JP3832231B2 - 内燃機関回転開始装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転停止している内燃機関のクランク軸の回転を開始させる内燃機関回転開始装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の始動時には、スタータ等の回転出力手段の駆動により内燃機関のクランク軸が回転される。この時、内燃機関のフリクションと共に特に圧縮行程にある気筒の圧縮圧力が回転抵抗力として作用する。この回転抵抗力が過大となると、圧縮行程にある気筒の上死点直前で内燃機関の回転が停止してしまい、始動不良を生じることがある。特に温間時では圧縮圧力の上昇が大きいので始動不良を生じやすい。
【0003】
このような始動不良を解消するために、始動時に内燃機関の回転が停止した場合には、回転出力手段による正転方向のトルクの断続あるいは正転逆転を実行する技術(特開平3−3969号公報)が開示されている。この技術では、正転方向のトルクの断続あるいは正転逆転を実行することで、トルク断時に気筒内の圧力を逃がすとともに、静摩擦から動摩擦に変えて摩擦力を低減し、かつ慣性トルクを生じさせて、始動を容易にすることができるとするものである。
【0004】
これ以外に、始動の最初から回転出力手段の駆動により内燃機関を逆転して、その後、正転を行うことにより、上述したごとくの効果を期待している技術(特開平7−71350号公報)が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の従来技術では、正転方向のトルクの断続あるいは正転逆転を行うのみであり、逆転によるクランク軸の到達位相については考慮していない。このためクランク軸の位相が戻りすぎて、回転開始時に圧縮行程にある気筒の吸気弁を開弁してしまい、気筒内が大気圧となる場合がある。このような状態で次の正転を行うと、逆に最初の正転時よりも圧縮圧力が高まり一層回転抵抗力が過大となる。このため再度回転時に停止する可能性が高まる。またクランク軸の位相が逆転にて十分に戻っていない場合には、再度正転を行った際にフライホイールなどによる慣性トルクの作用が不十分となる。このため、気筒内の圧力が少々低下されていても圧縮時の回転抵抗に対向することができずに回転停止するおそれがある。
【0006】
また、後者の従来技術では最初から逆転を実行している。しかし、この最初からの逆転では気筒内の圧力は大気圧であることから、気筒内から外部に圧力を逃す効果はない。しかも、最初の逆転から正転に切り替わる際に、ピストンリング溝内でピストンリングが浮き上がることにより、大気圧よりも低圧になっている気筒内に大気圧を導入してしまい、その後の圧縮にて気筒内の圧力を逆に過大なものとしてしまう。したがって最初から正転する場合よりも圧縮圧力が高まり、一層回転抵抗力が過大となり回転停止するおそれが高まる。
【0007】
また、後者の従来技術では逆転角度幅をπ/4(45°)と非常に小さく設定している。しかし、最初の逆転時にはクランク軸の位相が不明であるため、このような少ない角度幅の逆転であっても吸気弁の開弁を生じるおそれがある。逆に吸気弁が開弁しない状態であった場合には、このような少ない角度幅の逆転では十分な慣性トルクが得られず、やはり回転停止のおそれがある。
【0008】
このように両従来技術においては、内燃機関の回転開始が困難となるおそれが高く、十分に始動性の向上がなされているとは言い難いものである。
本発明は、回転停止している内燃機関の回転開始を容易なものとできる内燃機関回転開始装置の提供を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の内燃機関回転開始装置は、回転出力手段の駆動にて内燃機関のクランク軸の回転を開始させる内燃機関回転開始装置であって、クランク軸の回転開始時に、前記回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に回転させる正転駆動手段と、前記正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合に、該停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させる逆転駆動手段と、前記逆転駆動手段による逆転側へのクランク軸の回転後に、前記回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に再回転させる再正転駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
正転駆動手段は、クランク軸の回転開始時当初に、回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に回転させている。この最初になされる正転により回転開始すれば、回転開始は迅速に達成される。
【0011】
一方、正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合には、逆転駆動手段が、停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させる。この逆転により、逆転開始時にピストンリングをピストンリング溝内で浮き上がらせることができるので、停止時において圧縮行程上死点直前となった気筒内の圧力を外部へ抜いて低下させることができる。
【0012】
ところで最初に正転駆動手段にて行われる正転にてクランク軸の回転が停止した場合には、この停止位相は、圧縮圧力により回転抵抗を受けて停止した位相であり、ある気筒が圧縮行程上死点直前の状態に存在する位相であることを示すものである。このため、圧縮行程上死点直前の気筒においては、この停止位相から吸気弁が開弁する直前までの逆転角度幅は自ずと決まる。したがって、逆転駆動手段は、停止位相からこの逆転角度幅分の逆転を行うのみで、該当する気筒における吸気弁が開弁する直前まで逆転させることが可能となる。すなわち最大限クランク軸を逆転でき、しかも吸気弁から該当する気筒に大気圧を導入することもない。
【0013】
こうして、次に再正転駆動手段が、回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に再回転させた場合に、該当する気筒内の圧力は、再度圧縮行程上死点直前となっても前回よりも低くなっている。しかも、吸気弁が開弁する直前まで逆転してからの再正転であるので十分な慣性トルクを発生させている。しかも動摩擦であることから摩擦力も小さい。
