JP3814916B2 - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高圧燃料ポンプから燃料を共通の蓄圧室(コモンレール)に供給し、この蓄圧室に各気筒毎の燃料噴射弁を接続して蓄圧室内に貯留した高圧燃料を内燃機関の各気筒に噴射する、いわゆるコモンレール式の燃料噴射装置が知られている。
また、コモンレール式の燃料噴射装置において、燃料噴射弁のいずれかが開弁スティックなどにより異常噴射を生じた場合に機関に悪影響が生じることを防止する手段を備えた燃料噴射装置としては、例えば特開平2−112643号公報に記載されたものがある。
【0003】
燃料噴射弁が開弁スティック等による異常噴射を生じると、異常を生じた燃料噴射弁から気筒内に多量の燃料が供給されることになり、この燃料の燃焼により筒内圧力が異常に上昇する場合がある。このような筒内圧の異常上昇が生じると機関各部の耐久性が低下し、極端な場合には機関の破損を生じる場合がある。
上記特開平2−112643号公報の装置は、複数の蓄圧室と、各蓄圧室に接続された燃料噴射弁と、各蓄圧室にそれぞれ燃料を供給する複数の燃料ポンプを備えており、燃料噴射弁の異常噴射が検出されると異常が生じた燃料噴射弁が接続された蓄圧室への燃料ポンプからの燃料供給を停止するようにしている。
【0004】
これにより、異常を生じた燃料噴射弁に接続された蓄圧室には燃料が供給されなくなるため、蓄圧室内に残った燃料を噴射した後は異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射は停止する。このため、上記装置によれば異常噴射が比較的短時間で終了し機関が異常燃焼による高い筒内圧に曝される期間が短くなるため、異常発生時に機関破損等の極端な事態が生じる確率を低下させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特開平2−112643号公報の装置では、コモンレールへの燃料供給は停止されるが、コモンレール内に貯留された燃料は燃料噴射弁から噴射され続け、コモンレール内の燃料圧力が十分に低下するまで異常を生じた燃料噴射弁から燃料が噴射されることになる。
【0006】
コモンレール内に貯留された燃料の量はコモンレール内燃料圧力に応じて大きくなる。しかも、コモンレール式燃料噴射装置では、一般に高圧燃料噴射を行うためコモンレール内燃料圧力は高く設定されており、150MPa程度にコモンレール内燃料圧力を設定した燃料噴射装置も使用されている。コモンレール内燃料圧力をPとすると、体積弾性係数Kを一定として考えた場合、内容積Vのコモンレール内に貯留された燃料量を大気圧下の値に換算した値Qは、Q=P×V/Kとして表される。従って、上記のような高圧噴射を行うコモンレール式燃料噴射装置では、コモンレール内容積が小さい場合でも多量の燃料がコモンレール内に貯留されていることになる。このため、上記特開平2−112643号公報の装置のように、単にコモンレールへの燃料供給を停止したのみではコモンレール内に貯留された多量の燃料が燃料噴射により排出されてコモンレール内圧力が低下するまでに長時間を要する場合がある。しかも、この間異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射は継続されるため機関が異常筒内圧力に曝される期間は必ずしも短縮されず機関の耐久性低下等の問題が生じることになる。
【0007】
これを防止するためには、コモンレールへの燃料供給を停止するとともに、異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することが考えられる。しかし、一般に異常噴射を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することは困難である。例えば、制御回路の異常や電気的な回路のショートなどにより燃料噴射弁への通電が停止できなくなったような異常噴射では、電気的な制御により燃料噴射を停止することはできない。また、異物の噛み込みやスティック等により機械的に燃料噴射の開弁状態が固定されたような異常においても電気的制御により燃料噴射を停止することは困難である。
【0008】
