JP3828719B2 - 成形性の優れた鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のパネル類、足廻り、メンバーなどに用いられる鋼管の製造方法に関するものである。特にハイドロフォーム成形(特開平10−175027号公報参照)の用途に好適である。
本発明の鋼管は、表面処理をしないものと、防錆のために溶融亜鉛めっき、電気めっきなどの表面処理を施したものの両方を含む。亜鉛めっきとは、純亜鉛のほか、主成分が亜鉛である合金のめっきも含む。
本発明による鋼管は、特に軸押し力の働くハイドロフォーム成形性に極めて優れており、ハイドロフォーム成形時の自動車用部品の製造効率を向上させることができる。さらに、本発明は高強度鋼管にも適用できるため部品の板厚を低減させることが可能となり、地球環境保全に寄与できるものと考えられる。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化ニーズに伴い、鋼板の高強度化が望まれている。高強度化することで板厚減少による軽量化や衝突時の安全性向上が可能となる。また、最近では、複雑な形状の部位について、高強度鋼の鋼管からハイドロフォーム法を用いて成形加工する試みが行われている。これは、自動車の軽量化や低コスト化のニーズに伴い、部品数の減少や溶接フランジ箇所の削減などを狙ったものである。
このように、ハイドロフォームなどの新しい成形加工方法が実際に採用されれば、コストの削減や設計の自由度が拡大されるなどの大きなメリットが期待される。このようなハイドロフォーム成形のメリットを充分に生かすためには、これらの新しい成形法に適した材料が必要となる。本発明者らは国際公開第WO01/62998号パンフレットに、集合組織を制御した成形性に優れた鋼管について提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
地球環境問題がますます深刻となる中、ハイドロフォーム成形に対してこれまで以上に高強度の鋼管への要求が高まることは必至と考えられるが、その際に成形性が従来以上に問題となってくることは間違いない。本発明は、より一層成形性の良好な鋼管を高いコストをかけることなく製造する方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ハイドロフォーム等の成形性に優れた材料の集合組織およびその制御方法を見出し、これを限定することでハイドロフォーム等の成形性に優れた鋼管を提供するものである。
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)鋼管の軸方向r値が1.4以上、かつ鋼板の1/2板厚における板面の{110}<110>〜{332}<110>の方位群のXランダム強度比の平均が3.5以上、或いは鋼板の1/2板厚における板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が5.0以上の、いずれか一方又は双方である鋼管を製造するに際し、質量%で、
C :0.0005〜0.50%、 Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3.0%、 P :0.001〜0.2%、
S :0.05%以下、 N :0.01%以下
を含有し、さらに
Al,ZrおよびMgの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%
含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋳造スラブを再加熱し、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を44〜83℃として熱間圧延し、巻取った熱延鋼板を造管して得られた、板厚中心における板面の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>及び{112}<110>のすべての方位がX線ランダム強度比で3以下の母管を、650℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱し、縮径率30%以上、板厚減少率5%以上30%以下となる加工を施すことを特徴とする成形性に優れた鋼管の製造方法。
(2)鋼管の軸方向r値が1.4以上、かつ1/2板厚における板面の{110}<110>〜{332}<110>の方位群のXランダム強度比の平均が3.5以上、或いは1/2板厚における板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が5.0以上の、いずれか一方又は双方である鋼管を製造するに際し、質量%で、
C :0.0005〜0.50%、 Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3.0%、 P :0.001〜0.2%、
S :0.05%以下、 N :0.01%以下
を含有し、さらに
Al,ZrおよびMgの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%
含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋳造スラブを再加熱し、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を−175〜−23℃として熱間圧延し、巻取った熱延鋼板を造管して得られた、板厚中心における板面の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>及び{112}<110>のうちの1つ以上の方位がX線ランダム強度比で3超の母管を(Ac 3 −50)℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱し、縮径率30%以上、板厚減少率5%以上30%以下となる加工を施すことを特徴とする成形性に優れた鋼管の製造方法。