【0014】
このことにより回転停止している内燃機関の回転開始を容易なものとできる。
請求項2記載の内燃機関回転開始装置では、請求項1記載の構成において、前記逆転駆動手段は、前記正転駆動手段および前記再正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合に、該停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする。
【0015】
逆転駆動手段は、正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合のみでなく、再正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合にも、この停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させている。
【0016】
このことにより、万一、再正転駆動手段によっても回転開始できなかった場合にも、再度逆転させることで、請求項1にて述べた作用により回転開始を一層確実なものとできる。
【0017】
請求項3記載の内燃機関回転開始装置では、請求項2記載の構成に加えて、前記逆転駆動手段によるクランク軸の逆転側への回転と、前記再正転駆動手段によるクランク軸の正転側への再回転とが、基準回数繰り返された後に、内燃機関の回転が開始しなかった場合には、前記回転出力手段の駆動と第2の回転出力手段の駆動とによるクランク軸の回転または第2の回転出力手段の駆動のみによるクランク軸の回転に切り替えて内燃機関の回転を実行する回転出力切替手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
このように正転駆動手段による正転の次に、逆転駆動手段によるクランク軸の逆転側への回転と、再正転駆動手段によるクランク軸の正転側への再回転とが基準回数実行された後においても、内燃機関の回転が開始しなかった場合には、回転出力切替手段は、回転出力手段の駆動と第2の回転出力手段の駆動とによるクランク軸の回転または第2の回転出力手段の駆動のみによるクランク軸の回転に切り替えている。このことにより、万一、正転駆動手段、逆転駆動手段及び再正転駆動手段によっても回転停止した場合においても、確実に内燃機関を回転開始させることができる。
【0019】
請求項4記載の内燃機関回転開始装置では、請求項3記載の構成において、前記回転出力手段は、内燃機関から車輪への駆動力伝達系内または外に配置されたモータジェネレータであり、前記第2の回転出力手段は、スタータであることを特徴とする。
【0020】
このように、回転出力手段としてモータジェネレータを用いて、正転駆動手段、逆転駆動手段及び再正転駆動手段は内燃機関を回転させる。このモータジェネレータの駆動制御では内燃機関が回転を開始しない場合には、回転出力切替手段は、モータジェネレータと、第2の回転出力手段としてのスタータとによる回転、あるいはスタータのみによる回転に切り替える。
【0021】
このことにより、万一、モータジェネレータの駆動によっても内燃機関の回転が開始しなかった場合においても、確実に内燃機関の回転を開始させることができる。
【0022】
請求項5記載の内燃機関回転開始装置は、請求項1〜4のいずれか記載の構成において、内燃機関の自動停止後に自動始動条件が成立した場合に内燃機関の自動始動のために起動されることを特徴とする。
【0023】
本内燃機関回転開始装置は、内燃機関の自動始動のために起動されるようにしても良い。自動始動は運転者の意図しない始動である。したがって、前述したごとく容易に内燃機関の回転を開始させることができるので、十分な始動性の向上が可能となり、自動始動時に運転者に違和感を与えることがない。
【0024】
請求項6記載の内燃機関回転開始装置では、請求項1〜5のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の正転側への回転が停止したクランク角位相から予め定めた角度幅分、クランク軸を逆転させることにより、前記停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前までクランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする。
【0025】
前記請求項1で述べたごとく、停止時に圧縮行程上死点直前にある気筒において、圧縮行程上死点直前の停止位相はほぼ一定の範囲にあるので、この停止位相から吸気弁が開弁する直前までの逆転角度幅は自ずと決まる。したがって、逆転駆動手段は、停止位相から予め定めた角度幅分の逆転を行うのみで、該当する気筒における吸気弁が開弁する直前まで逆転させることが可能となる。
【0026】
請求項7記載の内燃機関回転開始装置では、請求項1〜5のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の正転側への回転が停止したクランク角位相から予め定めた時間、クランク軸を逆転させることにより、前記停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで前記クランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする。
【0027】
なお、直接、逆転角度幅を検出することで吸気弁が開弁する直前までクランク軸を逆転させる以外に、逆転側への回転時間によっても必要な角度幅分の逆転を行わせることができる。
【0028】
請求項8記載の内燃機関回転開始装置では、請求項1〜7のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の逆転側への回転を前記回転出力手段の駆動により行うことを特徴とする。
【0029】
なお、逆転駆動手段によるクランク軸の逆転側への回転は、この直前に正転駆動手段が実行した正転により生じた圧縮圧力による逆転方向のトルクを利用して該当する気筒の吸気弁が開弁する直前まで逆転させても良いが、このように回転出力手段の駆動により行っても良い。
【0030】
このように積極的に回転出力手段の駆動力を用いることにより、迅速かつ確実に該当する気筒の吸気弁が開弁する直前まで逆転させることができる。このように回転出力手段の駆動力にて積極的に逆転しているので、逆転開始時にピストンリングをピストンリング溝内で確実に浮き上がらせることができ、該当する気筒内の圧力を十分に抜くことができる。
