JP3812360B2 - 強度安定性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油井用、ガス井用等の鋼管に使用される鋼、または石油、天然ガス等の輸送用ラインパイプ等に使用される鋼に、特に冷間加工後の強度安定性に優れるマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石油、天然ガス等を採取するための井戸の深さの増加に加え、炭酸ガス、硫化水素等を含む油井、ガス井が増え、井戸環境はますます過酷なものとなってきている。
【0003】
従来、油井またはガス井用の鋼管として、炭素鋼や低合金鋼からなる鋼管が一般に使用されてきたが、上記のような厳しい腐食環境下においては、更に良好な耐食性を示す鋼が求められるようになり、最近ではSUS420鋼に代表されるマルテンサイトステンレス鋼、いわゆる13%Cr鋼が使用されるようになってきた。このSUS420マルテンサイトステンレス鋼をベースとして、種々の特性を向上させた鋼が開示されている。
【0004】
特開平5-287455号公報および特開平7-41909号公報には、硫化物に対する腐食性に優れる鋼として、Cの含有量を0.05%以下に制限し、Moを0.5〜7.0%、Niを4.0〜8.0%含有した油井用ステンレス鋼が開示されている。特開平10-287924号公報および特開2000-119817号公報には、水焼き入れ法を用いても焼き割れの発生しない鋼として、肉厚とCおよびCr含有量の関係を規定したマルテンサイトステンレス鋼管が開示されている。
【0005】
上記の油井用、ガス井用の鋼管は、通常、管端にネジ加工を施し、このネジ継手を連続的に接合することで、井戸深さの増加に対応している。しかし、ネジ加工を施す場合には、事前に拡管スウェージ(Swage/Expand)加工によって、管端部の肉厚を増加させる処理を施す場合があり、このような冷間加工による歪みは、6%相当となる場合がある。一方、石油や天然ガス等の輸送用ラインパイプに使用される鋼管は、その敷設の際に、大きな歪みが付与される場合がある。例えば、海底フローラインを敷設する際には、予め地上において鋼管を溶接し、この溶接された鋼管を船上の巨大なリール(直径:数10m)に巻き取り、この巻き取られたラインパイプを海底に敷設するような手法、いわゆるリールバージ法が採用されている。このリールバージ法において、上記のように巻き取られる際に、鋼管には3%相当の曲げ変形の歪みが付与される。
【0006】
通常、マルテンサイトステンレス鋼は、湿潤な炭酸ガスを含む環境下での腐食に対して、Crによる耐食性向上の効果を著しく示すが、硫化水素を含む環境下では硫化物応力割れを発生し易くなる。このため、油井用、ガス井用として使用されるマルテンサイトステンレス鋼管では、上述の井戸環境の苛酷化に伴い、Crによる耐食性向上に加え、硫化物応力割れ感受性の低減が要請される。
【0007】
マルテンサイトステンレス鋼管の硫化物応力割れ感受性を低減させるには、鋼管の硬度を低くすることが有効であることが経験的に知られており、例えば、API規格の5CTにL-80(13%Cr)が規定されているが、この規格においても最高硬度が制限されている。ところが、一般に硬度は引張強度と比例関係にあり、低硬度材は低強度材であり、硬度のバラツキ大きい材料では同時に強度バラツキの大きな材料となる。
【0008】
上述のように、鋼管に冷間加工による歪みが付与されると、鋼管は加工硬化によって硬度および引張強度が上昇する。冷間加工の前後で引張強度の上昇量が大きくなると、同時に冷間加工による硬度上昇が著しくなって、硬度バラツキが生じ易くなる。鋼管の長手方向または円周方向に硬度バラツキが生じるようになると、上述の硫化物応力割れ感受性が変動して、鋼管として要求される耐食性を満足できなくなる。
【0009】
例えば、油井用、ガス井用の鋼管に施される拡管スウェージ加工の際には、鋼管の長手方向、すなわち管端部と管中央部との間に発生する硬度のバラツキに留意し、リールバージ法における敷設用鋼管の巻き取りの際には、鋼管の円周方向における硬度のバラツキに注意する必要がある。したがって、このように冷間加工後の硬度のバラツキを低減するには、冷間加工後の強度安定性を確保する必要がある。