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JP3817648B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置 Download PDF

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JP3817648B2
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本説明は、内燃機関における燃料挙動を表すパラメータを用いて同内燃機関に噴射供給する燃料量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の制御装置として、内燃機関の吸気系における燃料挙動シミュレーションモデルに基づいて同機関への燃料供給量を制御する技術が知られている(例えば、特開平6−280648号公報等)。このような制御装置では、内燃機関の吸気管壁面への付着燃料量やその蒸発量をパラメータとして同内燃機関の筒内に流入する燃料の挙動を数式化した燃料挙動モデルを用いる。そして、内燃機関の運転条件とその空燃比の目標値とに基づいて同内燃機関に要求される燃料量を算出すると共に、上記燃料の挙動を数式化した燃料挙動モデルに従って、該算出された要求燃料量を実際に供給すべき燃料量に補正するようにしている。
【0003】
こうして上記制御装置では、機関筒内への流入燃料の挙動を表すパラメータを用いた燃料挙動モデルに従って、内燃機関に噴射供給される燃料量が制御される。このため、それらパラメータの設定さえ適正になされれば、当該内燃機関の空燃比を理想の空燃比に近づけることができ、ひいては燃料供給量が適正に制御されることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら従来の制御装置では、機関暖機後の定常運転時に対応する前記パラメータを用い、C.F.アキノの式として周知の式をそのまま使用して内燃機関の吸気系に付着している燃料量を演算する。そして、その演算された付着燃料量に基づいて同機関に噴射すべき燃料量を決定するようにしている。このため、様々な要因によって前記パラメータが変動する際には、付着燃料量等の燃料挙動を正確に予測できず、実際に筒内に流入する燃料量を正しく認識することができなかった。つまり、インジェクタ近傍における燃料挙動は、主に燃料の壁面付着率(=1−直接流入率)やその付着燃料の残留率(=1−持ち去り率)をパラメータとすることでその燃料動的モデルをシミュレートできる。ところが、既存の制御装置では、これらパラメータ(壁面付着率や残留率)が固定値として与えられていたため、壁面への付着燃料量等が変動した場合には、所望の燃料噴射量制御が継続できないという問題があった。その結果、パラメータ変動時において空燃比の制御精度が極端に低下するという事態を招き、トルク変動によるドライバビリティの悪化や、排気エミッションの悪化の原因となっていた。
【0005】
この発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、内燃機関内での燃料の動的挙動を表すパラメータを用いて同機関に噴射供給する燃料量を制御するにあたり、いかなる機関運転状態下にあっても同機関への燃料噴射量を適正に維持することができる内燃機関の燃料噴射量制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明では、その前提として、内燃機関の気筒に流入する燃料の動的挙動モデルを使用し、吸気ポート近傍における燃料の壁面付着率及び残留率を前記動的挙動モデルのパラメータとしてインジェクタによる燃料噴射量を制御するようにしている。つまり本発明では、吸気ポート近傍における噴射燃料の壁面付着率及び残留率から燃料の動的挙動モデルを解析する。なお、本明細書記載の「吸気ポート近傍領域」とは、機関シリンダヘッドの吸気ポート部のみならずインジェクタの上流側及び下流側をも含む領域を指し、例えば吸気通路に設けられるサージタンクから吸気弁の上面までの領域が当該吸気ポート近傍領域に相当する。
【0007】
従って、吸気ポート近傍における燃料挙動としては、インジェクタ下流の吸気通路壁面に対して付着並びに残留する要因の他に、該内燃機関の筒内からの吹き返し流によりインジェクタ上流の吸気通路壁面に対して付着並びに残留する要因、及び吸気弁上面(同弁の吸気ポート側)に対して付着並びに残留する要因が含まれる。
【0008】
そして、請求項1に記載した発明ではその特徴として、吸気ポート近傍領域を複数のエリアに分割し、該エリア毎に前記壁面付着率及び残留率を設定するエリア別パラメータ設定手段と、前記分割されたエリア毎の個々の壁面付着率及び残留率に基づき、吸気ポート近傍領域の全域における燃料の付着及び残留の度合を算出すると共に、該算出結果に応じてインジェクタによる燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正手段とを備える。
【0009】
要するに、吸気ポート近傍において、燃料の動的挙動モデルのパラメータ(壁面付着率及び残留率)は、吸気通路の上流側から下流側にかかる位置に応じて個々に異なる値を呈する。そのため、上記構成のように、吸気ポート近傍領域を複数のエリアに分割し、該エリア毎に前記パラメータ(壁面付着率及び残留率)を設定すれば、これらパラメータがより高精度に求められることになる。そして、これらパラメータを用いてインジェクタによる燃料噴射量を制御すれば、いかなる機関運転状態下においても安定した空燃比制御が実現できるようになる。その結果、従来装置のように、パラメータ変動時において空燃比の制御精度が極端に低下し、それによりトルク変動に起因するドライバビリティの悪化や、排気エミッションの悪化等を招くといった問題が解消される。
【0010】
