JP3822006B2 - シチジン5’−ジリン酸コリンの製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シチジン5’−ジリン酸コリン(CDP−コリン)の効率的な製造法およびそれに使用する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CDP−コリンは医薬品として頭部外傷、脳手術に伴う意識障害、脳卒中などの改善治療に用いられている有用な化合物である。
CDP−コリンの製造方法としては、化学合成法、酵母などの微生物を用いる方法などが古くから知られている。しかし、これらいずれの方法もシチジン5’−モノリン酸(CMP)1モルに対するCDP−コリンの合成収率は低く、低コストでCDP−コリンを製造できる効率的な方法とはいえなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近、丸山らはオロット酸より酵素処理によりCDP−コリンを製造する方法を開発した(特開平5−276974)。しかしながら、該方法ではオロット酸からウリジン5’−トリリン酸(UTP)を製造するための微生物を培養する工程とUTPからのCDP−コリンの合成に関与する3種類の酵素〔CTPシンセターゼ、コリンホスフェートシチジルトランスフェラーぜ(CCT)およびコリンキナーゼ(CKI)〕を生産する組換え大腸菌を培養する工程があり、微生物培養の手間と培養設備の観点から必ずしも簡便な方法とは言えない。また、オロット酸1モルに対するCDP−コリンの合成収率も必ずしも高くなく、満足し得る方法ではない。
【0004】
また、山下らはCCT遺伝子を含む組換えDNAで形質転換された酵母菌体を用い、CMPとホスホコリンからCMP1モルに対し90%前後の合成収率でCDP−コリンを製造する方法を開発した(特許第2724825号)。該方法は、セルフクローニングによりCDP−コリンの合成に関与するCCTの生産を増強した酵母を用いることで、高収率でCDP−コリンを合成できるものの、用いる組換え酵母菌体はCMPからのCDP−コリン合成に関与する一連の酵素の供給を担うこととなり、しかもCCT以外のCDP−コリン合成関連酵素の生産性は必ずしも高くないため、合成反応には多量の酵母菌体を使用する必要があった。このため、組換え酵母の培養量が膨大となり、結果的には必ずしも実用的な方法とは言えず、実際には実施されるに至っていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酵母菌体がヌクレオシド5’−モノリン酸を効率的にヌクレオシド5’−トリリン酸に転換する活性を有することに着目し、CMPからのCDP−コリンの効率的な合成法を確立すべく、CMPとコリン(あるいはホスホリルコリン)を基質とする酵母添加反応液に酵母由来のCCT及びCKIを生産する組換え大腸菌、その処理物あるいは酵素抽出液を添加して反応することで、またはCMPとホスホコリンを基質とする酵母添加反応液にCCTを生産する組換え大腸菌、その処理物あるいは酵素抽出液を添加して反応することでCDP−コリンが合成できるかどうか検討した結果、コリンを用いた場合には意外なことに目的とするCDP−コリンはまったく合成されないか、合成されても極くわずかな量しか生成されないこと、およびホスホコリンを用いた場合であっても満足しうる量のCDP−コリンを合成することができないことを確認した。
【0006】
この原因を究明する過程において、CDP−コリンの低収率は、酵母由来のCCT並びにCKIは大腸菌において安定に高生産されないことに起因していることを突き止めた。
そこで本発明者らは、大腸菌における当該酵素の発現経過を検討した結果、完全には解明されなかったものの、発現後のCCTおよびCKIを不安定化する要因の1つにプロテアーゼによる加水分解が関与しているものと推測された。そこで、使用する酵素にプロテアーゼ抵抗性を付与し、安定に高発現させるための方策に関し種々検討を重ねた結果、N末端またはC末端のアミノ酸を複数個欠失させて得られるタンパク質は目的とする酵素活性を維持し、発現量が増大するとともに、プロテアーゼに対しても抵抗性を示し、大腸菌においても安定に高生産される系を構築できることを見いだし、このような高生産系で得られた酵素タンパク質を使用することで効率的にCDP−コリンを合成することを確認し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンホスフェートシチジルトランシフェラーゼ(CCT)活性を有する酵素タンパク質、および(d)〜(f)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンキナーゼ(CKI)活性を有する酵素タンパク質の2種類の酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、シチジン5’−モノリン酸(CMP)及びコリンを反応させてシチジン5’−ジリン酸コリン(CDP-コリン)を製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法に関するものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片、
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA断片、
(e)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(f)上記(d)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0008】
また、本発明は、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCCT活性を有する酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、CMP及びホスホリルコリンを反応させてCDP-コリンを製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法に関するものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0009】
さらに、本発明は、(1)配列番号1で示される塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、(2)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、または(3)上記(1)のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0010】
さらにまた、本発明は、(1)配列番号2で示される塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、(2)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、または(3)上記(1)のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の特徴は、反応系に添加するCCTとして、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCCT活性を有する酵素タンパク質、および必要によりCKIとして以下の(d)〜(f)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCKI活性を有する酵素タンパク質を使用することにある。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片、
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA断片、
(e)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(f)上記(d)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0012】
上記(a)記載のDNA断片は、酵母CCTをコードする遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片である。具体的には、図1に示す塩基配列中、塩基番号1〜1208番目で示される配列が酵母のCCT構造遺伝子に相当し、このCCT遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分(66塩基)を欠失させたものが配列番号1で示される塩基配列である。
上記(a)のDNA断片と同等の機能、すなわちCCT活性を維持し、プロテアーゼに対する抵抗性を示す限り、配列番号1で示される塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたDNA断片、またはこれらのDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片も本発明で使用可能である。
【0013】
また、上記(d)記載のDNA断片は、酵母CKIをコードする遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片である。具体的には、図1に示す塩基配列中、塩基番号1223〜2881番目で示される配列がCKIの構造遺伝子に相当し、このCKI遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分(87塩基)を欠失させたものが配列番号2で示される塩基配列である。
上記(d)のDNA断片と同等の機能、すなわちCKI活性を維持し、プロテアーゼに対する抵抗性を示す限り、配列番号2で示される塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたDNA断片、またはこれらのDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片も本発明で使用可能である。