しかし、従来、このような視点で開発された油井用、ガス井用等のマルテンサイトステンレス鋼管は開示されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであって、油井用、ガス井用等の鋼管、または石油、天然ガス等の輸送用ラインパイプ等に使用される鋼管であって、特に冷間加工後の強度安定性に優れるマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、▲1▼鋼中に残留するオーステナイト組織の量が多いと冷間加工後の硬度が上昇しやすいこと、および▲2▼冷間加工度(引張試験における伸び)と冷間加工の前後における硬度の上昇量との関係に一定の法則性があることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の要旨は「質量%で、C: 0.001 〜 0.09 %、 Si : 0.2 〜 1.00 %、P: 0.040 %以下、S: 0.005 %以下、 Mn : 0.1 〜 2.0 %、Cr:9.7〜14%、Ni:0.5〜3.6%、 Al : 0.001 〜 0.2 %およびN: 0.05 %以下を含有し、残部が Fe および不純物からなり、かつ組織中の残留オーステナイトが体積分率で1%未満であることを特徴とする冷間加工後の強度安定性に優れたマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管」にある。
【0013】
なお、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管は、下記の(1)式で表されるA値が1.22以下であるのが望ましい。但し、ΔH:引張試験の前後における硬度の上昇量(HRC)、D:引張試験での伸び(%)を示す。
A=ΔH/D1/2 …(1)
【0014】
また、上記の化学組成に加え、更に、Mo:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜2.0%、Ti:0.01〜0.30%、V:0.01〜0.30%、Nb:0.01〜0.30%およびCa:0.0002〜0.005%のうちから選択された1種以上を含有する鋼管であるのが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明で規定する各化学成分についての限定理由を説明する。なお、各成分の%は質量%を意味する。
【0016】
Cr:9.7〜14%
Crは、耐炭酸ガス腐食性を向上させる効果を有する元素である。この効果を得るためには、その含有量を9.7%以上とする必要がある。一方、Crは、強力なフェライト生成元素であり、その含有量が14%を超える場合には、δフェライトが生成し、熱間加工性を阻害する。従って、Crの含有量を9.7〜14%とした。望ましくは、9.7〜13.5%である。
【0017】
Ni:0.5〜3.6 %
Niは、強力なオーステナイト生成元素であり、その含有量が少ない場合には、δフェライトが生成し、熱間加工性を阻害する。従って、Niの含有量は、0.5%以上とする必要がある。一方、Niを3.6 %を超えて含有させると、組織中の残留オーステナイトが過剰に生成し、冷間加工の前後における硬度の上昇量が大きくなる。従って、Niの含有量を0.5〜3.6 %とした。
【0019】
C:0.001〜0.09%
Cは、鋼の強度を確保するのに有効な元素であり、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させる。この効果を得るためにはCの含有量を0.001%以上とする必要がある。一方、Cは、Crと炭化物を形成して有効なCr量を減少させて鋼管の耐炭酸ガス腐食性を劣化させる元素であるので、0.09%以下に制限する必要がある。従って、Cの含有量を0.001〜0.09%とした。
【0020】
Si:0.2〜1.00%
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であるため、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させる。この効果を得るためには、Siの含有量を0.2%以上とする必要がある。しかし、Siは、強力なフェライト生成元素でもあり、その含有量が1.00%を超えると、δフェライトが生成し、熱間加工性を阻害する。従って、Si の含有量を0.2〜1.00%とした。
【0021】
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、鋼の脱酸に有効な元素であるため、本発明のマルテンサイトステンレス鋼に含有させる。この効果を得るためには、Mnの含有量を0.1%以上とする必要がある。一方、その含有量が2.0%を超えると、熱間加工性が低下するとともに、靱性が劣化する。従って、Mn の含有量を0.1〜2.0%とした。
【0022】
P:0.040%以下