【0031】
更に、前記請求項7のごとく、逆転側への回転時間によってクランク軸に必要な角度幅分の逆転を行わせる場合も、逆転速度が安定するので、クランク軸を一層正確な位相位置に逆転させることができるようになる。
【0032】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された車両用内燃機関及びその制御装置のシステム構成図である。ここでは内燃機関としてガソリン式エンジン(以下、「エンジン」と称す)2が用いられている。
【0033】
エンジン2の出力は、エンジン2のクランク軸2aからトルクコンバータ4及びオートマチックトランスミッション(自動変速機:以下「A/T」と称す)6を介して、出力軸6a側に出力され、最終的に車輪に伝達される。更に、このようなエンジン2から車輪への駆動力伝達系とは別に、エンジン2の出力は、クランク軸2aに接続されているプーリ10を介して、ベルト14に伝達される。そして、このベルト14により伝達された出力により、別のプーリ16,18が回転される。なおプーリ10には電磁クラッチ10aが備えられており、必要に応じてオン(接続)オフ(遮断)されて、プーリ10とクランク軸2aとの間で出力の伝達・非伝達を切り替え可能とするものである。
【0034】
上記プーリ16,18の内、プーリ16には補機類22の回転軸が連結されて、ベルト14から伝達される回転力により駆動可能とされている。補機類22としては、例えば、エアコン用コンプレッサ、パワーステアリングポンプ、エンジン冷却用ウォータポンプ等が該当する。なお、図1では1つの補機類22として示しているが、実際にはエアコン用コンプレッサ、パワーステアリングポンプ、エンジン冷却用ウォータポンプ等の1つまたは複数が存在し、それぞれプーリを備えることによりベルト14に連動して回転するようにされている。本実施の形態1では、補機類22として、エアコン用コンプレッサ、パワーステアリングポンプ及びエンジン冷却用ウォータポンプが設けられているものとする。
【0035】
またプーリ18によりモータジェネレータ(以下、「M/G」と称す)26がベルト14に連動している。このM/G26は必要に応じて発電機として機能(以下「発電モード」または「回生モード」と称する)することで、プーリ18を介して伝達されるクランク軸2aからの回転力を電気エネルギーに変換する。更にM/G26は、必要に応じてモータとして機能(以下「駆動モード」と称する)することでプーリ18を介してベルト14にてエンジン2のクランク軸2aおよび補機類22の一方あるいは両方を回転させる。
【0036】
ここで、M/G26はインバータ28に電気的に接続されている。M/G26を発電モードまたは回生モードにする場合には、インバータ28はスイッチングにより、M/G26から高圧電源(ここでは36V)用バッテリ30に対して、及びDC/DCコンバータ32を介して低圧電源(ここでは12V)用バッテリ34に対して電気エネルギーの充電を行うよう、更に点火系、メータ類あるいは各ECUその他に対する電源となるように切替える。
【0037】
M/G26を「駆動モード」にする場合には、インバータ28は電力源である高圧電源用バッテリ30からM/G26へ電力を供給することで、M/G26を駆動して、プーリ18及びベルト14を介して、エンジン停止時においては補機類22の回転や、場合により自動始動時、自動停止時あるいは車両発進時にクランク軸2aを回転させる。なお、インバータ28は高圧電源用バッテリ30からの電気エネルギーの供給を調整することで、M/G26の回転数を調整できる。
【0038】
なお、冷間時のエンジン始動のためにスタータ36が設けられている。スタータ36は低圧電源用バッテリ34から電力を供給されて、リングギアを回転させてエンジン2を始動させる。
【0039】
A/T6には、低圧電源用バッテリ34から電力を供給される電動油圧ポンプ38が設けられており、A/T6内部の油圧制御部に対して作動油を供給している。この作動油は油圧制御部内のコントロールバルブにより、A/T6内部のクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチの作動状態を調整し、シフト状態を必要に応じて切り替えている。
【0040】
上述した電磁クラッチ10aのオンオフの切り替え、M/G26、インバータ28のモード制御、スタータ36の制御、その他図示していないがバッテリ30,34に対する蓄電量制御はエコランECU40によって実行される。またウォータポンプを除く補機類22の駆動オンオフ、電動油圧ポンプ38の駆動制御、A/T6の変速制御、燃料噴射弁(吸気ポート噴射型あるいは筒内噴射型)42による燃料噴射制御、電動モータ44によるスロットルバルブ46の開度制御、その他のエンジン制御は、エンジンECU48により実行される。また、この他、VSC(ビークルスタビリティコントロール)−ECU50が設けられていることにより、各車輪のブレーキの自動制御も実行されている。
【0041】
なおエコランECU40は、M/G26に内蔵されている回転数センサからM/G26の回転軸の回転数、エコランスイッチから運転者によるエコランシステムの起動有無、その他のデータを検出している。また、エンジンECU48は、水温センサからエンジン冷却水温THW、アイドルスイッチからアクセルペダルの踏み込み有無状態、アクセル開度センサからアクセル開度ACCP、舵角センサからステアリングの操舵角θ、車速センサから車速SPD、スロットル開度センサからスロットル開度TA、シフト位置センサからのシフト位置SHFT、気筒判別センサから特定気筒の吸気上死点、エンジン回転数センサからエンジン回転数NE、気筒判別センサとエンジン回転数センサとからクランク角、エアコンスイッチからオンオフ操作有無、その他のデータをエンジン制御等のために検出している。またVSC−ECU50についても制動制御等のためにブレーキスイッチからブレーキペダルの踏み込み有無状態、その他のデータを検出している。
【0042】
なお、これら各ECU40,48,50は、マイクロコンピュータを中心として構成されており、内部のROMに書き込まれているプログラムに応じてCPUが必要な演算処理を実行し、その演算結果に基づいて各種制御を実行している。これらの演算処理結果及び前述のごとく検出されたデータは、ECU40,48,50間で相互にデータ通信が可能となっており、必要に応じてデータを交換して相互に連動して制御を実行することが可能となっている。
【0043】