なお、本発明でいうストリンジェントな条件下での反応とは、5xSSC(1xSSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶解させたもの)、0.1%(w/v)N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、0.02%(w/v)SDS、0.5%(w/v)ブロッキング試薬を含む溶液を用い、60℃で20時間程度のハイブリダイゼーション反応を行うことを意味する。
【0014】
このような特定のDNA断片を使用するとき、酵素タンパク質の発現量を最大にすることができ、生産された後の安定性も向上することが本発明者らの実験で初めて確認された。
DNA断片の調製は、既にクローン化され、その全塩基配列が決定されており、酵母のCCT遺伝子(Eur. J. Biochem., 169, 477-486, 1987)およびCKI遺伝子(J. Biol. Chem., 264, 2053-2059, 1989)を参考に公知の組換えDNA手法(例えば「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」Cold Spring Harbor Laboratory (1989))をクローン化後、ヌクレアーゼ等の酵素を用いて消化させることにより容易に実施することができる。
また、調製したDNA断片を用い発現ベクターの調製、発現ベクターを用いたCCTおよびCKI活性を有する酵素タンパク質の調製なども分子生物学の分野に属する技術者にとっては周知の技術であり、例えば(「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」Cold Spring Harbor Laboratory (1989))に従って行うことができる。
【0015】
すなわち、宿主微生物としては、CCT活性またはCKI活性を有する酵素タンパク質が発現でき、CDP−コリンの製造に適用できるものであればいずれも使用可能であり、培養及び酵素調製の簡便さから大腸菌が適当である。具体的には、組換えDNA実験に使用されるK12株、C600菌、JM105菌、JM109菌(Gene, 33, 103-119(1985))などが使用可能であり、特にプロテアーゼ欠損株が好ましい。また、発現用ベクターとしては大腸菌内で複製可能であれば特に限定されないが、pBR322(Gene, 2, 95-113, 1977)あるいはpUC18(Gene, 33, 103-119, 1985)など、あるいはそれら誘導体が使用できる。このようなベクターと上記DNA断片を用いて、大腸菌の菌体中で自発現可能となるように発現制御シグナル(転写開始及び翻訳開始シグナル)をその上流に連結した組換え発現ベクターを作製する。
【0016】
このような発現制御シグナルとしては、人為的制御が可能で、酵素タンパク質の発現量を飛躍的に上昇させるような強力な転写開始並びに翻訳開始シグナルを用いることが望ましい。具体的には、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80,21(1983)、Gene,20,231(1982))、trcプロモーター(J.Biol.Chem.,260,3539(1985))などを例示することができる。
作製した組換えべクターを用いて大腸菌を形質転換する。大腸菌を形質転換する方法はすでに多くの方法が報告されており、たとえば、低温下、塩化カルシウム処理して菌体内にプラスミドを導入する方法(J.Mol.Biol.,53,159(1970))により大腸菌を形質転換することができる。
【0017】
得られた形質転換体は当該形質転換体が増殖可能な培地中で増殖させ、さらにクローン化したCCT活性ならびにCKI活性を有する酵素タンパク質の発現を誘導して菌体内に当該酵素タンパク質が大量に蓄積するまで培養を行う。
培地としてはブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%食塩)などを使用することができる。また、ベクターとしてプラスミドを用いた場合には、培養中におけるプラスミドの脱落を防ぐために適当な抗生物質(プラスミドの薬剤耐性マーカーに応じ、アンピシリン、カナマイシンなど)の薬剤を適当量培養液に加えて培養する。
【0018】
形質転換体の培養は、低温で培養することで上記酵素タンパク質を安定に生産させることができるので、当該培地に種菌を接種後、20〜30℃で、好ましくは20〜28℃で10〜50時間程度必要により通気撹拌しながら培養する。
また、酵素タンパク質の産生を誘導する必要がある場合には、用いたプロモーターで常用されている方法で該遺伝子の発現を誘導する。例えば、lacプロモーターやtacプロモーターを使用した場合には、培養中期に発現誘導剤であるイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと略称する)を適当量添加する。また、使用するプロモーターが構成的に転写活性を有する場合には、特に発現誘導剤を添加する必要はない。
【0019】
反応液に添加する酵素タンパク質としては、上記の方法で得られる培養液から遠心分離、膜分離などの固液分離手段で回収した微生物の菌体を利用することも可能であるが、該微生物の処理物、該処理物から得られる酵素調製物を利用することもできる。
微生物の処理物としては、上記回収した微生物菌体を、機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理して得られる菌体処理物または菌体の細胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
酵素調製物としては、上記菌体処理物から当該酵素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵素または精製酵素を例示することができる。
【0020】
また、反応系に添加する酵母菌体としては、CMPをシチジン5’−トリリン酸(CTP)に変換できる酵母であればよく、なかでも市販のパン酵母、あるいはワイン酵母を用いることで酵母菌体製造の過程が省略でき、極めて有利である。また、酵母乾燥菌体、酵母生菌体いずれの形態も利用可能である。酵母菌体の使用濃度としては、乾燥重量として1〜5%(w/v)の範囲から適宜設定することができる。
基質として使用するCMP、コリンまたはホスホリルコリンは市販品を使用することができる。各基質の使用濃度としては1〜200mM、好ましくは50〜150mMの範囲から適宜設定できる。
【0021】
CDP−コリンの合成反応は、例えば水溶液、好ましくはリン酸緩衝液(pH6.0〜8.0)中、酵母菌体、CMP、コリン(またはホスホリルコリン)を添加し、さらにCCT活性を有する酵素タンパク質、CKI活性を有する酵素タンパク質(ホスホリルコリンを使用した場合には不要)をそれぞれ0.01ユニット/ml以上、好ましくは0.04〜1.0ユニット/ml添加し、5〜30℃、好ましくは20〜30℃で10〜72時間程度、必要により撹拌しながら反応させることにより実施できる。
【0022】
なお、上記酵素反応は、無機リン酸及びエネルギー源を反応系に添加して行うのが望ましい。使用する無機リン酸としては、リン酸カリウムなどのリン酸塩をそのまま使用してもよく、リン酸緩衝液の形態で使用してもかまわない。無機リン酸の使用濃度は、10〜500mM、好ましくは100〜300mMの範囲から適宜選定することができる。また、エネルギー源としてはグルコース、フラクトースなどの糖類または酢酸、クエン酸などの有機酸を使用することができ、それぞれ10〜500mM、好ましくは20〜400mMの範囲から適宜選定することができる。
このようにして得られたCDP−コリンは、通常の単離精製手段(イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、塩析など)により単離精製することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないことは明らかである。なお、実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、並びに大腸菌の形質転換法は全て「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」(Sambrookら編、Cold spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (1989))に従って行った。また、制限酵素、AmpliTaqDNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼは宝酒造(株)より入手した。
また、実施例において、反応液中のCDP−コリンの定量にはHPLC法により行った。具体的には、分離には日立社製の3013−Nカラムを用い、溶出液としてはA液;0.12mM NH4Cl、0.2mM KH2PO4、0.2mM KH2PO4、5%(v/v)アセトニトリル、B液;500mM NH4Cl、83mM KH2PO4、83mM K2HPO4、5%(v/v)アセトニトリルを用い、0〜50%B液(0−20分リニアーグラジエント)、100%B液(20−25分)の条件で分析を行った。
【0024】
実施例1
(1)発現用プラスミドpTrc12−6の作製
プラスミドベクター πAG1(プラスミドベクター πAG1を保持した大腸菌 K−12株 TNC111菌の寄託番号:FERM BP−6901号:平成11年9月30日生命工学工業技術研究所寄託)を制限酵素EcoRIで切断後、T4DNAポリメラーゼを用いてDNA末端を平滑化し、さらにT4DNAリガーゼを用いてpBglIIリンカーを付与した。該DNAを制限酵素BglII及びBamHIで切断し、カナマイシン耐性遺伝子を含む1.8kbのBglII−BamHI断片を調製した。
次にpTrc99ADNAを制限酵素PvuIで切断後、Bal31ヌクレアーゼによる部分消化を行い、β―ラクタマーゼ遺伝子を欠失させ、さらにpBglIIリンカーをT4 DNAリガーゼを用いてDNA末端に付与し、さらに制限酵素BglIIで切断した。該DNAと先に調製したカナマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片をT4DNAリガーゼを用いて連結し、反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換した。