Pは、鋼中に不可避的に含有する不純物であり、その含有量はできるだけ少ない方がよく、実質的に0%であるのが望ましい。特に、Pの含有量が0.040%を超えると、硫化水素環境での硫化物応力による腐食割れを進行させるとともに、結晶粒界に偏析して靱性を劣化させる。従って、Pの含有量を0.040%以下に制限することとした。
【0023】
S:0.005%以下
Sは、鋼中に不可避的に含有する不純物であり、その含有量はできるだけ少ない方がよく、実質的に0%であるのが望ましい。特に、Sの含有量が0.005%を超えると、粒界に低融点化合物を形成し、熱間加工性を劣化させる。従って、Sの含有量を0.005%以下に制限することとした。
【0024】
Al:0.001〜0.2%
Alは、鋼の脱酸に有効な元素であり、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させる。その効果を得るためには、その含有量を0.001%以上とする必要がある。しかし、Alを0.2%を超えて含有させると、鋼中に介在物が多くなって耐食性が劣化する。従って、Al の含有量を0.001〜0.2%とした。
【0025】
N:0.05%以下
Nは、鋼中に不可避的に含有する不純物であり、Crと窒化物を生成して有効なCr量が減少させて鋼の耐炭酸ガス腐食性を劣化させる元素である。従って、その含有量はできるだけ少ない方がよく、実質的に0%であるのが望ましい。しかし、経済的に製造が容易なことを考慮して、Nの含有量を0.05%以下に制限することとした。
【0026】
本発明のマルテンサイトステンレス鋼管は、上記の化学成分に加え、Mo:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜2.0%、Ti:0.01〜0.30%、V:0.01〜0.30%、Nb:0.01〜0.30%およびCa:0.0002〜0.005%のうちから選択された1種以上を含有してもよい。
Mo:0.1〜1.0%
【0027】
Moは、不動態皮膜を安定させるのに有効な元素であり、特に耐孔食性に有効な元素であるので、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。その効果を発揮させるためには、0.1%以上含有すればよい。しかし、その含有量が1.0%を超えると、δフェライトが生成し、熱間加工性を劣化させる。従って、Moを含有させる場合には、その含有量を0.1〜1.0%とすればよい。
【0028】
Cu:0.1〜2.0%
Cuは、オーステナイト生成元素であり、δフェライトの生成を抑制するのに有効な元素であるので、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。その効果を発揮させるためには、0.1%以上含有すればよい。しかし、その含有量が2.0%を超えると、熱間加工性を劣化させるとともに、靱性が劣化する。従って、Cuを含有させる場合には、その含有量を0.1〜2.0%とすればよい。
【0029】
Ti:0.01〜0.30%
Tiは、CおよびNと炭窒化物を形成し、析出強化に寄与する元素である。これに伴い、Crの炭窒化物を減少させて有効なCr量を増加させることができるので、Tiを本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。その効果を発揮させるためには、Tiの含有量を0.01%以上とすればよい。しかし、Tiの含有量が0.30%を超える場合には、鋼管の靱性が劣化する。従って、Tiを含有させる場合には、その含有量を0.01〜0.30%とすればよい。
【0030】
V:0.01〜0.30%
Vは、Tiと同様に、CおよびNと炭窒化物を形成し、析出強化に寄与する元素である。これに伴い、Crの炭窒化物を減少させて有効なCr量を増加させることができるので、Vを本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。その効果を発揮させるためには、Vの含有量を0.01%以上とすればよい。しかし、Vの含有量が0.30%を超える場合には、鋼管の靱性が劣化する。従って、Vを含有させる場合には、その含有量を0.01〜0.30%とすればよい。
【0031】
Nb:0.01〜0.30%
Nbは、TiおよびVと同様に、CおよびNと炭窒化物を形成し、析出強化に寄与する元素である。これに伴い、Crの炭窒化物を減少させて有効なCr量を増加させることができるので、Nbを本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。その効果を発揮させるためには、Nbの含有量を0.01%以上とすればよい。しかし、Nbの含有量が0.30%を超える場合には、鋼管の靱性が劣化する。従って、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.01〜0.30%とすればよい。