次に、エコランECU40にて実行される制御処理について説明する。以下に説明する制御の内、自動停止処理及び自動始動処理は、運転者がエコランスイッチをオンした場合に実行されるものである。
【0044】
自動停止処理を図2のフローチャートに示す。本処理は短時間周期で繰り返し実行される処理である。なお個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0045】
本自動停止処理が開始されると、まず自動停止実行を判定するための運転状態が読み込まれる(S110)。例えば、水温センサから検出されるエンジン冷却水温THW、アイドルスイッチから検出されるアクセルペダルの踏み込み有無、バッテリ30,34の蓄電量、ブレーキスイッチから検出されるブレーキペダルの踏み込み有無、及び車速センサから検出される車速SPD等を、エコランECU40内部のRAMの作業領域に読み込む。
【0046】
次に、これらの運転状態から自動停止条件が成立したか否かが判定される(S120)。例えば、(1)エンジン2が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温THWが水温上限値よりも低く、かつ水温下限値より高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチがオン)、(3)バッテリ30,34の蓄電量がそれぞれ必要なレベルに存在する状態、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチがオン)、及び(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)がすべて満足された場合に自動停止条件が成立したと判定する。
【0047】
上記条件(1)〜(5)の一つでも満足されていない場合には自動停止条件は不成立として(S120で「NO」)、一旦本処理を終了する。
一方、運転者が、例えば交差点等にて車両を停止させたことにより、自動停止条件が成立した場合には(S120で「YES」)、走行時M/G制御処理を停止する(S130)。この走行時M/G制御処理は、後述する自動始動処理(図3)にて実行が開始される処理である。具体的には走行時M/G制御処理は、通常走行時においてはM/G26を発電モードにし、車両減速時においては燃料カット時にM/G26を回生モードにして走行エネルギーを回収したり、燃料カットからの復帰直後にエンジン2の回転をアシストする処理である。
【0048】
次にエンジン停止処理が行われる(S140)。すなわち、エコランECU40からエンジンECU48へ燃料カットの指示がなされることにより、燃料噴射弁42の燃料噴射が停止され、更にスロットルバルブ46は全閉状態とされる。このことによりエンジン燃焼室内での燃焼が停止して、エンジン2の運転は停止する。
【0049】
次にエンジン停止時M/G駆動処理の実行が設定される(S150)。このエンジン停止時M/G駆動処理は、エンジン2の運転停止後においてクランク軸2aをM/G26にて回転制御して、エンジン2や車両の振動やブレーキブースタ圧力を確保する処理である。こうして、一旦本処理を終了する。
【0050】
次に自動始動処理を図3のフローチャートに示す。本処理は短時間周期で繰り返し実行される処理である。
本自動始動処理が開始されると、まず自動始動実行を判定するための運転状態が読み込まれる(S410)。ここでは、例えば、自動停止処理(図2)のステップS110にて読み込んだデータと同じ、エンジン冷却水温THW、アイドルスイッチの状態、バッテリ30,34の蓄電量、ブレーキスイッチの状態及び車速SPD等をRAMの作業領域に読み込む。
【0051】
次に、これらの運転状態から自動始動条件が成立したか否かが判定される(S420)。例えば、自動停止処理によるエンジン停止状態にあるとの条件下に、(1)エンジン2が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温THWが水温上限値よりも低く、かつ水温下限値より高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチがオン)、(3)バッテリ30,34の蓄電量がそれぞれ必要なレベルにある状態、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチがオン)、及び(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)の内の1つでも満足されなかった場合に自動始動条件が成立したと判定する。
【0052】
自動停止処理によるエンジン停止状態ではない場合、あるいは自動停止処理によるエンジン停止状態であっても上記条件(1)〜(5)のすべてが満足されている場合には自動始動条件は不成立として(S420で「NO」)、一旦本処理を終了する。
【0053】
自動停止処理によるエンジン停止状態において上記条件(1)〜(5)の一つでも満足されなくなった場合には自動始動条件は成立したとして(S420で「YES」)、前述したエンジン停止時M/G駆動処理を停止する(S430)。そして、後述するM/G駆動発進始動処理(図4)及び前述した走行時M/G制御処理の実行が設定されて(S440)、一旦、本処理を終了する。
【0054】
次にM/G駆動発進始動処理を図4のフローチャートに示す。本処理は前記ステップS440の実行により開始され、短時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0055】
M/G駆動発進始動処理が開始されると、まずエンジンECU48に対してエアコンオンを禁止する指示を行う(S510)。このことにより、もしエアコンがオンされていた場合には、エンジンECU48はエアコンの駆動を停止する。したがって発進始動時におけるM/G26に生じる負荷を軽減させることができる。
【0056】
次に電磁クラッチ10aをオン状態とし(S520)、M/G26を駆動モードとする(S530)。そして、エンジン回転が開始したか否かを判定する(S540)。この時には、直前でM/G26が駆動モードに設定されたのみであることからエンジン2は回転していないので(S540で「NO」)、次にエンジン回転開始処理が実行される(S550)。
【0057】
このエンジン回転開始処理の詳細を図5のフローチャートに示す。本処理が開始されると、まず今回のエンジン始動時における最初のエンジン回転開始処理か否かが判定される(S610)。最初の処理であるので(S610で「YES」)、M/G26の回転駆動モードとしてモードAが設定される(S620)。