【0005】
(3)さらに質量%で、Ti,VおよびNbの1種又は2種以上を合計で0.001〜0.5%含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
(4)さらに質量%で、Bを0.0001〜0.01%含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
(5)さらに質量%で、Sn,Cr,Cu,Ni,Co,WおよびMoの1種又は2種以上を合計で0.001〜2.5%含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。成分含有量は質量%である。
C:高強度化に有効で0.0005%以上の添加とするが、集合組織を制御する上では過度の添加は好ましいものではなく、上限を0.50%とする。0.001〜0.3%がより好ましく、0.002〜0.2%がさらに好ましい範囲である。
【0007】
Si:安価に機械的強度を高めることが可能であり、要求される強度レベルに応じて添加すれば良いが、過剰の添加はメッキのぬれ性や加工性の劣化を招くばかりか良好な集合組織形成を阻害するので、上限を2.5%とした。下限を0.001%としたのは、これ未満とするのは製鋼技術上困難なためである。
【0008】
Mn:高強度化に有効な元素であるため下限を0.01%とした。また、過剰添加は延性の低下を招くため、上限を3.0%ととした。
【0009】
P:高強度化に有効な元素であるので、0.001以上添加する。0.2%超添加すると熱間圧延や縮径加工時に欠陥が発生したり、成形性が劣化したりするので、0.2%を上限とする。
【0010】
S:不純物であり含有量は低いほど好ましく、熱間割れを防止するために0.05%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
【0011】
N:不純物であり含有量は低いほど好ましく、加工性を劣化させるため上限を0.01%以下とする。0.005%以下がより好ましい範囲である。
Al,Zr,Mg:脱酸元素として有効である。一方過剰添加は酸化物、硫化物や窒化物の多量晶出・析出招き清浄度が劣化して、延性を低下させてしまう上、めっき性を損なう。したがって、これらの1種または2種以上を、合計で0.0001〜0.50%添加する。
【0012】
鋼板の1/2板厚での板面の{110}<110>〜{332}<110>の方位群および{110}<110>のX線ランダム強度比:ハイドロフォーム成形等を行う上で最も重要な特性値である。
板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強度比を求めたときの、{110}<110>〜{332}<110>の方位群での平均が3.5以上とした。この方位群に含まれる主な方位は{110}<110>、{661}<110>、{441}<110>、{331}<110>、 {221}<110>、{332}<110>である。
【0013】
本発明の鋼管には{443}<110>、{554}<110>および{111}<110>も発達する場合があり、かつこれらはハイドフォーム成形にとって好ましい方位であるが、深絞り用冷延鋼板に一般に認められる方位でもあるので、区別する意味であえて除外した。すなわち、深絞り冷延鋼板を素材として電縫溶接などによって単に鋼管にしたのでは得られない結晶方位群を本発明の鋼管は有するのである。
【0014】
また本発明では、高r値冷延鋼板の代表的な結晶方位である{111}<112>や{554}<225>はほとんどなく、これらはいずれも2.0以下、さらに好ましくは1.0未満である。これらの各方位のX線ランダム強度比は、 {110}極点図よりベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110},{100},{211},{310}極点図のうち複数の極点図を基に級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
例えば、後者の方法によって各結晶方位のX線ランダム強度比を求めるには、3次元集合組織のφ2=45°断面における(110)[1−10]、(661)[1−10]、(441)[−10]、(331)[1−10]、(221)[1−10]、(332)[1−10]強度で代表させる。
【0015】
なお、本発明の集合組織は通常の場合、φ2=45°断面において上記の方位群の範囲内に最高強度を有し、この方位群から離れるにしたがって徐々に強度レベルが低下するが、X線の測定精度の問題や鋼管製造時の軸周りのねじれの問題、X線試料作製の精度の問題などを考慮すると、最高強度を示す方位がこれらの方位群から±5°ないし10°程度ずれる場合も有りうる。
【0016】
{110}<110>〜{332}<110>方位群の平均X線ランダム強度比とは、上記の各方位のX線ランダム強度比の相加平均である。上記方位のすべての強度が得られない場合には、{110}<110>、{441}<110>、{221}<110>の方位の相加平均で代替しても良い。中でも、{110}<110>は重要であり、この方位のX線ランダム強度比が5.0以上であることが特に望ましい。
【0017】