得られたカナマイシン耐性形質転換体より、プラスミドpTrc12−6を得た。pTrc12−6は、pTrc99Aのβ―ラクタマーゼ遺伝子が完全に欠失し(position 567―1816bpが欠失)、その欠失部位にTn903由来のカナマイシン耐性遺伝子が挿入されたものである。
【0025】
(2)CCT遺伝子のクローニング
酵母 Saccharomyces cerevisiae DBY746(ATCC 44773)の染色体DNAを公知の方法(Biochim. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により酵母CCT遺伝子を増幅した。
プライマー(A):5'-TACCATGGCAAACCCAACAAGGGA-3'
プライマー(B):5'-TATCTAGAGGGGCTCAGTTCGCTGATT-3'
PCRによるCTT遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.5μg、プライマーDNA(A)(B)各々0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0026】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.8kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素NcoI及びXbaIで切断し、同じく制限酵素NcoI及びXbaHIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc12−CCTを単離した。
pTrc12−CCTは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のNcoI−XbaHI切断部位に酵母CCT遺伝子を含有するNcoI−XbaI DNA断片が挿入されたものである。
【0027】
(3)CKI遺伝子のクローニング
酵母 Saccharomyces cerevisiae DBY746(ATCC 44773)の染色体DNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により酵母CKI遺伝子を増幅した。
プライマー(C):5'-ATTCTAGAGGAGCAAAAGATGGTACAAGAATCA-3'
プライマー(D):5'-ATCTGCAGGAATTCGTATACGTATTACA-3'
PCRによるCKI遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.5μg、プライマーDNA(C)(D)各々0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0028】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、2.0kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素XbaI及びPstIで切断し、同じく制限酵素XbaI及びPstIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc12−CKIを単離した。
pTrc12−CKIは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のXbaI−PstI切断部位に酵母CKI遺伝子を含有するXbaI−PstI DNA断片が挿入されたものである。
【0029】
(4)CCT及びCKIの調製
プラスミドpTrc12−CCTを制限酵素NcoI及びXbaIで消化し、CCT遺伝子を含むNcoI−XbaI断片を分離精製した。該断片とNcoI及びXbaIで切断したプラスミドpTrc12−CKI DNAとT4DNAリガーゼを用いて連結し、連結反応液を用いた大腸菌JM109を形質転換した。得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−CCK8を単離した。pTrc−CCK8は、pTrc99Aのtrcプロモーター下流に酵母CCT及びCKI遺伝子が連結されて挿入されたものである。
プラスミドpTrc−CCK8を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847号:平成11年8月18日 生命工学工業技術研究所寄託)を形質転換し、得られた形質転換体を、20μg/mlのカナマイシンを含有する2xYT培地 300mlに植菌し、37℃で振とう培養した。4x108菌/mlに達した時点で、培養液に終濃度0.25mMになるようにIPTGを添加し、さらに28℃で20時間振とう培養を続けた。
【0030】
培養終了後、遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、30mlの緩衝液〔50mMトリス塩酸(pH7.5)、0.5mM EDTA〕に懸濁した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000xg、10分)により菌体残渣を除去した。このように得られた上清画分を酵素液とした。酵素液におけるCCT活性は0.84ユニット/mg蛋白、CKI活性は0.06ユニット/mg蛋白であった。
さらに、酵素生産の過程をタイムコースを追って調べた結果、IPTG誘導後、CCT、CKIとも生産されるものの、その量は必ずしも高くなく、しかも生産された酵素の活性が徐々に失われてゆき、その原因の1つとしてプロテアーゼによる加水分解が推定された。
【0031】
なお、本発明における各種酵素の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出したものである。
(CCT活性の測定と単位の算出法)
5mM CTP、5mM ホスホコリン、25mM 塩化マグネシウムを含有する100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加し、28℃で反応させる。反応終了後100℃で1分間の熱処理を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応液中のCDP−コリン量を分析する。28℃で1分間に1μmoleのCDP−コリンを生成する活性を1単位(ユニット)とする。
(CKI活性の測定と単位の算出法)
5mM CTP、5mM 塩化コリン、5mM ATP、25mM 塩化マグネシウム、1ユニット/ml CCTを含有する100mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加し、28℃で反応を行い、100℃で1分間の熱処理により反応を停止させる。反応液中のCDP−コリン量をHPLC法により定量する。28℃で1分間に1μmoleのCDP−コリンの生成する活性を1単位(ユニット)とする。
【0032】
(5)酵母CCTをコードする遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片(CTR−1)の調製
上記(4)で構築、単離したpTrc−CCK8プラスミドをテンペレートとして、前述のプライマーDNA(A)と下に示すプライマーDNA(E)を常法に従って合成し、PCR法によりCTR−1を増幅した。
プライマー(E):5'-TACCATGGCAAACCCAACAACAGGGA-3'
PCRによるCTR−1の増幅は、反応液100μl中(50mM 塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA(A)(E)各々 0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、3分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0033】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.2kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素NcoI及びBamHIで切断し、同じく制限酵素NcoI及びBamHIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847)を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−CTR1を単離した。
pTrc−CTR1は、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のNcoI−BamHI切断部位に3’末端66bpを欠失した酵母CCT構造遺伝子を含有するNcoI−BamHIDNA断片が挿入されたものである。
【0034】
(6)酵母CKIをコードする遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片(CKF−A)の調製
上記(4)で構築、単離したpTrc−CCK8プラスミドをテンペレートとして、先に示したプライマーDNA(D)と以下に示すプライマーDNA(F)を常法に従って合成し、PCRによりCKF−Aを増幅した。
プライマー(F):5'-TGTCTAGATGGTAACACGCCAACGTTCCTC-3'
PCRによるCKF−Aの増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA(D)(F)各々 0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、3分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0035】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.7kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素XbaI及びPstIで切断し、同じく制限酵素XbaI及びPstIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrcCKF−Aを単離した。