因みに、吸気通路の最下流側を基準にして分割された個々のエリアを「エリアインデックスi」で表した場合、このエリア毎(1〜nのエリアインデックス毎)の壁面付着率「Rmi」及び残留率「Pmi」は、図7及び図8に示すような傾向にあることが本発明者により確認されている。ここで、i=1は吸気通路の最下流エリアに相当し、i=nは吸気通路の最上流エリアに相当する。同図によれば、壁面付着率Rmiは吸気通路の下流側ほど大きくなり、これに対し、残留率Pmiは吸気通路の上流側ほど大きくなることが分かる。Rmi値,Pmi値は、こうした傾向を有する特性に基づいて設定される。
【0011】
また、上記発明における燃料噴射量補正手段のより具体的な構成としては、請求項2に記載したように、
・前記分割されたエリア毎に付着燃料量を算出するエリア別付着燃料量算出手段と、
・前記算出されたエリア毎の付着燃料量を前記吸気ポート近傍領域の全域にて加算する加算手段と、
・前記加算手段による加算結果を基に、筒内への目標流入燃料量を修正して前記インジェクタによる実際の燃料噴射量を算出する実噴射量算出手段と
を備えるようにすればよい。
【0012】
つまり、吸気ポート近傍領域における吸気通路内の付着燃料量は、前記図7及び図8に示すような壁面付着率Rm及び残留率Pmに対応してエリア毎にその値が変化する。そのため、これらRm値やPm値に対応するように付着燃料量をエリア毎に算出し、このエリア毎の算出値を加算すれば、付着燃料量の総量が精度良く求められることになる。そして、この付着燃料量の総量をインジェクタによる燃料噴射量に反映させれば、燃料噴射量の制御精度も確実に向上する。
【0013】
前記請求項2に記載の発明では、請求項3に記載したように、前記分割されたエリア毎にその付着燃料量を予め設定されている最大付着量と比較し、前者が後者を越える場合(エリア毎の付着燃料量>最大付着量の場合)にはその差分である過剰量に基づいて隣接するエリアの付着燃料量を補正するようにすることが望ましい。つまり、吸気通路内の壁面における付着燃料量は、吸気通路の形状や燃料の噴射特性等によって最大付着量が決定される。また、互いに隣接するエリア間では、付着燃料量は連続的に変化する。従って、エリア毎の付着燃料量が最大付着量を越えるような場合には、その差分であるところの過剰量を求めその過剰量にて付着燃料量を補正する。さらに、この過剰量を隣接するエリアの付着燃料量にも反映させて当該エリアの付着燃料量も補正する。こうした処理によれば、付着燃料量がより一層正確に求められることになる。
【0014】
一方、吸気通路内に付着残留する燃料量は、燃料の性状(例えば粘性、温度等)に応じて変化する。そこで、請求項4に記載したように、前記分割されたエリア毎に、付着燃料の性状を示すパラメータを設定する燃料性状パラメータ設定手段を備え、前記エリア別パラメータ設定手段は、前記燃料性状を示すパラメータを対比させつつ、エリア毎に前記残留率を設定するといった構成を採用するのが望ましい。かかる場合、残留率が燃料の性状に応じて適正に算出されることになる。
【0015】
ここで、請求項4に記載した燃料性状のパラメータは、燃料付着からの経過時間、吸気管の壁面温度、吸気管圧力等、燃料の蒸発特性に応じて変化する。そのため、請求項5に記載したように、上記のような燃料の蒸発特性に応じて前記燃料性状を示すパラメータを可変に設定すれば、当該パラメータがより適確に把握できると共に、ひいては残留率の演算精度が向上することになる。
【0016】
またさらに、近年では、車両走行のレスポンス(応答性)を向上させることを意図して、吸気行程にかかるようにインジェクタによる燃料噴射を実行する、「吸気同期噴射制御」を採用したシステムが提案されている。かかるシステムの構成において、機関の低回転域では吸気弁の開弁時期にのみ燃料噴射が実施され、これに対し機関の中・高回転域では燃料噴射が吸気弁の開弁前の閉弁時期にかかることになる。この場合、吸気弁が開弁している時の噴射燃料と、閉弁している時の噴射燃料とでは、自ずと燃料の壁面付着率(例えば吸気弁上面に付着する燃料量)が変化する。そのため、請求項6に記載したように、機関回転数に応じて前記壁面付着率を設定するようにすれば、上記のような吸気同期噴射制御が実施される際にも、燃料挙動が適確に把握できることとなる。
【0017】
また、上記請求項1〜請求項6に記載の発明では、請求項7に記載したように、吸気ポート近傍にて分割される複数のエリアを吸気弁からの距離に応じて設定するとよい。つまり、吸気ポート近傍における噴射燃料の壁面付着率或いは残留率は、吸気ポートの最下流位置(例えば吸気弁上面)を基準として所定の関係を有し、この関係はある程度一義的にシミュレートできる(図7及び図8参照)。従って、例えば複数エリアを吸気弁からの距離に応じて等間隔で分割するように設定すれば、各エリア毎の燃料挙動が把握し易くなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
本実施の形態の装置は、ガソリン噴射式多気筒内燃機関(エンジン)の燃料噴射量を筒内に流入する燃料の動的挙動モデルを用いて最適に制御するものであり、各気筒に燃料を噴射供給するためのインジェクタは、マイクロコンピュータを主体とする電子制御装置によりその駆動が制御されるようになっている。ここで、電子制御装置は、インジェクタによる噴射燃料の動的挙動モデルを表すパラメータとして、吸気ポート近傍領域での燃料の壁面付着率「Rm」と残留率「Pm」とを設定すると共に、当該パラメータを用いてインジェクタによる燃料噴射量を補正する。つまり、上記電子制御装置の動作により、インジェクタによる燃料噴射動作が制御されるようになっている。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる内燃機関の燃料噴射量制御装置をより詳細に示す構成図である。図1において、内燃機関1には吸気管2と排気管3とが接続されている。吸気管2には、アクセルペダル4に連動するスロットル弁5が設けられ、同スロットル弁5の開度は、スロットル開度センサ6により検出されるようになっている。また、吸気管2のサージタンク7には、吸気圧センサ8が配設されている。
【0021】