本発明は上記問題に鑑み、燃料噴射弁に異常が生じたような場合に短時間で異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射を停止し、異常筒内圧力の発生期間を短縮することが可能な燃料噴射装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関の燃料を昇圧する燃料ポンプと、燃料ポンプから供給された高圧燃料を貯留する蓄圧室と、前記蓄圧室に接続され蓄圧室内の燃料を内燃機関に噴射する複数の燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段によりいずれかの燃料噴射弁の異常が検出されたときに前記燃料ポンプから蓄圧室への燃料供給を停止する手段と、前記異常検出手段により燃料噴射弁の異常が検出されたときに前記蓄圧室内の燃料を蓄圧室外に排出して蓄圧室内の燃料圧力を低下させる減圧手段と、を備え、前記減圧手段は、前記異常が検出された燃料噴射弁を含む全ての燃料噴射弁から燃料噴射を行うことにより前記蓄圧室内の燃料圧力を低下させる内燃機関の燃料噴射装置において、前記減圧手段は更に、前記異常が検出された燃料噴射弁以外の燃料噴射弁からの燃料噴射量を、前記異常が検出される前に較べて増大させる異常時増量手段を備えた内燃機関の燃料噴射装置が提供される。
【0010】
すなわち、請求項1の発明では、燃料噴射弁の異常が生じた場合には異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射のみにより燃料圧力が低下するのを待つのではなく、減圧手段により積極的にコモンレール内燃料圧力を低下させる。これにより、コモンレール内燃料圧力は短時間で低下し異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射は短時間で停止する。
【0011】
また、請求項1の発明では減圧手段は、異常を生じた燃料噴射弁を含む全部の燃料噴射弁から燃料噴射を行う。これにより、コモンレール内に貯留された燃料は各気筒内に分散して噴射され短時間でコモンレール内の燃料圧力が低下する。このため、異常を生じた燃料噴射弁の気筒のみに多量の燃料が供給されることなく短時間て燃料噴射が停止する。
【0012】
更に、請求項1の発明では、減圧手段は異常を生じた燃料噴射弁以外の燃料噴射弁からの燃料噴射量を増大させる異常時増量手段を備えている。これによりコモンレール内の燃料の排出速度が早くなり、更に短時間でコモンレール内燃料圧力が低下し異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射が停止される。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記減圧手段は更に、少なくとも前記異常が検出された燃料噴射弁以外の燃料噴射弁からの燃料噴射時期を遅角させる異常時遅角手段を備えた請求項1に記載の燃料噴射装置が提供される。
すなわち、請求項1の発明では、減圧手段は更に、少なくとも異常を生じた燃料噴射弁以外の燃料噴射弁の燃料噴射時期を遅角させる異常時遅角手段を備えている。これにより異常を生じた燃料噴射弁以外の燃料噴射弁の気筒では燃料噴射量を大幅に増大しながら筒内圧力の上昇を防止することができる。このため、正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を更に増大させることが可能となるため、更に短時間で燃料噴射を停止させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を自動車用ディーゼル機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示す図である。
図1において、1は内燃機関10(本実施形態では4気筒ディーゼル機関)の各気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁、3は各燃料噴射弁1が接続される共通の蓄圧室(コモンレール)を示す。コモンレール3は、後述する高圧燃料噴射ポンプ5から供給される加圧燃料を貯留し、各燃料噴射弁1に分配する機能を有する。
【0015】