【0032】
Ca:0.0002〜0.005%
Caは、鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素であるので、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管に含有させてもよい。この効果を得るためには0.0002%以上含有させればよい。しかし、Caの含有量が0.005%を超えると、粗大な酸化物が生成し、耐食性を劣化させる。従って、Caを含有させる場合には、その含有量を0.0002〜0.005%とすればよい。望ましくは、0.0005〜0.005%である。
【0033】
本発明のマルテンサイトステンレス鋼管は、上記の化学組成を有する鋼管に所定の熱処理を施すことによって、鋼の組織中の残留オーステナイトの体積分率を1%未満とする必要がある。熱処理条件として、例えば、焼き入れ温度を820〜980℃の温度範囲で調整して、鋼管を加熱した後、空冷またはこれ以上の速度で冷却し、焼き戻し温度を500〜700℃の温度範囲で調整して、鋼管を焼き戻しすればよい。
【0034】
残留オーステナイト:体積分率で1%未満
本発明者らは、組織中の残留オーステナイトが体積分率で1%未満であれば、冷間加工の前後において、実質的に問題となるレベルの硬さの増加がないことを確認した。
【0035】
図1は、残留オーステナイト量と冷間加工前後における硬度の上昇量との関係を示す図である。なお、同図の残留オーステナイト量は、化学組成および熱処理条件を調整することによって変化させ、それぞれの試験片についての残留オーステナイト量をX線回折法を用いて測定した。また、同図のΔHは、冷間加工の前後における硬さの上昇量を示し、具体的には、残留オーステナイト量が異なる種々の試験片のロックウェル硬さ(Cスケール)を測定した後、各試験片に引張負荷を与えて、その伸びが6%となった状態で再び各試験片の硬さを測定し、引張試験の前後における硬さの差から求めた。同図に示すとおり、残留オーステナイト量が増加すると、ΔHも増加する。
【0036】
これは、残留オーステナイトの加工によって誘起されるマルテンサイト変態の影響によるものであると考えられる。ここで、冷間加工において6%の歪みが付与された場合でも、その硬さの上昇量(ΔH)が3HRC以下である鋼材であれば、強度のバラツキは実用上問題なく、耐食性の劣化も実質的に生じない。上記の図1から、このような条件を満たすためには鋼中の残留オーステナイト量を1%未満とする必要があることを見出した。
【0037】
更に、本発明のマルテンサイトステンレス鋼管は、下記の(1)式で表されるA値が1.22以下であるのが望ましい。但し、ΔH:引張試験の前後における硬度の上昇量(HRC)、D:引張試験での伸び(%)を示す。
A=ΔH/D1/2 …(1)
【0038】
これは、本発明者らが冷間加工度(引張試験における伸び)と冷間加工前後における硬度の上昇量との関係に一定の法則性があることを見出し、想到したものである。
【0039】
図2は、引張試験における伸びと引張試験前後における硬度の上昇量(ΔH)を示す図である。なお、図中の△、●、□、×および○は、化学組成および熱処理条件を調整して種々の試験片を作製し、各試験片についてロックウェル硬さ(Cスケール)を測定した後、各試験片を引張試験に供して各伸び率における硬さを測定し、引張試験前後での硬さの上昇量を求め、その値をプロットしたものである。本発明者らは、同図に示す各試験片(△、●、□、×および○)の引張試験における伸び(D)と硬さの上昇量(ΔH)との関係から、下記の(a)式を見出した。
ΔH=A×D1/2 …(a)
【0040】
図2に示すとおり、この(a)式は、各試験片の伸びとΔHとの関係に適合しているのが分かる。具体的には、図中の「A=2.0」の曲線は「△」に適合し、「A=1.5」の曲線は「●」に適合し、「A=1.22」の曲線は「□」に適合し、「A=1.1」の曲線は「×」に適合し、「A=1.0」の曲線は「○」に適合している。ここで、冷間加工時の歪み(D)が6%である場合に、その硬さの上昇量(ΔH)が3HRC以下である鋼材であれば、強度のバラツキは実用上問題なく、耐食性の劣化も実質的に生じないことは前述したとおりであるが、図2より、この条件を満たすためには、上記の(a)式中のA値が1.22以下となるような鋼を選択すればよい。