【0058】
そして次に回転駆動モードがモードAに設定されているか否かが判定される(S630)。ここで最初はステップS620で設定されたごとく、モードAに設定されていることから(S630で「YES」)、M/G26は正転するように駆動制御がなされる(S640)。次にM/G26の正転駆動の開始から基準時間Taが経過したか否かが判定される(S650)。基準時間Taが経過していなければ(S650で「NO」)、一旦本処理を終了する。
【0059】
次の制御周期では、今回のエンジン始動時における最初のエンジン回転開始処理ではないので(S610で「NO」)、次にステップS630の判定がなされる。ここではモードAであるので(S630で「YES」)、基準時間Taが経過しない限り(S650で「NO」)、M/G26の正転駆動(S640)が繰り返される。
【0060】
そして基準時間Taが経過すると(S650で「YES」)、現在エンジン2が回転中か否かが判定される(S660)。ここで、基準時間Taは、自動停止時に大気圧が導入されている気筒の圧縮圧力による抵抗に打ち勝って、M/G26によりエンジン2が回転していることを判定するに十分な時間が設定されている。したがって、基準時間Taが経過した時点でのエンジン2の回転をエンジン回転数センサの出力状態から判定し、エンジン回転数センサからの出力が無ければエンジン2は圧縮圧力により回転が停止していると判断できる。またエンジン回転数センサからの出力が有ればエンジン2は圧縮圧力に打ち勝って回転が開始されたと判断できる。
【0061】
エンジン回転中であれば(S660で「YES」)、エンジン回転開始と判断する(S670)。したがって、次の制御周期では、M/G駆動発進始動処理(図4)のステップS540で「YES」と判定されて、後述するごとくステップS560〜S590の処理が行われる。
【0062】
一方、エンジン回転中でない(S660で「NO」)、すなわち、エンジン2が停止していれば、回転駆動モードにモードBが設定される(S680)。したがって、次の制御周期では、ステップS610で「NO」、S630で「NO」と判定されて、次にモードBか否かが判定される(S690)。モードBであることから(S690で「YES」)、逆転・正転処理が実行される(S700)。
【0063】
逆転・正転処理の詳細を図6のフローチャートに示す。本処理が開始されると、まず今回のエンジン始動時における最初の逆転・正転処理か否かが判定される(S810)。最初の処理であるので(S810で「YES」)、次にエンジン2の回転方向モードとして逆転モードが設定される(S820)。そしてカウンタCをクリアする(S830)。
【0064】
次に回転方向モードが逆転モードか否かが判定される(S840)。最初は逆転モードが設定されていることから(S840で「YES」)、M/G26を逆転駆動する(S850)。このことによりエンジン2のクランク軸2aは逆転する。この逆転開始時のクランク軸2aの位相は、ステップS640によるM/G26の正転駆動時に圧縮圧力の抵抗に打ち勝てずに停止した位相からである。この停止位相は、圧縮行程上死点に対して−10〜−20°のクランク角領域に存在する。
【0065】
そして、この逆転開始の位相から、角度幅として80°幅の逆転をしたか否かが判定される(S860)。80°幅の逆転をしていなければ(S860で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。以後、ステップS810で「NO」、ステップS840で「YES」と判定されて、80°幅の逆転がなされるまで、M/G26の逆転駆動が継続される(S850)。なお、本実施の形態1では、直接、クランク軸2aの回転角度幅を検出するのではなく、80°幅の逆転に対応する基準時間(例えば150msec)の経過により判定している。
【0066】
そして、80°幅の逆転、すなわち80°幅の逆転に対応する基準時間が経過すると(S860で「YES」)、回転方向モードが正転モードに設定される(S870)。このことにより次の制御周期ではステップS810で「NO」、ステップS840で「NO」と判定されて、次にM/G26の正転駆動が実行される(S880)。そして今回のM/G26の正転駆動の開始から基準時間Tbが経過したか否かが判定される(S890)。基準時間Tbが経過していなければ(S890で「NO」)、一旦本処理を終了する。以後、正転駆動の開始から基準時間Tbが経過するまでは、M/G26の正転駆動が継続する(S880)。なお、基準時間Tbは、後述するカウンタCの値によって長さを変更しても良い。例えば、モードBにおける最期(C=2)のM/G26の正転駆動における基準時間Tbはそれ以前(C=0,1)よりも長くしても良い。
【0067】
正転駆動の開始から基準時間Tbが経過すると(S890で「YES」)、現在エンジン2が回転中か否かが判定される(S900)。ここで、基準時間Tbは、エンジン2の逆転後において気筒の圧縮圧力による抵抗に打ち勝って、M/G26によりエンジン2が回転していることを判定するに十分な時間が設定されている。したがって、基準時間Tbが経過した時点でのエンジン2の回転をエンジン回転数センサの出力状態から判定し、エンジン回転数センサからの出力が無ければエンジン2は圧縮圧力により回転が停止していると判断できる。またエンジン回転数センサからの出力が有ればエンジン2は圧縮圧力に打ち勝って回転が開始されたと判断できる。
【0068】
エンジン回転中であれば(S900で「YES」)、エンジン回転開始と判断する(S910)。したがって、次の制御周期では、M/G駆動発進始動処理(図4)のステップS540では「YES」と判定されて、後述するごとくステップS560〜S590の処理が行われる。
【0069】
一方、エンジン回転中でない(S900で「NO」)、すなわち、エンジン2が停止していれば、カウンタCがインクリメントされる(S920)。次にカウンタCがカウンタ判定値n以下か否かが判定される(S930)。カウンタ判定値nは、M/G26の駆動によるエンジン2の逆転・正転の繰り返し回数を規定する値であり、例えば、カウンタ判定値n=1〜3の値が設定されている。ここでは、逆転・正転の繰り返し回数を3回に規定するためカウンタ判定値n=3であるとする。
【0070】