また、図1において7は機関10の燃料(本実施形態では軽油)を貯留する燃料タンク、9は高圧燃料ポンプに燃料を供給する低圧フィードポンプを示している。機関運転中、タンク7内の燃料は、フィードポンプ9により一定圧力に昇圧され、高圧燃料噴射ポンプ5に供給される。また、高圧燃料噴射ポンプ5から吐出された燃料は、逆止弁15、高圧配管17を通ってコモンレール3に供給され、更にコモンレール3から各燃料噴射弁1を介して内燃機関の各気筒内に噴射される。なお、図1において19で示したのは各燃料噴射弁1からのリーク燃料を燃料タンク7に返戻するリターン燃料配管である。
【0016】
図1に20で示すのは、機関の制御を行うエンジン制御回路(ECU)である。ECU20は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の構成のディジタルコンピュータとして構成されている。ECU20は、後述するように高圧燃料噴射ポンプ5の吸入弁5aの開閉動作を制御してコモンレール3内の燃料油圧力を機関負荷、回転数等に応じて制御する燃料圧力制御を行う。また、ECU20は燃料噴射弁1の開弁時間を制御して気筒内に噴射される燃料量を制御する燃料噴射量制御を行う。すなわち、本実施形態では燃料噴射弁1の噴射率はコモンレール燃料圧力により制御され、燃料噴射量はコモンレール燃料圧力と燃料噴射弁1の開弁時間により制御される。
【0017】
また、本実施形態では後述するように、ECU20は燃料噴射弁1の異常噴射等の異常を検出する異常検出手段として機能するとともに、異常時にコモンレール内の燃料供給を停止する手段、コモンレール内の燃料圧力を低下させる減圧手段等の各手段としての機能を果たしている。
上記制御のため、ECU20の入力ポートには、コモンレール3に設けた燃料圧力センサ31からコモンレール3内の燃料圧力に対応する電圧信号がAD変換器34を介して入力されている他、機関アクセルペダル(図示せず)に設けたアクセル開度センサ35からアクセルペダルの操作量(踏み込み量)に対応する信号がAD変換器34を介して入力されている。更に、ECU20の入力ポートには、機関のカム軸(図示せず)に設けたクランク角センサ37からクランク回転角に応じて発生するクランク回転角パルス信号が入力されている。
【0018】
また、ECU20の出力ポートは、駆動回路40を介して燃料噴射弁1に接続され、各燃料噴射弁1の作動を制御している他、駆動回路40を介して高圧燃料噴射ポンプ5の吸入弁5aの開閉を制御するソレノイドアクチュエータに接続され、ポンプ5からコモンレール3への燃料の圧送量を制御している。
本実施形態では、高圧燃料噴射ポンプ5は2つのシリンダを有するピストンポンプの形式とされている。ポンプ5の各シリンダ内のピストンは、ピストン駆動軸に形成されたカムに押圧されてシリンダ内を往復運動する。また、各シリンダの吸入ポートには、ソレノイドアクチュエータにより開閉駆動される吸入弁5aがそれぞれが設けられている。本実施形態ではピストン駆動軸は機関10のクランク軸(図示せず)により駆動され、クランク軸と同期してクランク軸の2分の1の速度で回転する。また、ポンプ5のピストン駆動軸には、それぞれのピストンと係合する部分に2つのリフト部を持つカムが形成されており、ポンプ5のピストンは機関10の各気筒のストロークに同期して燃料を吐出するようになっている。すなわち、本実施形態では4気筒ディーゼル機関が使用されているため、ポンプ5の2つのシリンダはクランク軸が720度回転する間にそれぞれ2回ずつ機関の気筒のストロークに同期して(例えば各気筒の排気行程毎に)コモンレール3に燃料を圧送する。
【0019】
また、ECU20はポンプの各シリンダのピストンの上昇(圧送)行程における吸入弁5aの閉弁時期を変化させることによりポンプからの燃料油の吐出流量を制御する。すなわち、ECU20は、各シリンダのピストン下降行程(吸入行程)の間、及びピストン上昇行程(吐出行程)開始後所定の期間ソレノイドアクチュエータへの通電を停止して吸入弁5aを開弁状態に維持する。これにより、各シリンダではピストンが吐出行程に入っても吸入弁5aが開弁している間はシリンダ内の燃料は吸入弁5aからタンクに逆流し、シリンダ内の燃料圧力は上昇しない。そして、上記期間経過後ECU20は吸入弁5aのソレノイドアクチュエータに通電して吸入弁5aを閉弁する。