pTrcCKF−Aは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のXbaI−PstI 切断部位に酵母CKI遺伝子の5’末端87bpを欠失した構造遺伝子を含有するXbaI−PstIDNA断片が挿入されたものである。なお、CKF−Aタンパク質のN末端1、2番目のアミノ酸基はメチオニン、バリンである(天然のCKIではセリン、ロイシンに相当)。
【0036】
(7)CTR−1およびCKF−Aを用いてのCCT活性を有する酵素タンパク質とCKI活性を有する酵素タンパク質の生産
pTrcCKF−Aプラスミドを制限酵素PstIで切断した後、切断断片をT4DNAポリメラーゼを用いて平滑化した。続いて平滑化処理した該プラスミドを制限酵素XbaIで切断し、得られたCKF−A遺伝子を含む1.5kbのDNA断片を文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離、回収した。次にpTrc−CTR1プラスミドを制限酵素SalIで切断した後、T4DNAポリメラーゼを用いて切断断片を平滑化した。続いて制限酵素XbaIで切断し、該DNA断片と実施例で調製したCKF−A断片をT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847)を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−FAを単離した。
得られた形質転換体を、20μg/mlのカナマイシンを含有する改変LB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、1%グルコース)300mlに植菌し、24℃で振とう培養した。培養液mlあたりの菌体数が5x108に達した時点で終濃度が0.1mMになるようにIPTGを添加し、さらに24℃で20時間培養を続けた。
【0037】
培養終了後、遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、30mlの緩衝液〔50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、10mM塩化マグネシウム〕にけん濁した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、遠心分離(20,000xg、10分)により菌体残渣を除去した。このようにして得られた上清画分を酵素標品とした。
このようにして調製した酵素標品における両酵素活性と従来のC末またはN末欠失前の遺伝子を用いて調製した上記(4)で得られた酵素液の酵素活性との比較を表1に示す。表1から明らかなように、大腸菌における生産性は、上述したC末またはN末を欠失させた特定のDNA断片を使用することにより、生来の酵母CCTに比べて約1.4倍、CKIは生来の酵母CKIに比べて約20倍の生産性の向上が確認され、発現量の増大とともに、プロテアーゼ抵抗性の付与が生産された酵素タンパク質の活性を高レベルに維持できる要因と推測された。
【0038】
【表1】
【0039】
(8)CDP−コリンの合成(その1)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、75mM CMP、25mM塩化マグネシウム、75mM塩化コリン、0.2Mグルコース、2%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.9mlに、上記(7)で調製した酵素液を0.1ml添加して(CCT活性:0.38ユニット/ml、CKI活性:0.40ユニット/ml)、試験管中で通気撹拌し、28℃で46時間保温した。反応開始7、23、32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応46時間後に68mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:90.7%)。
比較として、前記(4)で調製した酵素液を0.1ml添加する他は同じ条件で反応を行ったが、CDP−コリンの合成はわずかであった。
【0040】
実施例2 CDP−コリンの合成(その2)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、125mM CMP、25mM塩化マグネシウム、110mMホスホリルコリン、0.2Mグルコース、3.0%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.9mlに、実施例1の(7)で調製した酵素液を0.1ml添加し(CCT活性:0.38ユニット/ml)、試験管中で通気撹拌し、25℃で48時間保温した。反応開始7、23、32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応48時間後に、102mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:81.6%)。
【0041】
実施例3 CDP−コリンの合成(その3)
実施例1の(7)と同様の方法で、調製した組換え大腸菌の培養液20mlを遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、−5℃で1晩保存した後、2.3mlの緩衝液〔50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、10mM 塩化マグネシウム〕にけん濁し、菌体けん濁液とした。
次に、200mMリン酸カリウム(pH8.0)、125mM CMP、25mM塩化マグネシウム、130mMホスホリルコリン、0.4Mグルコース、3.0%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.875mlに、調製した菌体けん濁液を0.125ml添加し、さらにキシレンを0.025ml添加し、試験管中で通気撹拌し、24℃で40時間保温した。反応開始16と24時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応40時間後に、107mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:85.6%)。
【0042】
実施例4 CDP−コリンの合成(その4)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、75mM CMP、25mM塩化マグネシウム、80mMホスホリルコリン、0.2Mグルコース、2%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液1500mlに、実施例1の(7)で調製した酵素液を12.5ml添加し(CCT活性:0.38ユニット/ml)、3L卓上型ジャーファメンターで通気撹拌し(0.5L/min、300rpm)、24℃で48時間保温した。反応開始7時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコース、並びに酵素液を12.5mlを添加した。さらに反応24及び32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。
反応48時間後に、67.5mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率90.0%)
【0043】
【発明の効果】
本発明の方法は、N末端またはC末端のアミノ酸を複数個欠失させた特定のDNA断片を使用することで、目的とする酵素タンパク質を安定に高生産させることができ、このような高生産系で得られた酵素タンパク質を使用することでCDP−コリンを短時間に効率的に合成できる極めて実用性の高い方法である。
具体的には、本発明の特定のDNA断片を使用することで、大腸菌における酵素タンパク質の生産性は、CCTは約1.4倍以上、CKIは約20倍以上向上し、もってCDP−コリンの合成も飛躍的に向上させることが可能である。
【0044】
【配列表】
【0045】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、酵母由来のCCTおよびCKIの構造遺伝子を含有する塩基配列を示したものである。図中、塩基番号1〜1208番目で示される配列がCCTの構造遺伝子であり、1223〜2881番目で示される配列がCKIの構造遺伝子である。
【0046】
【受託証】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シチジン5’−ジリン酸コリン(CDP−コリン)の効率的な製造法およびそれに使用する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CDP−コリンは医薬品として頭部外傷、脳手術に伴う意識障害、脳卒中などの改善治療に用いられている有用な化合物である。
CDP−コリンの製造方法としては、化学合成法、酵母などの微生物を用いる方法などが古くから知られている。しかし、これらいずれの方法もシチジン5’−モノリン酸(CMP)1モルに対するCDP−コリンの合成収率は低く、低コストでCDP−コリンを製造できる効率的な方法とはいえなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近、丸山らはオロット酸より酵素処理によりCDP−コリンを製造する方法を開発した(特開平5−276974)。しかしながら、該方法ではオロット酸からウリジン5’−トリリン酸(UTP)を製造するための微生物を培養する工程とUTPからのCDP−コリンの合成に関与する3種類の酵素〔CTPシンセターゼ、コリンホスフェートシチジルトランスフェラーぜ(CCT)およびコリンキナーゼ(CKI)〕を生産する組換え大腸菌を培養する工程があり、微生物培養の手間と培養設備の観点から必ずしも簡便な方法とは言えない。また、オロット酸1モルに対するCDP−コリンの合成収率も必ずしも高くなく、満足し得る方法ではない。