{110}<110>〜{332}<110>方位群の平均強度比が3.5以上でかつ{110}<110>の強度比が5.0以上であれば、特にハイドロフォーム用鋼管としては更に好適であることは言うまでもない。また、成形困難な場合には上記方位群の平均強度比が5.0以上であること、{110}<110>の強度比が7.0以上であることのうち、少なくとも1つを満たすことが望ましい。
その他の方位、例えば{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{223}<110>などの強度は、製造条件によって種々変化するので特に限定しないが、これらの平均強度が3.0以下であることが好ましい。
【0018】
鋼管のX線回折を行う場合には、鋼管より弧状試験片を切り出し、これをプレスして平板としX線解析を行う。また、弧状試験片から平板とするときは、試験片加工による結晶回転の影響を避けるため極力低歪みで行うものとし、加工により導入される歪み量の上限を10%以下で行うこととした。
【0019】
このようにして得られた板状の試料について、機械研磨や化学研磨などによって板厚中心付近まで研磨し、バフ研磨によって鏡面に仕上げた後、電解研磨や化学研磨によって歪みを除去すると同時に板厚中心層が測定面となるように調整する。なお、鋼板の板厚中心層に偏析帯が認められる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で偏析帯のない場所について測定すればよい。さらにX線測定が困難な場合には、EBSP法やECP法により測定しても差し支えない。
【0020】
本発明の集合組織は、上述の通り板厚中心または板厚中心近傍の面におけるX線測定結果により規定されるが、中心付近以外の板厚においても同様の集合組織を有することが好ましい。しかしながら鋼管の外側表面〜板厚1/4程度までは、後述する縮径加工によるせん断変形に起因して集合組織が変化し、上記の集合組織の要件を満たさない場合もあり得る。なお、{hkl}<uvw>とは、上述の方法でX線用試料を採取したとき、板面に垂直な結晶方位が<hkl>で鋼管の長手方向が<uvw>であることを意味する。
【0021】
本発明の集合組織に関する特徴は、通常の逆極点図や正極点図だけでは表すことができないが、たとえば鋼管の半径方向の方位を表す逆極点図を板厚の中心付近に関して測定した場合、各方位のX線ランダム強度比は以下のようになることが好ましい。
<100>:2以下、<411>:2以下、<211>:4以下、<111>:15以下、<332>:15以下、<221>:20.0以下、<110>:30.0以下。
また、軸方向を表す逆極点図においては、
<110>:10以上、上記の<110>以外の全ての方位:3以下。
【0022】
鋼管のr値は、集合組織の変化によって種々変化するが、少なくとも軸方向のr値は1.4以上となる。製造条件によっては軸方向のr値が3.0を超える場合もある。r値の異方性については特に限定するものではない。すなわち、軸方向のr値が円周方向や半径方向のr値よりも小さい場合もあれば、その逆になる場合もある。なお、例えば高r値冷延鋼板を単に電縫溶接により鋼管とした場合、必然的に軸方向のr値が1.4以上となる場合が多い。しかしながら、本発明は既述の集合組織を有し、同時にr値が1.4以上である点において、そのような鋼管とは明瞭に区別されるものである。
【0023】
r値の評価は、JIS11号管状試験片またはJIS12号弧状試験片によって行えば良い。そのときの歪量は伸び率15%で評価するが、均一伸びが15%未満のときには、均一伸びの範囲内の歪量で評価する。なお、試験片はシーム部以外から試料を採取することが望ましい。
【0024】
次に前記(3)〜(5)の発明の成分限定理由について説明する。
【0025】
Nb,Ti,V:必要に応じて添加する。Nb,Ti,Vは、これらの1種又は2種以上の合計で0.001%以上の添加で炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼材を高強度化したり加工性を向上することが出来るが、その合計が0.5%を超えた場合には、母相であるフェライト粒内もしくは粒界に多量の炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として析出して、延性を低下させることから、添加範囲を0.001〜0.5%とした。
【0026】
B:必要に応じて添加する。Bは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加量が0.01%を超えるとその効果が飽和するばかりでなく、必要以上に鋼板強度を上昇させ、加工性も低下させることから、0.0001〜0.01%とした。
【0027】
Ni,Cr,Cu,Co,Mo,W,Sn:Ni,Cr,Cu,Co,Mo,W,Snは強化元素であり、必要に応じてこれらの1種又は2種以上の合計で0.001%以上の添加とした。また、過剰の添加はコストアップや延性の低下を招くことから、2.5%以下とした。
【0029】
また、不可避的不純物として、O,Zn,Pb,As,Sbなどをそれぞれ0.01%以下の範囲で含んでも、本発明の効果を失するものではない。
【0030】
さらに製造にあたっては、高炉、電炉等による溶製に続き、各種の2次製錬を行いインゴット鋳造や連続鋳造を行い、連続鋳造の場合には室温付近まで冷却することなく熱間圧延するCC−DRなどの製造方法を組み合わせて製造してもかまわない。
【0031】
鋳造インゴットや鋳造スラブを再加熱して熱間圧延を行っても良いのは言うまでもない。熱間圧延の加熱温度は特に限定するものではなく、目的とする仕上げ温度を具現化するのに適切な温度であれば良い。