内燃機関1の気筒を構成するシリンダ9内には図の上下方向に往復動するピストン10が配設されており、同ピストン10はコンロッド11を介して図示しないクランク軸に連結されている。ピストン10の上方にはシリンダ9及びシリンダヘッド12にて区画された燃焼室13が形成されており、燃焼室13は、吸気弁14及び排気弁15を介して前記吸気管2及び排気管3に連通している。排気管3には、排気ガス中の酸素濃度に応じて異なる電圧信号を出力する空燃比センサ16が設けられている。また、シリンダ9(ウォータジャケット)には、冷却水温を検出する水温センサ23が配設されている。
【0022】
内燃機関1の吸気ポート17には電磁駆動式のインジェクタ18が設けられており、このインジェクタ18には燃料タンク19から燃料(ガソリン)が供給される。なお、本実施の形態では、吸気マニホールドの各分岐管毎に1つずつインジェクタ18を有するマルチポイントインジェクション(MPI)システムが構成されている。この場合、吸気管上流から供給される新気とインジェクタ18による噴射燃料とが吸気ポート17にて混合され、その混合気が吸気弁14の開弁動作に伴い燃焼室13内(シリンダ9内)に流入される。
【0023】
ディストリビュータ20にはクランク軸の回転状態に応じて720°CA毎にパルス信号を出力するクランク角センサ21と、より細かなクランク角毎(例えば、30°CA毎或いは15°CA毎等)にパルス信号を出力する回転角センサ22が設けられている。
【0024】
一方、ECU30は例えばマイクロコンピュータシステムを中心に構成され、A/Dコンバータ31、入出力インターフェース32、CPU33、ROM34、RAM35、バックアップRAM36、クロック発生回路37等を備える。前記吸気圧センサ8の検出信号、空燃比センサ16の検出信号及び水温センサ23の検出信号は、A/Dコンバータ31に入力され、A/D変換された後にバス38を介してCPU33に入力される。また、前記スロットル開度センサ6の検出信号、クランク角センサ21のパルス信号、及び回転角センサ22のパルス信号は、入出力インターフェース32及びバス38を介してCPU33に入力される。CPU33は、各検出信号に基づいて吸気圧(PM)、空燃比(A/F)、冷却水温(Tw)、スロットル開度、基準クランク位置及び機関回転数(Ne)を検知する。
【0025】
さらに、ECU30には、前記インジェクタ18の駆動を制御するためのダウンカウンタ39、フリップフロップ40及びインジェクタ駆動回路41が設けられている。すなわち、後述する燃料噴射量制御ルーチンで燃料噴射量が演算されると、その演算結果がダウンカウンタ39に設定され同時にフリップフロップ40もセット状態とされる。この結果、インジェクタ駆動回路41によりインジェクタ18が通電され燃料噴射が開始される。また、ダウンカウンタ39がクロックパルス(図示せず)の計数を開始し、ダウンカウンタ39の値が「0」になるとフリップフロップ40がリセットされる。そして、インジェクタ駆動回路41によりインジェクタ18への通電が遮断されると、燃料噴射が停止される。すなわち、ECU30で演算された期間だけインジェクタ18が通電され、演算結果に応じた燃料が内燃機関1の各気筒に供給される。
【0026】
また特に、本実施の形態の燃料噴射システムでは、吸気行程にかかるように前記インジェクタ18による燃料噴射を実行する、いわゆる「吸気同期噴射制御」が採用されており、かかる制御では、燃料噴射量や機関回転数に関係無く当該噴射の終了時期が固定される。こうした噴射制御によれば、吸気弁14の開弁時期にインジェクタ18による噴射燃料を直接筒内に導入できるため、例えば車両加速時等のレスポンスが向上するといったメリットが得られる。
【0027】
このように構成された燃料噴射量制御装置において、インジェクタ近傍(吸気ポート17)の燃料挙動を図2を用いて以下に説明する。図2は、インジェクタ近傍における燃料挙動シミュレーションモデルを示す模式図である。なお、本シミュレーションモデルでは、時刻を表すインデックスを「k」として示す。
【0028】
図2において、「Fi(k)」は時刻kにインジェクタ18により噴射される燃料量(噴射燃料量)を、「Fmw(k)」は時刻kに吸気ポート17の壁面に付着している燃料量(壁面付着燃料量)を、「Fc(k)」は時刻kに筒内(シリンダ9内)へ流入する燃料量(筒内流入燃料量)を、それぞれ示す。かかる場合、時刻kの噴射燃料量Fi(k)のうち、吸気ポート17の壁面に付着する割合(壁面付着率)を「Rm」とし、時刻kの壁面付着燃料量Fmw(k)のうち、吸気ポート17の壁面に残留する割合(残留率)を「Pm」とすれば、以下の式(1),式(2)が成立する。なお、この式は、C.F.アキノの式として一般に知られている。
【0029】
Fmw(k)=Fi(k−1)・Rm+Fmw(k−1)・Pm…(1)
この式(1)によれば、時刻kでの壁面付着燃料量Fmw(k)は、前回の噴射燃料量Fi(k−1)及び壁面付着率Rmの積と、前回の壁面付着燃料量Fmw(k−1)及び残留率Pmの積との和により求められることとなる。
【0030】
Fc(k)=Fi(k)・(1−Rm)+Fmw(k)・(1−Pm)…(2)
この式(2)によれば、時刻kでの筒内流入燃料量Fc(k)は、今回の噴射燃料量Fi(k)から今回の燃料付着分を減算した値と、今回の壁面付着燃料量Fmw(k)から今回の燃料残留分を減算した値との和により求められることとなる。
【0031】
また、目標空燃比λ(理論空燃比)での燃料の燃焼を実現する場合において、吸気流量を「Q(k)」とすれば、実際に筒内に流入すべき目標流入燃料量Fcr(k)は次の式(3)により求められる。
【0032】
Fcr(k)=Q(k)/λ …(3)
この場合、インジェクタ近傍での燃料挙動を表す前記の式(1),式(2)が実際の燃料挙動と一致するとすれば、
Fcr(k)=Fc(k) …(4)
が成立する。なお、吸気流量Q(k)は、吸気圧PM及び機関回転数Neをパラメータとするマップから基本吸入空気量を求め、該求められた基本吸入空気量をその時の吸気温度で補正することから算出できる。
【0033】
従って、目標空燃比λでの燃焼を実現する際において、インジェクタ18による噴射燃料量Fi(k)は、前記式(2)を変形することにより次の式(5)から求められることとなる。