これによりポンプピストンの上昇に伴いシリンダ内の圧力が上昇し、シリンダ内圧力がコモンレール3内の圧力より高くなると各シリンダの逆止弁15が開弁し、シリンダ内の高圧の燃料油が高圧配管17を経由してコモンレール3に圧送される。なお、吸入弁5aは一旦閉弁するとシリンダ内燃料油圧力が高い間は燃料圧力に押されて閉弁状態に保持される。従って、コモンレール3への燃料圧送量はポンプ5の吸入弁5aの閉弁開始時期により定まる。このためECU20はポンプ5の各シリンダの吸入弁5aの閉弁開始時期(ソレノイドアクチュエータへの通電開始時期)を調節することにより、ポンプ5のピストン有効ストロークを変化させコモンレール3に圧送する燃料量を制御している。
【0020】
本実施形態では、ECU20は機関負荷(アクセル開度)、回転数に応じて予めROMに格納した関係に基づいて目標コモンレール燃料圧力を設定するとともに、燃料圧力センサ31で検出したコモンレール燃料圧力が設定した目標コモンレール燃料圧力になるようにポンプ5の吐出量を制御する。また、ECU20は機関負荷(アクセル開度)、回転数に応じて予めROMに格納した関係に基づいて燃料噴射弁1の開弁時間(燃料噴射時間)と噴射時期とを制御する。
【0021】
すなわち、本実施形態ではコモンレール3の燃料圧力を機関運転条件に応じて変化させることにより、燃料噴射弁1の噴射率を運転条件に応じて調節し、燃料圧力と燃料噴射時間とを変化させることにより燃料噴射量を運転条件に応じて調節している。このため、本実施形態のようなコモンレール式燃料噴射装置では、コモンレール内の燃料圧力は機関の運転条件(負荷、回転数)に応じて広い範囲で(例えば、本実施形態では10MPaから150MPa程度までの範囲で)変化し、運転中極めて高い圧力になる場合がある。
【0022】
次に、本実施形態における燃料噴射弁異常時のコモンレール圧力の低減操作について説明する。本実施形態では、ECU20は燃料噴射弁の開弁スティック等による異常噴射が生じたことを検出すると、燃料ポンプ5の吸入弁5aのソレノイドへの通電を停止して吸入弁5aを開放状態にする。これにより、燃料ポンプ5からコモンレール3への燃料供給が停止される。この状態では、コモンレール3への新たな燃料流入は停止するものの、コモンレール3内が高圧になっていると多量の燃料がコモンレール内に貯留されている。従って、燃料噴射弁の異常噴射検出時に機関を停止してしまうと、正常な燃料噴射弁からの燃料噴射は停止するものの、前述したように異常噴射を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することはできないため、コモンレール3内の多量の燃料は異常を生じた燃料噴射弁から気筒内に排出されこの気筒内では燃焼が継続する。このため異常を生じた燃料噴射弁の気筒では長時間にわたって異常燃焼が生じ筒内圧力が上昇することになる。
【0023】
そこで、本実施形態では燃料噴射弁の異常噴射検出時にも正常な燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することなく継続し、異常を生じた燃料噴射弁を含めた全部の燃料噴射弁からの燃料噴射を行う。これにより、貯留された燃料はコモンレールから速やかに排出されコモンレール内の燃料圧力は短時間で低下する。このため、本実施形態では異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射は短時間で終了し異常燃焼による筒内圧力の上昇は短時間で終了する。
【0024】
図2は、上記異常時制御動作を表すフローチャートである。本制御動作は、ECU20により一定時間毎に実行されるルーチンとして行われる。
図2においてルーチンがスタートすると、ステップ201ではいずれかの燃料噴射弁に異常が生じているか否かが判定される。本実施形態では、燃料噴射弁の異常の有無は別途ECU20により実行される異常検出ルーチン(図示せず)により、例えば燃料噴射前後のコモンレール圧力降下幅に基づいて検出される。より詳細には、ECU20は各燃料噴射弁への燃料噴射射開始前と終了後とのコモンレール圧力を燃料圧力センサ31で検出し、各燃料噴射弁からの燃料噴射によるコモンレール内燃料圧力降下を算出する。そして、特定の燃料噴射弁からの燃料噴射時の圧力降下幅が他の燃料噴射弁からの燃料噴射時に較べて所定値以上大きくなった場合にはこの燃料噴射弁に開弁スティック等の異常が生じていると判断する。