【0004】
また、山下らはCCT遺伝子を含む組換えDNAで形質転換された酵母菌体を用い、CMPとホスホコリンからCMP1モルに対し90%前後の合成収率でCDP−コリンを製造する方法を開発した(特許第2724825号)。該方法は、セルフクローニングによりCDP−コリンの合成に関与するCCTの生産を増強した酵母を用いることで、高収率でCDP−コリンを合成できるものの、用いる組換え酵母菌体はCMPからのCDP−コリン合成に関与する一連の酵素の供給を担うこととなり、しかもCCT以外のCDP−コリン合成関連酵素の生産性は必ずしも高くないため、合成反応には多量の酵母菌体を使用する必要があった。このため、組換え酵母の培養量が膨大となり、結果的には必ずしも実用的な方法とは言えず、実際には実施されるに至っていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酵母菌体がヌクレオシド5’−モノリン酸を効率的にヌクレオシド5’−トリリン酸に転換する活性を有することに着目し、CMPからのCDP−コリンの効率的な合成法を確立すべく、CMPとコリン(あるいはホスホリルコリン)を基質とする酵母添加反応液に酵母由来のCCT及びCKIを生産する組換え大腸菌、その処理物あるいは酵素抽出液を添加して反応することで、またはCMPとホスホコリンを基質とする酵母添加反応液にCCTを生産する組換え大腸菌、その処理物あるいは酵素抽出液を添加して反応することでCDP−コリンが合成できるかどうか検討した結果、コリンを用いた場合には意外なことに目的とするCDP−コリンはまったく合成されないか、合成されても極くわずかな量しか生成されないこと、およびホスホコリンを用いた場合であっても満足しうる量のCDP−コリンを合成することができないことを確認した。
【0006】
この原因を究明する過程において、CDP−コリンの低収率は、酵母由来のCCT並びにCKIは大腸菌において安定に高生産されないことに起因していることを突き止めた。
そこで本発明者らは、大腸菌における当該酵素の発現経過を検討した結果、完全には解明されなかったものの、発現後のCCTおよびCKIを不安定化する要因の1つにプロテアーゼによる加水分解が関与しているものと推測された。そこで、使用する酵素にプロテアーゼ抵抗性を付与し、安定に高発現させるための方策に関し種々検討を重ねた結果、N末端またはC末端のアミノ酸を複数個欠失させて得られるタンパク質は目的とする酵素活性を維持し、発現量が増大するとともに、プロテアーゼに対しても抵抗性を示し、大腸菌においても安定に高生産される系を構築できることを見いだし、このような高生産系で得られた酵素タンパク質を使用することで効率的にCDP−コリンを合成することを確認し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンホスフェートシチジルトランシフェラーゼ(CCT)活性を有する酵素タンパク質、および(d)〜(f)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンキナーゼ(CKI)活性を有する酵素タンパク質の2種類の酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、シチジン5’−モノリン酸(CMP)及びコリンを反応させてシチジン5’−ジリン酸コリン(CDP-コリン)を製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法に関するものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片、
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA断片、
(e)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(f)上記(d)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0008】
また、本発明は、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCCT活性を有する酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、CMP及びホスホリルコリンを反応させてCDP-コリンを製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法に関するものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0009】
さらに、本発明は、(1)配列番号1で示される塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、(2)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、または(3)上記(1)のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0010】
さらにまた、本発明は、(1)配列番号2で示される塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、(2)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片、または(3)上記(1)のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の特徴は、反応系に添加するCCTとして、以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCCT活性を有する酵素タンパク質、および必要によりCKIとして以下の(d)〜(f)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCKI活性を有する酵素タンパク質を使用することにある。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片、
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA断片、
(e)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(f)上記(d)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片
【0012】
上記(a)記載のDNA断片は、酵母CCTをコードする遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片である。具体的には、図1に示す塩基配列中、塩基番号1〜1208番目で示される配列が酵母のCCT構造遺伝子に相当し、このCCT遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分(66塩基)を欠失させたものが配列番号1で示される塩基配列である。
上記(a)のDNA断片と同等の機能、すなわちCCT活性を維持し、プロテアーゼに対する抵抗性を示す限り、配列番号1で示される塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたDNA断片、またはこれらのDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片も本発明で使用可能である。
【0013】
また、上記(d)記載のDNA断片は、酵母CKIをコードする遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片である。具体的には、図1に示す塩基配列中、塩基番号1223〜2881番目で示される配列がCKIの構造遺伝子に相当し、このCKI遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分(87塩基)を欠失させたものが配列番号2で示される塩基配列である。
上記(d)のDNA断片と同等の機能、すなわちCKI活性を維持し、プロテアーゼに対する抵抗性を示す限り、配列番号2で示される塩基配列において1個もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたDNA断片、またはこれらのDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片も本発明で使用可能である。
なお、本発明でいうストリンジェントな条件下での反応とは、5xSSC(1xSSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶解させたもの)、0.1%(w/v)N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、0.02%(w/v)SDS、0.5%(w/v)ブロッキング試薬を含む溶液を用い、60℃で20時間程度のハイブリダイゼーション反応を行うことを意味する。
【0014】
このような特定のDNA断片を使用するとき、酵素タンパク質の発現量を最大にすることができ、生産された後の安定性も向上することが本発明者らの実験で初めて確認された。
DNA断片の調製は、既にクローン化され、その全塩基配列が決定されており、酵母のCCT遺伝子(Eur. J. Biochem., 169, 477-486, 1987)およびCKI遺伝子(J. Biol. Chem., 264, 2053-2059, 1989)を参考に公知の組換えDNA手法(例えば「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」Cold Spring Harbor Laboratory (1989))をクローン化後、ヌクレアーゼ等の酵素を用いて消化させることにより容易に実施することができる。
また、調製したDNA断片を用い発現ベクターの調製、発現ベクターを用いたCCTおよびCKI活性を有する酵素タンパク質の調製なども分子生物学の分野に属する技術者にとっては周知の技術であり、例えば(「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」Cold Spring Harbor Laboratory (1989))に従って行うことができる。