【0034】
Figure 0003817648
この場合、燃料噴射量Fi(k)を求めるには、前記式(1)から算出される壁面付着燃料量Fmw(k)が用いられる。
【0035】
以上の各式において、インジェクタ18による噴射燃料の壁面付着率Rm並びに残留率Pmの正しい値を求め、それにより前記式(5)を解くことができれば、インジェクタ18に要求される噴射燃料量Fi(k)が適正に算出できることとなる。
【0036】
ここで、従来一般には、壁面付着率Rm及び残留率Pmは固定値として扱われていた。しかし、これら壁面付着率Rm及び残留率Pmは、吸気管2内の位置によって異なる値となるため、必ずしも一定値とは限らない。そこで、本実施の形態ではその特徴として、例えば図3に示すように、吸気ポート17近傍を複数のエリアに分割し、そのエリア毎に機関運転状態に応じて前記壁面付着率Rm及び残留率Pmのパラメータを付与する。そして、サイクル毎及びエリア毎に燃料挙動を推定する。
【0037】
上記実施の形態において、吸気ポート17近傍のエリア分割は、吸気弁14からの距離に応じて分割するものとする。すなわち、各エリアを表すインデックスを「i」とし、このエリアインデックスに「1」〜「n」の番号を付す。より具体的には、図6にも併せ示すように、
・エリアインデックスi=1は吸気弁14の上面のエリアに、
・エリアインデックスi=2は吸気弁14の上流側0〜5mmのエリアに、
・エリアインデックスi=3は吸気弁14の上流側5〜10mmのエリアに、
・エリアインデックスi=4は吸気弁14の上流側10〜15mmのエリアに、
・エリアインデックスi=5は吸気弁14の上流側15〜20mmのエリアに、
といった具合に各々のエリアが割り当てられる(i=6以降も上記の如く割り当てられる)。そして、吸気管2内の最上流側のエリアインデックスi=nは、インジェクタ18の燃料吹き出し口からサージタンク7までの間の任意の領域において内燃機関1の仕様に応じて機関毎に設定される。
【0038】
従って、上記の如くエリア分割してそのエリア毎に、壁面付着燃料量Fmwi(k),壁面付着率Rmi,残留率Pmiを設定するようにすれば、前記式(5)は、次の式(6)のようになる。
【0039】
【数1】
Figure 0003817648
【0040】
上記の式(6)において、各エリアにおける残留率及び付着率を示すパラメータPmi,Rmiは、実験によって求めることのできる定数であって、機関運転時において学習することも可能である。因みに、エリア毎(1〜nのエリアインデックス毎)の壁面付着率Rmi及び残留率Pmiは、図7及び図8に示すような傾向にあることが本発明者により確認されている。同図によれば、壁面付着率Rmiは吸気管2の下流側ほど大きくなり、これに対し、残留率Pmiは吸気管2の上流側ほど大きくなることが分かる。Rmi値,Pmi値は、こうした傾向を有する特性に基づいて設定されるようになっている。
【0041】
なお、機関回転数Ne,吸気圧PM,冷却水温Twに応じて壁面付着率Rmi及び残留率Pmiを算出することも可能であり、かかる場合には、これらの機関回転数Ne,吸気圧PM,冷却水温Twからなる3次元マップを用いて前記パラメータPmi,Rmiを算出できる構成とすれば、ECU30の処理速度を損なうことなく上記パラメータの設定が可能となる。
【0042】
図4及び図5は、上述した燃料噴射量制御を実現するための手順を示すフローチャートであり、同処理は各気筒の燃料噴射毎(4気筒であれば180°CA毎)にECU30内のCPU33により実行される。
【0043】
本ルーチンがスタートすると、CPU33は、先ずステップ101〜104で筒内目標空燃比λを算出する。詳しくは、CPU33は、ステップ101で内燃機関1の制御上の目標空燃比(便宜上、制御目標空燃比λaと言う)を設定する。また、CPU33は、続くステップ102で空燃比センサ16の出力により得られる空燃比(便宜上、排気空燃比λbと言う)が計測可能であるか否かを判別する。ここで、ステップ102の判別処理は、周知の空燃比フィードバック制御条件を判別する処理に相当し、冷却水温Twが所定温度以上であること、空燃比センサ16が活性状態であること、機関が高回転・高負荷状態であること等を含む。
【0044】
そして、ステップ102が否定判別されれば(フィードバック条件が不成立の場合)、CPU33はステップ103に進んでその時の制御目標空燃比λaを排気空燃比λbとして設定した後、ステップ104に進む。また、前記ステップ102が肯定判別されれば(フィードバック条件成立の場合)、CPU33はステップ103をバイパスしてそのままステップ104に進む。ステップ104において、CPU33は、制御目標空燃比λaの2乗を排気空燃比λbで除算して筒内目標空燃比λを算出する。
【0045】
その後、CPU33は、ステップ105で前述の式(3)を用いて、筒内へ流入すべき目標流入燃料量Fcr(k)を算出する。次いで、CPU33は、ステップ106で前記図3に示すように分割されたエリア毎の壁面付着率Rmi及び残留率Pmiを読み込む。このとき、読み込まれるRmi値及びPmi値は、前記図7及び図8に示す関係に従うものであるが、機関回転数Ne,吸気圧PM,冷却水温Twに応じて設定するようにしてもよい。
【0046】
また、CPU33は、続くステップ107で吸気ポート17内に付着した燃料の成分を示す燃料性状パラメータρをエリアインデックスi(=1〜n)毎に設定する。つまり、この燃料性状パラメータρは、吸気管壁面に付着し残留した燃料の揮発度合を表すものであり、このパラメータρについてもやはり、吸気弁14からの位置に応じて異なる値を有する。かかる場合、吸気管下流側に付着し残留している燃料の多くは、インジェクタ18から噴射供給された直後のもの(新規燃料)であるため、その燃料性状パラメータρは比較的小さい値になり、逆に吸気管上流側に付着し残留している燃料の多くは重質で、その燃料性状パラメータρは比較的大きな値となる傾向にある。
【0047】
またさらに、前記の燃料性状パラメータρは、例えば、