【0025】
なお、本発明では燃料噴射弁の異常検出方法は上記に限定されるわけではなく、燃料噴射弁の異常噴射などの異常を検出できる方法であれば他の方法を用いることもできる。例えば、特定の気筒の燃料噴射弁に異常噴射が生じたような場合にはこの気筒内の燃焼圧力が上昇し、この気筒のみ出力トルクが増大する。このため、各気筒の爆発行程における機関クランク軸の回転速度を検出し、特定の気筒の爆発行程におけるクランク軸回転速度が他の気筒に較べて所定値以上大きくなっている場合にこの気筒の燃料噴射弁に異常噴射が生じたと判定するようにしてもよい。
【0026】
また、特定の気筒の燃料噴射弁に異常噴射が生じた場合にはその気筒に供給される燃料の量が他の気筒に較べて増大する。このため、排気系に排気の空燃比を検出する空燃比センサを配置した機関では、各気筒からの排気ガスの空燃比と排気流量とから各気筒に供給された燃料の量を直接算出し、この燃料量が他の気筒より所定値以上増加している場合にはこの気筒の燃料噴射弁に異常噴射が生じていると判定するようにしても良い。
【0027】
図2、ステップ201で燃料噴射弁に異常が生じていた場合には、ルーチンはステップ203に進み燃料ポンプ5の吸入弁5aの通電を停止し吸気弁5aを開放する。これにより、燃料ポンプ5からコモンレール3への燃料の供給が停止される。上記によりコモンレール3への燃料供給を停止したのち、本ルーチンでは異常を生じた燃料噴射弁を含む全燃料噴射弁からの燃料噴射を継続する。これにより、コモンレール3内に貯留された燃料は全部の燃料噴射弁から各気筒に分散して噴射され、コモンレール3内の燃料圧力は短時間で低下する。このため、本実施形態では異常検出後短時間で異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射を停止することができる。
【0028】
なお、コモンレール3を電磁遮断弁等を介してリターン配管19に接続し、この電磁遮断弁を減圧手段として使用することも可能である。すなわち、異常検出時に電磁遮断弁を開弁することによりコモンレール内の燃料をリターン配管19を介して燃料タンク7に排出し、短時間でコモンレール3内圧力を低下させることも可能であるが、図2の実施形態によれば、コモンレール3に減圧のための専用の電磁遮断弁を設ける必要がなく、他の噴射弁を使用してコモンレール内の燃料圧力を低下させることが可能となっている。
【0029】
次に、図3を用いて本発明の別の実施形態について説明する。図2の実施形態では、異常発生時に正常な燃料噴射弁からの燃料噴射を継続することによりコモンレール3の燃料圧力が低下するのに要する時間を短縮していた。本実施形態では、異常発生時に正常な燃料噴射弁からの燃料噴射を継続するのみでなく、少なくとも正常な燃料噴射弁から噴射される燃料量を増量し、更に圧力が低下するのに必要な時間を短縮している。
【0030】
前述したように、本実施形態ではECU20は機関負荷(アクセル開度)と機関回転数とに基づいて各燃料噴射弁からの燃料噴射量を演算し、この燃料噴射量が得られるように各燃料噴射弁の開弁時間(噴射時間)を制御している。図2の実施形態では異常検出後も正常な燃料噴射弁から噴射される燃料量は上記により演算された通常の燃料噴射量であった。これに対して、本実施形態ではいずれかの燃料噴射弁に異常を検出すると異常が生じた燃料噴射弁以外の正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を増大するようにしている。これにより、正常な燃料噴射弁から各気筒内に排出される燃料量が通常の場合より増大するため、図2の実施形態に較べてさらに短時間でコモンレール3内の燃料圧力を低下させることが可能となる。
【0031】
なお、正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を増量すると燃焼圧力の増大により正常な気筒でも筒内圧力が上昇し、出力トルクが増大する。本実施形態では異常検出時の正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量の増量幅は出力トルクや筒内圧力の増大が許容できる範囲になるように決定される。