【0041】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼を電気炉によって溶製し、Ar−酸素脱炭炉(AOD)によって精錬した後、直径:500mmのインゴットを鋳造し、次いで、このインゴットに温度1200℃で熱間鍛造を施して直径:225mmのビレットを成型した。このビレットをマンネスマン製管法により直径:245mm、肉厚:12mmの管とした。この管を表1に示す条件で焼入れ焼戻しを施した。
【0042】
【0043】
表1に示す各鋼管から、肉厚:2mmの試験片を切り出し、X線回折法によって鋼のマルテンサイト率と残留オーステナイト率の比強度を測定し、組織中の残留オーステナイトの体積分率を計算した。この結果を表2に示す。
【0044】
一方、表1に示す各鋼管から、直径:6.35mm、平行部長さ:25.4mmの試験片を切り出し、JIS Z 2241に規定される方法に従って、常温での引張試験を行った。この際、引張試験前と引張試験によって伸び(D)が6%となったときの硬さを、JIS Z 2245に規定される方法に従って、ロックウェル硬さ(Cスケール)を測定し、各試験片における硬さの上昇量をΔH(HRC)とした。このときのA値(ΔH/D1/2)を表2に併記した。
【0045】
【0046】
なお、表中の「耐食性」は、30barCO2、5%NaCl、温度150℃の環境で、腐食速度(mm/yr)を測定した結果、腐食速度が1mm/yr以下の場合を「○」とし、1mm/yrを超える場合を「×」として示した。
【0047】
表2に示すとおり、本発明例はいずれも、強度安定性に優れるとともに、耐食性に優れる鋼管である。一方、比較例1および2は、A値が本発明で規定する範囲(1.22)を超えており、強度安定性に劣る。また、比較例3は、腐食速度が1mm/yrを超え、耐食性に劣り、比較例4では、強度安定性および耐食性には問題がないが、Cr含有量が本発明の範囲を超えるため、製管後に傷が発生した。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、拡管スウェージ(Swage/Expand)加工やリールバージ法等における冷間加工歪みが鋼管に付与された後においても硬度のバラツキが少なく、冷間加工後の強度安定性に優れるマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】残留オーステナイト量と冷間加工前後における硬度の上昇量との関係を示す図である。
【図2】引張試験における伸びと引張試験前後における硬度の上昇量(ΔH)を示す図である。
Claims (3)
- 質量%で、C: 0.001 〜 0.09 %、 Si : 0.2 〜 1.00 %、P: 0.040 %以下、S: 0.005 %以下、 Mn : 0.1 〜 2.0 %、Cr:9.7〜14%、Ni:0.5〜3.6%、 Al : 0.001 〜 0.2 %およびN: 0.05 %以下を含有し、残部が Fe および不純物からなり、かつ組織中の残留オーステナイトが体積分率で1%未満であることを特徴とする冷間加工後の強度安定性に優れたマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管。
- 質量%で、C: 0.001 〜 0.09 %、 Si : 0.2 〜 1.00 %、P: 0.040 %以下、S: 0.005 %以下、 Mn : 0.1 〜 2.0 %、Cr:9.7〜14%、Ni:0.5〜3.6%、 Al : 0.001 〜 0.2 %およびN: 0.05 %以下を含有し、残部が Fe および不純物からなり、組織中の残留オーステナイトが体積分率で1%未満であり、かつ下記の(1)式で表されるA値が1.22以下であることを特徴とする冷間加工後の強度安定性に優れたマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管。
A=ΔH/D1/2 …(1)
但し、ΔH:引張試験前後の硬度の上昇量(HRC)
D:引張試験での伸び(%) - 更に、質量%で、Mo:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜2.0%、Ti:0.01〜0.30%、V:0.01〜0.30%、Nb:0.01〜0.30%およびCa:0.0002〜0.005%のうちから選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のマンネスマン製管法により製造されたマルテンサイトステンレス鋼管。
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