・燃料が付着してからの経過時間tf、
・冷却水温Tw(或いは、吸気管壁面温度)、
・吸気圧PM、
といった燃料の蒸発特性に影響を与える因子によって変動する。
【0048】
すなわち、燃料が付着してからの経過時間tfが大きくなると、比較的軽質な燃料は気化すると共に比較的重質な燃料は付着した状態を保つ。そのためかかる場合には、燃料性状パラメータρを大きくする方向に設定する。つまり、図9に示すように、経過時間tfが大きくなるほど、燃料性状パラメータρを大きな値に設定する。
【0049】
また、冷却水温Tw(壁面温度)が高くなると、所定温度を境に付着燃料は蒸発し易い状態になる。そのためかかる場合には、燃料性状パラメータρを小さくする方向に設定する。つまり、図10に示すように、冷却水温Twが高くなるほど、燃料性状パラメータρを小さな値に設定する。
【0050】
さらに、絶対圧としての吸気圧PMが小さくなる方向へ変動した際(吸気管負圧が大きくなる際)には、付着燃料は蒸発し易くなる。そのためかかる場合には、燃料性状パラメータρを小さくする方向に設定する。つまり、図11に示すように、吸気圧(絶対圧)PMが大きくなるほど、燃料性状パラメータρを大きな値に設定する。
【0051】
そして、以上のような燃料性状パラメータρの特性を考慮しつつ、CPU33はエリア毎に燃料性状パラメータρiを設定すると共に、ステップ108で前記設定した燃料性状パラメータρiにより残留率Pmiを補正する。かかる場合、残留率Pmiの補正に際しては、エリアインデックスiを照合させながら、当該エリア毎の残留率補正を実施する(Pmi=Pmi・ρi)。
【0052】
その後、CPU33は、ステップ109でその時の機関回転数Neに応じて壁面付着率Rmiを補正する。要するに、既述した通り本実施の形態における燃料噴射システムでは、吸気行程を狙い燃料噴射を実行する、いわゆる「吸気同期噴射制御」を採用している。従って、図13に示すように、例えば600rpm,1200rpm,1800rpmといった各機関回転数Neにおいて、いずれも燃料噴射量が同一である場合、低回転域(600rpm)では吸気弁14の開弁時期にのみ燃料噴射が実施され、これに対し中回転域以上(1200rpm,1800rpm)では燃料噴射が吸気弁14の開弁前の閉弁時期にかかることになる。因みに、図13の横軸は機関1の回転に伴うクランク角度を示す。
【0053】
つまり、内燃機関1の中・高回転域では、燃料が壁面に付着し易くなり、吸気弁14が開弁している時の噴射燃料と、閉弁している時の噴射燃料とでは、自ずと壁面付着率Rmi(例えば吸気弁上面に付着する燃料量)が変化する。そのため、機関回転数Neに応じて壁面付着率Rmiを算出し、適切な燃料挙動が把握できるようにしている。こうした実状から、例えば図12に示す関係を用い、機関回転数Neが大きくなるほど、すなわち高回転域になるほど、壁面付着率Rmを大きくする方向に更新する。
【0054】
次いで、CPU33は、ステップ110で前述の式(6)に基づき、インジェクタ18による実際の噴射燃料量Fi(k)を算出する。このとき、噴射燃料量Fi(k)は、吸気ポート近傍領域の全域(エリアインデックスi=1〜n)における燃料の付着及び残留の度合を加味した値として算出されることになる。
【0055】
さらに、CUP33は、ステップ111で時刻インデックスkを「k+1」としたときの壁面付着燃料量Fmw(k+1)を、
Fmw(k+1)=Pmi・Fmwi(k)+Rmi・Fi(k)
といった数式により、各エリア毎に算出する。
【0056】
その後、CPU33は、図5のステップ112に進み、同ステップ112〜118において時刻インデックスが「k+1」での壁面付着燃料量Fmwi(k+1)が機関定常状態を基準に予め設定されている最大付着量Fmwimax 以下であるか否かを、エリアインデックスiが小さいものから順に当該インデックス毎に判定すると共に、Fmwi(k+1)値がFmwimax 値を越える場合には、その差分である過剰量δ(=Fmwi(k+1)−Fmwimax )を算出して同過剰量δにより壁面付着燃料量Fmwi(k+1)を補正する。
【0057】
詳しくは、CPU33は、ステップ112でエリアインデックスiを最小値である「1」に設定し、続くステップ113で壁面付着燃料量Fmwi(k+1)が最大付着量Fmwimax 以下であるか、すなわち、
Fmwi(k+1)≦Fmwimax
が成立するか否かを判別する。この場合、ステップ113が肯定判別されれば、CPU33は壁面付着燃料量Fmw(k+1)が過剰でないとみなし、そのまま本ルーチンを終了する。
【0058】
一方、ステップ113が否定判別される場合、すなわち、
Fmwi(k+1)>Fmwimax
となる場合、CPU33はステップ114に進み、エリアインデックスiが最大値の「n」になったか否かを判別する。例えば前記ステップ113が否定判別された当初はエリアインデックスiが比較的小さい値で「n」に達していないため、CPU33はステップ114を否定判別してステップ115に進む。
【0059】
そして、CPU33は、ステップ115でエリアインデックスiでの壁面付着燃料量Fmwi(k+1)から同じくエリアインデックスiでの最大付着量Fmwimax を減算して過剰量δを算出する(δ=Fmwi(k+1)−Fmwimax )。また、CPU33は、ステップ116で今回演算したエリアにおける壁面付着燃料量Fmwi(k+1)を、当該エリアの最大付着量Fmwimax により書き換える。
【0060】
次いで、CPU33は、ステップ117でエリアインデックスiを「1」インクリメントすると共に、続くステップ118でエリアインデックスiが「1」加算されたエリア(インデックス更新前のエリアよりも吸気管上流側で、且つそのエリアに隣接するエリア)での壁面付着燃料量Fmwi(k+1)を、前記算出した過剰量δにより補正する。具体的には、過剰量δを加算して壁面付着燃料量Fmwi(k+1)を更新する(Fmwi(k+1)=Fmwi(k+1)+1)。
【0061】