図3は、本実施形態の異常時制御動作を表す図2と同様なフローチャートである。本制御動作は、ECU20により一定時間毎に実行されるルーチンとして行われる。
【0032】
図3においてルーチンがスタートすると、ステップ301ではいずれかの燃料噴射弁に異常が生じているか否かが判定される。本実施形態においても、図2の実施形態と同様各燃料噴射弁の異常有無は別途ECU20により実行されるルーチンにより検出される。ステップ301でいずれかの燃料噴射弁に異常が生じていた場合には、ステップ303で燃料ポンプ5の吸入弁5aを開放してコモンレールへの燃料供給を停止するとともに、ステップ305で異常が発生した燃料噴射弁を判別する。そして、ステップ307では増量フラグXIの値を1にセットしてルーチンを終了する。増量フラグXIの値が1にセットされると、別途ECU20により実行される燃料噴射ルーチンでは、ステップ305で判別した異常を生じている燃料噴射弁以外の正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量が一律に予め定めた割合で増量される。また、ステップ301でいずれの燃料噴射弁にも異常が生じていない場合には、ルーチンはステップ309に進み、増量フラグXIの値を0にセットしてルーチンを終了する。この場合には別途実行される燃料噴射ルーチンでは通常の量の燃料噴射が行われる。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。図3の実施形態では、正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を増量することにより短時間でコモンレール3内燃料圧力を低下させていた。しかし、前述のように正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を大幅に増量すると正常な気筒においても筒内圧の上昇と出力トルクの増大が生じてしまうため、図3の実施形態で燃料の増量幅は自ずから制限されてしまい、コモンレール3の圧力が低下するのに必要な時間を大幅に短縮することができない場合が生じるおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態では異常検出時に正常な燃料噴射弁からの燃料噴射量を大幅に増量するとともに、各燃料噴射弁の燃料噴射時期を遅角することにより筒内圧力の異常上昇や出力トルクの急増が生じることを防止している。
周知のように、燃料噴射時期を遅角すると気筒内の燃焼が生じる時期が爆発行程の後期に移行するようになるため、筒内圧力が十分に上昇する前に排気弁が開弁してしまい多量の燃料を噴射しても筒内圧力が上昇しなくなる。また、さらに噴射時期を遅角させ、例えば各気筒の排気行程に燃料を噴射するようにすると、実質的に各気筒での燃焼が生じなくなる。このため、各燃料噴射弁の燃料噴射時期を遅角させるとともに正常な燃料噴射弁の燃料噴射量を大幅に増大することにより、コモンレール3からの燃料の排出速度を図3の実施形態より更に大きくすることができ、一層短時間でコモンレール3内燃料圧力を低下させることが可能となる。
【0035】
図4は、上記本実施形態の異常時制御動作を表す図3と同様なフローチャートである。本制御動作は、ECU20により一定時間毎に実行されるルーチンとして行われる。
図4においてルーチンがスタートすると、ステップ401ではいずれかの燃料噴射弁に異常が生じているか否かが判定される。本実施形態においても、図2の実施形態と同様各燃料噴射弁の異常有無は別途ECU20により実行されるルーチンにより検出される。ステップ401でいずれかの燃料噴射弁に異常が生じていた場合には、ステップ403で燃料ポンプ5の吸入弁5aを開放してコモンレールへの燃料供給を停止するとともに、ステップ405で異常が発生した燃料噴射弁を判別する。
【0036】