C<nであれば(S930で「YES」)、回転方向モードに逆転モードが設定される(S940)。このことにより、次の制御周期では、ステップS810で「NO」、ステップS840で「YES」、次にM/G26の逆転駆動(S850)が開始され、再度、エンジン2は停止位相から80°幅の逆転がなされる。そして80°幅の逆転が終了すると(S860で「YES」)、再度正転が実行される(S870によりS840で「NO」)。
【0071】
こうして2回目の逆転と正転との繰り返しによって、エンジン回転が開始すれば(S900で「YES」)、次の制御周期では、M/G駆動発進始動処理(図4)のステップS540では「YES」と判定されて、後述するごとくステップS560〜S590の処理が行われる。
【0072】
一方、エンジン回転が開始しなかった場合には(S900で「NO」)、カウンタCがインクリメントされ(S920)、カウンタCがカウンタ判定値n以下か否かが判定される(S930)。ここではカウンタC=2で、C<nであることから(S930で「YES」)、回転方向モードに逆転モードが設定される(S940)。このことにより、3回目の逆転と正転との繰り返しが行われる。
【0073】
そして、正転が基準時間Tb経過した後に(S890で「YES」)、エンジン回転が開始すれば(S900で「YES」)、次の制御周期では、M/G駆動発進始動処理(図4)のステップS540では「YES」と判定されて、後述するごとくステップS560〜S590の処理が行われる。
【0074】
一方、エンジン回転が開始しなかった場合には(S900で「NO」)、カウンタCがインクリメントされ(S920)、カウンタCがカウンタ判定値n以下か否かが判定される(S930)。ここではカウンタC=3となり、C≧nであることから(S930で「NO」)、次に回転駆動モードにモードCが設定される(S950)。このことにより、次の制御周期では、エンジン回転開始処理(図5)において、ステップS610,S630,S690でそれぞれ「NO」と判定されて、M/G26およびスタータ36の両者の駆動によりエンジン2を正転させて、エンジン2の回転を開始させる(S710)。なお、スタータ36を駆動する場合は、リングギアとの噛み合わせを考慮して、一旦、M/G26を停止させて、スタータ36の駆動によりエンジン回転数NEが上がってから、例えば100rpmに上がってから、M/G26を駆動するようにしても良い。
【0075】
次にエンジン回転中か否かを判定し(S720)、未だ回転していなければ(S720で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。一方、エンジンが回転を始めれば(S720で「YES」)、エンジン回転開始と判断する(S730)。なお、図示していないが、この場合、エンジン2が基準時間を経過しても回転開始しなかった場合には、故障と判定する。
【0076】
こうしてエンジン2が回転開始すれば、次の制御周期にて、エンジン回転開始か否かの判定(S540)では「YES」と判定される。そしてM/G26の出力制御を実行して(S560)、M/G26の出力にてエンジン回転数NEを、アイドル目標回転数NEidlのレベル、例えば600rpmまで次第に上昇させる制御を開始する。
【0077】
そして、次に、M/G駆動発進始動処理が開始されてから、未だアクセルペダルの踏み込みが無いか否かが判定される(S570)。アクセルペダルの踏み込みが無ければ(S570で「YES」)、次に、未だエンジン回転数NEがアイドル目標回転数NEidlに達していないか否かが判定される(S580)。M/G26の回転初期であって、未だエンジン回転数NEがアイドル目標回転数NEidlに達していなければ(S580で「YES」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0078】
ステップS560を繰り返す内に、M/G26の出力によりエンジン回転数NEがアイドル目標回転数NEidlに達すると(S580で「NO」)、エコランECU40からエンジンECU48に対して燃料噴射開始の指示がなされる(S590)。このことにより燃料噴射弁42からは燃料が噴射され、エンジン2は始動して運転を開始する。
【0079】
更にエンジン回転数NEがアイドル目標回転数NEidlに達する前に、アクセルペダルが踏み込まれた場合には(S570で「NO」)、直ちにエコランECU40からエンジンECU48に対して燃料噴射開始の指示がなされる(S590)。
【0080】
次に走行時M/G制御処理を図7のフローチャートに示す。本処理は前記ステップS440の実行により開始され、短時間周期で繰り返し実行される処理である。まず前述したM/G駆動発進始動処理(図4)によってエンジン2の始動が完了したか否かが判定される(S1010)。始動完了前であれば(S1010で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0081】
M/G駆動発進始動処理(図4)によってエンジン2の始動が完了した場合には(S1010で「YES」)、M/G駆動発進始動処理(図4)を停止する(S1020)。
【0082】
そして、回転駆動モードがモードCでの始動か否かが判定される(S1030)。モードAあるいはモードBでの始動であれば(S1030で「NO」)、次のステップS1050に移るが、モードCでの始動であれば(S1030で「YES」)、スタータ36の停止処理がなされる(S1040)。
【0083】
そしてエンジンECU48に対して前記ステップS510にて禁止したエアコンオンを許可する指示を行う(S1050)。このことによりエンジンECU48では、エアコンスイッチがオンであればエアコン用コンプレッサがプーリ16の回転に連動するように切り替えて、エアコンを駆動することができるようになる。
【0084】
次に車両減速時以外か否かが判定される(S1060)。ここで車両減速時とは、例えば走行時にアクセルペダルが完全に戻された状態、すなわち走行時にアイドルスイッチがオンである場合に車両減速時として判断する。したがって車両減速時以外(アイドルスイッチオフ)であれば(S1060で「YES」)、電磁クラッチ10aがオンにされ又はオンが継続され(S1070)、M/G26は発電モードに設定され(S1080)、一旦本処理を終了する。このことにより、通常走行時においては、M/G26は、発電によりバッテリ30,34を蓄電させると共に、各種電気系統の電力源となる。
【0085】
車両減速時であると判定された場合には(S1060で「NO」)、減速時M/G制御処理が実行される(S1090)。この減速時M/G制御処理は、M/G26を回生モードにして、車両減速時の燃料カット時にて車両の走行エネルギーを電気エネルギーとして回収する処理である。