その後、CPU33は、ステップ113に戻り、ステップ113或いはステップ114が肯定判別されるまでステップ113〜118の処理を繰り返し実行する。つまり、エリアインデックスiが「n」に達する前に前記ステップ113が肯定判別されれば、その時点で本ルーチンが終了され、エリアインデックスiが「n」に達するまで前記ステップ113が否定判別され続ければ、ステップ114が肯定判別された時点で本ルーチンが終了されることになる。
【0062】
以上ステップ112〜118の処理によれば、吸気ポート17近傍における各エリア毎にその付着燃料の過剰量δに応じた壁面付着燃料量Fmwi(k+1)の補正が適正に実施されるようになる。そして、この補正されたFmwi(k+1)値は、次回の処理実行時において噴射燃料量Fi(k)の演算に用いられる。
【0063】
なお、本実施の形態では、図4のステップ106,108,109が請求項記載のエリア別パラメータ設定手段に、ステップ110〜118が燃料噴射量補正手段に、ステップ107が燃料性状パラメータ設定手段にそれぞれ相当する。また特に、ステップ110が加算手段及び実噴射量算出手段に、ステップ111〜118がエリア別付着燃料量算出手段に相当する。
【0064】
以上、詳述した本実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(a)本実施の形態では、吸気ポート17の近傍領域を複数のエリアに分割し、該エリア毎に壁面付着率Rm及び残留率Pm(燃料挙動を表すパラメータ)を設定するようにした。また、分割されたエリア毎の個々の壁面付着率Rm及び残留率Pmに基づき、吸気ポート近傍領域の全域における燃料の付着及び残留の度合を算出すると共に、該算出結果に応じてインジェクタ18による噴射燃料量Fiを補正するようにした。このように、吸気ポート近傍のエリア毎に壁面付着率Rm及び残留率Pmを設定すれば、これらのパラメータ(Rm値,Pm値)がより高精度に求められることになる。そして、これらパラメータを用いてインジェクタ18による燃料噴射量を制御すれば、定常運転状態や過渡運転状態等、いかなる機関運転状態下においても安定した空燃比制御が実現できるようになる。その結果、従来装置のようにパラメータ変動時において空燃比の制御精度が極端に低下して、それによりトルク変動に起因するドライバビリティの悪化や、排気エミッションの悪化等を招くといった問題が解消される。
【0065】
(b)より具体的には、分割されたエリア毎に壁面付着燃料量Fmwiを算出すると共に、その壁面付着燃料量Fmwiを吸気ポート近傍領域の全域(エリアインデックスi=1〜n)にて加算し、その加算結果を基にインジェクタ18による実際の噴射燃料量Fiを算出するようにした(前記式(6)参照)。かかる場合、吸気ポート近傍領域における吸気通路内の壁面付着燃料量Fmwの総量が精度良く求められる。そして、この壁面付着燃料量Fmwの総量をインジェクタ18による噴射燃料量Fiに反映させることで、燃料噴射の制御精度も確実に向上することになる。
【0066】
(c)また、本実施の形態では、エリア毎の壁面付着燃料量Fmwiを予め設定されている最大付着量Fmwimax と比較し、前者が後者を越える場合(Fmwi>Fmwimax の場合)にはその差分である過剰量δに基づいて隣接するエリアの壁面付着燃料量Fmwを補正するようにした。こうした処理によれば、壁面付着燃料量Fmwがより一層正確に求められることになる。
【0067】
(d)さらに本実施の形態では、エリア毎に燃料性状パラメータρiを設定し、この燃料性状パラメータρiを対比させつつ、エリア毎に残留率Pmiを算出するようにした。かかる場合、残留率Pmが燃料の性状に応じて適正に算出されることになる。
【0068】
(e)燃料付着からの経過時間tf、冷却水温Tw、吸気圧PM等、燃料の蒸発特性に応じて燃料性状パラメータρiを可変に設定するようにしたため、当該パラメータρiがより適確に把握できると共に、ひいては残留率Pmの演算精度が向上することになる。
【0069】
(f)本実施の形態では、吸気行程にかかるようにインジェクタ18による燃料噴射を実行する、「吸気同期噴射制御」を採用したシステムを具体化し、そのシステムにおいて、機関回転数Neに応じて壁面付着率Rmを補正するようにした。この場合、内燃機関1の低回転域では吸気弁14の開弁時期にのみ燃料噴射が実施され、これに対し機関1の中・高回転域では燃料噴射が吸気弁14の開弁前の閉弁時期にかかることになる。従って、吸気弁14が開弁している時の噴射燃料と閉弁している時の噴射燃料とでは、自ずと燃料の壁面付着率Rmが変化する、すなわち機関回転数Neに応じて当該Rm値が変化することになるが、こうした吸気同期噴射制御の実施によるRm値の変動の際にも、燃料挙動が適確に把握できることとなる。
【0070】
(g)また、上記(e),(f)の構成によれば、車両の加速或いは減速等における内燃機関1の過度運転時にあっても、より正確にその時の機関運転状態に応じた吸気管2内の燃料挙動が予測でき、高精度な燃料噴射量制御が実行できるようになる。
【0071】
(h)併せて、吸気弁14からの距離に応じて複数のエリアを分割設定するようにした。つまり、壁面付着率Rm或いは残留率Pmは、吸気ポート17の最下流位置(例えば吸気弁上面)を基準として所定の関係を有し、この関係はある程度一義的にシミュレートできる(図7及び図8参照)。従って、例えば複数エリアを吸気弁14からの距離に応じて等間隔で分割するように設定すれば、各エリア毎の燃料挙動が把握し易くなるという効果が得られる。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。但し、本実施の形態の構成において、上述した第1の実施の形態と同等であるものについては図面に同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そして、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