熱間圧延の1パス以上について潤滑を施しても良い。また、粗圧延バーを互いに接合し、連続的に仕上げ熱延を行っても良い。粗圧延バーは一度巻き取っても再度巻き戻してから仕上げ熱延に供してもかまわない。
熱延後の冷却速度や巻き取り温度は特に限定するものではない。熱間圧延後は酸洗することが望ましい。さらにスキンパス圧延を施しても良い。
【0032】
母管の製造にあたっては、通常は電縫溶接を用いるが、TIG,MIG,レーザー溶接、UOや鍛接等の溶接・造管手法等を用いることも出来る。これらの溶接鋼管製造において、溶接熱影響部は必要とする特性に応じて局部的な固溶化熱処理を単独あるいは複合して、場合によっては複数回重ねて行っても良く、本発明の効果をさらに高める。この熱処理は溶接部と溶接熱影響部のみに付加することが目的であって、製造時にオンラインであるいはオフラインで施工できる。
【0033】
母管を縮径加工する前の加熱温度は、本発明において重要である。加熱温度は、熱延鋼板または加熱縮径前の母管の板厚中心における板面の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>のうちの、すべての方位がX線ランダム強度比で3以下の場合は650℃以上1200℃以下の温度範囲とする。650℃未満の温度では縮径加工が困難であり、また縮径後の組織が加工組織となるため、成形性を確保するために再度加熱する必要が生じ、コストアップとなる。
加熱温度が1200℃超では、鋼管表面に過度にスケールが生成し、表面性状が劣悪になるばかりか成形性も劣化する。1050℃以下がより好ましい上限である。母管の集合組織がこのようになるのは、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を44〜83℃として熱間圧延する場合である。
【0034】
一方、縮径加工に供する母管の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>のうちの1つ以上の方位がX線ランダム強度比で3超の場合には、(Ac3 −50)℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱する。母管の集合組織がこのような場合には、縮径前の加熱温度を(Ac3 −50)℃以上にしないと、その後適切な縮径加工を施してもハイドロフォーム成形に好ましい集合組織が形成されない。すなわちα+γ2相域の高温またはγ単相域に一度加熱することで、母管の集合組織が弱くなり、引き続き縮径加工を行うことで初めて目的とする集合組織が得られるのである。このときの加熱温度はAc3 点以上であればより一層好ましい。
【0035】
加熱温度を1200℃超としても、このような効果は飽和し、上記のスケールの問題が発生するので、1200℃を上限とする。1050℃がより好ましい上限である。この場合、加熱後一旦冷却して再度縮径可能な温度域まで加熱してもかまわない。母管の集合組織がこのようになるのは、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を−175〜−23℃として熱間圧延した場合である。
【0036】
なお、熱延鋼板と上記の母管の集合組織が同等と判断される場合には、熱延板の集合組織で母管の集合組織を代用しても良い。{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>のX線ランダム強度比とは、3次元集合組織のφ2=45°断面における、(001)[1- 10]、(116)[1- 10]、 (114)[1- 10]、(114)[1- 10]で代表させれば良い。
【0037】
縮径の方法も重要である。すなわち縮径率を30%以上、板厚減少率5%以上30%未満となるように縮径する。縮径率が30%未満では良好な集合組織が十分に発達しない。好ましくは50%以上縮径する。縮径率の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、生産性の観点から90%以下とすることが好ましい。また、縮径率を30%以上とするだけでは不十分で、板厚を減少させながら縮径することが必須である。板厚が増加したり変化しない場合には良好な集合組織を得ることが困難となる。したがって板厚減少率は5〜30%とする。好ましくは10〜25%とする。
【0038】
なお縮径率は、{(縮径加工前の母管の直径−縮径完了後の鋼管の直径)/縮径加工前の母管の直径)}×100(%)で、板厚減少率は{(縮径加工前の母管の板厚−縮径完了後の鋼管の板厚)/縮径加工前の母管の板厚)}×100 (%)定義される。なお、鋼管の直径は鋼管の外形を測定する。
縮径完了温度はα+γ域、α単相域、α+セメンタイト域、α+パーライト域のいずれかであることが望ましい。これは上記の縮径加工がα相に一定量以上加わることが良好な集合組織を得るために必要だからである。
また、縮径時に潤滑を施すことは成形性向上の点で望ましい。
【0039】
縮径加工は、複数のロールを組み合わせて多段パスのラインを通板することによって行っても良いし、ダイスを用いて引き抜いて行っても良い。
本発明に係る鋼管は、延性を確保するためフェライトを面積率で50%以上含有することが好ましいが、フェライト以外の金属組織として、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトおよび炭窒化物等の組織を含んでも良い。
【0040】
【実施例】
表1に示す成分の各鋼を溶製して1200℃に加熱後、表2に示す仕上げ温度で熱間圧延して巻き取った。酸洗に引き続き電縫溶接により外径100〜200mmに造管した後、所定の温度に加熱して、縮径加工を行った。
得られた鋼管の加工性の評価は以下の方法で行った。