【0086】
上述した本実施の形態1による処理の一例を図8のタイミングチャートに示す。図8では、時刻t0にて自動始動条件が成立することにより、回転駆動モードにはモードAが設定されて、M/G26が正転してエンジン2のクランク軸2aが正転方向に回転し始める。しかし、圧縮圧力に抗して回転することができずにエンジン回転は停止する(時刻t1)。
【0087】
そしてM/G26の正転開始から基準時間Ta後の時刻t2で、エンジン回転は停止していると判定されてモードBが設定される。モードBでは、停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前(時刻t3)まで、M/G26によりクランク軸2aを逆転側に回転させる。次にM/G26によりクランク軸2aを正転して、基準時間Tb後の回転を判定する(時刻t4)。この時もエンジン2のクランク軸2aが回転停止している場合には、更に次にM/G26による2回目のクランク軸2aの逆転(時刻t4〜t5)と正転(時刻t5〜t6)とを実行し、基準時間Tb後の回転を判定する(時刻t6)。この時もエンジン2のクランク軸2aが回転停止している場合には、更に3回目のクランク軸2aの逆転(時刻t6〜t7)と正転(時刻t7〜t8)とを実行し、基準時間Tb後の回転を判定する(時刻t8)。3回目の逆転と正転とを実行してもクランク軸2aが回転開始しない場合には、スタータ36を駆動する。なお、図8の例ではスタータ36の駆動初期には、スタータ36とリングギアとの噛み合わせを確実にするために、エンジン回転数が上がるまで(例えば100rpmに上がるまで)M/G26を一旦停止する期間(時刻t8〜t9)を設けた例を示している。このことにより、クランク軸2aの回転は確実に開始して、以後、燃料噴射によりエンジン2は始動する。
【0088】
上述した実施の形態1の構成において、M/G26が回転出力手段に、スタータ36が第2の回転出力手段に、ステップS610〜S640が正転駆動手段としての処理に、ステップS650,S660,S680,S690,S810,S820,S840〜S860,S890,S900,S940が逆転駆動手段としての処理に、ステップS870,S880が再正転駆動手段としての処理に、ステップS710,S830,S920,S930,S950が回転出力切替手段としての処理に相当する。
【0089】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).自動始動時のクランク軸2aの回転開始時当初に、M/G26の駆動によりクランク軸2aを正転側に回転させている。この最初になされる正転により回転開始ができれば、回転開始は迅速に達成される。しかし、この正転側へのクランク軸2aの回転が停止した場合には、停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、M/G26によりクランク軸2aを逆転側に回転させる。この逆転により、逆転開始時にピストンリングをピストンリング溝内で浮き上がらせることができるので、停止時において圧縮行程上死点直前となった気筒内の圧力を低下させることができる。
【0090】
ところで、最初の正転にてクランク軸2aの回転が停止した場合には、この停止位相は、圧縮圧力により回転抵抗を受けて停止した位相であり、ある気筒が圧縮行程上死点直前の状態にある位相であることを示すものである。この位相は、圧縮行程上死点を0°とした場合に、−10°〜−20°に存在する。したがって、この気筒について、吸気弁が開弁する直前までの逆転角度幅は自ずと決まる。
【0091】
例えば吸気弁の開弁タイミングが−120°であるとすると、−120°の直前まで逆転しても吸気弁は開弁しない。ただし、M/G26による逆転駆動停止後の慣性力でのクランク軸2aの逆転を考慮して、本実施の形態1ではM/G26の逆転駆動による回転角度幅を80°と設定している。このことにより、実際にはクランク軸2aは吸気弁の開弁タイミング(−120°)の直前まで逆転する。
【0092】
したがって、この逆転角度幅(80°)分の逆転駆動を行うのみで、該当する気筒における吸気弁が開弁する直前までクランク軸2aを逆転させることが可能となる。すなわち、最大限クランク軸2aを逆転でき、しかも吸気弁から該当する気筒に大気圧を導入することがない。
【0093】
したがって、次にM/G26の正転駆動によりクランク軸2aを正転側に再回転させた場合に、該当する気筒内の圧力は、圧縮行程上死点直前となっても前回よりも低くなっている。しかも、吸気弁が開弁する直前まで逆転してからの再正転であるので十分な慣性トルクを発生させている。しかも動摩擦であることから摩擦力も小さい。このことにより、回転停止しているエンジン2の回転開始を容易なものとでき、自動始動時においてエンジン2の始動性を向上できる。
【0094】
(ロ).なお、再度正転させた後にも、エンジン2の回転が開始しなかった場合には、更に逆転と再正転とを繰り返している。このことにより一度の逆転及び再正転処理にてエンジン回転開始できなかった場合でも、再度逆転と正転とを繰り返すことができ、エンジン回転開始を一層確実なものとすることができる。
【0095】
(ハ).逆転と再正転とがn回、ここでは3回実行された後においても、エンジン回転が開始しなかった場合には、M/G26とスタータ36とを用いてクランク軸2aを回転させている。このことにより、万一、逆転及び再正転を繰り返してもエンジン2が回転しなかった場合においても、確実にエンジン2を回転開始させることができる。
【0096】
(ニ).上述したエンジン回転開始処理(図5,6)は、エンジン2の自動始動時に起動される。自動始動は運転者の意図しない始動である。したがって、前述したごとく容易にエンジン回転を開始させることができ、十分な始動性が可能となるので、自動始動時に運転者に違和感を与えることがない。
【0097】
(ホ).クランク軸2aの逆転側への回転は、M/G26の駆動により行っている。このように逆転時に積極的にM/G26の駆動力を用いることにより、迅速かつ確実に該当する気筒の吸気弁が開弁する直前まで逆転させることができる。このようにM/G26の駆動力にて積極的に逆転しているので、逆転開始時にピストンリングをピストンリング溝内で確実に浮き上がらせることができ、該当する気筒内の圧力を十分に抜くことができる。
【0098】
更に、本実施の形態1のごとく逆転側への回転時間によってクランク軸2aに必要な角度幅(80°)分の逆転を判断する場合も、逆転速度が安定するので、クランク軸2aを正確な位相位置に逆転させることができるようになる。