本実施の形態の装置では、上記第1の実施の形態におけるエリア毎のパラメータ設定処理に加え、内燃機関1の負荷状態の絶対量に基づいて時刻kにおける壁面付着率Rm(k)や残留率Pm(k)を可変に設定する処理を併せ実施することを特徴とする。例えば、内燃機関1の負荷状態として、例えば吸気圧PM、冷却水温Tw、シリンダ壁温、スロットル開度、アクセル開度等を用い、それらの検出結果を壁面付着率Rm(k)及び残留率Pm(k)に反映させるようにする。具体的には、壁面付着率Rm(k)及び残留率Pm(k)を例えば吸気圧PMに基づいて、以下のように決定する。
【0074】
【数2】
Figure 0003817648
【0075】
前記の式(7)において、a,b,c,dは実験によって求めることのできる定数であって、機関運転時に学習することも可能である。吸気圧PMが絶対値〔kPa.abs.〕で表される場合、「0<a<0.01」、「−0.001<b≦0」、「−0.01<c<0」、「0<d<1」である。
【0076】
上記パラメータを可変に設定する際の根拠をより具体的に説明すれば、例えば車両加速時においてスロットル弁5の開放動作に伴い吸気圧PMが正側に変化した場合、すなわちPM(k+1)>PM(k)となる場合には、PM(k)時に比較して、PM(k+1)時には、インジェクタ18による噴射燃料が霧化しにくくなり(液滴な燃料となる)、噴射燃料が吸気管壁面に付着する割合が増加する(壁面付着率Rmが増加する)。また、かかる場合において、吸気流速が増加するため、壁面付着燃料は、PM(k)時に比べ、PM(k+1)時には筒内に押し流され易くなる。そのため、当該壁面付着燃料が該壁面に残留する割合が減少する(残留率Pmが減少する)。すなわち、PM(k)が増加傾向にある場合には、壁面付着率Rmを増加側の値に設定すると共に、残留率Pmを減少側の値に設定すればよいことになる。
【0077】
一方、例えば車両減速時においてスロットル弁5の絞り動作に伴い吸気圧PMが負側に変化した場合、すなわちPM(k+1)<PM(k)となる場合には、インジェクタ18による噴射燃料が霧化し易くなり(燃料が微粒化される)、噴射燃料が壁面に付着する割合が減少する(壁面付着率Rmが減少する)。また、かかる減速時には吸気流速が減少するため、壁面付着燃料の筒内への流入は少なくなり、該壁面付着燃料が壁面に残留する割合が増加する(残留率Pmが増大する)。すなわち、PM(k)が減少傾向にある場合には、壁面付着率Rmを減少側の値に設定すると共に、残留率Pmを増加側の側に設定すればよいことになる。
【0078】
ここで、参考までに図14には、吸気圧PMの絶対値〔kPa.abs.〕に対応する各パラメータPm,Rmの計測データを示しておく。同図によれば、計測データからも既述した各パラメータPm,Rmの増加又は減少傾向が解明できる。
【0079】
上記実施の形態の構成によれば、燃料挙動モデルのパラメータである壁面付着率Rm及び残留率Pmが内燃機関1の負荷状態を表す吸気圧PMの絶対値に対応させて設定される。そのため、その時々の機関運転状態に応じて所望の燃料噴射量を内燃機関に噴射供給することができるようになる。
【0080】
図15は、吸気圧PMの変化に伴う排気空燃比(A/F)の変動を示すタイムチャートである。同図の排気空燃比において、実線は本実施の形態の装置における推移を示し、破線は従来装置における推移を示す。同図に示すように、燃料挙動のパラメータを固定とする従来装置では、吸気圧PMの変動に伴い排気空燃比が目標空燃比から大きく外れるが、本実施の形態の装置では、排気空燃比の変動が少なくなり、空燃比が目標値にいち早く収束するのが分かる。
【0081】
因みに、この第2の実施の形態において、前記図14の数値データを予めマップとしてメモリに記憶させておき、このマップデータを用いて吸気圧PMの絶対値に対応する各種パラメータを設定するようにしてもよい。このとき、各パラメータの値をマップから読み取ることで、より簡便に当該パラメータの可変設定が実現できる。こうした数値マップは、使用環境や経時変化に基づいて適宜学習するようにしてもよい。
【0082】
なお、本発明の実施の形態は、上記以外に次の形態にて実現できる。
上記第1の実施の形態では、燃料付着からの経過時間tf、冷却水温Tw(吸気管壁面温度)、吸気圧PM等、燃料の蒸発特性に応じて燃料性状パラメータρをエリア毎に可変に設定する旨を記載したが(前記図4のステップ107)、この構成を変更してもよい。例えばエリアインデックスi=1〜nの燃料性状パラメータρiを各個に設定するのではなく、いずれかのエリア(例えばi=1のエリア)における燃料性状パラメータρiを1つだけ設定し、その1つのρi値をエリア毎の残留率Pmiの設定処理に反映させてもよい。また、吸気管壁面温度を検出するためのセンサを付設し、前記冷却水温Twに代えて吸気管壁面温度に応じて燃料性状パラメータρを設定するようにしてもよい。またさらに、この燃料性状パラメータρを設定する処理自体を廃止すると共に、同パラメータρによる残留率Pmの補正処理も廃止し、演算処理の簡素化並びに演算負荷の軽減を図るようにしてもよい。
【0083】
L−J方式、すなわちエアフロメータによって吸入空気量を演算する方式を適用する場合において、機関回転数と吸入空気量とからその時の吸気圧を算出し、前記算出した吸気圧に基づいて、燃料性状パラメータρを補正するようにしてもよい。
【0084】
上記実施の形態の装置では、吸気行程にかかるようにインジェクタ18による燃料噴射を実行する、「吸気同期噴射制御」を採用したシステムを具体化したが、この噴射制御システムを変更し、吸気行程前に燃料噴射時期を設定するような制御システムの装置に本発明を具体化してもよい。かかる場合、前記図4のフローチャートにおけるステップ109のような機関回転数Neに応じた壁面付着率Rmの補正が不要となる。
【0085】
上記実施の形態では、吸気ポート17の近傍にて分割される複数のエリアを、吸気弁14からの距離に応じて等間隔に設定したが(図3及び図6参照)、この構成を変更してもよい。例えば、インジェクタ18の配設位置や吸気管2の形状又は内径寸法等に応じて、エリアの分割間隔や分割位置を任意に変更してもよい。特に、インテークマニホールドにおいては、気筒毎に分岐管の長さや形状が異なるため、気筒毎にエリア設定を変更してもよい。