【0015】
すなわち、宿主微生物としては、CCT活性またはCKI活性を有する酵素タンパク質が発現でき、CDP−コリンの製造に適用できるものであればいずれも使用可能であり、培養及び酵素調製の簡便さから大腸菌が適当である。具体的には、組換えDNA実験に使用されるK12株、C600菌、JM105菌、JM109菌(Gene, 33, 103-119(1985))などが使用可能であり、特にプロテアーゼ欠損株が好ましい。また、発現用ベクターとしては大腸菌内で複製可能であれば特に限定されないが、pBR322(Gene, 2, 95-113, 1977)あるいはpUC18(Gene, 33, 103-119, 1985)など、あるいはそれら誘導体が使用できる。このようなベクターと上記DNA断片を用いて、大腸菌の菌体中で自発現可能となるように発現制御シグナル(転写開始及び翻訳開始シグナル)をその上流に連結した組換え発現ベクターを作製する。
【0016】
このような発現制御シグナルとしては、人為的制御が可能で、酵素タンパク質の発現量を飛躍的に上昇させるような強力な転写開始並びに翻訳開始シグナルを用いることが望ましい。具体的には、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80,21(1983)、Gene,20,231(1982))、trcプロモーター(J.Biol.Chem.,260,3539(1985))などを例示することができる。
作製した組換えべクターを用いて大腸菌を形質転換する。大腸菌を形質転換する方法はすでに多くの方法が報告されており、たとえば、低温下、塩化カルシウム処理して菌体内にプラスミドを導入する方法(J.Mol.Biol.,53,159(1970))により大腸菌を形質転換することができる。
【0017】
得られた形質転換体は当該形質転換体が増殖可能な培地中で増殖させ、さらにクローン化したCCT活性ならびにCKI活性を有する酵素タンパク質の発現を誘導して菌体内に当該酵素タンパク質が大量に蓄積するまで培養を行う。
培地としてはブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%食塩)などを使用することができる。また、ベクターとしてプラスミドを用いた場合には、培養中におけるプラスミドの脱落を防ぐために適当な抗生物質(プラスミドの薬剤耐性マーカーに応じ、アンピシリン、カナマイシンなど)の薬剤を適当量培養液に加えて培養する。
【0018】
形質転換体の培養は、低温で培養することで上記酵素タンパク質を安定に生産させることができるので、当該培地に種菌を接種後、20〜30℃で、好ましくは20〜28℃で10〜50時間程度必要により通気撹拌しながら培養する。
また、酵素タンパク質の産生を誘導する必要がある場合には、用いたプロモーターで常用されている方法で該遺伝子の発現を誘導する。例えば、lacプロモーターやtacプロモーターを使用した場合には、培養中期に発現誘導剤であるイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと略称する)を適当量添加する。また、使用するプロモーターが構成的に転写活性を有する場合には、特に発現誘導剤を添加する必要はない。
【0019】
反応液に添加する酵素タンパク質としては、上記の方法で得られる培養液から遠心分離、膜分離などの固液分離手段で回収した微生物の菌体を利用することも可能であるが、該微生物の処理物、該処理物から得られる酵素調製物を利用することもできる。
微生物の処理物としては、上記回収した微生物菌体を、機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理して得られる菌体処理物または菌体の細胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
酵素調製物としては、上記菌体処理物から当該酵素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵素または精製酵素を例示することができる。
【0020】
また、反応系に添加する酵母菌体としては、CMPをシチジン5’−トリリン酸(CTP)に変換できる酵母であればよく、なかでも市販のパン酵母、あるいはワイン酵母を用いることで酵母菌体製造の過程が省略でき、極めて有利である。また、酵母乾燥菌体、酵母生菌体いずれの形態も利用可能である。酵母菌体の使用濃度としては、乾燥重量として1〜5%(w/v)の範囲から適宜設定することができる。
基質として使用するCMP、コリンまたはホスホリルコリンは市販品を使用することができる。各基質の使用濃度としては1〜200mM、好ましくは50〜150mMの範囲から適宜設定できる。
【0021】
CDP−コリンの合成反応は、例えば水溶液、好ましくはリン酸緩衝液(pH6.0〜8.0)中、酵母菌体、CMP、コリン(またはホスホリルコリン)を添加し、さらにCCT活性を有する酵素タンパク質、CKI活性を有する酵素タンパク質(ホスホリルコリンを使用した場合には不要)をそれぞれ0.01ユニット/ml以上、好ましくは0.04〜1.0ユニット/ml添加し、5〜30℃、好ましくは20〜30℃で10〜72時間程度、必要により撹拌しながら反応させることにより実施できる。
【0022】
なお、上記酵素反応は、無機リン酸及びエネルギー源を反応系に添加して行うのが望ましい。使用する無機リン酸としては、リン酸カリウムなどのリン酸塩をそのまま使用してもよく、リン酸緩衝液の形態で使用してもかまわない。無機リン酸の使用濃度は、10〜500mM、好ましくは100〜300mMの範囲から適宜選定することができる。また、エネルギー源としてはグルコース、フラクトースなどの糖類または酢酸、クエン酸などの有機酸を使用することができ、それぞれ10〜500mM、好ましくは20〜400mMの範囲から適宜選定することができる。
このようにして得られたCDP−コリンは、通常の単離精製手段(イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、塩析など)により単離精製することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないことは明らかである。なお、実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、並びに大腸菌の形質転換法は全て「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」(Sambrookら編、Cold spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (1989))に従って行った。また、制限酵素、AmpliTaqDNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼは宝酒造(株)より入手した。
また、実施例において、反応液中のCDP−コリンの定量にはHPLC法により行った。具体的には、分離には日立社製の3013−Nカラムを用い、溶出液としてはA液;0.12mM NH4Cl、0.2mM KH2PO4、0.2mM KH2PO4、5%(v/v)アセトニトリル、B液;500mM NH4Cl、83mM KH2PO4、83mM K2HPO4、5%(v/v)アセトニトリルを用い、0〜50%B液(0−20分リニアーグラジエント)、100%B液(20−25分)の条件で分析を行った。
【0024】
実施例1
(1)発現用プラスミドpTrc12−6の作製
プラスミドベクター πAG1(プラスミドベクター πAG1を保持した大腸菌 K−12株 TNC111菌の寄託番号:FERM BP−6901号:平成11年9月30日生命工学工業技術研究所寄託)を制限酵素EcoRIで切断後、T4DNAポリメラーゼを用いてDNA末端を平滑化し、さらにT4DNAリガーゼを用いてpBglIIリンカーを付与した。該DNAを制限酵素BglII及びBamHIで切断し、カナマイシン耐性遺伝子を含む1.8kbのBglII−BamHI断片を調製した。
次にpTrc99ADNAを制限酵素PvuIで切断後、Bal31ヌクレアーゼによる部分消化を行い、β―ラクタマーゼ遺伝子を欠失させ、さらにpBglIIリンカーをT4 DNAリガーゼを用いてDNA末端に付与し、さらに制限酵素BglIIで切断した。該DNAと先に調製したカナマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片をT4DNAリガーゼを用いて連結し、反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換した。
得られたカナマイシン耐性形質転換体より、プラスミドpTrc12−6を得た。pTrc12−6は、pTrc99Aのβ―ラクタマーゼ遺伝子が完全に欠失し(position 567―1816bpが欠失)、その欠失部位にTn903由来のカナマイシン耐性遺伝子が挿入されたものである。
【0025】
(2)CCT遺伝子のクローニング
酵母 Saccharomyces cerevisiae DBY746(ATCC 44773)の染色体DNAを公知の方法(Biochim. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により酵母CCT遺伝子を増幅した。
プライマー(A):5'-TACCATGGCAAACCCAACAAGGGA-3'
プライマー(B):5'-TATCTAGAGGGGCTCAGTTCGCTGATT-3'
PCRによるCTT遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.5μg、プライマーDNA(A)(B)各々0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0026】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.8kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素NcoI及びXbaIで切断し、同じく制限酵素NcoI及びXbaHIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc12−CCTを単離した。