【0099】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態1においては、モードCではM/G26とスタータ36との両者を駆動させていたが、スタータ36のみの駆動でも良い。
【0100】
・前記実施の形態1においては、モードBにおける逆転と再正転との繰り返しは、エンジン2が回転開始しない場合には3回行われたが、1回あるいは2回でも良く、また4回以上でも良い。
【0101】
・前記実施の形態1においては、M/G26の逆転角度幅(ここでは80°)は、逆転角度幅に対応する基準時間の経過により判定していたが、エンジン回転数センサの検出値から80°逆転したことを直接検出することにより判断しても良い。
【0102】
・前記実施の形態1においては、クランク軸2aの逆転はM/G26の駆動により行ったが、これ以外に、M/G26は停止して、直前に行われている正転により生じた圧縮圧力による逆転方向のトルクを利用して該当する気筒の吸気弁が開弁する直前まで逆転させても良い。
【0103】
・前記実施の形態1においては、M/G26はエンジン2から車輪への駆動力伝達系外に配置されたものであったが、これ以外にエンジン2から車輪への駆動力伝達系内に配置されたモータを用いて、エンジン2を回転開始する構成であっても良く、前記実施の形態1のエンジン回転開始処理(図5,6)を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1としての車両用内燃機関及びその制御装置のシステム構成図。
【図2】実施の形態1のエコランECUが実行する自動停止処理のフローチャート。
【図3】実施の形態1のエコランECUが実行する自動始動処理のフローチャート。
【図4】実施の形態1のエコランECUが実行するM/G駆動発進始動処理のフローチャート。
【図5】実施の形態1のエコランECUが実行するエンジン回転開始処理のフローチャート。
【図6】実施の形態1のエコランECUが実行する逆転・正転処理のフローチャート。
【図7】実施の形態1のエコランECUが実行する走行時M/G制御処理のフローチャート。
【図8】実施の形態1による処理の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、2a…クランク軸、4…トルクコンバータ、6…A/T、6a…出力軸、10…プーリ、10a…電磁クラッチ、14…ベルト、16,18…プーリ、22…補機類、26…M/G、28…インバータ、30…高圧電源用バッテリ、32… DC/DCコンバータ、34…低圧電源用バッテリ、36…スタータ、38…電動油圧ポンプ、40…エコランECU、42…燃料噴射弁、44…電動モータ、46…スロットルバルブ、48…エンジンECU、50…VSC−ECU。
Claims (8)
- 回転出力手段の駆動にて内燃機関のクランク軸の回転を開始させる内燃機関回転開始装置であって、
クランク軸の回転開始時に、前記回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に回転させる正転駆動手段と、
前記正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合に、該停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させる逆転駆動手段と、
前記逆転駆動手段による逆転側へのクランク軸の回転後に、前記回転出力手段の駆動によりクランク軸を正転側に再回転させる再正転駆動手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関回転開始装置。 - 請求項1記載の構成において、前記逆転駆動手段は、前記正転駆動手段および前記再正転駆動手段による正転側へのクランク軸の回転が停止した場合に、該停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで、クランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項2記載の構成に加えて、前記逆転駆動手段によるクランク軸の逆転側への回転と、前記再正転駆動手段によるクランク軸の正転側への再回転とが、基準回数繰り返された後に、内燃機関の回転が開始しなかった場合には、前記回転出力手段の駆動と第2の回転出力手段の駆動とによるクランク軸の回転または第2の回転出力手段の駆動のみによるクランク軸の回転に切り替えて内燃機関の回転を実行する回転出力切替手段を備えたことを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項3記載の構成において、前記回転出力手段は、内燃機関から車輪への駆動力伝達系内または外に配置されたモータジェネレータであり、前記第2の回転出力手段は、スタータであることを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項1〜4のいずれか記載の構成において、内燃機関の自動停止後に自動始動条件が成立した場合に内燃機関の自動始動のために起動されることを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項1〜5のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の正転側への回転が停止したクランク角位相から予め定めた角度幅分、クランク軸を逆転させることにより、前記停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前までクランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項1〜5のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の正転側への回転が停止したクランク角位相から予め定めた時間、クランク軸を逆転させることにより、前記停止時において圧縮行程上死点直前にある気筒における吸気弁が開弁する直前まで前記クランク軸を逆転側に回転させることを特徴とする内燃機関回転開始装置。
- 請求項1〜7のいずれか記載の構成において、前記逆転駆動手段は、クランク軸の逆転側への回転を前記回転出力手段の駆動により行うことを特徴とする内燃機関回転開始装置。
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