【0086】
また、上記第1の実施の形態では、図5のステップ112〜118の処理において、壁面付着燃料量Fmwを、最大付着量Fmwmax との大小比較に基づきその過剰量δ分だけ補正するようにしていたが、この処理を廃止し、演算処理の簡素化並びに演算負荷の軽減を図るようにしてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、マルチポイントインジェクション(MPI)システムにて燃料噴射量制御装置を具体化したが、これに代えてシングルポイントインジェクション(SPI)システムにて本制御装置を具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における内燃機関の燃料噴射量制御装置の概略を示す構成図。
【図2】吸気ポート近傍における燃料挙動シミュレーションモデルを示す模式図。
【図3】吸気ポート近傍における燃料挙動シミュレーションモデルを示すと共に、吸気ポート近傍にて複数に分割されたエリアを示す模式図。
【図4】第1の実施の形態における燃料噴射量制御手順を示すフローチャート。
【図5】図4に続いて、燃料噴射量制御手順を示すフローチャート。
【図6】吸気ポート近傍における燃料挙動シミュレーションモデルを示すと共に、吸気ポート近傍にて複数に分割されたエリアを示す模式図。
【図7】エリアインデックスiと壁面付着率Rmとの関係を示す図。
【図8】エリアインデックスiと残留率Pmとの関係を示す図。
【図9】燃料付着からの経過時間tfと燃料性状パラメータρとの関係を示すグラフ。
【図10】冷却水温Twと燃料性状パラメータρとの関係を示すグラフ。
【図11】吸気圧PMと燃料性状パラメータρとの関係を示すグラフ。
【図12】機関回転数Neと壁面付着率Rmとの関係を示すグラフ。
【図13】吸気同期噴射制御の概要を説明するための図。
【図14】第2の実施の形態において、吸気圧の絶対値と付着率及び残留率との関係を示すグラフ。
【図15】第2の実施の形態において、壁面付着率及び残留率を吸気圧に応じて可変に設定した時の効果を説明するためのタイムチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…吸気管、14…吸気弁、17…吸気ポート、18…インジェクタ、33…エリア別パラメータ設定手段,燃料噴射量補正手段,エリア別付着燃料量算出手段,加算手段,実噴射量算出手段,燃料性状パラメータ設定手段を構成するCPU。

Claims (7)

  1. 内燃機関の気筒に流入する燃料の動的挙動モデルを使用し、吸気ポート近傍における燃料の壁面付着率及び残留率を前記動的挙動モデルのパラメータとしてインジェクタによる燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置であって、
    吸気ポート近傍領域を複数のエリアに分割し、該エリア毎に前記壁面付着率及び残留率を設定するエリア別パラメータ設定手段と、
    前記分割されたエリア毎の個々の壁面付着率及び残留率に基づき、前記吸気ポート近傍領域の全域における燃料の付着及び残留の度合を算出すると共に、該算出結果に応じて前記インジェクタによる燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正手段と
    を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  2. 前記燃料噴射量補正手段は、
    前記分割されたエリア毎に付着燃料量を算出するエリア別付着燃料量算出手段と、
    前記算出されたエリア毎の付着燃料量を前記吸気ポート近傍領域の全域にて加算する加算手段と、
    前記加算手段による加算結果を基に、筒内への目標流入燃料量を修正して前記インジェクタによる実際の燃料噴射量を算出する実噴射量算出手段と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  3. 請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    前記エリア別付着燃料量算出手段は、前記分割されたエリア毎にその付着燃料量を予め設定されている最大付着量と比較し、前者が後者を越える場合にはその差分である過剰量に基づいて隣接するエリアの付着燃料量を補正することを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  4. 前記分割されたエリア毎に、付着燃料の性状を示すパラメータを設定する燃料性状パラメータ設定手段を備え、
    前記エリア別パラメータ設定手段は、前記燃料性状を示すパラメータを対比させつつ、エリア毎に前記残留率を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  5. 請求項4に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    燃料性状パラメータ設定手段は、燃料付着からの経過時間、吸気管の壁面温度、吸気管圧力等、燃料の蒸発特性に応じて前記燃料性状を示すパラメータを可変に設定することを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  6. 吸気行程にかかるように前記インジェクタによる燃料噴射を実行する、吸気同期噴射制御を採用したシステムに適用されるものであって、
    前記エリア別パラメータ設定手段は、機関回転数に応じて前記壁面付着率を設定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  7. 前記吸気ポート近傍にて分割される複数のエリアは、吸気弁からの距離に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
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