pTrc12−CCTは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のNcoI−XbaHI切断部位に酵母CCT遺伝子を含有するNcoI−XbaI DNA断片が挿入されたものである。
【0027】
(3)CKI遺伝子のクローニング
酵母 Saccharomyces cerevisiae DBY746(ATCC 44773)の染色体DNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により酵母CKI遺伝子を増幅した。
プライマー(C):5'-ATTCTAGAGGAGCAAAAGATGGTACAAGAATCA-3'
プライマー(D):5'-ATCTGCAGGAATTCGTATACGTATTACA-3'
PCRによるCKI遺伝子の増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.5μg、プライマーDNA(C)(D)各々0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0028】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、2.0kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素XbaI及びPstIで切断し、同じく制限酵素XbaI及びPstIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc12−CKIを単離した。
pTrc12−CKIは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のXbaI−PstI切断部位に酵母CKI遺伝子を含有するXbaI−PstI DNA断片が挿入されたものである。
【0029】
(4)CCT及びCKIの調製
プラスミドpTrc12−CCTを制限酵素NcoI及びXbaIで消化し、CCT遺伝子を含むNcoI−XbaI断片を分離精製した。該断片とNcoI及びXbaIで切断したプラスミドpTrc12−CKI DNAとT4DNAリガーゼを用いて連結し、連結反応液を用いた大腸菌JM109を形質転換した。得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−CCK8を単離した。pTrc−CCK8は、pTrc99Aのtrcプロモーター下流に酵母CCT及びCKI遺伝子が連結されて挿入されたものである。
プラスミドpTrc−CCK8を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847号:平成11年8月18日 生命工学工業技術研究所寄託)を形質転換し、得られた形質転換体を、20μg/mlのカナマイシンを含有する2xYT培地 300mlに植菌し、37℃で振とう培養した。4x108菌/mlに達した時点で、培養液に終濃度0.25mMになるようにIPTGを添加し、さらに28℃で20時間振とう培養を続けた。
【0030】
培養終了後、遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、30mlの緩衝液〔50mMトリス塩酸(pH7.5)、0.5mM EDTA〕に懸濁した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに遠心分離(20,000xg、10分)により菌体残渣を除去した。このように得られた上清画分を酵素液とした。酵素液におけるCCT活性は0.84ユニット/mg蛋白、CKI活性は0.06ユニット/mg蛋白であった。
さらに、酵素生産の過程をタイムコースを追って調べた結果、IPTG誘導後、CCT、CKIとも生産されるものの、その量は必ずしも高くなく、しかも生産された酵素の活性が徐々に失われてゆき、その原因の1つとしてプロテアーゼによる加水分解が推定された。
【0031】
なお、本発明における各種酵素の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出したものである。
(CCT活性の測定と単位の算出法)
5mM CTP、5mM ホスホコリン、25mM 塩化マグネシウムを含有する100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加し、28℃で反応させる。反応終了後100℃で1分間の熱処理を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応液中のCDP−コリン量を分析する。28℃で1分間に1μmoleのCDP−コリンを生成する活性を1単位(ユニット)とする。
(CKI活性の測定と単位の算出法)
5mM CTP、5mM 塩化コリン、5mM ATP、25mM 塩化マグネシウム、1ユニット/ml CCTを含有する100mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加し、28℃で反応を行い、100℃で1分間の熱処理により反応を停止させる。反応液中のCDP−コリン量をHPLC法により定量する。28℃で1分間に1μmoleのCDP−コリンの生成する活性を1単位(ユニット)とする。
【0032】
(5)酵母CCTをコードする遺伝子からC末端22アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片(CTR−1)の調製
上記(4)で構築、単離したpTrc−CCK8プラスミドをテンペレートとして、前述のプライマーDNA(A)と下に示すプライマーDNA(E)を常法に従って合成し、PCR法によりCTR−1を増幅した。
プライマー(E):5'-TACCATGGCAAACCCAACAACAGGGA-3'
PCRによるCTR−1の増幅は、反応液100μl中(50mM 塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA(A)(E)各々 0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、3分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0033】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.2kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素NcoI及びBamHIで切断し、同じく制限酵素NcoI及びBamHIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847)を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−CTR1を単離した。
pTrc−CTR1は、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のNcoI−BamHI切断部位に3’末端66bpを欠失した酵母CCT構造遺伝子を含有するNcoI−BamHIDNA断片が挿入されたものである。
【0034】
(6)酵母CKIをコードする遺伝子からN末端29アミノ酸残基相当分を欠失させたDNA断片(CKF−A)の調製
上記(4)で構築、単離したpTrc−CCK8プラスミドをテンペレートとして、先に示したプライマーDNA(D)と以下に示すプライマーDNA(F)を常法に従って合成し、PCRによりCKF−Aを増幅した。
プライマー(F):5'-TGTCTAGATGGTAACACGCCAACGTTCCTC-3'
PCRによるCKF−Aの増幅は、反応液100μl中(50mM塩化カリウム、10mMトリス塩酸(pH8.3)、1.5mM塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA(D)(F)各々 0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin−Elmer Cetus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5分)、ポリメライゼーション(72℃、3分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0035】
遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.7kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素XbaI及びPstIで切断し、同じく制限酵素XbaI及びPstIで消化したプラスミドpTrc12−6とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrcCKF−Aを単離した。
pTrcCKF−Aは、pTrc12−6のtrcプロモーター下流のXbaI−PstI 切断部位に酵母CKI遺伝子の5’末端87bpを欠失した構造遺伝子を含有するXbaI−PstIDNA断片が挿入されたものである。なお、CKF−Aタンパク質のN末端1、2番目のアミノ酸基はメチオニン、バリンである(天然のCKIではセリン、ロイシンに相当)。
【0036】
(7)CTR−1およびCKF−Aを用いてのCCT活性を有する酵素タンパク質とCKI活性を有する酵素タンパク質の生産
pTrcCKF−Aプラスミドを制限酵素PstIで切断した後、切断断片をT4DNAポリメラーゼを用いて平滑化した。続いて平滑化処理した該プラスミドを制限酵素XbaIで切断し、得られたCKF−A遺伝子を含む1.5kbのDNA断片を文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離、回収した。次にpTrc−CTR1プラスミドを制限酵素SalIで切断した後、T4DNAポリメラーゼを用いて切断断片を平滑化した。続いて制限酵素XbaIで切断し、該DNA断片と実施例で調製したCKF−A断片をT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌K−12株 ME8417(FERM BP−6847)を形質転換し、得られたカナマイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−FAを単離した。
