実験例3で得たトルエン溶液355gを0.5リットルフラスコに仕込み、これにビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート0.33gを加え、窒素雰囲気中40〜130℃の温度で減圧下に残存のトルエンを留去した。続いて窒素雰囲気中160〜170℃の温度で減圧下に残存のトルエン及び未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去した。なお、濃縮途中1時間目、3時間目、5時間目のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよび2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの含有量をGPCによって測定した。
比較例3
実験例3で得たトルエン溶液355gを0.5リットルフラスコに仕込み、窒素雰囲気中40〜130℃の温度で減圧下に残存のトルエンを留去した。続いて窒素雰囲気中160〜170℃の温度で減圧下に残存のトルエン及び未反応の2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールを留去した。なお、濃縮途中1時間目、3時間目、5時間目のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよび2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの含有量をGPCによって測定した。
上記実施例5と比較例3の結果が下記第3表である。
A:テトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト
B:2,4−第3級ブチル−5−メチルフェノール
第3表から、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを添加したものは、濃縮時のテトラキス(2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトの熱分解を抑制し得るとともに、残存する2,4−ジ第3級ブチル−5−メチルフェノールの量も十分減少し得ることが分かる。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、前記一般式(I’)により表されるホスフィノビフェニレン基を有するホスホナイト化合物を、安全に、高品質かつ高収率に製造することができる。また、当該ホスホナイト化合物を含む溶液を加熱する際に当該ホスホナイト化合物の熱分解を防止することができる。
本出願は、日本で出願された平成11年特許願第1505号を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
Claims (19)
- ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式:
- ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式:
- ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式:
- ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式:
- ビフェニルと三塩化リンとを塩化アルミニウムの存在下に反応させ、生成した塩化水素ガスを除去した後、ピリジン類を加え、ついで過剰の三塩化リンを除去し、得られた一般式:
- ピリジン類がピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、ピリダジン、ピリミジン、シンノリンまたはプテリジンである請求の範囲第1〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- ピリジン類がピリジンである請求の範囲第1〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- 脱酸剤としての塩基がジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、アミノピリジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタリンおよび1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エンから選ばれる化合物である請求の範囲第1〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- アルカリまたはその塩がアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩、または、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩である請求の範囲第3〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- アルカリまたはその塩がアルカリ金属水酸化物である請求の範囲第3〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである請求の範囲第15項記載の方法。
- アルカリまたはその塩を10〜50重量%の水溶液として使用する請求の範囲第3〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- 立体障害性アミンが、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル環または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル環を有する化合物である請求の範囲第7〜10項のいずれか一項に記載の方法。
- 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル環または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル環を有する化合物がビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1−アクリロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{〔 6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−s−トリアジン−2,4−ジイル〕〔 (2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサンメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕} 、ポリ{(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔 (2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔 (2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸縮合物および塩化シアヌル/第3級オクチルアミン/1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン縮合物から選ばれる化合物である請求の範囲第18項記載の方法。
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