また、ステップ407では、図3と同様な増量フラグXIの値を1にセットするとともに、ステップ409では遅角フラグXRの値を1にセットしてルーチンを終了する。本実施形態においても図3の実施形態と同様、増量フラグXIが1にセットされると、別途ECU20により実行される燃料噴射ルーチンにより、異常を生じていない燃料噴射弁からの燃料噴射量が一律に予め定めた割合で増量されるが、本実施形態においては燃料噴射量の増量幅は図3の実施形態よりも大きく設定される。また、ステップ409で遅角フラグXRの値が1にセットされると、燃料噴射ルーチンでは各燃料噴射弁の燃料噴射時期が遅角され、例えば各気筒の排気行程に燃料噴射が実行されるようになる。これにより、噴射された燃料は燃焼に寄与しなくなり、燃料増量による筒内圧の異常上昇や出力トルクの増大が生じることが防止される。
【0037】
また、ステップ401でいずれの燃料噴射弁にも異常が生じていなかった場合には、ステップ411と413でフラグXI、XRの値は共に0に設定され、燃料噴射ルーチンでは通常の燃料噴射が行われる。
なお、機関の種類やコモンレール内燃料圧力によっても異なるが、実験によると、例えば異常検出時に正常な燃料噴射弁からの燃料噴射を停止するようにした場合には、コモンレール内の燃料圧力が十分に低下して異常を生じた燃料噴射弁からの燃料噴射が停止するまでに各気筒で概略10回程度の噴射サイクルが必要であるのに対して、正常な燃料噴射弁からも通常通りの燃料噴射を継続した場合には概略5回程度の噴射サイクルでコモンレール内圧力が低下する。また、異常検出時に、正常な気筒の筒内圧や出力トルクが過度に上昇しない程度に燃料噴射量を増量した場合には概略3〜4回の噴射サイクルでコモンレール内圧力が低下し、更に噴射時期を遅角して増量幅を増加させた場合には概略1〜2サイクル程度までコモンレール圧力低下時間を短縮可能であることが確認されている。
【0038】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、燃料噴射の異常発生時にコモンレール内の燃料圧力が短時間で低下するため、異常を生じた燃料噴射弁が接続された気筒内の異常圧力上昇が生じる期間が短縮され、機関の耐久性が向上するという共通の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料噴射装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の異常時制御動作の一実施形態を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の異常時制御動作の一実施形態を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の異常時制御動作の一実施形態を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…燃料噴射弁
3…蓄圧室(コモンレール)
5…燃料噴射ポンプ
10…内燃機関
20…制御回路(ECU)
31…燃料圧力センサ
Claims (2)
- 内燃機関の燃料を昇圧する燃料ポンプと、
燃料ポンプから供給された高圧燃料を貯留する蓄圧室と、
前記蓄圧室に接続され蓄圧室内の燃料を内燃機関に噴射する複数の燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段によりいずれかの燃料噴射弁の異常が検出されたときに前記燃料ポンプから蓄圧室への燃料供給を停止する手段と、
前記異常検出手段により燃料噴射弁の異常が検出されたときに前記蓄圧室内の燃料を蓄圧室外に排出して蓄圧室内の燃料圧力を低下させる減圧手段と、
を備え、
前記減圧手段は、前記異常が検出された燃料噴射弁を含む全ての燃料噴射弁から燃料噴射を行うことにより前記蓄圧室内の燃料圧力を低下させる内燃機関の燃料噴射装置において、
前記減圧手段は更に、前記異常が検出された燃料噴射弁以外の燃料噴射弁からの燃料噴射量を、前記異常が検出される前に較べて増大させる異常時増量手段を備えた内燃機関の燃料噴射装置。 - 前記減圧手段は更に、少なくとも前記異常が検出された燃料噴射弁以外の燃料噴射弁からの燃料噴射時期を遅角させる異常時遅角手段を備えた請求項1に記載の燃料噴射装置。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04241197A JP3814916B2 (ja) | 1997-02-26 | 1997-02-26 | 内燃機関の燃料噴射装置 |
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