前もって鋼管に10mmφのスクライブドサークルを転写し、内圧と軸押し量を制御して、円周方向への張り出し成形を行った。バースト直前での最大拡管率を示す部位(拡管率=成形後の最大周長/母管の周長)の軸方向の歪εΦと円周方向の歪εθを測定した。
【0041】
この2つの歪の比ρ=εΦ/εθと最大拡管率をプロットし、ρ=−0.5となる拡管率Reをもってハイドロフォームの成形性指標とした。X線測定は、縮径前の母管および縮径後の鋼管から弧状試験片を切り出し、プレスして平板として行った。(110)、(200)、(211)、(310)極点図を測定し、これらを用いて級数展開法により3次元集合組織を計算し、φ2=45°断面における各結晶方位のX線ランダム強度比を求めた。
【0042】
表2に、母管の板厚中心における{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{112}<110>のX線ランダム強度比、表3には、縮径加工前の加熱温度、縮径率、板厚減少率および縮径後の{110}<110>および{110}<110>〜{332}<110>の方位群のX 線ランダム強度比の平均値、鋼管の引張強度、軸方向のr値さらにはハイドロフォーム成形における最大拡管率を示す。
本発明例ではいずれも良好な集合組織とr値を有し、最大拡管率も高いのに対して、本発明外の例では集合組織、r値が好ましくなく、最大拡管率も低い。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、ハイドロフォーム等の成形性に優れた材料の集合組織およびその制御方法が得られ、ハイドロフォーム等の成形性に優れた鋼管を製造することができる。
Claims (5)
- 鋼管の軸方向r値が1.4以上、かつ1/2板厚における板面の{110}<110>〜{332}<110>の方位群のXランダム強度比の平均が3.5以上、或いは1/2板厚における板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が5.0以上の、いずれか一方又は双方である鋼管を製造するに際し、質量%で、
C :0.0005〜0.50%、
Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3.0%、
P :0.001〜0.2%、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下
を含有し、さらに
Al,ZrおよびMgの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%
含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋳造スラブを再加熱し、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を44〜83℃として熱間圧延し、巻取った熱延鋼板を造管して得られた、板厚中心における板面の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>及び{112}<110>のすべての方位がX線ランダム強度比で3以下の母管を、650℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱し、縮径率30%以上、板厚減少率5%以上30%以下となる加工を施すことを特徴とする成形性に優れた鋼管の製造方法。 - 鋼管の軸方向r値が1.4以上、かつ1/2板厚における板面の{110}<110>〜{332}<110>の方位群のXランダム強度比の平均が3.5以上、或いは1/2板厚における板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が5.0以上の、いずれか一方又は双方である鋼管を製造するに際し、質量%で、
C :0.0005〜0.50%、
Si:0.001〜2.5%、
Mn:0.01〜3.0%、
P :0.001〜0.2%、
S :0.05%以下、
N :0.01%以下
を含有し、さらに
Al,ZrおよびMgの1種または2種以上を合計で0.0001〜0.5%
含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋳造スラブを再加熱し、(仕上げ温度−Ac 3 )[℃]を−175〜−23℃として熱間圧延し、巻取った熱延鋼板を造管して得られた、板厚中心における板面の{001}<110>、{116}<110>、{114}<110>及び{112}<110>のうちの1つ以上の方位がX線ランダム強度比で3超の母管を(Ac3 −50)℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱し、縮径率30%以上、板厚減少率5%以上30%以下となる加工を施すことを特徴とする成形性に優れた鋼管の製造方法。 - さらに質量%で、Ti,VおよびNbの1種又は2種以上を合計で0.001〜0.5%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
- さらに質量%で、Bを0.0001〜0.01%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
- さらに質量%で、Sn,Cr,Cu,Ni,Co,WおよびMoの1種又は2種以上を合計で0.001〜2.5%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形性の優れた鋼管の製造方法。
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