得られた形質転換体を、20μg/mlのカナマイシンを含有する改変LB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、1%グルコース)300mlに植菌し、24℃で振とう培養した。培養液mlあたりの菌体数が5x108に達した時点で終濃度が0.1mMになるようにIPTGを添加し、さらに24℃で20時間培養を続けた。
【0037】
培養終了後、遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、30mlの緩衝液〔50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、10mM塩化マグネシウム〕にけん濁した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、遠心分離(20,000xg、10分)により菌体残渣を除去した。このようにして得られた上清画分を酵素標品とした。
このようにして調製した酵素標品における両酵素活性と従来のC末またはN末欠失前の遺伝子を用いて調製した上記(4)で得られた酵素液の酵素活性との比較を表1に示す。表1から明らかなように、大腸菌における生産性は、上述したC末またはN末を欠失させた特定のDNA断片を使用することにより、生来の酵母CCTに比べて約1.4倍、CKIは生来の酵母CKIに比べて約20倍の生産性の向上が確認され、発現量の増大とともに、プロテアーゼ抵抗性の付与が生産された酵素タンパク質の活性を高レベルに維持できる要因と推測された。
【0038】
【表1】
【0039】
(8)CDP−コリンの合成(その1)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、75mM CMP、25mM塩化マグネシウム、75mM塩化コリン、0.2Mグルコース、2%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.9mlに、上記(7)で調製した酵素液を0.1ml添加して(CCT活性:0.38ユニット/ml、CKI活性:0.40ユニット/ml)、試験管中で通気撹拌し、28℃で46時間保温した。反応開始7、23、32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応46時間後に68mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:90.7%)。
比較として、前記(4)で調製した酵素液を0.1ml添加する他は同じ条件で反応を行ったが、CDP−コリンの合成はわずかであった。
【0040】
実施例2 CDP−コリンの合成(その2)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、125mM CMP、25mM塩化マグネシウム、110mMホスホリルコリン、0.2Mグルコース、3.0%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.9mlに、実施例1の(7)で調製した酵素液を0.1ml添加し(CCT活性:0.38ユニット/ml)、試験管中で通気撹拌し、25℃で48時間保温した。反応開始7、23、32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応48時間後に、102mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:81.6%)。
【0041】
実施例3 CDP−コリンの合成(その3)
実施例1の(7)と同様の方法で、調製した組換え大腸菌の培養液20mlを遠心分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、−5℃で1晩保存した後、2.3mlの緩衝液〔50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、10mM 塩化マグネシウム〕にけん濁し、菌体けん濁液とした。
次に、200mMリン酸カリウム(pH8.0)、125mM CMP、25mM塩化マグネシウム、130mMホスホリルコリン、0.4Mグルコース、3.0%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液4.875mlに、調製した菌体けん濁液を0.125ml添加し、さらにキシレンを0.025ml添加し、試験管中で通気撹拌し、24℃で40時間保温した。反応開始16と24時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。反応40時間後に、107mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率:85.6%)。
【0042】
実施例4 CDP−コリンの合成(その4)
200mMリン酸カリウム(pH8.0)、75mM CMP、25mM塩化マグネシウム、80mMホスホリルコリン、0.2Mグルコース、2%(w/v)乾燥パン酵母(オリエンタル酵母社)を含有する反応液1500mlに、実施例1の(7)で調製した酵素液を12.5ml添加し(CCT活性:0.38ユニット/ml)、3L卓上型ジャーファメンターで通気撹拌し(0.5L/min、300rpm)、24℃で48時間保温した。反応開始7時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコース、並びに酵素液を12.5mlを添加した。さらに反応24及び32時間後に終濃度0.2Mとなるようにグルコースを添加した。
反応48時間後に、67.5mMのCDP−コリンが合成された(対CMPモル収率90.0%)
【0043】
【発明の効果】
本発明の方法は、N末端またはC末端のアミノ酸を複数個欠失させた特定のDNA断片を使用することで、目的とする酵素タンパク質を安定に高生産させることができ、このような高生産系で得られた酵素タンパク質を使用することでCDP−コリンを短時間に効率的に合成できる極めて実用性の高い方法である。
具体的には、本発明の特定のDNA断片を使用することで、大腸菌における酵素タンパク質の生産性は、CCTは約1.4倍以上、CKIは約20倍以上向上し、もってCDP−コリンの合成も飛躍的に向上させることが可能である。
【0044】
【配列表】
【0045】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、酵母由来のCCTおよびCKIの構造遺伝子を含有する塩基配列を示したものである。図中、塩基番号1〜1208番目で示される配列がCCTの構造遺伝子であり、1223〜2881番目で示される配列がCKIの構造遺伝子である。
【0046】
【受託証】
Claims (8)
- 以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンホスフェートシチジルトランシフェラーゼ(CCT)活性を有する酵素タンパク質、および(d)〜(f)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるコリンキナーゼ(CKI)活性を有する酵素タンパク質の2種類の酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、シチジン5’−モノリン酸(CMP)及びコリンを反応させてシチジン5’−ジリン酸コリン(CDP-コリン)を製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片、
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA断片、
(e)配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(f)上記(d)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片 - 以下の(a)〜(c)に記載のいずれかのDNA断片の塩基配列によりコードされるCCT活性を有する酵素タンパク質の存在下、酵母菌体、CMP及びホスホリルコリンを反応させてCDP-コリンを製造することを特徴とする、CDP-コリンの製造法。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなるDNA断片、
(c)上記(a)に記載のDNA断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA断片 - 配列番号1で示される塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
- 配列番号1で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
- 請求項3記載のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CCT活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
- 配列番号2で示される塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
- 配列番号2で示される塩基配列において、1個もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
- 請求項6記載のDNA断片とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、CKI活性を有する酵素タンパク質をコードするDNA断片。
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